結論
太洋テクノレックスは、和歌山で曲げられる配線板(FPC)の試作と少量生産を営む小さなメーカーだ。ほかに基板の検査機、鏡面研磨機、ロボットの自動化設備を持つ。売上は 38 億円、営業利益は 1.4 億円。3 年ぶりの黒字である。筆者の結論は「割高」。純資産 27 億円に対して稼ぐ力が弱く、ROE は 5% にとどまる。
強みは短い納期と少量対応で、利益の源は電子基板だ。事業の利益は大きいが、本社費など調整が重く、会社全体では薄い。
筆者が気にするのは、利益の波と規模の小ささだ。過去 12 年に赤字が 8 回あった。FPC に特許はなく、顧客が海外へ移れば優位を失う。
救いは、産機システムの急成長と、宇宙・医療向けの高難度品である。ただ、10 年後の中立も営業利益は 2 億円ほどにとどまり、資産に見合う稼ぎにはならないと見る。事業の芽は育てる価値があるが、値段はその芽の実現を前提にしてはいけない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、資産の厚みと稼ぐ力は別物である。
この会社は純資産が 27 億円あり、時価総額は 19 億円。帳簿の上では割安に見える。だが、資産は工場の土地建物と、使い道が限られた設備が中心で、利益を生む力は弱い。ROE が資本コストを下回る会社の帳簿は、額面どおりの価値を持たない。
持ち続けたい事業は、電子基板の短納期・少量だ。顧客に選ばれる理由があり、利益率も高い。他の三つの事業は、まだ証明の途中にある。
経営は、赤字の続いた間も無理な借入をせず、配当を絶やさなかった。堅実だが、成長への投資の成果は見えていない。
筆者は、資産の厚みを評価しつつ、稼ぐ力に見合う値段しか付けない。
経営が資本を事業に回し切れていない点は、改善の余地として見る。現預金が薄いまま設備に資金が固定されている構図である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは四つの事業から成る。電子基板、テストシステム、鏡面研磨機、産機システムだ。
電子基板が売上の 64% を占め、利益率も最も高い。FPC は薄く曲がる配線板で、試作や少量の注文に素早く応える。医療機器、産業機器、宇宙航空向けの高難度品を伸ばす計画で、和歌山県の宇宙事業の拠点「Kii Space HUB」にも参加する。
テストシステムは基板の検査機を作る。2025 年は売上が 35% 減って赤字だった。AI を使った検査「XAIS」で挽回を狙う。鏡面研磨機は子会社ミラックが作る。市場は小さいが利益率は 15%。産機システムは、ロボットと検査を組み合わせた自動化設備で、2025 年は売上が 3 倍超になった。
従業員は 192 人。本社工場は和歌山にあり、海外に生産拠点を持たない。会社は 2026 年から事業部制へ移り、電子部品と産業機器の二つに分ける。
配当は記念配を含めて総額 0.36 億円で、性向は 26%。
売上の約 6 割を占める電子基板が、会社の評価を左右する。残る三つの事業は、まだ利益の柱とは言えない。
優良さと弱いところ
優良さは「並の下」と見る。小さな専門メーカーで、堀は薄い。
強みは二つ。一つは、試作と少量生産に絞った機動力だ。大手の基板メーカーが受けない注文を拾う。もう一つは、医療や宇宙のような、品質で選ばれる顧客層の開拓である。
弱みは四つ。特許を持たないこと。海外に拠点がなく、顧客の海外移転に弱いこと。規模が小さく、本社費の負担が重いこと。利益の波が大きいことだ。2020 年には営業損失が 4 億円を超えた。
財務は、自己資本比率が 58% と厚い。ただ、資産の中身は工場の土地と建物が 14 億円、投資有価証券が 4 億円で、現預金は 5 億円しかない。借入は 6 億円ある。
経営は、安定配当を続けつつ、創立 65 周年を機に記念配を出した。資本コストを意識した経営を掲げるが、ROE 5% は資本コストを下回る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
配線板の市場は、量産が海外に移り、国内は試作・少量・高難度品に絞られた。大量生産の基板は、台湾・韓国・中国のメーカーが価格と規模で握る。国内に残るのは、短納期と特殊品の領域だ。
競合は、日本メクトロンなど大手の FPC メーカーと、試作専門の中小メーカーだ。大手は量産が主戦場で、試作の注文には応じにくい。そこにこの会社の入り込む余地がある。ただ、中小どうしの競争は価格が厳しい。
成長の芽は三つある。医療機器の小型化、宇宙・航空の軽量化、ロボットや産業機器の増加だ。いずれも少量で高難度の基板が要り、試作の需要が増える。
検査機の市場は、標準的な検査方法が定まらず、メーカー各社が自社で検査を組み込む傾向がある。内製化や検査の省略が進めば、市場は縮む。
