結論
正興電機製作所は、福岡に本社を置く電力・水・工場向けの制御システムと受変電設備のメーカーだ。九州電力向けの売上が 2 割強を占め、水処理の監視制御やデータセンター向けの受変電にも広がっている。筆者の結論は「やや割高」だ。十年後の価値は今の時価総額を 1 割強下回る。割高と断じるほどではないが、安全域は薄い。
足元の勢いは本物だ。2025 年 12 月期は営業利益が 3 割伸び、受注残も厚い。上期の受注は 3 割増で、データセンターや蓄電所の案件が貢献している。ただし、これは特需の面が強い。会社は中計の最終年度の売上目標を 400 億円から 360 億円へ引き下げた。受注があっても売上に変える速度が追いつかない。筆者が気にしているのはこの点だ。
利益率は 8% 台まで上がったが、十年の中立ではこれより少し低く置いた。入札が中心の事業で、人件費の上昇を価格に全部は乗せられない。新設のひびきの研究開発センターの減価償却も重くなる。
一方、悲観の下値は浅い。公共インフラと電力会社の更新需要が土台にあり、自己資本比率は 5 割を超え、実質無借金だ。大崩れはしにくいが、大きく伸びる会社でもない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を見るポイントは三つだ。第一は、事業が十年後も残るかどうか。電力と水の制御は社会のインフラで、残る可能性は高い。堀は顧客との長い関係と現場の技術で、広くはないが切れにくい。
第二は、利益を株主に戻せるかどうか。自己資本は毎年厚くなるが、ROE は 9% 前後で資本コストをわずかに上回る程度だ。内部に貯めるほど資本効率が下がる。筆者は、配当性向を 4 割台へ引き上げ、使い道のない現金を戻す方針に期待したい。
第三は、払う値段に安全域があるかどうかだ。今の値段は、十年後の価値の期待値を 1 割強上回る。割安と呼ぶ余裕はなく、安全域は薄い。特需による足元の高い利益率は、そのまま続くとは限らない。
オーナーとして持ち続けたいかと問われれば、地味で堅い事業という点で好ましい。ただし規模が小さく、顧客も偏っている。大きく買い増すには値段が合わないと筆者は考える。
悲観の筋書きでも、実質無借金で自己資本が厚いので、事業が傷んでも大きく割れにくい。この下値の浅さが、この会社の価値の支えだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は四つある。第一は電力部門だ。九州電力など電力会社の総合制御所システム、配電機器、遠隔監視のスマート保安システムを納める。第二は環境エネルギー部門で、上下水道の水処理設備の監視制御、道路の管理システム、産業向けの脱炭素設備を扱う。第三はサービス部門で、太陽光発電所、データセンター、蓄電所向けの受変電設備を工事まで含めて請け負う。第四は情報部門で、港湾のコンテナ台帳サービスや介護認定の支援システムなどだ。
電力部門と環境エネルギー部門で売上と営業利益の約 7 割を稼ぐ。2026 年の上期を見ると、環境エネルギーは利益が約 2.7 倍になった。公共案件の現場工事が順調で、利益率が改善したからだ。サービス部門は売上が約 2 倍になったが、利益はまだ薄い。工事中心で、大型案件の利幅が小さいためである。
顧客は集中している。主要な販売先は九州電力で、売上の 23% だった(2024 年は 28%)。ほかに関西電力、電源開発、自治体、高速道路会社が続く。連結従業員は 971 人、子会社は 8 社と小さい。人の数が売上の天井を決める事業でもある。
「その他」には、オフィス向け液晶フィルム(複合膜)の販売と電力会社向けの電子制御機器がある。九州電力と共同で、全固体リチウム電池の開発も進めている。まだ収益にはなっていない。
優良さと弱いところ
筆者がこの会社で評価するのは、電力会社の現場に深く入り込んだ技術力だ。総合制御所のシステムは、1970 年代から九州電力に納めてきた歴史がある。顧客と仕様を一緒に作る関係は、他社が簡単に入れない。
水処理の監視制御も同じだ。自治体の浄水場や下水処理場は、一度採用した制御装置を長く使う。更新のたびに同じメーカーが選ばれやすい。ただし、入札で価格が決まる案件が多く、値決めの力は強くない。
資本効率は並だ。ROE は過去 10 年の中央値で 9% 台、直近で 11% まで上がった。自己資本比率は 52%、純有利子負債はマイナスで、財務は堅い。弱点は規模が小さいことだ。営業利益は 26 億円で、日立や三菱電機、明電舎とは桁が違う。大型案件が遅れると、四半期の利益が大きく振れる。
経営の実績では、中計の達成度が気になる。2022 年に掲げた最終年度の売上 400 億円は、360 億円へ引き下げられた。受注は計画どおりでも、売上への変換が遅れている。計画を守る力は、まだ証明されていない。
情報部門の開発案件は、期間が延びて赤字になった。こうした小さな赤字は、全体では吸収できる範囲だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
