結論
トミタ電機は鳥取市に本社を置き、中国の珠海でフェライトコアとコイルを作る売上16億円の会社だ。筆者の結論は「割高」だ。本業はこの12年で営業赤字の年が7回あり、資本に見合う稼ぎを一度も出していない。
時価総額は自己資本とほぼ同じ40億円だ。帳簿には現金11億円と鳥取の土地17億円が載る。ただ土地は時価が簿価より7億円低く、現金は創業家の判断で社内に眠り、配当も出ていない。少数株主が受け取れる価値は帳簿よりかなり小さい。
フェライトコアは電気自動車やデータセンターの電源に使われ、需要そのものは伸びる。だが中国の大手が規模で押さえる汎用品で、この会社の値決めの力は弱い。10年の中立でも営業利益率は4%前後にとどまると筆者は見る。会社が利益率を一段上げる道筋を示すまで、安全域は無い。
値段に対する見方ははっきりしている。今の時価総額は、10年の中立で積んだ価値の2倍を超える。帳簿に近い値段は、資産を株主のために働かせる会社に払うものだ。現金を戻す方針が示されれば、見方は変わりうる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、オーナーとして持ちたい事業ではない。素材の汎用品で値決めの力が無く、10年余りの間に資本に見合う稼ぎを出した年が無い。帳簿の価値は大きいが、その資産が株主のために働いていない。
安全域は帳簿に見えて、実は薄い。土地の時価は簿価より7億円低い。現金は11億円あるが、配当を出さない会社では少数株主の手に届かない。本業の赤字が続けば、その現金も少しずつ減る。
筆者が見方を変えるのは二つの時だ。一つは電気自動車やデータセンター向けで利益率5%以上が3年続く時。もう一つは現金を配当や自社株買いで戻す方針が数字で示される時だ。それまでは、帳簿と同じ値段を払う理由は無い。
小さな会社にも良い投資はある。ただそれは、狭い隙間で値段を決められる会社だ。この会社はまだその証拠を示していない。狭い隙間で生きる力は、利益率の安定で示される。
何で稼ぐ会社か
事業は二つある。主力は電子部品材料で、2026年1月期の売上15.4億円の大半を占める。もう一つは鳥取市の店舗用の土地と建物を貸す不動産賃貸で、売上は0.7億円と小さいが、利益0.5億円を毎年確実に生む。
フェライトコアは、鉄の酸化物を焼き固めた磁石の材料だ。コイルやトランスの芯になり、電気を変換したりノイズを消したりする。電気自動車の電池管理や車内通信、基地局、データセンター、半導体製造装置、医療機器と使い道は広い。トミタ電機はこの芯と、それを使ったコイル・トランスを作る。
生産の中心は中国広東省の珠海富田電子で、香港の販売子会社を通じて中国と欧州に売る。客は日本と東アジアの電子部品・機器の会社だ。2026年1月期は中国の電気自動車向けが堅調で売上が13%伸びたが、電子部品材料はなお1.1億円の赤字だった。
純利益は1.2億円の黒字だったが、役員退職慰労引当金の戻入1.6億円という一度きりの利益による。本業の稼ぎはまだ赤字の水準にある。
設備は古く、償却はほぼ終わっている。年の償却費は0.5億円に満たず、売上が増えれば利益に効きやすい形だ。逆に言えば、新しい設備を入れる時には償却が新しい値段で重くなる。
優良さと弱いところ
優良さは乏しい。フェライトコアは世界ではTDKやプロテリアル、中国の天通や横店東磁が大量に作る素材で、小さな会社が値段を決められる品ではない。特殊な形や材質で客の注文に合わせる力はあるが、それで高い利益率を取れたのは2022〜2023年の部品不足の時だけで、利益率は7%が最高だった。
資本の効率は低い。過去10年のROEの中央値はマイナス2%だ。自己資本40億円のうち17億円は土地で、その時価は簿価を7億円下回る。現金11億円は利息しか生まない。
財務は堅い。借金は無く、自己資本比率は85%ある。会社がすぐに傾く心配は小さいが、堅さが株主の利益に変わっていない。配当は無配が続き、自社株買いも無い。
経営の資本の使い方にも物足りなさが残る。赤字の年に現金を取り崩し、黒字の年もそれを株主に戻さない。この姿勢が変わらない限り、資産の厚さは少数株主の安全域にならない。資産の厚さは、倒れにくさの証拠にすぎない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
フェライトコアの需要は電気の変換が増えるほど増える。電気自動車の充電器や電池管理、太陽光の変換器、データセンターの電源、無線の給電。どれもコイルとトランスを使い、その芯にフェライトが入る。数量は世界で年に数%ずつ伸びると見てよい。
ただ供給の主役は中国だ。横店東磁や天通は桁違いの規模で汎用のコアを作り、値段は物価ほど上がらない。日本勢はTDKやプロテリアルが高性能の材質で差をつけ、残りの中小は特殊品の隙間で生きる。トミタ電機はその隙間の会社で、生産を珠海に置いて人件費を抑えてきた。
