結論
大井電気は、電力会社のスマートメーターに入れる通信の装置や、光回線の伝送の装置を作り、通信網の工事と保守も請け負う会社だ。筆者の結論は割安である。スマートメーターの山を割り引いて10年をならしても、今の時価総額は利益の数年分にとどまるからだ。
利益は3期で大きく戻った。2023年3月期の赤字から、2026年3月期は営業利益18億円、純利益14億円になった。伸びを支えたのは第2世代のスマートメーターで、東京電力パワーグリッドが最大の客だ。
もちろん、波はある。この会社は過去12年で4度、営業赤字を出した。電力会社と通信会社の設備投資の山と谷が、そのまま業績に出る。スマートメーターの切り替えの山も、いずれ平らになる。
それでも、メーターは計量法で10年ごとに取り替える決まりで、需要は消えない。光の伝送と工事保守は、電力と通信の網がある限り続く。筆者は、山を外して中ほどの利益を置いても、値段との差は大きいと見る。
資本の使い方も変わり始めた。2026年8月、筆頭株主だった三菱電機の株を自社株買いで引き取った。配当はまだ薄いが、ROE10%とPBR1倍を目標に掲げた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、大井電気は「地味だが、網の裏で欠かせない仕事をしている会社が、波の谷の値段で売られている」姿に見える。
電力の保安通信とスマートメーターの通信は、止められない網の部品だ。客は少ないが、客の側も簡単に乗り換えられない。工事保守の技術者も、これからの10年でいっそう貴重になる。
弱みは、利益が客の投資の波に振り回されることだ。山の利益を毎年続くものと見てはいけない。筆者は、スマートメーターの切り替えの山を外し、利益率を過去の山より低く置いた。それでも、今の時価総額は10年後の利益の数年分にしか当たらない。
経営の資本の使い方は、まだ合格点ではない。配当は薄く、ためた利益が現金のまま積もる恐れがある。だが、三菱電機の株を引き取り、ROEとPBRの目標を掲げた。少なくとも向きは正しい。
安全域は大きいと見る。ただし、波の谷が来た年に株価はさらに下がりうる。持ち続ける覚悟が要る会社だ。
何で稼ぐ会社か
大井電気は1950年創業で、本社は横浜にある。売上は327億円、従業員は連結で940人余りだ。事業は2つに分かれる。
1つめは情報通信機器の製造販売で、売上の6割を占める。柱は2つある。1つはスマートメーター向けの通信の装置だ。電気の使用量を30分ごとに電力会社へ送る部品で、第2世代のメーターの量産が始まり、売上を押し上げた。もう1つは光伝送と監視制御の装置だ。電力会社が送電網を守るための保安通信や、鉄道・官公庁の通信網に納める。研究開発費は年12億円で、すべてこの部門に使う。
2つめはネットワークの工事保守で、売上の4割だ。通信会社の基地局や光回線、電力会社の通信設備を据え付け、保守する。社員の半分の約480人がここで働く。KDDIが大きな客だ。
客は少数の大口に寄る。東京電力パワーグリッドが売上の4分の1強、KDDIが6分の1を占める。電力と通信の網に深く入り込んだ専門の会社で、一般の消費者にはほぼ知られていない。
売上は下期に偏る。客の設備投資の予算が年度末に集まるからで、上期は赤字になりやすい。2027年3月期の第1四半期も営業赤字だった。
優良さと弱いところ
大井電気の強みは、電力の保安通信という狭く堅い市場で、長年の実績を持つことだ。送電網を守る通信は、止まれば停電につながる。電力会社は実績の無い会社の装置を簡単には使わない。スマートメーターの通信の装置も、電力会社の仕様に合わせた認定と量産の体制が要り、入札に加われる会社は限られる。
工事保守にも粘りがある。通信と電力の設備を扱える技術者は全国で足りない。人手不足の時代には、人を抱えること自体が値段の交渉の力になる。
だが、堀、つまり他社がまねできない強みは細い。客は大口の数社で、値段は入札で決まる。客が設備投資を絞れば、売上はすぐ落ちる。過去12年で営業赤字が4度あり、2019年3月期は減損で自己資本の3分の1を失った。
資本の効率は改善した。ROEは10年の中央値で2%弱だったが、直近2期は15%前後だ。ただ、これは投資の山の利益で、ならせばもう少し低い。経営は中期計画でROE10%以上を掲げ、筆者はその数字を山と谷をならした目標として妥当と見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
