結論
フェローテックは、半導体の製造装置で使い捨てになる部品と、光通信の温度を保つ部品を作る会社だ。筆者の結論は「やや割高」で、稼ぎは強いが、その稼ぎを得るための投資が重いと見ている。
主力は石英・シリコン・セラミックスなどの装置向け部品で、売上の 6 割強を占める。いま最も伸びているのは、AI データセンターの光トランシーバーに入るサーモモジュールだ。会社は 2026 年 7 月に、今期の営業利益の予想を 380 億円から 600 億円へ引き上げた。決算期を 12 月へ変え、今期は 9 か月の変則決算になる点には注意が要る。
だが、株主の手元に残る利益は見た目より小さい。中国子会社の少数株主への分と税、利払いで、営業利益の 4 割強が消える。今期の純利益の計画は 330 億円で、ROE はなお 1 割台だ。そのうえ、今期から 3 年で 1,600 億円を投じる。借金が先に増える形になる。
装置投資が長く続けば、10 年後の時価総額は今の 3 倍近くにもなりうる。だが中立では、利益率は 1 割台前半に張り付き、10 年後でも今の 1 割増し程度にとどまる。悲観の確率も軽くない。総合では、本質価値が今の時価総額を 2 割ほど下回る。
今の PBR は 1.9 倍、実績の PER は 33 倍。会社計画の達成をかなり織り込んだ値段だ。
バリュー投資の観点から
筆者が見ているのは、この会社が「稼いだお金をどれだけ株主の手元に残すか」だ。
稼ぎは急に増えているが、その分の設備投資も急だ。営業利益が 600 億円という計画でも、親会社の純利益は 330 億円。さらに投資が毎年 500 億円規模で続くため、株主が自由に使える利益は小さい。ROE が 1 割台にとどまる計画は、会社自身が認めている。
堀は一部にしかない。サーモモジュールのように、認定を受けた顧客の中で強い部門はある。しかし売上の過半を占める部品は、交換されて初めて稼ぐ消耗品で、他社との価格比較が常につきまとう。10 年後も強いと言い切れるのは、全体の 3 割ほどだ。
経営の資本配分は、これから試される。大きな投資を先に打ち、利益を後から追わせる型を続けてきた。還元を増やし、資産を売って財務を整える姿勢は評価できる。だが、投資の回収が見えるまでは、割り引いて見るべきだ。
安全域は、いまの値段にはない。計画どおりに進んでも、10 年で本質価値は今の時価総額を大きく超えない。
何で稼ぐ会社か
フェローテックは、半導体の製造装置の中で使い捨てになる部品と、光通信の温度を保つ部品を作る会社だ。稼ぎの柱は四つある。
最大は半導体等装置関連で、売上の 6 割強を占める。石英・シリコン・セラミックス・SiC の部品、金属の加工、部品の洗浄、そして磁性流体を使った真空シールが中身だ。納め先は、エッチングや成膜の装置を作る日米欧と中国のメーカーである。部品は削れたり汚れたりして定期的に交換されるため、装置が売れた後も注文が続く。
次が電子デバイスで、売上の約 2 割。主力は光トランシーバー用のサーモモジュールだ。光の信号を出すレーザーは温度が狂うと波長がずれる。それを一定に保つ小さな冷却部品である。会社は大手メーカーの中での自社シェアを約 7 割と推計している。AI データセンターの増設で、いま最も勢いがある。
車載関連は約 1 割。EV やハイブリッド車のパワー半導体を載せる基板が中心で、中国の EV 市況に振れる。残る約 6% のその他には、再生ウエーハなどが入る。このうち再生ウエーハは、2026 年 7 月以降に持分法の会社へ移る予定だ。
生産の軸足は中国にある。中国の半導体メーカーの近くに工場を置くことで成長してきた。いまはそれに加え、米国の顧客が求める「中国外の生産」に応えるため、マレーシアに大型の工場を立ち上げている。
優良さと弱いところ
堀は「ある」が、深さは部門ごとに違う。
サーモモジュールは強い。温度センサの素子までセットで売り、製造の自動化で人手の工程を減らしている。光トランシーバーの大手メーカーに認定されると、他社へ切り替えるには試験のやり直しが要る。ただし中国には低価格で追う新興メーカーがおり、堀は広がるより守るものに近い。
装置向けの部品は、堀が薄い。石英やシリコンの部品は、韓国のメーカーや装置大手の自社グループ、日本の石英大手とも競う。顧客は装置メーカーなので値下げ要求が強く、部品の売上が伸びても営業利益率は 1 割に届かない年が続いた。12 年間の営業利益率は 7〜10% 台が多く、16〜17% は 2022〜2023 年の 2 年だけだ。
資本の効率が最も気になる。ROE は 2022/03 期の 20% から、2026/03 期は 5.8% まで下がった。大きな設備投資が先に走り、稼ぎが後から付いてくる型だからだ。営業利益に対する純利益の割合も低く、中国子会社の少数株主に流れる分と税で、営業利益の 4 割強が親会社の手元に残らない。
