結論
ユー・エム・シー・エレクトロニクスは、車載機器・OA 機器・産業機器の電子基板を、メーカーから頼まれて組み立てる受託の製造の会社だ。筆者の結論は「割高」で、いちばんの理由は、売上 1,100 億円に対して利益がほとんど残らず、その少ない利益も借入の利払いと優先株の配当に先に取られることだ。
株価は帳簿の半分ほどに見える。だが帳簿の自己資本 171 億円のうち 60 億円は優先株で、普通株の取り分は 111 億円だ。借入は差し引きで 230 億円ある。金利が上がると、利払いは今の 2 倍近くに増える。
受託の製造は、顧客の生産計画しだいで仕事が増えたり消えたりする。直近期も中国の自動車の不振と生産の終息で売上が 15% 減り、今期は赤字の予想だ。過去 12 年の営業利益率は最高でも 2.3% で、筆者はこれが 10 年で大きく良くなるとは見ていない。
豊田自動織機が議決権の 3 分の 1 を持つことは、取引と資金の支えになる。しかし普通株の株主にとっての価値は、稼ぎの薄さと借入の重さで決まる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「持ちたい事業ではない」と筆者は見る。
オーナーの目で見ると、受託の製造は、売上は大きくても手元に残るものが少ない商売だ。顧客の生産計画しだいで仕事が消え、値段は顧客が決める。過去 12 年で営業利益率が 2.3% を超えたことが無いのは、それが事業の実力だからだ。
資本の使い方にも余裕が無い。借入の利払いと優先株の配当が先に立ち、普通株に残る利益は年に数億円だ。工場の更新と運転資金にも借入が要るので、借入は減りにくい。金利が上がれば、普通株の取り分はさらに細る。
安全域は無いに等しい。帳簿の半分の株価は、優先株を除けば普通株の帳簿の 6 割ほどで、しかもその帳簿は工場と在庫だ。売っても簿価は戻らない。豊田自動織機の支えは心強いが、それは会社の存続を守るもので、普通株の価値を高めるものではない。
何で稼ぐ会社か
この会社は、電子機器のメーカーから設計図と部品の手配を任され、電子基板を組み立てて納める。自社の製品は持たない。工場は日本と中国、東南アジアにある。
売上の半分強は車載機器で、エンジンや電装の制御、車内の電子機器の基板だ。顧客は自動車部品の会社で、2026/03 期は中国市場の不振と一部の製品の生産の終息で 16% 減った。
OA 機器は複合機とレーザープリンターの基板で、売上の 3 分の 1 を占める。顧客の製品の終息で 1 割近く減った。
産業機器は、半導体の製造装置や制御機器の基板だ。半導体の装置の需要は戻り始めているが、制御機器の生産の調整で減った。
ほかに人材派遣が少しある。
利益の形は単純で、受託の手数料が部品の値段に上乗せされる。売上の大半は部品の代金で、会社の手元に残る付加価値は売上の 1 割ほどにすぎない。部品は顧客の指定が多く、値上がりは顧客に転嫁できるが、組み立ての手間賃は顧客との交渉で決まる。売上の大きさの割に利益は 1% 台しか残らない。
工場の設備と部品の在庫には多くの資金が要り、それを借入で賄っている。売上が減っても工場の固定費と利払いは残るので、利益は売上以上に振れる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは弱い。電子基板の組み立ては、設備と品質の管理があれば他社にもできる。顧客は複数の受託会社を比べ、安い方へ仕事を移す。車載の品質の認証と、海外の工場の網は入口の壁になるが、台湾や中国の大手の受託会社の規模にはかなわない。
資本の効率は悪い。過去 12 年の営業利益率は最高でも 2.3% で、ROE は赤字の年を除いても 1 桁の前半が多い。2019〜2020 年には不適切な会計が見つかり、大きな赤字で自己資本の大半を失った。その後、豊田自動織機の出資と優先株で資本を立て直した。
財務は弱い。借入は差し引きで 230 億円あり、営業利益で利払いの 2.7 倍しか賄えない。自己資本比率は 22% で、優先株を除くと普通株の比率はさらに低い。
良い点は、豊田自動織機との関係だ。議決権の 3 分の 1 を持つ大株主が、取引と資金の両面で支えている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電子機器の受託製造は、世界では台湾の鴻海などの巨大な会社が主役だ。日本の受託会社は規模が小さく、日本のメーカーの車載や産業機器のように、品質の要求が厳しく量の少ない仕事で生き残ってきた。
