結論
タムラ製作所は、電気の形を変える部品と、はんだ付けの材料をつくる会社だ。売上の約 3 分の 2 がトランスやリアクトルなどの電子部品、約 3 分の 1 がソルダーペーストなどの電子化学で、7 割余りが海外で売れる。筆者の結論は、今の値段は AI データセンター向けの好調を、先の長い期間まで織り込んでいる、というものだ。
足元は確かに強い。2027 年 3 月期の営業利益は 65 億円と、9 期ぶりに過去最高を更新する見通しだ。米国のデータセンターで大型のトランスとリアクトルが足りず、メキシコ工場の増強が実を結んでいる。電子化学も、金属相場に合わせた値上げで利益が増えた。
だが、この会社の稼ぐ力は薄い。営業利益率は過去 10 年で 2〜6% にとどまり、ROE の中央値は 3.9% だ。構造改革で利益率を 7% に乗せる計画は筋が良い。それでも、特注品でない部品の値段は中国勢に抑えられやすい。中立の筋書きでも、10 年後の ROE は 7% に届かず、資本コスト 7.5% を下回る。
計算では、確率を掛けた本質価値は今の時価総額を 4 割近く下回り、総合で「割高」になった。強気の筋書き(確率 9%)でも、時価総額は今の 2 倍ほどだ。売上は伸びるが、株主に残る利益の伸びが追いつかない。安全域は見当たらない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を「いい時に買い、悪い時に耐える」型の製造業とみる。
良い事業とは、少ない資本で、長く、高い利益を出し続ける事業だ。タムラの過去 10 年は、そうなっていない。ROE の中央値は 3.9% で、資本コストの半分に届かない。ためた利益が、それ以上の利益を生んでいなかったことになる。
では、今の追い風で変わるのか。データセンター向けの大型部品は、足りない時期に設備を増やして受注を取る事業だ。需給が戻れば、利益率も戻る。筆者は、この波の頂上近くの利益を長期の稼ぐ力と見ない。
経営の資本配分は、改善の途上にある。持ち合い株を売り、DOE の目標を置き、赤字の情報機器を手放した。評価できる動きだ。それでも、10 年を平均した ROE が資本コストを超える筋書きは、強気の側にしかない。
払う値段に安全域があるかが最後の問いだ。中立でも本質価値は今を下回り、悲観では 3 分の 1 まで落ちる。今のところ、その問いには「ない」と答える。
何で稼ぐ会社か
事業は電子部品と電子化学・実装の 2 本柱だ。放送局向け音響機器などの情報機器事業(売上の 2%)は、2026 年 10 月に朋栄へ譲渡した。
電子部品(2026 年 3 月期の売上 815 億円、営業利益 33 億円)は、トランス、リアクトル、チョークコイル、ゲートドライバ、絶縁型の DC-DC モジュール、電流センサを作る。電気を使いやすい電圧や形に変える部品だ。行き先は再生可能エネルギー、電力インフラ、データセンター、産業機器、車載、鉄道、通信基地局、スマホと幅広い。いま伸びを引っ張るのは、米国のデータセンター向けの大型トランスとリアクトルで、主にメキシコ工場で作る。会社は、この分野の 2027 年度の売上を 2023 年度の 3 倍にする目標を掲げた。
電子化学・実装(売上 399 億円、営業利益 33 億円)は、ソルダーペースト、ソルダーレジスト、フラックスと、リフロー炉などのはんだ付け装置だ。電子基板に部品をつなぐ工程の材料で、車載向けが堅い。ペーストはスズ・銀・銅が原料で、販売価格は金属相場に合わせて改定する。売上は金属の値段で膨らみやすく、営業利益率は 8% 前後と、電子部品より高い。
全社の費用(本社費)は年 8 億円弱あり、部門の利益の合計から引かれる。情報機器は赤字が続いていたので、売却は足を引っ張る部分を切り離した形になる。次世代のパワー半導体材料である酸化ガリウムのノベルクリスタルテクノロジーは、タムラの研究部門から生まれた出資先で、連結には入らない。価値を認めるにしても、いまの利益には効いていない。
優良さと弱いところ
優良さは「ところどころ強い、全体では並み」と筆者は見る。
強みは顧客に入り込んだ設計力だ。大型のトランスやリアクトルは、電源の設計に合わせて作る特注品で、量産に入るまでに時間がかかる。いったん採用されれば、すぐには乗り換えにくい。ソルダーペーストも同じで、顧客の工場の生産ラインで品質を認定されると、材料を替える手間が壁になる。海外売上が 7 割を占め、40 を超える拠点で現地に近いところから供給できる点も効く。