財務は軽くない。純有利子負債は 884 億円、自己資本比率は 37.6%。今期は 650 億円の投資を予定している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の半導体装置投資は、AI を背景に今まさに伸びている。
装置市場(WFE)は 2025 年に 1,170 億ドル前後。2027 年には 1,500 億ドルを超え、2028 年は 2,200 億ドル規模という予想も出ている。会社の 2026/12 期の計画(9 か月)が、売上 3,800 億円・営業利益 600 億円に引き上げられたのも、この波に乗ったものだ。
部品は装置の売上と、すでに稼働している装置の台数の両方で動く。装置が増えれば交換部品も増える。このため、新規の装置投資が一服しても、部品の売上は装置ほどは落ちない。ただし市況が悪い年は大きく落ちる。2013 年 3 月期は営業赤字、2020 年 3 月期は営業利益が 3 割減った。
競争の構図は二つある。装置向けの部品では、石英や SiC で日本・韓国・欧州の専業が競い、中国国内でも国産メーカーが育っている。中国政府の国産化策は、フェローテックにとって追い風にも向かい風にもなる。中国に工場を持つ点は強みだが、現地の顧客自身が調達を内製化すれば奪われる。
光トランシーバー用のサーモモジュールは、AI データの通信が 800G から 1.6T へ進むほど 1 台あたりの数が増える。世界の市場は 11 億ドル前後と推定され、会社の見立てでも 3 分の 1 強を握る。一方で中国の新興メーカーが追い、光電融合のような温調の要らない設計が出てくる恐れもある。
車載は、中国の EV の価格競争で基板の値が下がり、いまは調整局面にある。
資本政策と M&A
資本の使い方は、いま大きな分かれ目にある。
稼いだ以上に投資してきた。2026/12 期は 650 億円、2027/12 期は 550 億円、2028/12 期は 400 億円を使う計画だ。マレーシアの新工場とセラミックスの増産が中心で、3 年間の投資額を約 350 億円増やした。その結果、純有利子負債が膨らんでいる。
その一方で、還元は厚くなった。配当は DOE(株主資本配当率)の下限 3.5% を掲げ、総還元性向 5 割を目指す。2026/12 期は特別配当を加えた増配を予定している。2028/12 期までに 250 億円を上限に自社株買いも行う。
グループの資産の売却 500 億円も進める。再生ウエーハの会社は持分法へ移る。自己資本比率は今期中に 40% へ戻す考えだ。
M&A は、会社は新工場とあわせて検討していると話すが、大型の案件はまだない。kabufu の推定では、10 年以内に買収される確率は 15% ほどある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
光通信と半導体の部材という、10 年続く需要の真ん中にいる。サーモモジュールは大手メーカーの 7 割を握り、AI データセンターの 1.6T 化で 1 台あたりの数がさらに増える。装置向けの部品は、顧客が装置を増やせば交換部品も増える。中国の国産化と、米国が求める中国外の生産の両方に対応できる工場網を持つのは、この会社の強みだ。
2026 年 7 月に今期の営業利益予想を 380 億円から 600 億円へ引き上げ、ほぼ同時に中計の目標も前倒しになった。投資は 2027/12 期の 550 億円、2028/12 期の 400 億円と山を越えていく。稼働が上がれば、減価償却の重さは薄れ、営業利益率は過去の最高(17%)を超えうる。
財務も整う。資産の売却 500 億円と自社株買い 250 億円を同時に進められるのは、利益の見通しが太い証拠だ。総還元性向 5 割の約束は、株主への自信の表れでもある。10 年の長い需要の伸びを素直に延ばせば、時価総額が今の 2〜3 倍になっても不思議ではない。
慎重な見方
稼ぎの質が低い。営業利益 600 億円という計画でも、親会社の純利益は 330 億円。中国子会社の少数株主と税、利払いが、営業利益の 4 割強を持っていく。ROE は 1 割台で、資本コストを大きく超えない。ここに今の値段が乗っている。
部品は消耗品で、装置メーカーの値下げ要求が強い。営業利益率が 15% を超えた年は 2022 年と 2023 年だけで、すぐに 10% を割った。マレーシアの新工場は、立ち上げの費用が先に出る。設備投資は 3 年で 1,600 億円。利益より先に借金が増えている。
