結論
パルステック工業は、持ち運べる X 線の残留応力測定器で知られる静岡の小さな装置メーカーだ。部品の中に残るひずみの力を、工場の現場で測れる。売上は 25 億円、営業利益率は 14% ある。筆者の結論は、10 年で見ればやや割安だというものだ。
理由は 2 つある。1 つは現金だ。自己資本比率は 8 割で、現金が時価総額の 6 割に相当する。もう 1 つは、事業が資本をほとんど食わないことだ。売上の 14% が営業利益になり、設備投資も軽い。
弱みも明確だ。売上は 25 億円しかなく、光ディスク検査機や医療機器の受託など、波のある仕事が 3 分の 2 を占める。四半期ごとに黒字と赤字を行き来する。成長も年 3% ほどで、飛躍は望みにくい。
筆者は、この会社を「手堅いが退屈な現金持ち」と見る。株主が多数の個人で、大株主の影がないため、余った現金が配当に回る確率は 4 分の 3 とした。それでも今の値段は、その現金と地味な稼ぎを下回っている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業の質は悪くないが、持ち続けたい会社とまでは言えない。
良い点は 3 つある。資本を食わない。売上の 14% が営業利益になり、設備投資は軽い。借金がない。現金が厚く、時価総額の 6 割に迫る。そして、持ち運べる X 線応力計という狭い分野で実績がある。
気になる点は、規模の小ささと波の大きさだ。売上が 25 億円しかなく、大口が 1 社抜けると利益が揺れる。光応用とヘルスケアは受託の色が濃く、堀と呼べるほどの強みはない。経営が現金を何に使うかも、実績が乏しい。
安全域は、現金そのものにある。現金を 4 分の 3 掛けで見て、事業の稼ぎ分に今の値段を足りるかを確かめると、今の値段は事業をほぼタダで買える水準だ。成長は期待できないが、10 年で配当と現金が積み上がるなら、悪くない取引だと筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は 3 つある。X 線残留応力測定装置は、金属部品に残る内部の力を X 線で測る機械で、売上の 35% を占める。持ち運べるのが売りで、据え置き型の大型装置と違い、工場や検査の現場に持ち込める。自動車、鉄道、航空、溶接のほか、金属 3D プリンターの造形品や金型の寿命診断、インフラの保守にも使われる。海外は、米国に現地法人がある。
光応用・特殊機器は、光ディスクの検査機器や 3D スキャナ、顧客仕様の専用装置で、売上の 4 割弱を占める。大口は日立ハイテクで、売上の約 2 割を占める。注文が大型の案件に偏るため、売上は年によって大きく動く。
ヘルスケア装置は、医療機器の受託開発と受託製造だ。売上の 3 割弱で、利益率は低い。過去には東洋紡の大口があったが、2026 年 3 月期は減収減益だった。
従業員は 120 人ほどの小さな会社だ。2026 年 3 月期は売上 25.5 億円、営業利益 3.6 億円で、2027 年 3 月期は売上 27 億円、営業利益 4 億円を見込む。ただし 2027 年 3 月期の第 1 四半期は売上が 14% 減り、営業赤字だった。受注の山と谷が大きい。
優良さと弱いところ
強みは、持ち運べる X 線応力計という狭い分野で、長く使われてきた実績だ。測定の方式(cosα 法)が特徴で、公的な試験場でも据え置き型の大型機と使い分けて導入されている。こうした測定器は、一度導入されると校正や部品の更新で顧客が離れにくい。
資本効率は堅い。自己資本比率は 8 割で、借入はない。売上の 14% が営業利益になり、過去 10 年の営業利益率は 8〜18% と安定していた。
弱みは規模だ。X 線の分野の売上は 9 億円で、1 台ずつの受注なので、年ごとに振れる。光応用とヘルスケアは受託の性格が強く、顧客の設備投資に左右される。大口の日立ハイテクが発注を絞れば、光応用の売上は大きく減る。
経営は堅実だ。配当は純利益の 4 割を払い、2027 年 3 月期は増配を予想する。中期経営計画は「準備中」と開示され、成長の旗印が見えにくい点は弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
残留応力の測定は、地味だが需要が絶えない分野だ。部品の内部に残る力は、疲労や割れの原因になる。自動車の歯車、鉄道の車軸、航空機の部品、溶接部、金属の 3D プリンターで作る部品など、強度が命の製品で測られる。電気自動車に切り替わると、エンジン部品は減るが、モーター軸や電磁鋼板、軽量化のための新素材の評価が増える。筆者は、測定の件数は 10 年で 1〜2 割増えると見る。
競合は、リガクなどの据え置き型の多目的 X 線回折装置と、海外の可搬型メーカーだ。据え置き型は精度が高いが、現場には持ち込めない。パルステックは可搬型に絞り、価格も手頃だ。ただし、中国のメーカーが同種の可搬型を安く出す可能性は残る。
光応用の分野は、ディスクの検査や特殊光学の装置で、ハードディスクや半導体の周辺投資に連動する。ここは波が大きい。ヘルスケアは、医療機器メーカーが開発を外に出す流れの受け皿で、需要は底堅いが、大口の顧客を失うと一気に減る。
人手不足で検査の自動化・高度化が進むのは追い風だ。装置の価格は、部品と人件費が上がるため、物価並みに上げられる。
