結論
フクダ電子は、心電計で国内首位級の医療機器メーカーだ。病院向けの検査装置に加え、在宅の人工呼吸器や除細動器(AED)、電極や記録紙などの消耗品、全国約224拠点の保守網で稼ぐ。
筆者の結論は、今の値段は本質価値を1割ほど上回り、やや割高、というものだ。良い会社だが、成長の天井が見えている。
強みは、売った機械が消耗品と保守の収入を生み続けることだ。病院は心電計を入れ替えるとき、使い慣れた機械と全国の保守網を捨てたがらない。営業利益率は10年前の約10%から約19%へ上がった。
弱みは市場が国内中心で、診療報酬という国が決める値段に縛られることだ。人口は減る。数量は10年でせいぜい1割強しか伸びない。利益率も、今の19%が上限に近い。
財務は強い。純現金は約590億円で、時価総額の2割にあたる。ただし拠点網とレンタル機器を回すお金は要るため、余りと見るのは約300億円にとどめた。
10年先の中立は、営業利益357億円、純利益260億円。今より4割増えるが、年3.3%ほどの伸びで、物価の3%とほぼ同じだ。実質では横ばいに近い。これが、割安とは言えない理由だ。
確かめたいのは、診療報酬の改定の向きと、在宅医療の機器が増え続けるかどうかの2点である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、フクダ電子は「持ち続けたい会社だが、安く買えるとは限らない会社」だ。
良い点は3つある。心電計という入り口、消耗品と保守が続く収入、借金のない財務だ。10年後もこの事業はなくならず、今より弱くなる理由も見当たらない。医療の公定価格のもとで、利益が急に消えることも考えにくい。
気になる点は、成長の余地の小ささだ。人口が減る国内中心の事業で、10年の数量は1割強しか伸びない。値段も診療報酬に縛られ、物価の分を満額では取れない。利益は物価並みに増えても、実質ではほぼ横ばいになる。
株主のものになる利益、つまり新しい投資をした後に残るお金は多い。純利益が約190億円なのに、必要な投資は拠点網の維持と工場程度だ。それなのにROEが10%前後なのは、現金を厚く持つからだ。ここを株主に戻せば、価値は上がる。筆者が見たいのはこの点だ。
安全域は、今の値段で大きくはない。楽観でも今の値段を大きく超えず、悲観では3分の1ほどに縮む。わからない事業ではなく、読みやすい事業だ。だからこそ、期待が先走っていない値段で買いたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの形は、機械を売って終わりにしないことだ。フクダ電子は国産初の心電計を作った会社で、心電計・生体情報モニタ・呼吸器・除細動器などを幅広く扱う。
売上のおよそ半分弱は治療装置が占める。人工呼吸器や在宅酸素、睡眠時無呼吸の治療器、AEDなどで、在宅ではレンタルが多い。貸した機械は毎月の収入になり、解約もしにくい。2割弱は心電計などの生体検査装置だ。
残り3割弱が消耗品と保守だ。電極、記録紙、センサーなど、機械を使うたびに減るものを売る。機械が現場に残る限り、この売上は続く。
顧客は国内の病院・診療所・検査センターと在宅の患者だ。全国に約224の拠点を持ち、機械の納入から修理、消耗品の補充までを自社で回す。この拠点網こそ、他社が簡単にまねできない部分だ。
在宅の遠隔モニタ「フレンズ」や、AIで心電図を解析する取り組みも進む。医療の現場がクラウドに移るほど、機械と記録をつなぐ役が生きる。
海外は輸入と販売が中心で、まだ小さい。成長は国内の高齢化と在宅への移行に頼る。ここでは売上を治療・在宅、消耗品・保守、検査・モニタ装置の3つに分けた。利益の配分は開示がないため、筆者の推定である。
優良さと弱いところ
質の中心は、心電計という入り口と、その後ろに続く消耗品と保守の収入だ。ここは強い。
心電計の国内シェアは首位級とされる(求人情報に60%超との記載があるが裏付けはなく、断定はしない)。病院は一度入れた機械を長く使う。全国の拠点で修理に駆けつけられることが、選ばれる理由になっている。
営業利益率は2015年の約10%から2026年の約19%へ上がった。値上げよりも、製品の組み合わせと消耗品の積み上げが利いたと筆者は見る。中計は2028年3月期に営業利益280億円を掲げ、現状から大きくは動かさない控えめな計画だ。
資本の使い方は堅実だ。借金はほぼなく、自己資本比率は約84%。配当性向30%を目標にし、ここ2年で株数を約6%減らした。ただROEは10%前後で、資本コストを少し上回る程度にとどまる。厚い現金が利益率を押し下げている。
弱い点は2つある。第一に、病院向けの値段は診療報酬と入札で決まり、自由に上げられない。第二に、日本光電、フィリップス、GEといった競合が同じ病院に営業をかけ、大型の案件では不利になる。