大井電気の需要を決めるのは、電力会社と通信会社の設備投資だ。
電力では、第2世代のスマートメーターへの切り替えが2025年ごろから始まった。全国のメーターは約8,000万台で、計量法により10年ごとに取り替える。第1世代の導入が2014年から2024年に進んだので、その取り替えの波が今来ている。新しいメーターは、使用量を細かく測り、ほかの機器とも通信する。通信の部品の単価は上がるが、電子機器なので、量が増えれば値段は下がる。
送電網への投資も増える。再生可能エネルギーをつなぐため、電力会社は地域をまたぐ送電線を太くする。保安通信の光伝送の装置は、その網に沿って要る。
通信では、5Gの投資の山はすでに過ぎた。KDDIなどの基地局の工事は、新設から保守と更新に移った。数量は横ばいでも、技術者の不足で工事の単価は物価より速く上がる。
競合は、スマートメーターでは東芝や富士電機などのメーター本体の会社と、通信の部品を作る大手だ。光伝送では、NECや富士通の大型の装置と、専門の中堅が棲み分ける。大井電気は、電力会社の細かな仕様に合わせる小回りで勝負する。
資本政策と M&A
還元はこれまで薄かった。2026年3月期の配当は総額0.9億円で、配当性向は7%だった。2023年3月期までの赤字で配当を止めていた時期があり、ようやく戻したところだ。2027年3月期は少し増やす予定だ。
大きな動きは2026年8月にあった。筆頭株主の三菱電機が持ち株の大半を手放し、会社がそれを自社株買いで引き取った。発行済の13%、8.7億円分だ。三菱電機の持ち分は18.5%から5.5%に下がった。持ち合いがほどけ、株主構成が変わった。
中期計画では、ROE10%以上と、計画の期間内にPBR1倍を目指すとした。純負債は小さく、借金に頼る経営ではない。2027年3月期には投資有価証券の売却益も入る。
一方、子会社に少数株主がいて、その持ち分は約20億円ある。利益の一部は親会社の株主に届かない。TOBや再編の候補になる規模と株主構成で、親会社を失った今、その芽は少し大きくなった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
スマートメーターの仕事は、一度きりの山ではない。全国の約8,000万台のメーターは、計量法で10年ごとに取り替える。第2世代への切り替えが終わっても、その次の取り替えがすぐ来る。大井電気は量産の体制を作り、最大の電力会社の東京電力パワーグリッドに納めている。この地位は、新しく入る会社が簡単には取れない。
送電網への投資も増える。再生可能エネルギーをつなぐ送電線の増強は、国の計画で10年以上続く。保安通信の光伝送の装置は、その網に沿って要る。電力会社は実績のある会社を選ぶので、大井電気は値段で叩かれにくい。
工事保守は人手不足の追い風を受ける。通信と電力の設備を扱える技術者は減り続け、工事の単価は物価より速く上がる。480人の技術者を抱えること自体が資産だ。
資本の使い方も変わった。三菱電機の株を引き取り、ROE10%とPBR1倍を目標にした。中期計画の2028年度の営業利益21億円は、2026年3月期の18億円から無理のない伸びだ。それでも今の時価総額は57億円で、純利益の4年分ほどしかない。
慎重な見方
今の利益は、スマートメーターの切り替えの山の上にある。この会社は過去12年で4度、営業赤字を出した。2019年3月期は減損で純損失が28億円に達し、2022年3月期と2023年3月期も赤字だった。客の投資の波がそのまま業績を揺らす。山の利益に高い値を付けてはいけない。
客の偏りも大きい。東京電力パワーグリッドとKDDIで売上の4割を超える。どちらかが発注を絞るか、入札で別の会社を選べば、売上はすぐ2割減る。スマートメーターの通信の装置は、東芝などの大手も作れる。量が増えれば、単価は下がる。
足元も盤石ではない。2027年3月期は売上を23%増やす計画だが、営業利益は減る見込みだ。第1四半期は営業赤字で、中間の経常の予想も赤字へ下げた。部材の値上がりと為替が利益を削る。
還元も薄い。配当性向は7%で、ためた利益は現金のまま残る。子会社には少数株主がいて、利益の一部は外に流れる。安い値段には、それなりの理由がある。
どちらに重みを置いたか
