結論
エブレンは、産業用のコンピュータを収める箱と、基板どうしをつなぐ配線の板(バックプレーン)を、顧客ごとに設計して作る会社だ。売上の6割は半導体の製造や検査の装置向けだ。筆者の結論は割高である。事業の稼ぎは堅いが、手元の現金31億円が時価総額の半分を超え、そのほとんどが眠っている。
営業利益率は13%と、小さな受託の会社としては高い。顧客ごとの少量の注文を素早く設計する腕があり、大手が手を出しにくい場所で稼ぐ。受注は2026年3月期に18%増え、会社は2年で売上50億円を見込む。
ただ、売上は過去8年で32〜43億円を行き来し、半導体の装置の山谷に沿って動いてきた。創業家が過半を持ち、配当は利益の2割で自社株買いもない。現金が株主に戻る道は細い。
筆者は10年後の稼ぎを今より3〜4割多いとみるが、眠る現金の分だけ株主の取り分は薄まると考える。事業は買う値打ちがあっても、その事業を包む資本の形が値打ちを削っている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、エブレンは「良い小さな事業を持つが、現金を眠らせている会社」だ。顧客ごとの設計の腕で13%の利益率を稼ぎ、設備の投資もほとんど要らない。稼いだ利益のほぼ全部が、オーナー利益、つまり再投資を引いて株主に残る利益になる。この点は好ましい。
筆者がいちばん気にしているのは、その利益の行き先だ。配当で戻るのは2割だけで、残りは預金に積まれる。資本コストの8%に対し、預金の利息は2%だ。現金が積み上がるほど、全社のROEは下がり続ける。
事業の部分だけを見れば、ROEは資本コストと同じくらいだ。オーナーとして持ちたいのは、配当の比率を上げるか自社株買いで現金を戻す方針が数字で出た時だ。安全域は、今の値段では薄いと考える。事業そのものは手放したくない質を持つだけに、資本の使い方が惜しい。
何で稼ぐ会社か
エブレンは1973年創業で、東京の八王子に本社を置く。売上は約40億円、従業員は連結で106人の小さな会社だ。中国の蘇州に子会社を持つ。
作っているのは、産業用のコンピュータの骨組みだ。バックプレーンは、複数の基板を差し込んでつなぐ配線の板で、装置の中で信号と電気を配る。これを収めるラック(箱)や、基板のコンピュータも作る。最近は部品の単体より、箱と板と電源を組み上げた完成品に近いユニットの注文が増えている。
売上の57%は計測・制御の分野で、半導体の製造と検査の装置や工場の自動化の機械に入る。19%は交通で、鉄道の信号や道路の情報の機器に入る。残りは防衛、通信と放送、医療と高性能の計算だ。最大の顧客は検査の基板を作るアバールデータで、売上の19%を占める。
注文は顧客ごとに仕様が違い、数も少ない。エブレンは設計から作りまでを短い期間で請け負う。工場への投資は小さく、2026年3月期の設備投資は600万円だった。稼いだ現金は、ほとんどが手元に残る。工場は持たない形に近く、作りの一部は外の協力の会社に任せる。
優良さと弱いところ
強みは、少量で多品種の注文を素早く設計する腕だ。装置の会社は、自社の装置に合う箱と配線の板を、1台から数百台の単位で求める。大手の電子部品の会社には小さすぎる注文で、エブレンは50年の実績でこの隙間を押さえている。営業利益率13%と、借入ゼロの財務がその証拠だ。
弱さは3つある。第1に、売上が半導体の装置の山谷に揺れる。第2に、規模が小さく、顧客の装置の会社に値段の交渉で負けやすい。最大の顧客が売上の2割を占める。第3に、資本の使い方だ。現金と長期の預金は31億円あり、自己資本の6割を占める。配当は利益の2割で、その現金は株主に戻らない。
創業家の上村氏と資産管理会社が過半を持つ。経営は安定するが、数字の中期計画や資本の稼ぎの目標は示していない。年の計画は売上と経常利益だけを掲げ、2026年3月期は売上が少し届かず、利益は上回った。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
半導体の装置の市場は、AIの計算の基盤への投資で長く伸びる見通しだ。ただ、装置の会社の発注は3〜4年ごとに大きく山谷をつくる。エブレンの売上もこの波に沿って動き、2023年3月期の山の後に3年間横ばいだった。受注は2026年3月期に18%増え、次の山に向かう途中にある。
鉄道の信号と防衛は、別の波で動く。鉄道の信号は更新の周期が長く、需要は底堅い。防衛は国の予算の大幅な増加で、通信と指揮の電子機器の需要が増えている。この2つが半導体の谷を和らげる。
競争の相手は、国内の小さな専業と、中国や台湾の産業用のコンピュータの会社だ。汎用の産業用のコンピュータの性能が上がれば、専用の箱と配線の板の値打ちは薄れる。一方、装置の高性能化で信号の速さが上がるほど、配線の板の設計は難しくなる。筆者は、10年で数量は緩やかに伸びるが、顧客ごとの設計の腕が値段の力になる場面は限られるとみる。
電子部品の値上げも逆風だ。半導体や電源の部品の値段が上がる局面で、小さな作り手は仕入れの量で大手に負ける。値上げを顧客に回せるかが、利益率の分かれ目になる。
資本政策と M&A
還元は配当だけだ。2026年3月期の配当は総額0.72億円で、純利益の約2割だった。自社株買いはしていない。株主優待もない。
