結論
協立電機は、静岡市に本社を置く FA(工場の自動化)と計測制御の中堅だ。半導体の基板検査装置や、工場・インフラ向けの監視システムを手がける。筆者の結論は「やや割安」。一番の理由は、時価総額の半分を超える純現金を抱えているのに、市場がそれをほとんど評価していないことだ。
直近の決算は、一服だった。売上は 370 億円で前の期より 3% 減り、営業利益は 15% 減の 28 億円になった。会社の予想も下回った。ただ、その前の期が過去最高の利益だったことを考えれば、山からの小さな調整といえる。
財務は盤石だ。現金は約 110 億円あり、借入はほぼない。自己資本比率は 64% で、純現金は時価総額の 56% に当たる。本業の稼ぎも悪くない。営業利益率は 7〜8% 台で、過去 10 年の平均を上回る。
弱みは、その現金が株主に戻りにくいことだ。筆頭株主が約 3 割を握り、配当は出すが自社株買いの実績はない。中立の筋書きでは、10 年後に営業利益が 38 億円ほどに伸びる一方、余った現金も 170 億円台に積み上がる。
稼ぐ力に現金の価値を足せば、今の値段は安い。筆者は、現金を半分しか評価しない厳しい見方をしても、この結論は変わらないと見ている。
もう一つ見てほしいのは、利益の質だ。売上の半分以上は、他社の機器を組み合わせて納める商売で、独自製品で稼ぐ部分はまだ一部にとどまる。独自製品の比率が上がれば利益率は伸び、上がらなければ価格競争に飲まれる。10 年の分かれ目は、そこにある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社の魅力は二つある。事業が手堅く稼いでいることと、価格が事業の稼ぎだけでなく手元の現金に見合わないほど安いことだ。
株主が自由に使える利益、つまり再投資を引いた利益は、純利益の 9 割ほどと見る。設備は軽く、投資は年に数億円で済む。稼いだ現金が毎年たまる構造であり、これが現金の山を作っている。
問題は、その使い道だ。経営者が資本を上手に配分する人なら、現金は株主の価値を増やす。逆に、使い道がなく積み上がるだけなら、半値で見るのが妥当だ。筆者は後者の可能性を重く見て、余った現金を帳簿の半分とした。
安全域は、現金の厚みから生まれる。中立の筋書きで今の時価総額を大きく上回り、悲観の筋書きでも、手元の現金が価値を支える。わかりやすい事業と厚い財務、それに安い値段が揃っている。筆者が気にするのは、現金が株主の手に渡る日が来るかどうかだけだ。
もう一点、利益の持続性にも目を向けたい。過去 10 年の純利益は 6 億円から 21 億円まで増えたが、その道のりは一直線ではなく、2021 年 6 月期には売上が 15% 減った。景気の波は確かにある。それでも赤字に沈まず、現金をためてきた実績は、バリュー投資の観点では評価できる。
何で稼ぐ会社か
協立電機の事業は二つに分かれる。売上のおよそ 46% を稼ぐ「インテリジェント FA システム」と、54% を占める「IT 制御・科学測定」だ。
前者は、工場の生産ラインを自動化するシステムと、検査・試験の装置である。半導体の基板を調べる検査装置や、計測・試験機器、省エネ製品が製品例に挙がる。直近の売上は 171 億円、セグメント利益は 20 億円。利益率は 12% 前後と、会社全体の稼ぎ頭だ。
後者は、制御や計測の情報システムと、科学測定の機器である。魚をセンサーに使う水質の連続監視装置や、トンネルを掘るシールド工事の管理システム、道路のたわみを測る検査車両の部品など、独自の製品が並ぶ。売上は 198 億円と大きいが、利益は 13 億円で、利益率は 6% 台にとどまる。
会社は「ワンストップショッピング」を掲げる。ロボットやセンサー、ソフトを組み合わせ、システムとして一括で納める商売だ。製造業の人手不足とデジタル化が追い風になる。
海外は 8 か国に 11 社の子会社を持つ。中国、タイ、マレーシアなどで、日本の製造業の海外工場を支える。従業員は連結で約 870 人、単体では 394 人だ。1 社で売上の大半を占めるような客は、開示されていない。
受注の動きも見ておきたい。直近の受注は、FA が 160 億円、IT 制御・科学測定が 202 億円だった。FA は売上を下回り、受注残は 114 億円と前の期末より 9% 減った。IT 制御・科学測定は受注が売上を上回り、受注残は 52 億円と 8% 増えた。次の期は、FA が重く、IT 制御・科学測定が軽い形になる。
