結論
テクノホライゾンは、学校の電子黒板や書画カメラを作る「映像&IT」と、車載機器・医療機器・FA機器の「ロボティクス」を併せ持つ複合メーカーだ。筆者の結論は「やや割高」。前期の純利益は営業外の益で膨らんでおり、PER5倍台という見かけの安さをそのまま信じられないからだ。
いちばんの論点は、利益の質だ。前期の営業利益は23億円と前の期の4億円から急回復したが、純利益は25億円と営業利益を上回った。営業外収益が5億円以上あったためで、今期の予想は純利益17億円に下がる。ならした純利益は16億円前後と見る。
事業は2本とも堀が浅い。電子黒板はシャープ・パナソニックなど大手ディスプレーメーカーと競合し、FA機器も景気の波を受ける。営業利益率は過去10年で9%が最高、直近は4%台だ。
ただ、資本効率は低くない。ROEは前期20%に上がり、自己資本は123億円まで積み上がった。純有利子負債は83億円と重いが、利払いの12倍の営業利益がある。10年後の価値は、今の時価総額133億円を1割ほど下回ると見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「収益の質」を疑う。前期の純利益25億円は、営業利益23億円に営業外の益が乗った結果だ。今期の会社予想は純利益17億円。この水準が、ならした実力だと筆者は見る。
次に、事業の持続性を問う。電子黒板は大手の隣で戦う小さな会社の商品、FA機器は景気の波を直接受ける。強い堀とは呼べない。
資本の使い方では、M&Aで売上が倍になったのに、営業利益は増えていない。買収の価格が高かったか、統合が遅いかのどちらかだ。純有利子負債が時価総額の6割あり、借金に頼った拡大でもある。
安全域は薄い。時価総額は予想純利益の8倍で、ならした利益の16億円を使っても8倍台と、見かけは安い。利益が半分に縮んでも、借金が返せない水準ではない。ただし、純有利子負債が時価総額の6割あり、10年後を自信を持って見通せる事業でもなく、安さには理由がある。
何で稼ぐ会社か
連結売上は514億円。映像&ITが378億円(利益19億円)、ロボティクスが136億円(利益4.6億円)だ。
映像&ITは、学校向けの電子黒板・書画カメラ(授業で手元の資料を映す装置)、監視カメラ、AV機器、セキュリティソフトを手がける。重点市場は教育ICTと企業・自治体のDXだ。電子黒板は学校の予算が執行される時期に売上が偏る。2021年4月にエルモ社を吸収合併し、書画カメラの老舗ブランドを持つ。
ロボティクスは、車載機器、医療機器、ロボットのコントローラー、CNC装置(工作機械の制御)、基板の検査装置、自動はんだ装置などだ。FAロボットとビジョンシステム(機械の目にあたるカメラ技術)が重点市場にあたる。前期は売上が8%減り、前の期の6億円の赤字から4.6億円の黒字へ戻った。
2017年以降、事業譲受とM&Aを重ね、子会社は23社に増えた。海外は、シンガポールのPACIFIC TECH(売上133億円)とESCO(73億円)が大きい。従業員は連結で1,506名、提出会社の平均年収は約525万円だ。10%を超える取引先はない。
優良さと弱いところ
堀は「浅い」と筆者は見る。電子黒板は大型ディスプレーの延長にあり、シャープ、パナソニック、NECが業務用ディスプレー市場の上位を占める(2020年の報道)。書画カメラは老舗ブランドだが、市場自体が小さい。値段を自分で決められる商品ではなく、価格競争は有価証券報告書もリスクに挙げる。
資本効率は、前期だけ見ると高い。ROEは20%、ただし過去10年の中央値は10%で、純利益が赤字の年が過去に6回ある。営業利益率は9.1%(2021年3月期)を最高に、2%前後の年が多い。利益の波が大きい。
財務は重い。有利子負債136億円に対し現金47億円で、純有利子負債は83億円。自己資本比率は31%。のれんの償却は年3.7億円あり、減損のリスクも付く。
経営は、M&Aで規模を5割以上増やしたが、利益が追いついていない。売上は2021年3月期の265億円から514億円に倍増したのに、営業利益は24億円から23億円とほぼ同じだ。規模は大きくなったが、稼ぐ力はまだ証明途上と筆者は見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
映像&ITの需要は、学校のICT予算と企業のDXで決まる。GIGAスクール構想で学校にタブレットは行き渡り、次は電子黒板などの大型提示装置と、端末の更新だ。文部科学省が、大型提示装置を1教室に1台置く方針を掲げたこともある。ただ、少子化で学校数は減り、国内の教育市場の数量は10年でじわじわ縮む。
競争は厳しい。電子黒板を含む業務用ディスプレー市場は、2020年の報道でシャープ、パナソニック、NECが上位を占めた。テクノホライゾンは売上が桁違いに小さい。価格は電子機器の常で、物価に届かない伸びにとどまるのが自然だ。