資本政策と M&A
資本政策の特徴は、現金の厚さと、まずまずの還元だ。2026 年 3 月期の配当は純利益の約 4 割で、2027 年 3 月期は増配の予想。株主の 8 割強は個人で、10% を超える大株主はいない。筆頭の個人株主は 9% 台だ。
自社株買いの実績は小さい。現金は 17 億円あり、時価総額の 6 割に相当する。事業に必要な運転資金を除くと、11 億円ほどが余ると見る。配当だけで吐き出すには時間がかかる。
買収や提携の実績は見つからなかった。TOBやMBOの発表もない。規模が小さく、株主が分散しているため、買収が来れば現金の価値が評価される可能性はあるが、それは確率として織り込まない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
持ち運べる X 線応力計は、自動車や航空だけでなく、金属 3D プリンターや電磁鋼板、金型の寿命診断など新しい用途に広がる。品質管理の厳しさは年々増し、現場で測る需要は伸びる。2026 年 3 月期は X 線の売上が 35% を占めるまで育った。
現金が 17 億円あり、時価総額の 6 割に迫る。借入はなく、配当は純利益の 4 割を払い、2027 年 3 月期は増配の予想だ。株主の多くが個人で、現金を抱え込む圧力は弱い。
光応用では日立ハイテクが売上の 2 割を占め、安定した顧客だ。ヘルスケアも医療機器の開発外注の流れに乗る。営業利益率は過去に 18% まで上がった実績がある。
売上が 35 億円まで伸び、営業利益率が 16% 台に乗れば、純利益は今の 2 倍になる。今の値段は、事業をほとんどタダで買える水準だ。
筆者は、この強気の見方が成り立つ条件は、新しい用途で台数が年 4% 以上伸び続けることだと考える。
慎重な見方
売上 25 億円の会社で、3 分の 2 は波のある受託だ。2027 年 3 月期の第 1 四半期は売上が 14% 減り、営業赤字だった。1 年で売上が 1 割動けば、営業利益は 3 割動く。
大口の日立ハイテクが発注を絞れば、光応用の利益が飛ぶ。ヘルスケアの大口顧客を失った前例もある。X 線の分野も、中国が安い可搬型を出せば、価格が崩れる。電気自動車への切り替えで、エンジン部品の測定は減る。
中期経営計画は準備中で、成長の旗印が見えない。経営が現金を使う計画も示さない。現金の価値は、配当で戻る確率が低いほど割り引かれる。
営業利益率は 2012 年に 52% の赤字、2009 年に 13% の赤字を出した。小さな会社に、不況の耐性は限られる。
小さな会社の営業利益率が 14% を保てるのは、景気の良い時期だけだという見方もある。成長の乏しい会社の現金は、市場では額面より安く見られがちで、その割引が縮む理由も見当たらない。
どちらに重みを置いたか
強気の根拠は、現金の厚さと資本を食わない事業の質だ。弱気の根拠は、規模の小ささと波の大きさだ。筆者は、事業の質は中位、現金は本物と見る。
現金は 4 分の 3 の戻り方を掛け、中立の倍率は資本効率から 12.5 倍とした。確率は、中立に 4 割弱、悪い側に 3 割弱を置いた。受託の波と大口の離脱を考えると、楽観を厚くする理由は乏しい。
悲観は、現金が失敗した投資に消え、事業の稼ぎも落ちる筋書きだ。確率は 8% とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,272 円58 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 996 円14 億円)。 今の値に割り戻すと 2,824 円39 億円、今との差 +33.1%、 期待の年率 +9.5%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 7,639 円105 億円 | 1,462 円20 億円 | +328.9% | +15.7% | 1,092 円15 億円 |
| やや楽観 | 23% | 5,475 円75 億円 | 1,206 円17 億円 | +214.8% | +12.2% | 1,537 円21 億円 |
| 中立 | 38% | 4,429 円61 億円 | 1,023 円14 億円 | +156.9% | +9.9% | 2,072 円28 億円 |
| やや悲観 | 19% | 1,776 円24 億円 | 658 円9 億円 | +14.7% | +1.4% | 462 円6 億円 |
| 悲観 | 8% | 950 円13 億円 | 365 円5 億円 | −38.0% | −4.7% | 105 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,272 円58 億円 | 996 円14 億円 | +148.3% | +9.5% | 5,268 円72 億円 |
今の株価時価総額 2,122 円29 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 12% 新しい用途に広がり、利益が倍になる 利益 6 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 7,639 円105 億円