この会社の堀は「まあまあ強い」と評価する。独占ではないので、堀の残る割合は普通に置いた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場は国内の医療機器だ。高齢化で心臓や呼吸の病気が増え、在宅へ移る流れも続く。需要の底は固い。景気が悪くなっても、心電図やAEDの購入は止まりにくい。
ただし、人口は減る。数量の伸びは、高齢者が増える間は続くが、10年先では頭打ちに近い。筆者は中立で、治療・在宅の数量を10年で1.15倍、消耗品を1.12倍、検査装置はほぼ横ばいと置く。
値段は診療報酬で押さえられる。物価は上がっても医療の公定価格は同じように上がらない。装置の価格は物価並みに上げられず、中立でも10年1.3倍程度にとどまる(物価の1.34倍を少し下回る)。人件費は物価で増えるので、利益率は上がりにくい。
競合は、日本光電が国内の生体情報モニタで同じ病院を取り合う。心電計では海外のフィリップスやGEが大型案件に強い。在宅の人工呼吸器では、レスメドなどの海外勢が強い領域がある。中国のメーカーは低価格の機器で国内にも入ってくる可能性がある。
構造の変化は2つある。ひとつは医療のデジタル化で、機械単体ではなく、記録・解析・遠隔モニタをまとめて売る力が問われる。もうひとつは在宅への移行で、これは拠点網を持つ会社に有利に働く。
業界全体の見通しは、同じ領域の会社と同じ前提に置いた。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、自社株買いが加わる。配当は2026年3月期に前期から約2割増えた。配当性向は約33%で、中計の目標30%をやや上回る。株数はこの2年で約6%減った。
資本の置き場は、ほぼ現金と生産設備だ。白井工場の新棟が2025年5月に動き出し、生産面積が倍になった。内製化とモノづくりの改革に使う投資だ。借金は少ない。
買収は大きなものを繰り返さない。M&Aで価値を壊すリスクは低い一方、資本を成長に回す機会も少ない。余る現金は貯まり続けやすい。筆者が気にするのは、この現金がどこまで還元に回るかだ。
買われる側としての可能性もある。時価総額は約2,900億円で、現金が2割を占め、事業は安定している。kabufuの推計では10年以内のTOBの確率は約15%だ。ただ株主構成は確認できていないため、価値には織り込まず、確率の目安として扱うにとどめる。
新リース会計基準は2028年3月期から効くが、拠点を自社で持つか借りるかは未確認で、影響は小さいとみる。10年後の数字は今と同じ形で置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
心電計という入り口は、10年たっても揺らがない。国内首位級の地位と全国224拠点の保守網は、他社が数年でまねできるものではない。病院は機械を入れ替えるたびに、同じ会社の消耗品と保守を使い続ける。
在宅医療が追い風だ。人工呼吸器や酸素、睡眠時無呼吸の治療器は、高齢者が増える間は台数が増え続ける。貸し出したあとは毎月の収入が続くため、数量が増えるほど利益の質が上がる。遠隔モニタ「フレンズ」やAI解析は、機械と記録を一体で売る足がかりになる。
白井工場の新棟で生産面積が倍になり、内製化が進む。仕入れ先に払っていた利益を取り込めるため、利益率は19%から20%台へ上がる余地がある。中計の280億円は控えめで、会社は目標を毎年のように積み上げてきた。
財務は鉄壁で、純現金は約590億円ある。これを戻し始めれば、ROEは上がり、株主の取り分も増える。株数を2年で6%減らした実績が、その方向を示している。
資本コストを上回るROEを長く維持できる会社は少ない。10年の楽観では、数量が3割増え、利益率が20%を超え、純利益は340億円に届く。
慎重な見方
成長の天井が見えている。人口が減る国内の事業で、数量は10年でせいぜい1割強しか伸びない。伸びても、診療報酬が物価ほど上がらなければ、売上は実質で増えない。
今の営業利益率19%は、10年前の倍で、過去の最高水準だ。人件費と部品の値上がりは物価で進むのに、病院に売る値段は公定価格で押さえられる。この差が利益率を削る。中計の目標が1,470億円・280億円と現状とほぼ変わらないことが、会社自身の見立てを物語る。
競争も厳しい。日本光電が同じ病院で営業し、フィリップスやGEが大型案件を取りにくる。中国メーカーの低価格機が入れば、値段が崩れる。在宅の人工呼吸器でも、海外勢と競る。
純現金が多いのは、使い道が少ないことの裏返しでもある。ROEが10%前後と伸びないのは、現金が働いていないからだ。還元を強めない限り、利益が増えても株主の取り分は増えにくい。
