結論
ティアックは、業務用の録音機器「TASCAM」、高級オーディオ「ESOTERIC」、医用画像の記録機器や計測機器をつくる会社だ。売上は 159 億円、営業利益は 6.8 億円、時価総額は 28 億円にとどまる。
筆者の結論は、今の値段は事業の稼ぐ力に対して高く、割高に近いというものだ。足元の利益は、一時の項目に支えられている。
2026 年 3 月期の営業利益は 7 億円近いが、一時の項目を除くと営業利益率は 2.6% だ。会社自身も、2027 年 3 月期は営業利益が 26% 減ると見ている。
強みは、ニッチな製品群と、BtoB が売上の半分を超えたことだ。借入も減り、自己資本比率は 38% まで戻った。
弱みは、利益率が 3% 前後と低いことだ。過去 12 年で営業利益率が 4% を超えたのは 2 期にとどまる。ためた利益の稼ぎが資本コストに届かないため、筆者は、10 年たつと価値が目減りすると見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「質は並み、値段は妥当より高め」に映る。長く持ちたい会社の条件は、満たしていない。
理由は利益率の低さだ。ニッチなブランドはあるが、営業利益率は 12 年のうち 10 年が 4% 以下で、稼ぎが資本コストに届かない。一時の項目で膨らんだ足元の利益を、過大に評価するべきではない。
資本の使い方は改善している。借入の返済が進み、財務は安定してきた。ただ、配当は 1 割に満たず、ためた利益の稼ぎは資本コストに届かない。
安全域は薄い。営業利益で支払利息を 4 倍ほどしかまかなえず、金利が上がれば利益を削る。
筆者は、中期経営計画の 5% を、実績を伴うまで中立の筋書きには入れない。
小さなニッチ企業の強みは、専門の顧客との長い関係だ。その関係が利益に結びつくかが、持ち続ける価値を決める。
何で稼ぐ会社か
ティアックは、音響機器と情報機器の二つを営む、IFRS 適用の会社だ。
音響機器は、ESOTERIC・TEAC・TASCAM の三つのブランドを持つ。ESOTERIC は高級オーディオ、TASCAM は音楽制作や放送向けの録音機器、TEAC は民生向けのオーディオだ。
情報機器は、計測機器、医用画像の記録再生機器、ソフトウェアやクラウドなどの IT サービスを手がける。医用画像の分野では、手術映像の管理ソリューションが二桁の成長を続け、海外比率は 5 割を超える。
BtoB の比率は、前中期経営計画の期間を通じて 50.6% に達した。
セグメントごとの売上は短信の本文では確認できず、音響機器が約 7 割と見ている。決算は 3 月で、2027 年 3 月期の会社予想は、売上収益 160 億円、営業利益 5 億円、親会社の利益 3 億円である。
製品の多くは自社の開発と、外部の工場や中国の生産会社で作る。販売は国内と海外に分かれ、輸出の比率が高い。為替の影響を受けやすく、為替予約などで振れをならしている。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、ニッチな分野でトップを取る戦略にある。業務用の録音機器の TASCAM、高級オーディオの ESOTERIC、医用画像の記録機器は、いずれも市場は小さいが、専門の顧客に選ばれている。
弱みは、利益率の低さだ。営業利益率は 2018 年の 1.9% から 2022 年の 4.1% に上がったが、2024 年 3 月期は赤字に落ちた。足元の 4.2% は、一時の項目を除くと 2.6% だ。
過去 12 年に赤字の期が 7 回ある。中期経営計画は 2029 年 3 月期に営業利益率 5% 以上を掲げるが、前の計画は営業利益で目標を達成できなかった。
財務は改善した。自己資本比率は 38%、営業キャッシュフローは 16 億円。ただ純有利子負債はまだ 8 億円ある。
経営は、エソテリックの吸収合併や海外子会社の整理で、組織の簡素化に動いている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
音響機器は、世界的に構造が二極化している。民生向けのオーディオは、スマートフォンとストリーミングの普及で縮み、ハイエンドの愛好家向けだけが残る。業務用は、放送・設備向けと、クリエイター向けの録音機器が底堅い。
筆者は、音響機器の実質の数量が 10 年で 15% ほど減ると見る。高級オーディオの顧客は高齢化し、新しい世代への広がりは限られる。
情報機器は、医用画像の記録と手術映像の管理に追い風がある。手術の映像を記録・共有する需要は、病院のデジタル化とともに広がる。センサーと計測も、工場の自動化で需要が続く。
価格は、為替の影響を受ける。輸出比率が高く、150 円の前提のもとでは物価並みに上げられるが、円高に振れれば採算が悪化する。
競合は、音響では中国メーカーと欧米の高級ブランド、情報機器ではソニーなどの大手とニッチな専業だ。
業界の価格は、材料費と物流費の上昇で名目では上がるが、完成品の値上げは顧客との交渉次第だ。ニッチな業務用機器は価格を決めやすく、民生品は決めにくい。為替は輸出の採算に直結する。
