結論
テクノメディカは、病院の採血室で、採血管を自動で選んでラベルを貼る装置の会社だ。国内の累計設置施設ベースでシェアは 9 割前後と、ほぼ独占に近い。筆者の結論は、事業の稼ぎだけでなく、純現金と還元の姿勢を合わせて見れば「適正」の周辺という評価である。
売上の半分は消耗品だ。装置を病院に入れれば、採血管やラベルが繰り返し売れる。前期は売上 112 億円、営業利益 17 億円と大きく伸びたが、大型案件の山に乗った数字で、今期は営業利益 34% 減を会社が見込む。この反動をどこまで織り込むかが、評価の分かれ目になる。
財務は独特だ。現金が 90 億円あり、借入はない。時価総額の 7 割が現金である。会社は配当性向 80% 以上、総還元性向 150% を掲げ、余った現金を戻す姿勢を明確にした。
弱みは国内の成熟だ。大規模病院への設置は一巡しつつあり、病院の経営は厳しい。装置の台数は細り、価格も物価に追いつきにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべきは「事業の質」と「余った現金の行き先」の二つだ。
事業の質は高い。国内シェア 9 割、消耗品の繰り返し収入、切り替えの重さと、堀(他社がまねできない強み)がそろう。弱みは成長の乏しさで、国内は成熟し、病院の予算も厳しい。
余った現金の行き先は、会社が示した。総還元性向 150% を掲げ、株主に戻す方針に変えたのは大きい。放っておけば眠る 90 億円が、株主の手元に戻ってくる。
10 年後、中立で営業利益は今と同じ 17 億円前後。成長はない。だが、事業の稼ぎが一定で、余った現金が戻るなら、買った価格に見合った果実が得られる。派手さはないが、守りの厚い銘柄だと筆者は見る。逆に、現金が事業に再投資されず溜まり続けるなら、評価は一段下がる。
安全域は、純現金が時価総額の 7 割ある点にある。事業が傷んでも、その現金は残る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは三つの区分に分かれる。
採血管準備装置・システムは売上 49 億円。検査に合った採血管を自動で選び、患者の情報を印字したラベルを貼って、患者ごとのトレイに収める。受付から準備までを自動にする一連のシステムで、主力機は RFID(非接触の個体識別)を備えた大型機だ。国内 2,500 施設超、海外 500 施設超に入っている。
消耗品等は売上 58 億円で、採血管やラベルなど、装置に使うものを売る。設置台数に連動し、繰り返し入る収入だ。
検体検査装置は売上 5 億円で、血液ガスや電解質の分析機。競合が多く、規模は小さい。
販売は医療機器の卸を通すか直販で、最終の顧客は病院と検査機関。海外は展示会で接点のあった販売先との独占販売契約が中心で、比率は 13%。
製造の大半は協力会社に委託し、会社は開発と販売に集中する。製造は協力会社が担い、検査機器を組み上げる工程は外に出している。従業員は 239 人、平均年収は 701 万円。少人数で開発と販売を回す、身軽な構造の会社である。生産設備を自前で持たないため、設備投資の負担も小さい。
優良さと弱いところ
優良さは「上」と見る。強みは三つある。一つ目は国内シェアで、累計設置ベースで 9 割前後を持つ。二つ目は消耗品で、売上の半分が装置に付随する繰り返しの収入。三つ目は病院側の切り替えの重さで、商談に 2〜3 年かかる装置を入れ替えるには、運用の手順ごと変える必要がある。
財務も強い。自己資本比率は 80%、現金は 90 億円、借入はない。前の中期計画では売上・利益とも目標を達成した。
弱みは三つ。国内の成熟、病院の赤字、そして単一の製品への集中である。有報も、大規模病院への設置の伸び悩みと、非純正の廉価な消耗品が出回るリスクを挙げる。
利益率は過去に 25% あったが、今は 13〜15% に下がった。研究開発費と人件費の上昇が背景にあるとみる。
経営は資本配分を改め、配当性向 8 割以上、総還元性向 150% を掲げた。評価できる転換である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
採血管準備装置は、病院の検査部門の自動化機器で、人手不足が進むほど価値が高まる。国内は大規模病院を中心に導入が進み、シェアは 9 割前後でほぼ頭打ちに近い。伸びは、公立病院などの更新入札、小型機の中小病院への展開、海外で出る。
逆風は病院の経営だ。2026 年度の診療報酬改定は本体で 3% 台のプラスだが、過半数の病院が赤字とされる。機器投資は後回しになりやすく、大規模病院への設置は伸び悩んでいる。病院の統廃合も、長い目では施設数を減らす。
消耗品では、非純正の廉価品が出回る。装置の囲い込みが崩れれば、利益の源泉が細る。
競合は、採血管メーカーの装置や、海外の検査自動化メーカーだが、国内では目立った競合が少ない。検体検査装置の分野は、血液ガスの大手との競争が厳しい。
