結論
大崎電気工業は、電力会社向けのスマートメーター(通信機能つきの電力量計)で国内首位級の会社だ。配電盤や、英国・オセアニア向けの海外メーター(子会社の EDMI)も持つ。筆者の結論は「ほぼ適正」。事業は堅いが利益率が薄く、10 年で値段が大きく動く余地は小さいと見る。
追い風は、国内の第 2 世代メーターへの切り替えだ。第 1 世代は 2014 年から東京電力などが一気に入れた。検定の有効期間は 10 年なので、2025 年度から取り換えが始まった。この需要は 10 年のあいだ切れ目なく続く。2026 年 3 月期は、売上が上場来初めて 1,000 億円に乗った。
弱みは三つある。買い手は電力会社で、入札のたびに値段を詰められる。海外は営業利益率が数 % しかなく、中国系との競争もある。銅など材料の値上がりも利益を削る。2026 年 3 月期の純利益 58 億円は不動産の売却益で膨らんだ数字で、ならした力は 40 億円台だ。
救いは財布が軽いことだ。純現金が時価総額の 3 割あり、特別配当や自社株買いで戻す姿勢も見える。ただ 10 年先の利益は物価並みに伸びる程度で、倍率も 13 倍前後にとどまる。大きな値上がりを期待する会社ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社は「悪くないが、持ち続けたいと言い切れない」会社だ。
良い点は、需要の読みやすさだ。メーターの取り換えは、検定の周期で順に来る。景気では止まらず、顧客の電力会社は倒れない。借金がなく、純現金がある。
悪い点は、稼ぐ力の弱さだ。値段を自分で決められず、入札で薄利になりやすい。10 年のうちに、資本コストを大きく上回る利益を出し続ける絵が描きにくい。寝かせたお金が増えるのは、毎年の利益が資本コストを超えている時だけだ。この会社は、超えた期が少ない。
資本の使い方は、変わりつつある。不動産と持ち合い株を売り、配当と自社株買いを増やす。これは評価できる。ただ、海外の工場の売却や撤退損など、整理の途中だ。
安全域はどうか。純現金が時価総額の 3 割あるので、悪い筋書きでも元本が大きく削れる絵は描きにくい。ただ、値上がりの期待を預けるには、利益率の改善がまだ数字で示されていない。静かで堅いが、割安と叫べる会社ではない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ口は大きく三つある。
最大の柱は国内の電力量計だ。電力会社が各家庭に付けるメーターを作って納める。いまはほとんどが通信機能つきのスマートメーターで、電力会社の入札で受注する。国内の売上は 2025 年 3 月期で約 560 億円だった。配電盤・分電盤(ビルや工場の電気を分ける箱)、需要を監視する装置、エネルギー管理のソフトも国内に入る。データセンター向けの配電盤は堅調で、利益率が上がってきた。
二つ目は海外のメーターだ。子会社の EDMI がオセアニアと英国で売る。オーストラリアとニュージーランドに入ったスマートメーターの約 7 割は EDMI 製だという。2026 年 1 月には、オセアニアで 5 年間 550 億円超の長期契約を結んだ。英国は国の全戸交換計画向けの出荷が伸びたが、先は減る。海外の売上は約 420 億円で、全体の 4 割を占める。
三つ目は不動産事業で、売上は 5 億円ほどと小さい。
この会社の特徴は、顧客が電力会社に偏ることだ。数量は国の制度と電力会社の更新計画で決まるので読みやすい。だが値段は入札で決まりやすい。子会社にはエネゲート(持ち分 51%)もある。2022 年には製造装置の子会社を売り、事業を絞ってきた。
優良さと弱いところ
この会社の堀、つまり他社がまねしにくい強みは、電力会社との長い取引と、量産と検定の実績にある。メーターは計量法の検定を通す必要があり、供給の遅れや不良は許されない。電力会社は信頼できる数社から買い続けるので、新規の参入は容易でない。
ただ、堀は広くない。国内の競合は東光東芝メーターシステムズ、三菱電機、GE 富士電機メーターで、入札のたびに値段を競う。顧客が電力会社しかなく、買い手の力が強い。筆者は、堀を「普通」と見る。値段を自分で決められるほどではない。
利益率がそれを物語る。営業利益率は過去 10 年で 2% から 9% の間を動き、いまも 6% 台だ。ROE の中央値は 4% で、資本コストに届かない期が長かった。2022 年 3 月期には赤字も出した。