中国の国産化は、味方にも敵にもなる。現地の顧客が部品を内製すれば、フェローテックは主要顧客を失う。サーモモジュールにも新興メーカーが入り、光電融合のような温調の要らない設計も出てくる。いまの勢いは、AI 投資の一つの局面に過ぎない。
半導体の装置は、過去の調整のたびに、この会社の利益を削った。2013 年 3 月期は営業赤字、2020 年 3 月期は営業利益が 3 割減った。今回は拡張の真っ最中に調整が来ると、傷が深い。
どちらに重みを置いたか
勢いは強気の見方が上、稼ぎの質と投資の重さは慎重な見方が上。値段の面では、後者の指摘が重い。計画がうまくいっても ROE は 1 割台にとどまり、中立の 10 年後の時価総額は今の 1 割強増える程度にしかならない。総合の本質価値は、今の時価総額を 2 割ほど下回る。確率は、AI 需要が長く続く可能性を認めて楽観側にも 3 割以上を残しつつ、投資が重いこの時期に調整が来る危険を、悲観側に 3 割強で置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 16,361 円8,817 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 4,318 円2,327 億円)。 今の値に割り戻すと 10,517 円5,668 億円、今との差 +32.6%、 期待の年率 +10.1%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 42,689 円2.30 兆円 | 7,979 円4,300 億円 | +538.9% | +20.4% | 5,067 円2,731 億円 |
| やや楽観 | 20% | 29,743 円1.60 兆円 | 6,123 円3,300 億円 | +352.3% | +16.3% | 7,173 円3,866 億円 |
| 中立 | 32% | 16,737 円9,020 億円 | 4,824 円2,600 億円 | +171.9% | +10.5% | 6,900 円3,718 億円 |
| やや悲観 | 23% | 3,135 円1,690 億円 | 2,783 円1,500 億円 | −25.4% | −2.9% | 1,361 円734 億円 |
| 悲観 | 15% | 445 円240 億円 | 742 円400 億円 | −85.0% | −17.3% | 178 円96 億円 |
| 加重平均 | 100% | 16,361 円8,817 億円 | 4,318 円2,327 億円 | +160.8% | +10.1% | 20,679 円1.11 兆円 |
今の株価時価総額 7,930 円4,274 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 光と半導体の裏方として、世界の主要な部材会社に 利益 1,169 億円 · PER 19.7 倍 · 株価時価総額 42,689 円2.30 兆円
AI の計算基盤が 10 年にわたり伸び、世界の装置投資は今の約 2.5 倍の規模(実質)になる。フェローテックは、石英・シリコン・セラミックス・SiC の部品を、日米欧の装置メーカー向けにはマレーシアから、中国向けには現地の工場から出し、世界の部材会社の上位に定着する。装置関連の売上は 6,500 億円を超え、営業利益率は 17% に乗る。
サーモモジュールは光トランシーバーの高速化で 1 台あたりの数が増え、市場の 35% を保って売上 2,300 億円になる。車載も電動車の普及で 1,300 億円まで伸びる。
投資が回収に入り、借金は返され、総還元性向 5 割の還元が続く。10 年で自己資本は 2 倍超になり、ROE は 20% 前後に戻る。
- 半導体等装置関連(部品・真空シール):数量 2,537(世界の半導体製造装置(WFE)市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 2.58(WFE 市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 6,556 億円・営業利益 1,115 億円。WFE 実質 2,537 億ドル、価格は今の 1.68 倍、営業利益率 17.0%
- 電子デバイス(サーモモジュール):数量 33.0(世界のサーモモジュール市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 70(市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 2,322 億円・営業利益 627 億円。サーモモジュール市場 33 億ドル、価格は今の 1.33 倍、営業利益率 27.0%