製品の幅が広いことも、この会社の特徴だ。半導体の基板検査から、水質、土木、道路まで、顧客の業種は製造業に限らない。一つの景気に左右されにくい反面、どの分野でも大手になれないという面もある。
優良さと弱いところ
優良さを一言でいえば、「ニッチに強い、手堅い中堅」だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、そう深くない。
強みは三つある。一つ目は、自社開発の独自製品だ。水質監視や掘進管理のように、顧客の現場に入り込んだ製品は、他社に替えにくい。二つ目は、メーカーの機器を組み合わせて納めるシステム力で、導入後の保守も取れる。三つ目は、海外 11 社の拠点網である。
弱みも三つある。一つ目は、値決め力の弱さだ。売上の半分以上は、他社製品を組み合わせる側面があり、仕入れ先の値上げを転嫁できるかで利益が左右される。二つ目は、半導体の設備投資に連動する部分があり、景気の波を受ける点だ。三つ目は規模の小ささで、大手のファナックや安川電機と正面から戦えない。
資本の使い方は、控えめだ。当面の目標に ROE15% を掲げるが、実績は 9% 台で、手元の現金が重しになっている。現金を使う場所を見つけるか、株主に戻すかが問われている。
筆者が評価しているのは、利益の安定感だ。過去 10 年で営業赤字の期は 2010 年 6 月期だけで、直近 10 年で営業利益は大きく伸びてきた。
独自製品の比率が、優良さの尺度になる。水質を魚で見張る装置や、トンネル掘削の管理システムのような製品は、顧客の現場に入り込んで長く使われる。ここで稼ぐ部分が大きくなれば、値決め力は強まる。逆に、他社の機器を仕入れて組み合わせる部分が大きいままなら、堀は浅い。
経営については、情報が限られる。ROE15% という目標は高いが、実績は 9% 台で、達成の道筋は開示から見えにくい。筆者は、目標の高さより、現金の使い道を示すかどうかを経営の質の試金石とみる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の FA 市場は、人手不足を背景に長く成長が続くが、循環性が強い。産業用ロボットの世界出荷は、2024 年の約 54 万台から 2028 年には年 70 万台を超えると見られる。需要は、中国の工場自動化と半導体工場の投資、北米・欧州の人手不足に連動する。
協立電機が立つのは、その川下だ。ロボットや装置そのものを作る会社ではなく、現場に合わせて組み合わせ、納める側にいる。市場の成長を取り込めるが、部品や装置の供給元に値段の主導権がある。
半導体の基板検査は、AI 向けの先端パッケージ需要で伸びる余地がある。一方、中国のメーカーが台頭し、検査装置や計測機器でも価格競争が激しくなっている。
もう一つの柱は、インフラや環境の監視だ。水質の監視や、トンネル工事の管理、道路の点検は、規制や更新で需要が底堅い。国土強靱化の予算が追い風になる。
10 年先を見ると、人手不足で自動化の需要は続くが、価格競争で利益率は頭打ちになる。中堅には、ニッチの独自製品で稼ぎを守る会社と、大手の下請けに回る会社の二極化が進む。再編も進みやすく、規模と現金を持つ協立電機は、買う側にも買われる側にもなりうる。
価格の面では、人件費と部品の値上がりが物価並みに続く。システムを納める商売は、人件費を価格に乗せられる限り、利益率を守れる。人手不足で顧客の工場が省力化を急ぐ間は、乗せやすい。逆に、顧客の設備投資が止まれば、まず値引きから始まる。
数量の面では、国内の工場は人口減で先細るが、自動化の投資は、生産量ではなく人手の不足で決まる。このため、国内の仕事量は実質で横ばいか緩やかな増加、海外の拠点は日系メーカーの工場の動きに連動して伸び縮みする、と筆者は見る。
資本政策と M&A
資本政策は、現金をためる安全運転だ。配当は「安定的かつ継続的に、増加を重視する」方針で、直近の総額は約 7 億円、配当性向は 38% だった。自社株買いの実績は見当たらない。
現金は積み上がっている。現金同等物は 110 億円で、前の期より 26 億円増えた。営業キャッシュフローは 36 億円の黒字で、投資は 3 億円にとどまる。稼いだ現金の大半が、そのまま残る形だ。
筆頭株主は、エム・エヌ・エスで、約 3 割を持つ。会社の経営に強い影響を持つ株主であり、少数株主の目線からは、現金の使い道を自分たちで決めにくい。この点を織り込み、余った現金の価値は帳簿の半分に見積もった。