強気の見方がやや強い。慎重な側の言う波と客の偏りは本物で、だからこそ中立はスマートメーターの山を外し、利益率を過去の山より低く置いた。それでも今の値段は中ほどの利益の数年分にとどまる。確率は中立を厚くし、残りを少しだけ楽観の側に寄せた。過去の赤字の多さは、やや悲観と悲観の確率に入れた。三菱電機の株の引き取りは、資本の使い方の変化の始まりとして評価した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 14,876 円173 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,239 円26 億円)。 今の値に割り戻すと 7,739 円90 億円、今との差 +54.9%、 期待の年率 +13.1%(資本コスト 9.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 26,142 円304 億円 | 3,867 円45 億円 | +500.8% | +19.6% | 3,001 円35 億円 |
| やや楽観 | 22% | 20,750 円241 億円 | 3,007 円35 億円 | +375.6% | +16.9% | 5,226 円61 億円 |
| 中立 | 36% | 17,376 円202 億円 | 2,320 円27 億円 | +294.3% | +14.7% | 7,091 円83 億円 |
| やや悲観 | 21% | 6,401 円74 億円 | 1,289 円15 億円 | +54.0% | +4.4% | 1,615 円19 億円 |
| 悲観 | 11% | 885 円10 億円 | 773 円9 億円 | −66.8% | −10.4% | 182 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 14,876 円173 億円 | 2,239 円26 億円 | +242.6% | +13.1% | 17,115 円199 億円 |
今の株価時価総額 4,995 円58 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 10% メーターと送電網の二つの波に乗る 利益 21 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 26,142 円304 億円
スマートメーターの通信の装置で、東京電力パワーグリッドに加えてほかの電力会社の入札も取る筋書きだ。第2世代の切り替えが終わる前に次の世代の仕様にも食い込み、出荷は今の2割増しで続く。
送電網の増強も追い風になる。再生可能エネルギーをつなぐ送電線の工事に沿って、保安通信の光伝送の装置が売れる。工事保守は技術者の不足で単価が物価を上回って上がる。
営業利益率は6%台に乗り、純利益は20億円を超える。会社は中期計画の目標を超え、配当を増やし、自社株買いを続ける。親会社のいない独立した専門の会社として、網の裏方の地位を固める。
- スマートメーター向け通信機器:数量 2,300(通信装置の出荷台数(千台・推定))× 価格 580(千台あたりの売上(万円))→ 売上 133 億円・営業利益 11 億円。2,300 千台×580 万円(1.16 倍)、8%
- 光伝送・監視制御の装置:数量 1,650(納入の案件の数(推定))× 価格 1,050(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 173 億円・営業利益 12 億円。1,650 件×1,050 万円(1.44 倍)、7%
- ネットワーク工事保守:数量 480(工事保守の従業員数(人))× 価格 3,550(1 人あたりの年間の売上(万円))→ 売上 170 億円・営業利益 8 億円。480 人×3,550 万円(1.40 倍)、4.5%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.74 倍、時価総額 272 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:スマートメーターのシェアを広げ、送電網の投資も取る筋。客の偏りが残るので10%とした。
やや楽観 22% 中期計画どおりに進む 利益 17 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 20,750 円241 億円
中期計画が実り、その水準が10年続く筋書きだ。スマートメーターの出荷は少し増え、単価は量の効果で物価ほどは上がらない。光伝送は送電網の更新で伸び、工事保守は人を少し減らしても単価で売上を保つ。