この位置は苦しい。中国の景気が落ちると客の在庫調整で数量が減り、上がっても中国の同業と値段で競う。日本の工作機械や半導体製造装置向けは外需の弱さに左右される。10年の中立では、数量は2割弱伸びるが、値段は物価を下回ると置くのが筋だ。
業界の再編は進んでいる。プロテリアルは日立の手を離れ、中国勢は海外に工場を広げる。小さな専業が単独で規模の差を埋めるのは難しい。
もう一つの変化は電気自動車の行方だ。中国では普及が進むが、欧米では伸びが鈍った。車向けの比率が高い会社ほど、この揺れを受けやすい。
日本の客の側にも変化がある。工作機械と半導体製造装置は投資の波が大きく、数量の読みは立てにくい。トミタ電機のような小さな素材の会社は、波の谷で真っ先に注文を減らされる立場だ。
資本政策と M&A
配当は無配だ。会社は「早期の復配を目指す」とするが、時期は示していない。自社株買いもしていない。2023年に行使価額修正条項付きの新株予約権を出し、自己株式を市場に放出して約1億円を集めたが、事業の稼ぎは変わらなかった。
株主は創業家が中心だ。資産管理会社のプラニングカミヤが16%、神谷哲郎氏が9%を持ち、社長は神谷陽一郎氏が務める。親会社は無い。現金11億円の使い道は創業家と経営陣が決め、少数株主に戻る見込みは薄い。
時価総額40億円の小さな会社で、買収されれば現金と土地の分の上乗せはありうる。ただ創業家が手放す兆しは無く、当てにはしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
需要の追い風は本物だ。電気自動車の電池管理、データセンターの電源、無線の給電と、フェライトコアの出番は増える一方だ。2026年1月期は中国の電気自動車向けで売上が13%伸び、2027年1月期の第1四半期も売上が3割近く増えて赤字はほぼ消えた。会社は2027年1月期に営業黒字を見込む。
設備はほぼ償却を終えており、売上が増えれば利益はよく伸びる。売上が20億円を超えた2022〜2023年には利益率7%を出した。同じ水準に戻れば営業利益は1.5億円を超える。
財務の余裕も大きい。借金は無く、現金11億円と賃貸の土地がある。時価総額は自己資本とほぼ同じで、資産の裏付けがある。創業家が会社を手放す時が来れば、現金と土地を織り込んだ上乗せも期待できる。
賃貸の0.5億円は景気に左右されにくい。本業が黒字に戻れば、それが上乗せになり、全社の利益は思ったより早く1億円を超える。現金と土地を合わせた資産の厚さは、時価総額の半分を超える。下値の支えは厚い。
慎重な見方
この会社は12年のうち7年が営業赤字だ。利益率7%は部品不足の特別な2年だけで、平時はゼロ近辺に戻る。中国の横店東磁や天通は桁違いの規模で汎用品を作り、値段で勝てる相手ではない。売上が少し伸びても、値下げの要求が利益を食う。
帳簿の資産も見かけほど価値が無い。土地は時価が簿価より7億円低く、賃貸は鳥取の1件の店舗頼みだ。テナントが抜ければ賃料の0.5億円は消える。現金11億円は配当されず、赤字の穴埋めに少しずつ使われてきた。
2026年1月期の黒字は退職慰労引当金の戻入という一度きりの利益だった。本業の稼ぎはなお赤字だ。少数株主には、帳簿の価値を受け取る手段が無い。
需要が伸びる分野ほど大手が投資を増やす。電気自動車やデータセンター向けの高性能品は、TDKやプロテリアルが先に押さえる。小さな会社に残るのは利の薄い注文だ。設備が古いことも弱みだ。更新の投資は新しい値段で効き、償却は重くなる。利益率の改善は、その分だけ遠のく。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。需要の追い風は確かだが、利益率を押さえるのは中国勢との値段の競争で、この会社の側に解決の手段が無い。12年の実績がそれを示している。確率は中立を中心に置き、悲観側に4割、楽観側に2割強を置いた。財務が堅いので、会社が消える筋書きは置かない。現金と土地はあるが、少数株主に戻る道が無い点も慎重な側の言い分を強めた。ただ財務の堅さは本物で、悲観の深さは限られる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した株価時価総額 1,975 円16 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 160 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 938 円8 億円、今との差 −82.6%、 期待の年率 −8.9%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,805 円39 億円 | 490 円4 億円 | −1.9% | −0.2% | 371 円3 億円 |