ロボティクスは、車載・医療・FAの設備投資に左右される。人手不足を背景に自動化の需要は強いが、半導体や自動車の設備投資の波で受注は揺れる。前期の赤字は、その波を示した。
M&Aで取り込んだ事業の統合が課題だ。規模は大きくなったが、事業の数が多く、1つあたりの利益は小さい。10年で見れば、実質の数量はほぼ横ばい、価格は物価より低い伸びと置くのが現実的である。為替は150円で動かさない前提だ。
資本政策と M&A
配当は「安定配当」が基本で、前期は普通配当に設立50周年の記念配当を加え、総額4億円。配当性向は2割弱と低い。内部留保は研究開発、設備投資、M&A資金、財務体質の改善に回す方針だ。
数値の入った中期経営計画はなく、売上高営業利益率とROEの向上を重視するとだけ書く。
M&Aは積極的で、2017年以降に多数の事業譲受と買収を実施した。のれんの償却は年3.7億円。買収の効果を数字で示せていない点は、バリュー投資家にとって気がかりだ。
財務は、中部の地銀(大垣共立銀行、名古屋銀行)への依存が大きい。政策保有株は上場株約3.5億円と小さい。TOBや親会社の動きは見当たらない。10年の還元は、純利益の合計の約2割に置いた。配当性向が低い分、現金は借入の返済に回り、財務は軽くなる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
前期、営業利益は4億円から23億円へ約6倍になった。映像&ITは利益が93%増え、ロボティクスは赤字から黒字に戻った。M&Aで集めた23社の統合効果が出始めたと見る。
今期の会社予想は営業利益30億円で、売上550億円。営業利益率5.5%が定着すれば、過去の山(2021年3月期の9.1%)に向けた余地がある。GIGAスクールの更新需要、企業のDX、人手不足を背景にしたFA機器の需要と、追い風は3つ重なる。
ROEは前期20%に上がり、自己資本は123億円に積み上がった。配当性向が2割弱と低いので、利益の大半が自己資本と借入返済に回り、財務体質が目に見えて軽くなる。純有利子負債83億円も、10年あれば消せる。借金が減れば利払いも減り、純利益はさらに厚くなる。
時価総額133億円は、今期予想の純利益17億円の8倍。利益が実際に出れば、評価が見直される余地が大きい。シンガポールの子会社も売上を伸ばしている。
慎重な見方
前期の純利益25億円は営業外の益で膨らんだ山で、今期の予想は17億円まで下がる。営業利益率は直近10年のうち、6年が5%未満で、純利益が赤字の年も過去に6回ある。今の4〜5%台の回復は、まだ一時的かもしれない。
電子黒板は大手が強く、価格競争が厳しい。GIGAスクールの需要は一巡すれば、文教予算が減る。少子化で学校数も減る。ロボティクスは前期に売上が8%減り、半導体や自動車の設備投資の波で受注が振れやすい。
純有利子負債は83億円で時価総額の6割あり、金利が上がれば利払いが重い。短期借入を借り換えるたびに、金利は2%から3.5%へ上がっていく。のれんの償却も年3.7億円続き、減損のリスクがある。
M&Aで売上は倍になったのに、営業利益は増えていない。事業が多すぎて、どれも堀が浅い。値段が安いのは、市場が利益の質を疑っているからだ。短期の回復だけで、PER5倍を正当化はできない。営業利益率が5%を超えた年は10年で4回しかなく、持続性が証明されていない。
どちらに重みを置いたか
事業の堀の浅さと営業外益で膨らんだ前期の利益という慎重な見方が強い。一方で、売上は倍になり、財務は借入の返済で軽くなる方向にあるという強気の指摘も一理ある。確率は、中立を4割弱、やや悲観を3割弱に置いた。結果はやや割高に出た。強気の見方の根拠は統合効果と財務の改善、慎重な見方の根拠は営業外益と堀の浅さで、どちらも決め手にはならなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,821 円245 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 235 円32 億円)。 今の値に割り戻すと 903 円122 億円、今との差 −6.2%、 期待の年率 +7.9%(資本コスト 9.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 4,323 円583 億円 | 401 円54 億円 | +391.0% | +17.2% | 283 円38 億円 |
| やや楽観 | 16% | 2,949 円397 億円 | 304 円41 億円 | +238.2% | +13.0% | 521 円70 億円 |
| 中立 | 38% | 2,145 円289 億円 | 237 円32 億円 | +147.6% | +9.5% | 905 円122 億円 |
| やや悲観 | 28% | 864 円116 億円 | 193 円26 億円 | +9.8% | +0.9% | 296 円40 億円 |