車の電子化は、受託の需要を増やす方向に働く。電気自動車や運転支援で、1 台の車に載る電子基板は増える。ただ自動車部品の大手は基板の組み立てを自社でも持ち、受託に出すのは繁忙の分や小さな量の仕事が多い。中国の自動車市場では中国の会社が勝ち、日本の顧客の中国での生産は減っている。
OA 機器は事務所の印刷が減り、複合機とプリンターの市場は長く縮んでいる。メーカーは生産を集約し、受託の仕事は減る。
産業機器は、半導体の製造装置の増産で受託が増える。装置の需要は循環が大きく、受託の仕事は真っ先に削られる。
受託の利幅は、10 年で厚くなる理由が少ない。人件費と電気代は上がり、顧客は値下げを求める。業界全体の姿は、量はほぼ横ばいで利幅は薄いままだと筆者は見る。金利の上昇は、設備と在庫を借入で持つ受託会社ほど重くのしかかる。
資本政策と M&A
配当は 2026/03 期まで普通株に年 2.8 億円ほどを出したが、利益は配当に届かず、今期は未定だ。10 年の還元は、配当を再開できる筋書きで利益の 3 割とみる。自社株買いの余力は無い。
資本は 2020 年に豊田自動織機との資本業務提携で立て直した。普通株と A 種優先株式(非上場・払込 60 億円)を発行し、豊田自動織機は議決権の 34.6% を持つ主要な株主になった。優先株は普通株への転換の権利が無く、株数は増えないが、配当と残りの財産の取り分で普通株より先に立つ。本質価値は優先株の 60 億円を除いた普通株の取り分で測った。
余った現金は無く、借入の返済が先だ。大株主がいるので、仮に現金が余っても株主に戻りにくい形でもある。
豊田自動織機の資本政策が変われば、この株を持ち続けるか、売るか、完全子会社にするかで、普通株の株主の行方は変わる。ただし筆者の筋書きには入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
車の電子化は受託の需要を増やす。電気自動車と運転支援で、1 台の車に載る電子基板は増え続ける。ユー・エム・シーは車載の品質の認証を持ち、日本・中国・東南アジアに工場を持つ数少ない日本の独立系の受託会社だ。自動車部品の会社が基板の組み立てを外に出す流れに乗れる。
半導体の製造装置の受託も戻り始めた。装置の需要が増えれば、産業機器の受託は大きく伸びる。
大株主の豊田自動織機の存在も大きい。議決権の 3 分の 1 を持ち、取引と資金の両面で支える。不適切な会計の後の立て直しも、この支えがあったからだ。
値段も安い。株価は帳簿の半分ほどで、売上 1,100 億円の会社が時価総額 60 億円だ。利益率が 1% 上がるだけで、営業利益は 2 倍になる。生産の終息と中国の不振は一時の要因で、それが抜ければ利益は戻る。悪い材料は今の値段に十分に映っている。半導体の装置の受託が戻るだけでも、利益の底は上がる。
慎重な見方
受託の製造は、売上の割に何も残らない商売だ。過去 12 年の営業利益率は最高でも 2.3% で、利益率が 1% 上がるという話は一度も実現していない。顧客は値段で受託会社を選び、台湾や中国の大手の方が安い。
借入が重い。差し引きで 230 億円の借入があり、営業利益は利払いの 2.7 倍しかない。金利が 3.5% に上がれば利払いは 2 倍近くになり、普通株の利益は消える。帳簿の自己資本のうち 60 億円は優先株で、普通株の取り分は見かけより小さい。
仕事も細っている。直近期は中国の自動車の不振と生産の終息で売上が 15% 減り、今期は赤字の予想だ。OA 機器の市場は長く縮む。
2019〜2020 年の不適切な会計で自己資本の大半を失った過去もある。帳簿の安さは、稼ぎの薄さと財務の弱さを映しているだけだ。大株主の支えは存続を守るが、普通株の値打ちを上げる約束ではない。少数株主の取り分は最後に回る。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強いと筆者は判断した。利益率が上がるという強気の根拠は、過去 12 年で一度も実現していない。借入の重さと金利の上昇、優先株の先取りが重なり、普通株の取り分は薄い。確率は悲観側(37%)を楽観側(30%)より厚くした。豊田自動織機の支えは存続を守るが、価値を押し上げる材料とは見ていない。利益率が 2% を超えて定着したら見方を改める。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 168 円47 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 33 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 88 円25 億円、今との差 −58.5%、 期待の年率 −0.6%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 386 円109 億円 | 68 円19 億円 | +112.7% | +7.8% | 45 円13 億円 |