営業利益は20億円台前半で、利益率は5%台だ。過去の山を超えないが、赤字の年は減る。会社は配当を少しずつ増やし、時々自社株買いをする。
資本の効率はROEで8%前後にとどまる。ためた利益が現金で積もるので、還元を厚くしなければ数字は伸びない。それでも、利益は今の時価総額の何倍もの値打ちを生む。
網の裏方として、地味な安定を手に入れる姿だ。
- スマートメーター向け通信機器:数量 2,050(通信装置の出荷台数(千台・推定))× 価格 560(千台あたりの売上(万円))→ 売上 115 億円・営業利益 8 億円。2,050 千台×560 万円(1.12 倍)、7%
- 光伝送・監視制御の装置:数量 1,550(納入の案件の数(推定))× 価格 1,000(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 155 億円・営業利益 9 億円。1,550 件×1,000 万円(1.38 倍)、6%
- ネットワーク工事保守:数量 465(工事保守の従業員数(人))× 価格 3,450(1 人あたりの年間の売上(万円))→ 売上 160 億円・営業利益 6 億円。465 人×3,450 万円(1.36 倍)、4%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.21 倍、時価総額 203 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2028年度の中期計画(営業利益21億円)を達成し、その水準を保つ筋。直近の超過達成から22%とした。
中立 36% メーターの山がならされる 利益 13 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 17,376 円202 億円
第2世代のスマートメーターの切り替えの山が過ぎ、出荷が今より1割ほど減る筋書きだ。計量法の取り替えで需要は続くが、競合の大手も入札に加わり、単価は物価より遅く上がる。
光伝送と監視制御は、送電網の更新に沿って物価並みに伸びる。工事保守は人を少し減らし、単価の上昇で売上を保つ。全社の営業利益率は5%弱で、利益は今と同じくらいだ。
配当は少しずつ増え、自社株買いも時々行う。ためた利益は現金で積もり、ROEは資本コストを下回るが、利益そのものは今の時価総額を大きく上回る値打ちを持つ。
この会社のいちばんありそうな10年は、目立たないが、つぶれもしない姿だ。
- スマートメーター向け通信機器:数量 1,800(通信装置の出荷台数(千台・推定))× 価格 550(千台あたりの売上(万円))→ 売上 99 億円・営業利益 6 億円。1,800 千台×550 万円(1.10 倍)、6%
- 光伝送・監視制御の装置:数量 1,450(納入の案件の数(推定))× 価格 974(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 141 億円・営業利益 8 億円。1,450 件×974 万円(1.34 倍)、5.5%
- ネットワーク工事保守:数量 450(工事保守の従業員数(人))× 価格 3,408(1 人あたりの年間の売上(万円))→ 売上 153 億円・営業利益 5 億円。450 人×3,408 万円(1.34 倍)、3.5%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.82 倍、時価総額 158 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:スマートメーターの切り替えの山が過ぎ、取り替えの平らな需要に戻る筋。会社の来期の減益見込みとも合い36%とした。
やや悲観 21% メーターの入札で負ける 利益 6 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 6,401 円74 億円
スマートメーターの次の入札で、大手の会社に量の半分を奪われる筋書きだ。量産の効果が消え、単価は据え置きで、利益率は3%に落ちる。光伝送も電力会社の投資の先送りで伸びない。
工事保守は基地局の工事が減り、人を減らしても利益は薄い。全社の営業利益は8億円台に落ち、利益率は3%を切る。
会社は配当を保つが、自社株買いは止まる。ROEは4%前後に落ち、過去の谷の姿に近づく。
