結論
東京コスモス電機は、音響機器のつまみなどに使う可変抵抗器と、車のミラーヒータやセンサを作る部品会社だ。筆者の結論は、ほぼ適正。可変抵抗器は強いが、全社では利益が薄く、今の値段はそれをおおむね映している。
この会社は 2025 年に揺れた。米国の部品大手 Bourns が全株の買い取りを提案し、旧経営陣は賛同した。だが主要株主が応じず、提案は消えた。のちの特別調査委員会は、旧経営陣が企業価値より買収の成立を優先したと指摘した。今は、3 割強を持つ投資会社 Axium Capital の代表が社長を務める。
事業の芯は可変抵抗器だ。売上の 4 割弱で、利益率は 2 割ある。一方、売上の 6 割の車載は利益率 7% と薄く、全社の費用も重い。全社の利益率は過去 12 年の中央で 5% ほどだ。
資本の使い方ははっきりした。配当性向 100% と、純資産の 3.5% を下限とする配当だ。利益はほぼ全部が株主に戻る。筆者は、純現金と上場株を足しても、今の値段に厚い安全域は無いとみる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、長く持ちたい会社かと問えば、答えは「部品は好きだが、会社はまだ決めかねる」だ。
良い点は、可変抵抗器という小さくても強い部品を持つことだ。利益率 2 割は、替えにくさと値決めの力の証拠になる。資本の使い方も明快で、配当性向 100% で利益を株主に戻す。純現金があり、倒れる心配は小さい。
悪い点は、強い部品が売上の 4 割にすぎないことだ。車載は薄く、全社の費用も重い。統治は立て直しの途中で、社長も長くはいない見込みだ。
払う値段で見ると、今の時価総額は純資産の 9 割弱だ。純現金と上場株を除いた事業の値段は、平常の利益の 10 倍に満たない。ただ、平常の利益そのものが資本コスト並みなら、それは妥当な値段だ。筆者は、全社の費用をどこまで削れるかを見ている。削れれば、可変抵抗器の稼ぎが全社の利益にそのまま届く。
何で稼ぐ会社か
事業は 2 つある。売上の 4 割弱が可変抵抗器、6 割強が車載用電装部品だ。
可変抵抗器は、回すと電気の抵抗が変わる部品だ。オーディオの音量つまみ、産業機器の調整、ゲーム機の操作レバーなどに使う。1957 年の創業以来の本業で、会社は「アジア首位の可変抵抗器メーカー」を目指すと掲げる。触った感触や寿命が選ばれる理由になる部品で、利益率は 2 割と厚い。
車載用電装部品は、ドアミラーの曇りを取るフィルムヒータ、ハンドルなどの角度を測るセンサ、スイッチが中心だ。最大の顧客は東亜電気工業で、売上の 4 分の 1 強を占める。福島の白河と会津、大分の中津、中国の煙台と広州に工場がある。
新しい中期計画では、2029 年に ASEAN の新工場を動かし、一部の生産を移す。車載の品質規格 IATF を取り、欧米の部品会社も開拓する。2031 年 3 月期の目標は、売上 125 億円、営業利益 15 億円だ。
稼ぎの形は、小さな部品を数多く作り、用途ごとに作り分けることだ。1 品ずつの数量は小さいが、品目の数が多く、顧客は長く同じ部品を使い続ける。
優良さと弱いところ
優良さを一言で言えば、強い部品を 1 つ持つが、会社全体は薄い。
強みは可変抵抗器だ。利益率 2 割は、電子部品の中堅として高い。用途が細かく分かれ、1 品ずつの数量は小さいので、大手が本気で取りに来にくい。長く使われてきた部品は、顧客の設計に組み込まれて替えにくい。
弱みは 3 つある。第一に、売上の 6 割の車載は利益率 7% と薄く、完成車の会社と部品の大手に値段を決められる。第二に、最大顧客に売上の 4 分の 1 強を頼る。第三に、全社の費用が重く、セグメントの利益の 6 割が消える。
統治は立て直しの途中だ。旧経営陣の買収の進め方には、特別調査委員会が厳しい指摘をした。資本コストは基本より 0.75 ポイント高い 8.25% とみる。同じ領域の帝国通信工業や北陸電気工業より 0.25 ポイント低いのは、可変抵抗器の利益率が値決めの力を示すからだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界を動かすのは、つまみのデジタル化、車の電装化、金属の値段の 3 つだ。
可変抵抗器は成熟した部品だ。機器の操作は、デジタルの回転検出やタッチの画面に少しずつ置き換わる。それでも、音響機器や産業機器では、手で回す感触と壊れにくさが好まれ、需要は細りながら長く残る。競合は国内の帝国通信工業やアルプスアルパイン、米国の Bourns、中国や台湾の部品会社だ。供給する会社が減る分、残った会社のシェアは上がりやすい。
車載は、電動化と運転支援で 1 台に載るセンサの数が増える。ミラーヒータは寒い地域の車に欠かせず、数量は車の生産台数に沿う。ただ、完成車の会社は毎年の値下げを求め、部品会社の利益は薄い。
金属の値段は利益を振らせる。抵抗体と接点に使う銀やパラジウムが値上がりすると、値段の改定が追いつくまで利益が削られる。2026 年 3 月期の減益の一因はこれだ。
業界の再編は進んでいる。2025 年には米国の Bourns と国内の会社の 2 社が、この会社を買おうと競った。小さくても強い部品を持つ会社は、大手にとって買う値打ちがある。
資本政策と M&A