| やや楽観 | 20% | 266 円75 億円 | 50 円14 億円 | +48.5% | +4.0% | 63 円18 億円 |
| 中立 | 33% | 177 円50 億円 | 38 円11 億円 | +0.7% | +0.1% | 71 円20 億円 |
| やや悲観 | 22% | 58 円16 億円 | 11 円3 億円 | −68.0% | −10.8% | 15 円4 億円 |
| 悲観 | 15% | 33 円9 億円 | 7 円2 億円 | −81.3% | −15.4% | 6 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 168 円47 億円 | 33 円9 億円 | −6.0% | −0.6% | 200 円56 億円 |
今の株価時価総額 213 円60 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 車の電子化と半導体装置の受託で伸びる 利益 10 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 386 円109 億円
車の電子化が進み、自動車部品の会社が電子基板の組み立てを外に出す流れが強まる筋書きだ。ユー・エム・シーは日本と中国、東南アジアに工場を持ち、車載の品質の認証を持つ数少ない独立系の受託会社として、新しい顧客の受注を取る。車載の数量は 15% 増え、利益率は 2% 台に乗る。
半導体の製造装置の制御基板も、装置会社の増産に合わせて受託が増える。産業機器の数量は 1.6 倍になる。OA 機器は複合機の市場が縮むが、残る顧客の生産を集めて量の減りを 2 割に抑える。
営業利益は 35 億円を超え、借入の利払いを払っても純利益は 10 億円に届く。それでも普通株の自己資本に対する稼ぎは資本コストに届かない。
- EMS 車載機器:数量 13,490(受託した基板(千台・推定))× 価格 0.07(1 千台あたりの売上(億円。部品込み))→ 売上 877 億円・営業利益 19 億円。車載基板 13,500 千台 × 1 台あたり単価(今の 1.30 倍)、2.2%
- EMS OA 機器:数量 3,648(受託した基板(千台・推定))× 価格 0.10(1 千台あたりの売上(億円))→ 売上 365 億円・営業利益 7 億円。OA 基板 3,650 千台 × 単価(今の 1.25 倍)、2%
- EMS 産業機器:数量 1,333(受託した基板(千台・推定))× 価格 0.27(1 千台あたりの売上(億円))→ 売上 357 億円・営業利益 11 億円。産業機器の基板 1,330 千台 × 単価(今の 1.34 倍)、3%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 108 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:車載の受託は顧客の車種の切り替えで数量が一気に動く。中国の不振と生産の終息が続く今から、10 年で 1.5 倍に伸ばすには新しい顧客の大口の受注が要るので 1 割。
やや楽観 20% 車載は横ばい、産業機器で補う 利益 7 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 266 円75 億円
車載は中国の不振が底を打ち、日本と東南アジアの顧客の生産で数量は今と同じに戻る。部品の値段は物価で上がり、受託の単価もおおむね追いつく。利益率は生産の終息の費用が消えて 1.8% に戻る。
OA 機器は事務所の印刷が減り、数量は 4 分の 1 減る。産業機器は半導体の製造装置と制御機器の受託が増え、1.45 倍になる。
