結論
ジオマテックは、真空の中で金属や酸化物の薄い膜を付ける加工の専業だ。ディスプレイ、半導体・電子部品、自動車向けの基板に膜を付ける。売上は 60 億円、営業利益は 3 億円。筆者の結論は、今の値段は割高ということだ。
いちばんの理由は、利益の山谷にある。過去 12 年のうち 9 期が営業赤字で、自己資本は 195 億円から 100 億円まで減った。直近で黒字に戻り、今期の営業利益は 5 億円に上方修正されたが、これは半導体向けとディスプレイ向けが同時に良い局面の数字だ。
10 年の中立では、この好況を続く水準とせず、途中に 1〜2 回の谷を挟んだ平均で置いた。営業利益率は 4.5% 前後で、営業利益は 3.6 億円。今期の見込みより小さい。山の年の利益に高い倍率は掛けない。
客先も偏る。ジャパンディスプレイとシャープ系で売上の約 3 割を占め、価格競争は中国・台湾メーカーとの間で厳しい。主原料のインジウムの値動きと、電力代の上昇も利益を揺らす。
救いは財務だ。自己資本比率は 61%、純現金は 23 億円ある。だが無配が続き、利益剰余金はマイナスだ。現金が株主に戻る道は遠い。確率で重みづけした総合は、大幅な割高になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「景気の波に乗って稼ぐ会社」と映る。波に乗っている間は利益が出るが、波が引けば消える。10 年で見れば、利益より損失の期のほうが多かった。
堀は見えない。設備の規模は強みだが、設備は競合も買える。客先は仕様と価格を握り、取引は入れ替わる。受託製造にオーナーが望む「自分で値段を決める力」はない。
資本の使い方も、評価できる段階にない。赤字で自己資本が半減し、配当ができなくなった。直近の黒字でも、剰余金のマイナスを埋めるには長い年月がかかる。現金は積み上がりやすいが、株主に戻る見通しがない。
一方、資産面の安全域は一定程度ある。純現金 23 億円、自己資本比率 61%、政策保有株約 10 億円だ。悪い筋書きでも、会社が潰れる心配は小さい。
だから筆者は、確信度を低く置く。事業の先が読めない会社に、高い値は払えない。回復を織り込んだ今の値段は、安全域として十分とは言えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、真空成膜(スパッタなどで薄い膜を付ける加工)である。顧客から基板を預かって膜を付ける受託加工が中心で、試作から量産まで一貫して請け負う。年間 9,000 件超の案件をこなし、薄膜製造装置を 81 台持つ。業界最大級の設備と会社は説明する。
売上は 3 つに分かれる。ディスプレイ向けが約 28.6 億円(構成比 48%)、半導体・電子部品向けが約 18.8 億円(31%)、その他が約 12.8 億円(21%)。直近の伸びは、ディスプレイが 16.5% 増、半導体・電子部品が 31.9% 増、その他が 9.3% 減だった。
ディスプレイは、自動車などに載る液晶の基板が主体で、透明な導電膜が要る。半導体・電子部品向けは、ウエハ加工(成膜・フォトリソ・エッチング)の受託や、電子部品の薄膜が含まれる。その他は、反射を抑える膜、透明ヒーター、薄膜の熱電対、東京の賃貸用施設の収入などだ。
主要顧客はジャパンディスプレイ 16.9%、シャープディスプレイテクノロジー 11.9%、ミクロ技術研究所 7.6%。前期はジャパンディスプレイが 6.0%、シャープが 19.5% で、顧客間の入れ替わりが大きい。
拠点は横浜の本社と、宮城の金成工場、兵庫の赤穂工場、東京の研究開発センターだ。従業員は 296 人。子会社や親会社はなく、単独で事業を営む。
優良さと弱いところ
優良さは低い。技術には強みがある。多様な材料・形状に対応できる設備と、試作から量産までの一貫対応だ。だが、客先の仕様に合わせて加工する受託の性格が強く、価格を決める力は弱い。
業績の履歴が実力を語る。2015 年 3 月期の売上は 112 億円だったが、2024 年 3 月期には 46 億円まで縮んだ。営業赤字は 12 年のうち 9 期で、2020 年 3 月期には営業利益率がマイナス 22% に落ちた。直近の黒字化は、回復であって、立て直しが完了した証拠ではない。
客先の入れ替わりは、取引の不安定さを示す。シャープ向けは 19.5% から 11.9% に下がり、ジャパンディスプレイ向けは 6.0% から 16.9% に上がった。特定の客先の受注次第で、稼働率が大きく変わる。