業界の 10 年の中立は、国内の基板の数量が緩やかに減り、高難度品へ重心が移る姿だ。人手不足でロボットの自動化需要は増えるが、競争は激しい。分かれ目は、宇宙・医療向けの量産に乗れるかである。
自動化の領域では、ロボットの価格が下がるほど導入の裾野が広がる点も追い風になる。
資本政策と M&A
資本政策は、安定配当と成長投資の均衡を掲げる。配当性向は目標 20% に対して、2025 年は記念配を含めて 26% だった。
現預金 5 億円に対し、借入は短期 3 億円、長期 3 億円。純負債は 1 億円で、利払いの余裕は 7 倍ある。医療向け高密度多層基板の設備投資が 2027 年の量産を目指して進む。
投資有価証券は 4 億円ある。政策保有の株式で、配当が利益に入る。売却の方針は示されていない。
買収や増資の動きはなく、株主の構成は大株主の開示が見つからない。自己株は 6,200 株とごくわずかだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
宇宙・医療・航空向けの高難度 FPC は、少量でも単価が高く、価格競争から距離を置ける。和歌山の宇宙拠点への参加と、医療向け高密度多層基板の設備投資で、2027 年から量産に乗る。数量が伸び、電子基板の利益率は 22% まで上がる。
産機システムは 2025 年に売上が 3 倍超になった。人手不足で省人化の需要は構造的に続き、検査と組み合わせる強みが出る。10 年で売上が数倍になる素地がある。
鏡面研磨機は、リチウムイオン電池用フィルムの新用途が当たれば、市場が小さくても利益が大きい。AI 検査「XAIS」が半導体と素材の検査で採用されれば、テストシステムも黒字に戻る。
本社費の負担は、売上が増えれば薄まる。営業利益が 7 億円に達する姿は、小さな会社の拡大として現実的だ。
純資産 27 億円は、成長の資金と、配当の余力の両方を支える。
財務が厚い小さな会社は、景気が崩れても耐える力がある。成長の芽を育てる時間を持てる点が、株主にとっての強みになる。
慎重な見方
電子基板は、特許がなく、新工法や内製化で簡単に追いつかれる。顧客が海外へ移れば、短納期の優位は消える。海外に拠点がない弱みは大きい。
利益は薄く、波が大きい。過去 12 年で赤字が 8 回あり、2025 年の黒字も営業利益 1.4 億円にとどまる。事業の利益 6 億円のうち、4 億円が本社費などに消える。この構造は、売上が伸びても変わりにくい。
検査機は 2025 年に売上が 35% 減った。標準が定まらず、内製化が進めば市場そのものが縮む。鏡面研磨機は市場が小さく、産機システムは価格競争が激しい。
2026 年の予想では、売上が 3 割増えるのに営業利益は 15% 減る。利益の質が悪いことの表れだ。
純資産の多くは工場の土地建物で、売れても買い手が限られる。ROE 5% の会社に、帳簿の価値は付かない。
成長の芽があると言うが、計画に数値目標が示されていない。進捗を測る物差しがないことも、評価を難しくする。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強いと判断した。高難度品と自動化という芽はあるが、特許がなく、赤字の回数が多く、本社費が重いという構造は変わらない。確率は、中立に 38% を置き、やや悲観と悲観を合わせて 40% とした。強気側は 22%。資産の厚みは悲観の床を支えるため、悲観の側でも値は残る。ただ、その床は帳簿の純資産より低く、稼ぐ力が改善するまでは中立の値段を高くできない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 341 円21 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 59 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 183 円11 億円、今との差 −42.0%、 期待の年率 +2.4%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,160 円70 億円 | 165 円10 億円 | +320.8% | +15.5% | 80 円5 億円 |
| やや楽観 | 16% | 648 円39 億円 | 99 円6 億円 | +137.0% | +9.0% | 119 円7 億円 |
| 中立 | 38% | 293 円18 億円 | 59 円4 億円 | +11.9% | +1.1% | 134 円8 億円 |
| やや悲観 | 26% | 147 円9 億円 | 33 円2 億円 | −42.9% | −5.4% | 47 円3 億円 |
