結論
アクセルは、パチンコ・パチスロ機の画面を動かす画像用のLSIを設計する、ファブレスの小さな半導体会社だ。売上の9割以上が遊技機向けで、売上は147億円、営業利益は17億円である。2026年9月には今期の営業利益予想を12億円から23億円へほぼ倍にした。筆者の結論は割高である。ただし理由は、事業の悪さではなく、細る市場に対して株価が先に走ったことにある。
増額の中身を見ると、遊技機の新台が売れたことと、メモリ価格の高騰を受けた販売価格の引き上げが効いている。後者は市況によるもので、10年続く力とは言いにくい。
市場の骨格は変わっていない。パチンコの設置台数は4年で約233万台から187万台へ減った。遊技機メーカーという少数の顧客に頼る構造も変わらない。
一方で、純現金が57億円あり、自己資本比率は84%と厚い。配当性向50%の方針で還元も続いている。この現金の価値は、事業の価値とは別に足して見ている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10年後も、この事業は今より強いか」を問う。遊技機は、人口の減少と規制のなかで、長く縮んできた市場だ。アクセルはその中で利益を保ってきたが、市場そのものが10年後に大きくなるとは考えにくい。事業の見通しは、一般の半導体と比べて予測しにくい。
オーナー利益、つまり株主に残る利益は、設備投資がほとんど要らないので、純利益にほぼ等しい。この点は評価できる。ただし、利益の水準そのものが、メモリ価格の高騰という市況で押し上げられている部分がある。
経営の資本配分は、配当性向50%と自社株買いを続けており、株主に好意的だ。一方でAI事業の赤字が続いており、研究開発が成果に結びつくかは見えない。
安全域は、手元の現金にある。ただ、事業の稼ぐ力は資本コストを下回るので、現金以外に厚い余裕はない。払う値段は、現金と事業を分けて確かめたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心はLSI事業で、売上の94%(138億円)を占める。パチンコ・パチスロ機の液晶画面と音を動かすグラフィックスLSIを設計し、製造は外部に任せる。遊技機メーカーが機種ごとに採用し、1機種あたりの採用数が売上になる。加えて、LSIと組み合わせて使うメモリモジュールも売る。メモリは使い回し(リユース)の比率で販売個数が変わり、価格の高騰で売値も上がっている。
もう1本はAI事業で、売上は9億円ほどと小さい。画像認識などのAIの開発キット(ailia SDK)や、組み込み機器向けの受託開発が中心である。研究開発の負担が重く、損失が続いている。
利益の構造は偏っている。LSI事業のセグメント利益は26億円で、AI事業の損失と全社の費用(推定で合計9億円)を引くと営業利益17億円になる。工場を持たないので、償却費や設備投資はほとんど要らない。代わりに、製造を頼むウエハーの前払いと在庫に運転資金がかかる。
2026年3月期から、セグメントの名前が「LSI開発販売」「新規事業」から「LSI事業」「AI事業」に変わった。中身は同じである。
優良さと弱いところ
堀は、遊技機メーカーとの長い取引関係と、機種ごとに作り込む画像処理の技術にある。一度採用されると、次の機種でも同じ仕様の流れで使われやすい。ただし顧客は数が限られ、部品の値段を下げさせる力は強い。堀は広くない。
利益率は高い時と低い時の差が大きい。2024年3月期の営業利益率は14%だったが、2019年3月期は-33%の営業赤字を出した。遊技機の規則が変わると、入れ替えが止まり、LSIの注文が一気に消えるためだ。
財務は非常に厚い。自己資本比率は84%で、純現金は57億円ある。借金で行き詰まることはない。ただし、現金は稼ぐ力ではなく、積み上がった蓄えだ。資本の使い方は、配当性向50%と自社株買いの実施で、株主を意識している。
経営の課題は、遊技機に頼る構造から抜け出せていない点だ。AI事業に数年にわたって投資してきたが、まだ黒字になっていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
遊技機市場は、人口と遊技人口の減少で長く細っている。パチンコの設置台数は2021年の約233万台から2025年の約187万台に減った。パチスロは約136万台で横ばいである。ホールの数も減り、入れ替え需要が細る方向は変わらない。
