結論
KOAは、電子回路に欠かせない抵抗器を主力とする部品メーカーだ。売上の半分強が自動車向けで、AIサーバー向けも伸び始めた。2026年3月期は売上723億円に対し営業利益は36億円と薄利だが、会社は今期の営業利益を54億円まで戻すと見ている。
筆者の結論は、今の値段は割高というものだ。株価は半年で5割ほど上がったが、10年の稼ぐ力で測った価値は今の5割弱にとどまる。
理由は資本の効率にある。自己資本は886億円と厚いのに、過去10年の中央値で見た純利益は自己資本の4%しかない。中立の筋書きでも10年後のROEは6%で、資本コスト8.8%に届かない。ためた利益が額面より安く評価される会社だ。
追い風は確かにある。AIサーバーは部品点数が多く、電動化で車に載る抵抗器も増える。マレーシアの新工場は2026年10月に出荷を始める。ただ、チップ抵抗器は台湾のヤゲオが世界の3割超を握り、中国勢も追う。原材料高を値上げで転嫁できるかが分かれ目になる。
強気の筋書き(確率8%)でも、10年後の時価総額と還元の合計は今の2.3倍で、年率ではほぼ資本コストどまりだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、KOAは「悪くないが、安くない」会社だ。事業は10年後も残る。電子機器がある限り抵抗器は要り、自動車とAIの需要は長い目で増える。
問題は、そこで稼げる利益の大きさと、払う値段の関係にある。オーナーの取り分になる利益は、営業利益から設備の更新に要る分を引いたものだ。KOAは年72億円の減価償却をまかなったうえで、残る利益が薄い。10年後の中立の純利益は74億円と見るが、これは自己資本1,200億円超に対して6%にすぎない。
堀は、車載の認証と長い付き合いにある。ただし規格品の色が濃く、価格を自分で決められる範囲は狭い。中国勢の技術が上がれば、堀は浅くなる。
経営については、安全第一で財務を堅く保つ姿勢は評価できる。反面、資本を厚く積んだまま収益性を上げ切れていない。筆者がオーナーの目で最も気にするのは、この資本が稼ぐ力に見合っているかだ。
安全域は乏しい。純資産を下回る株価は一見割安に映るが、帳簿の資産が資本コストを稼げないなら、割安の根拠にならない。今の値段はAIと車載の回復が長く続くことを、かなり織り込んでいる。
何で稼ぐ会社か
KOAは、電流を絞る・測る・守る部品を作る会社だ。柱はチップ抵抗器で、基板に載る米粒より小さな部品である。ほかに温度センサやヒューズなどの安全部品、通信向けなどのICを持つ。2026年3月期は抵抗器の売上が伸びる一方、IC・安全部品・その他は減った。
売上の52%が自動車向けだ。エンジン制御、パワーステアリング、バッテリー管理など、止まってはならない回路に使われ、環境対応車1台に約6,000個が載ると会社は説明する。次いで産業機器、通信、電源、家電が続く。AI関連はまだ小さく、2025年度の販売が36億円、2026年度は2割増の見込みである。
稼ぎ方は量産品と高付加価値品の二層になっている。汎用のチップ抵抗器は価格競争が激しい。薄膜や電流検出用の抵抗器は精度と信頼性で値段を保ちやすい。車載品は認証に時間がかかり、いったん採用されると長く使われる。
工場は日本、中国、マレーシアに置く。マレーシアの新工場は2025年4月に竣工し、顧客の認証を受けて2026年10月から出荷を始める。中国の太倉の工場は、政府の要請で移転し2025年9月に終えた。補償金30億円が今期に特別利益で入る。
抵抗器の個数と単価は開示がなく、製品別の構成は筆者の推定だ。セグメント利益も開示がないため、営業利益は抵抗器に比重をおいて配分した。
優良さと弱いところ
優良さは「安心・安全」を支える部品の信頼性にある。社の2030ビジョンは「世界に欠かせない部品(Essential Parts of the World)」で、車載の止まれない回路に採用される実績が堀になっている。ただ、その堀は深くない。
弱いのは値決めの力だ。抵抗器は規格品の色が濃く、ヤゲオ、ヴィシェイ、パナソニック、中国の風華・厚声などが並ぶ。上位5社の合計シェアが約54%という調査もある。KOAはその中位で、中国市場ではシェアを落とした。中期経営計画の第1段階の振り返りでも、新車販売の下振れと中国の競争激化が未達の原因に挙がった。
資本の効率はもっと弱い。ROEは過去10年で0.3%から10%の間を揺れ、中央値は4%だ。営業利益率が13.6%まで上がった2023年3月期を除けば、5%前後が定位置である。減価償却が年72億円と営業利益を上回る重い設備産業で、稼いだ利益が設備に吸われやすい。