変化の兆しはある。第 2 世代機は仕様が上がり、国内の利益率を押し上げている。海外は製造をマレーシアの工場から外部へ移し、固定費を軽くする。経営は ROE 10% を目標に掲げ、不動産と持ち合い株を売って資本を回している。
方向は正しいが、まだ実績が追いついていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の需要は、世代交代の山の中にいる。
第 1 世代の国内スマートメーターは、2014 年に東京電力が入札を始め、2020 年度ごろまでに主な電力会社が一気に入れた。検定の有効期間は 10 年だ。このため 2025 年度から、取り換えが各社で順に始まっている。仕様は新しくなり、通信方式や計器番号が変わる。取り換えは 2030 年代前半まで続くと筆者は見る。人口は減るが、取り換えの数は世帯数ではなく、設置済みの台数で決まる。国内の数量は 10 年を通して今の水準を保つ。
値段は逆風だ。電力会社の入札では、仕様が上がっても値段の抑えが効く。銅や石化製品の値上がりは、契約の価格に載せきれない期間がある。価格は物価に届かないと見る。
海外は二つの市場に分かれる。オセアニアは、オーストラリアが 2030 年に向けて導入を急ぐ。EDMI は大きな長期契約を持つ。英国は全戸交換が山を越え、出荷は減っていく。中東とアフリカからは撤退する。米国は進出の可能性を探る段階だ。競合には Landis+Gyr や Itron がいて、中国の Hexing や Wasion も世界で伸びている。
配電盤は、データセンターと工場の電力設備の更新に支えられて堅調だ。ただ、会社全体の利益に占める割合は大きくない。
電気機器全体を貫くのは中国勢との価格競争だ。この会社の場合、それが及ぶのは海外メーターで、国内は規制と検定に守られている。
資本政策と M&A
資本の使い方は、この数年で変わってきた。
還元は増えている。2025 年 5 月に配当の目安を DOE(自己資本に対する配当の割合)2% から 3% に上げた。2026 年 3 月期の配当は特別配当を含めて前の期の倍以上に増えた。自社株買いも 150 万株、上限 25 億円で進めている。2026 年 6 月には株主優待も入れた。
資産の圧縮も進む。中期計画の目標だった簿価約 30 億円の不動産売却を終え、政策保有株も減らしている。2026 年 7 月には、EDMI のマレーシア工場を 700 万ドルで売り、製造を外部に任せる形に変える。「持つ」から「任せる」への転換だ。
M&A は目立たない。2016 年に大崎エンジニアリングを完全子会社にし、2022 年に萩原電気へ売った。次の焦点は米国進出で、小さな提携から入る構えだ。
買われる側の可能性もある。電力業界とつながる九電テクノシステムズ(3.1%)や関西電力(2.2%)が株主に並ぶ。時価総額は 600 億円弱と小さく、買収が起きても不思議でない。kabufu の推定では、10 年以内の TOB の確率は約 20% だ。
実行済みの自社株買い(約17億円)は、株数と自己資本の起点に反映し、10年の還元には入れていない。
還元の点検(P3 2026-10-19):方針は DOE 3% の配当(10年で約210億円)に、上限25億円の自社株買い(約17億円は実行ずみで除外)。中立の還元を純利益の合計の56%から45%(配当210億円+自社株買い40億円ほど)に下げ、留保は自己資本に残した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
取り換えの山は、会社が自分で作った需要ではなく、制度が運んでくる需要だ。第 2 世代機は 2025 年度から本格的に動き出し、営業利益は 2027 年 3 月期に過去最高の 81 億円を見込む。単価は上がり、国内の利益率は一段上がる。配電盤はデータセンター向けで伸びている。
海外はこれから良くなる。オセアニアで 5 年間 550 億円超の長期契約を取った。マレーシア工場を手放して固定費を軽くすれば、薄かった海外の利益率が上がる。米国でも進出の芽がある。
資本の使い方も変わった。DOE の目安を 3% に上げ、特別配当と自社株買いを重ねた。純現金は時価総額の 3 割あり、まだ戻せる。
時価総額は 600 億円弱と小さく、TOPIX への採用や、電力業界を株主に持つ縁の中での再編も材料になる。利益が先で 100 億円台に乗れば、10 年後の値段は今の 2 倍を超える。会社が掲げる ROE 10% が実現すれば、評価は変わる。