営業利益は 26 億円ほどで、過去の最高を少し上回る。利払いは金利の上昇で増えるが、純利益は 7 億円に届く。配当は再開し、普通株の自己資本は少しずつ厚くなる。それでも自己資本に対する稼ぎは 5% ほどで、資本コストの半分にとどまる。
- EMS 車載機器:数量 11,730(受託した基板(千台・推定))× 価格 0.06(1 千台あたりの売上(億円。部品込み))→ 売上 751 億円・営業利益 14 億円。車載基板 11,730 千台 × 単価(今の 1.28 倍)、1.8%
- EMS OA 機器:数量 3,420(受託した基板(千台・推定))× 価格 0.10(1 千台あたりの売上(億円))→ 売上 334 億円・営業利益 6 億円。OA 基板 3,420 千台、1.8%
- EMS 産業機器:数量 1,208(受託した基板(千台・推定))× 価格 0.26(1 千台あたりの売上(億円))→ 売上 319 億円・営業利益 8 億円。産業機器の基板 1,210 千台、2.5%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.9% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 75 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体の製造装置の需要は戻り始めており、産業機器の受託が増える道は見える。車載が横ばいで済めば届く筋書きとして 2 割。
中立 33% 薄い利幅のまま、利払いに追われる 利益 5 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 177 円50 億円
車載は中国の自動車市場の不振と、日本の顧客の生産の海外への移転で、数量が 1 割減る。受託の単価は部品の値上げを転嫁して上がるが、顧客の値下げの要求で物価には届かない。利益率は 1.5% にとどまる。
OA 機器は複合機とプリンターの市場の縮みで、数量が 3 割減る。産業機器は半導体の製造装置の受託が伸び、1.3 倍になる。
営業利益は 18 億円台で、今より少し増える。だが借入は 300 億円を超えたままで、金利が 3.5% に上がると利払いは年 10 億円に近づく。普通株の純利益は 5 億円に届かない。自己資本に対する稼ぎは 3% 台で、資本コストの 3 分の 1 にとどまる。
- EMS 車載機器:数量 10,557(受託した基板(千台・推定))× 価格 0.06(1 千台あたりの売上(億円。部品込み))→ 売上 660 億円・営業利益 10 億円。車載基板 10,560 千台 × 単価(今の 1.25 倍)、1.5%
- EMS OA 機器:数量 3,192(受託した基板(千台・推定))× 価格 0.10(1 千台あたりの売上(億円))→ 売上 306 億円・営業利益 5 億円。OA 基板 3,190 千台 × 単価(今の 1.20 倍)、1.5%
- EMS 産業機器:数量 1,083(受託した基板(千台・推定))× 価格 0.26(1 千台あたりの売上(億円))→ 売上 282 億円・営業利益 6 億円。産業機器の基板 1,080 千台 × 単価(今の 1.30 倍)、2%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.5% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 50 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 12 年の営業利益率は最高でも 2.3% で、受託の製造の利幅が厚くなる根拠は無い。今の形が続き、利払いが増える筋書きを真ん中に置いた。
やや悲観 22% 大口の生産が終わり、赤字に戻る 利益 −5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 58 円16 億円
車載の大口の顧客が車種の切り替えで生産を内製や他社に移し、車載の数量は 4 分の 1 減る。中国の工場は稼働が落ち、固定費が重くなる。受託の単価は物価に追いつかず、利益率は 0.6% に沈む。
OA 機器は市場の縮みが速まり、数量は半分近くに減る。産業機器だけが少し伸びるが、全社の落ち込みを埋められない。
営業利益は 5 億円を割り、利払いを引くと赤字になる。工場の整理と人員の削減に費用がかかり、普通株の自己資本は削られる。配当は止まる。借入は減らず、金利の上昇がさらに利益を削る。大株主の支えで資金は続くが、普通株の値は細る。