救いは財務の落ち着きだ。自己資本比率は58%、純有利子負債は180億円で、利払いに困る水準ではない。2025年3月期に営業利益が12億円まで落ちても赤字にはならなかった。
経営の目標は2027年度にROE6.2%、営業利益74億円だ。筆者はこの数字を、資本コストを意識し始めた段階と受け止める。コストを上回る目標ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
抵抗器は、電子部品の中で最も数が出る部品の一つだ。スマートフォンにも自動車にもサーバーにも数百から数千個が載る。世界のチップ抵抗器の市場は2025年に40億ドル前後とされ、調査会社は年10%前後の伸びを見込む。ただし定義で数字が大きく変わり、金額の伸びの多くは値上がりと見られる。
需要の質は変わりつつある。スマホ向けは数量が伸びず、価格が下がる。一方、AIサーバーは基板の面積が大きく、電源回路が多いため部品点数が増える。自動車は電動化と運転支援で、1台あたりの抵抗器が増える。KOAの主戦場である車載と、これから伸ばすAI関連は、どちらも信頼性が価格に効く領域だ。
競合の構図は分散している。台湾のヤゲオは世界シェア3割超とされ、2026年2月に主要品を15〜20%値上げすると伝えられた(取引先向けの記事で一次資料は未確認)。背景は銀・ルテニウムなどの貴金属高だ。KOAも材料高を転嫁する方針で、顧客との交渉から売上に反映されるまで半年から1年かかる。2027年3月期の営業利益は、当初予想の段階で材料高の22億円分が逆風だった。
中国勢は台数でシェアを広げ、地元の車載向けにも入り始めた。政府の補助も背景にある。KOAは中国の工場移転を終えたが、現地の競争環境は厳しい。
今は、AIサーバー・産業機器の需要が先に回復し、会社は2026年7月に今期予想を上方修正した。受注は2026年1〜3月に200億円台と、2021年度以来の水準に乗った。ただ、一部は中東情勢を受けた顧客の在庫積み増しだ。回復の何割が在庫の山かは、まだ見えない。
資本政策と M&A
株主への還元は、配当性向30%前後を目安に、必要に応じて自社株買いを加える形だ。2026年3月期は当初予想から増配した。今期の配当予想は大きく増えるが、工場移転の補償金という特別利益を含む利益が土台なので、継続性は割り引いて見る。
資本の使い方で気になるのは設備投資だ。2026年3月期は59億円(7割がマレーシア新工場)、今期は41億円を予定する。減価償却が年72億円なので、フリーキャッシュフローは薄い。
M&Aは目立たない。大型の買収で資本効率を壊した履歴はない一方、自己資本886億円に対する利益の薄さを、自社株買いや資産の入れ替えで正す動きも弱い。中計は「PBR1倍以上」をうたうが、手段はROIC経営と利益成長が中心だ。
株主構成は信託銀行・生保・地銀・外国投資家が並び、特定の親会社や創業家が支配する形ではない。日本生命が約6%、八十二長野銀行が約5%で、政策保有株の残高は資料で確認できなかった。持ち合いの解消が進めば、資本政策は動く余地がある。
買収される側の可能性は否定しない。株価は純資産を下回る期間が長く、時価総額も800億円台と小さい。ただ、筋書きでは別に確率を置かず、下振れ側の構造に含めた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AIサーバーと自動車の二つの需要が同時に立ち上がる局面にある。AIサーバーは電源・信号回路が多く、基板あたりの部品点数が増える。KOAのAI関連販売は2025年度に36億円と小さいが、2026年度は約2割増の見込みで、マレーシアの新工場が2026年10月に動き出せば供給の制約も外れる。
自動車は売上の52%を占め、電動化で1台あたりの抵抗器が増える。車載品は認証の壁が高く、一度入れば長く使われる。会社は材料高を価格に転嫁する方針で、顧客交渉から売上への反映まで半年から1年かかるものの、反映が始まれば2027年度後半から利益率は改善する。中計は2027年度に営業利益74億円を掲げ、今期予想はすでに54億円まで上がった。
財務は厚い。自己資本比率は58%で、投資を続けても利払いで苦しくなる心配は小さい。中国の工場移転も終わり、補償金30億円が入る。ヤゲオなど競合が値上げに動いたことは、業界全体で価格が戻りやすい環境を示している。薄い利益率が正常化するだけで、営業利益は今の2倍以上になりうる。
慎重な見方
株価は2026年3月末から半年ほどで5割上がった。上方修正で今期の純利益は77億円まで伸びる予想だが、そのうち30億円は工場移転の補償金という一回限りの特別利益だ。営業利益は54億円で、売上比6%の薄利にとどまる。
