結論
ザインエレクトロニクスは、画像データを高速で送る半導体(V-by-One)を設計して売る小さな会社だ。自社で工場は持たない。近年は通信モジュールとAIサーバーのAIoT事業が、売上の4割近くまで育った。筆者の結論は、今の時価総額は10年の見通しに対して割高というものだ。
価値の中心は現金にある。純現金は64億円で、時価総額115億円の56%に当たる。残る約50億円が本業の値段だが、本業は過去10年で赤字の期が半分近くあり、ROEの中央値は0.3%にとどまる。
2026年12月期は売上が67億円と4割伸びる見通しだ。ただし伸びはAIサーバーなど利益の薄い売上が中心で、利益率の回復には届いていない。
中立の姿は、売上90億円、営業利益率4%弱。この水準では現金を除いた本業の価値は小さい。光通信向けの新チップが当たれば上振れるが、その確率は1割に届かないと筆者は見る。
時価総額が現金に近いのは、市場が本業の値段をほとんど付けていないからだ。筆者もその見方に大きな異論はない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は現金の入れ物としての価値が大半を占める。本業は利益が安定せず、堀も薄い。
見かけは安い。時価総額115億円に対し純現金64億円で、残りの50億円で事業を買える勘定になる。だが、現金が株主に回る保証はない。10年間、現金は積まれたままで、事業の赤字に使われてきた。
事業の側では、規格を握るLSIは魅力がある。ただし規模が小さく、年ごとの利益が読めない。AIサーバーの売上は伸びても、利益は薄い。
中立では、10年後の純利益は4億円ほどで、事業の価値は数十億円にしかならない。現金を半分しか評価しないのは、使い方を決めるのが経営で、少数株主ではないからだ。上下の幅が不利に偏るので、確信度は低い。
筆者がいちばん気にしているのは、現金が事業の失敗に使われ続ける点だ。
事業の価値が低くても、現金が確実に戻るなら話は変わる。そこが見えないのが最大の弱点だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は2つある。LSI事業は、画像データを高速に送る半導体や、電源を制御する半導体、画像処理の半導体を設計して売る。工場は持たず、製造は外部に任せる。売上の用途は産業機器が56%、車載が25%、民生機器が19%だ。
AIoT事業は、子会社のザインモバイルテックを軸に、4Gや5Gの通信モジュール、通信ゲートウェイ、AIサーバーを売る。主な客は富士通とマクニカだ。2025年の売上は18億円で、2026年は上期だけで大きく伸びている。
このほか、製品の中核を技術として貸すライセンス収入もある。PCI Express 6.0/7.0向けの光半導体チップセットは、2027年から2028年の投入を目指して開発中だ。
LSIは設計が主導の事業で、客の採用が決まれば長く売れる。ただし開発費が重く、採用が決まるまでは赤字が続く。AIoTは仕入れて売る要素が強く、利益率は低い。
子会社のザインモバイルテックは、通信モジュールの設計から販売までを手がける。LSIとAIoTは客も市場も別で、両者の間に技術上のつながりは薄い。
優良さと弱いところ
一言でいえば、技術は確かだが、事業の規模が小さすぎて利益が安定しない会社だ。
V-by-Oneは、液晶テレビや車載ディスプレイで使われる伝送の規格だ。規格を握っているため、採用された製品では長く売れる。これが堀、つまり他社がまねしにくい強みの芯になっている。ただし市場は限られ、大手の半導体会社との競争もある。
利益率は10%を超えた年と、マイナス20%台の年が混在する。過去20年の赤字は6回あった。研究開発費は売上が変わっても減らせず、売上が小さいほど利益が大きく揺れる。
資本効率は低い。自己資本比率は90%と高いが、ROEの中央値は0.3%にとどまる。現金が事業に使われず、積まれたままという意味でもある。経営は光半導体という新しい柱に挑んでいるが、成果はまだ売上に表れていない。堀は弱いと置く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
高速伝送の半導体は、ディスプレイの高精細化、車載カメラの増加、産業機器の画像処理に支えられ、数量は10年で緩やかに伸びる。ただし、世界の大手との競争で、価格は物価並みには上がらない。
車載向けは、センサーとディスプレイの数が増える追い風がある。だが、車載半導体は大手が相手で、採用の決定は数年がかりだ。同社の車載比率は25%と、まだ大きくはない。
AIサーバーとデータセンターの需要は、半導体全体の追い風だ。ただし、同社のAIサーバー事業は仕入れて売る形で、利益率は低い。光半導体のチップセットは本命の技術だが、市場には大手が並ぶ。
通信モジュールは、スマートメーターなど長期の更新需要がある。ただし価格競争が厳しい。10年の中立は、LSIが緩やかに伸び、AIoTが数量で伸びるが利益率は薄い、という姿になる。為替は150円で固定して考える。
半導体の設計会社は、新しい規格を先に押さえた会社が長く売れる。同社はその規格を持つ小さな会社だが、規格の次の世代への移行が遅れれば、数量はすぐに落ちる。