- EMS 車載機器:数量 8,798(受託した基板(千台・推定))× 価格 0.06(1 千台あたりの売上(億円。部品込み))→ 売上 506 億円・営業利益 3 億円。車載基板 8,800 千台 × 単価(今の 1.15 倍)、0.6%
- EMS OA 機器:数量 2,508(受託した基板(千台・推定))× 価格 0.09(1 千台あたりの売上(億円))→ 売上 221 億円・営業利益 1 億円。OA 基板 2,510 千台、0.5%
- EMS 産業機器:数量 916(受託した基板(千台・推定))× 価格 0.24(1 千台あたりの売上(億円))→ 売上 220 億円・営業利益 2 億円。産業機器の基板 920 千台、1%
倍率:EV÷営業利益は 55 倍に跳ねるが、営業利益が 5 億円を割るためで、借入の重さが普通株の値をほぼ消すことを示す。赤字なので、赤字で目減りした後の普通株の自己資本 95 億円に PBR 0.17 倍を掛けた(今の 111 億円より小さい自己資本に掛けている)。工場と在庫の多くは受託の顧客のための設備で、売っても簿価は戻らない。借入 300 億円超と優先株 60 億円が先に立つ。
確率:直近期も一部の製品の生産の終息で売上が 15% 減り、今期は赤字の予想だ。顧客の生産の打ち切りが続く道は現実的なので 22%。
悲観 15% 受託の淘汰に負け、借入に押される 利益 −17 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 33 円9 億円
自動車の電子基板の受託は、台湾や中国の大手の受託会社との値段の競争になる。日本の顧客も安い方へ移り、車載の数量は 4 割減る。OA 機器は 6 割減り、産業機器も横ばいにとどまる。
全社は営業赤字に陥り、利払いが毎年 10 億円近くかかる。工場の閉鎖と減損で、普通株の自己資本の大半が失われる。資金繰りのために、主要な株主や銀行の支援を受け、新しい株を出すことになりかねない。
普通株の価値は、借入と優先株を返した後に残るごく一部になる。新しい株が出れば、今の株主の取り分はさらに薄まる。事業は残っても、普通株の株主に残るものはわずかだ。
- EMS 車載機器:数量 7,038(受託した基板(千台・推定))× 価格 0.06(1 千台あたりの売上(億円。部品込み))→ 売上 387 億円・営業利益 −4 億円。車載基板 7,040 千台、赤字
- EMS OA 機器:数量 1,824(受託した基板(千台・推定))× 価格 0.08(1 千台あたりの売上(億円))→ 売上 153 億円・営業利益 −2 億円。OA 基板 1,820 千台、赤字
- EMS 産業機器:数量 750(受託した基板(千台・推定))× 価格 0.23(1 千台あたりの売上(億円))→ 売上 172 億円・営業利益 0 億円。産業機器の基板 750 千台、0%
倍率:赤字が続くので、赤字と減損で 37 億円まで減った普通株の自己資本に PBR 0.25 倍を掛けた(今の自己資本の 0.08 倍にあたる)。借入と優先株を返した後に残る額をごく小さく見た。
確率:2019〜2020 年に不適切な会計で大きな赤字を出し、資本の手当てを受けた過去がある。借入が重く利幅が薄い会社が淘汰される道は細くないので、やや悲観と合わせて 37% にした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
EMS 車載機器
エンジン・電装の制御や車内の電子機器の基板の受託の組み立て。
| 数量受託した基板(千台・推定) | 価格1 千台あたりの売上(億円。部品込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11,730 | 0.05 | 587 | 7 |
| 10 年後 中立 | 10,557 | 0.06 | 660 | 10 |
取り方:車載機器の売上 586.46 億(決算短信 2026/03)。台数は開示が無く、部品込みで 1 千台あたり 0.05 億円として約 1,173 万台と推定。セグメントの利益は開示が無い(EMS の単一セグメント)ので、全社の営業利益 12.1 億を推定で分けた(車載 1.2%)。
EMS OA 機器
複合機・レーザープリンターの基板の受託の組み立て。
