結論
HPCシステムズは、研究機関や企業に高性能計算機を納め、産業装置に組み込む専用コンピュータを設計・製造する会社だ。計算需要の長期的な拡大は本物だが、今の時価総額118億円は割高と判断する。最大の理由は、計算需要が伸びることと、この会社が長年にわたり高い利益率と資本効率を維持することが同じではないからだ。
2026年4月に発表した138億円のHPCサーバー受注は、会社の規模から見て極めて大きい。2027年6月期と2028年6月期に売上計上する予定であり、短期の業績を一変させる可能性がある。しかし、その顧客名は非開示で、同規模の注文が毎年続く証拠もない。2036年の価値を測るうえでは、受注残の消化と、その後に繰り返し得られる仕事を区別しなければならない。
さらに、2026年6月末の純有利子負債は70億円に膨らんだ。大口案件に必要な部材を先に買ったためだが、借入金の増加は単なる会計上の出来事ではない。顧客の検収が遅れ、GPUやメモリの価格が変われば、利益より先に資金繰りが傷む。大型受注の成功には業績と財務を改善する力がある一方、失敗した場合の損失も小さくない。
中立の10年後は、GPUサーバーと産業用コンピュータの販売数量が増え、売上高が約157億円になる筋書きだ。それでも、値決め力と増分資本利益率が強固な独占企業ほど高くない以上、将来利益に無制限の値段は払えない。技術への期待を否定するのではない。期待の実現に必要な条件が多く、現在の価格では、その不確実性を引き受ける株主に十分な安全域が残らないという結論である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の視点では、最初に問うべきは「この会社の顧客は10年後も同じ仕事にお金を払うか」である。答えはおそらく、はい、だ。化学反応の計算や工場の画像検査はなくならない。AIの普及は計算機そのものを不要にするのではなく、計算の行われる場所と顧客が人手に払う料金を変える。物理的な計算機と産業装置向けコンピュータには需要が残る。
しかし、必要とされる事業が、必ずしも優れた投資対象になるわけではない。HPCシステムズには用途に応じた構成設計や試験の蓄積がある。だが、GPUの性能と供給、メモリの調達価格、研究予算、顧客の設備投資は同社の支配下にない。特に大型案件の受注額そのものには堀がない。再現性のある利益より先に売上だけが増えた会社に対し、長期株主は厳しい条件を付けるべきだ。
オーナー利益を見ると、2026年の純利益約4.5億円は、そのまま自由に配れる現金ではなかった。発注済み部材が大量に在庫へ積み上がり、営業活動の資金収支が大きなマイナスになったからだ。近い将来に納入と回収が完了すれば、この資金需要は逆転する可能性がある。だからこそ単年の資金流出を永久の損失と決めつけるのも誤りだが、回収が終わるまでは株主のものになる現金として評価しない。
経営者については、増配や自社株買いを実行してきたことを評価する。一方、財務条項の付いた多額の借入を抱えている時期には、利益の成長よりも元本の回収を優先してほしい。成長に資本を再投資したとき、その追加資本が資本コストを超える利益を生み続けているかが最終的な判定基準になる。現時点で技術力の証拠はあるが、10年続く高い増分ROICの証拠はまだ十分でない。十分な安全域のない価格で、その不足を楽観によって埋めるべきではない。
何で稼ぐ会社か
会社の仕事は、計算機を必要とする顧客に、使える状態まで仕上げた計算環境を渡すことだ。2026年6月期のHPC事業は売上高約50億円、営業利益約4.7億円だった。大学、研究機関、素材・化学・製薬・製造業の研究開発部門などに、GPUサーバー、科学技術計算システム、計算化学ソフトウェアを提供する。主要な仕入先には米国のSuper Micro Computerがあり、基幹部品と計算機の調達を外部の製造企業に依存している。
もう一つのCTO事業は、装置メーカーが必要とする専用仕様のコンピュータを作る。半導体製造・検査装置、画像検査設備、物流機械、工場の制御装置などが用途だ。顧客の指定する部品構成や安全規格に合わせ、設計、試作、検証、組み立て、継続供給を請け負う。2026年6月期は約7,018台を生産し、売上高約29億円、営業利益約2.5億円を稼いだ。HPCが研究者の計算を支えるのに対し、CTOは製造現場で実際に動く装置の一部分を担う。
HPCの内部には経済性の異なる仕事が混在する。物理的なサーバー販売はGPUやメモリの調達価格に利益が左右される。受託計算、システム構築、コンサルティングは技術者の工数に依存する。計算化学ソフトウェアのM-EVO、GRRM、ChemParkなどは知的財産や継続利用の価値を持つものの、販売数量や解約率が十分には開示されていない。そこで将来予測ではHPCをさらに三つに分けた。ただし、この内訳は会社公表の独立したセグメントではなく、開示されたHPC売上高と利益に一致するように組み立てた分析上の推計である。
2026年の顧客別開示では、萩原テクノソリューションズ向けが売上の12%を占めた。138億円案件については発注者も個別の利益率も分からない。顧客との技術的な関係は価値を生むが、案件の採算と回収条件を株主が十分に見通せないことは、販売規模が急拡大する局面ほど重くなる。
優良さと弱いところ
競争力の中心は、研究者や装置メーカーが抱える細かな要求に合わせてハードウェアとソフトウェアを組み合わせる能力だ。大量生産された一般的なコンピュータと異なり、顧客は演算性能、冷却、消費電力、周辺装置、長期供給、安全規格への対応を求める。これらを一緒に検証して納める技術は、単純な部品販売より模倣しにくい。導入後の環境を別の会社に移す際にも試験や再設定が必要になるため、一定の乗り換え費用がある。
ただし、その強みを幅の広い堀と呼ぶには証拠が足りない。会社は主要製品の継続利用率、解約率、同一顧客への値上げ率、案件ごとの投下資本利益率を十分に開示していない。大手のデル、HPE、富士通、NECは調達規模と保守網で優位に立つ。産業用コンピュータではAdvantechやKontronなどが競う。大型案件では、顧客が価格や納期で供給者を選び直す余地が大きい。