| 悲観 | 12% | 274 円37 億円 | 148 円20 億円 | −56.1% | −7.9% | 51 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,821 円245 億円 | 235 円32 億円 | +113.7% | +7.9% | 2,056 円277 億円 |
今の株価時価総額 962 円130 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 6% M&Aの統合が実り、営業利益率8%に近づく 利益 38 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 4,323 円583 億円
買収した23社の統合が進み、重複していた間接部門が整理される。教育ICTは更新需要と企業向けのDXで台数が伸び、ロボティクスは人手不足による自動化の波に乗る。営業利益率は8%に近づき、過去最高の9.1%に迫る。純利益は38億円に届き、借入は返済されて財務は軽くなる。M&Aの買い手として、さらに事業を拡大する。売上は700億円を超え、ロボティクスも海外の需要を取り込んで利益の柱になる。ただし電子黒板の大手との競争は続くため、ここまで揃う確率は低い。会社が掲げる売上高営業利益率とROEの向上が、そのまま実現する世界である。
- 映像&IT:数量 27.2(出荷台数換算(万台・年、推定))× 価格 20(1 台あたりの平均売上(万円・名目、サービスを含む))→ 売上 530 億円・営業利益 42 億円。台数 1.08 倍、単価 1.30 倍、営業利益率 8.0%
- ロボティクス:数量 3,912(出荷台数換算(台・年、推定))× 価格 0.05(1 台あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 210 億円・営業利益 16 億円。台数 1.15 倍、単価 1.34 倍、営業利益率 7.5%
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.2% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.29 倍、時価総額 510 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収した事業の統合が進み、教育ICTとFA機器の需要が同時に伸びる連続成功が要る。過去10年に8%を超えた年は1回しかなく、確度は低い。
やや楽観 16% 統合が一部実り、営業利益率6%台 利益 27 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 2,949 円397 億円
教育ICTは更新需要が堅く、単価も25%増える。ロボティクスは設備投資の回復で台数を保つ。M&Aの統合効果が少しずつ出て、営業利益率は6%台に乗る。純利益は27億円で、配当性向2割を守り、残りは借入返済に回る。売上は670億円規模まで増え、実質の台数は教育ICTでわずかに増える。M&Aで買った事業の統合が、利益率を少しずつ引き上げる。借入の返済も進み、利払いの負担が軽くなる。ただし、のれんの償却は当面続く。配当性向は2割程度で変わらず、現金は主に借入の返済に回る。電子黒板の大手との競争は続き、価格を上げる力は限られる。
- 映像&IT:数量 25.7(出荷台数換算(万台・年、推定))× 価格 19(1 台あたりの平均売上(万円・名目、サービスを含む))→ 売上 482 億円・営業利益 31 億円。台数 1.02 倍、単価 1.25 倍、営業利益率 6.5%
- ロボティクス:数量 3,640(出荷台数換算(台・年、推定))× 価格 0.05(1 台あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 189 億円・営業利益 11 億円。台数 1.07 倍、単価 1.30 倍、営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.7% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍。全体の PER 12.4 倍、時価総額 334 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:更新需要が来る間は営業利益率が6%台に乗る。会社の今期予想(5.5%)より少し上で、確度は中程度。
中立 38% 中立:営業利益率は5%台で定着 利益 19 億円 · PER 11.6 倍 · 株価時価総額 2,145 円289 億円