| 数量受託した基板(千台・推定) | 価格1 千台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,560 | 0.08 | 365 | 6 |
| 10 年後 中立 | 3,192 | 0.10 | 306 | 5 |
取り方:OA 機器の売上 364.87 億。1 千台あたり 0.08 億円として約 456 万台と推定。利益率は推定 1.5%。
EMS 産業機器
半導体の製造装置・制御機器の基板の受託の組み立て。
| 数量受託した基板(千台・推定) | 価格1 千台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 833 | 0.20 | 167 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,083 | 0.26 | 282 | 6 |
取り方:産業機器の売上 166.56 億(一部の顧客の取引を代理人取引として純額に変えた後)。1 千台あたり 0.2 億円として約 83 万台と推定。利益率は推定 0.5%。人材派遣とその他(9.4 億)と本社の費用の差は adjust に入れた。
リスクと懸念
借入と金利の上昇
差し引きで 230 億円の借入があり、営業利益は利払いの 2.7 倍しかない。金利が 3.5% に上がると利払いは年 10 億円に近づき、普通株の利益はほとんど消える。
顧客の生産の終息
受託の仕事は顧客の製品の寿命に縛られる。直近期も一部の製品の生産の終息で売上が 15% 減った。大口の顧客が一つ生産を移すだけで、工場の稼働が大きく落ちる。
中国の自動車市場
車載は売上の半分強を占め、中国の自動車の不振の影響を受けている。中国では中国の会社が勝ち、日本の顧客の中国での生産は減る流れにある。
優先株の先取り
A 種優先株式 60 億円は、配当と残りの財産で普通株より先に立つ。業績が悪化した時に普通株の取り分は、帳簿の見かけより早く細る。
会計と統治
2019〜2020 年に不適切な会計が見つかり、大きな赤字を出した。その後に体制を立て直したが、海外の工場の多い受託の会社では、在庫と原価の管理が引き続き要になる。
大株主の方針
豊田自動織機は議決権の 34.6% を持つ。同社の資本政策が変われば、この株の扱いも変わりうる。売却や完全子会社化は、普通株の株主の行方を左右する。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 2 年続けて 2% を超えたら
- 受託の利幅が構造的に良くなった証拠になる。やや楽観の確率を上げる。
- 借入を大きく減らすか、優先株を買い戻したら
- 普通株の取り分が厚くなる。k の借金の上乗せを見直す。
- 2027/03 期の赤字が予想より膨らみ、工場の閉鎖や減損が出たら
- やや悲観の筋書きが近いと見て、悲観側に重みを移す。
- 豊田自動織機が持株の売却や完全子会社化を打ち出したら
- 本質価値の見方は変えず、提示される値段と比べる。
- 新しい自動車部品の顧客から大口の車載の受注が開示されたら
- 車載の数量の前提を上げ、楽観側の確率を見直す。
見ておくもの
- 製品分野別(車載・OA・産業)の売上
- 営業利益率と支払利息
- 有利子負債の残高
- A 種優先株式の扱い
- 豊田自動織機の持株の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は今や過去の株価、PBR から置いていない。k 9.5%(基本 7.5% に循環 +1%・値決め力 +0.5%・借金 +1%・寿命 +0.5%、上限の +3%)。10 年の事業の ROE が k を大きく下回るので PER の上限は 1÷k の 9.5 倍とし、その 7.5〜9 割に置いた。自己資本は優先株 60 億円を除いた普通株の取り分 110.8 億円から流し、純利益も優先配当を引いた普通株の分で置いた。利払いは借り換えの 3.5% で、やや悲観と悲観は利払いで赤字になるので普通株の今の自己資本に低い PBR を掛けた。新リース会計で海外の工場の賃借が負債に載るが、10 年の数字は今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.57→10.53 倍・やや楽観 PER 8.1→10.53 倍・中立 PER 7.14→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。