政策保有株は上場分で 18 億円と小さく、最大が横河電機だ。当期に 5 銘柄を売ったが、売却代金は多くない。
M&A は 1999 年以降、子会社の株式を取得して積み上げてきた。直近はタイの持株会社への 49% 出資だ。大きな買収は少ないが、現金は豊富にあり、買収に使う力はある。配当の増額と自社株買いを始めれば、評価は大きく変わる。
配当の水準は、利益に対して控えめだ。純現金が時価総額の半分を超える会社の配当性向が 38% なのは、還元余地の大きさを物語る。筆頭株主の意向が最終的に効くため、方針の転換は経営と筆頭株主の合意が前提になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
まず、現金が時価総額の半分を超える。自己資本比率 64% で、営業キャッシュフローは 36 億円の黒字だ。稼ぎだけで見ても、事業の価値は今の時価総額から現金を引いた額を大きく上回る。
事業は伸びる。人手不足で、工場の自動化の需要は 10 年続く。産業用ロボットの出荷は 2028 年に年 70 万台を超える見通しで、システムを納める側の協立電機にも波及する。半導体の基板検査は、AI 向けの先端パッケージで需要が増える。
利益率は 7〜8% 台と、過去 10 年で最高圏だ。海外 11 社の拠点網と、水質監視のような独自製品が、価格競争の中でも利益を守る。会社は ROE15% を目標に掲げ、現金を使う圧力も強まっている。
配当は増加を重視する方針で、利益が増えれば増える。現金が積み上がる以上、増配や自社株買いの余地は大きい。株主還元が一歩進むだけで、今の値段は大きく見直される。
さらに、現金の使い方次第では、短期間で価値が顕在化する。筆頭株主が約 3 割を持つ会社でも、資本効率への圧力が強まる中、配当性向を 5 割まで引き上げるだけで、利回りは大きく変わる。純現金が時価総額の半分を超える会社が、いつまでもその状態を続けられるとは考えにくい。
慎重な見方
利益は山から下りている。直近の営業利益は 15% 減り、会社の予想も下回った。FA 事業の受注残は 9% 減っており、次の期の売上を支える手持ちが細っている。前の期の利益は、半導体の設備投資が重なった一時的な高さだった。
現金は、株主のものになるとは限らない。筆頭株主が約 3 割を握り、自社株買いの実績はない。現金を半分しか評価しないのが妥当で、場合によってはそれ以下だ。たまった現金が低い利回りで眠れば、ROE は下がっていく。
事業の質にも限界がある。他社の機器を組み合わせて納める商売では、値上げの主導権は仕入れ先にある。中国メーカーの台頭で、検査装置や計測機器の価格は下がる。IT 制御・科学測定の売上は 9% 減り、利益率は 6% 台にとどまる。
規模の小ささも弱点だ。半導体や中国の景気が悪化すれば、1 社の受注が止まるだけで利益が大きく崩れる。10 年後に今の利益を保てる保証はない。
最後に、東証の資本効率改善の要請があっても、実際に動く保証はない。筆頭株主が現状に満足していれば、現金は積み上がり続ける。時間がかかるほど、現金の価値は物価で目減りする。10 年待っても何も起きない可能性を、この見方は重く見る。
どちらに重みを置いたか
強気の見方に分がある。現金の厚みと、事業の安定感は本物で、現金を半分しか評価しない厳しい見方でも、中立の価値は今の時価総額を上回る。ただし、慎重な見方の指摘も無視できない。FA の受注残の減少と、筆頭株主の存在は、上の筋書きを遠ざける。確率は、中立に 3 割台半ばを置き、楽観を 1 割弱、悲観を 1 割強とした。現金が戻らない可能性は、余った現金を半値で数えることで織り込み済みなので、確率の側ではさらに悲観に寄せていない。
現金の評価を半分にとどめたことで、強気の見方が示す割安さのうち、確かな部分だけを残した。事業の稼ぎが 10 年で伸びるかどうかは、慎重な見方の指摘どおり不確かだが、それを確率で表した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 5,702 円460 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,206 円97 億円)。 今の値に割り戻すと 3,533 円285 億円、今との差 +56.3%、 期待の年率 +11.8%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 9,592 円774 億円 | 1,674 円135 億円 | +398.3% | +17.4% | 901 円73 億円 |