資本政策は、新しい経営陣のもとで大きく変わった。配当は配当性向 100% を目安とし、純資産の 3.5% を下限とする。2027 年 3 月期の配当は前の期より 25% 増やす予定で、利益を上回る。
筆頭株主はシンガポールの投資会社 Axium Capital で、3 割強を持つ「その他の関係会社」だ。社長はファンドの代表で、在任は 1 年程度とみている。持ち合いの株は売るか、純投資に変えた。
2025 年の買収の提案は、旧経営陣が進め、主要株主が応じずに消えた。特別調査委員会は、別の国内の会社がより高い値段を出していたのに、旧経営陣が話を引き延ばしたと指摘した。大株主が投資会社である以上、会社を売る道は 10 年の中で再び開きうる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026 年 3 月期の減益は、一時の要因が重なった結果だ。金属の値上がり、買収の騒ぎの費用、旧経営陣の時代の重い費用である。2023 年から 2025 年には、利益率が 10% を超えていた。事業の実力はそこにある。
可変抵抗器は、アジアで残る数少ない作り手になる。供給する会社が減るほど、残った会社は値段を上げられる。ASEAN の新工場でコストも下がる。
新しい経営陣は、資本の使い方を変えた。配当性向 100% で利益は全部戻り、無駄な現金はためない。全社の費用も削る。持ち合いの株も手放し、資本コストを意識した経営に変わりつつある。
何より、この会社には買い手がいた。2025 年に 2 社が、今の株価の 1.6 倍前後の値段を出した。強い部品を持つ会社の値打ちを、事業会社が認めた証拠だ。大株主が投資会社である以上、その値段に近い出口が再び来る見込みは高い。特別調査委員会が示した理論上の下限も、提案に近い水準だった。
慎重な見方
2023 年から 2025 年の利益率 10% 超は、円安と需要の山が重なった時期だった。過去 12 年の中央は 5% ほどで、そちらが実力に近い。2027 年 3 月期の最初の 3 か月は、営業利益が 0.3 億円しかなかった。
可変抵抗器は成熟した部品で、機器の操作はデジタルに置き換わる。中国の部品会社は安い品で追い上げる。車載は利益率 7% と薄く、最大顧客に売上の 4 分の 1 強を頼る。
統治にも不安が残る。特別調査委員会は、旧経営陣が企業価値を軽く扱ったと指摘した。今の社長はファンドの代表で、在任は 1 年程度の見込みだ。経営の顔ぶれが短い間に替わる会社は、長い計画を守りにくい。
配当性向 100% は聞こえが良いが、利益が弱い年も下限の配当が出て、手元の現金が減る。ASEAN の工場の投資と重なれば、現金の余裕は細る。買収の提案の値段は、買い手が見込んだ相乗効果込みの値段で、少数株主が単独の会社に払う値段の目安にはならない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。利益率 10% 超の 3 年間は追い風の時期で、過去 12 年の中央は 5% ほどだからだ。
ただ、可変抵抗器の強さと、資本の使い方の改善は本物だ。確率は中立を軸に、やや楽観に 2 割強を置いた。買収の提案の値段は、10 年の価値の計算には入れず、楽観の筋書きの中で触れた。結論は、今の値段がほぼ中立の筋書きを映しているということだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,418 円96 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 656 円44 億円)。 今の値に割り戻すと 1,124 円76 億円、今との差 +10.8%、 期待の年率 +7.4%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 3,297 円223 億円 | 1,071 円73 億円 | +330.3% | +15.7% | 524 円35 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,181 円148 億円 | 835 円57 億円 | +197.1% | +11.5% | 663 円45 億円 |
| 中立 | 36% | 1,111 円75 億円 | 621 円42 億円 | +70.6% | +5.5% | 623 円42 億円 |
| やや悲観 | 20% | 492 円33 億円 | 529 円36 億円 | +0.6% | +0.1% | 204 円14 億円 |
| 悲観 | 10% | 443 円30 億円 | 148 円10 億円 | −41.8% | −5.3% | 59 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,418 円96 億円 | 656 円44 億円 | +104.4% | +7.4% | 2,074 円140 億円 |
今の株価時価総額 1,015 円69 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 12% アジア首位の可変抵抗器と欧米の車載で、中計の利益率 12% に届く 利益 12 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 3,297 円223 億円
