結論
アルチザネットワークスは、携帯電話の基地局を試す装置と、その試験の受託を手がける東京の小さな会社だ。筆者の結論は、今の値段はやや割高だというものだ。手元の純現金は 52 億円と時価総額に近いが、事業の稼ぎは年 2 億円に満たず、現金も株主にはなかなか戻らない。
2026 年 7 月期は売上 25 億円、営業利益 1.6 億円だった。純利益 3 億円のうち 6 割は、国債や社債に回した現金の利息だ。2022 年 7 月期には 5G の開発投資の山で営業利益 15 億円を稼いだが、その後は谷が続く。
6G の研究は始まったが、商用化は 2030 年代に入ってからになる。それまでの踊り場は長い。試験の受託の半分は人の手間で売る仕事で、AI エージェントに置き換わる恐れもある。
資本コストに届かない事業に、利回りの低い現金が積み上がっている。元社長の床次隆志氏が約 2 割を持つ大株主で、現金の使い道は少数株主の思うようには決まらない。それが今の値段を正当化しない理由だ。現金の厚さは下値の支えにはなるが、上値を開く力にはならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、現金の厚さは安全の支えだが、価値を生む力ではない。純現金 52 億円は時価総額に近く、見かけは事業がただで手に入る形だ。
だが中身を見ると、事業の利益は年 2 億円に満たず、資本コストを大きく下回る。現金は国債や社債で年 3% ほどで回るが、株主が求める 9% 台には届かない。現金を抱えたまま 10 年が過ぎれば、その分だけ価値は目減りする。利益を配当で返しても、元の現金の山は動かない。
筆者は、オーナーとして持ち続けたい事業とはみない。規格の世代の山と谷に振られ、試験の受託は AI に置き換わる。現金を大きく株主に返す決断が出るまでは、今の値段に安全域は無い。逆に、その決断が出れば、評価は大きく変わりうる。持ち続ける理由は事業ではなく、現金の行方にある。筆者は、その時までは様子を見る側に立つ。事業の技術は本物でも、払う値段の大半は現金への値段だからだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは二つの柱からなる。一つは製品の販売で、2026 年 7 月期の売上は 12.5 億円だった。基地局のメーカーや通信事業者が、新しい基地局を開発する時に、たくさんの携帯電話がつながった状態をまねて試す装置「DuoSIM」が主力だ。通信の中身を取り出して調べる装置も売る。
もう一つはリソース提供サービスで、売上は 12.5 億円。試験の場所を貸し、試験の計画を立て、環境を組み、実際に試して報告書を書くまでを請け負う。装置の保守の契約もここに入る。
客は国内外の基地局のメーカーと通信事業者だ。新しい世代の通信規格が出るたびに、開発と試験の投資が山を作る。5G の山だった 2022 年 7 月期は、営業利益率が 32% に達した。山を過ぎると需要は細り、2024 年 7 月期は赤字だった。
手元には預金 22 億円と国債・社債など 37 億円があり、借入を引いても 52 億円の純現金がある。その利息と配当が年 2 億円近く入り、営業利益を上回る。利息が本業の稼ぎを上回る、珍しい形の会社だ。2021 年に株を出して集めた資金が、ほぼそのまま残っている形だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、狭い分野では本物だが、小さく脆い。
強みは、基地局に大量の携帯電話を同時につないで試す技術だ。多数の端末の動きを 1 台でまねる装置は、作れる会社が多くない。国内の基地局のメーカーとの長い付き合いもある。
弱みは三つある。一つは規格の世代への依存で、5G の山の後は谷が深かった。二つ目は相手の大きさで、キーサイトやアンリツのような大手は、試験装置の品揃えと世界の販売網で勝る。三つ目は試験の受託で、人の手間で売る仕事は AI エージェントに置き換わりやすい。どれも会社の努力だけでは変えにくい。
資本の使い方では、配当性向 7 割と自社株買いで利益以上を返している。2025 年 7 月期には、預金の多くを国債や社債に移して利回りを上げた。だが純現金 52 億円は手つかずで、事業の資本効率は低い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
携帯の基地局の試験装置の市場は、通信規格の世代ごとに山と谷を繰り返す。新しい規格が決まると、基地局のメーカーと通信事業者が開発と試験に投資を集め、商用化が進むと投資は細る。
5G は国内の契約数が 1 億件を超え、基地局の整備は一巡した。足元では開発投資が減っている。次の 6G は研究が本格化したところで、商用化は 2030 年ごろからとみられる。その前の数年が、試験装置の次の山になる。
一方で、試験のやり方も変わる。基地局はソフトで動く vRAN へ移り、試験の一部は仮想の環境で済む。衛星と地上をつなぐ通信や、工場などのローカル 5G は、小さいが新しい需要だ。
