結論
スタンレー電気は、車のヘッドランプや尾灯を作る部品メーカーだ。二輪車用ランプと、LED・センサーなどの電子部品も手がける。筆者は今の値段を「適正」と見る。売上が2割近く増える予定でも、利益の厚みが増えにくいからだ。
売上の86%は車と二輪のランプで、大口の納入先はホンダだ。自動車メーカーは毎年の値下げを求め、部品会社は原価低減でそれを吸収する。この綱引きに勝ち続けても、営業利益率は8〜9%どまりだった。2025年度の目標(利益率10.5%・ROE 8%)にも届いていない。
2026年4月に岩崎電気を約700億円で買った。電子と公共照明に足場を広げる一手だが、純現金は消え、借入が出る。買収後の利益率はまだ読めない。
筆者が見る中立の姿は、10年後の営業利益率9%台、ROE 9%弱である。資本コスト8.25%(基本7.5%にquality+1.0%)とほぼ並ぶ会社に、高い倍率は付けられない。5つの筋書きに確率を掛けた本質価値は、今の時価総額を1割弱下回る。車載灯火の寡占と、電子事業の伸びしろは評価するが、安全域はない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を「続くが、稼ぎが薄い事業」と見る。車のランプは10年先も必要で、技術の積み上げも効く。ただ、納入先に値決めを握られ、利益は売上の1割に届かない。持ち続けたいオーナー利益の厚みが足りない。
資本の使い方は評価が割れる。自社株買いで株数を減らし、ROEを上げようとしたのは筋が通る。一方で、約700億円の買収は、稼ぐ力の低い事業を高く買った可能性がある。経営が資本の効率を重視しているのは確かだが、結果はまだ出ていない。
堀の幅は、車載灯火の寡占と、ホンダとの関係に支えられる。しかし、ホンダの苦戦は、そのまま弱点になる。電子事業は伸びるが、規模はまだ小さい。
安全域は、価値より安く買えるかで決まる。今の時価総額は、中立の利益に妥当な倍率をかけた額より高い。確率を掛けた本質価値は1割弱低く、悲観の筋書きでは半値近くまで下がる。筆者は、この値段で買い増す理由を見つけにくい。わからない部分(岩崎電気の採算、ホンダの電動化)が大きい点も、確信度を下げる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は自動車機器事業で、売上の86%を占める。四輪のヘッドランプ、リアコンビネーションランプ(尾灯)、車内の照明に、二輪のランプが入る。四輪はLED化と、細く薄い光源の採用で1台あたりの搭載額が上がってきた。二輪はホンダのバイクを軸に、インド、東南アジア、ブラジルで伸ばす計画だ。
電子応用製品とコンポーネンツ事業は、合わせて売上の1割強だ。LEDの光源、液晶のバックライト、運転手の見張り用の赤外線LED、除菌用の紫外線LED、自動運転用センサーの光源などを作る。利益率は車のランプより高く、全社の利益の約2割を稼ぐ。会社は2029年3月期に、電子事業の売上を2,000億円にする目標を掲げる。
顧客は偏っている。ホンダ向けが売上の約5割とされる(2022年の報道)。トヨタ系の小糸製作所と対照的に、スタンレーはホンダ系の部品会社だ。2022年にホンダと車のランプを共同開発する提携を結び、互いに出資し合った。会社は非日系の顧客を広げようとしている。2029年3月期には、売上の約8%を非日系で占める計画だ(2024年5月の決算説明資料)。
地域別では、アジア・大洋州と米州が各3割前後、日本が4分の1、中国が1割強だ。為替が利益に与える影響は小さい。2024年3月期の資料では、対ドルの為替の動きに対して、営業利益の変動は2億円台と小さい。現地で作って現地で売る形だからだ。
優良さと弱いところ
車載灯火は、実質的に数社の寡占だ。世界の簡易試算では、小糸製作所、ヴァレオ、フォルヴィアに次ぐ4位で、シェアは8%台とされる。日本ではトヨタ系の小糸製作所とホンダ系のスタンレーが二強だ。一度採用されると車種の生産が終わるまで納入が続き、新規参入は難しい。
ただ、堀は広くない。部品の値決めは納入先の自動車メーカーが握る。毎年の値下げに応じ、LED化やデジタル化で上がる単価も、競合が追いつけば下がる。営業利益率は過去10年で6〜12%の範囲を動き、直近は8%台だ。10%を超えたのは、2018年3月期の12%が最後である。
資本の効率は低い。ROEは過去10年で5〜11%、直近は7%だ。自己資本比率は56%と厚いが、会社は70%を目標に掲げる。資産を持ちすぎる体質を抱えている。ここ2年で株数を約4分の1減らしたのは、その手当てだ。