- 車載関連(パワー半導体基板):数量 60.0(世界の電動車(EV・PHEV)の生産台数(百万台))× 価格 2,142(電動車 1 台あたりのフェローテックの売上(円・名目))→ 売上 1,285 億円・営業利益 154 億円。電動車 60 百万台、価格は今の 1.54 倍、営業利益率 12.0%
- その他(再生ウエーハ等):数量 150(世界のシリコンウエーハ出荷面積(億平方インチ・実質))× 価格 0.67(ウエーハ 1 平方インチあたりのフェローテックの売上(円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 0 億円。ウエーハ 150 億平方インチ、価格は今の 0.49 倍、営業利益率 0.0%
倍率:事業の純利益 1,169 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.7 倍。全体の PER 19.68 倍、時価総額 23,006 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10 年にわたり、装置・光通信・電動車の三つが同時に伸び、中国勢にも負けないという厳しい前提が必要。会社の長期ビジョン(2030 年に売上 5,000 億円)を上回るので 10% に置いた。
やや楽観 20% 部材と温調の両輪で、売上は 8,500 億円規模に 利益 859 億円 · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 29,743 円1.60 兆円
装置投資は 10 年で約 2.2 倍(実質)になる。フェローテックは部品の売上を 5,300 億円まで伸ばし、営業利益率は 15% 台を保つ。中国では現地メーカーとの競争が続くが、日米欧の顧客の中国外の生産に応えることで、シェアを少し上げる。
電子デバイスはサーモモジュールが 2,000 億円に伸びる。中国の新興メーカーに一部を取られ、シェアは 33% に下がるが、市場の伸びがそれを補う。車載は 1,100 億円で、利益率は 10%。
営業利益は 1,400 億円弱。10 年かけて借金を返し、自己資本は 4,800 億円ほどに厚くなる。会社の長期ビジョンを少し上回る、よくできた 10 年になる。
- 半導体等装置関連(部品・真空シール):数量 2,239(世界の半導体製造装置(WFE)市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 2.38(WFE 市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 5,322 億円・営業利益 825 億円。WFE 実質 2,239 億ドル、価格は今の 1.54 倍、営業利益率 15.5%
- 電子デバイス(サーモモジュール):数量 30.0(世界のサーモモジュール市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 66(市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 1,989 億円・営業利益 497 億円。サーモモジュール市場 30 億ドル、価格は今の 1.26 倍、営業利益率 25.0%
- 車載関連(パワー半導体基板):数量 55.0(世界の電動車(EV・PHEV)の生産台数(百万台))× 価格 2,012(電動車 1 台あたりのフェローテックの売上(円・名目))→ 売上 1,107 億円・営業利益 111 億円。電動車 55 百万台、価格は今の 1.45 倍、営業利益率 10.0%
- その他(再生ウエーハ等):数量 150(世界のシリコンウエーハ出荷面積(億平方インチ・実質))× 価格 0.67(ウエーハ 1 平方インチあたりのフェローテックの売上(円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 0 億円。ウエーハ 150 億平方インチ、価格は今の 0.49 倍、営業利益率 0.0%
倍率:事業の純利益 859 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.7 倍。全体の PER 18.66 倍、時価総額 16,029 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:長期ビジョンに近い展開。装置と光通信の需要が続くことを素直に延ばした形で、ここまでは十分ありうる。