慎重な見方
この会社の利益は、いつも薄かった。営業利益率は過去 10 年で 2% から 9% の間にとどまり、ROE の中央値は 4% だ。2026 年 3 月期の純利益は不動産の売却益で膨らんだもので、2027 年 3 月期は 48 億円へ減る見通しだ。
国内は買い手が電力会社しかない。入札のたびに値段を詰められ、第 2 世代機で仕様が上がっても、その分が利益に残るとは限らない。東光東芝メーターシステムズや三菱電機は、取り換えの山を取りに来る。銅や石化製品の値上がりも、価格に載せきれない。2027 年 3 月期の営業利益は、中期計画の 90 億円に届かない。
海外はもっと厳しい。営業利益率は数 % で、英国の全戸交換は山を越え、中東・アフリカからは撤退する。オセアニアの設置は想定より遅い。Hexing や Wasion など中国勢が価格を下げて来る。米国進出は、費用を先に払う賭けだ。
取り換えの山が落ち着く 2030 年代半ば以降は、需要がメーターの寿命の周期だけになり、成長は物価並みだ。利益率が薄いままなら、倍率は資本コストの逆数、つまり 13 倍前後が限度になる。
どちらに重みを置いたか
第 2 世代機の取り換えが 10 年続くことは、強気の言い分が通る。国内の利益率が上がり、特別配当を含む還元も増えている。一方、値段を決める力が弱く、海外の利益が薄いという慎重な指摘も重い。実績の ROE は資本コストを下回る期が長く、改善はまだ見通しの段階だ。確率は、中立に 3 割強を置き、慎重側を少し厚くした。悪い筋書きは、入札での敗北と海外の価格破壊が重なる形に絞り、13% とした。純現金があるので、悪くなっても元本が大きく削れる絵は描かなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,550 円1,103 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 571 円247 億円)。 今の値に割り戻すと 1,602 円693 億円、今との差 +19.0%、 期待の年率 +8.8%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,926 円2,131 億円 | 816 円353 億円 | +326.6% | +15.6% | 459 円199 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,812 円1,649 億円 | 691 円299 億円 | +234.6% | +12.8% | 991 円428 億円 |
| 中立 | 32% | 2,864 円1,239 億円 | 583 円252 億円 | +156.1% | +9.9% | 1,103 円477 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,408 円609 億円 | 486 円210 億円 | +40.7% | +3.5% | 473 円205 億円 |
| 悲観 | 13% | 377 円163 億円 | 354 円153 億円 | −45.7% | −5.9% | 95 円41 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,550 円1,103 億円 | 571 円247 億円 | +131.9% | +8.8% | 3,121 円1,350 億円 |
今の株価時価総額 1,346 円582 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 取り換えの山を高い利益率でこなし、海外も伸びる 利益 115 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 4,926 円2,131 億円
第 2 世代機の取り換えが予定どおり進み、国内の数量は今より 1 割強多い水準を 10 年保つ。仕様が上がった分の単価が入札で認められ、価格は物価を少し上回る。国内の利益率は 13% 台まで上がり、データセンター向けの配電盤も加わる。
海外は、オセアニアの長期契約が計画より早く積み上がり、製造の外部委託で利益率が 8% に乗る。米国の中規模の電力会社に EDMI の機器が入り、数量が 4 分の 1 増える。