| 悲観 | 14% | 132 円8 億円 | 17 円1 億円 | −52.8% | −7.2% | 21 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 341 円21 億円 | 59 円4 億円 | +27.1% | +2.4% | 401 円24 億円 |
今の株価時価総額 315 円19 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 宇宙・医療向けが量産に乗り、自動化も伸びる 利益 6 億円 · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 1,160 円70 億円
宇宙・医療・航空向けの高難度 FPC が量産に乗り、顧客数は 1.35 倍になる。単価は物価並みの 1.34 倍。電子基板の利益率は 22% に上がる。
産機システムは省人化の需要を取り込み、数量が 2.5 倍に伸びる。鏡面研磨機はリチウムイオン電池用フィルムの新用途で数量が 5 割増える。AI 検査 XAIS が採用され、テストシステムも黒字に戻る。
本社費は売上の増加に連れて薄まる。営業利益は 8 億円で、今の 5 倍を超える。
配当は性向 25% を保ちながら増える。純資産は成長の資金と還元の両方を支える。
- 電子基板(FPC の試作・量産):数量 810(取引顧客数(社、推定))× 価格 0.05(顧客 1 社あたり年間売上(億円、名目))→ 売上 44 億円・営業利益 10 億円。電子基板 数量 1.35 倍・価格 1.34 倍、利益率 22.0%
- テストシステム(基板検査機):数量 72.0(年間の販売台数(台、推定))× 価格 0.10(1 台あたり売上(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。テスト 数量 1.20 倍・価格 1.34 倍、利益率 8.0%
- 鏡面研磨機(子会社ミラック):数量 18.0(年間の販売台数(台、推定))× 価格 0.50(1 台あたり売上(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。鏡面研磨機 数量 1.50 倍・価格 1.34 倍、利益率 17.0%
- 産機システム(省人化・ロボット SI):数量 38.0(年間の案件数(件、推定))× 価格 0.40(1 件あたり売上(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。産機 数量 2.50 倍・価格 1.34 倍、利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 2.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.5 倍。全体の PER 11.48 倍、時価総額 70 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:高難度 FPC と産機システムが同時に伸びる筋書き。赤字が 8 回ある実績から、5〜10% の下の側に置いた。
やや楽観 16% 高難度品が伸び、産機が育つ 利益 3 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 648 円39 億円
電子基板は顧客数が 1.15 倍、単価は 1.32 倍。高難度品の比率が上がり、利益率は 21% を保つ。
産機システムは案件が 1.8 倍に増え、利益率は 9% に乗る。鏡面研磨機は新用途が少し当たり、数量が 25% 増える。テストシステムは損益ゼロ近辺まで戻る。
本社費は物価並みに上がるが、売上の増加で吸収できる。営業利益は 4 億円ほどで、今の 3 倍。
配当は小さく増え、純資産が厚くなる。
医療向けの量産が計画より遅れても、産機の伸びが補う。会社の計画は半分ほど達成される姿である。電子基板の高難度品の比率が上がり、検査機の赤字も縮む。
- 電子基板(FPC の試作・量産):数量 690(取引顧客数(社、推定))× 価格 0.05(顧客 1 社あたり年間売上(億円、名目))→ 売上 37 億円・営業利益 8 億円。電子基板 数量 1.15 倍・価格 1.32 倍、利益率 21.0%
- テストシステム(基板検査機):数量 60.0(年間の販売台数(台、推定))× 価格 0.10(1 台あたり売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。テスト 数量 1.00 倍・価格 1.30 倍、利益率 5.0%
- 鏡面研磨機(子会社ミラック):数量 15.0(年間の販売台数(台、推定))× 価格 0.48(1 台あたり売上(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。鏡面研磨機 数量 1.25 倍・価格 1.30 倍、利益率 16.0%