新しい経営陣のもとで、可変抵抗器はアジア首位の地位を固める。音響機器と産業機器のつまみは、触った感触と寿命で選ばれる部品で、安い品に替えにくい。ASEAN の新工場が 2029 年に動き、コストが下がって数量は 15% 増える。
車載は IATF の認証を足がかりに欧米の部品会社に食い込み、ミラーヒータと角度センサの数量は 3 割増える。全社の費用は削減が効き、物価ほどは増えない。
全社の営業利益は 16 億円台、利益率は 12% と、2023 年の山に並ぶ。配当性向 100% の方針で、利益はほぼ全部が株主に戻る。
この筋書きでは、2025 年に 2 社が競った買収の話が再び出ても不思議はない。
- 可変抵抗器:数量 69.2(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 84(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 14 億円。ASEAN 工場でコストが下がり数量 15% 増
- 車載用電装部品:数量 27.0(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 419(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 113 億円・営業利益 13 億円。欧米の部品会社に食い込み 3 割増
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 18.43 倍、時価総額 223 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新中計の 2031/03 の利益率 12% は 2023〜2025 年に一度届いた水準で、実績はある。ただ ASEAN 工場と欧米の開拓の両方が要り、1 割強。
やや楽観 22% 金属高を転嫁し、利益率が 8% 前後に戻る 利益 8 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 2,181 円148 億円
金属の値上がりは、数年かけて値段に転嫁される。可変抵抗器の利益率は 23% に戻り、数量も ASEAN の工場で 8% 増える。
車載はミラーヒータと角度センサが伸び、数量は 2 割増える。最大顧客の東亜電気工業向けは安定して続く。
全社の費用は物価並みに増えるが、旧経営陣の時代の一時の費用は消える。全社の営業利益は 12 億円前後、利益率は 8% 弱と、過去 12 年の中央と山の間に落ち着く。
配当性向 100% は続き、純資産はほぼ横ばいのまま、自己資本利益率は 1 割を超える。
稼いだ利益がそのまま株主に戻るので、10 年の還元の合計は今の時価総額に近い額になる。
- 可変抵抗器:数量 65.0(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 82(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 53 億円・営業利益 12 億円。転嫁が進み利益率が戻る
- 車載用電装部品:数量 24.0(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 407(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 98 億円・営業利益 10 億円。ミラーヒータと角度センサが伸びる
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 16.39 倍、時価総額 148 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026/03 期の利益の落ち込みは金属の値上がりと一時の費用が大きく、転嫁が進めば戻る。2023〜2025 年の利益率 10% 超の実績もあり、22%。
中立 36% 可変抵抗器は横ばい、車載は少し伸び、利益率は 5% 台 利益 5 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,111 円75 億円
可変抵抗器は、デジタルの回転検出に置き換わる用途もあり、数量は横ばいにとどまる。値段は物価にやや届かず、利益率は 21% と今並みだ。
車載は電動化と運転支援でセンサの数が増え、数量は 8% 増える。ただ、完成車の会社と大手の部品会社の値下げの圧力は続き、利益率は 9% だ。
全社の費用は物価で 1.3 倍に増える。全社の営業利益は 7 億円台、利益率は 5% 台と、過去 12 年の中央の少し上だ。
配当は DOE 3.5% の下限があるため、利益の弱い年も一定額が出る。10 年の還元は純利益を少し上回り、その分だけ余った現金が減る。