新台の販売は2025年に約153万台と前年並みで、パチンコが増え、パチスロが減った。スマート遊技機(スマパチ・スマスロ)は、スマスロが好調な一方、スマパチは導入が伸び悩む。アクセルは今期の新台販売の前提を135万台から145万台に引き上げた。
競争の面では、遊技機メーカーが汎用の画像チップに切り替える手もあり、アクセルは専用品の性能と納期で戦う。メモリの高騰は、遊技機メーカーのコスト圧力を強める。遊技機の入れ替え需要は、ホールの収益と新機種の人気に左右され、メーカーの開発も景気に敏感である。同社はこれをメモリのリユースと価格の適正化で乗り切ろうとしている。
規則の変更は、いつでも需要を止めうる。業界は国の規則と警察の指導に左右される。この点は、他の半導体メーカーにない固有のリスクだ。工場を持たない設計専業なので、設備の償却に追われないのは利点だが、需要が止まると売上が急に落ちる点は変わらない。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向50%を基本とする。2027年3月期の予想配当は前の予想のほぼ倍に引き上げられ、性向は50%である。2025年6月には自己株式の取得も決めており、株主に利益を返す姿勢は明確だ。
純現金は57億円で、時価総額の約3割に当たる。ただし、ファブレスの事業では、ウエハーの前払いと在庫に運転資金が要る。この分を除いた約40億円を、事業に要らない余った現金として別に見ている。過去の還元実績があるので、戻り方は1.0とした。
買収や出資は、AI事業を広げるために小さく行ってきた(過去の報告書では子会社のaimRage、axなど)。大型の買収はなく、成功しているとは言えない。新しい事業への投資は、黒字化まで続く恐れがある。
kabufuの推計では、10年以内に買収の対象になる確率は19%と、高めに出る。時価総額が小さく、現金が厚い点が、買い手に魅力に映りうる。ただし本分析は、買収の上乗せを価値に入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
遊技機の入れ替え需要は、足元で戻っている。新台販売は2025年に約153万台と前年並みを保ち、会社は今期の前提を145万台に引き上げた。LSIの販売数は当初の31万個から35万個に増えている。
メモリ価格が高騰する局面でも、アクセルは販売価格の適正化で、1個あたりの粗利を守った。顧客に値段を転嫁できる力があることの証拠だ。これは、価格交渉力が弱いと見られる事業としては前向きな材料である。
AI事業の赤字は縮小し、組み込み機器向けの受託が育てば、黒字化の余地がある。次世代LSIの開発も進めており、性能の向上で単価を引き上げられる。手元の現金は57億円と厚く、配当性向50%に自社株買いが加われば、株主への還元は大きい。10年後の事業が、足元の水準を保つ筋書きは十分に描ける。遊技機は娯楽として根強い需要があり、ホールは人気機種に投資を続ける。新台の販売は、減少が続くという見方に反して、近年は横ばいから微増で推移している。
慎重な見方
今期の利益の増加は、構造の変化ではなく、市況によるところが大きい。メモリ価格の高騰を受けた価格の引き上げは、価格が落ち着けば元に戻る。足元の利益率は、10年続く力を示していない。
遊技機市場は、遊技人口の減少で長く縮んでいる。パチンコの設置台数は4年で約233万台から187万台へ減り、入れ替え需要も同じ方向を向く。遊技機メーカーは少数で、部品の値下げを強く求める。規則の変更が入れば、2019年3月期のように営業赤字へ転じる。
AI事業は数年にわたって投資してきたが、まだ黒字化していない。売上は9億円と小さく、損失は全社の利益を削っている。
現金が厚いことは安心材料だが、事業の稼ぐ力に対しては、株価はすでに高い。純現金を除いた事業の価値は、時価総額の約7割に過ぎず、その事業が細る市場に置かれている。メモリ高騰による上振れが剥がれ、規則の変更に備えるべき会社に、成長企業の値段をつける理由はない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、足元の需要の戻りと価格転嫁の実績を持つが、利益の上振れが市況によるもので、市場が細る構造は変わらない点で、慎重な見方が重い。確率は中立を最も厚く置き、規則の変更による急落の実績を踏まえて悲観を厚くした。やや悲観と悲観を合わせて4割弱とし、楽観は1割未満にとどめた。