事業の追い風は三つある。第一に、電力設備の更新だ。九州では太陽光の接続が進み、送配電の制御を高度化する投資が続く。第二に、データセンターと蓄電所の増加だ。熊本の半導体工場に続き、九州・山口でも大型データセンターの計画が出ている。受変電設備はその電力の入口で、需要が重なる。第三に、水道・下水の老朽化だ。自治体は人手が足りず、監視制御の自動化と遠隔化を急いでいる。
競争は厳しい。電力向けの制御と受変電では、三菱電機、日立、東芝インフラシステムズ、明電舎、富士電機といった大手がいる。水処理の監視制御では、メタウォーター、東芝、日立なども競合する。地場の強みは、顧客の近くでの工事と保守の速さだ。
電気機器業界のノートは、電力インフラの需要を 2030 年代後半に平常化する可能性があると見ている。送配電の投資は高水準が続くが、データセンターの電力需要は循環する。この会社は、大手に比べて特需の山が低く谷も浅い。一方で、受変電の工事は価格競争になりやすく、利益率が上がりにくい。
配電機器は足元で弱い。電力会社向けの機器は、更新時期のずれで売上が振れる。2026 年の上期は、電力会社向けの電子制御機器や発電・変電所工事が下期へずれた。通期予想が下期偏重になっているのは、このためだ。
人手不足は業界全体の制約になる。工事を担う技術者と協力会社が不足し、売上の天井を押し下げる。
資本政策と M&A
還元は増配が中心だ。年間の配当は 2024 年から毎年増え、2026 年は 2 年前の 1.5 倍になる見通しだ。純利益に対する性向は 3 割台前半にとどまる。自社株買いの実績は見当たらない。
自己資本比率は 5 割を超え、純現金も増えているが、営業キャッシュフローの多くは大型案件の前受金と仕入債務の増加によるもので、手元の現金のすべてが余剰ではない。純現金は時価総額の 8% にとどまるため、余った現金として別に数えていない。
投資有価証券は少しずつ売っている。2026 年上期に売却益が 2.5 億円出た。大株主には九州電力の退職給付信託(8.8%)、西日本鉄道の信託(6.9%)、クラフティア(約 6%)が並び、安定株主が厚い。九電口の持ち分は 2022 年に 10% 未満へ下がった。
設備投資では、北九州の研究開発センターに約 41 億円を投じる。2026 年 11 月の稼働予定で、減価償却は耐用年数 30 年として年 1.4 億円ほど増える。この分は十年の利益率に入れた。
株主優待は QUO カードで、2026 年末から 3 年以上の保有者に額を増やす。費用は開示されていないが、年 1 億円に届かないと見られ、還元の額には足していない。
M&A は目立たない。安定株主が厚いため、買われる側としても動きは少ない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注の勢いは本物だ。2025 年の受注は 3 割増、2026 年上期もさらに 3 割増で、期首の受注残は 370 億円を超える。売上が 360 億円でも、受注は 430 億円を見込む。つまり、積み上がった受注が数年かけて売上と利益に変わる。
データセンターと蓄電所の受変電は、これから十年続く投資の入口だ。九州は半導体工場の集積が進み、電力の需要が構造的に増えている。水処理も自治体の人手不足で自動化が急がれ、環境エネルギー部門の利益率は改善している。
財務は堅い。自己資本比率は 5 割を超え、純現金だ。配当は 2024 年から 2026 年まで 3 年続けて増える。九州電力との全固体電池の共同開発が実を結べば、新しい収益の柱にもなる。
中計で掲げた営業利益率 9% は、2026 年に 8.3% まで来た。残り 1 ポイント弱は、サービス部門の利益率が 4% から 6% に上がれば届く。ひびきの研究開発センターで技術者を集約すれば、開発の効率も上がる。十年で利益が倍近くになる筋書きは十分にある。
慎重な見方
受注があっても売上が付いてこない。2022 年に立てた売上 400 億円の目標は、360 億円に下げられた。取り込みの遅れを理由に挙げているが、人手不足は構造的で、すぐには解消しない。受注の勢いと売上の乖離が広がれば、受注残は膨らむだけで利益にならない。
足元の利益には一過性が混ざる。2026 年上期の純利益の増加には、投資有価証券の売却益 2.5 億円が含まれる。配電機器の低迷は続き、電力部門の営業利益は前年を下回った。情報部門は赤字で、開発案件の長期化は一度きりとは限らない。
九州電力への依存は売上の 2 割強で、同社の設備投資の方針が変わるとすぐ響く。入札中心の事業では、人件費や資材の上昇を価格に転嫁しきれない。サービス部門の受変電工事は、競合が多く利幅が薄い。
ひびきの研究開発センターの約 41 億円と全固体電池の開発費は、利益を生む保証がない。データセンターの投資が一巡すれば、サービス部門の売上は急に縮みうる。規模が小さい会社に大手が本気で参入すれば、価格競争は避けられない。
どちらに重みを置いたか