もう1つの弱みは、ホンダへの偏りだ。ホンダの四輪は電動化と中国で苦戦が続く。ホンダの出方が、スタンレーの数量と値決めを左右する。非日系を広げる策は進めているが、実績が出るのはこれからだ。強みは、ランプの設計と量産の技術、二輪での厚い取引、電子の光源技術にある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自動車用灯火の世界市場は、LEDヘッドランプを中心に年7%前後で広がると見られる(市場規模は2025年に110億〜150億ドル)。1台あたりの搭載額が上がる流れだ。LEDは電球より高く、さらに路面に光を映す機能や、対向車を避けて照らす機能(ADB)が加わる。車の顔つきを光で表現する流行も、尾灯の大型化を後押しする。
一方で、車の生産台数は増えない。世界で年9,000万台強のまま、中国の電気自動車(EV)が数を伸ばし、日系の販売を食う。ホンダも中国で苦戦する。中国の地場メーカーは、現地の灯火会社から買うことが多い。スタンレーは中国地場メーカーの受注を2023年度に得たが、価格競争は厳しい。
二輪は成長市場だ。インドと東南アジアで台数が増え、電動二輪も広がる。スタンレーはホンダの二輪を軸に、インドのLUMAXとの協業やブラジルの子会社で伸ばす。会社は2028年度に二輪の売上を1,500億円にする目標を示した。
電子の市場は幅広い。車載向けの赤外線LED、LiDARの光源、紫外線LED、液晶のバックライトなど、用途ごとに競合が違う。成長は速いが、価格の下がり方も速い。業界全体では、数量が伸びても単価が下がり、利益率は上がりにくい。
資本政策と M&A
還元は、配当性向30%以上を目標にし、そのうえで自社株買いを組み合わせる。ここ2年の株数の減り方(約4分の1)は、日本の部品会社では大きい方だ。PBR1倍の回復を掲げ、自己資本を厚く持ちすぎない方針を示している。
2026年4月に、岩崎電気を約700億円で買った。売り手は投資ファンドのカーライル系で、岩崎電気の売上は約600億円だ。公共の街路灯や工場の照明、紫外線の応用技術を持つ。電子事業を2029年3月期に2,000億円へ育てる計画の柱になる。
買収の価格は、売上の1.2倍ほどだ。利益の水準は開示が見つからず、筆者は薄いと見る。ファンドからの買収なので、売り手の狙いは高く売ることだった。買収で資本効率が下がるリスクを、筆者は重く見る。
過去には、ブラジルの二輪・商用車ランプ会社(Angstrom)の75%を取得した。インドのLUMAXとも組む。会社は、買って伸ばす型の経営を強めている。
TOBや買収される可能性は、大きくない。ホンダと相互に出資し、会社も独立を保つ姿勢だ。kabufuの推計では、10年以内のTOB・買収の確率は15%である。
点検済み(費用点検):今の -174 億円には連結前の岩崎電気(営業利益 30 億円)の年換算が入る。除くと約 -144 億円で、物価 1.34 倍で約 -193 億円、中立 -190 億円と同じ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
スタンレーは、車の灯火で世界4位前後、日本で2位の地位を持つ。ランプは車種が終わるまで納入が続き、技術の積み上げが物を言う。LED化とデジタル化で、1台あたりの搭載額は10年続けて上がる。
二輪が伸びる。インドと東南アジアは台数が増え、電動化でも灯火の数が増える。会社は2028年度に二輪で1,500億円を目指し、LUMAXとの協業とブラジルの子会社が土台になる。
電子事業は、赤外線LED、LiDARの光源、紫外線LEDなど、成長の速い用途を持つ。2029年3月期に電子で2,000億円とする目標には、岩崎電気の約600億円が入る。会社の計画は、売上6,220億円・営業利益550億円で、今期は営業利益が約3割増える。
自社株買いで株数を減らし、ROEを上げる姿勢も明確だ。ホンダとの共同開発で、四輪の新しいランプの採用が増える。ホンダが電動化に追いつけば、数量も戻る。非日系の比率が8%を超えて広がれば、依存の弱点も薄れ、利益率は10%を超える。
慎重な見方
営業利益率が10%を超えたのは、2018年3月期の12%が最後だ。直近は8%台で、中期計画の目標(10.5%)に届いたことがない。値下げ要請と原材料・人件費の上昇に、毎年追いつくのが精一杯だ。
売上の約5割を握るホンダの先行きは不透明だ。電動化の遅れと中国での苦戦が続いている。ホンダの数量が減れば、スタンレーの稼働率と利益に直結する。非日系の受注は増えているが、まだ売上の1割に届かない。
岩崎電気は、売上約600億円を約700億円で買った。公共・工場の照明は成熟市場で、LED化の更新需要も、安い海外製に押されやすい。買収で、純現金が消え、借入が増える。シナジーの実現が遅れれば、減損のリスクもある。