| やや楽観 | 16% | 3,358 円27 億円 | 306 円3 億円 | −32.1% | −3.8% | 586 円5 億円 |
| 中立 | 37% | 2,194 円18 億円 | 184 円2 億円 | −56.0% | −7.9% | 880 円7 億円 |
| やや悲観 | 24% | 833 円7 億円 | 37 円0 億円 | −83.9% | −16.7% | 209 円2 億円 |
| 悲観 | 16% | 561 円5 億円 | 0 円0 億円 | −89.6% | −20.3% | 90 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,975 円16 億円 | 160 円1 億円 | −60.5% | −8.9% | 2,135 円17 億円 |
今の株価時価総額 5,400 円44 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 電源と車で特殊コアが伸びる 利益 3 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 4,805 円39 億円
データセンターの電源と電気自動車の充電で、高い周波数に強い特殊なコアの需要が膨らむ。トミタ電機は客ごとの形と材質に合わせる力で採用を広げ、出荷は今の2倍近くになる。中国勢が手を出さない小ロットの品が中心なので、値段はほぼ物価並みに上がる。
利益率は9%に乗り、過去の最高の7%を超える。設備はほぼ償却済みで、増産の投資は小さい。会社は配当を再開し、利益の3割ほどを戻す。現金はさらに積み上がる。それでもROEは6%前後で、資本コストには届かない。
中国勢との競争は残るが、小ロットの特殊品では客が切り替えを嫌うので値引きの圧力は弱い。会社の価値は帳簿にようやく近づく。
- 電子部品材料(フェライトコア・コイル・トランス):数量 1,000(出荷量(トン・年、推定))× 価格 0.04(1トンあたりの売上(億円))→ 売上 40 億円・営業利益 4 億円。1000トン×単価1.33倍、利益率9%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件(件))× 価格 0.85(1件あたりの年間賃料(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。賃料1.27倍、償却は据え置き
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 39 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量が倍になり、利益率も過去の最高を超える必要がある。12年の実績から見て起きにくいので1割に満たない。
やや楽観 16% 部品不足の頃の利益率に戻る 利益 2 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 3,358 円27 億円
電気自動車とデータセンター向けの受注が増え、出荷は今の1.5倍になる。客の在庫調整は一巡し、売上は30億円近くまで戻る。値段は中国勢との競争で物価をやや下回るが、工場の稼働が上がって利益率は7%になる。2022〜2023年の部品不足の頃と同じ水準だ。
賃貸の利益と受取利息が上乗せされ、純利益は2億円を超える。配当は少しずつ再開するが、現金の多くは社内に残る。ROEは4%台で、資本コストにはなお届かない。
電子部品材料の利益は2億円余りで、賃貸と合わせて全社の稼ぎは今の何倍にもなる。それでも資本コストに届かない点は変わらない。
- 電子部品材料(フェライトコア・コイル・トランス):数量 780(出荷量(トン・年、推定))× 価格 0.04(1トンあたりの売上(億円))→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。780トン×単価1.27倍、利益率7%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件(件))× 価格 0.84(1件あたりの年間賃料(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。賃料1.25倍
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 27 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上が20億円を超えた2022〜2023年に利益率7%を出した実績がある。その水準に戻る筋書きを中立の次に置いた。