弱みは、利益率の低さと波だ。営業利益率は過去 10 年で 2% から 6% の間にとどまり、ROE の中央値は 3.9% だった。赤字の期も 2009 年、2010 年、2013 年、2022 年、2026 年と何度かあり、2012 年には株数を増やす資金調達もした。ペーストは千住金属、弘輝、ニホンスペリアと競り合い、価格は金属相場に連動する。値段を自分で決める力は強くない。
経営は今、体質を作り直している最中だ。希望退職、中国の持分会社の譲渡、情報機器の売却と、痛みを伴う手を矢継ぎ早に打った。方向は正しいが、効果はこれから数字で確かめる段階にある。強い堀(他社がまねできない強み)とまでは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
いま追い風が吹いているのは、データセンターと電力インフラの設備だ。
北米では AI データセンターの増設と再生可能エネルギーの拡大で、大型トランスの納期が 100 週を超える水準まで伸びた。米国で使う大型変圧器の 8 割超は輸入に頼る。鉄心に使う電磁鋼板の不足や、工場の人手不足も重なった。タムラはこの隙間に、メキシコ工場の増強で入った。関税の逆風があっても、引き合いは強いと会社は見る。
ただし、この追い風はいつまでも続かない。変圧器メーカーが世界で増産に動けば、数年で需給はゆるむ。中国や韓国の電力機器メーカーも伸びている。納期の長さが価格を支えている間に、タムラがどこまで顧客を固められるかが勝負になる。データセンター投資そのものが一服する年もありうる。
もう一つの柱の電子化学は、電子基板の生産量に左右される。車載の電装化は長く続く流れだが、スマホや PC は成熟していて数量は増えにくい。ペーストの価格は金属相場に連動するため、スズや銀が上がれば売上は膨らみ、下がれば縮む。実質の数量が伸びなくても売上は動く。
技術の面では、SiC や GaN といったパワー半導体が広がり、周波数が上がるほどトランスやリアクトルは小さくできる。タムラはゲートドライバや小型の電源部品でこの流れに乗ろうとしている。部品が小さくなれば、1 個あたりの金額は下がりうる点は押さえておきたい。
資本政策と M&A
資本政策は、ようやく株主を向いてきた。
中期経営計画(2025 年度から 3 年)は、2027 年度に ROE 8%・営業利益率 7%・PBR 1 倍以上を目指す。配当は DOE(自己資本に対する配当)3% を目安にし、2024 年度の 2.1% から引き上げる。2026 年 3 月期には 10 億円の枠で自社株買いを実施した。2026 年 5 月には政策保有株 3 銘柄を売り、15 億円の利益を得た。持ち合い株は純資産の 10% 以下にする方針だ。
一方で、成長のための投資や M&A にも枠を設けた。規模の小さい会社が大きな買収をすれば、失敗の影響も大きい。純有利子負債は 149 億円あり、増配と成長投資を両立する余力は限られる。
大株主は信託銀行の信託口が 14% 台で、支配株主は見当たらない。業績が戻れば、買われる側の話が出てもおかしくない。ただし、それを前提に値段を置くことはしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
データセンターと電力網の設備不足は、10 年単位で続く。AI の計算量は増え続け、送電網の更新と再生可能エネルギーの接続も重なる。大型トランスの納期は 100 週を超え、供給網の立て直しには何年もかかる。タムラのメキシコ工場は北米の需要地の隣にあり、関税の逆風の中でも引き合いは強いと会社は見る。先行して作った顧客との設計の積み重ねは、後発に簡単には崩せない。
利益率の改善も、すでに数字で見え始めている。希望退職と拠点の再編で固定費を落とし、赤字の情報機器も手放した。2027 年 3 月期の営業利益は 65 億円と、上方修正を重ねて最高益に届く。営業利益率が 7% を超え、2030 年度に 10% へ向かえば、純利益は今の 2 倍以上になる。
電子化学は、金属相場に連動する価格改定の仕組みで、原料高を転嫁できる。車載の電装化と、データセンターの基板需要が数量を支える。SiC や GaN の普及で小型電源部品の需要も増える。会社が掲げた ROE 12% が実現すれば、PBR 1 倍は通過点にすぎない。
慎重な見方
今の利益は、需給が逼迫した局面の利益だ。大型トランスは、納期が長いから高く売れている。増産が世界で進めば、数年で売り手市場は終わる。中国や韓国のメーカーはすでに北米に売り込み始めた。値段で勝負になれば、タムラの規模では分が悪い。