電子事業は伸びるが、LEDやバックライトは、中国と台湾の競合が値段を下げる。電子を2,000億円に伸ばす計画は、価格が下がるなかで数量を大きく増やす必要がある。ROEが資本コスト8.25%と並ぶ水準にとどまる限り、会社を大きくしても価値は増えない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、事業の長さと電子・二輪の伸びを正しく突く。ただ、数字が追いついていない。利益率8%台、ROE 7%台という実績と、中計目標の未達が、慎重な見方を重くしている。
確率は、中立に3割台半ばを置き、やや悲観に厚みを持たせた。ホンダへの偏りと、岩崎電気の買収の採算が読めない点が理由だ。悲観は、10年で構造的にシェアと値決めの力を失う筋書きで、1割にした。確率を掛けた本質価値は、今の時価総額を1割弱下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,146 円6,337 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,055 円2,530 億円)。 今の値に割り戻すと 3,711 円4,570 億円、今との差 +2.2%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 10,227 円1.26 兆円 | 2,949 円3,632 億円 | +262.8% | +13.8% | 1,054 円1,298 億円 |
| やや楽観 | 22% | 7,746 円9,539 億円 | 2,544 円3,133 億円 | +183.3% | +11.0% | 2,264 円2,788 億円 |
| 中立 | 35% | 5,620 円6,921 億円 | 2,180 円2,684 億円 | +114.7% | +7.9% | 2,730 円3,362 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,961 円2,415 億円 | 1,661 円2,045 億円 | −0.3% | 0.0% | 905 円1,115 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,660 円2,044 億円 | 812 円1,000 億円 | −31.9% | −3.8% | 247 円304 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,146 円6,337 億円 | 2,055 円2,530 億円 | +98.2% | +7.1% | 7,200 円8,867 億円 |
今の株価時価総額 3,632 円4,473 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% ホンダ依存を脱し、電子と二輪が柱になる 利益 871 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 10,227 円1.26 兆円
10年かけて、ホンダ以外の売上が2割近くに増える。米欧と中国の地場メーカーで、細く薄いヘッドランプとデジタル尾灯の採用が広がる。二輪はインドと東南アジアで台数が5割増え、売上が2,000億円に近づく。電子は、車内監視用の赤外線LED、LiDARの光源、紫外線LEDが柱になり、利益率も20%に上がる。岩崎電気は公共照明の更新需要と紫外線応用で、利益率10%を確保する。営業利益率は12%台に乗り、ROEは12%台になる。資本コストを超えるので、倍率にも評価が付く。この間に配当と自社株買いも厚くなり、株主への還元は利益の6割を保つ。買収した岩崎電気は電子事業の一部として、ホンダ以外の売上を支える。
- 四輪ランプ:数量 2,100(スタンレーのランプを搭載する四輪車の年間台数(万台、推定))× 価格 29(1台あたりの平均搭載額(千円、名目))→ 売上 6,056 億円・営業利益 757 億円。楽観
- 二輪ランプ:数量 4,900(スタンレーのランプを搭載する二輪車の年間台数(万台、推定))× 価格 4.38(1台あたりの平均搭載額(千円、名目))→ 売上 2,144 億円・営業利益 322 億円。楽観
- 電子(LED・電子応用):数量 120(LED・光源などの年間出荷個数(億個、推定))× 価格 14(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 1,684 億円・営業利益 337 億円。楽観
- 産業・公共照明(岩崎電気):数量 150(照明器具・ランプの年間出荷数(万台、推定))× 価格 70(1台あたりの平均単価(千円、名目))→ 売上 1,050 億円・営業利益 105 億円。楽観