- 産機システム(省人化・ロボット SI):数量 27.0(年間の案件数(件、推定))× 価格 0.39(1 件あたり売上(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。産機 数量 1.80 倍・価格 1.30 倍、利益率 9.0%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 38 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:医療・宇宙向けが計画の 7 割ほど進み、産機が定着する筋書き。2025 年に黒字へ戻った実績があり、16% を置いた。
中立 38% 試作は堅調、利益は物価並み 利益 2 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 293 円18 億円
電子基板は顧客数が横ばい、単価は物価よりやや低い 1.30 倍で、利益率は 19% に下がる。顧客の海外移転と内製化が少しずつ効く。
産機システムは案件が 1.4 倍に増える。鏡面研磨機は 1 割増。テストシステムは数量が 1 割減り、損益は小さな黒字にとどまる。
本社費など調整は物価並みの 1.34 倍に増える。営業利益は 2 億円で、今の 1.3 倍。
配当は性向 25% 前後を保つ。借入は返済が進む。
大きな成長はないが、小さく堅実な専門メーカーとして黒字を保つ姿である。電子基板が稼ぎ、他の三つの事業が足を引っ張らない。
- 電子基板(FPC の試作・量産):数量 600(取引顧客数(社、推定))× 価格 0.05(顧客 1 社あたり年間売上(億円、名目))→ 売上 31 億円・営業利益 6 億円。電子基板 数量 1.00 倍・価格 1.30 倍、利益率 19.0%
- テストシステム(基板検査機):数量 54.0(年間の販売台数(台、推定))× 価格 0.10(1 台あたり売上(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。テスト 数量 0.90 倍・価格 1.30 倍、利益率 3.0%
- 鏡面研磨機(子会社ミラック):数量 13.0(年間の販売台数(台、推定))× 価格 0.48(1 台あたり売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。鏡面研磨機 数量 1.10 倍・価格 1.30 倍、利益率 15.0%
- 産機システム(省人化・ロボット SI):数量 21.0(年間の案件数(件、推定))× 価格 0.39(1 件あたり売上(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。産機 数量 1.40 倍・価格 1.30 倍、利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.1% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 17 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画(既存事業+α)の延長で、利益が物価並みに伸びる中立の姿。利益の薄さと波を考え、中心の確率を 38% とした。
やや悲観 26% 顧客が海外へ移り、利益が消える 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 147 円9 億円
電子基板は顧客数が 15% 減り、単価は物価に届かず 1.20 倍。利益率は 15% に下がる。
検査機は数量が 3 割減り、再び赤字になる。鏡面研磨機と産機システムは横ばいで、利益は薄い。
本社費は人員の整理でやや縮むが、全体では営業損益が小さな赤字になる。
配当は性向を保てず、縮小する。現金と土地建物が床の支えとなる。
設備投資は先送りされ、成長の芽は育たない。会社は事業の選択と集中を迫られる。検査機の縮小と、不採算の産機案件の見直しが進み、本社費の削減が焦点になる。電子基板は黒字を保つが、他の事業の赤字を支えきれない。
- 電子基板(FPC の試作・量産):数量 510(取引顧客数(社、推定))× 価格 0.05(顧客 1 社あたり年間売上(億円、名目))→ 売上 25 億円・営業利益 4 億円。電子基板 数量 0.85 倍・価格 1.20 倍、利益率 15.0%
- テストシステム(基板検査機):数量 42.0(年間の販売台数(台、推定))× 価格 0.09(1 台あたり売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。テスト 数量 0.70 倍・価格 1.15 倍、利益率 -5.0%