売上は 1,600 億円台、営業利益は 180 億円近くになる。ROE は 12% 前後まで上がり、ようやく資本コストを大きく超える会社になる。還元も厚く、10 年間で 400 億円を株主に戻す。
- 国内(電力量計・配電盤・ソリューション・不動産):数量 1,099(メーター換算の台数(万台、推定))× 価格 0.83(1 台あたり売上(万円・名目。配電盤等も台数に換算))→ 売上 910 億円・営業利益 123 億円。1,099 万台 × 0.828 万円(今の 1.38 倍)、営業利益率 13.5%
- 海外(EDMI:オセアニア・英国・その他):数量 656(メーター換算の台数(万台、推定))× 価格 1.07(1 台あたり売上(万円・名目、1 ドル 150 円))→ 売上 703 億円・営業利益 56 億円。656 万台 × 1.072 万円(今の 1.34 倍)、営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 114 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)63 億円。全体の PER 16.91 倍、時価総額 1,993 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の利益率が 13% 台に乗り、海外も新市場を開く必要があり、取り換えが予定どおり進むうえに複数の条件が揃う形。実現すれば強いが、入札型の事業では連続して揃いにくい。
やや楽観 22% 国内は堅調、海外は薄利のまま少し改善 利益 91 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 3,812 円1,649 億円
国内の取り換えは順調で、数量は今より 6% 増える。仕様の向上が価格に一部反映され、国内の営業利益率は 12% 台になる。配電盤はデータセンター向けを中心に堅調で、国内の売上は 800 億円台に乗る。
海外はオセアニアの契約を着実にこなし、英国の減少を補う。製造の外部化が効いて、利益率は 7% 近くまで上がる。米国は小さな実証にとどまり、大きな利益は生まない。中国勢の価格圧力は受けるが、オセアニアの長期契約が数量の土台になる。
売上は 1,450 億円台、営業利益は 145 億円、純利益は 91 億円ほどになる。ROE は 11% 前後。DOE 3% の配当と自社株買いを続け、10 年間で 360 億円を戻す。
- 国内(電力量計・配電盤・ソリューション・不動産):数量 1,040(メーター換算の台数(万台、推定))× 価格 0.80(1 台あたり売上(万円・名目。配電盤等も台数に換算))→ 売上 836 億円・営業利益 103 億円。1,040 万台 × 0.804 万円(今の 1.34 倍)、営業利益率 12.3%
- 海外(EDMI:オセアニア・英国・その他):数量 588(メーター換算の台数(万台、推定))× 価格 1.06(1 台あたり売上(万円・名目、1 ドル 150 円))→ 売上 621 億円・営業利益 42 億円。588 万台 × 1.056 万円(今の 1.32 倍)、営業利益率 6.8%
倍率:事業の純利益 90 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)63 億円。全体の PER 15.9 倍、時価総額 1,496 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:第 2 世代機の取り換えと配電盤の伸びで国内の利益率が 12% 台に乗る、会社の見通しの延長線上の筋書き。海外は改善するが米国は小さな実証にとどまる。
中立 32% 取り換えは続くが、利益率は一桁後半で止まる 利益 70 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 2,864 円1,239 億円
国内は第 2 世代機の取り換えが 2030 年代前半まで続き、数量は今よりわずかに多い。入札の値段は抑えられ、価格は物価に少し届かない。国内の利益率は 11% で止まる。
海外は、オセアニアの契約が英国と中東・アフリカの減少を埋め、数量は横ばい。製造の外部化で利益率は 5〜6% に上がるが、中国勢の価格圧力で頭打ちになる。米国は小さな成果にとどまる。