中立 37% 黒字に戻るが薄利のまま 利益 1 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 2,194 円18 億円
電気自動車やデータセンター向けで数量は2割弱伸びる。ただ値段は中国勢との競争で物価を下回り、1トンあたりの売上は2割上がるにとどまる。売上は20億円余りに戻る。
利益率は4%前後だ。人件費と材料費は物価で上がり、値上げで取り返せるのはその一部にすぎない。賃貸の0.6億円と受取利息が全社の利益を支える構図は変わらない。
会社は数年のうちに配当を再開するが、額は小さい。現金は少しずつ積み上がり、ROEは3%前後で資本コストの3分の1にとどまる。帳簿の価値は大きいまま、株主の稼ぎは小さい。
新しい設備を入れる時は、建物も機械も今の値段で買うので、償却は少しずつ重くなる。
- 電子部品材料(フェライトコア・コイル・トランス):数量 600(出荷量(トン・年、推定))× 価格 0.04(1トンあたりの売上(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。600トン×単価1.2倍(中国勢との競争で物価を下回る)、利益率4%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件(件))× 価格 0.84(1件あたりの年間賃料(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。賃料1.25倍(地方の店舗で物価をやや下回る)
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.1% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 18 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の2027年1月期の営業黒字の見込みを起点に、中国勢との値段の競争で利益率が4%前後に止まる姿を中心に置いた。
やや悲観 24% 赤字と黒字を行き来する 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 833 円7 億円
中国の電気自動車向けの伸びは一巡し、中国勢の値下げで受注が細る。出荷は今より1割弱減り、値段も物価に追いつかない。電子部品材料は毎年小さな赤字を出し、賃貸の利益と受取利息で全社はほぼ収支とんとんだ。
配当は再開できない。現金は赤字の穴埋めと設備の更新に使われ、少しずつ減る。土地の含み損も残る。会社は存続するが、資本はほとんど何も生まない。少数株主の価値は、手元の現金と賃貸の土地のうち、いずれ戻るかもしれない分だけになる。
賃料は地方の店舗なので物価ほどは上がらない。利益が出ない年が続くと、創業家も配当の再開を口にしなくなる。
- 電子部品材料(フェライトコア・コイル・トランス):数量 470(出荷量(トン・年、推定))× 価格 0.03(1トンあたりの売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。470トン×単価1.1倍、赤字
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件(件))× 価格 0.75(1件あたりの年間賃料(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。賃料1.12倍
倍率:ROEはほぼ0%で稼ぐ力の床は小さい。床は純現金と賃貸の土地の税後に戻り方を掛けた額で、今の自己資本39.8億円に0.17倍を掛けた。
確率:12年のうち7年が営業赤字だった実績から、今の回復が続かず元に戻る筋書きを中立の次に厚く置いた。
悲観 16% 赤字が続き現金が細る 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 561 円5 億円
中国勢が特殊品の領域にも入り込み、トミタ電機の受注は今の4分の3まで減る。値段も上がらず、電子部品材料は売上の1割を超える赤字を出す。2016〜2021年と同じ姿だ。
会社は現金を取り崩して赤字を埋め、10年で手元の現金は半分になる。賃貸のテナントも条件の見直しを求め、賃料は伸びない。土地と古い設備の減損で自己資本は30億円台前半に減る。創業家は会社を手放さず、現金が株主に戻る機会は来ない。
利益が出ない会社では、現金は守りにはなっても、株主の稼ぎにはならない。減損で自己資本が減っても、借金が無いので会社はつぶれない。少数株主はただ、細っていく資産を眺めるしかない。
- 電子部品材料(フェライトコア・コイル・トランス):数量 380(出荷量(トン・年、推定))× 価格 0.03(1トンあたりの売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 −1 億円。380トン×単価1.03倍、赤字