資本政策と M&A
配当は 2026 年 3 月期が配当性向 5%、2027 年 3 月期の予想は 9.6% と低い。中期経営計画では、営業利益 8.5 億円を達成した時に配当性向 20% 以上を掲げる。
自社株買いの実績は無く、自己株式は 13 万株ほどと少ない。
従来は自己資本比率 25% 超を配当の目安としていたが、今後は成長投資と還元の両立を掲げる。
M&A の実績は小さく、組織の整理が中心だ。エソテリックの吸収合併、米国販売会社と中国生産会社の清算を進める。
統計上の 10 年以内の TOB の確率は 3 割を超えるが、時価総額が小さく、純有利子負債がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
医用画像の記録再生と手術映像の管理は、二桁の成長を続けている。病院のデジタル化に追い風があり、海外比率が 5 割を超えたことは、当社のソリューションが世界で通用する証拠だ。
音響機器でも、TASCAM は放送と音楽制作の業務用で定着し、ESOTERIC は世界の富裕層に選ばれる。BtoB の比率が 5 割を超え、景気に左右されにくい売上が増えた。
財務は大きく改善した。自己資本比率は 38%、営業キャッシュフローは 2 期連続で 10 億円を超え、借入の返済が続く。エソテリックの吸収合併など、組織の簡素化で固定費が下がる。
中期経営計画は、2029 年 3 月期に営業利益率 5% 以上を掲げる。達成すれば、ROE は 10% に届き、時価総額は純資産の 1 倍を超えてよい。配当性向 20% 以上の方針も、株主にとって追い風だ。
ニッチなブランドと長い取引は、一度築けば簡単には崩れない堀に育つ。BtoB の売上が増えるほど、利益の安定度は高まる。
慎重な見方
利益率の低さは構造的だ。営業利益率が 4% を超えたのは過去 12 年で 2 期だけで、足元の 4.2% も一時の項目を除くと 2.6% に下がる。会社予想は 2027 年 3 月期に営業利益 26% 減だ。
民生オーディオは縮み続け、高級オーディオの顧客は高齢化する。中国メーカーの追い上げも厳しい。前の中期経営計画は営業利益の目標に届かなかった。
借入の金利が 3.5% に上がれば、営業利益で支払利息を 4 倍しかまかなえない会社は利益を削られる。
配当性向 5% の会社が、利益をためても稼ぎは資本コストに届かない。会社自身が株主資本コストを 10〜12% と認める以上、ROE が 5% では価値は目減りする。足元の増益を、10 年続く姿とは見られない。
エソテリックの合併や海外子会社の清算は、収益が悪化した事業の整理でもある。整理が終わっても、利益を稼ぐ力が戻る保証は無い。
小さな会社が複数のブランドと二つの事業を抱えるのは、経営資源を分散させる。選択と集中が進まないままでは、利益率は上がらない。
どちらに重みを置いたか
筆者は、慎重な見方のほうが強いと判断した。BtoB の伸びと財務の改善は評価するが、利益率は構造的に低く、前の中期経営計画の未達も重い。中立の営業利益率は 3% 前後に置き、確率は中立に最も重みを置き、やや悲観を楽観より厚くした。BtoB 比率が 5 割を超え、営業キャッシュフローも厚いため、悲観は 1 割を切る確率にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 122 円35 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 20 円6 億円)。 今の値に割り戻すと 67 円19 億円、今との差 −29.8%、 期待の年率 +4.0%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 297 円86 億円 | 44 円13 億円 | +255.2% | +13.5% | 24 円7 億円 |
| やや楽観 | 20% | 197 円57 億円 | 30 円9 億円 | +135.8% | +9.0% | 45 円13 億円 |
| 中立 | 38% | 133 円38 億円 | 21 円6 億円 | +59.8% | +4.8% | 58 円17 億円 |
| やや悲観 | 27% | 35 円10 億円 | 11 円3 億円 | −52.6% | −7.2% | 12 円4 億円 |
| 悲観 | 8% | 28 円8 億円 | 3 円1 億円 | −67.4% | −10.6% | 2 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 122 円35 億円 | 20 円6 億円 | +48.1% | +4.0% | 142 円41 億円 |
今の株価時価総額 96 円28 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 業務用と医用の BtoB が育ち、営業利益率が 5% 台に乗る 利益 7 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 297 円86 億円