倍率:事業の純利益 871 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍。全体の PER 14.46 倍、時価総額 12,595 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:非日系の売上が2割に近づき、電子が2,000億円を超える必要がある。実績の乏しい上振れなので、1割を切る確率にした。
やや楽観 22% 二輪と電子が伸び、利益率が10%台に乗る 利益 704 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 7,746 円9,539 億円
ホンダとの共同開発が実り、四輪のランプで採用が増える。二輪は台数が5割増え、電子は赤外線LEDとLiDARの光源で伸びる。非日系の比率は1割台半ばに上がる。LED・バックライトの単価は下がり続けるが、新しい用途の数量が補う。岩崎電気の統合も終わり、利益率が8%台に改善する。営業利益率は10%台半ばで、ROEは10%台に乗る。資本コスト9%を少し上回る姿だが、堀が広がったとは言えず、倍率は上限の8割にとどめる。還元は利益の6割で続き、自己資本は緩やかに増える。ホンダ向けの比率は5割を割り込み、依存の弱点が少しずつ薄れる。
- 四輪ランプ:数量 2,000(スタンレーのランプを搭載する四輪車の年間台数(万台、推定))× 価格 28(1台あたりの平均搭載額(千円、名目))→ 売上 5,603 億円・営業利益 633 億円。やや楽観
- 二輪ランプ:数量 4,600(スタンレーのランプを搭載する二輪車の年間台数(万台、推定))× 価格 4.31(1台あたりの平均搭載額(千円、名目))→ 売上 1,983 億円・営業利益 274 億円。やや楽観
- 電子(LED・電子応用):数量 108(LED・光源などの年間出荷個数(億個、推定))× 価格 14(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 1,476 億円・営業利益 273 億円。やや楽観
- 産業・公共照明(岩崎電気):数量 140(照明器具・ランプの年間出荷数(万台、推定))× 価格 68(1台あたりの平均単価(千円、名目))→ 売上 952 億円・営業利益 81 億円。やや楽観
倍率:事業の純利益 704 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.55 倍、時価総額 9,539 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:二輪と電子の伸びが続き、岩崎電気の統合も進む。業界の長期見通しの上位に近い。
中立 35% 寡占の灯火メーカーとして、薄い利益で安定する 利益 555 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 5,620 円6,921 億円
10年後も、車載灯火の寡占と二輪の厚い取引は続く。四輪の台数は1割ほど増え、搭載額は物価を少し下回る上がり方になる。二輪は台数が4割増える。電子は台数が5割増えるが、単価が下がり、利益率は17%を保つにとどまる。岩崎電気は利益率7%で、買収の費用を回収する程度だ。非日系の比率は1割強に上がる。営業利益率は9%台前半、ROEは9%弱に落ち着く。資本コスト9%にわずかに届かず、普通に強い部品会社として評価される。還元は利益の6割で、自己資本は緩やかに増える。ホンダ向けの比率は5割弱に下がるが、依存の構造は変わらない。電子の単価は競争で物価ほど上がらず、売上の伸びは数量が支える。会社の目標のうち、売上は届き、利益率とROEには届かない姿だ。
- 四輪ランプ:数量 1,900(スタンレーのランプを搭載する四輪車の年間台数(万台、推定))× 価格 27(1台あたりの平均搭載額(千円、名目))→ 売上 5,127 億円・営業利益 513 億円。中立
- 二輪ランプ:数量 4,300(スタンレーのランプを搭載する二輪車の年間台数(万台、推定))× 価格 4.25(1台あたりの平均搭載額(千円、名目))→ 売上 1,827 億円・営業利益 228 億円。中立
- 電子(LED・電子応用):数量 95.0(LED・光源などの年間出荷個数(億個、推定))× 価格 14(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 1,321 億円・営業利益 225 億円。中立
- 産業・公共照明(岩崎電気):数量 130(照明器具・ランプの年間出荷数(万台、推定))× 価格 67(1台あたりの平均単価(千円、名目))→ 売上 871 億円・営業利益 61 億円。中立