10年の悲観では、診療報酬の引き下げと海外勢の攻勢で数量も値段も押され、営業利益は100億円を割る。そのとき会社の価値は、今の3分の1ほどまで縮む。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分も根拠がある。ただ、数量の伸びと値段の制約という構造の話では、慎重な見方のほうが強い。人口減と公定価格は、この会社の力では動かせない。
一方で、堀と財務の強さは事実で、悲観の確率を大きく上げる理由にはならない。そこで確率は中立に最も厚く置き、やや悲観をやや楽観と同じ20%にそろえた。悲観は12%とした。診療報酬の大幅な引き下げと海外勢の攻勢が重なる、構造的に負ける筋書きを想定している。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 14,838 円4,009 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 4,345 円1,174 億円)。 今の値に割り戻すと 10,641 円2,875 億円、今との差 +1.0%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 7.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 23,557 円6,365 億円 | 5,182 円1,400 億円 | +172.7% | +10.6% | 2,299 円621 億円 |
| やや楽観 | 20% | 20,248 円5,471 億円 | 4,923 円1,330 億円 | +138.8% | +9.1% | 5,034 円1,360 億円 |
| 中立 | 40% | 17,016 円4,597 億円 | 4,627 円1,250 億円 | +105.3% | +7.5% | 8,657 円2,339 億円 |
| やや悲観 | 20% | 8,616 円2,328 億円 | 3,701 円1,000 億円 | +16.9% | +1.6% | 2,463 円666 億円 |
| 悲観 | 12% | 3,116 円842 億円 | 2,961 円800 億円 | −42.3% | −5.4% | 729 円197 億円 |
| 加重平均 | 100% | 14,838 円4,009 億円 | 4,345 円1,174 億円 | +82.0% | +6.2% | 19,183 円5,183 億円 |
今の株価時価総額 10,540 円2,848 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 在宅の拡大と内製化で利益率が20%台へ 利益 340 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 23,557 円6,365 億円
在宅の人工呼吸器や酸素、睡眠時無呼吸の治療器が高齢化で台数を増やし、レンタルの積み上げが利益を押し上げる。白井工場の内製化が進み、仕入れ先に払っていた利益を取り込める。遠隔モニタとAI解析が病院の記録システムに食い込み、機械単体でなく一式で売れるようになる。
診療報酬は据え置き気味だが、数量の伸びがそれを補う。営業利益率は20%近くまで上がり、営業利益は460億円に届く。純現金の還元も厚くなり、配当と自社株買いの合計は10年で1,400億円に及ぶ。
ROEは11%まで上がる。それでも会社は、買収に踏み出すことはなく、堅実な経営を続ける。
- 治療・在宅医療機器:数量 828(国内の治療・在宅医療機器の市場(実質・今の値段の億円)× シェア)× 価格 134(値段の指数(今を100。診療報酬と物価の影響を入れた名目))→ 売上 1,110 億円・営業利益 233 億円。在宅の台数が3割増
- 消耗品・保守:数量 508(消耗品・保守の需要(実質・今の値段の億円)= 設置された機械の数 × 使用量 × シェア)× 価格 138(値段の指数(今を100))→ 売上 700 億円・営業利益 175 億円。設置台数に比例して増加
- 検査・モニタ装置ほか:数量 389(国内の検査・モニタ装置の市場(実質・今の値段の億円)× シェア)× 価格 134(値段の指数(今を100))→ 売上 522 億円・営業利益 73 億円。AI解析・一式販売で小幅に増加
倍率:事業の純利益 336 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.0% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)300 億円。全体の PER 18.06 倍、時価総額 6,364 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:在宅機器の数量が3割伸び、内製化で利益率が上がる筋書き。中計の目標を積み上げてきた実績はあるが、診療報酬の制約を超えるには条件が多く8%にとどめた。