財務は借入が無く、現金は厚い。現金と同等物は21億円で、ほかに10億円を長期の預金に移した。合わせて31億円で、時価総額の半分を超える。事業に要る運転資金を売上の3か月分の10億円とみても、20億円が余る。
大株主は創業家の上村氏と資産管理会社のカームで、合わせて5割を持つ。光通信の投資の組合も約5%を持つ。他社に買われるかは創業家の判断次第で、現金の使い道を外から変える力は弱い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注は2026年3月期に18%増え、次の山に入った。会社は2年で売上を50億円に伸ばす見込みで、営業利益率も15%近くに上がる。AIの計算の基盤への投資は長く続き、検査と製造の装置の台数は増え続ける。
防衛の予算は大きく増え、通信と指揮の機器の受注が伸びる。鉄道の信号の更新も底堅い。半導体の谷を、ほかの分野が和らげる形ができつつある。
部品の単体から完成品に近いユニットへ供給を広げ、1台あたりの売上も増える。大阪に研究所を設け、設計の力も強める。設備の投資がほとんど要らないので、利益の伸びはそのまま現金になる。
現金31億円は時価総額の半分を超える。創業家が方針を変えて還元を厚くすれば、株主の取り分は一気に増える。光通信の組合も株主に入っている。
借入はゼロで、谷が来ても赤字にならない。過去8年に赤字の期は無い。装置の信号が速くなるほど配線の板の設計は難しくなり、腕のある作り手の値打ちは上がる。中国の子会社を使えば、作りの費用も抑えられる。
慎重な見方
売上は過去8年で32〜43億円を行き来し、伸びていない。半導体の装置の山の時に受注が増えるのは毎回のことで、10年で見れば数量の伸びは小さい。最大の顧客のアバールデータは売上の2割を占め、その比率は前期の23%から下がった。
値段の力も弱い。顧客の装置の会社は大きく、電子部品の値上げを全部は転嫁できない。汎用の産業用のコンピュータの性能が上がれば、専用の箱と配線の板の注文は細る。中国や台湾の作り手も安い。
現金は厚いが、株主には戻らない。配当は利益の2割で、自社株買いはない。創業家が過半を持ち、外からの圧力も効かない。眠る現金は利息2%しか生まず、全社のROEは年々薄まっていく。
技術者は87人と少なく、人の採用と引き継ぎが滞れば受注に応えられない。平均の年齢は45歳に近く、設計の腕の継承は10年の課題だ。
受注が増えた今は山の入り口で、ここからの数年の利益を10年の実力と見なすのは危うい。過去の山の後には、毎回のように売上が横ばいに戻った。
どちらに重みを置いたか
強気と慎重の言い分は拮抗する。事業の稼ぎの堅さは本物で、受注の回復も確かだ。だが、売上が装置の山谷を行き来してきた事実と、現金が株主に戻らない資本の使い方は10年で変わりにくい。中立を最も厚くし、楽観とやや楽観を合わせて3割に置いた。還元の方針の変更が出れば上側に寄せる。防衛の伸びは上側の確率に少し入れた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,750 円87 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 595 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 3,275 円49 億円、今との差 −11.2%、 期待の年率 +5.6%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 10,067 円152 億円 | 994 円15 億円 | +199.7% | +11.6% | 885 円13 億円 |
| やや楽観 | 22% | 7,769 円117 億円 | 795 円12 億円 | +132.1% | +8.8% | 1,884 円28 億円 |
| 中立 | 38% | 6,588 円99 億円 | 596 円9 億円 | +94.7% | +6.9% | 2,730 円41 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,845 円43 億円 | 398 円6 億円 | −12.1% | −1.3% | 713 円11 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,060 円16 億円 | 265 円4 億円 | −64.1% | −9.7% | 133 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,750 円87 億円 | 595 円9 億円 | +72.0% | +5.6% | 6,345 円96 億円 |
今の株価時価総額 3,690 円56 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 半導体と防衛の装置の需要が伸び、完成品に近いユニットで単価も上がる 利益 9 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 10,067 円152 億円