財務は堅い。自己資本比率は 61%、純現金は 23 億円で、営業利益は支払利息の 17 倍ある。ただし利益剰余金がマイナスで、無配が続く。次期も、配当可能原資が整うまで無配の見込みだ。
経営は、コア事業の強化、新規事業、人的資本、経営基盤の 4 つを課題に挙げる。数字の中期計画はなく、進み具合は外から測りにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は、ディスプレイ、半導体、電子部品の生産量で決まる。この 3 つは景気と技術の波に最も激しく揺れる分野だ。半導体は AI 向けで強く、ディスプレイは自動車向けが伸びる一方、スマートフォン向けは中国・台湾・韓国のメーカーに押されている。
半導体・電子部品向けは 10 年で伸びるが、一直線には伸びない。メモリや装置の投資は 3〜4 年で好不況が入れ替わり、受託加工は稼働率の変動をまともに受ける。筆者は、10 年の途中に営業赤字の谷が 1〜2 回あると見て、中立の利益率をその平均で置いた。
ディスプレイ向けは、数量が横ばいから微減で、価格が物価に届かない。中国・台湾の同業は価格が低く、有報も価格競争の激化をリスクに挙げる。国内の液晶は縮み、車載向けとして残る分に限られる。
原材料は希少金属のインジウム(透明導電膜の主原料)で、国際価格に左右される。電力代も、真空装置と乾燥に大量の電気を使う会社には重い。
分かれ目は、半導体向けの受託がウエハ加工を軸に定着するか、ディスプレイ向けの客先が国内の車載分野で踏みとどまるかである。
資本政策と M&A
資本政策は、まだ回復の途中だ。利益剰余金がマイナスで、配当が出せない。当期は無配で、次期も、配当可能原資を確保できるまで無配の見込みとしている。自社株買いもない。
設備投資は次期、金成工場に 5.3 億円、赤穂工場に 1.2 億円、東京工場に 1.4 億円の計画で、資金は借入金とする。当期の投資が 1.8 億円だったので、大きく積み増す。借金は増え、現金は減る。
現金は事業に要る分と、余る分に分かれる。純現金は 23 億円で、運転資金と設備投資の備えを除くと、事業に要らない分は約 15 億円と筆者は見る。戻り方は 0.5 とした。無配の方針と、利益剰余金のマイナスが解消されるまでの遠さがその理由だ。
政策保有株は上場株で約 10 億円ある。配当収入が利益に入っているので、価値は余り資産に足さない。
M&A の動きは見えない。時価総額が小さく、自己資本の 7 割弱という水準は、再編や買収の標的になりうる。10 年以内の買収の確率は 25% 前後という外部の試算がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
赤字の 9 期を経て、ようやく黒字が定着した。直近の営業利益は 3.4 億円で、今期は会社が 5 億円へ上方修正した。半導体・電子部品向けは 32% 増え、ディスプレイ向けも 16% 増えている。
10 年で見ても、AI と半導体の投資は構造的に続く。ウエハ加工の受託は、量産ラインを持たない会社に需要がある。薄膜の熱電対や透明ヒーターなど、独自の応用製品が少しずつ伸びる。
財務に余裕がある。純現金 23 億円と自己資本比率 61% は、次の谷を耐える体力だ。設備投資は借入でまかなうので、現金を減らさない。
時価総額は自己資本の 7 割弱にすぎない。利益が今期の見込みどおり 5 億円を保てば、PER は 13 倍台まで下がる。無配が解けて配当が復活すれば、株主還元の面でも見直される余地がある。
受託の客先は、設備を持たずに薄膜を使いたい設計会社へ広がる。自社の応用製品が増えれば、受託の波に左右されにくい稼ぎも育つ。
慎重な見方
この会社の歴史は、赤字の歴史だ。12 年のうち 9 期が営業赤字で、自己資本は半分になった。直近の黒字は半導体とディスプレイが同時に良い局面で、続く保証はない。
客先の偏りは危うい。ジャパンディスプレイとシャープ系で 3 割弱。入れ替わりの激しさは、受注が客先の都合で動く証拠だ。主原料のインジウムの価格と電力代も、利益を揺らす。
中国・台湾の同業は価格が安く、国内のディスプレイ需要は縮む。半導体向けも、設備が競合に買える以上、価格は下がる。受託加工は稼働率で利益が決まり、谷では赤字に直行する。
配当は出ない。次期も無配で、利益剰余金のマイナスは長く残る。現金があっても、株主に戻る道は見えない。今の値段は、山の利益を織り込んでいる。次の谷で赤字に戻れば、剰余金のマイナスはさらに深くなる。
次期の設備投資 8 億円は借入でまかなうが、需要が谷に向かう時期と重なれば、稼働率の低い設備を抱える。過去にも工場の休止があった。