金属 3D プリンターや電磁鋼板、金型の寿命診断で、現場での残留応力の測定が標準の工程になる。X 線の台数は 10 年で 6 割増え、アジアや欧州への輸出も伸びる。
光応用は日立ハイテクとの取引が続き、特殊機器に新しい案件が加わる。ヘルスケアも医療機器メーカーの開発外注に乗る。営業利益率は過去の山に近い 19% まで上がる。
純利益は今の約 2 倍になり、配当も伸びる。現金は戻り方を掛けて価値に足す。
筆者はこの筋書きを、会社が自らの強みを広げ、現金を使い切らない前提で置いている。実現すれば、現金と事業の両方が評価される。
- X 線残留応力測定装置関連:数量 112(年間納入台数(保守・部品を台数換算))× 価格 0.17(1 台あたり売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 5 億円。台数+60%・単価+36%
- 光応用・特殊機器装置関連:数量 46.0(年間納入件数)× 価格 0.32(1 件あたり売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 3 億円。件数+15%・単価+34%
- ヘルスケア装置関連:数量 35.0(年間受託件数)× 価格 0.34(1 件あたり売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。件数+25%・単価+34%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 15.95 倍、時価総額 104 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金属 3D プリンターや電磁鋼板で測定が標準になり、持ち運べる X 線応力計がもう一段育つ筋書き。確率は 1 割強とした。
やや楽観 23% X 線が伸び、受託は横ばいで利益が 3 割増える 利益 5 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 5,475 円75 億円
X 線応力計は、自動車の歯車と航空機の部品で堅調に増え、台数は 10 年で 35% 増える。単価は物価並みに上がる。営業利益率は X 線の分野で 24% に乗る。
光応用は日立ハイテクとの取引が続くが、件数は伸びない。ヘルスケアも小幅の増加にとどまる。本社費は物価で増える。
営業利益は 6 億円前後まで伸び、純利益も今の 1.4 倍になる。配当は純利益の 4 割を保つ。
この筋書きでは、会社の方針が大きく変わる必要はない。現場の測定需要が地道に積み上がるだけで届く。大型の買収や新規事業に現金を使わない前提も置く。
- X 線残留応力測定装置関連:数量 94.5(年間納入台数(保守・部品を台数換算))× 価格 0.17(1 台あたり売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 4 億円。台数+35%・単価+34%
- 光応用・特殊機器装置関連:数量 42.0(年間納入件数)× 価格 0.31(1 件あたり売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。件数+5%・単価+30%
- ヘルスケア装置関連:数量 30.8(年間受託件数)× 価格 0.33(1 件あたり売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。件数+10%・単価+32%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 14.72 倍、時価総額 75 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:X 線の用途が自動車以外にも広がり、光応用とヘルスケアは今の水準を保つ筋書き。
中立 38% X 線は緩やかに伸び、受託は横ばいで推移する 利益 4 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 4,429 円61 億円
X 線応力計は、電気自動車への切り替えで部品の測定が入れ替わるが、軽量化と品質管理の厳格化で台数は 10 年で 2 割増える。単価は物価より少し低い 1.3 倍。営業利益率は 22% を保つ。
光応用は日立ハイテクなど大口の波で件数が増減し、10 年で見れば横ばい。ヘルスケアも受託の件数は横ばいで、利益率は 6% にとどまる。
本社費は物価で増え、営業利益は 4.7 億円まで伸びる。現金は配当で少しずつ戻る。
大きな追い風も逆風もなく、10 年が過ぎる。電気自動車への切り替えと中国メーカーの台頭は、どちらも一部で効くが、全体を動かすほどではない。現金は 20 億円台に積み上がる。
- X 線残留応力測定装置関連:数量 84.0(年間納入台数(保守・部品を台数換算))× 価格 0.17(1 台あたり売上(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 3 億円。台数+20%・単価+30%