足元の好調は材料として認めるが、10年の長さで見れば、市場が細る流れを超える力は小さいと判断した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,765 円190 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 540 円58 億円)。 今の値に割り戻すと 1,118 円121 億円、今との差 −33.8%、 期待の年率 +3.2%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,764 円406 億円 | 927 円100 億円 | +177.7% | +10.8% | 375 円40 億円 |
| やや楽観 | 21% | 2,594 円280 億円 | 788 円85 億円 | +100.2% | +7.2% | 710 円77 億円 |
| 中立 | 33% | 2,068 円223 億円 | 603 円65 億円 | +58.1% | +4.7% | 881 円95 億円 |
| やや悲観 | 24% | 714 円77 億円 | 371 円40 億円 | −35.8% | −4.3% | 260 円28 億円 |
| 悲観 | 14% | 466 円50 億円 | 93 円10 億円 | −66.9% | −10.5% | 78 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,765 円190 億円 | 540 円58 億円 | +36.5% | +3.2% | 2,305 円249 億円 |
今の株価時価総額 1,689 円182 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 遊技機の更新が続き、次世代LSIで単価も上がる 利益 27 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 3,764 円406 億円
規制の見直しで遊技機の入れ替えが活発になり、新台販売は年150万台前後を保つ。アクセルは次世代の画像LSIで性能の差をつけ、1台あたりの単価を物価以上に引き上げる。メモリ価格が落ち着いた後も、LSIの粗利単価は下がらない。AI事業は組み込み機器向けの受託とSDKの使用料が積み上がり、小さいながら黒字になる。全社費用は物価で増えるが、売上の増加で吸収できる。顧客の遊技機メーカーとの関係も深まり、採用機種の数が増える。営業利益は30億円台に乗り、利益率は過去の山に近い水準になる。還元は配当性向50%に自社株買いが加わり、手元の余裕が株主に回る。
- LSI事業(遊技機向け画像LSI・メモリモジュール):数量 150(遊技機の新台販売台数(万台・実質))× 価格 1.43(1 万台あたりのLSI事業の売上(億円)=LSIの搭載率 × 1 台あたりの単価(名目))→ 売上 214 億円・営業利益 43 億円。新台販売 150 万台 × 1 台あたりの売上 1.45 倍、セグメント利益率 20%
- AI事業(組み込みAI・SDK):数量 40.0(受託・ライセンス案件数(件・推定))× 価格 0.75(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 3 億円。案件 40 件 × 1 件あたり 1.74 倍、利益率 10%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.6% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 13.83 倍、時価総額 399 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:遊技機の新台販売が減らずに保たれ、メモリ価格の高騰が一巡した後も、次世代LSIの高単価が続く必要がある。さらにAI事業が黒字に転じるという条件も重なり、確率は低く置いた。
やや楽観 21% 遊技機は横ばい、次世代LSIで単価を保つ 利益 17 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 2,594 円280 億円