競合は、キーサイト、アンリツ、ローデ・シュワルツ、スピレントのような世界の大手だ。大手は品揃えと販売網で勝り、小さな会社は特定の試験の深さで生き残る。アルチザネットワークスは、大量の端末を同時につなぐ試験に絞って生き残ってきた。通信計測の領域は、5G の後の踊り場が 6G まで続くとみるのが自然だ。その間は、国内の通信事業者の設備投資の抑制と、海外の基地局メーカーの再編も重しになる。
資本政策と M&A
還元は厚い。2026 年 7 月期は配当 2.2 億円で配当性向は 74%、さらに 1 億円の自社株買いを行った。前の期の配当性向は 135% だった。
それでも純現金 52 億円は時価総額に近い。現金の多くは国債や社債に回り、利回りは低い。事業に要る分を除いた 43 億円ほどは、10 年で使い道が問われる。買収に使うのか、株主に返すのか、会社はまだ示していない。
大株主は元社長の床次隆志氏で、約 2 割を持つ。2 位の株主も 9% を持ち、上位の持ち分は厚い。今の社長は床次直之氏だ。現金を一度に返す大きな自社株買いや、TOB による非上場化は、経営陣と大株主の判断次第になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社は、時価総額とほぼ同じ純現金を持ち、その上で基地局の試験という狭いが本物の技術を持つ。事業の価値はほとんどただで手に入る。6G の開発投資の山が来れば、2022 年 7 月期のように営業利益 15 億円を稼ぐ力がある。
6G の研究は本格化した。商用化の前の数年は、基地局のメーカーが試験装置を買い増す時期だ。DuoSIM は多数の端末を 1 台でまねる装置で、作れる会社は多くない。vRAN や衛星通信、ローカル 5G も新しい需要になる。これらの分野は大手が手を出しにくい小さな市場で、専業の小さな会社が強みを出しやすい。2027 年 7 月期の会社予想も増収増益だ。
還元も厚い。配当性向 7 割を超え、自社株買いも続ける。現金の利息だけで配当の大半を払える。経営陣と大株主が非上場化を選べば、少数株主は割増しの値段で報われる。下値は現金が支え、上値は 6G が開く。損の小さい形の賭けだ。筆者もこの見方の半分には同意する。
慎重な見方
純現金の厚さは、事業の弱さの裏返しだ。2021 年に資金を集めた後、営業利益は 15 億円から 1 億円台へ落ちた。現金の利息が営業利益を上回る会社は、事業で稼いでいるとは言いにくい。
6G の山は来るが、その頃には試験のやり方が変わっている。基地局はソフトで動き、試験の多くは仮想の環境で済む。装置を売る商売から、ソフトとサービスで稼ぐ商売への転換が要るが、その兆しはまだ小さい。専用の装置を売る小さな会社には逆風だ。キーサイトやアンリツのような大手は、品揃えと販売網で先に客をつかむ。
試験の受託は、人が手順書を書き、試し、報告書をまとめる仕事だ。AI エージェントが最も得意とする形で、10 年で人の数は大きく減る。現金は経営の判断で眠り続け、少数株主に戻る保証は無い。眠る現金は、国債の利回りの分しか増えない。株主が求める 9% 台との差は、毎年少しずつ価値を削る。下値を支えるはずの現金が、10 年では価値を薄める側に回る。
どちらに重みを置いたか
両者とも、純現金が時価総額に近いことは認めている。差は、その現金と事業の技術が 10 年でどれだけ株主の価値になるかだ。事業の利益が資本コストに届かず、現金の使い道も経営陣と大株主次第である以上、慎重な見方の方が裏づけは強い。確率は悲観側に寄せ、AI の型の決まりどおりやや悲観と悲観の合計を 35% にした。強気側には 6G の山と非上場化の可能性を残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 668 円58 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 328 円28 億円)。 今の値に割り戻すと 504 円44 億円、今との差 −19.1%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,279 円110 億円 | 463 円40 億円 | +179.6% | +10.8% | 174 円15 億円 |
| やや楽観 | 20% | 924 円80 億円 | 405 円35 億円 | +113.5% | +7.9% | 266 円23 億円 |
| 中立 | 35% | 714 円62 億円 | 348 円30 億円 | +70.3% | +5.5% | 371 円32 億円 |
| やや悲観 | 22% | 348 円30 億円 | 255 円22 億円 | −3.3% | −0.3% | 133 円11 億円 |
| 悲観 | 13% | 220 円19 億円 | 174 円15 億円 | −36.8% | −4.5% | 51 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 668 円58 億円 | 328 円28 億円 | +59.8% | +4.8% | 995 円86 億円 |