この会社の本来の利益率は 4% 台だった。最高益といっても営業利益は 65 億円で、売上に対する率は 4.5% だ。計画の 10% は、これまでの最高の 6.4% を大きく上回る。電子化学の利益率が 8% 前後あるのは、ペーストの価格が金属相場で動くためで、相場が下がれば売上も利益も縮む。
資本の面でも見劣りする。ROE の中央値は 3.9% で、資本コストを大きく下回ってきた。ためた利益を増やしても、それ以上の利益を生んでいない。DOE 3% の配当を続ければ、投資の余力はさらに狭まる。
メキシコ工場に集中していることも、関税や為替の揺れ方次第で重荷になる。データセンター向けが 1 割でもつまずけば、全体の利益は大きく振れる。
どちらに重みを置いたか
ROE が資本コストに届かないのは、過去の実績と今の構造の両方が示している。強気の見方の言い分は、数量と価格の両方で当たる可能性が高いが、利益率が 7% を長く超えるかは確かではない。確率は中立に最も重く置き、慎重な見方の側に少し寄せた。
やや強気と強気を合わせても 3 割ほどで、やや慎重と悲観の合計が 3 割半ばになる。足元の好調が続く年数を長く見ても、10 年後の ROE が資本コストを大きく上回る姿は描きにくい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 988 円786 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 306 円244 億円)。 今の値に割り戻すと 693 円551 億円、今との差 −17.2%、 期待の年率 +4.5%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 2,443 円1,945 億円 | 553 円440 億円 | +258.4% | +13.6% | 270 円215 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,433 円1,141 億円 | 364 円290 億円 | +115.0% | +8.0% | 395 円315 億円 |
| 中立 | 34% | 1,022 円813 億円 | 289 円230 億円 | +56.8% | +4.6% | 446 円355 億円 |
| やや悲観 | 25% | 358 円285 億円 | 251 円200 億円 | −27.1% | −3.1% | 152 円121 億円 |
| 悲観 | 10% | 158 円126 億円 | 151 円120 億円 | −63.0% | −9.5% | 31 円25 億円 |
| 加重平均 | 100% | 988 円786 億円 | 306 円244 億円 | +54.8% | +4.5% | 1,294 円1,030 億円 |
今の株価時価総額 836 円665 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 9% データセンター需要が長く続き、利益率が 9% に乗る 利益 119 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 2,443 円1,945 億円
電力網の更新とデータセンターの増設が 10 年にわたって続き、大型トランスとリアクトルの売り手市場がほどけない。タムラはメキシコ工場を段階的に広げ、北米の顧客と共同で設計する関係を固める。大型品の比率が上がり、電子部品の営業利益率は 9% に届く。
SiC・GaN 向けのゲートドライバや小型の電源部品も立ち上がる。電子化学は車載の電装化と、金属相場の高止まりで利益率が 10% を超える。構造改革で本社の費用も抑え、全社の営業利益は 2 倍を超える。
稼いだ利益の半分を配当と自社株買いで返しても、ROE は 11% に達する。会社が掲げる 2030 年度の ROE 12% に近い水準だ。この姿なら、資本コストを上回る会社として倍率が付く。
- 電子部品:数量 435(出荷個数(百万個、推定))× 価格 4.34(平均単価(百円/個、名目))→ 売上 1,890 億円・営業利益 170 億円。大型品の構成が進み、数量 1.6 倍・単価 1.45 倍、営業利益率 9%