中立 32% 伸びるが、利益率は 1 割台前半に張り付く 利益 550 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 16,737 円9,020 億円
装置投資は 10 年で約 1.6 倍(実質)に伸びる。フェローテックの部品の売上は 4,400 億円で、シェアは中国外の工場の分だけ少し上がる。ただし部材は顧客の値下げ要求が強く、営業利益率は 12% 止まりになる。
サーモモジュールは市場が 2.5 倍に育つ一方、中国の新興メーカーが入り、シェアは 28% まで下がる。売上は 1,700 億円。車載は 700 億円台だが、利益率は 8% と薄い。
営業利益は 917 億円。親会社の純利益は 550 億円で、少数株主の持分が大きい構造は変わらない。10 年で自己資本は 4,200 億円。会社の計画は達成するが、中国市場の競争と投資の重さが、高い ROE を許さない。
- 半導体等装置関連(部品・真空シール):数量 1,940(世界の半導体製造装置(WFE)市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 2.27(WFE 市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 4,412 億円・営業利益 529 億円。WFE 実質 1,940 億ドル、価格は今の 1.47 倍、営業利益率 12.0%
- 電子デバイス(サーモモジュール):数量 28.0(世界のサーモモジュール市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 60(市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 1,688 億円・営業利益 371 億円。サーモモジュール市場 28 億ドル、価格は今の 1.14 倍、営業利益率 22.0%
- 車載関連(パワー半導体基板):数量 48.0(世界の電動車(EV・PHEV)の生産台数(百万台))× 価格 1,490(電動車 1 台あたりのフェローテックの売上(円・名目))→ 売上 715 億円・営業利益 57 億円。電動車 48 百万台、価格は今の 1.07 倍、営業利益率 8.0%
- その他(再生ウエーハ等):数量 135(世界のシリコンウエーハ出荷面積(億平方インチ・実質))× 価格 0.67(ウエーハ 1 平方インチあたりのフェローテックの売上(円・名目))→ 売上 90 億円・営業利益 0 億円。ウエーハ 135 億平方インチ、価格は今の 0.49 倍、営業利益率 0.0%
倍率:事業の純利益 550 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍。全体の PER 16.4 倍、時価総額 9,020 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の長期ビジョンには届かず、「伸びるが儲かりにくい部材屋」として落ち着くのが最も自然と見る。
やや悲観 23% 競争に押され、利益率が 1 桁に落ちる 利益 247 億円 · PER 6.8 倍 · 株価時価総額 3,135 円1,690 億円
装置投資の伸びは 10 年で 4 割増(実質)にとどまり、フェローテックの部品の売上は 2,900 億円。中国の装置メーカーが部品の内製化と国産調達を進め、日本製の部材は価格で押される。営業利益率は 9% に落ちる。
サーモモジュールは中国の新興メーカーが光トランシーバー向けに入り込み、シェアは 28% に下がる。光トランシーバー自体が、温調の要らない設計(光電融合)へ変わる兆しもあり、売上は 1,100 億円にとどまる。車載は価格競争で、ほぼ利益が出ない。
営業利益は 430 億円ほど。大型投資が稼ぎを生まないまま償却だけが続き、ROE は 7% を下回る。
- 半導体等装置関連(部品・真空シール):数量 1,418(世界の半導体製造装置(WFE)市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 2.07(WFE 市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 2,931 億円・営業利益 264 億円。WFE 実質 1,418 億ドル、価格は今の 1.34 倍、営業利益率 9.0%