倍率:事業の純利益 555 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.47 倍、時価総額 6,921 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:車載灯火の寡占を保ちつつ、利益率が9%台にとどまる中心の筋書き。業界の見通しの中心値を使う。
やや悲観 25% 非日系を広げきれず、利益率が7%前後で低迷 利益 342 億円 · PER 7.1 倍 · 株価時価総額 1,961 円2,415 億円
非日系を広げきれず、ホンダ向けの比率が高いまま残る。ホンダの四輪は台数が伸びず、四輪の台数は横ばいだ。値下げ要請が続き、四輪の搭載額は物価の上昇に届かない。電子はLEDの単価が下がり続け、利益率は14%に落ちる。岩崎電気は統合の効果が小さく、利益率は5%どまりだ。ブラジルや新興国の事業も重荷になる。営業利益率は6%台半ばまで戻り、ROEは5〜6%台に下がる。優良な部品会社の評価は薄れる。還元は利益の6割を保つが、自己資本の増え方は鈍い。非日系の比率が1割に届かないままだと、納入先への値下げの交渉力も弱く、利益率の改善に歯止めがかかる。
- 四輪ランプ:数量 1,700(スタンレーのランプを搭載する四輪車の年間台数(万台、推定))× 価格 26(1台あたりの平均搭載額(千円、名目))→ 売上 4,378 億円・営業利益 350 億円。やや悲観
- 二輪ランプ:数量 3,800(スタンレーのランプを搭載する二輪車の年間台数(万台、推定))× 価格 4.06(1台あたりの平均搭載額(千円、名目))→ 売上 1,542 億円・営業利益 162 億円。やや悲観
- 電子(LED・電子応用):数量 80.0(LED・光源などの年間出荷個数(億個、推定))× 価格 12(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 996 億円・営業利益 139 億円。やや悲観
- 産業・公共照明(岩崎電気):数量 120(照明器具・ランプの年間出荷数(万台、推定))× 価格 63(1台あたりの平均単価(千円、名目))→ 売上 750 億円・営業利益 38 億円。やや悲観
倍率:ROE 5.8%・資本コスト 8.25% から正当化 PER 11.8 倍(ROE が k 以下なので 1÷k)を計算し、その 60% をやや悲観の倍率に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 7.06 倍・時価総額 2,414 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:非日系を広げきれず、電子の単価も下がり続ける。会社が目標を外してきた実績と、資本効率の低さから厚めに置いた。
悲観 10% ホンダの失速で構造的に優位を失う 利益 −11 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,660 円2,044 億円
ホンダが電動化と中国で失速し、四輪の台数が3割近く減る。EV化でランプの形が変わり、中国の灯火会社と車載の電子部品会社に、設計の主導権を奪われる。納入先の値下げ要請は強まり、搭載額は物価の上がり方を大きく下回る。電子はLEDの価格競争で赤字に近づき、岩崎電気の買収ものれんの減損に至る。営業利益はほぼゼロまで落ち、優良企業としての評価が外れる10年になる。配当は積み上げた自己資本から続ける。時価総額は自己資本の0.45倍で測る。10年のうちに、ランプの設計力を持つ人材と顧客の信頼が少しずつ失われ、立て直しは難しくなる。配当は積み上げた現金と自己資本から続ける(資産の売却は要らない)。
- 四輪ランプ:数量 1,300(スタンレーのランプを搭載する四輪車の年間台数(万台、推定))× 価格 24(1台あたりの平均搭載額(千円、名目))→ 売上 3,080 億円・営業利益 62 億円。悲観
- 二輪ランプ:数量 3,000(スタンレーのランプを搭載する二輪車の年間台数(万台、推定))× 価格 3.65(1台あたりの平均搭載額(千円、名目))→ 売上 1,094 億円・営業利益 66 億円。悲観
- 電子(LED・電子応用):数量 55.0(LED・光源などの年間出荷個数(億個、推定))× 価格 10(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 570 億円・営業利益 17 億円。悲観
- 産業・公共照明(岩崎電気):数量 100(照明器具・ランプの年間出荷数(万台、推定))× 価格 55(1台あたりの平均単価(千円、名目))→ 売上 550 億円・営業利益 0 億円。悲観