- 鏡面研磨機(子会社ミラック):数量 11.0(年間の販売台数(台、推定))× 価格 0.43(1 台あたり売上(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。鏡面研磨機 数量 0.90 倍・価格 1.15 倍、利益率 12.0%
- 産機システム(省人化・ロボット SI):数量 15.0(年間の案件数(件、推定))× 価格 0.34(1 件あたり売上(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。産機 数量 1.00 倍・価格 1.15 倍、利益率 5.0%
倍率:稼ぐ力はほぼゼロで、純現金・投資有価証券・土地建物など売れる資産の税後が床になる。今の自己資本の 0.33 倍に置いた。
確率:顧客の海外移転と価格競争で電子基板が縮む筋書き。過去に赤字が 8 回あり、26% を置いた。
悲観 14% 工場が被災するか、顧客を失い赤字が続く 利益 −3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 132 円8 億円
顧客の海外移転が進み、電子基板は顧客数が 4 割減る。単価は 1.10 倍にとどまる。
検査機は縮小し、研磨機と産機システムも受注を失う。営業損益は赤字が続き、減損も出る。
工場の稼働が落ち、土地建物の売却や事業の整理を検討する段階になる。
配当はほぼ出なくなる。稼ぐ力に値は付かず、売れる資産が床になる。
会社は土地建物の売却や事業の譲渡を検討するが、買い手が付く値は帳簿より低い。南海トラフの被災などが重なれば、再建のための追加の借入も必要になる。株主への還元は止まり、配当は無配に近づく。10 年先の会社は、規模を縮めた小さな製造業として、資産の整理を続ける姿である。
- 電子基板(FPC の試作・量産):数量 360(取引顧客数(社、推定))× 価格 0.04(顧客 1 社あたり年間売上(億円、名目))→ 売上 16 億円・営業利益 2 億円。電子基板 数量 0.60 倍・価格 1.10 倍、利益率 10.0%
- テストシステム(基板検査機):数量 30.0(年間の販売台数(台、推定))× 価格 0.08(1 台あたり売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。テスト 数量 0.50 倍・価格 1.05 倍、利益率 -10.0%
- 鏡面研磨機(子会社ミラック):数量 8.0(年間の販売台数(台、推定))× 価格 0.39(1 台あたり売上(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。鏡面研磨機 数量 0.70 倍・価格 1.05 倍、利益率 8.0%
- 産機システム(省人化・ロボット SI):数量 10.0(年間の案件数(件、推定))× 価格 0.31(1 件あたり売上(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。産機 数量 0.70 倍・価格 1.05 倍、利益率 0.0%
倍率:稼ぐ力では値が付かず、売れる資産が床になる。減損で自己資本を 20 億円に落とし、床の近くに置いた。
確率:構造的に負ける筋書き。特許がなく、顧客を失う。地震の被災もありうる。14% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電子基板(FPC の試作・量産)
曲げられる配線板(FPC)の試作と少量生産。短い納期を武器に、医療・産業機器・宇宙航空向けの高難度品に力を入れる。
| 数量取引顧客数(社、推定) | 価格顧客 1 社あたり年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 600 | 0.04 | 24 | 5 |
| 10 年後 中立 | 600 | 0.05 | 31 | 6 |
取り方:電子基板事業の売上 24.09 億円、セグメント利益 約 5 億円(開示の要約)。顧客数は開示がなく、試作中心で少量多品種の取引と見て 600 社と推定した。1 社あたり年 400 万円は割り算の結果。
テストシステム(基板検査機)
プリント基板の通電検査機と外観検査機。AI 検査「XAIS」を伸ばす。
| 数量年間の販売台数(台、推定) | 価格1 台あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 60.0 | 0.08 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 54.0 | 0.10 | 5 | 0 |