- 電子デバイス(サーモモジュール):数量 20.0(世界のサーモモジュール市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 56(市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 1,126 億円・営業利益 180 億円。サーモモジュール市場 20 億ドル、価格は今の 1.07 倍、営業利益率 16.0%
- 車載関連(パワー半導体基板):数量 40.0(世界の電動車(EV・PHEV)の生産台数(百万台))× 価格 1,490(電動車 1 台あたりのフェローテックの売上(円・名目))→ 売上 596 億円・営業利益 18 億円。電動車 40 百万台、価格は今の 1.07 倍、営業利益率 3.0%
- その他(再生ウエーハ等):数量 120(世界のシリコンウエーハ出荷面積(億平方インチ・実質))× 価格 0.67(ウエーハ 1 平方インチあたりのフェローテックの売上(円・名目))→ 売上 80 億円・営業利益 −2 億円。ウエーハ 120 億平方インチ、価格は今の 0.49 倍、営業利益率 -2.0%
倍率:ROE 6.9% が k 8% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER は 1÷k=10.5 倍。競争に押されてROEが7%と資本コストを下回り、自己資本が厚くても利益は増えないので、PBRでなく稼ぐ力から出し、上限の 6.5 割の 6.8 倍に置いた。
確率:部材は他社のまねが効きやすい。中国の拠点の比重が大きい構造は、10 年のうちに現地メーカーと正面からぶつかることを意味するので、重めに置いた。
悲観 15% 中国の国産化と光通信の設計変更で、優位が崩れる 利益 −47 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 445 円240 億円
中国政府の国産化策が実り、現地の装置メーカーが部品を自社グループで調達する。フェローテックの部品は価格だけが争点になり、売上は 1,900 億円のまま増えない。営業利益はほぼゼロになる。
サーモモジュールは光トランシーバーの設計が変わり、温調部品が要らなくなる、または 1 個あたりの値段が大きく下がる。シェアは 25% 台に落ち、売上は 600 億円止まり。車載は赤字が続く。
10 年にわたる設備投資の償却と減損で、自己資本は 2,400 億円に縮む。投資は止まり、配当は DOE の下限だけになり、それも資産の売却代金で賄う。もう「成長する部材会社」とは見られなくなる。
- 半導体等装置関連(部品・真空シール):数量 1,119(世界の半導体製造装置(WFE)市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 1.65(WFE 市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 1,851 億円・営業利益 37 億円。WFE 実質 1,119 億ドル、価格は今の 1.07 倍、営業利益率 2.0%
- 電子デバイス(サーモモジュール):数量 14.0(世界のサーモモジュール市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 42(市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 591 億円・営業利益 30 億円。サーモモジュール市場 14 億ドル、価格は今の 0.80 倍、営業利益率 5.0%
- 車載関連(パワー半導体基板):数量 30.0(世界の電動車(EV・PHEV)の生産台数(百万台))× 価格 1,118(電動車 1 台あたりのフェローテックの売上(円・名目))→ 売上 335 億円・営業利益 −10 億円。電動車 30 百万台、価格は今の 0.80 倍、営業利益率 -3.0%
- その他(再生ウエーハ等):数量 105(世界のシリコンウエーハ出荷面積(億平方インチ・実質))× 価格 0.67(ウエーハ 1 平方インチあたりのフェローテックの売上(円・名目))→ 売上 70 億円・営業利益 −4 億円。ウエーハ 105 億平方インチ、価格は今の 0.49 倍、営業利益率 -5.0%
倍率:構造的に優位を失い、純利益は赤字になるので、稼ぐ力(純利益÷k)では測れず、赤字に PER は当てない。純有利子負債884億円を今の値で足したEVで見ても、営業利益がほぼゼロでEV÷営業利益は参考にならない。売れる資産から借金を返したあとに株主へ残る分として、減損後の自己資本2,400億円の1割(240億円)を床とし、倍率にすると0.1倍になる。