放送・設備向けの音響機器と、医用画像の記録・再生が育ち、BtoB の比率が 6 割を超える。情報機器は海外を中心に 10 年で 5 割以上伸び、手術映像の管理ソリューションが定着する。
音響機器は、ESOTERIC の高級オーディオが世界の富裕層に支えられ、売上は横ばいを保つ。価格は物価並みに上がる。
営業利益率は 5% 台に乗り、中期経営計画の水準が定着する。吸収合併による指揮の一本化や、米国販売会社・中国生産会社の清算が効き、固定費が下がる。配当性向は 2 割を超えて引き上がる。
医用の分野では病院のデジタル化が進み、手術映像の管理は定着する。業務用では放送と配信の設備更新が追い風になる。
- 音響機器:数量 6,000(対象市場(高級オーディオ・業務用録音機器など、億円、今の値段で測った実質)× 当社のシェア)× 価格 2.6%(市場 1 億円あたりの当社売上(シェア × 物価の指数。10 年の中立は 1.32 倍))→ 売上 155 億円・営業利益 8 億円。対象市場(実質)× シェア
- 情報機器:数量 3,875(対象市場(医用画像記録・計測・センサー・IT サービス、億円、今の値段で測った実質)× 当社のシェア)× 価格 2.7%(市場 1 億円あたりの当社売上(シェア × 物価の指数。10 年の中立は 1.34 倍))→ 売上 103 億円・営業利益 6 億円。対象市場(実質)× シェア
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.08 倍、時価総額 86 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期経営計画は 2029 年 3 月期に営業利益率 5% 以上を掲げるが、過去 12 年で営業利益率が 4% を超えたのは 2 期だけ。計画の達成実績が乏しいので 1 割を切る確率にした。
やや楽観 20% 情報機器が伸び、利益率が 4% 台に定着する 利益 5 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 197 円57 億円
情報機器は医用画像と計測・センサーが伸び、10 年で 4 割近く増える。音響機器は縮小が緩やかで、業務用の TASCAM が下支えする。
営業利益率は 4% 前後で、過去の山 4.1〜4.2% 並みに定着する。固定費の削減が一巡し、利益が増えた分は配当と借入の返済に回る。
配当性向は 2 割を保つ。ただ、ためた利益の稼ぎは資本コストに届かない。
BtoB の売上が全体の 6 割に迫り、景気の振れに強い収益構造になる。株主への還元も少しずつ増える。
医用の分野の成長が続くかが、この筋書きの鍵となる。
- 音響機器:数量 5,520(対象市場(高級オーディオ・業務用録音機器など、億円、今の値段で測った実質)× 当社のシェア)× 価格 2.5%(市場 1 億円あたりの当社売上(シェア × 物価の指数。10 年の中立は 1.32 倍))→ 売上 138 億円・営業利益 6 億円。対象市場(実質)× シェア
- 情報機器:数量 3,450(対象市場(医用画像記録・計測・センサー・IT サービス、億円、今の値段で測った実質)× 当社のシェア)× 価格 2.6%(市場 1 億円あたりの当社売上(シェア × 物価の指数。10 年の中立は 1.34 倍))→ 売上 89 億円・営業利益 4 億円。対象市場(実質)× シェア
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 57 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の営業利益率は個別開示項目を除くと 2.6% だが、会社予想の 3.1% と中計の 5% の間に収まる形を強気寄りの中位とし、中立の半分ほどの確率を置いた。
中立 38% 音響機器は縮み、情報機器が補う。利益率は 3% 前後にとどまる 利益 3 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 133 円38 億円
音響機器は、民生オーディオの縮小が続き、実質の数量は 10 年で 15% ほど減る。価格は物価に少し届かない上昇にとどまる。情報機器は、医用画像と計測が海外で伸び、数量は 2 割ほど増える。
営業利益率は 3% 前後。為替は 150 円で固定して考えるが、現実の為替の振れが利益率を 1 ポイント動かす。
配当は 2 割にとどまり、残りは借入の返済と内部にたまる。自己資本は増えるが、ROE は 5% にとどまり、資本コストに届かない。
吸収合併や子会社の整理は一巡し、売上は物価並みに緩やかに伸びる。
- 音響機器:数量 5,100(対象市場(高級オーディオ・業務用録音機器など、億円、今の値段で測った実質)× 当社のシェア)× 価格 2.5%(市場 1 億円あたりの当社売上(シェア × 物価の指数。10 年の中立は 1.32 倍))→ 売上 126 億円・営業利益 4 億円。対象市場(実質)× シェア