- 電子化学・実装:数量 5,540(出荷量(トン、はんだ材料換算の推定))× 価格 126(平均単価(百円/kg、名目。金属相場に連動))→ 売上 698 億円・営業利益 73 億円。数量 1.25 倍・単価 1.40 倍(金属高が続く)、営業利益率 10.5%
- 情報機器(2026 年 10 月に譲渡):数量 0.0(出荷台数(台、推定))× 価格 2.01(平均単価(百万円/台、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。譲渡済みで売上なし
倍率:事業の純利益 119 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍。全体の PER 16.34 倍、時価総額 1,944 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:大型部品の売り手市場が 10 年近く続き、構造改革の効果が全部出る必要がある。営業利益率 9% は 1998 年以降の最高(6.4%)の 1.4 倍で、条件が重いので 1 割弱に置いた。
やや楽観 22% 追い風が 5 年ほど続き、利益率が 7% 台で定着する 利益 81 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 1,433 円1,141 億円
データセンター向けの大型部品は、需給のひっ迫が 5 年ほど続き、その後は緩やかに落ち着く。タムラは受注を取った顧客と関係を築き、利益率は電子部品で 7% 台に乗る。
電子化学はペーストの価格改定の仕組みが定着し、利益率が 9% 台で安定する。情報機器の赤字がなくなり、本社費も抑えられる。全社の営業利益は 160 億円ほどになる。
ただし、増えた利益の多くを工場の増設と運転資金に回すため、自己資本もふくらむ。ROE は 8% 台にとどまり、資本コストにわずかに届かない。会社の言う「ROE 8%」を達成しても、市場が求める水準には少し足りない姿だ。
- 電子部品:数量 381(出荷個数(百万個、推定))× 価格 4.19(平均単価(百円/個、名目))→ 売上 1,598 億円・営業利益 117 億円。数量 1.40 倍・単価 1.40 倍、営業利益率 7.3%
- 電子化学・実装:数量 5,095(出荷量(トン、はんだ材料換算の推定))× 価格 123(平均単価(百円/kg、名目。金属相場に連動))→ 売上 628 億円・営業利益 58 億円。数量 1.15 倍・単価 1.37 倍、営業利益率 9.3%
- 情報機器(2026 年 10 月に譲渡):数量 0.0(出荷台数(台、推定))× 価格 2.01(平均単価(百万円/台、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。譲渡済みで売上なし
倍率:事業の純利益 81 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.08 倍、時価総額 1,140 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期経営計画の 2027 年度の目標(営業利益率 7%・ROE 8%)が、時期は遅れても到達する筋。足元の上方修正の勢いと構造改革の効果を考えると、起こりやすい。
中立 34% データセンター向けは普通の優良部品に落ち着く 利益 61 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,022 円813 億円
データセンター向けの大型トランスとリアクトルは、10 年後も事業の柱として残る。ただし、売り手市場が終われば、競合が増えて利益率は縮む。電子部品の営業利益率は 5.8% で止まる。今の 4% よりは良いが、強い堀のある会社の水準ではない。
電子化学は車載向けが堅く、数量は 10 年で 1 割ほど増える。価格は物価並みに上がり、利益率は 8% 台後半で安定する。情報機器がなくなり、本社費は物価分だけ増える。全社の営業利益は 120 億円ほど、純利益はその半分だ。
配当と自社株買いで利益の 45% ほどを返しても、自己資本は 900 億円台になる。ROE は 6〜7% で、資本コストを下回ったままだ。成長はするが、投じたお金の稼ぎは資本コストに届かない。