どちらに重みを置いたか
回復は本物だが、山谷の振れ幅が大きすぎる。10 年の途中に谷が来る前提で、中立を平均で置くと、今の値段は届かない。資産の安全域は一定あるが、現金の戻り方を 0.5 に置くと価値は小さい。このため確率は悪い側に寄せ、悲観を 15% と重めに置いた。楽観は、半導体向けの受託が 2 倍以上に伸びる筋書きに限られるので 6% とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 601 円48 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 54 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 289 円23 億円、今との差 −64.1%、 期待の年率 −2.0%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,096 円87 億円 | 254 円20 億円 | +67.5% | +5.3% | 81 円6 億円 |
| やや楽観 | 17% | 808 円64 億円 | 104 円8 億円 | +13.1% | +1.2% | 155 円12 億円 |
| 中立 | 35% | 655 円52 億円 | 61 円5 億円 | −11.2% | −1.2% | 250 円20 億円 |
| やや悲観 | 27% | 527 円42 億円 | 0 円0 億円 | −34.6% | −4.2% | 142 円11 億円 |
| 悲観 | 15% | 177 円14 億円 | 0 円0 億円 | −78.0% | −14.1% | 27 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 601 円48 億円 | 54 円4 億円 | −18.7% | −2.0% | 655 円52 億円 |
今の株価時価総額 806 円64 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:半導体向けの受託が 2 倍以上に伸び、谷も浅く利益率が 7% 台に 利益 7 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,096 円87 億円
AI 向けの半導体投資が 10 年続き、ウエハ加工の受託が 2.2 倍に伸びる。ディスプレイ向けは国内の車載分野で踏みとどまり、応用製品も育つ。途中の谷は浅く、赤字の期は 1 回で済む。
売上は 109 億円、営業利益は 8 億円、利益率は 7% 台だ。直近の見込み 5 億円を上回る水準で、固定費の吸収と製品構成の改善が揃う必要がある。
純利益は 7 億円で、利益剰余金のマイナスが解消に向かい、配当が復活する。配当性向は 3 割。ただし、受託加工の構造から見て、ここまでの安定は例外である。
客先は国内の液晶から、車載と半導体の設計会社へ広がり、特定の 1 社への依存は 1 割台に下がる。応用製品の薄膜熱電対や透明ヒーターも、量産品として定着する。
- ディスプレイ向け:数量 286(処理枚数(万枚))× 価格 1,150(1 枚あたり加工単価(円))→ 売上 33 億円・営業利益 1 億円。国内の車載向けで踏みとどまる
- 半導体・電子部品向け:数量 138(処理枚数換算(万枚))× 価格 3,900(1 枚あたり加工単価(円))→ 売上 54 億円・営業利益 5 億円。受託が 2.2 倍
- その他(応用製品・賃貸ほか):数量 11,700(案件数(件))× 価格 17(1 件あたり売上(万円))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。応用製品が育つ
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 87 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI 向けの半導体投資が 10 年続き、受託が定着し、ディスプレイ向けも持ちこたえる必要がある。山谷の激しい会社なので 6% にとどめた。
やや楽観 17% やや楽観:半導体向けが 1.8 倍に伸び、谷は 1 回で済む 利益 5 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 808 円64 億円