- 情報機器:数量 3,000(対象市場(医用画像記録・計測・センサー・IT サービス、億円、今の値段で測った実質)× 当社のシェア)× 価格 2.5%(市場 1 億円あたりの当社売上(シェア × 物価の指数。10 年の中立は 1.34 倍))→ 売上 76 億円・営業利益 2 億円。対象市場(実質)× シェア
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 36 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:個別開示項目を除く足元の営業利益率は 2.6%、会社予想は 3.1%。中計の 5% は未達の歴史が長く、3% 前後にとどまる形をもっとも起こりやすいと見て 4 割弱を置いた。
やや悲観 27% 民生オーディオが急速に縮み、利益率が 1% 台に落ちる 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 35 円10 億円
高級オーディオの顧客が高齢化し、音響機器の数量は 10 年で 25% 減る。為替が円高に振れれば、輸出の採算は一段と悪化する。
情報機器は伸びが鈍り、競合の大手に価格を押される。営業利益率は 1% 台に沈み、赤字の期も混じる。
配当は性向 2 割を守れず、借入の返済が優先される。借入の金利が 3.5% に上がれば、利払いが利益を削る。
営業の効率化や固定費の圧縮で赤字は避けるが、売上の減少を補うには足りない。人員の整理も続く。
株価が純資産を下回る状態が続き、買収や再編の議論が出やすくなる。海外の販売網の縮小や、中国の生産会社の整理が追い打ちになる。
- 音響機器:数量 4,500(対象市場(高級オーディオ・業務用録音機器など、億円、今の値段で測った実質)× 当社のシェア)× 価格 2.3%(市場 1 億円あたりの当社売上(シェア × 物価の指数。10 年の中立は 1.32 倍))→ 売上 105 億円・営業利益 2 億円。対象市場(実質)× シェア
- 情報機器:数量 2,500(対象市場(医用画像記録・計測・センサー・IT サービス、億円、今の値段で測った実質)× 当社のシェア)× 価格 2.4%(市場 1 億円あたりの当社売上(シェア × 物価の指数。10 年の中立は 1.34 倍))→ 売上 59 億円・営業利益 1 億円。対象市場(実質)× シェア
倍率:やや悲観は ROE が k を大きく下回り、PER で置くと稼ぐ力は 3 億円台にとどまる。清算されない限り少数株主が換金できない前提で、売れる資産の 20 億円に戻り方 0.5 を掛けた 10 億円を、今の自己資本 41 億円に対する PBR で置いた(中立の PBR より低い)。
確率:2024 年 3 月期は赤字に落ち、2010 年代は赤字の期が 5 回あった。民生オーディオが構造的に縮み、中国メーカーの価格攻勢も続くため、強気側より厚く置いた。
悲観 8% 高級オーディオが崩れ、BtoB も伸びず、赤字が常態になる 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 28 円8 億円
民生オーディオの需要が半分近くに縮み、ESOTERIC のブランドも維持できなくなる。業務用機器も中国勢との価格競争に押される。
情報機器は大手の内製や競合の攻勢で伸びず、赤字の事業のまま残る。固定費の重さで営業赤字が続く。
借入の金利が 3.5% に上がり、利払いも重い。配当は止まり、自己資本は減損と赤字で目減りする。会社の価値は稼ぐ力ではなく、在庫・売掛金・設備の売れる分で測られる。
事業の売却や撤退の議論が起き、ブランドの一部は他社に売られる。株主にとって、価値は手元の資産の回収に頼る形になる。
- 音響機器:数量 3,600(対象市場(高級オーディオ・業務用録音機器など、億円、今の値段で測った実質)× 当社のシェア)× 価格 2.1%(市場 1 億円あたりの当社売上(シェア × 物価の指数。10 年の中立は 1.32 倍))→ 売上 77 億円・営業利益 −1 億円。対象市場(実質)× シェア
- 情報機器:数量 2,000(対象市場(医用画像記録・計測・センサー・IT サービス、億円、今の値段で測った実質)× 当社のシェア)× 価格 2.2%(市場 1 億円あたりの当社売上(シェア × 物価の指数。10 年の中立は 1.34 倍))→ 売上 44 億円・営業利益 0 億円。対象市場(実質)× シェア
倍率:悲観は純利益が赤字で PER では置けない。値は売れる資産の 16 億円に戻り方 0.5 を掛けた 8 億円とし、減損後の自己資本 33 億円に対する PBR で表した(やや悲観より低い)。EV ÷ 営業利益は赤字で意味を持たず、EV でも見た結果、割安・割高の言い方はしない。
確率:2024 年 3 月期に赤字へ落ち、過去に赤字の期が 7 回ある。ただ BtoB 比率が 5 割を超え、営業キャッシュフローが 10 億円を超える体力もあるため、1 割を切る確率にした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
