結論
日本信号は、鉄道の信号、駅の改札機、ホームドア、街の交通信号機をつくる会社だ。筆者の結論は「やや割高」である。事業は堅いが、いまの利益率が続くことを織り込んだ値段だと見る。
事業の質は高い。信号は列車を安全に止めるための装置で、間違いが許されない。一度入れた会社が、更新も保守も続けて受ける。受注残は1,333億円と過去最高で、売上の1年分を超える。2026年3月期の営業利益率は10.3%まで上がった。
ただし、この水準は過去と比べて高い。過去10年の営業利益率はおおむね6%台で、2018年3月期には2.5%まで落ちた。この高さが何年続くかは、まだ実績が足りない。筆者は、利益率は9%前後に落ち着くと見る。
伸びる芽は2つある。関東の鉄道各社が磁気切符をQR乗車券に替える動きと、台湾やインドの鉄道信号だ。一方で売上の8割近くは国内の公共需要で、人口が減るなかでは数量は増えない。ホームドアも、国の目標が一巡する2030年ごろから山を越える。
10年先の中立の利益は、売却益をならした今の1.3倍弱にとどまる。稼いだ利益の多くは工場と開発に回り、ROEは資本コストに届かない。本質価値は今の時価総額を2割弱下回る。事業が悪いのではない。値段が先に走っている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず事業の寿命を見る。鉄道の信号は、10年後も20年後も要る。安全が最優先で、顧客は簡単に乗り換えない。ここは評価できる。
次にオーナー利益、つまり株主が自由に使える利益を見る。この会社は、稼いだ利益の大半を工場と開発に再投資している。5年で760億円の投資計画は、営業キャッシュフローの見込みとほぼ同額だ。自由に使える額は小さい。再投資の稼ぎが資本コストを超えるかが、価値を分ける。
過去10年のROEは5%台。最近は10%に届いたが、売却益が入っている。筆者はまだ、この利益率が続くとは言い切れない。
安全域の面では、いまの時価総額は、中立の筋書きの10年後を割り引いた値より高い。優れた事業を、少し高めに買う形になる。買い値が安全域を決める。この会社は、PBR1倍付近で売られているから安い、とはならない。ROEが資本コストを下回る会社の帳簿は、額面どおりの価値ではないからだ。
資本配分は、持ち合いの削減に動いた点を高く買う。ただ、売却のペースはまだ遅い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、鉄道と道路の安全を守る機器と、その保守である。会社は2つの事業で開示している。
交通運輸インフラ事業は、売上が約590億円、利益が約50億円。鉄道の信号システム(列車を自動で止める装置、進路を切り替える連動装置など)と、交通信号機や路車協調といったスマートモビリティからなる。顧客はJR・私鉄・地下鉄、都道府県警察、海外の鉄道公社だ。海外の売上は全体の1割強で、台湾、インド、エジプト、バングラデシュなどに納めてきた。
ICTソリューション事業は、売上が約550億円、利益が約105億円。駅の券売機と自動改札機(AFC)、ホームドア、駐車場の入退場管理に、ロボティクスとセンシングを加える。ホームドアは国内最大手とされる。センシングは、ホームドア用の3D距離画像センサ、警備ロボット、鉄道向けの重機ロボなど新しい商材だ。
売上の立て方が変わりつつある。製品を納めた時に一括で計上する形から、工事の進み具合に応じて計上する形へ移っており、2027年3月期の第1四半期ではその型が7割を超えた。利益が四半期ごとに跳ねにくくなる。
JR西日本とJR東海が株主に名を連ね、顧客と株主が重なる。東証プライムに上場し、代表取締役社長は後藤隆一氏。宇都宮に主力の事業所がある。
優良さと弱いところ
強みは、止まってはいけない装置を、止めずに更新してきた実績である。信号は一度入れると、鉄道会社は何十年も同じ思想の機器で運用する。更新も保守も、既設を知る会社が受けやすい。ここが堀、つまり他社がまねしにくい強みだ。海外のデリーメトロでも、納入から10年たって保守契約が取れた。
国内で信号を担うのは、日本信号、京三製作所、大同信号の三社だ。売上の規模では日本信号が首位に立つ。ホームドアでも最大手とされる。ただ、世界で見ると小さい。鉄道信号の世界では日立レールが3割強、中国通号、シーメンス、アルストムが続き、日本信号の海外売上は全体の1割強にすぎない。
弱みは、稼ぐ力の安定感だ。過去10年のROEの中央値は5.7%にとどまる。受注額の大きい案件では、見積もりの誤りが利益を食う。2017年から2018年の営業利益は、売上が横ばいのまま半分に落ちた。足元の10%台は、値上げと案件の選別が効いた結果だが、何年も続いた実績はまだない。
資本の効率も課題だ。政策保有株が純資産の2割強、約250億円ある。しかも、持ち合い先に顧客のJRが含まれ、減らすには話し合いがいる。経営は中計でROE10%以上を掲げ、持ち合いの削減にも動いている。方向は正しい。筆者が見たいのは、その実行の速さだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の鉄道は、老朽設備の更新が需要の中心だ。新線は少なく、人口も減る。数量は横ばいから微減と見るのが自然だ。そのなかで、更新の質が変わる。列車の位置を無線で見る方式(CBTC)への切り替えや、地方鉄道向けの低コストの無線式が広がる。ここは日立やシーメンスといった外資も狙う領域で、競争は強まる。