受注の厚みと財務の堅さでは強気の言い分が強い。一方、中計の売上目標を引き下げた事実と、特需が剥がれた後の利益率の見通しでは慎重な言い分が勝つ。そこで中立の利益率を足元の山より少し低く置き、確率は中立の約 4 割を中心に、やや楽観とやや悲観をほぼ同じ厚みにした。悲観は実質無借金で下値が浅いため、1 割にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,092 円419 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 776 円105 億円)。 今の値に割り戻すと 2,040 円276 億円、今との差 +8.6%、 期待の年率 +7.5%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,580 円755 億円 | 982 円133 億円 | +249.4% | +13.3% | 656 円89 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,257 円576 億円 | 886 円120 億円 | +173.9% | +10.6% | 1,131 円153 億円 |
| 中立 | 37% | 3,271 円443 億円 | 798 円108 億円 | +116.7% | +8.0% | 1,506 円204 億円 |
| やや悲観 | 21% | 1,619 円219 億円 | 628 円85 億円 | +19.7% | +1.8% | 472 円64 億円 |
| 悲観 | 10% | 467 円63 億円 | 554 円75 億円 | −45.6% | −5.9% | 102 円14 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,092 円419 億円 | 776 円105 億円 | +105.9% | +7.5% | 3,867 円524 億円 |
今の株価時価総額 1,878 円254 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 電力・水・データセンターの三つの需要が重なる十年 利益 46 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 5,580 円755 億円
データセンター、蓄電所、太陽光の接続工事が九州と中国・四国で途切れず続き、受変電の受注が積み上がる。水処理と道路の監視制御は、自治体の人手不足を背景に更新が前倒しになる。九州電力向けの総合制御所システムは、設備更新の山で伸びる。ひびきの研究開発センターを軸にした全固体電池が、九州電力との量産化で小さな新事業として立ち上がる。人の採用が追いつくかが唯一の制約で、採用と協力会社を厚くして受注を売上へ変え切る。営業利益率は 9% 台に乗り、中計が掲げた 9% を遅れて実現する形になる。名目の ROE は 11% 台まで上がり、配当は性向 4 割弱で増え続ける。
- 電力:数量 1,650(電力会社向けの制御・配電設備の国内市場(億円・今の値段))× 価格 9.2%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 151 億円・営業利益 20 億円。電力:市場 1650 億円(今の値段)× 価格 0.0916(シェア 6.5% × 物価 1.40 倍)、利益率 13.0%
- 環境エネルギー:数量 5,600(水処理・道路・産業向けの監視制御の国内市場(億円・今の値段))× 価格 4.4%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 245 億円・営業利益 22 億円。環境エネルギー:市場 5600 億円(今の値段)× 価格 0.0437(シェア 3.1% × 物価 1.40 倍)、利益率 9.0%
- サービス:数量 6,000(再エネ・データセンター・蓄電所向け受変電の国内市場(億円・今の値段))× 価格 2.9%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 173 億円・営業利益 12 億円。サービス:市場 6000 億円(今の値段)× 価格 0.0288(シェア 2.1% × 物価 1.38 倍)、利益率 7.0%
- 情報・その他:数量 1,600(情報サービス・電子機器の国内市場(億円・今の値段))× 価格 4.5%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 72 億円・営業利益 8 億円。情報・その他:市場 1600 億円(今の値段)× 価格 0.0449(シェア 3.3% × 物価 1.38 倍)、利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 46 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍。全体の PER 16.53 倍、時価総額 755 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:データセンター、蓄電所、水処理の三つが同時に十年続く確率は高くない。受注を売上に変える人の確保も壁になるため、1 割に置いた。