教育ICTの台数は少子化で5%減り、単価は大手との競争で物価より低い20%増にとどまる。ロボティクスは台数を保ち、単価は25%増える。営業利益率は5%台に定着し、純利益は営業利益の6割の19億円。配当性向2割で、利益の大半は借入の返済と自己資本の積み上げに回る。売上は600億円規模に増えるが、ほとんどは単価の上昇による。借入の返済が進み、10年後には純有利子負債がほぼ消える。利払いが減り、純利益の営業利益に対する割合は6割に近づく。のれんの償却は買収分が終わるにつれて減る。売上の伸びはほとんどが単価の上昇で、実質の数量は横ばい圏にとどまる。
- 映像&IT:数量 23.9(出荷台数換算(万台・年、推定))× 価格 18(1 台あたりの平均売上(万円・名目、サービスを含む))→ 売上 430 億円・営業利益 24 億円。台数 0.95 倍、単価 1.20 倍、営業利益率 5.5%
- ロボティクス:数量 3,402(出荷台数換算(台・年、推定))× 価格 0.05(1 台あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 170 億円・営業利益 9 億円。台数 1.0 倍、単価 1.25 倍、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.6 倍。全体の PER 11.62 倍、時価総額 224 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の今期予想(営業利益率5.5%)がそのまま10年続く素直な筋書き。過去10年の山の9%には届かず、谷の0%にも落ちない。
やや悲観 28% 価格競争とFA機器の不振で利益率3〜4% 利益 10 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 864 円116 億円
文教予算の一巡と少子化で教育ICTの台数が15%減り、大手との価格競争で単価も伸びない。ロボティクスも設備投資の低迷で台数が減る。営業利益率は3〜4%に落ち、のれんの減損が一度出る。純利益は10億円。配当は維持するが、借入の返済は進まない。売上は490億円規模にとどまり、固定費が重くなる。会社は事業の整理と売却を進めるが、赤字の事業を切り離すのに時間がかかる。のれんの減損で利益が一時的に落ちる年も出る。配当は維持するが、増配の余地はない。人手不足で技術者の確保も難しくなり、受注を絞る場面も出る。
- 映像&IT:数量 21.4(出荷台数換算(万台・年、推定))× 価格 17(1 台あたりの平均売上(万円・名目、サービスを含む))→ 売上 353 億円・営業利益 14 億円。台数 0.85 倍、単価 1.10 倍、営業利益率 4.0%
- ロボティクス:数量 2,994(出荷台数換算(台・年、推定))× 価格 0.05(1 台あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 138 億円・営業利益 4 億円。台数 0.88 倍、単価 1.15 倍、営業利益率 3.0%
倍率:ROE 4.4% が k 9.25% より低く、ためた利益は額面未満。PER の上限は 1÷k=11.1 倍で、やや悲観は伸びと堀の持ちを低く見て、上限の 5.9 割の 6.5 倍に置いた。
確率:電子黒板の価格競争が強まり、FA機器の設備投資が低迷する。2022〜2025年度の水準に近く、起きる確度は高い。
悲観 12% 構造的に負ける:価格競争と設備投資の低迷 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 274 円37 億円
教育ICTは大手の大型ディスプレーに置き換わり、台数は3割減る。単価は上がらない。ロボティクスも自動車・半導体の設備投資の低迷で3割減り、固定費をまかなえない。営業利益はゼロ近くまで落ち、配当は削られる。のれんの減損が重なり、借入の返済が滞る。事業は生き残るが、利益を出す会社とは見られなくなる。売上は360億円まで縮み、M&Aで膨らんだ事業を整理することになる。借入の返済と配当を優先し、成長投資はできなくなる。銀行との関係は維持されるが、借り換えの金利は上がり、利払いが利益を圧迫する。映像&ITとロボティクスの両方で、主力製品の入れ替えが遅れ、顧客が離れていく。
- 映像&IT:数量 17.6(出荷台数換算(万台・年、推定))× 価格 15(1 台あたりの平均売上(万円・名目、サービスを含む))→ 売上 264 億円・営業利益 3 億円。台数 0.70 倍、単価 1.00 倍、営業利益率 1.0%
- ロボティクス:数量 2,381(出荷台数換算(台・年、推定))× 価格 0.04(1 台あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 95 億円・営業利益 −1 億円。台数 0.70 倍、単価 1.00 倍、営業利益率 -1.0%
倍率:稼ぐ力は純利益 0.3 億円で、k 9.25% で割っても 3 億円と小さい。床は、今の自己資本 123 億円に、のれん・無形資産を除いた売掛金・在庫・設備の回収を見込み、0.30 倍に置いた。EV(時価総額+純有利子負債83億円)で見ても営業利益がほぼゼロの筋書きなので、利益の倍率では測らず資産の回収で測った。