駅では、磁気切符をやめる動きが進む。JR東日本と関東の私鉄は、2027年春からQR乗車券に替える(時期は当初から後ろ倒し)。名古屋市営地下鉄は2026年9月にクレカ乗車を始め、日本信号の機器を使う。改札機の更新は2030年ごろまで続くが、スマートフォンやクレカが中心になれば、機器の台数が減る可能性もある。
ホームドアは、国が2030年度末に4,000番線を目指している。2025年3月末で2,830番線。残りを埋めたあとは、新設が減る。
交通信号機は、約24%が更新の基準年数を超えている。予算の制約で更新が遅れており、遅れた分は、今後まとめて来る可能性がある。
海外では、世界の鉄道信号市場が2030年に向けて年5〜6%(名目)で伸びる。ただ、競争相手は巨大で、日本信号が正面から勝負できる市場は、インド、東南アジア、アフリカなど限られる。国内も海外も、工事の技術者が足りない。需要はあっても、売上に変える速さに上限がある。
資本政策と M&A
資本の使い方は、いま転換点にある。28中計「Realize-EV100」は、5年間で営業キャッシュフロー800億円を見込み、研究開発210億円、設備450億円、M&A100億円を投じる。成長を買うための投資が大きい。宇都宮事業所の建て替えは約130億円で、2029年2月までかかる。
株主還元は、連結配当性向30%以上、株主資本配当率(DOE)2.0%以上が方針だ。配当は2026年3月期に引き上げ、今期も同額を予想する。自社株買いは、ここ数年ほとんどない。
政策保有株は、2029年3月末までに純資産の20%以下に減らす。直近の売却は2026年3月期で約31億円。株価が上がると比率は下がりにくい。名古屋電機工業との資本提携も、2026年7月に終えた。持つ株は約3.6%分で、今後売る。
TOB(株式公開買い付け)や大型の再編の話は、確かめた範囲では見当たらない。M&Aの枠は100億円と小さく、買収で規模を一気に変える会社ではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注残が1,333億円と過去最高で、売上の1年分を超える。うち海外が737億円あり、台湾鉄路のCTC更新(約230億円)には10年の保守がつく。保守は景気に左右されにくく、利益率も高い。信号は一度入ると他社に替えにくい。この積み上がりが、利益率10%を支える。
国内には追い風が2つある。関東の鉄道各社は、2027年春から磁気切符をQR乗車券に替える。改札機の更新が一斉に来る。名古屋市営地下鉄のクレカ乗車も、日本信号の機器で動く。ホームドアは国が4,000番線を目指しており、最大手の位置は続く。
売上の立て方が変わった点も大きい。工事の進み具合に応じて計上する型が7割を超え、利益が四半期ごとに跳ねにくくなった。採算の管理もしやすくなる。
資本の面でも変化が見える。配当は2026年3月期に引き上げられた。政策保有株の売却益がすでに出ており、名古屋電機工業との提携も解消した。持ち合いをほどき、その資金を成長に回す流れだ。中計のROE10%は手が届く。
さらに、センシングと重機ロボは新しい稼ぎ頭になりうる。10年の長さで見れば、利益率10%は通過点にすぎない。
慎重な見方
営業利益率10.3%は、過去10年の中央値の6%台から大きく離れた最高値だ。受注残が多いのは、工事の技術者が足りず、売上に変えられないことの裏返しでもある。納期が延びれば、違約や追加費用が出る。
海外の大型案件は固定価格で、工期が長い。台湾のCTC更新は1件で通期受注の16%を占める。見積もりを誤れば、一件で数年分の利益が飛ぶ。2018年3月期の利益率は2.5%まで落ちた。
国内の数量は増えない。鉄道会社は人口減で運輸収入の回復が遅く、投資を絞る。改札機は、QRとクレカに替われば台数が減る。ホームドアは2030年に目標を満たせば新設が細る。更新需要の山のあとに、谷が来る。
投資の負担も重い。5年で設備450億円、宇都宮の建て替え約130億円。稼働率が上がらなければ、減価償却が利益を削る。しかも、稼いだ分の多くが再投資に消えるため、ROEは資本コストに届かない。
顧客のJRが株主で、政策保有株の削減も進めにくい。値上げの強気は続かない。世界では日立レールが首位で、日本信号は規模で劣る。
どちらに重みを置いたか
事業の質と受注残の厚みは、強気の見方に分がある。一方、利益率が山にある点、国内数量が増えない点、再投資でROEが資本コストに届かない点は、慎重な見方が強い。10年で見るなら、後者が値段への効きが大きい。
確率は、中立に最も多い36%を置いた。上は、海外とセンシングが育つ筋書きに合計で3割弱。下は、利益率が戻る筋書きと構造的に負ける筋書きに合計で36%を置き、やや慎重側に寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,530 円1,579 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 694 円433 億円)。 今の値に割り戻すと 1,746 円1,089 億円、今との差 −7.1%、 期待の年率 +5.5%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,427 円4,012 億円 | 1,208 円754 億円 | +306.4% | +15.1% | 611 円381 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,920 円2,447 億円 | 884 円552 億円 | +155.7% | +9.8% | 961 円600 億円 |