| やや楽観 | 20% | 8,344 円673 億円 | 1,475 円119 億円 | +334.3% | +15.8% | 1,964 円158 億円 |
| 中立 | 34% | 6,950 円561 億円 | 1,314 円106 億円 | +265.5% | +13.8% | 2,810 円227 億円 |
| やや悲観 | 26% | 3,029 円244 億円 | 1,103 円89 億円 | +82.8% | +6.2% | 1,074 円87 億円 |
| 悲観 | 12% | 963 円78 億円 | 360 円29 億円 | −41.5% | −5.2% | 159 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,702 円460 億円 | 1,206 円97 億円 | +205.5% | +11.8% | 6,908 円557 億円 |
今の株価時価総額 2,261 円182 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 自動化の波に乗り、稼ぎと還元が伸びる 利益 38 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 9,592 円774 億円
人手不足が 10 年続き、工場の自動化の需要が太る。FA 事業の実質の仕事量は 3 割強増え、半導体の基板検査が AI 向けの先端パッケージで伸びる。独自製品の比率が上がり、FA の利益率は 12% 台後半に乗る。
営業利益は 50 億円台で、利益率は過去の山に並ぶ。配当は増え、筆頭株主も還元を増やす方向に動く。現金は積み上がるが、一部は自社株買いや買収に使われる。
IT 制御・科学測定は横ばいでも、水質や土木の監視が価格転嫁を通し、利益率は 7% まで上がる。ニッチの強さが最もよく出る姿だ。
現金の積み上がりは続くが、会社は成長投資と還元を増やす。筆頭株主も、資本効率の改善に理解を示す。結果として、純現金の積み上がりは中立より遅い。
- インテリジェントFAシステム:数量 749(稼働人員(人年。事業別の従業員数、実質))× 価格 0.43(1人あたり売上(億円・名目))→ 売上 319 億円・営業利益 40 億円。749 人年 × 1 人あたり 0.4259 億円、利益率 12.5%
- IT制御・科学測定:数量 304(稼働人員(人年。事業別の従業員数、実質))× 価格 0.90(1人あたり売上(億円・名目))→ 売上 274 億円・営業利益 19 億円。304 人年 × 1 人あたり 0.9022 億円、利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)131 億円。全体の PER 17.97 倍、時価総額 774 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人手不足と先端半導体の需要が重なり、利益率が過去の山を超える筋書き。受注残が減っており、連続して当たる必要があるので低く置いた。
やや楽観 20% 需要が堅調で、利益率が高めに残る 利益 33 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 8,344 円673 億円
自動化の需要は堅調で、FA の仕事量は 2 割ほど増える。価格転嫁は物価をやや上回り、利益率は 12% 前後を保つ。IT 制御・科学測定は少し細るが、利益率は 6% 台後半まで上がる。
営業利益は 45 億円台になる。配当性向は 4 割台前半に上がり、現金の積み上がりは続く。
中国勢の価格攻勢は続くが、独自製品が値崩れを防ぐ。海外 11 社の拠点網が、日系メーカーの海外工場の需要を取り込む。
受注残は FA で増え、IT 制御・科学測定でも安定する。10 年後の ROE は事業だけで 15% に届き、会社の掲げる目標に近づく。ただし、全体の ROE は現金の重さで 8% 台にとどまる。
- インテリジェントFAシステム:数量 666(稼働人員(人年。事業別の従業員数、実質))× 価格 0.42(1人あたり売上(億円・名目))→ 売上 280 億円・営業利益 34 億円。666 人年 × 1 人あたり 0.4198 億円、利益率 12.0%