やや楽観 20% 在宅と消耗品が着実に伸び、利益率が19%近辺で安定 利益 300 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 20,248 円5,471 億円
在宅医療の台数が増え、消耗品もそれに続く。診療報酬は物価ほどには上がらないが、拠点網の効率が上がり利益率は19%近くを保つ。営業利益は400億円規模になる。
工場の新棟が動き始め、内製化の効果が少しずつ出る。海外は輸入販売が中心のまま、国内の競争力が主な稼ぎだ。
還元は配当性向30%に自社株買いを加えた水準で続き、純現金は徐々に減っていく。ROEは10%を少し超える程度で、資本コストを上回るが大きくは超えない。
競合は日本光電やフィリップスと変わらず、価格を崩す競争は起こらない。診療報酬の改定も、物価に追いつかないまま小幅な引き下げにとどまる。
- 治療・在宅医療機器:数量 777(国内の治療・在宅医療機器の市場(実質・今の値段の億円)× シェア)× 価格 132(値段の指数(今を100。診療報酬と物価の影響を入れた名目))→ 売上 1,026 億円・営業利益 205 億円。在宅が着実に増加
- 消耗品・保守:数量 479(消耗品・保守の需要(実質・今の値段の億円)= 設置された機械の数 × 使用量 × シェア)× 価格 136(値段の指数(今を100))→ 売上 652 億円・営業利益 160 億円。設置台数に比例
- 検査・モニタ装置ほか:数量 372(国内の検査・モニタ装置の市場(実質・今の値段の億円)× シェア)× 価格 131(値段の指数(今を100))→ 売上 487 億円・営業利益 61 億円。横ばいから小幅増
倍率:事業の純利益 296 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)300 億円。全体の PER 17.48 倍、時価総額 5,471 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計が掲げる280億円を上回る水準で、会社の過去の実績に近い筋書き。強気の見方が通りやすいが、診療報酬の影響を考えて20%とした。
中立 40% 数量は1割強の伸び、値段は物価に届かず、利益は名目で年3%台 利益 260 億円 · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 17,016 円4,597 億円
国内の高齢化は続き、在宅の治療機器と消耗品の需要は着実に伸びる。ただし人口は減り、数量の伸びは10年で1割強にとどまる。診療報酬は物価ほど上がらず、装置の値段は物価の1.34倍に届かない。人件費は物価並みに増えるため、利益率は19%から17〜18%へ少し下がる。
営業利益は357億円、純利益は260億円になる。今より4割ほど増えるが、年率では3.3%ほどで、物価の伸びとほぼ同じだ。
還元は配当と自社株買いを合わせて10年で1,250億円。ROEは9%台に落ち着き、資本コストを少し上回る。堀は普通で、ブランドと拠点網が利益を守る。
- 治療・在宅医療機器:数量 733(国内の治療・在宅医療機器の市場(実質・今の値段の億円)× シェア)× 価格 130(値段の指数(今を100。診療報酬と物価の影響を入れた名目))→ 売上 952 億円・営業利益 176 億円。在宅が人口より早く伸びる
- 消耗品・保守:数量 455(消耗品・保守の需要(実質・今の値段の億円)= 設置された機械の数 × 使用量 × シェア)× 価格 134(値段の指数(今を100))→ 売上 609 億円・営業利益 146 億円。設置台数に比例
- 検査・モニタ装置ほか:数量 354(国内の検査・モニタ装置の市場(実質・今の値段の億円)× シェア)× 価格 128(値段の指数(今を100))→ 売上 453 億円・営業利益 50 億円。横ばい、値段は物価に届かない
倍率:事業の純利益 256 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)300 億円。全体の PER 16.8 倍、時価総額 4,597 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人口減と診療報酬の制約で数量は1割強、値段は物価を少し下回る。堀と財務の強さで崩れもしない、最も起こりやすい筋書き。