| 中立 | 36% | 2,806 円1,751 億円 | 727 円454 億円 | +88.1% | +6.5% | 1,272 円794 億円 |
| やや悲観 | 24% | 769 円480 億円 | 487 円304 億円 | −33.1% | −3.9% | 301 円188 億円 |
| 悲観 | 12% | 304 円190 億円 | 351 円219 億円 | −65.1% | −10.0% | 79 円49 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,530 円1,579 億円 | 694 円433 億円 | +71.6% | +5.5% | 3,224 円2,012 億円 |
今の株価時価総額 1,879 円1,173 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 海外と新商材が育ち、利益率が11%台に乗る 利益 235 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 6,427 円4,012 億円
国内では、鉄道会社の更新投資が途切れない。QR乗車券とタッチ決済への切り替えで改札機の更新が続き、ホームドアも国の目標を超えて延びる。海外は台湾のCTC更新を皮切りに、インドと東南アジアで保守つきの案件を重ねる。海外の売上は800億円台に乗り、全体の3割を占める。ロボティクス・センシングでは、警備ロボットと鉄道向けの重機ロボが育ち、新商材が売上の2割に届く。値上げが定着し、営業利益率は11%台に乗る。持ち合いをほどいた資金が成長に回り、ROEは11%に届く。経営の資本の使い方が評価される10年になる。
- 国内の鉄道信号・交通信号:数量 3,240(国内の鉄道信号・交通信号設備の市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 20.8%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 673 億円・営業利益 77 億円。市場は今の1.08倍、シェア15.5%、営業利益率11.5%
- 海外の鉄道信号:数量 351(世界の鉄道信号・都市交通の信号市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.31(実質の市場 1 億ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 811 億円・営業利益 89 億円。世界市場は今の1.35倍、シェア1.15%、営業利益率11%
- 駅務・ホームドア・入退場管理:数量 4,025(国内の駅務・ホームドア・入退場管理設備の市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 17.4%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 701 億円・営業利益 133 億円。市場は今の1.15倍、シェア13%、営業利益率19%
- ロボティクス・センシング:数量 8,500(対象市場の規模(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 4.7%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 399 億円・営業利益 64 億円。市場は今の1.7倍、シェア3.5%、営業利益率16%
倍率:事業の純利益 235 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍。全体の PER 17.07 倍、時価総額 4,012 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外で長期保守つきの案件を重ね、新商材も当たり、値上げも定着する必要がある。連続して成功する筋書きで、確度は高くない。
やや楽観 20% 更新需要を取りこぼさず、ROEが8%台に届く 利益 163 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 3,920 円2,447 億円
国内の数量は横ばいだが、更新の質が上がる。QR乗車券とクレカ乗車、列車の位置を無線で見るCBTCへの切り替えで、日本信号は更新の波を取りこぼさない。ホームドアは国の4,000番線の目標を満たしたあとも、補修と更新で一定の売上が残る。海外では台湾に続いてインドで案件を積み、売上は500億円台になる。センシングは重機ロボと警備ロボットが売上を押し上げ、新しい商材が全体の1割を超える。営業利益率は10%前後を保つ。ただ、工場と開発の投資負担が大きく、ROEは8%台にとどまる。資本配分は改善するが、劇的には変わらない10年になる。