競合の動きも見逃せない。台湾や中国の設計会社は、低い値段で似た機能の製品を出してくる。
資本政策と M&A
資本政策の主題は、積み上がった現金をどう使うかだ。
純現金は64億円で、過去10年は53億円から77億円の間で動いてきた。配当は小さく、自社株買いの実績も乏しい。現金は事業の赤字の穴埋めと、新しい開発に回っている。
経営はAIoT事業の拡大と光半導体の開発に資金を使う方針だ。企業の買収を伴う拡大も排除できない。うまくいけば現金は成長に変わるが、失敗すれば現金が減る。
過去の分析では、10年以内のTOB(株式公開買い付け)の確率は2割弱とされる。現金が厚い小型株は、買収側にとって魅力がある。ただし、中期の数値目標は確かめられた資料では確認できなかったため、事業の数量と価格から自前で積み上げた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
技術の芽は育っている。V-by-Oneの次の規格を発表し、車載カメラやエッジAIカメラへの採用を広げている。光通信向けのチップセットが2027年から2028年に市場へ出れば、データセンターの成長に乗れる。
2026年は売上が伸びている。上期は売上が2倍になり、AIoT事業が全体を押し上げた。LSIで赤字が続いても、AIoTで補える構図が見えてきた。
財務の余力は大きい。純現金64億円は、時価総額の半分を超える。事業で赤字が出ても、数年は耐えられる。光チップが一度でも大口の採用を取れば、売上は数倍に化ける。
また、現金が厚く規模が小さいため、買収側にとって魅力がある。TOBが来れば、現金に上乗せされた値段が付く可能性がある。
小さな会社の利益は、一つの大口の採用で数倍に動く。光チップと車載の二つの芽が同時に出れば、10年後の売上は今の3倍もありうる。
AIoTも、通信モジュールの更新需要は10年続く。スマートメーターなど長期の需要が、売上の土台になる。
慎重な見方
本業の稼ぐ力が資本コストを大きく下回り続けている。過去20年で赤字は6回、ROEの中央値は0.3%だ。2025年も営業損失は3億円を超え、2026年の上期も営業損失が3億円ある。会社の通期予想は営業利益がほぼゼロだ。
売上の伸びは、利益の薄いAIサーバーが中心だ。仕入れて売る事業は、規模が増えても利益はあまり増えない。LSIの売上は、2026年第1四半期で前年から25%減った。
現金は64億円あるが、使い道を決めるのは経営だ。10年間、積み上がったままで、株主には小さな配当が出るだけだった。光半導体の開発が失敗すれば、現金が目減りするだけで終わる。
TOBの期待は値段を守る材料にならない。赤字の小型株に高い値段を付ける買い手は、通常は現れない。
また、研究開発の負担は売上が小さいほど重くのしかかる。光通信は大手が先を行き、後発が収益を出すまでの道は長い。
AIoTの通信モジュールは価格競争が激しく、スマートメーター向けの需要も大手が握る。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がかなり強いと判断した。本業の稼ぐ力は弱く、現金は戻ってこない可能性が高い。確率は悲観側に48%、中立に30%、楽観側に22%を置いた。現金は半分だけ評価し、残りは事業に使われるものと見る。結果は今の時価総額を大きく下回る。
楽観側の言い分は、規格の技術力と現金の厚さに根拠がある。慎重な見方は、本業の稼ぐ力の弱さと現金が戻らない点に根拠があり、こちらを重く見た。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 581 円61 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 121 円13 億円)。 今の値に割り戻すと 331 円35 億円、今との差 −66.9%、 期待の年率 −3.5%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,804 円191 億円 | 208 円22 億円 | +101.2% | +7.2% | 121 円13 億円 |
| やや楽観 | 16% | 1,008 円107 億円 | 180 円19 億円 | +18.8% | +1.7% | 190 円20 億円 |
| 中立 | 30% | 631 円67 億円 | 151 円16 億円 | −21.8% | −2.4% | 235 円25 億円 |
| やや悲観 | 28% | 303 円32 億円 | 95 円10 億円 | −60.3% | −8.8% | 111 円12 億円 |
| 悲観 | 20% | 189 円20 億円 | 38 円4 億円 | −77.3% | −13.8% | 45 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 581 円61 億円 | 121 円13 億円 | −29.8% | −3.5% | 702 円74 億円 |