- 可変抵抗器:数量 60.2(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 78(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 47 億円・営業利益 10 億円。数量横ばい・物価にやや届かない
- 車載用電装部品:数量 21.6(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 401(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 87 億円・営業利益 8 億円。数量 8% 増・物価並み
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)13 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 75 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:可変抵抗器は成熟した部品で数量は伸びにくく、全社の費用も重い。利益率は過去 12 年の中央の少し上。最もありそうな筋書きとして 36%。
やや悲観 20% 金属高が残り、車載の値下げで利益が細る 利益 3 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 492 円33 億円
金属の値上がりは転嫁が遅れ、可変抵抗器の利益率は 19% に下がる。数量も 1 割弱減る。
車載は数量が横ばいで、値下げの圧力に押される。利益率は 7% と、2026/03 期並みにとどまる。
全社の費用は物価で増え、営業利益は 4 億円弱、利益率は 3% 弱と、過去の谷に近い。
配当は DOE の下限で利益を上回って出る。その分だけ手元の現金が減り、余った現金は半分ほどに細る。会社は倒れないが、自己資本利益率は 3% 台と資本コストを大きく下回る。
ASEAN の新工場の計画も先送りになり、コストを下げる手が遅れる。統治の立て直しも道半ばで、経営の顔ぶれが替わるたびに計画が揺れる。
- 可変抵抗器:数量 55.4(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 75(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 8 億円。金属高の転嫁が遅れる
- 車載用電装部品:数量 20.0(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 383(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 77 億円・営業利益 5 億円。値下げの圧力が続く
倍率:ROE 3.9% が k 7.75% 以下なので、上限は 1÷k=12.1 倍。稼ぐ力が資本コストを下回る筋書きなので、上限に引き上げず 8.5 割の 10.30 倍に置いた。余った現金は配当で減った分を引いて足した。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 10.97 倍・時価総額 33 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:2027/03 期の 1Q の営業利益は 0.3 億円と弱く、金属高の転嫁の遅れが長引く形は十分にある。最大顧客への依存も重く 2 割。
悲観 10% 可変抵抗器が置き換わり、車載の大口を失う 利益 −4 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 443 円30 億円
機器のつまみがデジタルの回転検出やタッチの操作に置き換わり、可変抵抗器の数量は 4 分の 1 減る。中国の部品会社が安い品で残りの市場を取る。
車載は最大顧客の東亜電気工業が調達先を替え、数量が 2 割減る。全社の営業は赤字に転じる。
会社は工場を整理し、配当は DOE の下限も守れなくなる。価値は、純現金と上場株の税後、工場の売却で残る分で測るしかない。
少数株主は、その現金の使い道を決められない。ただ、Axium Capital が 3 割を持つ以上、会社を売って現金を戻す道は残る。その値段は、残った事業の弱さを映して低い。
- 可変抵抗器:数量 45.2(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 69(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 31 億円・営業利益 4 億円。デジタル化と中国勢で 4 分の 1 減
- 車載用電装部品:数量 16.0(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 359(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 1 億円。最大顧客の離反で 2 割減
倍率:営業が赤字で稼ぐ力では測れないため、純現金と上場株、工場の売却で残る分で測る。今の自己資本 77 億円に約 0.39 倍を掛けた額が床の推定と一致する。