- IT制御・科学測定:数量 298(稼働人員(人年。事業別の従業員数、実質))× 価格 0.89(1人あたり売上(億円・名目))→ 売上 265 億円・営業利益 18 億円。298 人年 × 1 人あたり 0.8891 億円、利益率 6.8%
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)135 億円。全体の PER 17.48 倍、時価総額 673 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自動化の需要が続き、利益率が過去の山の手前で定着する筋書き。業界の追い風が続く間は、有力な姿とみた。
中立 34% 堅実に伸び、現金が積み上がる 利益 28 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 6,950 円561 億円
FA の仕事量は実質で 1 割増える。人手不足は続くが、価格競争で利益率は 11% にとどまる。IT 制御・科学測定は少し細り、利益率は 6% 台半ばを保つ。物価の分だけ売上は増え、営業利益は 38 億円ほどになる。
配当性向は 42% に上がるが、現金は積み上がる。10 年後の余った現金は 175 億円ほどに積み上がると置く。ROE は全体で 7% 台、事業だけなら 13% を超える。
大きな失敗も、大きな成功もない。手堅く稼ぎ、現金をためる会社のままで、筆頭株主の姿勢も大きくは変わらない。
FA の受注は半導体の投資次第で上下するが、10 年を均せば、緩やかな増加になる。IT 制御・科学測定は、独自製品が支える部分だけが残り、他社機器の販売は細る。
- インテリジェントFAシステム:数量 611(稼働人員(人年。事業別の従業員数、実質))× 価格 0.41(1人あたり売上(億円・名目))→ 売上 253 億円・営業利益 28 億円。610 人年 × 1 人あたり 0.4136 億円、利益率 11.0%
- IT制御・科学測定:数量 289(稼働人員(人年。事業別の従業員数、実質))× 価格 0.88(1人あたり売上(億円・名目))→ 売上 253 億円・営業利益 16 億円。289 人年 × 1 人あたり 0.8761 億円、利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)131 億円。全体の PER 16.61 倍、時価総額 561 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人手不足の追い風と価格競争が相殺し、会社の予想に近い利益率が続く、最も標準的な姿。
やや悲観 26% 価格競争で伸びが止まり、利益が細る 利益 18 億円 · PER 8.3 倍 · 株価時価総額 3,029 円244 億円
中国勢の台頭で、検査装置や計測機器の価格が下がる。FA の仕事量は 5% 減り、物価の上昇も値段に乗せきれない。FA の利益率は 8% 台、IT 制御・科学測定は 5% に落ちる。
営業利益は 23 億円ほどで、今の 8 割に満たない。会社は配当を守ろうとし、性向は 45% に上がる。現金は積み上がるが、稼ぎは細る。
半導体投資の減速と、受注残の減少が重なる。独自製品の比率が低く、価格を守れない局面が続く。それでも財務の体力は残る。
国内の工場は人口減で縮み、海外の日系メーカーも現地化を進める。協立電機の海外 11 社も、競争の厳しい市場で苦戦する。現金の積み上がりは続くが、その利息では利益の減りを埋めきれない。
- インテリジェントFAシステム:数量 527(稼働人員(人年。事業別の従業員数、実質))× 価格 0.40(1人あたり売上(億円・名目))→ 売上 208 億円・営業利益 18 億円。527 人年 × 1 人あたり 0.3951 億円、利益率 8.5%
- IT制御・科学測定:数量 258(稼働人員(人年。事業別の従業員数、実質))× 価格 0.84(1人あたり売上(億円・名目))→ 売上 216 億円・営業利益 11 億円。258 人年 × 1 人あたり 0.8368 億円、利益率 5.0%
倍率:事業の ROE 8.8%(余った現金 155 億円とその利息 2.2 億円を除く)。RONIC = 8.63%、g 4% から正当化 PER = 11.9 倍。価格競争で稼ぎが細る局面で、悲観側は式の値の 7 割の 8.3 倍に置いた。時価総額 =(純利益 − 余った現金 × 1.4%)× PER + 余った現金 × 0.5。