- 光応用・特殊機器装置関連:数量 40.0(年間納入件数)× 価格 0.30(1 件あたり売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。件数±0・単価+25%(受託のため物価未満)
- ヘルスケア装置関連:数量 28.0(年間受託件数)× 価格 0.33(1 件あたり売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。件数±0・単価+30%
倍率:事業の ROE は約 11% で k 7.25% を上回り、RONIC は k+1/3×(ROE−k) で約 9%。g 4% なら正当化 PER は約 12.9 倍。受託の波と規模を見て、その 9 割台の 14.11 倍に置いた。
確率:測定件数の伸びは緩やかで、光応用とヘルスケアは受託の波を繰り返しつつ今の水準にとどまる。いちばんありそうな筋書き。
やや悲観 19% 大口の離脱と中国の安値で利益が半分になる 利益 2 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,776 円24 億円
日立ハイテクなど光応用の大口が発注を絞り、件数が 2 割減る。X 線応力計は中国メーカーの安い可搬型に押され、台数は微減、単価は物価に追いつかない。
ヘルスケアは大口の顧客を失った状態が続き、利益はほぼ出ない。本社費は物価で増えるため、営業利益率は 7% 前後まで下がる。
営業利益は 1.8 億円ほどで、今の半分。現金は積み上がらず、一部は新規事業の探索に使われる。配当は純利益の 4 割を保つが、額は減る。
借入のないことが救いで、景気が崩れても債務超過の恐れは小さい。
この筋書きでは、過去 10 年の営業利益率 8〜18% の下限にも届かない年が続く。売上は伸びても利益が出にくい構造に変わる。
- X 線残留応力測定装置関連:数量 66.5(年間納入台数(保守・部品を台数換算))× 価格 0.15(1 台あたり売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。台数-5%・単価+15%
- 光応用・特殊機器装置関連:数量 32.0(年間納入件数)× 価格 0.28(1 件あたり売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。件数-20%・単価+15%
- ヘルスケア装置関連:数量 25.2(年間受託件数)× 価格 0.30(1 件あたり売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。件数-10%・単価+20%
倍率:ROE は低下し k 7.25% に近づく。RONIC が k に近く、正当化 PER は約 10 倍。安値競争と受託の縮小を見て 9.0 倍。余った現金は 0.75 倍(谷で食う)で分ける。
確率:光応用の大口が減り、X 線で安い可搬型が出て、利益率が落ちる筋書き。小さな会社には起こりうる。
悲観 8% 中国勢と大口の離脱で構造的に負け、現金も目減りする 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 950 円13 億円
中国メーカーが同等の可搬型を半値で出し、X 線の台数は 3 割減る。単価も下がる。光応用は日立ハイテクが取引を縮め、特殊機器の案件が細る。ヘルスケアも赤字に落ちる。
営業利益は赤字に沈み、売上の波に固定費が追いつかない。経営は現金を新規事業に投じるが成果は出ず、現金は目減りする。
配当は純利益に連動して小さくなる。それでも借入はなく、事業を畳む場合に残る現金が値段の底になる。
筆者はこの筋書きの確率を低く置く。可搬型の X 線応力計は切り替えが難しく、一度入った装置は長く使われるからだ。それでも小さな会社は、1 社の動きで事業が変わる。
- X 線残留応力測定装置関連:数量 49.0(年間納入台数(保守・部品を台数換算))× 価格 0.12(1 台あたり売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。台数-30%・単価-5%
- 光応用・特殊機器装置関連:数量 24.0(年間納入件数)× 価格 0.24(1 件あたり売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。件数-40%・単価±0
- ヘルスケア装置関連:数量 19.6(年間受託件数)× 価格 0.25(1 件あたり売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。件数-30%・単価±0
倍率:稼ぐ力はほぼ 0。値段の底は現金と売れる資産で、現金預金 17.3 億円から前受金等と不確かな分を引いた約 14 億円に、戻り方 0.75 を掛けて 13 億円(今の自己資本 40.1 億円に 0.32 倍)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.31 倍・時価総額 13 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:中国メーカーの安い可搬型が主流になり、日立ハイテクなどの大口も内製や他社に移る筋書き。10 年で 1 割弱とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