半導体向けの受託が 1.8 倍に伸び、ディスプレイ向けは数量が 1 割減るにとどまる。10 年の途中に谷が 1 回あり、その年は赤字になるが、平均では黒字を保つ。
営業利益は 5 億円、利益率は 5.5%。価格は物価に届かず 1.10〜1.25 倍にとどまる。純利益は 5 億円で、現金の利息が少し上乗せされる。
配当は後半の数年だけ出て、期間の配当性向は 15% 程度にとどまる。利益剰余金のマイナスの解消に時間がかかるためだ。
客先は国内の液晶に偏ったまま、1〜2 社の受注に左右される。半導体の谷では稼働率が下がるが、赤字は 1 年で済み、構造は崩れない。
- ディスプレイ向け:数量 257(処理枚数(万枚))× 価格 1,100(1 枚あたり加工単価(円))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。数量は 1 割減
- 半導体・電子部品向け:数量 113(処理枚数換算(万枚))× 価格 3,750(1 枚あたり加工単価(円))→ 売上 42 億円・営業利益 3 億円。受託が 1.8 倍
- その他(応用製品・賃貸ほか):数量 10,800(案件数(件))× 価格 17(1 件あたり売上(万円))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。応用製品が緩やかに伸びる
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.4% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 60 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体向けの受託が定着する筋書き。直近の勢いと設備投資の積み増しから、十分ありうるので 17%。
中立 35% 中立:半導体向けが 1.5 倍に伸びるが、途中に谷が 1〜2 回あり、平均の利益率は 4.5% 利益 3 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 655 円52 億円
半導体・電子部品向けは 10 年で 1.5 倍に伸びる。ディスプレイ向けは数量が 1 割減り、価格は競争で物価に届かない。その他は応用製品で横ばいだ。
10 年の途中に、営業赤字の谷が 1〜2 回来る。この筋書きは、その谷と山を平均した姿で置いた。営業利益は 3.6 億円、利益率は 4.5%。今期の見込み 5 億円より小さい。
純利益は 3.5 億円。配当は期間の最後の数年だけ出て、期間の配当性向は 1 割にとどまる。自己資本は 140 億円台まで増えるが、積み上がるのは主に現金だ。
谷の年には、客先の投資の凍結で売上が 2〜3 割落ち、営業赤字になる。山の年には営業利益率が 8% 近くまで上がる。10 年後の時点がどちらに当たるかは分からないので、平均の姿で置いた。
- ディスプレイ向け:数量 257(処理枚数(万枚))× 価格 1,100(1 枚あたり加工単価(円))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。数量は 1 割減、価格は物価に届かない
- 半導体・電子部品向け:数量 94.0(処理枚数換算(万枚))× 価格 3,750(1 枚あたり加工単価(円))→ 売上 35 億円・営業利益 2 億円。受託が 1.5 倍、谷を平均
- その他(応用製品・賃貸ほか):数量 9,000(案件数(件))× 価格 19(1 件あたり売上(万円))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。応用製品は横ばい
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.4% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 43 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の勢いと過去 12 年の赤字の履歴を折り合わせた平均像。もっとも重みを置く筋書きで 35%。
やや悲観 27% やや悲観:ディスプレイが縮み、半導体向けも谷が深く平均の利益が薄い 利益 2 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 527 円42 億円