- 国内の鉄道信号・交通信号:数量 3,090(国内の鉄道信号・交通信号設備の市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 20.1%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 621 億円・営業利益 65 億円。市場は今の1.03倍、シェア15%、営業利益率10.5%
- 海外の鉄道信号:数量 333(世界の鉄道信号・都市交通の信号市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 1.61(実質の市場 1 億ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 535 億円・営業利益 48 億円。世界市場は今の1.28倍、シェア0.8%、営業利益率9%
- 駅務・ホームドア・入退場管理:数量 3,780(国内の駅務・ホームドア・入退場管理設備の市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 16.8%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 633 億円・営業利益 114 億円。市場は今の1.08倍、シェア12.5%、営業利益率18%
- ロボティクス・センシング:数量 7,250(対象市場の規模(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 3.8%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 272 億円・営業利益 38 億円。市場は今の1.45倍、シェア2.8%、営業利益率14%
倍率:事業の純利益 163 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 15.01 倍、時価総額 2,447 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残の厚みと QR・クレカ対応の更新需要は確かな追い風。国内の数量が横ばいでも、海外とセンシングで上へ振れる余地がある。
中立 36% 中立:堅い更新事業のまま、利益率は9%前後に落ち着く 利益 127 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,806 円1,751 億円
10年後も、日本信号は国内で信号と改札の堅い更新事業を続けている。国内の数量は横ばいで、物価分の値上げが売上を支える。海外は台湾とインドの案件が売上になり、世界市場の伸びに乗ってシェアを少し上げる。センシングは小さいが育つ。ただ、競争は厳しい。外資が国内の無線式信号に入り、改札機もスマートフォン対応で単価が重くならない。値上げの勢いは落ち着き、営業利益率は9%前後に戻る。利益のかなりが工場と開発に再投資され、ROEは7%弱にとどまる。事業は堅いが、特別な高収益にはならない。配当は利益の4割ほどを保つ。
- 国内の鉄道信号・交通信号:数量 3,000(国内の鉄道信号・交通信号設備の市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 19.4%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 583 億円・営業利益 58 億円。市場は今と同じ、シェア14.5%、営業利益率10%
- 海外の鉄道信号:数量 325(世界の鉄道信号・都市交通の信号市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 130.7%(実質の市場 1 億ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 425 億円・営業利益 34 億円。世界市場は今の1.25倍、シェア0.65%、営業利益率8%
- 駅務・ホームドア・入退場管理:数量 3,500(国内の駅務・ホームドア・入退場管理設備の市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 16.3%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 572 億円・営業利益 97 億円。市場は今と同じ、シェア12.2%、営業利益率17%
- ロボティクス・センシング:数量 6,750(対象市場の規模(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 3.1%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 208 億円・営業利益 27 億円。市場は今の1.35倍、シェア2.3%、営業利益率13%