確率:中国勢の台頭と半導体投資の減速で、値上げが通らなくなる筋書き。受注残の減少と筆頭株主の存在を考え、中立に近い厚みで置いた。
悲観 12% 中国勢に押され、稼ぎが崩れる 利益 2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 963 円78 億円
構造的に負ける。中国メーカーの価格攻勢と、半導体投資の長い停滞が重なり、主力の検査装置の受注が細る。FA も IT 制御・科学測定も仕事量が 3 割減り、価格は物価に届かない。
営業利益は数億円で、赤字の年も混じる。減損で自己資本が目減りし、配当は維持しても額は小さい。余った現金は、失敗した投資や買収に使われて半分以下になる。
財務の体力は残るが、稼ぐ力の回復は見えない。優良な中堅とは見られなくなり、筆頭株主を巻き込む再編の対象になる可能性が高い。
この筋書きでは、現金の戻りも期待できない。筆頭株主が経営を握ったまま、低い収益の事業に資金を使い続ける。少数株主は、清算でもなければ、現金の恩恵を受けにくい。
- インテリジェントFAシステム:数量 389(稼働人員(人年。事業別の従業員数、実質))× 価格 0.35(1人あたり売上(億円・名目))→ 売上 138 億円・営業利益 5 億円。388 人年 × 1 人あたり 0.3549 億円、利益率 3.5%
- IT制御・科学測定:数量 213(稼働人員(人年。事業別の従業員数、実質))× 価格 0.75(1人あたり売上(億円・名目))→ 売上 160 億円・営業利益 3 億円。213 人年 × 1 人あたり 0.7519 億円、利益率 2.0%
倍率:構造的に優良でなくなった姿。谷の年の純利益は 2 億円ほどで、稼ぐ力(純利益 ÷ k)は 30 億円に届かない。床は売れる資産で測る。現金同等物約 110 億円から借入を引いた約 100 億円に、上場株の税後と売掛債権の回収の一部を加えて約 115 億円。少数株主は清算を決められないため、戻り方を 0.7 と見て、今の自己資本 222 億円に PBR 0.35 倍(約 78 億円)を掛けた。営業利益が小さく、EV ÷ 営業利益は参考にならない。
確率:価格競争と大口の受注減で構造的に優良でなくなる筋書き。2010 年 6 月期の赤字の実績と規模の小ささから、1 割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
インテリジェントFAシステム
工場の自動化システム、半導体の基板検査装置、計測・試験装置、省エネ製品。会社全体の稼ぎ頭。
| 数量稼働人員(人年。事業別の従業員数、実質) | 価格1人あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 555 | 0.31 | 171 | 20 |
| 10 年後 中立 | 611 | 0.41 | 253 | 28 |
取り方:インテリジェント FA システム事業の売上 171.30 億円・セグメント利益 20.0 億円(有報)。数量は、事業別の従業員 555 人を稼働人員(人年)とみて置いた。1 人あたり売上(0.3087 億円)が価格で、物価の分は価格に入る。人員は増やしにくいが、海外子会社や協力会社の稼働を含む実質の仕事量の目安である。
IT制御・科学測定
制御・計測の情報システムと科学測定機器。水質の連続監視、トンネル工事の管理、道路の点検用の部品など。その他(不動産賃貸)を含む。
| 数量稼働人員(人年。事業別の従業員数、実質) | 価格1人あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 304 | 0.65 | 199 | 13 |
| 10 年後 中立 | 289 | 0.88 | 253 | 16 |
取り方:IT 制御・科学測定事業の売上 198.26 億円とその他 0.49 億円の合計 198.75 億円、セグメント利益 12.84 億円。従業員 304 人を稼働人員とみた。1 人あたり売上(0.6538 億円)は、他社機器の仕入れ販売を含むため FA より高い。全社の調整(本社費など −4.36 億円)は筋書きの adjust_oku に置く。
リスクと懸念