倍率:床は純現金+売れる資産の税後 2,044 億円。今の自己資本 4,542 億円に対する 0.45 倍として置いた。
確率:ホンダの失速とEV化による置き換わり、中国勢の台頭で、10年でもう優良ではなくなる筋書き。偏重の度合いを踏まえ、1割にした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
四輪ランプ
四輪車のヘッドランプ・尾灯・車内照明。ホンダ向けが中心で、中国・米欧の非日系を広げている。
| 数量スタンレーのランプを搭載する四輪車の年間台数(万台、推定) | 価格1台あたりの平均搭載額(千円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,700 | 21 | 3,502 | 335 |
| 10 年後 中立 | 1,900 | 27 | 5,127 | 513 |
取り方:世界の四輪生産は年9,000万台強。そのうち、スタンレーが灯火を納める車を約1,700万台(世界の約19%、ホンダ・スズキ・スバル・マツダ・三菱・中国地場・米欧など)と推定した(開示なし)。数量は実質の台数で、シェアはここに含まれる。売上3,502億円(自動車機器4,452億円から二輪の推定950億円を除いた値)を割って、1台あたり約2万円とした。営業利益は自動車機器の449億円を、二輪の推定利益で分けた残りとした。価格は名目で、物価が10年で1.34倍になる一方、納入先への毎年の値下げ要請で上がり方は鈍る。LED・デジタル化による搭載額の上昇と差し引きして、中立は3年1.12倍・10年1.31倍とした。
二輪ランプ
二輪車のヘッドランプ・尾灯・ウインカー。ホンダの二輪が軸で、インド・東南アジア・ブラジルを広げる。
| 数量スタンレーのランプを搭載する二輪車の年間台数(万台、推定) | 価格1台あたりの平均搭載額(千円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 3.17 | 950 | 114 |
| 10 年後 中立 | 4,300 | 4.25 | 1,827 | 228 |
取り方:ホンダ・スズキ・ヤマハ・インド勢などに納め、搭載台数を合わせて約3,000万台と推定した(開示なし)。数量は実質の台数。売上は、2024年3月期の723億円と会社の2028年度目標1,500億円への道筋から約950億円と置き、割って1台あたり約3.2千円とした。営業利益率は四輪より高めの12%とした(推定)。価格は名目で、中立は物価並みの3年1.09倍・10年1.34倍とした。
電子(LED・電子応用)
LED光源、バックライト、赤外線・紫外線LED、LiDAR用光源などの電子応用製品とコンポーネンツ事業。
| 数量LED・光源などの年間出荷個数(億個、推定) | 価格1個あたりの平均単価(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 12 | 733 | 122 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 14 | 1,321 | 225 |
取り方:電子応用製品(529億円)とコンポーネンツ(204億円)の合計733億円を、年間約60億個で割り、1個あたり12前後とした(推定、開示なし)。数量は実質の個数で、新しい用途で増える。営業利益は両事業の合計122億円。価格は名目で、LED・バックライトは競争で値が下がるため、中立は3年1.09倍、10年1.14倍と、物価の1.34倍を下回るとした。
産業・公共照明(岩崎電気)
2026年4月に買収した岩崎電気。街路灯・工場や商業施設の照明・紫外線応用。2026/03期の連結には入っていない。
| 数量照明器具・ランプの年間出荷数(万台、推定) | 価格1台あたりの平均単価(千円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 50 | 601 | 30 |
| 10 年後 中立 | 130 | 67 | 871 | 61 |
取り方:岩崎電気は2026/03期の連結には入っていない。買収後の姿を比べやすいよう、2025/03期の売上601億円を年間約120万台・1台約5万円と推定して置いた(開示なし)。営業利益は5%の約30億円と仮置きした(開示が見つからず、推定)。以降の数字は、買収後を含めた形で置く。価格は名目で、中立は物価並みの3年1.09倍・10年1.34倍とした。
リスクと懸念
ホンダへの偏り
売上の約5割がホンダ向けとされる(2022年の報道)。ホンダの四輪は電動化と中国で苦戦が続く。ホンダの生産が落ちれば、稼働率と利益が同時に下がる。非日系の比率を8%に高める目標は、まだ道半ばで、成果は数年先にならないと見えない。