倍率:事業の純利益 127 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 1,751 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の値上げと受注残は本物だが、過去の利益率の低さと、公共・入札案件の多さを考えると、10% 台は続かない見方が中心になる。
やや悲観 24% 国内の山が去り、海外の採算が薄くなる 利益 60 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 769 円480 億円
国内の更新の山が2030年ごろに去る。ホームドアは国の目標を満たして新設が減り、改札機はQR乗車券とクレカ乗車への対応を終えて需要が一服する。海外は台湾の工事が進む一方で、固定価格の大型案件に追加費用が出て、利益率が薄くなる。投資した宇都宮の新棟とセンシングの工場は稼働率が上がらず、減価償却が利益を削る。営業利益率は5%台まで戻り、2018年ごろの水準に近づく。事業が崩れるわけではない。保守の収入と顧客との関係は残る。政策保有株の削減も遅れ、資本効率は思うように上がらない。ただ成長期待は後退し、配当を維持するのが精いっぱいの10年になる。
- 国内の鉄道信号・交通信号:数量 2,850(国内の鉄道信号・交通信号設備の市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 18.1%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 516 億円・営業利益 39 億円。市場は今の0.95倍、シェア13.5%、営業利益率7.5%
- 海外の鉄道信号:数量 312(世界の鉄道信号・都市交通の信号市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 100.5%(実質の市場 1 億ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 314 億円・営業利益 16 億円。世界市場は今の1.2倍、シェア0.5%、営業利益率5%
- 駅務・ホームドア・入退場管理:数量 3,150(国内の駅務・ホームドア・入退場管理設備の市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 14.7%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 464 億円・営業利益 60 億円。市場は今の0.9倍、シェア11%、営業利益率13%
- ロボティクス・センシング:数量 6,000(対象市場の規模(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.7%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 161 億円・営業利益 13 億円。市場は今の1.2倍、シェア2%、営業利益率8%
倍率:ROE 3.7% は資本コスト 7.25% に届かず、ためた利益は額面未満の価値。稼ぐ力(純利益÷k、PER の上限は 13.8 倍)の 58% を置いた。優良でなくなったあとの利益で、自己資本の厚さや帳簿の額は根拠にしない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8 倍・時価総額 480 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:海外の大型案件の採算悪化、更新需要の一巡、投資の稼働率不足が同時に出る筋書き。2018 年 3 月期の利益率 2.5% という前例があり、厚めに置く。
悲観 12% 構造的に負ける:改札と信号の両方で席を失う 利益 25 億円 · PER 7.6 倍 · 株価時価総額 304 円190 億円
構造的に席を失う。国内では、日立やシーメンスなどの外資が、無線式の列車制御で鉄道会社の信頼を得る。日本信号は規模で劣り、更新の主役から外れる。駅ではクレカとスマートフォンが中心になり、改札機の台数が大きく減る。ホームドアは一巡して新設が細る。海外では、台湾で固定価格の大型案件の採算が崩れ、赤字を出して撤退に近い形になる。センシングは大手の壁に当たって育たない。売上は1,000億円を割り、営業利益率は3%に落ちる。顧客のJRとの持ち合いは残り、値上げもできない。配当を維持するのがやっとで、優良企業の評価を失う10年になる。
- 国内の鉄道信号・交通信号:数量 2,550(国内の鉄道信号・交通信号設備の市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 15.4%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 393 億円・営業利益 26 億円。市場は今の0.85倍、シェア11.5%、営業利益率6.5%