やや楽観 22% 受変電と水の更新が続き、中計の利益率に届く 利益 37 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 4,257 円576 億円
データセンターと蓄電所の受変電は 2030 年ごろまで高水準で、その後は更新と保守に落ち着く。環境エネルギーは水処理の更新が堅調で、公共案件の利益率が 8% 台に定着する。九州電力向けは更新投資を受けて伸びるが、配電機器の弱さは残る。サービス部門の利益率は 6% に改善する。ただし九州の外では大手との競争が続き、シェアが大きく変わることはない。営業利益率は 8.5% 前後で、足元の最高水準をわずかに超える。ROE は 10% 前後。売上は 570 億円近く、営業利益は 48 億円ほどになる。配当は性向 4 割弱で増配が続き、自己資本は厚くなるが資本効率は大きくは崩れない。経営は中計の次の計画で、受注を売上に変える速度の改善を課題に掲げ、人の採用と協力会社の確保を進める。
- 電力:数量 1,600(電力会社向けの制御・配電設備の国内市場(億円・今の値段))× 価格 8.7%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 139 億円・営業利益 17 億円。電力:市場 1600 億円(今の値段)× 価格 0.0867(シェア 6.4% × 物価 1.36 倍)、利益率 12.0%
- 環境エネルギー:数量 5,300(水処理・道路・産業向けの監視制御の国内市場(億円・今の値段))× 価格 4.2%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 220 億円・営業利益 19 億円。環境エネルギー:市場 5300 億円(今の値段)× 価格 0.0416(シェア 3.1% × 物価 1.36 倍)、利益率 8.5%
- サービス:数量 5,000(再エネ・データセンター・蓄電所向け受変電の国内市場(億円・今の値段))× 価格 2.9%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 145 億円・営業利益 9 億円。サービス:市場 5000 億円(今の値段)× 価格 0.0289(シェア 2.2% × 物価 1.34 倍)、利益率 6.0%
- 情報・その他:数量 1,550(情報サービス・電子機器の国内市場(億円・今の値段))× 価格 4.2%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 66 億円・営業利益 7 億円。情報・その他:市場 1550 億円(今の値段)× 価格 0.0424(シェア 3.2% × 物価 1.34 倍)、利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍。全体の PER 15.45 倍、時価総額 576 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残が厚く、足元の勢いが数年は続くという見立て。会社の中計値に近い。
中立 37% 受注残を売上に変えながら、利益率は足元の山の少し下で落ち着く 利益 31 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 3,271 円443 億円
九電向けの制御・保安、公共の水処理、受変電の三本柱は、物価並みの値上げに少しの数量増を乗せて伸びる。データセンター特需の分は十年のうちに平常化し、更新と保守が下支えする。営業利益率は 7.8% で、2025 年の 8.3% には戻らない。ひびきの研究開発センターの減価償却が増え、人件費の上昇を入札価格に全部は転嫁できないからだ。自己資本は純利益の積み上げで厚くなり、ROE は 9% 弱にとどまる。配当は性向 4 割弱で増え、会社は小型の優良な地場企業のまま続く。売上は 500 億円台、営業利益は 40 億円。
- 電力:数量 1,560(電力会社向けの制御・配電設備の国内市場(億円・今の値段))× 価格 8.2%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 129 億円・営業利益 15 億円。電力:市場 1560 億円(今の値段)× 価格 0.0824(シェア 6.2% × 物価 1.34 倍)、利益率 11.5%
- 環境エネルギー:数量 5,200(水処理・道路・産業向けの監視制御の国内市場(億円・今の値段))× 価格 3.9%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 201 億円・営業利益 15 億円。環境エネルギー:市場 5200 億円(今の値段)× 価格 0.0386(シェア 2.9% × 物価 1.34 倍)、利益率 7.5%