半導体の設備投資が減速する
基板検査装置は、半導体と電子部品の設備投資に連動する。投資が止まれば、FA 事業の利益が先に落ちる。FA の受注残は前の期末から 9% 減っており、次の期の売上を支える手持ちが細っている。2010 年 6 月期には営業赤字も経験した。
中国メーカーの価格攻勢
検査装置や計測機器では、中国のメーカーが台頭している。価格競争が激しくなれば、物価の分を値上げに乗せられず、利益率が下がる。独自製品の比率が低い部分から、先に値崩れが始まる。
仕入れ先に値段を握られる
売上の半分以上に、他社の機器を組み合わせて納める商売が含まれる。仕入れ先が値上げしても転嫁できるとは限らず、顧客が直接買う動きが出れば、取り分が減る。システムの付加価値が薄れる危険がある。
現金が株主に戻らない
現金同等物は 110 億円と時価総額の 6 割に当たるが、筆頭株主が約 3 割を握り、自社株買いの実績はない。現金が低い利回りで眠れば、ROE は下がり、帳簿の価値と株主の価値の差が開く。割高な買収に使われる危険もある。
IT 制御・科学測定の収益力が低い
この事業は売上の 54% を占めるが、利益率は 6% 台にとどまり、直近は売上が 9% 減った。他社機器の販売が多く、独自製品に移れなければ、稼ぎの足を引っ張る。
小さな会社の人材確保
単体の従業員は 394 人と少ない。技術者の確保が難しくなれば、受注があっても施工できない。平均年収は 654 万円と大手より低く、人材が流出すれば、独自製品の強みが損なわれる。
今後の分かれ目
- 次の期の営業利益が会社予想の 32 億円を下回ったら
- FA の回復が遅れていると見て、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 自社株買いを始める、または配当性向を 50% 以上に引き上げたら
- 現金が株主に戻ると確かめられ、余った現金の戻り方を 0.5 から 1.0 へ上げ、価値が大きく増える。
- FA の受注残が 2 期続けて増えたら
- 回復が確かになったと見て、中立の営業利益を上方に直す。
- 現金を使った大型の買収を発表したら
- 買収の稼ぎが資本コストを超えるかが分かれ目。超えなければ、余った現金の価値を大きく下げる。
- 筆頭株主のエム・エヌ・エスが売却や TOB に動いたら
- 買収価格が現金の厚みを反映するなら価値を押し上げる。反映しなければ、少数株主には不利になる。
- IT 制御・科学測定の利益率が 8% を超えたら
- 独自製品への移行が進んだと見て、中立の利益率を上げる。
見ておくもの
- FA・IT 制御・科学測定それぞれの受注高と受注残
- 営業キャッシュフローと現金同等物の推移
- 配当性向と自社株買いの有無
- 筆頭株主エム・エヌ・エスの持株比率の変化
- 半導体基板検査装置の需要と中国メーカーの動き
- 政策保有株の売却の進み具合
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE(余った現金とその利息を除く)が資本コスト k 7.75%(基本 7.5% + quality 1.0%)を上回る前提で、式の正当化 PER に 7〜9 割を掛けて置いた。余った現金は PER に混ぜず、純利益から利息分を除いて別に足し、戻り方 0.5 を掛けた。悲観は谷の利益でなく、売れる資産(約 115 億円)に戻り方を掛けて PBR で測り、谷の PBR は使っていない。今の株価や PER、同業の倍率を見てから決めたわけではない。10 年後の純利益には、現金が積み上がる分の利息を 2% の短期金利の 7 割(税後)で入れた。償却費は設備投資から年 3〜4 億円と推定し、物価では増やさず、新しい投資の分だけ増える形で置いた。株主優待はない。事務所の賃借が中心でリースの約束は小さく、2028 年 6 月期(早期適用なら前後)に新リース会計基準で BS の形が変わるが、数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.7→17.97 倍・やや楽観 PER 12.6→17.48 倍・中立 PER 10.6→16.61 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。理由は quality_why。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。