- 電子部品:数量 340(出荷個数(百万個、推定))× 価格 4.13(平均単価(百円/個、名目))→ 売上 1,406 億円・営業利益 82 億円。数量 1.25 倍・単価 1.38 倍、営業利益率 5.8%
- 電子化学・実装:数量 4,873(出荷量(トン、はんだ材料換算の推定))× 価格 121(平均単価(百円/kg、名目。金属相場に連動))→ 売上 588 億円・営業利益 51 億円。数量 1.10 倍・単価 1.34 倍、営業利益率 8.7%
- 情報機器(2026 年 10 月に譲渡):数量 0.0(出荷台数(台、推定))× 価格 2.01(平均単価(百万円/台、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。譲渡済みで売上なし
倍率:事業の純利益 61 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 813 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:大型部品の逼迫は緩やかにほどけ、電子部品の利益率は 6% 手前で落ち着く。構造改革の効果は半分ほど出る。強気と慎重の議論の落としどころで、最も重く置いた。
やや悲観 25% 売り手市場が終わり、中国・韓国勢と値段で競う 利益 30 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 358 円285 億円
大型トランスの増産が世界で進み、北米の納期は正常に戻る。中国・韓国の電力機器メーカーが価格で攻め、タムラの電子部品は数量が伸びず、単価も物価に追いつかない。営業利益率は 4% 手前に戻る。
電子化学は金属相場の下落で売上が縮み、ペーストの競争も厳しくなる。利益率は 7% に下がる。構造改革の効果は、価格競争で消える。
営業利益は 60 億円台にとどまり、純利益は 30 億円ほど。配当の目安を守ると、自己資本の積み上がりも遅い。ROE は 4% で、資本コストの半分だ。ためた利益に見合う稼ぎがない。
- 電子部品:数量 272(出荷個数(百万個、推定))× 価格 3.90(平均単価(百円/個、名目))→ 売上 1,059 億円・営業利益 40 億円。数量は横ばい、単価 1.30 倍、営業利益率 3.8%
- 電子化学・実装:数量 4,430(出荷量(トン、はんだ材料換算の推定))× 価格 113(平均単価(百円/kg、名目。金属相場に連動))→ 売上 498 億円・営業利益 35 億円。数量は横ばい、単価 1.25 倍、営業利益率 7%
- 情報機器(2026 年 10 月に譲渡):数量 0.0(出荷台数(台、推定))× 価格 2.01(平均単価(百万円/台、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。譲渡済みで売上なし
倍率:ROE 4.0% は資本コスト 7.5% の半分で、PER の上限は 1÷k の 11.8 倍。利益に波があり堀も弱いので、上限の 8 割を置いた。ためた利益には価値の上乗せを置かない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9.5 倍・時価総額 285 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:データセンター向けの増産が世界で進み、数年で納期と価格の余裕が消える筋。タムラは規模が小さく、値段の交渉力が弱い。起こりやすいと見て、4 分の 1 に置いた。
悲観 10% 構造的に負け、利益率が 2〜5% に沈む 利益 14 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 158 円126 億円
データセンター投資が一服し、大型部品の注文が細る。北米では関税で割高になったメキシコ製が、アジアの競合に価格で負ける。タムラは稼働率の低下で固定費が重くなり、電子部品の営業利益率は 2.5% に落ちる。
電子化学では、中国のペーストメーカーが標準品の値段を下げる。顧客の工場の海外移転も重なり、数量は 1 割減る。利益率は 5% まで下がる。
営業利益は 30 億円台、純利益は 14 億円ほど。配当は最低限に減らす。事業の稼ぐ力は、資本コストを割り込む。自己資本の数字は残るが、そこから稼げない会社の値段は、利益から決まる。
- 電子部品:数量 231(出荷個数(百万個、推定))× 価格 3.60(平均単価(百円/個、名目))→ 売上 830 億円・営業利益 21 億円。数量 0.85 倍、単価 1.20 倍、営業利益率 2.5%