- サービス:数量 4,600(再エネ・データセンター・蓄電所向け受変電の国内市場(億円・今の値段))× 価格 2.7%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 123 億円・営業利益 6 億円。サービス:市場 4600 億円(今の値段)× 価格 0.0268(シェア 2.0% × 物価 1.34 倍)、利益率 5.0%
- 情報・その他:数量 1,530(情報サービス・電子機器の国内市場(億円・今の値段))× 価格 4.0%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 62 億円・営業利益 6 億円。情報・その他:市場 1530 億円(今の値段)× 価格 0.0403(シェア 3.0% × 物価 1.34 倍)、利益率 9.5%
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.38 倍、時価総額 443 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の売上目標が一度引き下げられた実績と、足元の受注の勢いの両方を踏まえた落としどころ。
やや悲観 21% 特需が終わり、入札競争で利益率が戻る 利益 22 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,619 円219 億円
データセンター・蓄電所の受変電が 2020 年代の終わりに一巡し、サービス部門の売上が縮む。配電機器の低迷が長引き、電力部門の利益率は 10% に下がる。水処理の公共案件は自治体の予算制約と大手の参入で、入札価格が物価に届かない。情報部門の赤字案件と全固体電池の開発費が重なる。営業利益率は 6.5% まで下がり、2022 年ごろの水準に近づく。配当は維持するが増配は止まり、ROE は資本コストを下回る。売上は 430 億円台にとどまり、営業利益は 28 億円ほどで今の水準を割る。自己資本は積み上がるが、使い道のない現金が増え、資本効率は低下する。それでも事業そのものは傷まず、電力会社と自治体の更新需要が下支えする十年になる。
- 電力:数量 1,500(電力会社向けの制御・配電設備の国内市場(億円・今の値段))× 価格 7.8%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 117 億円・営業利益 12 億円。電力:市場 1500 億円(今の値段)× 価格 0.0780(シェア 6.0% × 物価 1.30 倍)、利益率 10.0%
- 環境エネルギー:数量 5,000(水処理・道路・産業向けの監視制御の国内市場(億円・今の値段))× 価格 3.5%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 176 億円・営業利益 11 億円。環境エネルギー:市場 5000 億円(今の値段)× 価格 0.0351(シェア 2.7% × 物価 1.30 倍)、利益率 6.5%
- サービス:数量 3,600(再エネ・データセンター・蓄電所向け受変電の国内市場(億円・今の値段))× 価格 2.4%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 88 億円・営業利益 4 億円。サービス:市場 3600 億円(今の値段)× 価格 0.0243(シェア 1.9% × 物価 1.25 倍)、利益率 4.0%
- 情報・その他:数量 1,500(情報サービス・電子機器の国内市場(億円・今の値段))× 価格 3.6%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 55 億円・営業利益 4 億円。情報・その他:市場 1500 億円(今の値段)× 価格 0.0364(シェア 2.8% × 物価 1.30 倍)、利益率 7.0%
倍率:ROE 6.5% は k 7.5% を下回る。ためた利益は額面未満の価値なので、PER の上限 1÷k=12.5 倍の約 76%(9.5 倍)を置いた。
確率:特需の後に平常に戻る形で、同業の重電中小でよくある展開。受注が積み上がっても利益率が上がらなかった過去の例を重く見た。
悲観 10% 九電向けの取り分が大手へ移り、価格競争が全域に広がる 利益 8 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 467 円63 億円
送配電の制御が標準化され、九州電力向けの案件が大手重電や自社系の大手に集まる。水処理の監視制御は大手のパッケージと地場の安売りに挟まれ、利益率が 3% 台に落ちる。データセンターの受変電は汎用化し、人手の工事会社に近い低採算になる。ひびきの研究開発センターと全固体電池の投資は回収できず、減損が出る。営業利益率は 3% 台で、2000 年代後半の赤字期に近い状態に戻る。優良な地場企業ではなくなり、配当も縮む。売上は 340 億円ほどで今の水準を下回り、営業利益は 11 億円に落ちる。受注残を食いつぶしたあと、新規受注は価格を下げないと取れない状態になる。借金はないので存続には困らないが、少数株主にとって現金の使い道は決められず、稼ぐ力だけが価値になる。