今の株価時価総額 1,000 円106 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 光半導体と車載が当たり、LSIが黒字の成長軌道に乗る 利益 13 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 1,804 円191 億円
光通信向けの半導体が2027〜2028年に市場へ出て、データセンター向けで大口の採用を取る。LSIの売上は数倍になり、営業利益率は15%に乗る。
車載はV-by-Oneの次の規格が広がり、センサーとディスプレイの数の増加を取り込む。AIoTも通信モジュールとAIサーバーの両方が伸びる。
営業利益は16億円ほどになり、現金は積み上がって配当も増える。それでも、市場が小さく利益が読みにくい構造は変わらず、利益率が10%台で続くとは置かない。電動化や高精細化の追い風も、10年先まで続くかは分からない。
- LSI(高速伝送・電源・画像処理チップ):数量 1,920(出荷個数(万個、推定))× 価格 0.04(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 85 億円・営業利益 13 億円。LSI 利益率15.0%
- AIoT(通信モジュール・AIサーバー):数量 120(出荷台数相当(万台、推定))× 価格 0.61(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 73 億円・営業利益 4 億円。AIoT 利益率5.0%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.4% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 13.13 倍、時価総額 191 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:光半導体と車載の両方が当たる必要があり、当たれば大きいが重なる確度は低い。5%を少し超える水準に置いた。
やや楽観 16% LSIの採用が広がり、AIoTも黒字を保つ 利益 7 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,008 円107 億円
LSIの採用が車載と産業機器で少しずつ広がり、数量は1.7倍になる。営業利益率は9%に上がる。
AIoTは通信モジュールの更新需要とAIサーバーで数量が2.2倍になり、利益率は4%を保つ。
営業利益は7〜8億円で、現金は少し積み上がる。配当は小さく増える。光半導体は小さな採用にとどまる。
会社の長期の目標に近い姿だが、劇的な改善にはならない。
光半導体は小さな採用にとどまるが、研究開発の負担は収入で賄える範囲に収まる。
AIサーバーの売上は伸びるが、利益はほとんど出ない。
車載向けはセンサーとディスプレイの数の増加を取り込み、産業機器向けも安定する。会社は規格の次の世代へ移る費用をまかなえる。
- LSI(高速伝送・電源・画像処理チップ):数量 1,360(出荷個数(万個、推定))× 価格 0.04(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 60 億円・営業利益 5 億円。LSI 利益率9.0%
- AIoT(通信モジュール・AIサーバー):数量 88.0(出荷台数相当(万台、推定))× 価格 0.61(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 53 億円・営業利益 2 億円。AIoT 利益率4.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.5% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 107 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:LSIの採用が少しずつ広がる筋書き。ただし会社の通期予想の営業利益がほぼゼロで、2割には届かない水準とした。
中立 30% 中立:LSIは赤字を脱し、AIoTは薄利で売上だけ伸びる 利益 4 億円 · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 631 円67 億円
LSIの数量は10年で1.35倍に伸び、赤字を脱して利益率は5%に届く。価格は半導体の平均単価が下がる影響で、物価の1.34倍に届かず1.20倍にとどまる。
AIoTは数量が1.8倍に伸びるが、仕入れて売る形で利益率は3%の薄利だ。営業利益は4億円弱で、現金の受取利息が純利益を支える。
配当は小さく、自社株買いは行わない。ROEは4%前後で、資本コストを大きく下回り続ける。
研究費は物価で増えるが、減価償却の負担は軽く、設備投資は小さい。
光半導体は小さな売上を作るが、全社の利益を変えるほどではない。
- LSI(高速伝送・電源・画像処理チップ):数量 1,080(出荷個数(万個、推定))× 価格 0.04(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 45 億円・営業利益 2 億円。LSI 利益率5.0%