ディスプレイ向けは国内の需要が縮み、数量が 3 割減る。半導体向けは 1.2 倍に伸びるが、谷が 2 回あり、平均の利益率は低い。
営業利益は 2 億円、利益率は 3% 弱。純利益は 2 億円にとどまり、現金の利息が大半を占める。配当は出ない。
投資は借入に頼り、現金は減る。余った現金は設備の更新に使われ、株主に戻る額は今の 4 分の 3 に目減りする前提で価値を置く。
谷が 2 回あり、そのたびに特別損失や減損が出る。国内の液晶向けは縮み続け、価格競争で単価は物価に届かない。それでも財務は健全を保ち、潰れる心配は小さい。
- ディスプレイ向け:数量 200(処理枚数(万枚))× 価格 1,050(1 枚あたり加工単価(円))→ 売上 21 億円・営業利益 0 億円。数量は 3 割減
- 半導体・電子部品向け:数量 75.0(処理枚数換算(万枚))× 価格 3,600(1 枚あたり加工単価(円))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。谷が深く平均の利益率は低い
- その他(応用製品・賃貸ほか):数量 8,500(案件数(件))× 価格 18(1 件あたり売上(万円))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。微減
倍率:PER 7.0 倍。利益が小さく ROE は 2% 以下。構造的な負けに近づく筋書きなので、上限の 7 割を超えて引き上げない。
確率:過去 12 年の赤字の履歴から見て、この水準が起こりやすい筋書き。27% と厚く置いた。
悲観 15% 悲観:ディスプレイが崩れ、半導体向けも価格競争で赤字が続く 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 177 円14 億円
ディスプレイ向けは客先の国内液晶の縮小で半減し、半導体向けも中国・台湾との価格競争と設備の陳腐化で伸びない。稼働率が落ち、営業赤字が常態になる。
純損失は 1〜2 億円。現金は設備の更新と損失の穴埋めで減り、配当は無期限で止まる。減損も出て、自己資本は今より減る。
株価は稼ぐ力ではなく、純現金の一部と政策保有株という資産の価値で測られる。構造的に収益力を失った受託加工の姿である。
設備の稼働率が落ち、固定費の重さが赤字を深くする。金成か赤穂の工場の集約や休止の費用が一度に出る。配当は無期限で止まり、自己資本は減損で今より 1 割ほど減る。
- ディスプレイ向け:数量 140(処理枚数(万枚))× 価格 1,000(1 枚あたり加工単価(円))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。数量は半減
- 半導体・電子部品向け:数量 55.0(処理枚数換算(万枚))× 価格 3,500(1 枚あたり加工単価(円))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。価格競争で伸びない
- その他(応用製品・賃貸ほか):数量 7,500(案件数(件))× 価格 17(1 件あたり売上(万円))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。縮む
倍率:PBR 0.14 倍を今の自己資本に掛けた約 14 億円。赤字で稼ぐ力はなく、床は純現金の一部と政策保有株の税後に近い。
確率:構造的に負ける筋書き。客先の偏りと価格競争が重なり、赤字が常態化する。過去 12 年の実績から 15% と重めに置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ディスプレイ向け
自動車などに載る液晶向けの透明導電膜などの成膜加工。ジャパンディスプレイとシャープ系が主な客先。
| 数量処理枚数(万枚) | 価格1 枚あたり加工単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 286 | 1,000 | 29 | 1 |
| 10 年後 中立 | 257 | 1,100 | 28 | 1 |
取り方:有報の販売実績 28.55 億円(前期比 16.5% 増)。処理枚数 285.5 万枚、単価 1 千円は推定(枚数は非開示)。営業利益は単一セグメントのため製品別に割り振る推定で、利益率 4% と置いた。
半導体・電子部品向け
ウエハ加工(成膜・フォトリソ・エッチング)と電子部品の薄膜。AI 向けの半導体投資で伸びている。