遊技機の新台販売は年130万台前後で横ばいに近く、ホールの減少を入れ替え需要が補う。アクセルは主要顧客に次世代LSIを納め、単価は物価並みに上げる。メモリ価格の高騰はいずれ落ち着くが、価格適正化の枠組みで粗利単価は守る。AI事業は案件が増えるが、利益はほぼ均衡にとどまる。全社費用の増加は価格の上昇でほぼ吸収し、メモリ価格の高騰による上振れは剥がれ落ちるが、営業利益は22億円台になる。配当性向50%の方針は守られ、自己資本は緩やかに積み上がる。事業の大きな変化はなく、遊技機という一つの市場に頼る構造も続くため、評価は今の水準を大きく超えない。
- LSI事業(遊技機向け画像LSI・メモリモジュール):数量 126(遊技機の新台販売台数(万台・実質))× 価格 1.33(1 万台あたりのLSI事業の売上(億円)=LSIの搭載率 × 1 台あたりの単価(名目))→ 売上 168 億円・営業利益 32 億円。新台販売 126 万台 × 1 台あたりの売上 1.35 倍、セグメント利益率 19%
- AI事業(組み込みAI・SDK):数量 30.0(受託・ライセンス案件数(件・推定))× 価格 0.58(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。案件 30 件 × 1 件あたり 1.34 倍、利益率 0%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 12.8 倍、時価総額 254 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年に新台販売の前提が 135 万台から 145 万台に上がり、足元の需要は戻りつつある。メモリ価格の高騰に合わせて販売価格を適正化できた実績もある。この水準が続く筋書きは中立の次に厚く置く。
中立 33% 市場は細り、価格で支えて利益は今並み 利益 12 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 2,068 円223 億円
パチンコの設置台数は2021年の約233万台から2025年の約187万台へ、年5%ずつ減ってきた。パチスロは横ばいで、合計は年2〜3%減る。入れ替え需要も同じ速さで細り、新台販売は10年で2割ほど減って112万台になる。アクセルはシェアを保つが、顧客の遊技機メーカーに強く値段を言える立場ではなく、LSIの単価は物価の1.34倍に届かず1.30倍とした。次世代LSIの付加価値で、減った分の一部を取り戻す。AI事業は赤字が縮む程度にとどまる。全社費用は物価で増える。この結果、営業利益は16億円前後で、足元の水準をやや下回る。メモリ価格の高騰による上振れは剥がれる。
- LSI事業(遊技機向け画像LSI・メモリモジュール):数量 112(遊技機の新台販売台数(万台・実質))× 価格 1.28(1 万台あたりのLSI事業の売上(億円)=LSIの搭載率 × 1 台あたりの単価(名目))→ 売上 143 億円・営業利益 26 億円。新台販売 112 万台 × 1 台あたりの売上 1.30 倍(物価の 1.34 倍に届かない)、セグメント利益率 18%
- AI事業(組み込みAI・SDK):数量 22.0(受託・ライセンス案件数(件・推定))× 価格 0.58(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 −1 億円。案件 22 件 × 1 件あたり 1.34 倍、利益率 -5%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 12.2 倍、時価総額 182 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:遊技人口と設置台数が長く減り続けており、新台販売も緩やかに細る。一方で足元の利益率は 11% 前後で安定している。構造の変化と、足元の安定を合わせた中心の筋書きとして最も厚く置いた。
やや悲観 24% 遊技の縮小が速まり、価格の主導権を失う 利益 5 億円 · PER 6.3 倍 · 株価時価総額 714 円77 億円
ホールの閉店が相次ぎ、遊技機の設置台数は10年で3割減る。新台販売は100万台まで落ち、遊技機メーカーは部品の値下げを強く求める。アクセルの単価は物価に追いつかず、1.15倍にとどまる。メモリ価格の高騰が終わると、リユースの拡大で価格適正化の余地も縮む。AI事業は黒字化せず、小さな赤字が続く。営業利益は5億円台まで落ち、配当性向50%を守っても配当は今の半分以下になる。顧客の絞り込みも進み、一部の遊技機メーカーが撤退や統合に動けば、取引先の数が減って交渉力はさらに落ちる。純現金は配当と運転資金で緩やかに減り、手元の余裕は今ほど厚くなくなる。