薄い理由は構造にある。抵抗器は規格品の色が濃く、ヤゲオが世界3割超を握り、上位5社で約54%、残りは中国勢を中心に細かく分かれる。中国ではKOAのシェアが落ち、中期経営計画の第1段階も未達で終わった。今期の営業利益は、当初の予想で材料高の22億円と固定費増の11億円を、売上増の17億円と為替の7億円で埋める形で、価格転嫁が遅れれば食い込まれる。
受注の回復も割り引く必要がある。2026年1〜3月の受注は200億円台に乗ったが、一部は中東情勢を受けた顧客の在庫積み増しだ。在庫が消化される局面では受注が反落する。
資本の効率も弱い。自己資本886億円に対し、過去10年のROEの中央値は4%だ。減価償却が年72億円と営業利益を上回り、マレーシアの新工場など設備投資も重い。AIの恩恵が一部の製品にとどまれば、投資に見合う利益は出ない。今期の予想でもROEは9%(特別利益を含む)で、特別利益を除けば6%に届かない。この会社に払う値段として、今は高い。
どちらに重みを置いたか
強気の見方には根拠がある。AIと車載の需要は本物で、価格の転嫁が通れば営業利益は今の2倍を超える。ただ、慎重な見方の指摘がより重い。抵抗器は値決めの力が弱く、設備の負担が大きいため、利益が増えても資本コストを上回る水準に届きにくい。
このため確率は中立にもっとも厚く置き、残りを下振れ側に寄せた。強気の確率は8%、悲観を11%にした。AIの需要が一服して価格が崩れる場合の損が大きい一方、全てがうまく運んだ場合の得は限られる。非対称な賭けになる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,926 円715 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 522 円194 億円)。 今の値に割り戻すと 1,171 円435 億円、今との差 −40.4%、 期待の年率 +2.2%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,411 円1,639 億円 | 958 円356 億円 | +173.3% | +10.6% | 430 円160 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,810 円1,044 億円 | 673 円250 億円 | +77.2% | +5.9% | 697 円259 億円 |
| 中立 | 35% | 2,260 円840 億円 | 579 円215 億円 | +44.4% | +3.7% | 993 円369 億円 |
| やや悲観 | 26% | 751 円279 億円 | 331 円123 億円 | −44.9% | −5.8% | 281 円105 億円 |
| 悲観 | 11% | 224 円83 億円 | 205 円76 億円 | −78.2% | −14.1% | 47 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,926 円715 億円 | 522 円194 億円 | +24.6% | +2.2% | 2,448 円910 億円 |
今の株価時価総額 1,965 円730 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% AIと車載が重なり、抵抗器が稼げる部品に戻る 利益 138 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 4,411 円1,639 億円
AIサーバーと車載の需要が重なり、10年を通して抵抗器の数量が伸びる。マレーシアの新工場が早く軌道に乗り、AI向けの高信頼品でシェアを広げる。材料高は価格に転嫁され、薄膜・電流検出用など付加価値の高い品の比率が上がる。中国勢は汎用品にとどまり、車載向けの先端品までは入ってこない。営業利益率は2023年3月期の13.6%に近い水準が定着し、設備投資も回収が進む。AI関連の売上は小さな柱から主力の一つに育つ。稼ぐ力は上がるが、資本の厚さが大きいためROEは10%に届く程度で、資本コストをわずかに上回るにとどまる。
- 抵抗器(チップ抵抗器・電流検出用など):数量 1,950(抵抗器の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 60(1 個あたり平均単価(銭・名目))→ 売上 1,165 億円・営業利益 163 億円。1950 億個×単価 59.76 銭(今の 1.34 倍)、営業利益率 14.0%