| 数量処理枚数換算(万枚) | 価格1 枚あたり加工単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 62.5 | 3,000 | 19 | 2 |
| 10 年後 中立 | 94.0 | 3,750 | 35 | 2 |
取り方:有報の販売実績 18.76 億円(前期比 31.9% 増)。処理枚数換算 62.5 万枚、単価 3 千円は推定。利益率は高付加価値のため 8.5% と置いた(製品別の利益は非開示の推定)。
その他(応用製品・賃貸ほか)
反射防止膜、透明ヒーター、薄膜熱電対、受託サービス、東京の賃貸用施設など。
| 数量案件数(件) | 価格1 件あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9,000 | 14 | 13 | 1 |
| 10 年後 中立 | 9,000 | 19 | 17 | 1 |
取り方:有報の販売実績 12.77 億円(前期比 9.3% 減)。案件数は会社の説明にある年間 9,000 件超を使い、1 件 14.2 万円は割り戻した推定。利益率 4.7% は全社から逆算した推定。
リスクと懸念
山谷の振れ幅
12 年のうち 9 期が営業赤字で、2020 年 3 月期は利益率マイナス 22%。半導体・ディスプレイは数年ごとに好不況が入れ替わる。直近の黒字が続く保証はなく、谷では赤字に直行する。
客先の偏りと入れ替わり
ジャパンディスプレイ 16.9%、シャープ系 11.9%。前期はジャパンディスプレイが 6.0%、シャープが 19.5% だった。1 社の受注減が稼働率を直撃する。
中国・台湾との価格競争
有報が挙げるリスクで、ディスプレイ向けは価格が物価に届かず下がりうる。国内の液晶需要の縮みも重なる。
原材料と電力代
主原料のインジウムは国際価格で動き、真空装置と乾燥は電力を多く使う。値上がりを客先に転嫁しきれないと、利益が削られる。
無配と現金の戻り
利益剰余金がマイナスで、次期も無配の見込み。現金があっても株主に戻る道が遠く、余った現金の戻り方を 0.5 としても楽観できない。
減損と設備投資
次期の設備投資は計 8 億円で、資金は借入金。投資が期待のキャッシュを生まなければ、減損が出る。過去にも金成テクノセンターの休止の例がある。
今後の分かれ目
- 半導体・電子部品向けの売上が 2 年続けて 30 億円を超える
- 受託の定着と見て、中立の数量を上方に直す。谷の深さも確かめる。
- 次の景気後退でも営業黒字を保つ
- 山谷の振れ幅が縮んだと見て、k の循環の上乗せを下げ、中立の利益率を上げる。
- ジャパンディスプレイ向けが 2 年以内に半減する
- 客先の偏りが顕在化したとして、やや悲観・悲観に重みを寄せる。
- 配当可能原資が整い、配当や自社株買いが再開される
- 余った現金の戻り方を 0.5 から 0.75 に引き上げる。価値は 3〜4 億円ほど上がる。
- 買収提案や大株主の動きが出る
- 時価総額が自己資本の 7 割弱のため、価格の上振れ余地はある。買い手の条件を確かめる。
見ておくもの
- 半導体・電子部品向けとディスプレイ向けの売上の推移
- 営業利益率(山で 8% 超、谷で赤字の振れ)
- ジャパンディスプレイ・シャープ系向けの比率
- 純現金と設備投資後の借入金
- 配当可能原資の回復と無配の解消
- インジウム価格と電力代
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。ROE が k 未満(中立で 2〜3% 台)なので PER の上限は 1÷k の約 10.5 倍で、中立はその 7 割。今の株価や過去の PER は使っていない。今の PER は今期の利益見込みを前提に 13 倍台だが、中立は山谷を通した平均の利益(営業利益率 4.5%)で置いたため差が出る。山の年の利益を倍率の土台にしていない。新リース会計基準は工場が自社保有のため影響は小さいとみて、10 年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.4→11.11 倍・やや楽観 PER 7.8→11.11 倍・中立 PER 7.2→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +2.0% を足して 9.5%。山谷は k の循環と筋書きの谷で扱い、確率で重ねて引かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 9.00%。