CTO事業には、部材価格の上昇に対して価格改定を進め、2026年6月期の利益を改善した実績がある。これは評価すべき値決め力の証拠だが、全社的に物価を超える値上げが長く通るとまでは言えない。また、2026年6月期は営業利益が約7億円に達した一方、営業活動の資金収支は約78億円の流出だった。大型案件のための在庫増加によるもので、利益と自由に使える現金には大きな隔たりがある。
過去のROEは高く、2019年以降の中央値は約19%だ。しかし、2026年6月末の自己資本は約24億円に対し、純有利子負債が約70億円ある。大きな受注を処理するための資金を借入で賄えば、見た目のROEは高くなりやすい。増分のROICを確かめるには、納入後に在庫が現金へ戻り、借入が減るところまで見る必要がある。技術力は認めるが、資本をほとんど必要としない優良なソフトウェア会社として扱うべきではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要そのものには追い風がある。AIモデルの学習と推論、製造業の設計シミュレーション、素材探索、創薬、半導体の研究開発では計算量が増え続けている。会社が2026年9月に示した資料では、国内HPC市場は2023年の約1,155億円から2027年の約1,670億円へ、国内産業用コンピュータ市場は同じ期間に約1,438億円から約1,792億円へ拡大する見通しだ。ただし、これは会社が複数の調査機関の推計を整理した数字であり、隣接するAI、化学計算、工場自動化の市場とは重複する。市場規模を単純に足してはいけない。
HPC事業の現在の売上約50億円を国内HPC市場の大きさと比べると、参考となる売上比率は約3%前後である。CTO事業も国内産業用コンピュータ市場に対して約2%弱の規模だ。ただし、会社には輸入システム、計算サービス、独自ソフトウェア、特殊な装置向け製品が混在するため、これらは厳密な製品別シェアではない。数量予測では国内市場の実質的な拡大に、顧客数や採用機種の増減を重ねて考える。
競合には規模の差がある。HPCではDell Technologies、HPE、富士通、NEC、GPUやサーバーの供給元であるNVIDIA、Super Micro Computerが重要だ。CTOではAdvantech、Kontron、ADLINK、コンテックなどが選択肢となる。Advantechの年次資料は、2024年の世界産業用PC市場について自社シェア約41%とのOMDIA推計を掲げる。ただし、その世界市場の定義はHPCシステムズの国内CTO売上と一致しないため、直接のシェア比較には使えない。大手の生産規模が部品調達や価格競争の障壁になることを示す参考値だ。
長期で怖いのは、需要の増加が必ずしも販売者の利益増加にならないことだ。GPUは世代交代が速く、計算性能当たりの価格は下がりやすい。クラウド事業者が顧客を吸収すれば、研究機関が自らサーバーを保有する必要性も変わる。他方、データの機密性、低遅延、装置との直接接続は、オンプレミス計算機と産業用組み込みPCの存在理由を残す。10年後に必要なのは計算そのものより、特定用途に最適化された現物と運用環境を安定して納める能力だ。市場は広がり得るが、そこで取れる取り分は別の問題である。
資本政策と M&A
2026年9月公表の中期経営計画「Vision2027」は、2027年6月期の売上高目標を当初の86億円から104億円へ引き上げ、営業利益10億円超、営業利益率10%以上、ROEの2桁維持を掲げた。株主資本配当率であるDOEの目安も従来の4%から5〜6%へ引き上げている。配当を増やすという数字の約束はあるが、将来の自社株買いについては機動的に実施する方針であり、実施金額の確約はない。
過去の還元にも実績がある。2025年11月には約5.3億円で約29万株の自己株式を取得し、配当も段階的に増やした。こうした行動は少数株主にとって好ましい。ただし、2026年6月期末の自己資本は前年から減少しており、資金繰りの余裕が豊富な状態での還元とは言えない。購入済みの自己株式は現在の株数に反映済みなので、今後10年の還元にもう一度数えない。
最優先の資本配分課題は、138億円の受注に必要な在庫を売上債権へ、さらに現金へ変え、借入金を返済することだ。2026年6月末の棚卸資産は約89億円に達し、借入金も約78億円となった。大口受注に対応する特別当座貸越契約には、2期連続赤字を避けることや、純資産を前期末の75%以上に保つことなどの財務条項が付く。案件採算が崩れれば、成長投資だけでなく配当政策も制約される。
2026年9月にはドイツの産業用IT企業TL Electronicへの少数持分出資と業務提携を発表した。海外販路を得る取り組みとして理解できるが、出資予定額は約1.4億円、持分19.8%の段階であり、大幅な利益拡大を先取りしない。大型M&Aによる売上の上積みは中立に含めず、買収するとしても投下資本に対する利益と希薄化の有無を別に評価する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
同社には、大手の総合IT企業では取りにくい専門案件を一社で仕上げる能力がある。研究者にとって重要なのは、サーバーの価格だけではない。解析ソフトウェアが正しく動くこと、計算が速いこと、機器の不具合を一緒に解決してくれることだ。HPCシステムズは計算化学の知識、GPUシステムの構築、冷却技術、産業用PCの設計・製造を持つ。研究の現場と製造の現場をつなぐこの組み合わせは、通常のハードウェア販売会社とは異なる。
2026年4月の138億円受注は、その総合能力に需要がある証拠とも読める。受注した仕事を利益を保ちながら納められれば、金融機関への依存度は下がり、顧客からの信用も上がる。2027年と2028年の売上拡大は単発で終わらず、保守、増設、更新、関連する計算環境の販売へつながる可能性がある。設備を納めるだけでなく、その後の運用にも関われば、顧客を失いにくくなる。