網の裏方の地位は残るが、値段の交渉で負け続ける。ためた利益は現金のまま眠り、株主の取り分は薄い。量の山の後に、値段の山も崩れる筋だ。
- スマートメーター向け通信機器:数量 1,100(通信装置の出荷台数(千台・推定))× 価格 500(千台あたりの売上(万円))→ 売上 55 億円・営業利益 2 億円。1,100 千台×500 万円(1.00 倍)、3%
- 光伝送・監視制御の装置:数量 1,300(納入の案件の数(推定))× 価格 900(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 117 億円・営業利益 4 億円。1,300 件×900 万円(1.24 倍)、3%
- ネットワーク工事保守:数量 420(工事保守の従業員数(人))× 価格 3,200(1 人あたりの年間の売上(万円))→ 売上 134 億円・営業利益 3 億円。420 人×3,200 万円(1.26 倍)、2.5%
倍率:ROE 3.6%は資本コストに遠く届かない。PERは7倍で、PBRは0.25倍と中立の0.6倍より低い。
確率:スマートメーターの入札で大手にシェアを奪われる筋。過去の赤字の多さから21%とした。
悲観 11% 大口の客を失い、谷が続く 利益 2 億円 · PER 6.0 倍 · 株価時価総額 885 円10 億円
東京電力パワーグリッドがスマートメーターの通信の装置を別の会社に切り替え、KDDIも工事の発注を絞る筋書きだ。大井電気の売上は3割減り、工場と人が余る。
減損と人の削減の費用が重なり、数年は赤字が続く。光伝送と工事保守で黒字に戻るが、利益率は1%前後にとどまる。
会社は配当を減らし、資本の効率の目標は取り下げる。自己資本は増えず、値打ちは稼ぐ力の細さで決まる。
資本の使い方の変化も止まり、少数株主の取り分もそのまま残る。過去の谷の姿が10年後にも戻ってくる。客の偏りが、そのまま負け方になる。過去に一度起きたことは、もう一度起こりうる。
- スマートメーター向け通信機器:数量 300(通信装置の出荷台数(千台・推定))× 価格 450(千台あたりの売上(万円))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。300 千台×450 万円(0.90 倍)、0%
- 光伝送・監視制御の装置:数量 1,100(納入の案件の数(推定))× 価格 850(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 94 億円・営業利益 1 億円。1,100 件×850 万円(1.17 倍)、1%
- ネットワーク工事保守:数量 380(工事保守の従業員数(人))× 価格 3,000(1 人あたりの年間の売上(万円))→ 売上 114 億円・営業利益 2 億円。380 人×3,000 万円(1.18 倍)、1.5%
倍率:ROE 1.9%で稼ぐ力は細い(純利益÷kは約19億円)。PERは6倍とやや悲観より低く、稼ぐ力の値を下回る。
確率:東電PGかKDDIの大口を失い、2019年3月期のような損失の期が来る筋。11%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
スマートメーター向け通信機器
電力会社のスマートメーターに入れる通信の装置(IoT 関連装置)を作って納める。
| 数量通信装置の出荷台数(千台・推定) | 価格千台あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,900 | 500 | 95 | 8 |
| 10 年後 中立 | 1,800 | 550 | 99 | 6 |
取り方:情報通信機器の売上(外部)約 204 億円のうち、増収の主因と開示されたスマートメーター向けを約 95 億円と推定し、1 台あたり約 5 千円(千台で 500 万円)とみて 190 万台。単価は電子機器なので量産で下がり、10 年で物価ほどは上がらない(中立 1.10 倍)。利益はセグメント利益 13.68 億円を、量産の効く本品に厚めに分けた推定。
光伝送・監視制御の装置
電力会社の保安通信や鉄道・官公庁に、光伝送の装置や監視制御の機器を作って納める。