分かれ目は、病院の更新需要、海外の導入、次世代機が市場のニーズを捉えるかだ。人手不足が続く限り、検査室の自動化という大きな流れ自体は崩れにくい。ただし病院の予算が追いつくかは別の話で、需要と支払い能力のずれが利益の振れを生む。
資本政策と M&A
資本政策は、この会社の見どころだ。2027〜2029 年 3 月期は、配当性向 80% 以上、総還元性向 150% を目指す。前期の配当は総額で 8.6 億円、性向 83% で、自己株式の取得にも 6.7 億円を使った。余った現金を成長投資、M&A、還元に配分する方針も明確にした。
現金は 90 億円、借入はない。研究開発費は年 4.6 億円で、設備投資は小さい。
買収の実績は確認できていない。M&A の方針は掲げるが、具体案は見当たらない。
大株主には、オートニクスが 14.5% 前後と創業家系が並ぶと第三者サイトにある。親会社はなく、支配株主もいない。株主優待は見当たらない。
余った現金の戻り方は、前期の総還元が純利益を超えた実績から、満額で見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内シェア 9 割の装置に、消耗品の繰り返し収入が付く、堀の厚い事業だ。売上の半分は消耗品で、設置された装置が使われ続ける限り、収入は続く。
前の中期計画は、売上・営業利益とも目標を上回った。前期は営業利益が 28% 増え、今期も第 1 四半期の売上は 25% 増で始まった。会社予想の営業利益 11 億円は保守的で、実際は上振れの余地がある。
純現金は 90 億円で、時価総額の 7 割。総還元性向 150% の方針は、この現金を株主に戻す意思の表れで、前期は総還元が純利益を超えた。配当は性向 83%、DOE 6%。
人手不足で検査の自動化は欠かせず、更新入札も続く。海外が伸びれば、さらに上振れる。前期の大型案件で見せた収益力は、需要さえ戻れば再び出る水準だ。会社が示した還元の約束は、その自信の表れでもある。配当の水準も高い。売上の半分が消耗品で、景気や病院の予算の波を受けにくい点も、下振れ を和らげる。
慎重な見方
国内のシェアは 9 割と、すでに上限に近い。大規模病院への設置は一巡し、伸びしろは更新と海外に限られる。海外は売上の 13% と小さく、独占販売契約に頼る。
病院の過半数が赤字で、機器投資は後回しにされる。会社の今期予想は営業利益 34% 減で、前期の大型案件は繰り返さない。利益率は 25% から 13〜15% に下がり、戻る理由は見当たらない。
非純正の廉価な消耗品が出回れば、消耗品の囲い込みが崩れ、利益の源泉が細る。単一の製品に集中するため、次世代機が外れると収益が落ちる。
純現金は大きいが、すべてが余剰ではない。売上債権 34 億円と棚卸 23 億円を抱え、運転資金の負担は大きい。総還元性向 150% は 3 年の目標で、その先は続く保証がない。現金が減れば、安全域としての厚みも同時に薄れていく。さらに、国内シェアが高いぶん、新規の設置先が見つからなければ成長の源泉が尽きる。現金が大きく見えても、成長の乏しさが倍率を押さえる。
どちらに重みを置いたか
堀の厚さと還元の転換を評価し、確率は中立を厚く、楽観側に少し寄せた。ただし、国内の成熟と病院の赤字、今期の大幅減益予想から、悲観側も 3 割強を残した。今期の営業利益 34% 減という会社予想は、悲観側の筋書きを置く直接の根拠になる。余った現金は、運転資金と配当の支払いを除いた 65 億円とし、戻り方は満額で見た。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,019 円255 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,830 円116 億円)。 今の値に割り戻すと 3,347 円212 億円、今との差 +59.4%、 期待の年率 +10.8%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 7,549 円478 億円 | 2,761 円175 億円 | +391.0% | +17.2% | 825 円52 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,006 円381 億円 | 2,335 円148 億円 | +297.2% | +14.8% | 1,668 円106 億円 |