岩崎電気の買収の採算
約700億円の支払いは、純現金192億円を上回る。借入が出て、利払いも増える。公共・工場の照明は成熟市場で、LED化の更新需要も海外製に押される。シナジーが遅れれば、のれんの減損に至るおそれがある。利益の水準も開示が見つからない。
毎年の値下げ要請
自動車メーカーは、部品に毎年の値下げを求める。原価低減が追いつかなければ、利益率は6%台まで下がる。過去にも、原材料や人件費の上昇で営業利益が落ちた年がある。値決めの主導権は納入先にあり、部品会社は受け身になりやすい。
車の生産台数と電動化の置き換わり
世界の車の生産は9,000万台強で、これ以上増えにくい。中国の電気自動車が日系の販売を奪えば、ホンダ向けの数量が減る。電動化でランプの形が変わり、設計の優位が薄れる可能性もある。置き換わりの速さは読みにくい。
電子事業の価格競争
LED・バックライト・赤外線LEDは、中国・台湾勢が値段を下げる。電子を2,000億円に伸ばす目標には、数量を大きく増やす必要がある。単価が下がるなかで、利益率が17%前後を保てるかが焦点だ。新しい用途ほど競合の参入も早い。
資本効率の低さ
ROEは過去10年で5〜11%、直近は7%だ。資本コスト9%に届かない状態が続けば、会社を大きくしても価値は増えない。自社株買いでROEを上げても、利益の質が変わるわけではない。買収で資本が増えれば、さらに下がる。
新興国の事業リスク
二輪は、インド・ブラジル・フィリピンなどで伸ばす計画だ。為替、規制、現地の競合など、不安定さがある。ブラジルの子会社(Angstrom)の黒字化が遅れる可能性がある。伸びる市場ほど、現地の安い競合も多い。
今後の分かれ目
- 非日系顧客の売上比率が1割を超えたら
- ホンダ依存の弱点が薄れ、10年のやや楽観・楽観の確率を上げる。
- 岩崎電気の営業利益率が2年内に8%を超えたら
- 買収の採算が見え、電子・産業の利益率の前提を上方修正する。
- 岩崎電気の減損が出たら
- 資本配分への評価を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- ホンダの四輪生産が2割以上減ったら
- 3年のやや悲観・悲観の確率を上げる。数量と稼働率に直結する。
- 電子事業の売上が2029年3月期に2,000億円に届いたら
- 電子の数量と利益率の前提を上方修正し、10年の筋書きを見直す。
- 営業利益率が10%を超える年が出たら
- 中立の利益率を上げる。2018年3月期の12%以来の水準になる。
見ておくもの
- 非日系顧客の売上比率(2029年3月期に8%目標)の進捗
- 岩崎電気を含めた電子事業の売上と営業利益率(2,000億円目標との比較)
- ホンダの四輪・二輪の生産台数と、ランプの採用車種
- 営業利益率が8%台から10%台に乗るか(2027年3月期の会社予想は約9%)
- 自社株買いの規模と、自己資本比率(目標70%)・純有利子負債の推移
倍率と資本コストの決め方
四輪・二輪・電子・岩崎電気の4つを、台数(個数)×単価で積み上げ、今の時価総額を見ないで10年の利益を置いた。資本コストは基本7.5%にquality+1.0%(循環+0.25・値決め+0.5・寿命+0.25)を足した8.5%とした。倍率は利益ベースの正当化PERを出し、中立はROEがkをわずかに上回るので式の下限1÷k(約11.8倍)に置いた。やや悲観は稼ぐ力の6割、悲観は赤字のため純現金+売れる資産の税後の床(今の自己資本の約45%)で置いた。純現金192億円は時価総額の1割に満たず、買収で消えるため、余った現金は分けていない。有報・決算短信(2026/03)の現金及び預金は 2,270 億円で、現金同等物(1,359 億円)の外に 3 か月超の定期預金など約 911 億円があるが、これを足した現金約 1,103 億円も、岩崎電気の買収(約 700 億円)と月商 1.5 か月分の運転資金(約 650 億円)でほぼ使われるため、余った現金には立てない。新リース会計基準(2028/03期から)で営業利益と純負債の形が変わるが、数字は今と同じ形でそろえた。中立のPERは10年11.8倍で、今のPER(13.8倍)にも過去の倍率にも寄せていない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。事業で決める:基本 7.5% に quality +1.0%(循環 +0.25・値決め +0.5・寿命 +0.25)を足して k 8.25%。純現金で extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.25%。