- 電子化学・実装:数量 3,987(出荷量(トン、はんだ材料換算の推定))× 価格 104(平均単価(百円/kg、名目。金属相場に連動))→ 売上 413 億円・営業利益 21 億円。数量 0.90 倍、単価 1.15 倍、営業利益率 5%
- 情報機器(2026 年 10 月に譲渡):数量 0.0(出荷台数(台、推定))× 価格 2.01(平均単価(百万円/台、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。譲渡済みで売上なし
倍率:ROE 2.1% は資本コスト 7.5% を大きく下回り、PER の上限は 1÷k の 11.8 倍。構造的に負けた会社で、稼ぐ力が小さく不安定なので、上限の 8 割を超えて置かない。純現金はなく、売れる資産で床を作る根拠は確かめられなかったので、稼ぐ力で置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9 倍・時価総額 126 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:データセンター向けの需要が反転し、中国勢に大型部品とペーストの両方で価格を崩される。10 年で起きるには条件が重いが、2009 年・2013 年・2022 年・2026 年の赤字の前例があるので、1 割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電子部品
トランス、リアクトル、チョークコイル、ゲートドライバ、絶縁型 DC-DC モジュール、電流センサ。データセンター・再エネ・産業機器・車載向け。
| 数量出荷個数(百万個、推定) | 価格平均単価(百円/個、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 272 | 3.00 | 815 | 33 |
| 10 年後 中立 | 340 | 4.13 | 1,406 | 82 |
取り方:個数は非開示。売上 815 億円を、小型のチョークから大型トランスまでを混ぜた平均単価(約 3 百円)で割り、出荷個数を 2.7 億個と置いた推定。営業利益は事業別開示の 33 億円。単価は名目で、データセンター向けの大型品が増えるほど平均は上がる。中立は 10 年で 1.38 倍(物価の 1.34 倍に、大型品の構成比の上昇を少し足す)。数量は実質で、データセンター・再エネ向けの伸びと、スマホ・産業向けの停滞の差し引きで 1.25 倍と置いた。
電子化学・実装
ソルダーペースト、ソルダーレジスト、フラックスと、リフロー炉などのはんだ付け装置。電子基板の実装工程の材料と設備。
| 数量出荷量(トン、はんだ材料換算の推定) | 価格平均単価(百円/kg、名目。金属相場に連動) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,430 | 90 | 399 | 33 |
| 10 年後 中立 | 4,873 | 121 | 588 | 51 |
取り方:出荷量は非開示。売上 399 億円(装置とレジストを含む)を、はんだ材料の平均単価(1 kg あたり約 9 千円。スズ・銀が高い今の水準)で割った物量換算で、約 4.4 千トンと置いた推定。営業利益は事業別開示の 33 億円。単価は金属相場への連動で動く名目の値段で、中立は 10 年で 1.34 倍(物価並み。金属相場は平準化した値段で置く)。数量は実質で、車載の電装化と基板の生産量の伸びから 1.10 倍と置いた。
情報機器(2026 年 10 月に譲渡)
放送局・劇場向けの音響機器、ワイヤレスインカム、駅のマイクなど。朋栄へ譲渡済みで、今後の売上と利益はゼロ。
| 数量出荷台数(台、推定) | 価格平均単価(百万円/台、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,430 | 1.50 | 21 | −6 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 2.01 | 0 | 0 |
取り方:台数は非開示。売上 21.4 億円を 1 台あたり約 1.5 百万円(ミキサーなどの業務用機器の見当)で割った推定。営業利益は事業別開示の赤字 5.7 億円。譲渡は 2026 年 10 月 1 日に完了しており、10 年後の筋書きでは台数を 0 とする。