| 中立 | 38% | 4,496 円285 億円 | 2,004 円127 億円 | +209.5% | +12.0% | 2,470 円157 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,701 円108 億円 | 1,341 円85 億円 | +44.9% | +3.8% | 669 円42 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,090 円69 億円 | 710 円45 億円 | −14.3% | −1.5% | 216 円14 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,019 円255 億円 | 1,830 円116 億円 | +178.5% | +10.8% | 5,848 円371 億円 |
今の株価時価総額 2,100 円133 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 海外と次世代機で伸び、国内の更新も取り切る 利益 20 億円 · PER 23.1 倍 · 株価時価総額 7,549 円478 億円
国内は更新需要を取り切り、海外は独占販売契約の販売先を増やして導入施設が 15% 増える。消耗品は設置台数に連動して伸び、装置の販売台数も今の水準を保つ。
病院の予算は厳しいが、人手不足で検体の準備を自動化する需要が強まる。価格は物価に少し届かない伸びで、営業利益率は 17% に戻る。
営業利益は 27 億円と今の 1.6 倍になる。10 年で最も良い姿だが、前期の山を超える水準で、長く続く保証はない。
海外の販売先も増やすには時間がかかり、独占販売契約の相手との関係が前提になる。為替の影響も受ける。配当性向 8 割以上と余った現金の還元が続き、自己資本は膨らまない。
- 採血管準備装置・システム:数量 196(年間の販売台数(台。1 台は 3 ユニット前後の構成を 1 台とみた推定))× 価格 0.33(1台あたり売上(億円、名目。推定))→ 売上 64 億円・営業利益 10 億円。装置 量 1.00 倍・価格 1.30 倍、利益率 16.0%
- 消耗品等:数量 3,450(消耗品を使う稼働施設数(施設。国内 2,500 超・海外 500 超から 3,000 とみた))× 価格 0.03(1施設あたり年間の消耗品売上(億円、名目))→ 売上 87 億円・営業利益 16 億円。消耗品 量 1.15 倍・価格 1.30 倍、利益率 18.5%
- 検体検査装置:数量 172(年間の販売台数(台。推定))× 価格 0.05(1台あたり売上(億円、名目。推定))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。検体検査 量 1.30 倍・価格 1.30 倍、利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.0% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 18.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 23.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 23.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)41 億円。全体の PER 23.11 倍、時価総額 478 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外の導入が進み、次世代機が大規模病院の更新を取り込み、消耗品が施設の増加で伸びる筋書き。国内シェアは 9 割で伸びしろは海外と更新に限られ、全部が重なる必要があるので低めに置いた。
やや楽観 20% 更新需要を取り込み、消耗品が堅く伸びる 利益 16 億円 · PER 21.9 倍 · 株価時価総額 6,006 円381 億円
装置の販売台数は 1 割減にとどまり、更新需要が下支えする。消耗品は設置施設の増加で 5% 増える。価格は物価に届かない伸びで、営業利益率は 15% 台に戻る。
営業利益は 22 億円ほどで、今の 1.3 倍。大型案件の山は来ないが、堅実に積み上がる。国内の成熟は進むが、海外の導入が少しずつ積み上がる。人手不足を背景に、検査室の自動化の需要が底堅く続く姿である。
大型案件の山は来ないが、谷も深くはならない。会社の計画に近い、地味な伸びの姿といえる。
配当性向 8 割以上の方針が守られ、余った現金も少しずつ戻る。
- 採血管準備装置・システム:数量 176(年間の販売台数(台。1 台は 3 ユニット前後の構成を 1 台とみた推定))× 価格 0.32(1台あたり売上(億円、名目。推定))→ 売上 56 億円・営業利益 8 億円。装置 量 0.90 倍・価格 1.28 倍、利益率 14.0%