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件(件))× 価格 0.67(1件あたりの年間賃料(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。賃料据え置き
倍率:赤字なのでPBRで置く。稼ぐ力は無く、床は残る純現金と賃貸の土地の税後に戻り方0.5を掛けた額。今の自己資本39.8億円に0.115倍を掛けた。
確率:2016〜2021年に6年続けて赤字だった前例がある。財務は堅く倒産は無いので、それ以上は厚くしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電子部品材料(フェライトコア・コイル・トランス)
フェライトコアと、それを使ったコイル・トランス。生産は中国の珠海。
| 数量出荷量(トン・年、推定) | 価格1トンあたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 512 | 0.03 | 15 | −1 |
| 10 年後 中立 | 600 | 0.04 | 22 | 1 |
取り方:数量の開示は無い。売上15.36億円を、特殊品とコイル・トランスの加工分を含む平均単価1トンあたり0.03億円と置いて約512トンと推定。
不動産賃貸
鳥取市の店舗用の土地と建物を貸す。
| 数量賃貸物件(件) | 価格1件あたりの年間賃料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 1.0 | 0.67 | 1 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 0.84 | 1 | 1 |
取り方:有報の賃貸等不動産は鳥取市の店舗と土地(簿価11.4億円)。賃料0.67億円をそのまま1件の値として置く。償却は年0.06億円で、建物の建て替えは10年内に無いと見て据え置く。
リスクと懸念
中国勢との値段の競争
横店東磁や天通など中国の大手が汎用のフェライトコアを大量に作る。客は同じ性能なら安い方を選ぶので、数量が伸びても値段は物価ほど上がらず、利益率は低いまま残る。
中国の景気と在庫調整
生産も販売も中国に寄っている。中国の電気自動車や家電の在庫調整が起きると、受注が一気に減る。2024〜2025年はこれで営業赤字が続いた。
賃貸の1件への依存
賃貸の利益0.5億円は全社の利益を支えるが、鳥取市の1件の店舗頼みだ。テナントが撤退すれば賃料は消え、土地の時価も簿価を大きく下回ったままになる。
現金が株主に戻らない
無配が続き、現金11億円の使い道は創業家と経営陣が決める。赤字が続けば現金は穴埋めに消え、少数株主の手には届かない。
土地の含み損
2002年に再評価した土地は、時価が簿価を7億円下回る。賃貸や工場の土地の価値が落ちれば減損が出て、自己資本が減る。
今後の分かれ目
- 電子部品材料の営業利益率が5%を超え、3年続く
- やや楽観の筋書きに近づく。賃貸と合わせて営業利益は2億円を超える。
- 配当を再開し、配当性向3割以上の方針を示す
- 現金が株主に戻る道が見え、余った現金の値打ちが上がる。
- 中国の電気自動車の生産が落ち込み、受注が2割減る
- 再び営業赤字に戻り、やや悲観の筋書きに寄る。
- 賃貸のテナントが撤退する
- 全社の利益の支えが消え、土地の減損も出る。悲観側に寄る。
- 同業や投資ファンドが買収を提案する
- 現金と土地を織り込んだ値段が付く。ただ創業家の判断しだいで当ては無い。
見ておくもの
- 電子部品材料のセグメント利益率
- 中国の電気自動車・家電向けの受注
- 配当の再開と方針
- 賃貸のテナントの継続
- 現金及び預金の増減
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や過去のPBRから置いていない。全ての筋書きでROEは資本コスト9%に届かないので、PERの上限は1÷kの約11倍で、中立は利益の質の低さを見て9倍。余った現金8億円は戻り方0.5で足した。悲観側は今の自己資本に掛けたPBRで、純現金と賃貸の土地の時価の税後に戻り方を掛けた床に合わせた。市場は今、帳簿とほぼ同じ値段を付けているが、それは比べただけで根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.11 倍・やや楽観 PER 9.5→11.11 倍・中立 PER 9→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に質の上乗せ1.5%。