売上は 1,340 億円、営業利益は 117 億円、純利益は 70 億円。ROE は 9% 弱で、資本コストをわずかに上回る程度だ。配当と自社株買いで 330 億円を戻す。
- 国内(電力量計・配電盤・ソリューション・不動産):数量 1,001(メーター換算の台数(万台、推定))× 価格 0.79(1 台あたり売上(万円・名目。配電盤等も台数に換算))→ 売上 793 億円・営業利益 87 億円。1,001 万台 × 0.792 万円(今の 1.32 倍)、営業利益率 11%
- 海外(EDMI:オセアニア・英国・その他):数量 525(メーター換算の台数(万台、推定))× 価格 1.04(1 台あたり売上(万円・名目、1 ドル 150 円))→ 売上 546 億円・営業利益 30 億円。525 万台 × 1.04 万円(今の 1.30 倍)、営業利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 69 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)63 億円。全体の PER 14.68 倍、時価総額 1,078 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の取り換え需要が続き、入札と材料高で利益率が頭打ちになる、いちばん起きやすい筋書き。慎重な見方の方がやや強いので、確率は中立を軸に悪い側を少し厚くした。
やや悲観 25% 入札で価格が崩れ、海外は中国勢に押される 利益 42 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,408 円609 億円
入札で価格競争が強まり、国内の第 2 世代機の価格は物価に 1 割以上届かない。一部の電力会社でシェアを落とし、数量は 1 割弱減る。銅の高止まりで国内の利益率は 8% 台に落ちる。
海外では、英国の需要が終わり、中国勢との競争がオセアニアにも及ぶ。長期契約は守るが、更新時に値下げを求められ、利益率は 3% 台に落ちる。米国への進出は費用だけが残り、撤退する。
売上は 1,130 億円、営業利益は 73 億円まで。ROE は 6% 前後で資本コストに届かない。配当は DOE の目安で守るが、自社株買いは止まる。10 年間の還元は 250 億円。
- 国内(電力量計・配電盤・ソリューション・不動産):数量 903(メーター換算の台数(万台、推定))× 価格 0.75(1 台あたり売上(万円・名目。配電盤等も台数に換算))→ 売上 677 億円・営業利益 58 億円。903 万台 × 0.750 万円(今の 1.25 倍)、営業利益率 8.5%
- 海外(EDMI:オセアニア・英国・その他):数量 473(メーター換算の台数(万台、推定))× 価格 0.96(1 台あたり売上(万円・名目、1 ドル 150 円))→ 売上 454 億円・営業利益 15 億円。473 万台 × 0.96 万円(今の 1.20 倍)、営業利益率 3.5%
倍率:事業の ROE 5.8% は k 7.75% に届かない。g 3.5% で正当化 PBR=(5.8−3.5)÷(7.75−3.5)=0.54 倍、PER に直すと 9.3 倍。これに近い 9.5 倍に置いた。余った現金は筋書きで額を書かないので今の 0.75 倍(60 億円)を、戻り方 1.0 で足した。(還元を方針に合わせて再計算:還元 233→210 億円、自己資本 768→791 億円、事業の ROE 5.7%→5.6%、正当化 PER の上限 12.9→12.9 倍。上限に対する置き方の割合は変えず 9.50 倍)
確率:入札の価格競争は第 1 世代のときも起きた現実の筋書きで、海外の利益率は過去も 3% 前後だった。慎重な見方の方がやや強いため、この筋書きに 25% を置いた。
悲観 13% 入札で複数社を失い、海外は価格で負ける 利益 16 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 377 円163 億円
第 2 世代機の入札で複数の電力会社を競合に取られ、国内の数量が 4 分の 1 ほど減る。落札の値段は材料高を吸収できず、国内の利益率は 5% に落ちる。