半導体の装置と防衛の電子機器の需要が、10年にわたり伸び続ける筋書きだ。AIの計算の基盤への投資で、検査や製造の装置の台数が増える。エブレンは装置の頭脳を収める箱と配線の板を、顧客ごとに設計して納める。部品の単体から完成品に近いユニットへ供給の範囲を広げ、1台あたりの売上も増える。
防衛の予算の増加で、通信と指揮の機器の受注も増える。鉄道の信号の更新の需要も底堅い。売上は80億円近くに倍増し、営業利益率は15%台に上がる。
手元の現金は配当と研究所に回すが、大半は積み上がる。オーナー家が過半を持つ形は変わらない。
- 計測・制御(半導体装置・検査・FA):数量 18.3(ユニット・バックプレーンの出荷(千台・推定))× 価格 0.27(1台あたりの売上(百万円))→ 売上 49 億円・営業利益 8 億円。1.6倍×物価並み、16%
- 交通(鉄道信号・ITS):数量 4.9(ユニット・バックプレーンの出荷(千台・推定))× 価格 0.27(1台あたりの売上(百万円))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。1.3倍×物価並み、14%
- 防衛・通信放送・電子応用:数量 6.1(ユニット・バックプレーンの出荷(千台・推定))× 価格 0.27(1台あたりの売上(百万円))→ 売上 16 億円・営業利益 2 億円。1.3倍×物価並み(防衛の伸び)、14%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 16.66 倍、時価総額 152 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注は2026年3月期に18%増えたが、10年で計測・制御の数量を6割増やすには半導体の装置の投資が長く続く必要がある。過去の山の利益率15.4%(2023年3月期)を超える筋なので8%とした。
やや楽観 22% 半導体の装置の台数が伸び、ユニットの供給も広がる 利益 7 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 7,769 円117 億円
半導体の装置の台数が10年で3割増え、エブレンの主力の計測・制御が伸びる筋書きだ。顧客は検査の基板のアバールデータや、装置の会社の制御の部門だ。顧客ごとに設計を変える小さな量の受注で、大手の電子部品の会社が入りにくい。
交通は鉄道の信号の更新で緩やかに伸び、防衛と医療も少しずつ増える。売上は65億円ほどになり、営業利益率は14%前後を保つ。
配当は利益の2割ほどで、自社株買いはしない。現金は積み上がり、自己資本の6割を現金が占める形が続く。大阪の研究所で設計の人を増やし、注文の取りこぼしを減らす。
- 計測・制御(半導体装置・検査・FA):数量 14.9(ユニット・バックプレーンの出荷(千台・推定))× 価格 0.27(1台あたりの売上(百万円))→ 売上 40 億円・営業利益 6 億円。1.3倍×物価並み、14.5%
- 交通(鉄道信号・ITS):数量 4.4(ユニット・バックプレーンの出荷(千台・推定))× 価格 0.27(1台あたりの売上(百万円))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。1.15倍×物価並み、13%
- 防衛・通信放送・電子応用:数量 5.2(ユニット・バックプレーンの出荷(千台・推定))× 価格 0.27(1台あたりの売上(百万円))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。1.1倍×物価並み、12%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 15.91 倍、時価総額 114 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注は前期比118%で、会社の予想も2年で売上50億円を見込む。半導体の装置の投資の伸びが続く筋として22%とした。
中立 38% 装置の山谷を越えて緩やかに伸びるが、現金は眠ったまま 利益 5 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 6,588 円99 億円
エブレンが今の形のまま、緩やかに伸びる筋書きだ。計測・制御の数量は10年で1割強増え、交通と防衛は横ばいに近い。部品の値段は物価に少し届かない。顧客の装置の会社が値段の交渉で強く、電子部品の値上げを全部は転嫁できないからだ。
売上は56億円ほどになり、営業利益率は12%台を保つ。手元の現金は配当で2割を配った残りが積み上がり、利息を生むだけで眠る。
オーナー家が過半を持ち、現金の使い道を外から問う力は弱い。事業の稼ぎは確かだが、株主の取り分は現金の眠りの分だけ薄まる。山谷を越えても、10年の後の姿は今と大きく変わらない。
- 計測・制御(半導体装置・検査・FA):数量 12.8(ユニット・バックプレーンの出荷(千台・推定))× 価格 0.26(1台あたりの売上(百万円))→ 売上 33 億円・営業利益 4 億円。1.12倍×1.30倍(値上げの転嫁が物価に少し届かない)、13%