X 線残留応力測定装置関連
金属部品の内部に残る力を X 線で測る持ち運べる装置と、校正・部品の保守。
| 数量年間納入台数(保守・部品を台数換算) | 価格1 台あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 70.0 | 0.13 | 9 | 2 |
| 10 年後 中立 | 84.0 | 0.17 | 14 | 3 |
取り方:売上 8.93 億円(セグメント売上は有価証券報告書の抽出値)。台数は開示がなく、1 台約 1,000 万円強と保守を含めた推定(約 70 台換算)。利益は開示を取れず、全社の営業利益率 14% から逆算した推定。
光応用・特殊機器装置関連
光ディスクの検査機器、3D スキャナ、顧客仕様の専用装置。日立ハイテクが大口。
| 数量年間納入件数 | 価格1 件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 0.24 | 10 | 2 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 0.30 | 12 | 2 |
取り方:25/03 期の売上 9.36 億円から 26/03 期は好調と開示。売上は全社の残りから推定の 9.6 億円。件数は 1 件約 2,400 万円の推定(40 件)。利益は推定。
ヘルスケア装置関連
医療機器の受託開発・受託製造。
| 数量年間受託件数 | 価格1 件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 28.0 | 0.25 | 7 | 0 |
| 10 年後 中立 | 28.0 | 0.33 | 9 | 1 |
取り方:25/03 期の売上 7.11 億円から、26/03 期は減収と開示。全社の残りから推定の 7.0 億円。件数は 1 件約 2,500 万円の推定(28 件)。利益は推定。
リスクと懸念
受託の波と大口への依存
光応用は日立ハイテクが売上の約 2 割を占め、ヘルスケアも過去に東洋紡の大口があった。大口が発注を絞れば、利益は大きく動く。2027 年 3 月期の第 1 四半期も営業赤字だった。
中国メーカーの安い可搬型
X 線応力計は可搬型という狭い分野で、中国のメーカーが同種を安く出せば価格が崩れる。切り替えにくい製品だが、公的機関や大手が価格で選び直す可能性は残る。
電気自動車への切り替え
自動車はエンジン部品の測定を減らす。モーターの電磁鋼板や軽量部材の測定が増える見込みだが、置き換わる速さと量は不確かで、X 線応力計の台数に効く。
規模の小ささと景気の谷
売上 25 億円の会社は、1 年の波で利益が 3 割動く。2012 年には営業利益率が 52% の赤字を出した。借入がないため存続の恐れは小さいが、赤字が続く年は現金が減る。
現金の使い方
現金は時価総額の 6 割に当たる。経営が買収や新規事業に使い、失敗する可能性がある。配当は純利益の 4 割だが、自社株買いは小さく、株主還元の方針は強くない。
流動性の低さ
時価総額は 29 億円と小さく、株主の 8 割強が個人だ。売りたい時に値段が動きやすい。買収者が現れた時の上乗せも読みにくい。
今後の分かれ目
- X 線応力計の台数が年 10% 以上伸びる
- 新しい用途への広がりが確認され、楽観寄りに確率を寄せる。営業利益率も 20% 台に近づく。
- 日立ハイテクの発注が大きく減る
- 光応用の利益が飛び、やや悲観の確率を上げる。
- 経営が自社株買いや増配で現金を積極的に戻す
- 現金の戻り方が 0.75 から 1.0 に近づき、価値が上がる。
- 中国メーカーが同等の可搬型を半値で出す
- X 線の単価が崩れ、悲観に近づく。
- 中期経営計画が公表され、成長の道筋が示される
- 成長の旗印が見え、中立の確率を保ちつつ楽観に少し寄せる。
見ておくもの
- X 線残留応力測定装置の売上と受注
- 光応用の大口顧客の発注
- 四半期ごとの営業損益
- 配当と自社株買い、現金の推移
- 中国メーカーの可搬型 X 線応力計の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化 PER の式(g 4%・k 7.25%・堀は弱いので残る割合 1/3)から置き、上限の 9 割前後にした。今の PER や PBR、過去の水準は根拠にしていない。余った現金は 11 億円を分け、戻り方 0.75 を掛けて足した。今の時価総額は最後に比べただけ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→15.95 倍・やや楽観 PER 13→14.72 倍・中立 PER 12.5→14.11 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5%。事業は傾いていない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。