- LSI事業(遊技機向け画像LSI・メモリモジュール):数量 100(遊技機の新台販売台数(万台・実質))× 価格 1.13(1 万台あたりのLSI事業の売上(億円)=LSIの搭載率 × 1 台あたりの単価(名目))→ 売上 113 億円・営業利益 16 億円。新台販売 100 万台 × 1 台あたりの売上 1.15 倍、セグメント利益率 14%
- AI事業(組み込みAI・SDK):数量 15.0(受託・ライセンス案件数(件・推定))× 価格 0.43(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 −1 億円。案件 15 件 × 1 件あたり 1.00 倍、利益率 -15%
倍率:ROE 2.8% が k 8.75% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k=10.5 倍。遊技機という単一の業界・少数の顧客に頼り、利益が規制と入れ替え需要で振れるので、上限の 6.0 割の 6.32 倍に置いた。事業の純利益は現金の利息 0.6 億円を除いて測り、余った現金は別に足す。
確率:若年層の遊技離れとホールの減少は十数年続いており、設置台数の減少が加速する筋書きは十分ありうる。スマート遊技機の導入が伸び悩んでいる点も、入れ替え需要の弱さを示す。確率は中立に近い厚みで置く。
悲観 14% 遊技機の規制と客離れで、主力が崩れる 利益 −11 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 466 円50 億円
新しい規則や射幸性の抑制で、遊技機の入れ替えが止まる。新台販売は70万台へ半減し、顧客は部品の価格を下げさせる。アクセルの単価は10年間ほぼ横ばいで、物価分は吸収される。AI事業は規模が育たず、赤字のまま縮小する。会社は費用を絞るが、営業赤字が10億円規模で出る。それでも自己資本比率は80%を超え、倒産することはない。ただし優良な事業としての評価は外れ、AI事業の整理や、他社への売却の話が出る場面も考えられる。価値は、手元の現金と整理できる資産が決める。配当は赤字の間も数年は続けるが、やがて止まる。
- LSI事業(遊技機向け画像LSI・メモリモジュール):数量 70.0(遊技機の新台販売台数(万台・実質))× 価格 0.99(1 万台あたりのLSI事業の売上(億円)=LSIの搭載率 × 1 台あたりの単価(名目))→ 売上 69 億円・営業利益 −4 億円。新台販売 70 万台 × 1 台あたりの売上 1.00 倍、セグメント利益率 -5%
- AI事業(組み込みAI・SDK):数量 10.0(受託・ライセンス案件数(件・推定))× 価格 0.43(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 −1 億円。案件 10 件 × 1 件あたり 1.00 倍、利益率 -25%
倍率:営業赤字で稼ぐ力では測れない構造的な負けの10年。純現金57億円に預り・前受相当の目減りと戻り方0.6を掛けた約34億円に、売掛金・在庫の整理による税引き後約16億円を足した約50億円を床とし、今の自己資本136億円に0.37倍を掛けた。ためた利益には掛けていない。やや悲観より低い。
確率:過去に、規則の変更で遊技機の入れ替えが止まり、2019 年 3 月期に営業利益率が -33% まで落ちた実績がある。単一の業界と少数の顧客に頼る構造は変わっていない。確率は 14% と、同領域の他社よりやや厚く置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
LSI事業(遊技機向け画像LSI・メモリモジュール)
パチンコ・パチスロ機向けのグラフィックスLSIと、組み合わせて使うメモリモジュールを設計・販売する。
| 数量遊技機の新台販売台数(万台・実質) | 価格1 万台あたりのLSI事業の売上(億円)=LSIの搭載率 × 1 台あたりの単価(名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 140 | 0.99 | 138 | 26 |
| 10 年後 中立 | 112 | 1.28 | 143 | 26 |