- 消耗品等:数量 3,150(消耗品を使う稼働施設数(施設。国内 2,500 超・海外 500 超から 3,000 とみた))× 価格 0.02(1施設あたり年間の消耗品売上(億円、名目))→ 売上 78 億円・営業利益 13 億円。消耗品 量 1.05 倍・価格 1.28 倍、利益率 17.0%
- 検体検査装置:数量 132(年間の販売台数(台。推定))× 価格 0.05(1台あたり売上(億円、名目。推定))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。検体検査 量 1.00 倍・価格 1.28 倍、利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.1% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 15.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)49 億円。全体の PER 21.94 倍、時価総額 381 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の更新を安定して取り込み、消耗品が堅調に伸びる筋書き。前中計を達成した実績があり、2 割に置いた。
中立 38% 国内は成熟して台数は細り、消耗品が支える 利益 12 億円 · PER 20.2 倍 · 株価時価総額 4,496 円285 億円
国内の大規模病院への設置は一巡し、装置の販売台数は実質で 2 割減る。ただ、公立病院の更新入札は続き、前期のような大型案件の山が来る年もある。
消耗品は、導入施設が維持されるので実質で 3% 減にとどまる。価格は病院の予算が厳しく、物価の 1.34 倍に届かず 1.25 倍。
営業利益率は 13.5% で、会社の中計(29 年 3 月期に 13%)に沿う。営業利益は 17 億円と今と同じ水準になり、物価で利益が増える分を、台数の減りと研究開発費の負担が消す。
余った現金は配当と自社株買いで戻り続け、自己資本は横ばいになる。
- 採血管準備装置・システム:数量 157(年間の販売台数(台。1 台は 3 ユニット前後の構成を 1 台とみた推定))× 価格 0.31(1台あたり売上(億円、名目。推定))→ 売上 49 億円・営業利益 6 億円。装置 量 0.80 倍・価格 1.25 倍、利益率 12.0%
- 消耗品等:数量 2,910(消耗品を使う稼働施設数(施設。国内 2,500 超・海外 500 超から 3,000 とみた))× 価格 0.02(1施設あたり年間の消耗品売上(億円、名目))→ 売上 71 億円・営業利益 11 億円。消耗品 量 0.97 倍・価格 1.25 倍、利益率 16.0%
- 検体検査装置:数量 119(年間の販売台数(台。推定))× 価格 0.05(1台あたり売上(億円、名目。推定))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。検体検査 量 0.90 倍・価格 1.25 倍、利益率 0.0%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.5% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 12.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)53 億円。全体の PER 20.24 倍、時価総額 285 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:更新は続くが、大規模病院への設置は一巡して台数が 2 割減る。消耗品は設置施設の維持で底堅く、営業利益率は会社の 29 年 3 月期計画(13%)近くに落ち着く最も標準的な姿。
やや悲観 22% 病院の予算難で更新が遅れ、廉価な消耗品が出回る 利益 7 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,701 円108 億円
病院の赤字が続き、機器の更新は先送りされる。装置の販売台数は実質で 35% 減る。消耗品も、非純正の廉価品に押されて 10% 減る。価格は物価に追いつかず 1.15 倍にとどまる。
営業利益率は 9% 台に落ち、営業利益は 10 億円を割る。研究開発費と人件費が固定費として残り、利益を削る。売上が減っても費用は同じ割合では減らず、利益率の低下が速い。
新製品の投入が遅れれば、更新の機会を競合に譲る年も出る。
配当性向 8 割は守るが、余った現金の還元は鈍り、自己資本は今の水準で残る。10 年を通して成長の実感は乏しい。