CTO事業も魅力的だ。産業装置に一度採用されたコンピュータは、信頼性試験や安全規格の関係で簡単には変更されない。半導体検査、工場の画像認識、自動搬送、産業用ロボットでは、AIを装置のそばで動かす需要が増える。2026年には部材価格を価格へ転嫁し、採算を改善した。HPCで磨いた計算技術をCTOへ移し、CTOの量産・品質管理技術をHPCに使うことで、互いの競争力を高める余地がある。
この姿が定着すれば、2036年にはHPCシステムの納入が継続的に増え、CTOの年間生産も現在を大きく上回る。海外企業との提携が販路を広げ、研究機関だけでなく民間企業から安定した受注を得られる。財務が回復した後に増配と自社株買いが続けば、現在の株主に帰属する価値も増える。これらは実現可能性のある上振れだが、複数の条件を同時に達成する必要がある。
慎重な見方
今の姿を、高収益なソフトウェア企業と取り違えてはいけない。2026年6月期の売上の大半は、外部から調達したハードウェアと産業用コンピュータの供給に関係する。NVIDIAやサーバーメーカーは部品の性能と価格で強い交渉力を持ち、顧客側にもデルやHPEなどの選択肢がある。間に入る企業が価格を上げられる範囲は限られる。大口案件を取れたとしても、それだけで再現性のある利益率が保証されるわけではない。
特に気になるのは、受注と同時に財務の姿が一変したことだ。2026年6月末の棚卸資産約89億円は、前年の売上高を上回る規模である。営業活動の資金収支は約78億円の流出となり、その資金を多額の借入で賄った。受注先は非開示で、納入の検収条件や代金回収条件も詳しくは分からない。契約が予定通り進めば問題は小さくなるが、納入遅延、仕様変更、顧客都合の延期が起きると、部材価格の変動と利払いが同時に会社を傷める。
長期では、計算機の供給構造そのものも変わり得る。クラウドのGPU利用料が下がれば、研究者は専用サーバーを買う代わりに計算能力を借りる。大手メーカーが研究用途向けの構成・導入サービスを標準化すれば、独立系企業の差別化は弱まる。AIエージェントがシステム設定、計算ジョブの管理、コードの最適化、技術相談を自動化すれば、人の工数で請求していた仕事も減る。専門ソフトウェアは残っても、人が画面を操作する従来の契約数が維持されるとは限らない。
そして、資本の負担が軽くならなければ、成長しても株主の利益は増えにくい。GPUとメモリの更新が速い事業では、古い在庫を持ったままでは次の案件に投資できない。今は特別な大型受注があるため将来の数字が良く見えるが、2036年にも同じ規模の顧客が毎年現れると考える根拠は薄い。最も厳しい場合は、価格競争と在庫損失で資本を失い、銀行との契約条件が経営の自由を奪う。株主が保有するのは受注額ではなく、すべての取引先と金融機関への支払いを終えた後の残余価値である。
どちらに重みを置いたか
需要の長期的な成長と、用途に特化した技術力では強気の主張に説得力がある。一方、138億円の受注が継続的な利益に変わるかは未確認であり、70億円の純負債は現実に存在する。今回は慎重な見方を優先し、やや悲観と悲観の確率を合計44%とした。上振れの可能性も十分に認めるが、大口案件の納入、債権回収、借入返済、再受注という段階をすべて通過する前から、強い堀を持つ企業の評価を与えるのは早い。AI代替は対象業務の数量と長期成長率に反映済みであり、確率や資本コストに同じ理由を重ねていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,398 円93 億円(+ 還元の換算額還元の合計 616 円24 億円)。 今の値に割り戻すと 1,414 円55 億円、今との差 −51.2%、 期待の年率 +0.5%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 7,627 円295 億円 | 1,500 円58 億円 | +215.4% | +13.7% | 913 円35 億円 |
| やや楽観 | 16% | 4,799 円186 億円 | 1,086 円42 億円 | +103.3% | +8.3% | 942 円36 億円 |
| 中立 | 30% | 2,448 円95 億円 | 543 円21 億円 | +3.4% | +0.4% | 897 円35 億円 |
| やや悲観 | 28% | 362 円14 億円 | 375 円15 億円 | −74.5% | −15.8% | 206 円8 億円 |
| 悲観 | 16% | 199 円8 億円 | 155 円6 億円 | −87.7% | −21.9% | 57 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,398 円93 億円 | 616 円24 億円 | +4.2% | +0.5% | 3,015 円117 億円 |
今の株価時価総額 2,894 円112 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 大型案件の実績が継続受注に変わる 利益 23 億円 · PER 12.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 7,627 円295 億円
2027年と2028年の大型サーバー案件を予定通り納入し、顧客からの代金回収を終える。借入金が圧縮され、受注先からの追加注文と紹介案件が増える。高密度GPUの冷却、電力最適化、用途別の検証が評価され、研究機関と民間企業の大型設備投資で継続的に選ばれるようになる。国内HPC市場の実質的な拡大に加え、会社自身も採用される割合を増やす。