確率:電子黒板が大型ディスプレーに食われ、FA機器の受注も落ちる複合の筋書き。2023年3月期や2025年3月期に近い赤字が続く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
映像&IT
書画カメラ、電子黒板、監視カメラ、AV機器、セキュリティソフト。教育ICTと企業・自治体DX向け。
| 数量出荷台数換算(万台・年、推定) | 価格1 台あたりの平均売上(万円・名目、サービスを含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.2 | 15 | 378 | 19 |
| 10 年後 中立 | 23.9 | 18 | 430 | 24 |
取り方:売上377.7億円(開示)を、平均単価15万円(電子黒板は数十万円、書画カメラは10万円前後、監視カメラ・ソフトは安価を混ぜた推定)で割り、年25.2万台相当とした。台数は開示がなく推定。営業利益はセグメント利益18.7億円(開示)。単価は大型ディスプレーとの競争と電子機器の値下がりで、物価より低い伸びにとどまると置いた。
ロボティクス
車載機器、医療機器、ロボットコントローラー、CNC装置、基板検査装置、自動はんだ装置。
| 数量出荷台数換算(台・年、推定) | 価格1 台あたりの平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,402 | 0.04 | 136 | 5 |
| 10 年後 中立 | 3,402 | 0.05 | 170 | 9 |
取り方:売上136.1億円(開示)を、平均単価400万円(車載機器は安価、検査装置は高価の混在)で割り、年3,400台相当とした。台数は推定。営業利益はセグメント利益4.6億円(開示。前期は6億円の損失)。
リスクと懸念
利益の質
前期の純利益25億円は営業利益23億円を上回り、営業外の益が5億円以上乗った。今期の予想は17億円で、この差が実力と山の差だ。
純有利子負債の重さ
純有利子負債は83億円で、時価総額の6割、自己資本の0.7倍。短期借入の借り換えで金利が2%から3.5%に上がれば、利払いが増える。
価格競争
電子黒板はシャープ・パナソニック・NECなど大手の隣で戦う。有価証券報告書も競合による価格競争を挙げる。大型ディスプレーへの置き換えが進めば、数量が崩れる。
文教予算の季節性と一巡
電子黒板の売上は学校の予算の執行時期に偏る。GIGAスクールの更新需要が一巡すれば、数量が落ちる。少子化で学校数も減る。
M&Aとのれん
2017年以降に多数の事業を買い、のれんの償却は年3.7億円。統合が進まず減損が出れば、純利益が1年分消える。売上は倍になったのに営業利益は増えていない。
設備投資の波
ロボティクスは車載・医療・FA・半導体の設備投資に左右される。前期は売上が8%減り、前の期は6億円の赤字だった。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期続けて6%を超えたら
- 統合効果が出たとみて、中立の利益率を上げ、楽観側へ確率を寄せる。
- 純有利子負債が60億円を下回ったら
- 財務の重さが和らぐとみて、k の借金の項を下げる。
- ロボティクスが再び赤字になったら
- 設備投資の波に飲まれたとみて、やや悲観側へ確率を寄せる。
- のれんの減損が出たら
- 一過性の損失として純利益を見直す。買収の失敗が続くなら悲観側へ。
- 電子黒板の大手が値下げを強めたら
- 教育ICTの利益率を下げて置き直す。
- 配当性向を引き上げる方針が示されたら
- 還元の前提を上げ、価値を見直す。
見ておくもの
- 映像&ITとロボティクスのセグメント利益
- 営業利益と純利益の差(営業外損益)
- 純有利子負債と利払い
- のれんの減損と償却
- 文教予算(GIGAスクール後の更新)
倍率と資本コストの決め方
数量は台数換算の推定(開示なし)で、物価3%は単価に1.00〜1.34倍として入れ、二重がけはしていない。倍率は k 9.25%(基本7.5%+循環0.5%+値決め力0.5%+借金0.25%+寿命0.25%)と、ROEが k 以下で出る上限1÷k=11.1倍の6〜9割で置いた。今のPER(5倍台)や過去のPBR、同業の値付けは使っていない。ならした純利益は営業外益を除き16億円とし、前期の25億円は使っていない。悲観の床は今の自己資本に0.30倍を掛けたもので、過去のPBRの底からは置いていない。新リース会計基準の形変更は、今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→13.29 倍・やや楽観 PER 9→12.4 倍・中立 PER 8→11.62 倍)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。