リスクと懸念
データセンター向けの需給が戻る
大型トランスの納期が長いのは、世界で作る力が足りないからだ。増産が進めば、納期と価格の余裕は消える。電子部品の利益率が今の追い風で上がった分は、元に戻りうる。
中国・韓国勢の価格攻勢
電力機器では中国・韓国のメーカーが北米に売り込んでいる。ペーストでも、中国のメーカーが標準品の値段を押し下げる動きがある。規模の小さいタムラは、価格交渉で押される側になりやすい。
関税と為替とメキシコ工場への集中
データセンター向けの大型部品はメキシコ工場に集まっている。米国の関税の扱いが変われば、収益が揺れる。為替の動きも、海外売上 7 割の会社の利益に直接響く。
金属相場と価格改定の時差
ペーストの価格は金属相場に連動するが、改定には時差がある。急騰局面では原料の値上がりを転嫁できず、利益率が下がる。2027 年 3 月期の第 1 四半期は、まさにこの形で営業利益が減った。
構造改革が数字になるまでの遅れ
希望退職や中国拠点の再編は、2026 年 3 月期に特別損失を出した。固定費が下がる効果が利益に出るまでには時間がかかる。投じた費用に見合う成果が出るかは、まだわからない。
資本効率の低さが続く
ROE の中央値は 3.9% で、資本コストに遠い。成長のための投資と配当を両立すると、自己資本がふくらみ、ROE が上がりにくい。会社の目標の ROE 12% は、過去に例のない水準だ。
今後の分かれ目
- メキシコ工場の大型部品の売上が、2027 年度に 2023 年度の 3 倍を超えて伸びたら
- 10 年のやや強気と強気の確率を上げる。単価と利益率の前提も上方に見直す。
- 電子部品の営業利益率が 2 年続けて 7% を超えたら
- 構造改革が定着したと見て、中立の利益率を引き上げる。強気の確率を 1〜2 割増やす。
- 北米のトランスの納期が正常に戻り、受注が減り始めたら
- やや慎重と悲観の確率を上げる。大型品は特注でも、価格で競う局面に入ったと見る。
- スズや銀の相場が大きく下がり、ペーストの売上が減ったら
- 電子化学の売上は縮むが、利益率は戻る。数量の動きを見て、利益の変化は小さいと判断する。
- 中期経営計画の ROE 8%・営業利益率 7% が 2028 年 3 月期に達成されたら
- 中立の ROE を上げ、倍率の上限を見直す。達成できなければ、慎重な筋書きに寄せる。
- 資本効率の改善のため、さらに大きな買収や出資を発表したら
- 買収の価格と相手を確かめる。割高な買収なら資本コストを下回る投資が増えるため、確率を慎重な側に動かす。
見ておくもの
- データセンター向け大型トランス・リアクトルの売上と、メキシコ工場の稼働率
- 電子部品と電子化学の営業利益率(四半期ごと)
- 北米の変圧器の納期と、中国・韓国勢の受注
- ソルダーペーストの価格改定の時差と、スズ・銀の相場
- DOE 3% の実施と自社株買い、政策保有株の売却の進み具合
倍率と資本コストの決め方
電子部品は出荷個数(推定)× 平均単価、電子化学は出荷量(推定)× 単価で 10 年後の売上を積み、利益率をかけて営業利益を出した。倍率は、資本コスト 7.5%(基本 7.5% に quality +1.0%)と、ROE から決めた。中立の ROE が資本コストを下回るので、PER は 1÷k の 11.8 倍の 87% に置いた。今の株価・過去の倍率は根拠にしていない。数量と単価は物量の推定で、開示がない。結果の本質価値は今の時価総額を大きく下回るが、これは ROE が低い構造から出た答えで、株価から逆算していない。家賃や店舗に頼る事業ではなく、新リース会計基準の影響は小さいとみて、数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→16.34 倍・やや楽観 PER 10.8→14.08 倍・中立 PER 10.2→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%。同じ領域の太陽誘電(+1.2%)より低く、日本航空電子・ニデック(+1.0%)と並ぶ。ヒロセ電機(0%)より高いのは、値決めの弱さと景気・設備投資の波があるため。ガバナンスや構造改革の実行リスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.50%。