今の株価時価総額 623 円54 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 6G の開発投資の山を取り、試験装置が伸びる 利益 6 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 1,279 円110 億円
6G の規格が固まり、基地局のメーカーと通信事業者が開発と試験に投資を増やす。アルチザネットワークスは 5G で作った DuoSIM の技術を 6G に広げ、試験装置の台数を 6 割増やす。
単価は新しい機能の分だけ物価を上回る。試験の受託は、AI で手順が自動化される分を 6G の新しい試験の需要が埋め、人数を保つ。
営業利益は 6 億円台と、2022 年 7 月期の山の半分に届く。vRAN や衛星通信の試験も新しい柱になる。手元の 50 億円を超える現金は配当と自社株買いで少しずつ戻り、会社は無借金に近づく。
- 製品販売(基地局の試験装置):数量 80.0(年間の販売台数(台、推定))× 価格 0.36(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 29 億円・営業利益 5 億円。台数 +60%・単価 +44%(6G の試験装置が立ち上がる)
- リソース提供サービス(試験の受託・保守):数量 100(受託と保守にあたる技術者の数(人、推定))× 価格 0.17(技術者 1 人あたりの年間の売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。人数横ばい・単価 +36%(6G の受託が増え、AI で減る分を埋める)
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.1% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)32 億円。全体の PER 14.14 倍、時価総額 110 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:6G の商用化が 2030 年ごろに来て、その前の開発投資の山を取る必要がある。2022 年 7 月期に営業利益率 32% の山を作った実績があり、10% に置いた。
やや楽観 20% 6G の研究の需要で、5G の谷から持ち直す 利益 4 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 924 円80 億円
5G の開発投資の谷を抜け、6G の研究と、vRAN・衛星通信・ローカル 5G の試験の需要が少しずつ育つ。試験装置の台数は 3 割増え、単価は物価並みに上がる。vRAN や衛星通信の試験の受注も、小さいながら積み上がる。
試験の受託は、AI で自動化される手順の分だけ人数が 1 割減るが、6G の新しい試験が残りを支える。保守の契約は装置の台数とともに増える。営業利益は 4 億円弱に戻る。2026 年 7 月期の 2.5 倍の水準だ。
手元の現金は国債・社債で回り、利息が利益の半分ほどを占める形は続く。配当と自社株買いで純利益の 8 割前後を戻す。
- 製品販売(基地局の試験装置):数量 65.0(年間の販売台数(台、推定))× 価格 0.33(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 21 億円・営業利益 3 億円。台数 +30%・単価 +32%
- リソース提供サービス(試験の受託・保守):数量 90.0(受託と保守にあたる技術者の数(人、推定))× 価格 0.17(技術者 1 人あたりの年間の売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。人数 −10%・単価 +34%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.6% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)32 億円。全体の PER 12.94 倍、時価総額 80 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027 年 7 月期の会社予想は増収で、6G の研究が本格化している。強気側の中心に置いた。
中立 35% 5G と 6G の間の踊り場が長く、現金の利息が利益を支える 利益 3 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 714 円62 億円
5G の基地局の整備は一巡し、6G の商用化は 2030 年代に入ってからになる。基地局の試験の需要は、その間の研究と小さな新しい用途に限られる。試験装置の台数は 1 割増にとどまり、単価は海外の大手との競争で物価に届かない。
試験の受託は、AI エージェントが試験の手順書づくりや結果の分析を肩代わりし、人の数が 4 分の 3 に減る。保守の契約は装置に付いて残る。