- 採血管準備装置・システム:数量 127(年間の販売台数(台。1 台は 3 ユニット前後の構成を 1 台とみた推定))× 価格 0.29(1台あたり売上(億円、名目。推定))→ 売上 37 億円・営業利益 3 億円。装置 量 0.65 倍・価格 1.15 倍、利益率 7.0%
- 消耗品等:数量 2,700(消耗品を使う稼働施設数(施設。国内 2,500 超・海外 500 超から 3,000 とみた))× 価格 0.02(1施設あたり年間の消耗品売上(億円、名目))→ 売上 60 億円・営業利益 7 億円。消耗品 量 0.90 倍・価格 1.15 倍、利益率 11.5%
- 検体検査装置:数量 92.4(年間の販売台数(台。推定))× 価格 0.05(1台あたり売上(億円、名目。推定))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。検体検査 量 0.70 倍・価格 1.15 倍、利益率 -3.0%
倍率:ROE 4.8%。ROE が k 7% を下回るので上限は 1÷k = 13.3 倍。RONIC = 7.5% + 2/3 ×(4.8% − 7.5%)= 5.7%、g 4% の正当化 PER は 9.1 倍。利益の質が落ちる筋書きなので、式の値に近い 9.5 倍に置いた(堀が弱まる姿のため、7 割の引き上げはしない)。
確率:診療報酬が伸びても病院の赤字が続き、機器の更新が先送りされる。非純正の廉価消耗品も出る筋書き。有報が挙げるリスクが重なる姿で、2 割強に置いた。
悲観 12% 設置の一巡と廉価品で台数も消耗品も細る 利益 2 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,090 円69 億円
構造的に負ける。病院の統廃合と赤字で設置施設が減り、装置は新規も更新も 55% 減る。消耗品も非純正品に押されて 25% 減り、価格も 1.05 倍にとどまる。
売上は 72 億円と今の 6 割強になり、営業利益率は 3% まで落ちる。研究開発費の負担が重く、純利益は 2 億円を割る。
事業の稼ぎでは値が付かず、純現金と在庫・売掛金の売れる価値が値の支えになる。病院の統廃合が進み、設置先そのものが減る点が、この筋書きの核心である。
会社が示す還元の約束も、利益が細れば守れなくなり、余った現金は運転資金に回る。
- 採血管準備装置・システム:数量 88.1(年間の販売台数(台。1 台は 3 ユニット前後の構成を 1 台とみた推定))× 価格 0.26(1台あたり売上(億円、名目。推定))→ 売上 23 億円・営業利益 −1 億円。装置 量 0.45 倍・価格 1.05 倍、利益率 -2.0%
- 消耗品等:数量 2,250(消耗品を使う稼働施設数(施設。国内 2,500 超・海外 500 超から 3,000 とみた))× 価格 0.02(1施設あたり年間の消耗品売上(億円、名目))→ 売上 46 億円・営業利益 3 億円。消耗品 量 0.75 倍・価格 1.05 倍、利益率 6.0%
- 検体検査装置:数量 66.0(年間の販売台数(台。推定))× 価格 0.04(1台あたり売上(億円、名目。推定))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。検体検査 量 0.50 倍・価格 1.05 倍、利益率 -10.0%
倍率:構造的に優良でなくなった姿。稼ぐ力(純利益 ÷ k)は 20 億円ほどにしかならず、床は純現金と売れる資産。自己資本を今の 144 億円とみて PBR 0.48 倍で床の近くに置いた。
確率:国内の大規模病院への設置が止まり、病院の統廃合で施設数が減り、非純正の消耗品に押される構造的な負けの筋書き。10 年で売上が 3 割減る。90% のシェアが長く続いてきた実績から 1 割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
採血管準備装置・システム
検査に合った採血管を自動で選び、患者ラベルを貼ってトレイに収める装置。国内の病院・検査機関に広く入っている主力。
| 数量年間の販売台数(台。1 台は 3 ユニット前後の構成を 1 台とみた推定) | 価格1台あたり売上(億円、名目。推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 196 | 0.25 | 49 | 6 |
| 10 年後 中立 | 157 | 0.31 | 49 | 6 |
取り方:採血管準備装置・システムの売上 48.9 億円(国内 44.5 億円・海外 4.5 億円、有報)。台数と単価は開示がなく、公立病院の入札で出る 3 ユニット構成の機器 1 式を 2,500 万円とみた推定で 195.7 台。会社は単一セグメントで、営業利益は全社 16.7 億円を装置 13%・消耗品 17.5%・検体検査 2% の利益率で配分した推定。
消耗品等