取り方:新台販売は2025年に約153万台、今期の会社前提は145万台(当初135万台)で、2026/03期は140万台と置いた(推定)。LSI事業の売上137.9億円を割ると、1万台あたり約0.985億円。セグメント利益25.7億円(18.6%)は決算の開示。数量は実質(人口に結びつく成熟需要)、物価は価格に入れる。
AI事業(組み込みAI・SDK)
画像認識のAI開発キットと、組み込み機器向けのAI受託開発。
| 数量受託・ライセンス案件数(件・推定) | 価格1 件あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 0.43 | 9 | −2 |
| 10 年後 中立 | 22.0 | 0.58 | 13 | −1 |
取り方:売上は全社から LSI を引いた約8.6億円。件数20は推定で、1件あたり約0.43億円。営業利益は開示に無く、全社の差し引き(営業利益16.6億円とLSIのセグメント利益25.7億円の差約9億円)を、AI事業の損失約2億円と全社費用約7億円に分けた推定。
リスクと懸念
遊技機の規則変更
遊技機は国の規則と警察の指導で設計が決まる。規則が変わると入れ替えが止まり、LSIの注文が消える。2019年3月期の営業赤字(利益率-33%)は、その時期の遊技機の入れ替えの落ち込みと重なる例で、同じことが再び起こりうる。
遊技人口とホールの減少
パチンコの設置台数は2021年の約233万台から2025年の約187万台に減った。遊技人口の減少が続けば、入れ替え需要も細り、LSIの販売数量が構造的に減る。
少数の顧客への依存
売上の大半は少数の遊技機メーカーに向く。1社の採用方針が変われば、売上が大きく動く。部品の値下げ要求も強く、価格交渉力は弱い。
メモリ価格の変動
今期の上方修正には、メモリ価格の高騰を受けた価格の適正化が含まれる。価格が落ち着けば、この上振れは剥がれる。リユース比率の変動も、販売個数を動かす。
AI事業の赤字継続
AI事業は売上9億円ほどで損失が続く。研究開発の負担が全社の利益を削り、黒字化の見通しは立っていない。成果が出ないまま投資が続く恐れがある。
製造を外部に頼る体制
ウエハーの調達と製造は外部に依存するため、供給の逼迫や価格の上昇、納期の遅れが直接響く。前払いや在庫の増加で、手元の現金が減ることもある。
今後の分かれ目
- 遊技機の新台販売が150万台を超えて続き、LSIの販売数量が計画を上回ったら
- やや楽観・楽観の確率を上げる。ただしメモリ価格の影響を切り分けて確かめる。
- 遊技機の規則の見直しで入れ替えが一時止まったら
- 悲観の筋書きに重みを移し、LSI事業の利益率の前提を下げる。
- メモリ価格が落ち着き、価格適正化の効果が剥がれたら
- 中立の利益率の前提を下方修正する。
- AI事業が黒字化し、受託とSDKの使用料が積み上がったら
- AI事業の利益率の前提を上げ、全社の営業利益を見直す。
- 自社株買いや増配が、純現金の範囲で追加されたら
- 余った現金の戻り方の前提を確かめ、還元の額を上方修正する。
- 他社が買収に動き、TOBが発表されたら
- 買収価格で価値が決まる局面になる。本分析の値は事業の本質価値なので、乖離を確かめる。
見ておくもの
- 遊技機の新台販売台数と設置台数(業界団体・業界紙の集計)
- LSIの販売数量と1個あたりの粗利単価
- メモリ価格とリユース比率
- AI事業の損益
- 配当性向と自社株買いの実施状況
倍率と資本コストの決め方
数量×価格をセグメントごとに積み上げ、ROEと資本コストから倍率を決めた。中立はROE約6%がk 8.75%を下回るので、PERの上限は1÷k(10.5倍)で、利益の質に応じて7.2割の7.6倍に置いた。今のPER(約15倍)や、簿価に近いPBRには寄せていない。今期の上方修正はメモリ価格の高騰による市況の上振れを含むので、10年の利益の置き方には使っていない。余った現金40億円は、時価総額には足し、事業の利息は除いている。悲観の床は、純現金と売れる資産の推定で、過去のPBRの底には依らない。設備は小さく、償却費は利益率にほとんど効かない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.63→13.83 倍・やや楽観 PER 8.42→12.8 倍・中立 PER 7.58→12.2 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。