- 海外の鉄道信号:数量 286(世界の鉄道信号・都市交通の信号市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 60.3%(実質の市場 1 億ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 173 億円・営業利益 2 億円。世界市場は今の1.1倍、シェア0.3%、営業利益率1%
- 駅務・ホームドア・入退場管理:数量 2,450(国内の駅務・ホームドア・入退場管理設備の市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 12.1%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 296 億円・営業利益 33 億円。市場は今の0.7倍、シェア9%、営業利益率11%
- ロボティクス・センシング:数量 5,500(対象市場の規模(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.4%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 133 億円・営業利益 8 億円。市場は今の1.1倍、シェア1.8%、営業利益率6%
倍率:悲観の純利益 25 億円は ROE 1.6% で、ためた利益は額面未満の価値しかない。やや悲観の時価総額÷純利益 8.0 倍より悲観ほど低く置くので、その約 95% の 7.6 倍(時価総額 190 億円)とした(稼ぐ力 純利益÷k も超えない)。自己資本の厚さや市場の倍率は根拠にしない。下限は政策保有株の税後の額(177 億円)で、稼ぐ力の方が上回る。
確率:世界の大手が国内の無線式信号に入り、改札機が機器を減らす方向に進み、海外で大型損失が出る複合の筋書き。公共の安定需要があるため深くは落とさず、12% を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の鉄道信号・交通信号
鉄道信号(ATC・連動装置・無線式)と交通信号機・路車協調。国内の鉄道会社・警察向けの更新と保守が中心。
| 数量国内の鉄道信号・交通信号設備の市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア | 価格市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 14.9% | 448 | 42 |
| 10 年後 中立 | 3,000 | 19.4% | 583 | 58 |
取り方:会社は交通運輸インフラ(売上約 591 億円・利益約 51 億円)としか開示しない。うち海外を約 143 億円(売上の 12.5%)とみて、残る約 448 億円を国内の鉄道信号と交通信号とした。国内の市場は、信号三社の売上と交通信号機の更新規模から約 3,000 億円と推定し、シェアは約 15%。物価は価格に入れる。セグメント利益の約 51 億円は国内 42 億円・海外 9 億円と按分した推定。
海外の鉄道信号
台湾・インド・エジプト・バングラデシュなどの鉄道信号と、その保守。大型案件が長い工期で売上になる。
| 数量世界の鉄道信号・都市交通の信号市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア | 価格実質の市場 1 億ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 260 | 55.1% | 143 | 9 |
| 10 年後 中立 | 325 | 130.7% | 425 | 34 |
取り方:海外売上比率 12.5% から約 143 億円。世界の鉄道信号市場は 2023 年に約 212 億ドル、年 5.6%(名目)で伸びる見通しなので、今を約 260 億ドルと推定した。日本信号のシェアは約 0.37%(日立レール 36%、中国通号 18%、シーメンス 16%、アルストム 13%)。数量は市場の実質、物価は価格に入れる。利益は交通運輸インフラの按分で約 9 億円と推定。
駅務・ホームドア・入退場管理
券売機・自動改札機(AFC)、ホームドア、駐車場の入退場管理。QR 乗車券・クレカ乗車への更新が当面の山。
| 数量国内の駅務・ホームドア・入退場管理設備の市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア | 価格市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,500 | 12.6% | 440 | 86 |
| 10 年後 中立 | 3,500 | 16.3% | 572 | 97 |
取り方:ICT ソリューション事業(売上約 549 億円・利益約 105 億円)のうち、AFC・ホームドア・入退場管理を約 440 億円、ロボティクス・センシング(R&S)を約 109 億円と推定した(会社は R&S を分けて開示しない)。国内市場は、改札機・券売機の更新、年 500 番線規模のホームドア、駐車場設備を合わせて約 3,500 億円とし、シェアは約 12.6%。利益は ICT 全体の利益率 19% を当てて約 86 億円と推定。
ロボティクス・センシング