- 交通(鉄道信号・ITS):数量 4.0(ユニット・バックプレーンの出荷(千台・推定))× 価格 0.26(1台あたりの売上(百万円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。1.05倍×1.30倍、12.5%
- 防衛・通信放送・電子応用:数量 4.7(ユニット・バックプレーンの出荷(千台・推定))× 価格 0.26(1台あたりの売上(百万円))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。1.0倍×1.30倍、11%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 15.55 倍、時価総額 92 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去8年の売上は32〜43億円を行き来し、半導体の装置の山谷に沿って動いた。10年の終わりを山でも谷でもない位置に置き、数量の小さな伸びと物価に少し届かない値段を落としどころとして38%とした。
やや悲観 22% 半導体の装置の谷と主力の顧客の離脱が重なる 利益 3 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 2,845 円43 億円
10年の終わりが半導体の装置の谷に当たり、主力の顧客の発注も減る筋書きだ。アバールデータが検査の基板の箱を自社か他社の作りに切り替え、計測・制御の数量は今の85%に落ちる。部品の値上げは転嫁しきれず、値段は10年で1.2倍にとどまる。
営業利益率は8%に下がり、営業利益は3億円台になる。手元の現金は谷を乗り切る支えとして残るが、オーナー家の判断で使われ、株主の手には戻りにくい。
事業そのものは黒字を保ち、潰れる形ではない。ただ稼ぐ力は細り、価値は眠る現金の一部と細い利益に見合う低い値段になる。設計の人も減らし、研究所は縮む。
- 計測・制御(半導体装置・検査・FA):数量 9.7(ユニット・バックプレーンの出荷(千台・推定))× 価格 0.24(1台あたりの売上(百万円))→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。0.85倍×1.20倍、8%
- 交通(鉄道信号・ITS):数量 3.6(ユニット・バックプレーンの出荷(千台・推定))× 価格 0.25(1台あたりの売上(百万円))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。0.95倍×1.25倍、10%
- 防衛・通信放送・電子応用:数量 4.2(ユニット・バックプレーンの出荷(千台・推定))× 価格 0.24(1台あたりの売上(百万円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。0.9倍×1.20倍、7%
倍率:ROEは4%前後で資本コストを下回る。稼ぐ力(純利益÷k)で見て、1÷kの12.5倍の6.4割の8倍。余った現金は谷で一部を使うとみて今の0.75倍の額に戻り方0.5を掛けた。
確率:2020〜2021年3月期は売上32億円・利益率9%に落ちた。10年の終わりが装置の谷に当たる形と、売上の2割の顧客の調達先の変更が重なる筋として22%とした。
悲観 10% 顧客が装置の制御を汎用の機器に替え、受託の設計の値打ちが薄れる 利益 1 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,060 円16 億円
顧客の装置の会社が、専用の箱と配線の板をやめ、汎用の産業用のコンピュータに切り替える筋書きだ。設計の受託の値打ちが薄れ、計測・制御の数量は今の6割に落ちる。値段も中国の作り手との競争で物価に届かない。
営業利益率は3%台に落ち、営業利益は1億円ほどになる。利益の多くは手元の現金の利息になる。会社は黒字を保つが、事業の稼ぎはほとんど残らない。
現金は積み上がるが、オーナー家は使い道を示さない。株主の取り分は、眠る現金の一部と利息に見合うだけの値段になる。清算されない限り、純現金を下回る値段が続く。
- 計測・制御(半導体装置・検査・FA):数量 6.9(ユニット・バックプレーンの出荷(千台・推定))× 価格 0.22(1台あたりの売上(百万円))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。0.6倍×1.10倍、3%
- 交通(鉄道信号・ITS):数量 3.0(ユニット・バックプレーンの出荷(千台・推定))× 価格 0.23(1台あたりの売上(百万円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。0.8倍×1.15倍、6%
- 防衛・通信放送・電子応用:数量 3.3(ユニット・バックプレーンの出荷(千台・推定))× 価格 0.22(1台あたりの売上(百万円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。0.7倍×1.10倍、3%