音響機器
ESOTERIC・TEAC・TASCAM の三つのブランドで、高級オーディオ、業務用の録音機器、民生オーディオを売る。
| 数量対象市場(高級オーディオ・業務用録音機器など、億円、今の値段で測った実質)× 当社のシェア | 価格市場 1 億円あたりの当社売上(シェア × 物価の指数。10 年の中立は 1.32 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,000 | 1.9% | 112 | 3 |
| 10 年後 中立 | 5,100 | 2.5% | 126 | 4 |
取り方:セグメントの内訳は短信本文に無く、売上の約 7 割を音響機器と推定した(推定値)。対象市場 約 6,000 億円も推定で、シェア 約 1.9%。営業利益は全社の個別開示項目を除く約 4.15 億円を売上比で配分した推定。数量は実質、価格は物価の指数。
情報機器
計測機器、医用画像の記録再生機器、ソフトウェアと IT サービス。
| 数量対象市場(医用画像記録・計測・センサー・IT サービス、億円、今の値段で測った実質)× 当社のシェア | 価格市場 1 億円あたりの当社売上(シェア × 物価の指数。10 年の中立は 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,500 | 1.9% | 47 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3,000 | 2.5% | 76 | 2 |
取り方:売上の約 3 割を情報機器と推定した(推定値)。対象市場 約 2,500 億円も推定で、シェア 約 1.9%。営業利益は個別開示項目を除く約 4.15 億円を売上比で配分した推定。数量は実質、価格は物価の指数。
リスクと懸念
民生・高級オーディオの縮小
ストリーミングの普及で民生オーディオは縮み、高級オーディオの顧客も高齢化する。音響機器の数量が減れば、固定費の重さが利益を直撃する。
利益率の低さと一時の項目
営業利益率は 12 年のうち 10 年が 4% 以下。足元の 4.2% は個別開示項目を除くと 2.6% に下がり、会社は 2027 年 3 月期に減益を見込む。
為替と輸出
輸出比率が高く、円高に振れれば採算が悪化する。150 円の前提でも、現実の振れが利益率を 1 ポイント動かす。
借入と金利
純有利子負債は 8 億円で、営業利益は支払利息の 4 倍ほど。借り換えの金利が 3.5% に上がれば、利益を削る。
中期経営計画の未達の歴史
前の計画は営業利益で目標に届かなかった。今回の 5% 以上の目標も、実績を伴うまで確度は低い。
情報機器の黒字化
情報機器は黒字転換が目標で、医用画像の成長が利益に結びつくかは未確認。競合の大手との価格競争もある。
今後の分かれ目
- 営業利益率が個別開示項目を除いて 4% を 2 年続けて超えたら
- 中立の利益率を上げ、楽観側の確率を厚くする。
- 医用画像と手術映像の管理が営業黒字に転じたら
- 情報機器の評価を上げ、やや楽観の確率を上げる。
- 円高が進み、輸出の採算が悪化したら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 配当性向 20% 以上の方針が前倒しで実行されたら
- ためた利益の稼ぎが k に届かないため、還元の増加は価値を増やす方向に働く。
- 第三者の買収提案が出たら
- 時価総額が小さく、純資産を下回る水準にあるため、買い手の条件次第。評価し直す。
見ておくもの
- 個別開示項目を除く営業利益率
- 情報機器のセグメント損益
- BtoB の売上比率
- 為替
- 配当性向と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
セグメントの内訳は短信の本文で確認できず、音響機器約 7 割・情報機器約 3 割に推定した。対象市場の大きさ(6,000 億円・2,500 億円)も推定で、数量は実質、価格は物価の指数。倍率は ROE と k から、普通の堀(残る割合 1/2)の式で上限を出し、その 9 割に置いた。今の株価や過去の倍率には寄せていない。IFRS 適用でリースは貸借対照表にすでに載っており、10 年後も同じ形でそろえて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.42→12.08 倍・やや楽観 PER 7.95→11.76 倍・中立 PER 5.51→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.25% = 8.75%。会社は株主資本コストを 10〜12% と自認するが、本モデルでは同じ基準で全社を測る。足元の一時項目や組織整理の実行は筋書きと確率で表し、k には重ねない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.50%。