産業用PCでは、半導体検査、物流の自動搬送、工場のエッジAIに採用される機種が増え、生産台数が大きく伸びる。顧客にとって装置全体の再認証は負担となり、品質を維持した継続供給が長期の取引関係を支える。ドイツ企業との提携も販路拡大に寄与する。技術者の受託業務やソフト利用はAIエージェント代替で数量が大幅には伸びないが、物理的な機器の販売がそれを上回る。大型買収を前提にせず、利益率と資本効率が改善する。
経営は大口受注の利益を借入返済に優先して使い、その後はDOE方針に沿う配当と自社株買いを進める。2036年には現物の納入・保守を中心とした強い企業になり、受注額だけでなく現金の回収力も評価される。堀は独占ではないが、案件を重ねて広がった顧客基盤が利益を守る。
- HPC計算基盤・GPUサーバー:数量 250(年間のHPCシステム納入セット相当数。会社の実際の納入件数は非開示であり、比較可能な標準化セットに換算した推定数量)× 価格 0.77(システム1セット相当の売上高、億円)→ 売上 193 億円・営業利益 22 億円。標準化システム250セット相当、単価は基準期比1.54倍。大規模案件の継続、構成の高度化、調達力改善がすべて実現する上振れ。
- HPC受託計算・SI・コンサルティング:数量 1,750(請求可能な技術者日相当数、日・年。開示数量ではなく推定)× 価格 0.00(技術者日当たり売上高、億円)→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替を考慮し、楽観でも工数数量を現状以下に抑える。単価は物価10年分の1.34倍。
- 計算化学ソフトウェア・クラウド:数量 200(年間契約相当数。複数ライセンスを等価な契約数へ換算した推定値)× 価格 0.01(年間契約相当当たり売上高、億円)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量は現状と同じ。AIエージェントが操作を代行する圧力を踏まえ、契約相当単価は現状の約1.15倍にとどめる。
- CTO産業用カスタムコンピュータ:数量 16,000(年間生産台数、台。基準期7,018台は有価証券報告書の実数)× 価格 0.01(生産1台当たり売上高の近似値、億円)→ 売上 101 億円・営業利益 13 億円。半導体検査、産業用AI、装置組み込み案件で採用機種が拡大。単価は高機能化を含めて現状比約1.52倍。
倍率:k9.0%、2036年ROE=23.1÷101.1=22.85%。通常の堀として超過ROEの2分の1が新規投資にも残るため、RONIC=9.0%+0.5×(22.85%−9.0%)=約15.92%。g_long2.3%を用い、正当化PER=(1−2.3%÷15.92%)÷(9.0%−2.3%)=約12.77倍。楽観側の式による上限をそのまま用いる。利益には借入金利の正常化を織り込む。
確率:138億円案件の納入成功を、信頼性の高い継続受注や海外展開へつなげられる場合。GPU調達、冷却設計、システム構築、産業用PCの強みが同時に生きる必要があり、上振れは大きいが成立条件も多い。
やや楽観 16% HPC・CTOともシェアを着実に広げる 利益 15 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,799 円186 億円
138億円のサーバー受注はほぼ予定通りに進み、資金回収後に借入金が減る。短期の売上急増はそのまま続かないが、実績を得たことで民間の研究所や企業から中規模の設備更新案件を繰り返し受注する。GPUの計算能力は高まり、1つの構成で提供できる仕事が増えるため、高度なシステムを選んでもらえる。一方で、デルやHPEが大手顧客の調達を押さえ、価格競争は残る。
CTOでは、顧客装置への採用実績を積み上げる。品質と長期供給への信頼が取引継続を支え、半導体製造・検査装置に加えて物流や産業用AIで販売台数が増える。海外企業との提携は国内中心の事業を補うが、大型買収による売上の上積みは見込まない。受託計算やSIではAIによる作業の自動化が進み、会社は成果の高度化で一部の単価を維持するものの、従来の工数を増やして売上を伸ばすことは難しくなる。
増益によって配当と機動的な自社株買いの双方に資金を振り向ける余力が生まれる。ただし、新規案件の部材調達には依然として運転資金が必要であり、ソフトウェア企業のような高い現金転換率にはならない。長期の強みは顧客との関係と現物の供給能力であり、特別な独占力ではない。
- HPC計算基盤・GPUサーバー:数量 200(年間のHPCシステム納入セット相当数。会社の実際の納入件数は非開示であり、比較可能な標準化セットに換算した推定数量)× 価格 0.72(システム1セット相当の売上高、億円)→ 売上 144 億円・営業利益 14 億円。納入200セット相当、平均単価0.72億円。大口受注後も複数顧客の設備更新需要を獲得する。
- HPC受託計算・SI・コンサルティング:数量 1,450(請求可能な技術者日相当数、日・年。開示数量ではなく推定)× 価格 0.00(技術者日当たり売上高、億円)→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替で請求工数は現状の0.83倍。中立より成果への付加価値を付けられる場合。
- 計算化学ソフトウェア・クラウド:数量 190(年間契約相当数。複数ライセンスを等価な契約数へ換算した推定値)× 価格 0.01(年間契約相当当たり売上高、億円)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。契約数量は0.95倍、単価は約1.12倍。楽観でも継続率の未開示を考慮する。
- CTO産業用カスタムコンピュータ:数量 13,500(年間生産台数、台。基準期7,018台は有価証券報告書の実数)× 価格 0.01(生産1台当たり売上高の近似値、億円)→ 売上 80 億円・営業利益 9 億円。生産13,500台、単価は現状比約1.42倍。産業用AIと検査装置への採用が伸びる。