- 電力:数量 1,450(電力会社向けの制御・配電設備の国内市場(億円・今の値段))× 価格 6.6%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 96 億円・営業利益 6 億円。電力:市場 1450 億円(今の値段)× 価格 0.0662(シェア 5.5% × 物価 1.20 倍)、利益率 6.0%
- 環境エネルギー:数量 4,800(水処理・道路・産業向けの監視制御の国内市場(億円・今の値段))× 価格 2.9%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 138 億円・営業利益 5 億円。環境エネルギー:市場 4800 億円(今の値段)× 価格 0.0288(シェア 2.4% × 物価 1.20 倍)、利益率 3.5%
- サービス:数量 3,200(再エネ・データセンター・蓄電所向け受変電の国内市場(億円・今の値段))× 価格 2.0%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 63 億円・営業利益 1 億円。サービス:市場 3200 億円(今の値段)× 価格 0.0198(シェア 1.7% × 物価 1.15 倍)、利益率 2.0%
- 情報・その他:数量 1,450(情報サービス・電子機器の国内市場(億円・今の値段))× 価格 3.1%(1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 46 億円・営業利益 1 億円。情報・その他:市場 1450 億円(今の値段)× 価格 0.0314(シェア 2.6% × 物価 1.20 倍)、利益率 3.0%
倍率:ROE 3.1% で k を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k、PER の上限 12.5 倍)の約 64%(8.0 倍)を置いた。自己資本や市場の倍率は根拠にしない。
確率:九電への依存(売上の 2 割強)と入札中心の事業構造から、構造的に負ける道筋は現実にあるが、受注残の厚みを考えると 1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電力
九州電力などの総合制御所システム、配電機器、遠隔監視のスマート保安システム。
| 数量電力会社向けの制御・配電設備の国内市場(億円・今の値段) | 価格1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,500 | 5.9% | 88 | 12 |
| 10 年後 中立 | 1,560 | 8.2% | 129 | 15 |
取り方:九州電力・関西電力など電力会社向けの制御・配電・保安の国内市場を約 1,500 億円(推定)とし、売上約 88 億円をシェア約 5.9% とみた。部門別の通期は開示を直接確認できず、2026 年上期の構成比(売上 24.4%)と 2025 年の「売上微減・利益 +18%」の記述から推定した。数量は実質の市場規模で、シェアと物価の分は価格の欄に入れた。
環境エネルギー
上下水道・道路などの公共向け監視制御システムと、産業向けの脱炭素・デジタル設備。
| 数量水処理・道路・産業向けの監視制御の国内市場(億円・今の値段) | 価格1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5,000 | 2.5% | 124 | 9 |
| 10 年後 中立 | 5,200 | 3.9% | 201 | 15 |
取り方:国内の水処理・道路・産業向けの電気計装・監視制御の市場を約 5,000 億円(推定)とし、売上約 124 億円をシェア約 2.5% とみた。2026 年上期の構成比(売上 38.7%)と、2025 年の営業利益 +118% の記述から通期を推定した。
サービス
太陽光発電所・データセンター・蓄電所向けの受変電設備と工事。
| 数量再エネ・データセンター・蓄電所向け受変電の国内市場(億円・今の値段) | 価格1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4,000 | 1.5% | 60 | 3 |
| 10 年後 中立 | 4,600 | 2.7% | 123 | 6 |
取り方:国内の再エネ・データセンター・蓄電所向け受変電の市場を約 4,000 億円(推定)とし、売上約 60 億円をシェア約 1.5% とみた。2026 年上期にこの部門の売上は約 2 倍の 41 億円に伸びており、通期はさらに増える見込み。利益は薄い。
情報・その他