営業利益は 2 億円台にとどまり、純利益の半分以上は手元の現金の利息だ。配当は今の水準を保ち、自社株買いも少し続ける。自己資本はほぼ横ばいで、事業の ROE は資本コストに届かない。
- 製品販売(基地局の試験装置):数量 55.0(年間の販売台数(台、推定))× 価格 0.30(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。台数 +10%・単価 +20%(海外勢との競争で物価に届かない)
- リソース提供サービス(試験の受託・保守):数量 75.0(受託と保守にあたる技術者の数(人、推定))× 価格 0.17(技術者 1 人あたりの年間の売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。人数 −25%(AI エージェント代替)・単価 +34%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)32 億円。全体の PER 11.95 倍、時価総額 62 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種のノートの通信計測(5G 整備の一巡後、6G まで踊り場)に沿う中心の筋書き。
やや悲観 22% 海外の大手に押され、試験装置が細る 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 348 円30 億円
6G の試験装置は、キーサイトやアンリツ、ローデ・シュワルツのような海外の大手と、ソフトで基地局を試す新しい手法に押される。アルチザネットワークスの装置の台数は 2 割減り、利益が出なくなる。
試験の受託は AI エージェントに置き換わり、人の数が 3 分の 2 に減って赤字になる。手元の現金の利息だけが利益を支え、純利益は 1 億円ほどだ。
現金の一部は赤字の穴埋めと新しい事業への投資に消える。経営陣と大株主は大きな還元を行わない。価値は事業の稼ぎでなく、手元の純現金のうち株主に戻る分で決まる。
- 製品販売(基地局の試験装置):数量 40.0(年間の販売台数(台、推定))× 価格 0.27(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。台数 −20%・単価 +8%・利益なし
- リソース提供サービス(試験の受託・保守):数量 65.0(受託と保守にあたる技術者の数(人、推定))× 価格 0.15(技術者 1 人あたりの年間の売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。人数 −35%・単価 +20%・赤字
倍率:事業は赤字で稼ぐ力は 0 とみる。価値は売れる資産の床(floor_assets_oku)30 億円で決まる。今の自己資本 67 億円に対する PBR 0.45 倍。
確率:2017〜2018 年と 2024 年に赤字の年があり、5G の谷は深かった。AI の型で悲観側の合計を 35% 以上にする決まりにも沿う。
悲観 13% 技術の世代交代に乗り遅れ、現金を食いつぶす 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 220 円19 億円
6G の試験は、基地局のソフトを仮想の環境で試す手法に移り、専用の試験装置の市場そのものが細る。アルチザネットワークスの装置の台数は半分になり、赤字が続く。
試験の受託も AI エージェントに置き換わり、半分に縮む。手元の現金は赤字の穴埋めと、立て直しのための買収に使われ、10 年で半分ほどになる。
経営陣は立て直しを続けるが、事業の柱は見つからない。配当も次第に細る。現金が減るにつれ、下値の支えも薄くなる。株主に残るのは、使い残した現金のうち配当や自社株買いで戻る分だけだ。試験装置の専業という形そのものが、時代に合わなくなる筋書きだ。
- 製品販売(基地局の試験装置):数量 25.0(年間の販売台数(台、推定))× 価格 0.25(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 −1 億円。台数 −50%・赤字
- リソース提供サービス(試験の受託・保守):数量 50.0(受託と保守にあたる技術者の数(人、推定))× 価格 0.14(技術者 1 人あたりの年間の売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 −1 億円。人数 −50%・赤字
倍率:赤字で稼ぐ力は 0 とみる。価値は売れる資産の床(floor_assets_oku)19 億円で決まる。今の自己資本 67 億円に対する PBR 0.28 倍。
確率:単一の技術の世代に頼る小さな装置メーカーで、構造的に負ける筋書きは十分ありうる。2009〜2013 年に赤字が続いた実績もあり、13% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
製品販売(基地局の試験装置)
基地局に大量の携帯電話がつながった状態をまねる DuoSIM などの試験装置と、通信を取り出して調べる装置を売る。