倍率:k9.0%、ROE=14.9÷79.3=18.79%。超過ROEの残存割合0.5からRONIC約13.89%、長期名目成長率g2.3%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=約12.45倍の上限そのもの。会社の過去や現在の市場PERは使わない。
確率:大型受注をきっかけに実績と顧客基盤を積み増す筋書き。物理的な計算需要は強いが、GPU部材の調達価格と競合の大きさを考慮し、利益率の改善には限度を設ける。
中立 30% 計算需要は増えるが、普通の専門ハードウェア企業として成熟 利益 8 億円 · PER 11.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,448 円95 億円
大口サーバー案件は2027年と2028年の業績を押し上げるが、その後は大型の特需が毎年続くわけではない。納品・回収に伴って在庫と借入金が正常化し、顧客基盤は従来より広がる。2036年には国内HPC市場の実質規模が今より大きくなり、同社の設備供給件数も増える。しかしデル、HPE、富士通、NECなどの大手が調達規模を生かして競争するため、市場全体の成長を上回る高い利益率は長続きしない。
CTOでは半導体製造・検査、画像認識、工場のエッジAI向けに採用が増える。国内産業用PC市場の実質的な拡大に加え、用途別の製品開発によって採用機種を少し増やす。単価の上昇には10年間の物価上昇を織り込むが、それを上回る大幅な値上げは期待しない。既存顧客の継続供給に支えられる反面、世界の大手企業との価格差が競争条件を決める。
受託計算とSIはAIエージェントによる設定、計算準備、技術支援の自動化で請求工数が縮む。ソフトウェアも一部の操作が代理実行され、契約数と実質単価に下押し圧力がかかる。ただし、会社の売上の中心は現物のコンピュータであり、全社の売上がそのまま縮小するわけではない。利益は緩やかに増えるが、成長のための運転資金と研究開発費も必要になる。借入金の正常化が進んでも、2036年のROEは過去の高水準を下回る。
- HPC計算基盤・GPUサーバー:数量 140(年間のHPCシステム納入セット相当数。会社の実際の納入件数は非開示であり、比較可能な標準化セットに換算した推定数量)× 価格 0.67(システム1セット相当の売上高、億円)→ 売上 94 億円・営業利益 8 億円。実質数量は現状比1.56倍、単価は物価3%を10年積んだ1.34倍。国内HPC市場の実質成長と小幅の顧客基盤拡大。
- HPC受託計算・SI・コンサルティング:数量 1,138(請求可能な技術者日相当数、日・年。開示数量ではなく推定)× 価格 0.00(技術者日当たり売上高、億円)→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の人月・工数型。数量1138÷1750=0.65倍、単価1.30倍で指定範囲内。
- 計算化学ソフトウェア・クラウド:数量 160(年間契約相当数。複数ライセンスを等価な契約数へ換算した推定値)× 価格 0.01(年間契約相当当たり売上高、億円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の利用課金・操作画面型。数量0.80倍、価格1.10倍。記録の正本に当たる堀の証拠は未確認。
- CTO産業用カスタムコンピュータ:数量 10,600(年間生産台数、台。基準期7,018台は有価証券報告書の実数)× 価格 0.01(生産1台当たり売上高の近似値、億円)→ 売上 59 億円・営業利益 6 億円。10,600台で実質数量は約1.51倍、単価は現状比約1.34倍。産業用PC市場の成長と採用機種の小幅拡大。
倍率:k9.0%、2036年ROE=8.1÷66.3=12.22%。堀はnormalなのでRONIC=9.0%+0.5×(12.22%−9.0%)=約10.61%。2036年以降のg_long2.3%から正当化PER=(1−2.3%÷10.61%)÷(9.0%−2.3%)=約11.69倍。中立は上限そのもの。営業利益14.41億円に対する純利益8.1億円は、過去の純利益÷営業利益の中央値0.66から、資金調達の利息・手数料の平常化負担を控除したもの。
確率:AI・研究開発・産業自動化が実質的な需要を増やす一方、調達規模で勝る競合が存在する。大型受注は短期の業績に効くが、2036年の毎年の売上には同じ契約が繰り返されるとは見込まない。
やや悲観 28% 競争激化で設備販売の成長が鈍る 利益 1 億円 · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 362 円14 億円
138億円の大型注文は大半を納められるものの、部材価格の変動や検収の遅れにより当初期待した利益は残らない。計算機市場は拡大しても、顧客は大手の調達条件とクラウドの料金を比較するようになり、HPCシステムズの受注は伸び悩む。かつて獲得した大口顧客が、次の更新時にはデルやHPEなどの別の供給者を選ぶ場面が増える。サーバーの構成技術は残るが、高付加価値の専門案件ばかりを選べなくなる。
CTOも顧客からの値下げ要求を受ける。装置への採用に伴う切り替え費用は存在するため、既存顧客が一斉に離れるわけではない。しかし、部材を安く調達できる大手企業や海外メーカーとの競争が強まり、新しい採用機種の獲得が難しくなる。生産台数は2026年からわずかな増加にとどまり、名目売上の増加の多くは物価上昇によるものになる。
受託計算とSIはAIエージェントが技術者の作業を一部代替し、請求可能な工数が減る。ソフトウェアは研究者が自分で操作する画面の価値が下がり、料金を大きく引き上げられない。営業利益は残るが、借入金利と設備・部材の更新費用を吸収すると純利益は細くなる。配当は財務健全性を守る範囲へ抑制し、追加の大型買収や自社株買いは見送る。事業は存続するが、株主にとっての稼ぐ力は大きく低下する。