- 安全部品・センサ・インダクタ:数量 125(安全部品・センサ・インダクタの年間出荷個数(億個、推定))× 価格 126(1 個あたり平均単価(銭・名目))→ 売上 158 億円・営業利益 19 億円。125 億個×単価 126 銭(今の 1.40 倍)、営業利益率 12.0%
- IC・その他:数量 5.0(IC・その他の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 1,420(1 個あたり平均単価(銭・名目))→ 売上 71 億円・営業利益 3 億円。5 億個×単価 1420 銭(今の 1.34 倍)、営業利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 138 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 8.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.85 倍、時価総額 1,639 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AIサーバーの需要が10年続き、値上げが定着し、中国勢の追い上げも抑える三つが揃う必要がある。過去の営業利益率が13.6%を超えた期は一度だけで、この水準を10年保つのは難しい。
やや楽観 20% 材料高を転嫁し、利益率が1割へ戻る 利益 92 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,810 円1,044 億円
AI関連と車載の需要が主要な成長要因として定着し、抵抗器の数量は10年で3割近く増える。材料高の転嫁はおおむね通り、営業利益率は10%に回復する。マレーシアの稼働率が上がり、固定費の重さが薄まる。中国の工場移転の影響も落ち着く。安全部品・センサも車載の電動化で伸びる。ICは縮小が続くが、全体への影響は小さい。一方で、汎用品の中国勢との価格差は残り、利益率が2割に近づくような高収益にはならない。配当と自社株買いは利益の4割弱を回す。ROEは7%台で、資本コストには届かない。会社の目標より少し良い程度で、市場が期待するほどの飛躍ではない。
- 抵抗器(チップ抵抗器・電流検出用など):数量 1,650(抵抗器の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 58(1 個あたり平均単価(銭・名目))→ 売上 957 億円・営業利益 110 億円。1650 億個×単価 57.98 銭(今の 1.30 倍)、営業利益率 11.5%
- 安全部品・センサ・インダクタ:数量 112(安全部品・センサ・インダクタの年間出荷個数(億個、推定))× 価格 121(1 個あたり平均単価(銭・名目))→ 売上 135 億円・営業利益 14 億円。112 億個×単価 120.6 銭(今の 1.34 倍)、営業利益率 10.5%
- IC・その他:数量 4.8(IC・その他の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 1,399(1 個あたり平均単価(銭・名目))→ 売上 67 億円・営業利益 1 億円。4.8 億個×単価 1399 銭(今の 1.32 倍)、営業利益率 1.0%
倍率:事業の純利益 92 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.80% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.36 倍、時価総額 1,044 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期の上方修正とAIの需要を素直に延ばした筋書きで、会社の中計目標(営業利益74億円)を上回る水準が10年続く。実現には転嫁の成功と中国勢の抑え込みの両方が要る。
中立 35% 需要は伸びるが、稼ぐ力は資本コストに届かない 利益 74 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,260 円840 億円