装置に使う採血管・ラベルなど。設置された装置の台数に連動して売れる、繰り返しの収入。
| 数量消耗品を使う稼働施設数(施設。国内 2,500 超・海外 500 超から 3,000 とみた) | 価格1施設あたり年間の消耗品売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 0.02 | 58 | 10 |
| 10 年後 中立 | 2,910 | 0.02 | 71 | 11 |
取り方:消耗品等の売上 58.2 億円(国内 50.6 億円・海外 7.6 億円、有報)。導入施設数は国内 2,500 超・海外 500 超(有報)から 3,000 施設とみて、1 施設あたり年 1,939 万円。保守のサービス収入が含まれるかは未確認で、含まれる前提で置いた。
検体検査装置
血液ガス・電解質の分析装置(デスクトップ型・ハンディ型)。競合が多い分野で、規模は小さい。
| 数量年間の販売台数(台。推定) | 価格1台あたり売上(億円、名目。推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 132 | 0.04 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 119 | 0.05 | 6 | 0 |
取り方:検体検査装置の売上 5.3 億円(国内 3.0 億円・海外 2.3 億円、有報、前期比 −15%)。1 台 400 万円とみた推定で 132 台。営業利益は上の配分による推定。
リスクと懸念
国内の成熟と病院の赤字
国内シェアは約 9 割で伸びしろが小さい。過半数の病院が赤字で、機器投資は後回しになりやすい。大規模病院への設置の伸び悩みは、有報も挙げる。
今期の大幅減益
会社は今期の営業利益を 34% 減の 11 億円と見込む。前期の大型案件の反動とみるが、理由は開示で確認できていない。第 1 四半期の売上は 25% 増だった。
非純正消耗品
廉価な非純正の消耗品が出回るリスクを、有報は挙げる。売上の半分を占める消耗品の囲い込みが崩れれば、利益の源泉が細る。
単一製品と次世代機
採血管準備装置に売上の 4 割強、利益の大半が集中する。次世代機が市場のニーズを捉えられなければ、収益が落ちる。
売上の偏り
商談に 2〜3 年かかり、売上は下期に偏る。大型案件の有無で、年ごとの利益が大きく振れる。
還元方針の持続性
総還元性向 150% は 3 年の目標で、現金が減れば維持できない。余った現金が M&A に使われた場合の価値の行方も読めない。
AI エージェント代替
主力は装置と消耗品で、人月や画面操作で売る事業ではない。検体の準備という現場の物理作業の自動化が価値で、置き換えの影響は小さいとみて、k と数量には効かせていない。
今後の分かれ目
- 第 2 四半期以降も売上が前年を上回り、会社予想の営業利益 11 億円を上回ったら
- 今期の減益は一過性とみて、楽観・やや楽観の確率を引き上げる。
- 装置の販売台数が 2 期続けて前年を割ったら
- 国内の成熟が早く来たとみて、中立の台数の置き方を下げる。
- 配当性向 80% と総還元性向 150% が今期も実行されたら
- 余った現金の戻り方を満額で見る前提が裏づけられたとみる。
- 大型の M&A が発表されたら
- 買収の価格と事業を確かめ、余った現金の戻り方を 0.75 以下に見直す。
- 非純正の消耗品の普及が開示で確認されたら
- 消耗品の数量と価格を下げ、堀の評価を弱める。
見ておくもの
- 採血管準備装置の売上と受注の状況
- 消耗品等の売上と導入施設数
- 営業利益率(中計は 29 年 3 月期に約 13%)
- 総還元性向と自己株式の取得
- 海外の売上比率(現在 13%)
倍率と資本コストの決め方
倍率は、強い堀(国内シェア約 9 割・消耗品の囲い込み)を前提に、事業の ROE から式の正当化 PER(中立 19.2 倍)を出し、国内の成熟と診療報酬の制約を見て上限の約 75% の 14.5 倍とした。悲観側は ROE が k に届かない筋書きで式から置き、床は純現金と売れる資産で測った。今の株価や同業の PER は倍率の根拠にしていない。余った現金は事業の純利益に加えて別に足し、二重には数えていない。新リース会計基準の影響は小さく、今の形にそろえて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.5→23.11 倍・やや楽観 PER 14.5→21.94 倍・中立 PER 14.5→20.24 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.0% = 7.5%。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.00%。