- HPC計算基盤・GPUサーバー:数量 85.0(年間のHPCシステム納入セット相当数。会社の実際の納入件数は非開示であり、比較可能な標準化セットに換算した推定数量)× 価格 0.64(システム1セット相当の売上高、億円)→ 売上 54 億円・営業利益 2 億円。実質数量は現状比0.94倍。単価は1.28倍にとどまり、競争によって物価上昇分も十分転嫁できない。
- HPC受託計算・SI・コンサルティング:数量 1,080(請求可能な技術者日相当数、日・年。開示数量ではなく推定)× 価格 0.00(技術者日当たり売上高、億円)→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。AI代替で工数は0.62倍、単価は1.25倍。人材維持費により利益率が低下。
- 計算化学ソフトウェア・クラウド:数量 150(年間契約相当数。複数ライセンスを等価な契約数へ換算した推定値)× 価格 0.01(年間契約相当当たり売上高、億円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。契約相当数0.75倍、単価1.06倍。AIによる利用形態の変化で料金改定が難しい。
- CTO産業用カスタムコンピュータ:数量 7,600(年間生産台数、台。基準期7,018台は有価証券報告書の実数)× 価格 0.01(生産1台当たり売上高の近似値、億円)→ 売上 39 億円・営業利益 2 億円。7,600台へ微増するが、値段は物価に届かず、部材と検証の費用が利益率を圧迫。
倍率:2036年ROE=1.4÷39.3=約3.56%でk9%に届かない。利益を再投資しても超過収益を生まないため、正当化PERは稼ぐ力による1÷k=11.11倍が上限。価格競争と運転資金の拘束が続く事業として10倍の稼ぐ力を評価する。床の資産価値の推計7.3億円も上回るが、過去のPBR水準は使用しない。
確率:下に寄せる理由:2026年末にかけて138億円案件を実行する際、非常に大きな棚卸資産と銀行借入を抱えている。大手の価格競争、案件採算の低下、工数型サービスのAI代替が重なる場合は十分にあり得るが、会社全体が消滅するほどの事態ではない。
悲観 16% 在庫損失と顧客喪失で事業の優良さが崩れる 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 199 円8 億円
2026年に始まった大口サーバー案件の一部で、仕様変更、納期遅延、部材価格の変動が同時に発生する。契約全体が直ちに無価値になるわけではないが、想定した粗利益が大きく削られ、余った部材には評価損が生じる。融資契約の財務条項を意識した資金繰りを迫られ、銀行との条件交渉や保有資産の売却を行う。受注額の大きさはむしろ経営の自由を奪う要因になる。
顧客は次世代GPUへの更新時に大手サーバー供給者へ移り、HPCシステムズは構成の難しい案件でも価格を十分に確保できなくなる。販売数量は2026年を大きく下回る。研究者が計算をクラウドへ移す動きも進む。受託計算やSIはAIエージェントによって工数の価値が下がり、従来の営業体制を維持するほど赤字が増える。ソフトウェアも独自データや規制上の記録の正本に当たる強い堀を証明できず、一部の契約を失う。
CTOでは半導体設備投資の谷に加えて海外メーカーとの競争が激しくなる。顧客の一部は残るものの、年5,200台程度の供給では設計・検証体制の固定費を賄いきれない。2036年の営業損益は赤字となり、10年間では在庫損失や事業縮小費用によって累積純損失が発生する。配当は早期に減額・停止され、株主還元の総額も限られる。事業が存続していても、かつての専門性は高い収益を守る堀ではなくなっている。
- HPC計算基盤・GPUサーバー:数量 50.0(年間のHPCシステム納入セット相当数。会社の実際の納入件数は非開示であり、比較可能な標準化セットに換算した推定数量)× 価格 0.58(システム1セット相当の売上高、億円)→ 売上 29 億円・営業利益 0 億円。納入50セット相当へ縮小。旧仕様の値引きと調達競争で価格は物価に届かず、営業利益率はほぼゼロ。
- HPC受託計算・SI・コンサルティング:数量 700(請求可能な技術者日相当数、日・年。開示数量ではなく推定)× 価格 0.00(技術者日当たり売上高、億円)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。工数は現状比0.4倍。AI代替と顧客喪失が重なり、技術者の固定費を吸収できない。
- 計算化学ソフトウェア・クラウド:数量 100(年間契約相当数。複数ライセンスを等価な契約数へ換算した推定値)× 価格 0.01(年間契約相当当たり売上高、億円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。契約相当数は半減。価格は現状並みで、開発・維持費を回収できない。
- CTO産業用カスタムコンピュータ:数量 5,200(年間生産台数、台。基準期7,018台は有価証券報告書の実数)× 価格 0.00(生産1台当たり売上高の近似値、億円)→ 売上 23 億円・営業利益 −1 億円。生産5,200台へ縮小。単価は名目でも約1.09倍にとどまり、固定費と品質維持費を賄えない。
倍率:2036年の純利益はマイナスで、永続利益を前提とするPERでは評価できない。2026年6月末の自己資本24.1億円に対し、在庫・売掛金・その他資産の換金価値と全負債の返済を考えた残余価値7.3億円を床の目安とする。7.3÷24.1=約0.303であり、これをやや上回る0.32を現在の自己資本に掛けた7.712億円を評価額とする。2036年に積み上がった自己資本13.1億円には掛けず、過去の谷のPBRも根拠にしない。
確率:下に寄せる理由:大口注文に対応した棚卸資産と借入金の金額が会社の自己資本に比べて極端に大きい。顧客との検収や回収が大幅に遅れ、技術世代交代と在庫評価損が重なる場合は利益だけでなく純資産も減る。倒産を前提とする筋書きではないが、厳しい再建を必要とする事態とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