抵抗器の数量は10年で2割強増え、AIと車載が下支えする。単価は物価の1.34倍には届かず、小型化の値下がりと中国勢の安値で1.26倍にとどまる。材料高の転嫁は進むが全額ではなく、営業利益率は8%台で落ち着く。2023年3月期の山には届かず、会社の中計目標(74億円)に近い水準だ。車載は堅調でも、中国のシェア低下は止まらない。安全部品・センサは小幅に伸び、ICは利益に貢献しない。設備投資は続き、減価償却が利益を圧迫する。10年後も「安定しているが資本を食う」部品会社のままで、ROEは6%前後にとどまる。
- 抵抗器(チップ抵抗器・電流検出用など):数量 1,625(抵抗器の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 56(1 個あたり平均単価(銭・名目))→ 売上 913 億円・営業利益 91 億円。1625 億個×単価 56.2 銭(今の 1.26 倍)、営業利益率 10.0%
- 安全部品・センサ・インダクタ:数量 105(安全部品・センサ・インダクタの年間出荷個数(億個、推定))× 価格 117(1 個あたり平均単価(銭・名目))→ 売上 123 億円・営業利益 11 億円。105 億個×単価 117 銭(今の 1.30 倍)、営業利益率 9.0%
- IC・その他:数量 4.5(IC・その他の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 1,357(1 個あたり平均単価(銭・名目))→ 売上 61 億円・営業利益 0 億円。4.5 億個×単価 1357 銭(今の 1.28 倍)、営業利益率 0.0%
倍率:事業の純利益 74 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 8.80% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.36 倍、時価総額 840 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の長期の見通しと、会社の中計(営業利益74億円)を中心に、実績の薄い利益率を割り引いた中心の筋書き。確率はもっとも厚い。
やや悲観 26% 中国勢の安値に押され、薄利が定位置になる 利益 35 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 751 円279 億円
中国メーカーの技術が上がり、汎用品だけでなく車載の中位品でも価格が下がる。台湾のヤゲオなど大手も、AI向けの需要が落ち着けば値下げに回る。KOAの数量はAIで伸びるが、平均単価の伸びは物価を大きく下回る。マレーシアの新工場は稼働率が上がらず、減価償却だけが重くのしかかる。営業利益率は5%を割り、利益は今の水準から1割程度しか伸びない。配当は維持するが、自社株買いの余力は小さい。事業は崩れないが、資本は積み上がるだけで稼げない。財務は健全なままで、倒産の心配はないが、株主にとって魅力のある投資先ではなくなる。
- 抵抗器(チップ抵抗器・電流検出用など):数量 1,450(抵抗器の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 54(1 個あたり平均単価(銭・名目))→ 売上 776 億円・営業利益 50 億円。1450 億個×単価 53.52 銭(今の 1.20 倍)、営業利益率 6.5%
- 安全部品・センサ・インダクタ:数量 95.0(安全部品・センサ・インダクタの年間出荷個数(億個、推定))× 価格 108(1 個あたり平均単価(銭・名目))→ 売上 103 億円・営業利益 6 億円。95 億個×単価 108 銭(今の 1.20 倍)、営業利益率 6.0%
- IC・その他:数量 4.0(IC・その他の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 1,251(1 個あたり平均単価(銭・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 −3 億円。4 億個×単価 1251 銭(今の 1.18 倍)、営業利益率 -6.0%
倍率:事業のROE 3.1%は資本コスト8.8%を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)の約7割を置いた。優良でなくなった後の利益で、自己資本の厚さは根拠にしない。
確率:中国のシェア低下がすでに起きており、第1段階の中計未達の延長にある。AIの需要が一服しても起きやすい。確率は強気より厚くした。
悲観 11% 価格決定力を失い、ほぼ損益分岐の部品会社に 利益 11 億円 · PER 7.6 倍 · 株価時価総額 224 円83 億円