やや悲観 20% 診療報酬の抑制と競争で、利益率が15%まで低下 利益 186 億円 · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 8,616 円2,328 億円
診療報酬の改定で機器の償還が抑えられ、病院が更新を遅らせる。日本光電やフィリップスとの競争で、検査・モニタ装置は値引きと数量の減少が続く。在宅は伸びるが、海外勢との競争で利益率が下がる。
人件費と部品は物価で増えるのに、売値は公定価格で押さえられる。営業利益率は15%近くまで落ち、営業利益は250億円台になる。
配当は維持されるが、自社株買いは細る。ROEは7%を割り、資本コストを下回る。
厚い現金は残るが、使い道を見つけられず貯まったままで、株主への還元も伸びない。会社は拠点網を守るため、人員と投資を減らせない。
- 治療・在宅医療機器:数量 650(国内の治療・在宅医療機器の市場(実質・今の値段の億円)× シェア)× 価格 125(値段の指数(今を100。診療報酬と物価の影響を入れた名目))→ 売上 812 億円・営業利益 138 億円。数量は横ばい圏、値段は抑制
- 消耗品・保守:数量 406(消耗品・保守の需要(実質・今の値段の億円)= 設置された機械の数 × 使用量 × シェア)× 価格 128(値段の指数(今を100))→ 売上 520 億円・営業利益 109 億円。設置台数は横ばい
- 検査・モニタ装置ほか:数量 326(国内の検査・モニタ装置の市場(実質・今の値段の億円)× シェア)× 価格 120(値段の指数(今を100))→ 売上 391 億円・営業利益 27 億円。値引きと数量減
倍率:ROE約6.8%でkを下回るため、PERは1÷k(約13.8倍)が上限。数量と値段の下押しで利益が伸びず、11.5倍。余った現金は谷で食う前提で0.75倍の225億円。
確率:診療報酬の抑制と病院の投資の鈍りで、数量・値段ともに下押しされる筋書き。人口減と公定価格は構造の話で慎重な見方が強いため、やや楽観と同じ20%とした。
悲観 12% 診療報酬の大幅引き下げと海外勢の攻勢で構造的に負ける 利益 65 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 3,116 円842 億円
診療報酬が大きく引き下げられ、機器の更新が長引く。日本光電とフィリップスに加え、価格の安い中国メーカーが国内の入札で値を崩し、検査・モニタ装置は赤字に近づく。在宅の治療機器も、海外勢と競り合って数量が減る。
営業利益は100億円を割り、純利益は65億円まで縮む。工場の新棟と拠点網は固定費として重くのしかかる。
配当は減らされ、10年の還元は800億円にとどまる。余った現金は減損と赤字で半分に減る。値段は、稼ぐ力と現金の分だけに縮む。
経営は拠点網の整理に踏み込むが、売れる資産は限られ、再建は間に合わない。10年後のフクダ電子は、優良な医療機器メーカーではなくなっている。
- 治療・在宅医療機器:数量 541(国内の治療・在宅医療機器の市場(実質・今の値段の億円)× シェア)× 価格 115(値段の指数(今を100。診療報酬と物価の影響を入れた名目))→ 売上 623 億円・営業利益 62 億円。数量減と値段の下落
- 消耗品・保守:数量 325(消耗品・保守の需要(実質・今の値段の億円)= 設置された機械の数 × 使用量 × シェア)× 価格 120(値段の指数(今を100))→ 売上 390 億円・営業利益 55 億円。設置台数の減少
- 検査・モニタ装置ほか:数量 266(国内の検査・モニタ装置の市場(実質・今の値段の億円)× シェア)× 価格 105(値段の指数(今を100))→ 売上 279 億円・営業利益 −8 億円。赤字に近づく
倍率:純利益65億円まで縮み、ROEは約3%でkを大きく下回る。1÷k(約13.8倍)より低く、構造的に縮むため11倍。余った現金は半分の150億円。
確率:診療報酬が大きく下がり、海外勢と中国メーカーが国内の入札を取りにくる筋書き。純現金が厚く事業の質も高いため、12%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
治療・在宅医療機器
人工呼吸器・在宅酸素・睡眠時無呼吸治療器・AED・除細動器など。在宅はレンタルが多く、毎月の収入になる。
| 数量国内の治療・在宅医療機器の市場(実質・今の値段の億円)× シェア | 価格値段の指数(今を100。診療報酬と物価の影響を入れた名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 637 | 100 | 637 | 127 |
| 10 年後 中立 | 733 | 130 | 952 | 176 |