HPC計算基盤・GPUサーバー
研究機関や企業向けのGPUサーバー、計算クラスタ、周辺機器とその構築・導入。HPC事業のうち、現物の調達・納入を中心とする部分を分析上で分離した。
| 数量年間のHPCシステム納入セット相当数。会社の実際の納入件数は非開示であり、比較可能な標準化セットに換算した推定数量 | 価格システム1セット相当の売上高、億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 90.0 | 0.50 | 45 | 4 |
| 10 年後 中立 | 140 | 0.67 | 94 | 8 |
取り方:会社開示のHPC売上50.00558億円から、別途推計した受託計算・SI3.50億円、ソフトウェア・クラウド1.50558億円を除いた45.0億円をハードウェア中心の売上と推定した。年間の納入台数と平均単価は会社非開示。産業技術総合研究所による2024年12月のHPCシステムズからのGPU計算サーバー1式の落札価格6,571.4万円(税込)を実例とし、案件規模に大きな差があることを考慮してモデル上の平均売上を1セット0.5億円、換算納入数を90セットとした。これは公表販売台数ではない。実際には138億円規模の大型案件も存在するため、標準化セットは契約件数と一致しない。市場比較は2026年国内HPC市場約1,530億円の参考推計に対して物理機器売上約3%とする。
HPC受託計算・SI・コンサルティング
計算環境の設定、コードの高速化、計算化学の技術支援、受託計算、システム構築など、人の専門工数に価値が結び付く仕事。AIエージェント代替の人月・工数型に分類する。
| 数量請求可能な技術者日相当数、日・年。開示数量ではなく推定 | 価格技術者日当たり売上高、億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1,750 | 0.00 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,138 | 0.00 | 3 | 0 |
取り方:会社はHPC内の受託計算・コンサルティング・SI売上を金額で分離開示していない。2026年のHPC売上約50億円のうち3.50億円を、年間約1,750技術者日、1日約20万円の仕事に相当すると仮定した分析用推計。現実の請求方式には案件一括料金等も含まれる可能性があり、すべてが日単価契約との主張ではない。2026年時点の137人という全社従業員規模とも著しく矛盾しない水準に限定した。AIエージェント代替の型では中立の2036年工数を現状の0.55〜0.75倍、単価を物価上昇分の1.34倍以下とする。
計算化学ソフトウェア・クラウド
M-EVO、GRRM、ChemPark等の計算化学関連ソフトウェア・クラウド利用。契約や利用画面の価値に依存する部分を保守的に席・利用課金型へ分類する。
| 数量年間契約相当数。複数ライセンスを等価な契約数へ換算した推定値 | 価格年間契約相当当たり売上高、億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 200 | 0.01 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 160 | 0.01 | 1 | 0 |
取り方:会社はソフトウェア個別の契約数、解約率、ARR、課金単価を十分に開示していない。HPC売上からハードウェア推計45億円、受託計算等推計3.5億円を差し引く1.50558億円を、年間200契約相当、契約当たり約75万円とした便宜的なモデルであり、実契約件数ではない。現状で解約率5%未満、年単位の規制対応を伴う移行、独占的な記録の正本という証拠が2件以上は確認できないため、AI代替の『記録の正本』型とせず、操作画面・利用課金型として中立2036年の契約数量0.70〜0.90倍、価格1.00〜1.15倍、長期成長率0%以下を用いる。
CTO産業用カスタムコンピュータ
半導体・検査・物流・製造設備へ組み込む専用コンピュータの設計、部材検証、製造、継続供給。AIが動く物理装置の部品であり、製品全体を席課金SaaSや人月型とは扱わない。
| 数量年間生産台数、台。基準期7,018台は有価証券報告書の実数 | 価格生産1台当たり売上高の近似値、億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 7,018 | 0.00 | 29 | 2 |
| 10 年後 中立 | 10,600 | 0.01 | 59 | 6 |
取り方:2026年6月期有価証券報告書でCTO生産実績7,018台、CTO売上29.05848億円、セグメント利益2.45978億円を確認。29.05848億円÷7,018台=1台約41.4万円として構成した。生産と売上計上は厳密には同一年度の同一台数とは限らないので、これは公表平均販売単価でなく近似値。国内産業用コンピュータ市場は会社資料で2023年1,438億円、2027年1,792億円。2026年の市場規模を約1,700億円と補間した場合、同社売上比率は約1.7%。用途や地域の差があるため公式市場シェアとは扱わない。
リスクと懸念
138億円の大口受注と運転資金の集中
2026年4月発表の大口サーバー受注は、2027年と2028年に売上を計上する計画で、発注先の名前は非開示である。2026年6月末には棚卸資産が約89億円、純有利子負債が約70億円に達した。納入と検収が遅れれば、利益の計上より前に部材調達費と利息の支払いが先行する。大口受注を繰り返せる企業かどうかだけでなく、個々の案件の現金回収を確認する必要がある。
GPU・メモリ価格と供給元への依存