AIサーバーの設備投資が急にしぼみ、車載向けでは中国メーカーが現地の認証を取って先端品にも入ってくる。ヤゲオ・中国勢との値下げ競争で単価は物価に全く追いつかず、材料高の転嫁も進まない。マレーシアの新工場は遊休に近くなり、減価償却が営業利益を食いつぶす。KOAは設備の縮小と一部事業の整理に追い込まれる。営業利益率は2%を割り、純利益は10億円台にとどまる。配当は続けるが、自社株買いはなくなる。財務は崩れないが、優良企業としての評価は外れる。中国勢に対抗できなくなった会社は、買収の標的にもなりうる。中国勢への対抗を諦めた会社は、買収の標的にもなりうる。
- 抵抗器(チップ抵抗器・電流検出用など):数量 1,250(抵抗器の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 48(1 個あたり平均単価(銭・名目))→ 売上 602 億円・営業利益 24 億円。1250 億個×単価 48.17 銭(今の 1.08 倍)、営業利益率 4.0%
- 安全部品・センサ・インダクタ:数量 80.0(安全部品・センサ・インダクタの年間出荷個数(億個、推定))× 価格 95(1 個あたり平均単価(銭・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 2 億円。80 億個×単価 95.4 銭(今の 1.06 倍)、営業利益率 3.0%
- IC・その他:数量 3.0(IC・その他の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 1,102(1 個あたり平均単価(銭・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 −3 億円。3 億個×単価 1102 銭(今の 1.04 倍)、営業利益率 -8.0%
倍率:悲観の純利益 11 億円は ROE 1.0% で、ためた利益は額面未満の価値しかない。やや悲観の 8 倍より悲観ほど低く置くので、その約 95% の 7.6 倍とした(稼ぐ力 純利益÷k の PER 上限も超えない)。自己資本の厚さや市場の倍率は根拠にしない。
確率:AIの設備投資が止まり、中国勢が車載の先端品に入り、新工場が遊ぶ三つが重なる筋書き。過去の底(営業利益率1.8%)に近い状態が続く。起きれば長い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
抵抗器(チップ抵抗器・電流検出用など)
基板に載るチップ抵抗器を中心とする主力事業。車載・産業機器・AIサーバー向けに、汎用品から薄膜・電流検出用の高信頼品までそろえる。
| 数量抵抗器の年間出荷個数(億個、推定) | 価格1 個あたり平均単価(銭・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,300 | 45 | 580 | 38 |
| 10 年後 中立 | 1,625 | 56 | 913 | 91 |
取り方:工場は月100億個以上を生産するとされ(会社の採用サイト)、年の出荷を約1,300億個と置いた。2026年3月期の売上723億円のうち、製品別の開示から抵抗器を約8割の580億円と推定し、1個あたり約45銭とした(個数・構成は筆者の推定)。個数は実質の数量で、車載の電動化・AIサーバーの部品点数増で伸びる。単価は名目で、物価3%と高信頼品への構成の変化に、小型化の値下がりと中国勢の安値が引き合う。セグメント利益は非開示のため、全社の営業利益36.5億円から安全部品・IC等の分を引いた約38億円(利益率6.6%)とした。
安全部品・センサ・インダクタ
温度センサ、ヒューズなどの安全部品、インダクタ。車載・電源・家電の保護と検出に使う小さな事業。
| 数量安全部品・センサ・インダクタの年間出荷個数(億個、推定) | 価格1 個あたり平均単価(銭・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 90 | 90 | 8 |
| 10 年後 中立 | 105 | 117 | 123 | 11 |
取り方:製品別の開示(安全部品は前期から減少)から売上を約90億円と推定し、年100億個・1個あたり90銭とした(推定)。営業利益は抵抗器より少し高い利益率(約9%)と置いた。個数は実質で、車載の電動化で保護・検出の部品が増える。単価は名目。
IC・その他
通信・電源向けのICなど。売上は小さく、直近は減収が続く。