| 数量納入の案件の数(推定) | 価格1 件あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,500 | 727 | 109 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1,450 | 974 | 141 | 8 |
取り方:情報通信機器の外部の売上約 204 億円からスマートメーター向けを引いた約 109 億円を、案件 1,500 件・1 件 727 万円と置いた推定。
ネットワーク工事保守
通信会社や電力会社の基地局・光回線・通信設備を据え付け、保守する。
| 数量工事保守の従業員数(人) | 価格1 人あたりの年間の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 484 | 2,543 | 123 | 4 |
| 10 年後 中立 | 450 | 3,408 | 153 | 5 |
取り方:セグメントの売上 124.56 億円(内部の取引を除いて約 123 億円)を、有報の工事保守の従業員 484 人で割った 1 人約 2,540 万円。利益は全社の営業利益 17.71 億円から機器のセグメント利益を引いた約 4 億円。
リスクと懸念
スマートメーターの山の後
第2世代のメーターへの切り替えは2020年代の後半に山を迎える。計量法の取り替えで需要は残るが、山の後は出荷が落ちる。量が減れば、量産で下げた費用も戻る。
大口の客への偏り
東京電力パワーグリッドとKDDIで売上の4割を超える。入札で別の会社が選ばれるか、設備投資が先送りされれば、売上と利益は一気に落ちる。
投資の波と赤字の歴史
過去12年で営業赤字が4度あった。2019年3月期は減損で純損失28億円を出した。客の投資の波が谷に入れば、同じことが起きうる。
部材と為替
通信の装置は半導体や電子部品を買って組み立てる。部材の値上がりや円安を売値に移すのは入札の後になり、利益率が一時的に削られる。2027年3月期の第1四半期はその影響で赤字だった。
工事の技術者の確保
工事保守は人で稼ぐ事業だ。技術者の高齢化と採用難が続けば、受けられる仕事の量が細る。賃金を上げれば利益率が下がる。
還元の薄さと少数株主
配当性向は7%で、ためた利益が現金で積もる恐れがある。子会社の少数株主の持ち分は約20億円で、利益の一部は親会社の株主に届かない。
今後の分かれ目
- スマートメーターの次の入札で東京電力パワーグリッド以外の電力会社も取ったら
- 量の山が平らに続くとして、やや楽観に重みを移す。
- 2027年3月期の営業利益が会社予想の16億円を大きく下回ったら
- 部材高と入札の値下げが構造的とみて、やや悲観の確率を上げる。
- 配当性向を30%以上に上げるか、自社株買いを続けたら
- ためた利益が株主に戻るとして、戻り方を1.0に上げる。
- 東電PGかKDDIからの売上が2割以上減ったら
- 大口の客の喪失の始まりとして、悲観の確率を上げる。
- 同業や大手からの買収の提案が出たら
- 親会社のいない今の株主構成では実現しやすいとして、楽観の確率を上げる。
見ておくもの
- スマートメーター向け通信機器(IoT 関連装置)の売上
- 東京電力パワーグリッドと KDDI 向けの売上の比率
- 情報通信機器のセグメント利益率
- 配当性向と自社株買いの額
- 中期計画(2028 年度 営業利益 21 億円)の進み具合
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPER 4倍を見ずに、各筋書きのROEとk 9.0%から決めた。中立のROEは6.7%でkを下回るので、PERは1÷kの11.1倍を上限とし、投資の波で8.5割の9.4倍。スマートメーターの切り替えの山は中立に置かず、出荷を今より1割減らし、営業利益率は過去12年の山の6.9%より低い4.9%にした。2027年3月期の投資有価証券の売却益は流れの純利益に1年だけ入れ、10年後の利益には入れていない。自社株買いの8.66億円は起点の自己資本と還元の両方から外した。悲観のPBRが0.12倍と低いのは、大口の客を失った後の稼ぐ力(純利益1.7億円)で値を付け、売れる資産の含み益が無いため。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.3→12.74 倍・やや楽観 PER 10→12.21 倍・中立 PER 9.4→11.82 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。