取り方:売上構成の約46%(治療装置)を使う。国内市場は開示がなく、市場規模×シェアで置く推定で、数量はこの積。営業利益率は筆者の推定で20%(在宅レンタルは稼働後の利益が高い)。
消耗品・保守
電極・記録紙・センサーなど使うたびに減る消耗品と、全国224拠点での保守・修理。
| 数量消耗品・保守の需要(実質・今の値段の億円)= 設置された機械の数 × 使用量 × シェア | 価格値段の指数(今を100) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 406 | 100 | 406 | 97 |
| 10 年後 中立 | 455 | 134 | 609 | 146 |
取り方:売上構成の約29%(消耗品等)を使う。数量は設置台数に比例して増え、営業利益率は筆者の推定で24%(消耗品は利益率が高い)。
検査・モニタ装置ほか
心電計・生体情報モニタ・検査システムなど、病院の検査室に入る装置。
| 数量国内の検査・モニタ装置の市場(実質・今の値段の億円)× シェア | 価格値段の指数(今を100) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 354 | 100 | 354 | 42 |
| 10 年後 中立 | 354 | 128 | 453 | 50 |
取り方:生体検査装置約19%に残りの約6%を足す。競合が多く値引きも出やすいため、営業利益率は筆者の推定で12%。
リスクと懸念
診療報酬の引き下げ
病院の収入は診療報酬で決まり、引き下げは機器の更新を遅らせる。2年ごとの改定のたびに値引き圧力が強まる。数量と値段の両方に響く、いちばん大きなリスクだ。
海外勢・中国メーカーの参入
フィリップスやGEは大型の病院案件に強い。中国の低価格機が国内の入札に入れば、検査・モニタ装置の値段が崩れる。治療機器でも海外勢が在宅で競り合う。
人口減による数量の頭打ち
国内の人口は減る。高齢者が増える間は需要が伸びるが、その後は逆風になる。海外はまだ小さく、国内の落ち込みを補えない。
利益率19%の持続
今の営業利益率は過去の最高水準で、10年前の約2倍だ。人件費と部品は物価で上がるのに、売値は公定価格で押さえられる。利益率は戻りやすい。
現金が貯まり続けるリスク
純現金は約590億円で時価総額の2割。使い道が少なく、還元が弱まれば価値は上がらない。買収で価値を壊すことも、起こりうる。
新リース会計基準
2028年3月期から賃借の拠点が貸借対照表に載る。利益の本質は変わらないが、自己資本比率や純負債の見え方は変わる。数字は今と同じ形で置いた。
今後の分かれ目
- 診療報酬の改定で医療機器の償還が大きく下がる
- 検査・モニタ装置の値引きと更新の遅れが同時に起こり、やや悲観から悲観の筋書きに寄る。
- 在宅の人工呼吸器・酸素のレンタル台数が毎年1割以上増える
- 毎月の収入が積み上がり、楽観に近づく。営業利益率も20%に近づく。
- 純現金を使った自社株買いや増配が数百億円規模で出る
- ROEが資本コストを上回る幅が広がり、本質価値が上がる。余った現金の戻り方を1.0とした前提が確認される。
- 海外メーカーが国内の大型病院案件を立て続けに取る
- 検査・モニタ装置のシェアが下がり、悲観の確率が上がる。
- 他社による買収提案が出る
- 現金の2割と安定した事業が評価され、今の値段を上回る可能性がある。ただし価値の計算には含めていない。
見ておくもの
- 診療報酬の改定の方向
- 在宅レンタルの台数の増減
- 営業利益率が19%を保てるか
- 自社株買いと配当の水準
- 中計の2028年3月期の目標(売上1,470億円、営業利益280億円)の達成度
倍率と資本コストの決め方
倍率は各筋書きの事業ROEとk 7%、g 3.75%から、ROEが資本コストを超える範囲では上限の約9割、下回る範囲ではkの逆数を上限に置いた。今のPERや株価、過去のPBRの底は使っていない。10年後の数字はリース会計基準の形が変わる前の今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で揃えた。数量と値段は市場規模×シェアの推定で置き、開示がないため筆者の推定であることを各セグメントのhowに書いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.5→18.06 倍・やや楽観 PER 14.3→17.48 倍・中立 PER 14→16.8 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質-0.25%を足した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.25% → 7.00%。