| 数量IC・その他の年間出荷個数(億個、推定) | 価格1 個あたり平均単価(銭・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.0 | 1,060 | 53 | −2 |
| 10 年後 中立 | 4.5 | 1,357 | 61 | 0 |
取り方:製品別の開示でICは直近で14.9%減、その他は16.8%減。売上を残りの約53億円と推定し、年5億個・1個あたり約1,060銭とした(推定)。営業利益は赤字とした。
リスクと懸念
中国勢の価格攻勢
チップ抵抗器は世界の上位5社で約54%、残りは中国勢が細かく占める。補助金を背景にした安値が、汎用品から車載の中位品へ広がれば、KOAの単価と数量の両方に響く。中国市場でのシェア低下は中計の第1段階でも未達の要因だった。
材料高の転嫁の遅れ
銀・ルテニウム・パラジウムなどの貴金属高で材料費が膨らむ。当初の今期予想では、材料高だけで営業利益を22億円押し下げる見込みだった。顧客との交渉から売上への反映まで半年から1年かかり、転嫁が進まなければ利益率は戻らない。
受注の反動
2026年1〜3月の受注は200億円台と2021年度以来の水準になったが、一部は中東情勢を受けた顧客の在庫積み増しだった。在庫が消化される局面では受注が落ち、今期の増収・増益の前提が崩れる。
新工場の立ち上げと固定費
マレーシアの新工場は2026年10月に出荷を始める予定で、顧客の認証次第で遅れうる。立ち上がるまで減価償却と人件費の固定費だけが先行し、当初の今期予想では固定費が11億円増える形だった。稼働率が上がらなければ、投資の回収が長引く。
自動車の需要の振れ
売上の52%が自動車向けで、新車販売が下振れれば直撃を受ける。中計の第1段階でも、新車販売の下振れが未達の原因に挙がった。電動化で1台あたりの個数は増えるが、台数の落ち込みは相殺しきれない。
為替の影響
上方修正後の予想は1ドル159円を前提にしている。円高に振れれば、為替による利益の上積みが消える。海外売上の比率が高く、為替は利益に直結する。
今後の分かれ目
- AIサーバー向けの販売が年20%を大きく上回って伸び、マレーシアの新工場が計画どおり稼働したら
- 10年の楽観・やや楽観の確率を上げ、抵抗器の数量と利益率の前提を引き上げる。
- 貴金属高の転嫁が全面的に通り、営業利益率が8%を超えて定着したら
- 中立の利益率前提を上げ、価値を見直す。
- 中国勢が車載の先端品でも採用を広げたら
- やや悲観・悲観の確率を上げ、価格前提を下げる。
- 在庫調整で受注が落ち、売上が前年を割り込んだら
- 今期の増益は一過性とみて、中立の出発点を下げる。
- 自社株買いの大型化や持ち合い株の売却など、資本政策が動いたら
- 資本の効率が改善する可能性があり、倍率の前提を見直す。
- 他社から買収の提案が出たら
- 純資産を下回る水準では、買収価格が価値の下限に近づく。悲観側の確率を下げる。
見ておくもの
- 材料高の価格転嫁の進み(営業利益率が8%を超えるか)
- AI関連の販売額(2025年度36億円からの伸び)
- マレーシア新工場の出荷開始(2026年10月)と稼働率
- 受注と出荷の比(BBレシオ)
- 中国市場でのシェアと現地の値下げ
- 中計2027の目標(ROE6.2%・営業利益74億円)の達成度
倍率と資本コストの決め方
数量×単価をセグメントごとに置き、10年の利益から資本コスト8.8%で倍率を決めた。利益の質が弱いので、中立のPERは上限(1÷k)の約8割にとどめた。株価の水準は見ていない。この計算は株価が倍でも半分でも変わらない。AIの需要や原材料高の転嫁は、確率の配分で表した。新リース会計基準でBSの形が変わっても、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。悲観は稼ぐ力(純利益÷k)を上限に、倍率をやや悲観の約95%(7.6 倍)に置いた。過去の倍率や自己資本の厚さは根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→11.85 倍・やや楽観 PER 9.5→11.36 倍・中立 PER 9→11.36 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality +1.3%を足して8.8%とした。村田製作所(7.5%)より値決め力と循環の耐性が弱く、太陽誘電・アルプスアルパインと並ぶ位置にある。中国勢との競争やAI向け投資の外れは、k に足さず筋書きと確率で表した。