確率:可変抵抗器のデジタル化と、売上の 4 分の 1 強を占める顧客の離反が重なる構造的な負け。純現金があり倒れにくいので 1 割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
可変抵抗器
音響機器・産業機器・家電・ゲーム機などのつまみやレバーに使う可変抵抗器(ポテンショメータ)と、その応用のセンサ。
| 数量出荷個数(百万個/年・推定) | 価格1 個あたり平均単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.2 | 60 | 36 | 8 |
| 10 年後 中立 | 60.2 | 78 | 47 | 10 |
取り方:有報のセグメント売上 36.1 億円・利益 7.5 億円(全社費用の配賦前、利益率 20.8%)。個数は開示がなく、1 個の単価を 60 前後(価格の欄の単位)として推定で割った。2026/03 期は金属の値上がりと需要の減りで、利益が前の期から 35% 減った。
車載用電装部品
ドアミラーの曇り止めのフィルムヒータ、角度センサ、スイッチなどの車載部品。最大顧客の東亜電気工業向けが売上の 4 分の 1 強。
| 数量出荷個数(百万個/年・推定) | 価格1 個あたり平均単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 300 | 60 | 4 |
| 10 年後 中立 | 21.6 | 401 | 87 | 8 |
取り方:有報のセグメント売上 59.9 億円・利益 4.2 億円(全社費用の配賦前)。個数は開示がなく、1 個の単価を 300 前後(価格の欄の単位)として推定で割った。2026/03 期は利益が前の期から 56% 減った。全社費用は 2026/03 期 約 7.2 億円、2025/03 期 約 10.8 億円で、ならして 8 億円とみて物価で増やす(新しい経営陣の削減を少し見込み 10 年 1.25〜1.3 倍)。
リスクと懸念
金属の値段と転嫁の遅れ
抵抗体と接点に使う銀やパラジウムが値上がりすると、値段の改定が追いつくまで利益が削られる。2026/03 期の減益の一因で、2027/03 期の最初の 3 か月の利益もまだ弱い。
可変抵抗器のデジタル化
機器の操作がデジタルの回転検出やタッチの画面に置き換わると、可変抵抗器の数量は細る。中国や台湾の部品会社の安い品も残りの市場を狙う。
最大顧客への依存
東亜電気工業が売上の 4 分の 1 強を占める。調達先の見直しや車の生産の減少が、車載の数量と利益に直接響く。
統治と経営の継続
特別調査委員会は旧経営陣の買収の進め方を厳しく指摘した。今の社長は大株主のファンドの代表で、在任は 1 年程度の見込みだ。経営が短く替わると、長い計画が揺らぐ。
全社の費用の重さ
セグメントの利益の 6 割が全社の費用に消える。費用を削れなければ、可変抵抗器の稼ぎが全社の利益に届かない。物価で費用が膨らめば、利益率はさらに下がる。
配当の下限と現金
配当は純資産の 3.5% が下限で、利益が弱い年も一定額が出る。ASEAN の新工場の投資と重なれば、手元の現金の余裕が細る。
今後の分かれ目
- 2027/03 期の営業利益が予想の 5 億円を上回る
- 金属高の転嫁が進んでいる証拠。やや楽観の確率を上げる。
- 全社の費用が 7 億円を下回る水準で定着する
- 可変抵抗器の稼ぎが全社に届く。中立の利益率を上げる。
- ASEAN の新工場の場所と投資額が決まり、2029 年に動く
- コストが下がり、数量の伸びの裏付けになる。
- 事業会社から再び買収の提案が出る
- 短い期間の値段は上に振れる。10 年の本質価値の見立ては変えず、楽観の筋書きが近づいたとみる。
- 最大顧客の調達が大きく減る
- 車載の数量が落ちる。やや悲観と悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 可変抵抗器の利益率
- 全社の費用の額
- 銀・パラジウムの値段
- 最大顧客(東亜電気工業)向けの売上
- Axium Capital の保有と経営陣の顔ぶれ
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や同業の値付け、買収の提案の値段から置かず、10 年後の事業の自己資本利益率と資本コスト 7.75% から決めた。純現金と上場株の税後から運転資金を引いた 15 億円を余った現金とし、帳簿の額 × 戻り方 1.0 で足した。配当が利益を上回る筋書きは、その分を余った現金から引いた。償却は年 3.6 億円で、既存の設備は物価で増やさず、ASEAN の新工場の分だけ足す前提で利益率を置いた。今の株価は計算に使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.76→18.43 倍・やや楽観 PER 12.91→16.39 倍・中立 PER 10.3→12.9 倍・やや悲観 PER 10.3→10.97 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.75% を足して 8.25%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。