| 数量年間の販売台数(台、推定) | 価格1 台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 50.0 | 0.25 | 13 | 1 |
| 10 年後 中立 | 55.0 | 0.30 | 17 | 2 |
取り方:製品販売の売上 12.52 億円(2026 年 7 月期 決算短信)を、1 台約 2,500 万円(機能の拡張や小型の装置をならした推定)とみて年 50 台と置いた。台数の開示は無い。セグメントは 1 つで利益の内訳も無いので、営業利益 1.55 億円のうち粗利の厚い製品に 1.0 億円を割り振った推定。
リソース提供サービス(試験の受託・保守)
試験の場所の提供から計画・実施・報告書づくりまでの受託と、装置の保守。
| 数量受託と保守にあたる技術者の数(人、推定) | 価格技術者 1 人あたりの年間の売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 100 | 0.12 | 12 | 1 |
| 10 年後 中立 | 75.0 | 0.17 | 13 | 1 |
取り方:サービスの売上 12.47 億円を、1 人年約 1,250 万円とみて 100 人と推定した。受託の部分は人の手間で売る型で、AI エージェント代替の表どおり中立の人数を 0.75 倍に置く(保守の部分は装置に付いて残るので、受託だけの型より緩い)。営業利益は全社 1.55 億円の残り 0.55 億円。
リスクと懸念
通信規格の世代の山と谷
試験装置の需要は、新しい規格の開発投資に連動する。5G の山だった 2022 年 7 月期は営業利益 15 億円、山を過ぎた 2024 年 7 月期は赤字だった。6G の商用化が遅れれば、谷は長引く。
AI エージェント代替
リソース提供サービスの半分は、試験の計画・実施・報告書づくりを人の手間で請け負う仕事だ。AI エージェントがこれらを肩代わりすれば、受託の人数と売上は 10 年で 2〜5 割減る。
海外の大手と試験の仮想化
キーサイト、アンリツ、ローデ・シュワルツなどの大手は、品揃えと販売網で勝る。基地局のソフト化で試験が仮想の環境に移れば、専用の装置の市場そのものが細る。
眠る現金と少数株主
純現金 52 億円は時価総額に近いが、上位の大株主の持ち分が厚く、使い道は経営陣の判断で決まる。利回りの低い国債・社債のまま眠れば、資本コストとの差の分だけ価値は目減りする。
顧客の偏り
客は国内外の基地局のメーカーと通信事業者に限られる。大口の客 1 社の投資の先送りが、年の売上を大きく動かす。
今後の分かれ目
- 6G の規格が固まり、基地局のメーカーが試験装置の発注を増やす
- 2022 年 7 月期のような山が再び来て、強気側の筋書きに近づく。
- 純現金の半分を超える大きな自社株買いや特別配当を決める
- 眠る現金が株主に戻り、価値の目減りが止まる。戻り方の見方を 1.0 に上げる理由になる。
- 経営陣と大株主が非上場化を選ぶ
- 少数株主は割増しの値段で持ち分を手放す。現金の厚さが値段にどれだけ乗るかが焦点になる。
- 試験の受託の売上が 2 年続けて 1 割以上減る
- AI エージェント代替が進んでいる印で、やや悲観の筋書きに近づく。
- 現金を使って畑違いの会社を買う
- 資本コストに届かない買収なら、悲観の筋書きに近づく。
見ておくもの
- 製品販売とリソース提供サービスの売上の推移
- 6G の規格の決まり方と基地局メーカーの開発投資
- 純現金(預金・投資有価証券・借入)と還元の額
- 試験の受託の人数と単価
- 大株主の持ち株と大量保有報告
- vRAN・衛星通信・ローカル 5G の受注
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の PER 18 倍・PBR 0.8 倍から置かず、台数×単価と人数×単価で積んだ事業の利益と、ROE が k を下回る時の上限 1÷k から決めた。余った現金 43 億円は利息を除いて戻り方 0.75 で別に足した。facts の純現金は現金同等物だけで、定期預金と投資有価証券 37 億円が抜けていたので、短信の BS で数え直した。実績も 2026 年 7 月期の短信を起点にした。悲観側は純現金の残りで床を置き、過去の PBR の底は使っていない。減価償却は小さく、物価で増やさない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.3→14.14 倍・やや楽観 PER 9.7→12.94 倍・中立 PER 8.6→11.95 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.75% = 9.25%。同じ領域で済んだ会社は無い。AI エージェント代替は寿命に表の下限寄り(受託は売上の 4 分の 1 ほど)で入れ、数量の減りを主にした。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 9.00%。