港湾のコンテナ台帳、介護認定支援などの情報サービスと、液晶複合膜フィルム、電子制御機器。
| 数量情報サービス・電子機器の国内市場(億円・今の値段) | 価格1 億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 物価の指数(10 年 1.34 倍が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,500 | 2.8% | 42 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1,530 | 4.0% | 62 | 6 |
取り方:港湾コンテナ台帳は国内トップシェアだが小さい。情報サービスと電子機器の合計の市場を約 1,500 億円(推定)とし、売上約 42 億円をシェア約 2.8% とみた。情報部門は赤字、その他は利益率が高い。
リスクと懸念
受注を売上に変える速度
受注残は厚いが、人と協力会社が足りず、売上への変換が遅れている。中計の売上目標を 400 億円から 360 億円へ下げた経緯もある。遅れが長引けば、受注が増えても利益は積み上がらない。
九州電力への依存
九州電力向けは売上の 2 割強を占める(2024 年は 28%)。同社の設備投資の方針や入札の方式が変わると、電力部門と周辺の保安・制御に直接響く。安定株主でもあるため、関係は深いが、価格の力は弱い。
データセンター・蓄電所の特需の一巡
サービス部門の売上は 2026 年上期に約 2 倍になった。受変電の大型案件に偏っており、投資が一服すれば急に縮む。工事中心で利幅は薄く、増えた分が利益に残りにくい点も課題だ。
入札競争と人件費の上昇
公共の水処理や電力会社の案件は入札が多く、物価や人件費の上昇を価格に全部は乗せにくい。大手のパッケージ製品や地場の安売りと競合する。利益率が 8% 台から戻るリスクがある。
新規投資の回収
ひびきの研究開発センターは約 41 億円で、時価総額の 15% にあたる。全固体電池も九州電力との共同開発で、量産化の道筋は確かでない。回収できなければ、償却だけが利益を圧迫する。
情報部門の採算
ヘルスケア向けの開発案件が長期化し、情報部門は 2025 年に利益が半減、2026 年上期は赤字になった。規模は小さいが、開発のやり方が変わらなければ赤字が続く。
今後の分かれ目
- 期首受注残が 400 億円を超え、売上が受注残の 9 割以上の速さで計上され始めたら
- 取り込みの遅れが解消に向かうので、やや楽観の確率を上げてよい。
- 電力部門の配電機器が下期に回復せず、通期で営業利益が減ったら
- 九州電力向けの構造的な弱さを疑い、やや悲観の確率を上げる。
- データセンター・蓄電所の受注が 2027 年にかけて減速したら
- サービス部門の売上と利益の前提を下げ、中立の数量を見直す。
- 配当性向が 40% を超える水準に引き上げられ、自社株買いも始まったら
- 資本効率の改善として評価し、ROE の前提を引き上げる。
- 九州電力が持ち分を追加で売却し、安定株主が減ったら
- 買収・再編の可能性が高まる。ただし価値は事業で決まるため、数字は変えず確率だけ見直す。
- 全固体電池の量産計画が具体的な顧客付きで発表されたら
- 楽観の筋書きの新規事業の分を上乗せして見直す。
見ておくもの
- 期首受注残と受注高の推移(四半期)
- 電力部門の配電機器の売上と営業利益率
- サービス部門の売上と利益率(データセンター・蓄電所の案件)
- ひびきの研究開発センターの稼働と減価償却
- 配当性向と自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
事業ごとに市場×シェアの実質売上(数量)と、物価 1.34 倍を基にした価格の指数で積み上げ、利益率は部門の構造から置いた。数量は国内市場の実質規模(推定)、価格はシェア×物価の指数とした。倍率は資本コスト 7.5%(quality +0.5%)と ROE 8.6% から正当化 PER を計算し、ROE が k を超えるので 1÷k の 12.5 倍を下限に置いた。今の PER や PBR、過去の倍率は使っていない。減価償却は、今ある設備の分は物価で増やさず、ひびきの研究開発センター(約 41 億円・耐用 30 年で年 1.4 億円)の分だけ足した。更新投資は建築費の上昇で増えるが、純現金が厚く借入は要らず、自己資本の流れの中で処理した。悲観は構造的に負けた後の稼ぐ力で置いた。今の株価には寄せていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→16.53 倍・やや楽観 PER 12.9→15.45 倍・中立 PER 12.5→14.38 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5%(値決め +0.25、寿命 +0.25)。事業は傾いていないので上乗せなし。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。