倍率:ROEは1%台で資本コストを大きく下回る。稼ぐ力は利息がほとんどで、1÷kの12.5倍の6.4割の8倍を事業の純利益に掛け、余った現金は今の0.5倍の額に戻り方0.5を掛けた。純現金を下回るのは、オーナー家が過半を持ち少数株主が現金の使い道を決められないため。
確率:顧客ごとの設計の需要は、汎用の産業用のコンピュータの性能の向上で細る恐れがある。単一の製品群に頼る構造的な負けの筋として10%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
計測・制御(半導体装置・検査・FA)
半導体の製造と検査の装置、工場の自動化の機械に入るバックプレーン・ラック・ユニット。
| 数量ユニット・バックプレーンの出荷(千台・推定) | 価格1台あたりの売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.5 | 0.20 | 23 | 3 |
| 10 年後 中立 | 12.8 | 0.26 | 33 | 4 |
取り方:台数の開示が無いため推定。分野別の売上22.90億円を、平均の単価(1台0.2百万円)で割った約1.1万台。利益は単一のセグメントの営業利益率13.3%を当てた推定。
交通(鉄道信号・ITS)
鉄道の信号や道路の情報の機器に入る製品。
| 数量ユニット・バックプレーンの出荷(千台・推定) | 価格1台あたりの売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.8 | 0.20 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4.0 | 0.26 | 10 | 1 |
取り方:台数の開示が無いため推定。分野別の売上7.59億円を平均の単価(1台0.2百万円)で割った約3,800台。利益は全社の営業利益率13.3%を当てた推定。
防衛・通信放送・電子応用
防衛、通信と放送、医療と高性能の計算の機器に入る製品。
| 数量ユニット・バックプレーンの出荷(千台・推定) | 価格1台あたりの売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.7 | 0.20 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4.7 | 0.26 | 12 | 1 |
取り方:台数の開示が無いため推定。分野別の売上9.45億円を平均の単価(1台0.2百万円)で割った約4,700台。利益は全社の営業利益率13.3%を当てた推定。
リスクと懸念
半導体の装置の山谷
売上の57%が計測・制御で、多くは半導体の装置向けだ。装置の会社の発注は3〜4年ごとに大きく振れ、売上は過去8年で32〜43億円を行き来した。
主力の顧客への依存
アバールデータが売上の約19%を占める。その調達の方針が変われば、計測・制御の数量が大きく減る。
汎用の機器への置き換え
汎用の産業用のコンピュータの性能が上がれば、顧客ごとに設計する箱と配線の板の注文は細る。中国や台湾の作り手との値段の競争もある。
眠る現金
現金と長期の預金は31億円で、配当は利益の2割、自社株買いはない。利息2%の現金が積み上がるほど、全社のROEは下がる。
部品の値上げと人手
電子部品の値上げを顧客に全部は転嫁できない。設計の技術者は87人と少なく、人の採用と引き継ぎが滞れば受注に応えられない。
今後の分かれ目
- 配当の比率を大きく上げる、または自社株買いを始めたら
- 現金が株主に戻る道が開いたとみて、戻り方と上側の確率を見直す。
- 売上が50億円を超え、営業利益率15%を2期保ったら
- 数量の伸びと値段の力の証拠として、やや楽観の確率を上げる。
- 受注が前期比で2割以上減ったら
- 装置の谷に入ったとみて、10年の道筋はそのままに短期の文章を直す。
- アバールデータ向けの売上が半減したら
- 主力の顧客の離脱として、やや悲観に重みを移す。
- 創業家が持株を売る、または他社が買収を持ちかけたら
- 現金と事業に値段が付く場面として、時価総額の見方を見直す。
見ておくもの
- 受注の額と前年比
- 計測・制御の分野の売上
- アバールデータ向けの比率
- 配当の比率と自社株買い
- 防衛の分野の売上
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPBRを見ずに、ROEとk 7.25%から決めた。全社のROEは眠る現金で薄まり資本コストに届かないので、中立のPERは1÷kの12.5倍の8割に置いた。余った現金20億円は運転資金10億円を除いた額で、戻り方は配当の比率と創業家の持株から0.5とした。facts の純現金は現金同等物だけで、長期の預金10億円を足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→16.66 倍・やや楽観 PER 11.2→15.91 倍・中立 PER 11→15.55 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。