海外は、中国勢の低価格機がオセアニアでも標準になり、EDMI は価格で負ける。製造の外部委託で固定費は軽くなったが、数量が 4 分の 1 減り、利益はほぼ消える。米国の投資は回収できない。
売上は 850 億円、営業利益は 28 億円にとどまる。「普通の電機メーカー」としての収益力しか残らないが、純現金が土台になるので、会社が傾くことはない。配当は DOE で守り、10 年間の還元は 170 億円。
- 国内(電力量計・配電盤・ソリューション・不動産):数量 736(メーター換算の台数(万台、推定))× 価格 0.69(1 台あたり売上(万円・名目。配電盤等も台数に換算))→ 売上 508 億円・営業利益 25 億円。736 万台 × 0.690 万円(今の 1.15 倍)、営業利益率 5%
- 海外(EDMI:オセアニア・英国・その他):数量 394(メーター換算の台数(万台、推定))× 価格 0.88(1 台あたり売上(万円・名目、1 ドル 150 円))→ 売上 347 億円・営業利益 3 億円。394 万台 × 0.88 万円(今の 1.10 倍)、営業利益率 1%
倍率:悲観の純利益 16 億円は ROE 2.5% で、ためた利益は額面未満の価値しかない。やや悲観の時価総額÷純利益 10.7 倍より悲観ほど低く置くので、その約 95% の 10.2 倍(時価総額 163.2 億円)とした(稼ぐ力 純利益÷k も超えない)。自己資本の厚さや市場の倍率は根拠にしない。
確率:国内の入札敗北と海外の価格破壊が同時に起きる複合の筋書き。電力会社が複数社から買う仕組みで国内の負けは一部に限られ、純現金もあるので、最悪でも 13% に抑えた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内(電力量計・配電盤・ソリューション・不動産)
電力会社向けスマートメーター、配電盤・分電盤、需要監視装置、エネルギー管理サービス。小さな不動産事業(売上 5 億円ほど)もここに含める。
| 数量メーター換算の台数(万台、推定) | 価格1 台あたり売上(万円・名目。配電盤等も台数に換算) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 981 | 0.60 | 589 | 52 |
| 10 年後 中立 | 1,001 | 0.79 | 793 | 87 |
取り方:セグメント売上は開示(2025 年 3 月期は国内 560 億円・海外 417 億円)。2026 年 3 月期の内訳は第 2 世代機の増収を踏まえ、国内 589 億円・海外 420 億円(不動産 5 億円は国内に含む)と推定した。メーターと配電盤の平均を約 0.6 万円と置き、約 981 万台相当に分けた。台数は実質、物価は価格に入れる。営業利益は全社 65 億円を、海外の利益率が低い(3% 前後)と見て国内 52 億円・海外 13 億円に配分した推定。
海外(EDMI:オセアニア・英国・その他)
子会社 EDMI が、オセアニア・英国などの電力会社向けにスマートメーターと関連システムを売る。
| 数量メーター換算の台数(万台、推定) | 価格1 台あたり売上(万円・名目、1 ドル 150 円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 525 | 0.80 | 420 | 13 |
| 10 年後 中立 | 525 | 1.04 | 546 | 30 |
取り方:海外売上 420 億円を、機器とソフトの平均を約 0.8 万円(メーター本体に通信・ソフトを加えた額)と置き、約 525 万台相当に分けた推定。台数は実質で、物価は価格に入れる。営業利益は海外の利益率を 3% 前後と置いた推定(オセアニア減収と製造費の重さで薄い)。
リスクと懸念
入札の価格圧力と、顧客が電力会社に偏ること
国内の売上のほとんどは、電力会社の入札で決まる。買い手は数社に限られ、仕様が上がっても値段は抑えられやすい。1 社を失うだけで、数量が一度に 1 割以上動く。第 2 世代機の取り換えで他社にシェアを取られれば、利益率の改善の筋書きが崩れる。
銅・石化製品など材料の値上がり
2027 年 3 月期の営業利益 81 億円が中期計画の 90 億円に届かない主因は、中東情勢による石化製品と銅の値上がりだ。契約価格に載せられるまで時間差があり、入札型の事業では吸収しきれない期間が続く。収束の見通しは立っていない。