ホームドア用の3D距離画像センサ、警備ロボット、鉄道向けの重機ロボット、X線検査装置など。新しい商材が育つ段階。
| 数量対象市場の規模(億円・今の値段で測った実質)× シェア | 価格市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,000 | 2.2% | 109 | 19 |
| 10 年後 中立 | 6,750 | 3.1% | 208 | 27 |
取り方:警備ロボット、3D センサ、X 線検査、鉄道重機などの対象市場を約 5,000 億円と推定し、売上約 109 億円をシェア約 2.2% とした(開示が無いため推定)。利益は ICT 全体の利益率に近い約 17% として約 19 億円。新しい商材のため、市場は実質で伸びる前提を筋書きに置く。
リスクと懸念
利益率が山から戻る
営業利益率10.3%は、過去10年の中央値6%台を大きく上回る。何年も続いた実績はまだなく、需給が緩めば値上げは止まりうる。2018年3月期の2.5%という前例もある。
海外の大型案件の採算
台湾鉄路のCTC更新(約230億円)は1件で通期受注の16%を占める。固定価格で工期が長く、追加費用や遅れが出れば数年分の利益が飛びかねない。インド・アフリカは政情と予算執行の不確実さもある。
施工の人手と納期
受注残の1,333億円は、売上に変える工事の人手が追いつくかで価値が決まる。技術者が足りなければ、売上の計上が遅れ、違約や追加費用が出る。受注残が多いこと自体は安心材料にならない。
改札機の市場が縮む
QR乗車券とクレカ乗車が広がると、券売機と改札機の台数が減りうる。鉄道会社が自社開発やクラウド化を進めれば、機器メーカーの取り分も変わる。更新の山のあとの谷も深くなる。
投資の負担と稼働率
5年で設備450億円、宇都宮の建て替えは約130億円。売上が計画に届かなければ、減価償却が利益を削る。稼いだ利益の多くが再投資に回るため、ROEが資本コストを超えにくい。
政策保有株と顧客の関係
政策保有株は純資産の2割強で、持ち合い先にJRなどの顧客がいる。2029年3月末までに20%以下という目標は、株価が上がると遠のく。売却の進み方は、顧客との関係にも左右される。
ホームドアの一巡
国の目標は2030年度末に4,000番線で、2025年3月末は2,830番線。目標を満たしたあとは新設が細り、補修と更新が中心になる。最大手でも、需要の山のあとの落ち込みは避けにくい。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期連続で10%を超え、受注残の利益率も保たれたら
- 中立の利益率を9%から10%へ上げ、楽観側の確率を厚くする。山ではなく新しい水準だったという証拠になる。
- 台湾のCTC更新などの大型案件で、追加費用や工期の遅れが開示されたら
- 海外のシェアと利益率の前提を下げ、やや悲観の確率を上げる。固定価格の案件が続くほど影響は大きい。
- QR乗車券の導入が前倒しされ、日本信号が主要な鉄道会社の改札機を受注したら
- 駅務の売上と利益率の前提を上げる。更新の山が高く、長くなる筋書きに重みを移す。
- 鉄道会社が改札機を持たない方式やクラウド型の運賃システムに大きく移ったら
- 駅務の市場を縮める方向で見直す。構造的な負けの確率を上げる。
- 政策保有株の売却が進み、売却資金の使い道(自社株買いや配当)が示されたら
- 資本配分の評価を上げ、ROEの前提を引き上げる。還元に回るなら価値に直接効く。
- 外資が国内の無線式の列車制御で、主要な鉄道会社の採用を勝ち取ったら
- 国内の信号のシェアを下げる。更新の主役が替わる筋書きに重みを移す。
見ておくもの
- 営業利益率と、受注残の利益率の推移(四半期ごとの決算)
- 台湾CTC更新など海外大型案件の進み具合と、追加費用の有無
- QR乗車券・クレカ乗車の導入時期と、日本信号の受注の取り分
- 政策保有株の売却額と、純資産に対する比率(2029年3月末に20%以下)
- 宇都宮事業所の建て替えの進みと、センシング商材の受注
倍率と資本コストの決め方
倍率は、資本コスト7.25%(基本7.5%に値決め力の−0.25%)と、10年後の中立の純利益を10年後の自己資本で割ったROE(7%弱)から、利益ベースの式で出した。ROEは資本コストに届かないため、上限は1÷k(約13.8倍)。その9割弱の11.9倍を中立に置いた。今の株価や同業の倍率は見ていない。悲観は稼ぐ力(純利益÷k)を上限に、倍率をやや悲観の約95%に置いた。過去の倍率や自己資本の厚さは根拠にしていない。悲観の下限は政策保有株の税後の額で置いた。数字は今と同じ形(賃借の費用を営業費用に入れる形)にそろえ、新リース会計基準でBSの形が変わる点は価値に影響しない(鉄道向けの機器メーカーで、店舗や倉庫を大きく借りる会社ではない)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.4→17.07 倍・やや楽観 PER 13.2→15.01 倍・中立 PER 11.93→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality −0.25%(値決め −0.25)を足して k 7.25%。純負債はごく小さく、extra は置かない。