同社はGPUやメモリを自ら製造せず、外部メーカーから購入する。Super Micro Computerとの代理店契約などを通じて製品を調達する構造上、製品世代、供給制約、価格の変化を完全には支配できない。AI需要の拡大で部材価格が上がっても、顧客との契約価格が固定されていれば粗利益は圧迫される。逆に調達後に価格が急落すると、在庫の評価損が生じる。
AIエージェント代替
受託計算、SI、技術コンサルティングは、従来人が行っていたシステム設定、計算の準備、プログラムの調整、技術調査がAIエージェントへ移る可能性が高い。ソフトウェアも研究者が操作画面を使う時間が減れば、席数や利用料金に下押し圧力がかかる。ただし、GPUサーバーと産業用コンピュータは物理的な製品であり、AI代替と同一視しない。モデルでは対象となる工数とソフトウェアに限って数量と価格を縮めた。
金融機関との財務条項
大口受注に対応する特別当座貸越には、連続赤字を避けることや、期末純資産が前期末の75%を下回らないことなどの条件がある。2026年6月末の自己資本比率は約21%で、多額の借入を抱える。案件の損失や在庫評価損が純資産を減らせば、銀行との条件変更、借入返済、増資などが必要になる可能性がある。高いROEだけを見て財務を安全と判断できない。
大手との価格競争とクラウド移行
HPC市場にはDell Technologies、HPE、富士通、NECなどの大手が存在する。計算能力をクラウドで借りる選択肢も広がるため、すべての研究者が専用計算機を持ち続けるとは限らない。CTOでもAdvantechなど大規模な企業が、製造能力と部材調達力を競争手段にする。同社の個別最適化能力は有効だが、その価値を販売価格として長く確保できるかは顧客次第である。
資本配分と海外展開の実行
DOEの引き上げや自社株買いは株主に好ましいが、大型受注の資金需要と同時に行えば財務基盤が弱くなる。ドイツ企業への少数持分出資と海外販路拡大は成長機会である一方、現段階では追加利益の規模が見えない。新規拠点や提携先への投資が続いても増分ROICが資本コストに届かなければ、売上拡大は株主価値を増やさない。買収を行う場合は希薄化と投下資本を別に監視する。
今後の分かれ目
- 138億円受注の納入・検収・代金回収が予定通り進み、棚卸資産と借入金が大きく減少したら
- 大型案件の実行リスクを引き下げる。借入由来の資本コスト上乗せを再検討し、やや楽観以上の筋書きの確率を高める余地が生じる。ただし、翌年以降の継続受注とは別に確認する。
- 138億円案件の予定納期が再延期されるか、部材の評価損・追加調達費が開示されたら
- 中立の利益率と資金回収見通しを下方修正する。在庫の換金可能額も見直し、やや悲観・悲観の確率を引き上げる。
- 大型案件の納入が終わった後も、HPC事業の受注が複数顧客で高水準を維持したら
- 一時的な特需ではなく、継続的な顧客基盤拡大が起きたと判断する。年間システム納入数量の中立値を引き上げる理由となる。
- CTOの生産台数と単価がともに上昇し、利益率10%以上が数年間続いたら
- 装置に組み込まれる製品の切り替え費用と値決め力が想定以上に強いと判断する。CTOの中立利益率および堀の評価を引き上げる。
- 受託計算・SIの売上が減り、計算化学ソフトウェアの契約数も縮小したら
- AIエージェント代替が現実化した証拠として扱う。対象業務の数量を下方修正する一方、物理的なサーバーとCTOには同じ縮小率を一律には適用しない。
- 営業活動の資金収支が黒字に戻らず、財務条項への抵触や大規模な増資が発表されたら
- 稼ぐ力が株主の現金に変わっていないと評価し、悲観側へ大きく寄せる。新株発行が実際に決まれば、既存株主の取り分も別途計算する。
見ておくもの
- 138億円受注の納入完了率、売上計上時期、検収および入金の進捗
- 棚卸資産の内訳、とくに未着品・原材料・仕掛品の推移と在庫評価損
- 純有利子負債、当座貸越残高、借入利率、銀行との財務条項の充足状況
- 営業活動によるキャッシュ・フローと純利益の差
- HPC事業の受注高と、単一大型案件を除いた継続受注の推移
- CTO事業の生産台数、売上単価の近似値、営業利益率
- HPC事業でのソフトウェア・受託計算の売上内訳と継続契約に関する開示
- Vision2027の売上高104億円、営業利益10億円超、DOE5〜6%の達成状況
- Super Micro Computer等の仕入先との取引継続とGPU・メモリの調達価格
- 海外提携先TL Electronicとの取引実績、追加投資額、資本効率
倍率と資本コストの決め方
2026年10月22日の時価総額約118億円から将来売上やPERを逆算していない。会社開示の2026年HPC売上約50億円とCTO売上約29億円を起点に、実数量が分かるCTOは7,018台、実数量が不明なHPCは公開入札の単価を参考に標準化した納入セット数で推計した。中立ではHPC現物140セット相当、CTO10,600台とし、物価3%の10年分は価格にだけ織り込んだ。工数型と利用課金型にはAIエージェント代替の数量・価格制約を適用した。倍率は資本コスト9%、長期成長率2.3%、その時点のROEと増分ROICから計算し、楽観から中立は正当化PERの上限をそのまま使用した。悲観は現在の自己資本と換金可能資産を参照し、将来積み上がった自己資本に床のPBRを掛けない。2027年以降の新リース会計基準に伴う表示変更は、事業の現金創出力が同じなら価値そのものを変えない。なお、10年間に事業に必要な資本を超えて現金が積もる場合は、指定の戻り方で別途評価するものであり、ここに記載した将来時価総額へ手作業で二重加算していない。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に、値決め力0.5%と借金1.0%を加えた9.0%。大型受注に伴う短期的な借入であっても、評価起点における返済不能リスクを資本構成に即して扱う。継続的な赤字企業ではなく、金融機関との借入枠も確保しているため、経営危機による特別な上乗せは付けない。顧客集中や案件の実行失敗は筋書きと確率に反映する。