海外 EDMI の利益率が薄いこと
海外の営業利益率は数 % で、全社の利益を押し上げる力はまだ弱い。オセアニアの設置が想定より遅く、製造費も重かった。長期契約は 550 億円超あるが、利益に変わるのは製造の外部化と設置の本格化が前提になる。
英国の山越えと中東・アフリカからの撤退
英国の全戸交換向けの出荷は 2026 年 3 月期に伸びたが、その先は減る見通しだ。中東・アフリカは撤退を決め、2026 年 1 月には事業撤退損も出した。海外の売上は、オセアニアが埋め合わせるまで一時的に細る。
製造の外部化の実行
マレーシアの工場(オセアニア向けの主力)を 2026 年 10 月末にも売り、製造を Cicor 社に任せる。固定費は軽くなるが、品質や納期を自分で握れなくなる。契約の細部はまだ詰めの途中で、損益への効果は開示されていない。
中国メーカーの台頭
Hexing や Wasion など中国勢は、安い価格でアジア・中東・アフリカに広がっている。オセアニアや英国でも更新のたびに価格を詰められる可能性がある。国内は検定と電力会社の信頼に守られているが、海外には同じ盾がない。
利益の一部が一過性であること
2026 年 3 月期の純利益 58 億円は、固定資産の売却による特別利益で膨らんだ。2026 年 2 月に決めた特別配当も、売却益が出た時の一過性の還元だ。売れる資産が尽きれば、還元は本業の利益の範囲に戻る。
今後の分かれ目
- 第 2 世代機の入札で、複数の電力会社の受注を競合に取られたら
- 国内の数量と利益率の前提を下げ、やや悲観・悲観の筋書きの確率を引き上げる。
- 国内の営業利益率が 11% を超えて、2 年続いたら
- 仕様の向上が価格に残ると見て、楽観・やや楽観に重みを移す。ROE が 10% に届くかを合わせて確認する。
- マレーシア工場の売却後も、海外の営業利益率が 3% 台のままなら
- 製造の外部化で利益が増える前提を引き下げる。海外は薄利のまま、やや悲観の側に寄せる。
- 銅や石化製品の値上がりが続き、中期計画の 90 億円が先送りされたら
- 材料高を契約に載せる力が弱いと見て、国内の利益率の置き方を下げる。
- 米国で電力会社と実証を進め、実際の受注が出たら
- 海外の数量の上振れとして、楽観側の確率を少し上げる。ただし米国は競合が強く、利益が出るまでは費用が先に出る。
- 電力会社系の株主を含む再編や TOB の話が出たら
- 時価総額が小さく買収の対象になりうる。条件が純現金と事業の本質価値を反映するかを、別に評価し直す。
見ておくもの
- 第 2 世代スマートメーターの出荷台数と、国内の営業利益率(2027 年 3 月期の過去最高益 81 億円が出るか)
- 電力会社ごとの入札の結果と、落札の価格
- EDMI のオセアニア長期契約の進み具合と、海外の営業利益率
- マレーシア工場の売却後の製造委託の条件と、損益への効果
- 還元の方針(DOE 3% の維持、特別配当・自社株買いの継続)と、TOPIX への採用
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の PER や過去の PBR に寄せず、式で置いた。k は基本 7.5% に、循環-0.25%・値決め力+0.25%・寿命+0.25% を入れた 7.75%。事業の ROE が k を少し上回るので RONIC は k に近く、正当化 PER は 14 倍ほどで、中立は 1÷k の床に近い 13 倍にした。純現金 179 億円のうち、運転資金などを除いた 80 億円を余った現金として分け、戻り方 1.0(特別配当と自社株買いの実績)で足した。新リース会計基準(2028/03 期から BS に載る)では営業利益が少し増え、純有利子負債が増えるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。悲観は稼ぐ力(純利益÷k)を上限に、倍率をやや悲観の約95%に置いた。過去の倍率や自己資本の厚さは根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.51→16.91 倍・やや楽観 PER 13.29→15.9 倍・中立 PER 12.9→14.68 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。