確率:構造的に負ける筋書き。中国勢の台頭と、光通信の技術変化という、この会社の稼ぎの二本柱がどちらも揺らぐ事態。重い設備投資を続けているぶん、起きた時の傷は深い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
半導体等装置関連(部品・真空シール)
装置メーカー向けの石英・シリコン・セラミックス・SiC の部品、金属加工、部品洗浄、磁性流体の真空シール。
| 数量世界の半導体製造装置(WFE)市場(億ドル・今の値段で測った実質) | 価格WFE 市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,200 | 1.54 | 1,851 | 160 |
| 10 年後 中立 | 1,940 | 2.27 | 4,412 | 529 |
取り方:2026/03 期の売上 1,851 億円・営業利益 160 億円は会社開示。WFE 市場は 2025 年の 1,170 億ドル前後から 2026/03 期を 1,200 億ドルとし、1,851 億円÷150 円=12.3 億ドルで、市場に対する売上の比は約 1.03%。部品は装置の台数にも連動するため、数量は WFE の実質の市場で置いた(中立は 3 年 1.45 倍・10 年 1.62 倍。業種ノートの 2,600 億ドルを物価 1.34 で割った値)。物価 3% とシェアの動きは価格に入れた。
電子デバイス(サーモモジュール)
光トランシーバーやセンサ向けの温度制御部品(サーモモジュール)。AI データセンター向けが伸びている。
| 数量世界のサーモモジュール市場(億ドル・今の値段で測った実質) | 価格市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.0 | 53 | 580 | 125 |
| 10 年後 中立 | 28.0 | 60 | 1,688 | 371 |
取り方:電子デバイスは売上の約 2 割(約 580 億円)。会社の 2021 年資料の世界シェア約 36%(光通信向けの大手の中では約 7 割という会社推計もある)から、市場を約 11 億ドル、シェア約 35%と置いた。営業利益 125 億円は開示が無く、前期比 27% 増という伸びと他部門の水準からの推定。市場は光トランシーバーの高速化で実質で伸びる(中立は 3 年 1.6 倍・10 年 2.5 倍)。10 年の中立で価格が物価の 1.34 倍に届かず 1.14 倍なのは、中国の新興メーカーの追い上げでシェアが 35% から 28% へ下がるため。
車載関連(パワー半導体基板)
EV・ハイブリッド車のパワー半導体用の基板などを、中国を中心に供給する。
| 数量世界の電動車(EV・PHEV)の生産台数(百万台) | 価格電動車 1 台あたりのフェローテックの売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 21.0 | 1,390 | 292 | 20 |
| 10 年後 中立 | 48.0 | 1,490 | 715 | 57 |
取り方:車載は売上の約 1 割(約 292 億円)。世界の EV・PHEV 生産を約 2,100 万台とみて、1 台あたりの売上を約 1,390(円)とした。営業利益 20 億円は推定(2026/03 期は前期比 25% 減益で、ほぼ収益が出ていない)。台数は電動車の普及で伸び(中立は 3 年 1.4 倍・10 年 2.3 倍)、物価と 1 台あたりの基板の増加は価格に入れた。10 年の中立の価格が物価の倍率に届かないのは、中国の EV 価格競争で基板の値上げができず、現地メーカーにシェアも譲るため。
その他(再生ウエーハ等)
再生ウエーハなど。再生ウエーハは 2026 年 7 月以降に持分法の会社へ移る予定で、売上から外れる。
| 数量世界のシリコンウエーハ出荷面積(億平方インチ・実質) | 価格ウエーハ 1 平方インチあたりのフェローテックの売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 125 | 1.36 | 170 | −25 |
| 10 年後 中立 | 135 | 0.67 | 90 | 0 |
取り方:先の価格が今の約 0.5 倍なのは、再生ウエーハが持分法に移って売上から外れるため。その他は売上の約 6%(約 170 億円)で、営業損失が拡大している。ウエーハ出荷面積は 125 億平方インチ前後。営業損失 25 億円は推定。再生ウエーハが持分法に移るため、先の売上は 6 割程度に縮むと置いた。