取り方:テストシステム事業の売上 4.51 億円、セグメント損失 0.34 億円(開示の要約)。前年は 35% 減。台数は開示がなく 60 台と推定、1 台 750 万円は割り算の結果。
鏡面研磨機(子会社ミラック)
円筒の鏡面研磨機を作る。リチウムイオン電池用フィルムの加工など新しい用途を探す。
| 数量年間の販売台数(台、推定) | 価格1 台あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 12.0 | 0.37 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 13.0 | 0.48 | 6 | 1 |
取り方:鏡面研磨機事業の売上 4.46 億円、セグメント利益 0.70 億円(15.8%、開示の要約)。台数は開示がなく 12 台と推定、1 台 3.7 千万円は割り算の結果。市場は小さい。
産機システム(省人化・ロボット SI)
ロボットや検査装置を組み合わせた自動化設備の設計・納入と、産業機械の仕入販売。
| 数量年間の案件数(件、推定) | 価格1 件あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 15.0 | 0.30 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 21.0 | 0.39 | 8 | 1 |
取り方:産機システム事業の売上 4.46 億円、セグメント利益 0.40 億円(9.0%、開示の要約)。前年比 3.3 倍に伸びた。案件数は開示がなく 15 件と推定、1 件 3 千万円は割り算の結果。
リスクと懸念
特許の無い技術
FPC は知的財産権で守られていない。新規参入や新工法で競争が激化すれば、試作の価格が崩れる。顧客が自社で試作を始める内製化の動きもある。
顧客の海外移転
海外に生産拠点がなく、顧客の海外移転で短納期の優位を失う。海外の基板メーカーが日本向けの試作に参入する動きも想定される。
利益の薄さと波
過去 12 年で赤字が 8 回あり、2025 年の営業利益も 1.4 億円しかない。事業の利益が大きくても、本社費などの調整が重く、全社の利益は残りにくい。
検査機・研磨機の市場の小ささ
テストシステムは 2025 年に売上が 35% 減り、赤字だった。検査の方法に標準がなく、内製化や省略が進めば市場が縮む。鏡面研磨機の市場はもともと小さい。
南海トラフ地震
本社工場が南海トラフ地震防災対策推進地域にある。大地震が起きれば、生産が止まり、設備の損傷が資産に響く。保険と事業継続計画の備えを見ておく。
自己資本の中身
純資産 27 億円の多くは工場の土地建物と投資有価証券で、現預金は 5 億円しかない。借入は 6 億円ある。資産を売却するには時間と損失が伴う。
今後の分かれ目
- 宇宙・医療向け高難度 FPC の量産が 2027 年に立ち上がる
- 電子基板の数量と利益率が上がる。やや楽観以上の確率を厚くする。
- 産機システムの売上が、2025 年の水準を保って伸びる
- 利益の源が二つになり、中立の営業利益を上げる。
- 主要顧客が海外へ生産を移す
- 短納期の優位が薄れ、電子基板の数量を下げる。悲観の筋書きに寄る。
- テストシステムが赤字から黒字に戻る
- 調整額の重さに対する事業の利益が増え、中立の利益を上げる。
- 大地震や工場の被災が起きる
- 生産が止まり、設備の損傷と減損で自己資本が減る。悲観に寄る。
見ておくもの
- 電子基板の受注と利益率
- 産機システムの売上と受注
- テストシステムの損益
- 医療向け高密度多層基板の量産開始
- 調整額(本社費)の推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から決めた。ROE が k を下回る筋書きでは、PER の上限は 1÷k = 11.1 倍で、中立は 8 割ほどの 9 倍とした。g は電子基板の競争と検査機の内製化を見て 1% にとどめた。今の株価や資産の厚み(PBR)は倍率の根拠にしていない。悲観の床は、純現金と売れる資産の税後を今の自己資本に掛けて置いた。事業のセグメント利益と連結営業利益の差(約 4.3 億円)は、開示の要約で内訳を確かめられず、調整額として置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.4→11.48 倍・やや楽観 PER 9.5→11.11 倍・中立 PER 9→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.5% = 9.0%。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 9.25%。