リスクと懸念
設備投資の回収が遅れる
3 年で約 1,600 億円という投資は、年間の営業利益の 2 倍を超える。マレーシアと中国の新工場の稼働が遅れると、減価償却と利払いだけが先に出る。借入に頼る部分が大きく、利益より先に財務が悪化する形になりやすい。
装置投資の調整
部品は装置が稼働している台数の影響を受けるが、それでも 2013 年 3 月期は営業赤字、2020 年 3 月期は営業利益が 3 割減と、市況の悪化で大きく落ちた前例がある。拡張の途中で調整が来ると、新工場の固定費がそのまま重荷になる。
中国の国産化・内製化
中国の装置メーカーが部品の自社調達を進めたり、現地の部材会社が育ったりすれば、中国向けの売上と価格が崩れる。会社は中国で稼ぐ比重が大きく、国産化の追い風と向かい風が同じ方向から来る。中国政府の方針次第で、風向きが一晩で変わりうる。
サーモモジュールの集中と技術の変化
電子デバイスの伸びは、光トランシーバー向けサーモモジュールに偏る。中国の新興メーカーが価格で追い、光電融合など温調の要らない設計が広がれば、いま最も利益率が高い部門が弱る。一つの用途に頼る構造は、技術の変わり目に弱い。
親会社に残る利益の小ささ
営業利益が増えても、中国子会社の少数株主と税、利払いで、親会社の純利益に回る割合は 6 割前後にとどまる。ROE の伸びがこの割合に縛られ、利益が増えても株主の取り分が思ったほど増えない。会社の純利益の計画も、営業利益の計画ほどは大きくない。
財務の余裕
純有利子負債は 884 億円、自己資本比率は 37.6%。会社は今期中に 40% へ戻す方針だが、投資と還元を同時に進めるため、市況が悪化すると配当や自社株買いを絞らざるを得なくなる。金利が上がる局面では、借り換えのたびに利払いも増える。
車載の収益化の遅れ
EV 向けパワー半導体の基板は、中国の価格競争で調整が続く。売上の約 1 割に過ぎないが、利益はほぼ出ておらず、回復の時期が読みにくい。会社は今期の回復を見込むが、EV の値下げ競争は基板の価格にも及ぶ。
今後の分かれ目
- マレーシア工場の稼働率が上がり、装置関連の営業利益率が 15% を超えたら
- やや楽観・楽観の確率を上げてよい。投資の回収が始まった印で、ROE が 1 割台後半に戻る道が見える。
- 光トランシーバー向けのサーモモジュールで中国勢が大手メーカーの認定を取ったら
- シェアの前提を下げ、やや悲観側に重みを移す。電子デバイスの利益率が下がる最初の合図になる。
- 中国の装置メーカーが石英・セラミックスの部品を内製化すると公表したら
- 中国向けの売上と価格が崩れる形で、悲観側の確率を上げる。
- 世界の装置投資が複数の顧客から同時に先送りされたら
- 新工場の固定費が重くなる悲観の筋書きを重く見る。受注と在庫の動きを合わせて確かめる。
- 資産売却や自社株買いが計画どおりに進み、自己資本比率が 40% を超えたら
- 財務への懸念は薄れる。ただし本質価値は利益で決まるため、確率の寄せ方は変えない。
- 大型の M&A を発表したら
- 相手の事業と値段を個別に見て、投資の重さがさらに増えるか確認する。
見ておくもの
- 四半期ごとの装置関連・電子デバイスの営業利益率
- マレーシア工場の稼働率と減価償却の動き
- 光トランシーバー向けサーモモジュールの受注と競合の動向
- 中国の装置メーカーの部品調達の国産化率
- 純有利子負債と自己資本比率
- 会社の中期経営計画の再改定
倍率と資本コストの決め方
売上は装置投資の市場(実質)と価格の指数で積み、物価 3% は価格に入れた。倍率は今の PER ではなく、資本コスト 8%(基本 7.5% に、循環 +0.75%・値決め力 +0.25%・借金 +0.75%・寿命 +0.25%)、長期成長率 4.5%、親会社に残る利益の質から出した正当化 PER の 6.5〜9 割に置いた。悲観は市場の底値の倍率ではなく、稼ぐ力と、借金を返したあとに残る売れる資産の床から出した。会社計画(2027/12 期の純利益 414 億円)より、中立の 10 年後の純利益 550 億円は 10 年分の成長で大きい。決算期が 3 月から 12 月へ変わったので、10 年後(2036/03)は 12 か月の数字で置き、今の PER 33 倍には引きずられていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.67→19.68 倍・やや楽観 PER 11.42→18.66 倍・中立 PER 10.24→16.4 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。