- AIoT(通信モジュール・AIサーバー):数量 72.0(出荷台数相当(万台、推定))× 価格 0.61(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 44 億円・営業利益 1 億円。AIoT 利益率3.0%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 11.7 倍、時価総額 67 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:LSIが赤字を脱し、AIoTは薄利のままという最も重い筋書き。強い堀がなく、慎重な見方がかなり強いので悲観側を厚くした。
やや悲観 28% LSIの赤字が続き、AIサーバーの利益も出ない 利益 −2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 303 円32 億円
LSIの採用が伸びず、数量は横ばいにとどまる。値段も物価に届かず、営業損失が続く。
AIサーバーの売上は一巡し、AIoTの利益も出なくなる。
研究開発費は物価で増え続け、営業損失は毎年2〜3億円になる。現金は少しずつ減り、受取利息が赤字の一部を補うだけになる。配当は据え置かれるが、増えることはない。
倒産には遠いが、現金が株主に戻る道筋も見えない10年になる。
光半導体の採用は小さく、開発費が回収できない年が続く。
受取利息が営業損失の一部を補うが、全体では赤字が続く。
経営は費用の削減を進めるが、売上が小さいため効果は限られる。研究開発の人員は物価で費用が増え、削る余地は小さい。
- LSI(高速伝送・電源・画像処理チップ):数量 800(出荷個数(万個、推定))× 価格 0.04(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 33 億円・営業利益 −3 億円。LSI 利益率-8.0%
- AIoT(通信モジュール・AIサーバー):数量 48.0(出荷台数相当(万台、推定))× 価格 0.59(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 28 億円・営業利益 0 億円。AIoT 利益率0.0%
倍率:赤字が続く筋書きなので稼ぐ力でなく売れる資産で測る。純現金の目減り後の約 55 億円のうち、事業に使う分と戻り方を考えて約 32 億円を床とし、今の自己資本 約 87 億円の 0.37 倍に置いた。
確率:LSIの赤字が続く筋書き。過去20年で赤字が6回あり、小さな規模の事業が安定しにくいため3割弱に置いた。
悲観 20% 新チップが外れて赤字が続き、現金が目減りする 利益 −5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 189 円20 億円
光半導体の開発が外れ、LSIは数量が3割減る。値段も下がり、営業損失は拡大する。
AIサーバーの売上も縮み、AIoTは赤字になる。
現金は赤字の穴埋めに使われ、10年で目減りする。配当はほぼなくなる。経営は最後に事業の縮小か売却に向かう。
現金が残るうちは倒産しないが、株主に回る価値は、残った現金の一部にとどまる。
過去の赤字期と同様に、自己資本の目減りで財務の余力が細っていく。
最終的には、客の採用が決まらず、開発の継続も難しくなる。
経営は開発の中止と人員の削減を迫られ、残る事業は縮んだ通信モジュールだけになる。現金が残るうちは配当を維持するが、増やす余力はない。
- LSI(高速伝送・電源・画像処理チップ):数量 560(出荷個数(万個、推定))× 価格 0.04(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 20 億円・営業利益 −5 億円。LSI 利益率-25.0%
- AIoT(通信モジュール・AIサーバー):数量 20.0(出荷台数相当(万台、推定))× 価格 0.54(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 −1 億円。AIoT 利益率-5.0%
倍率:赤字が拡大する筋書きなので売れる資産で測る。純現金は赤字で約 35 億円まで目減りし、戻り方を掛けて約 20 億円を床とし、今の自己資本 約 87 億円の 0.23 倍に置いた。
確率:新チップが外れ、現金が減っていく筋書き。純現金が厚く倒産には遠いため、20%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
LSI(高速伝送・電源・画像処理チップ)
画像データ高速伝送LSI(V-by-One)、電源LSI、画像処理LSI、ライセンス収入。
| 数量出荷個数(万個、推定) | 価格1単位あたり売上(万円/単位相当、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 800 | 0.04 | 28 | −4 |
| 10 年後 中立 | 1,080 | 0.04 | 45 | 2 |
取り方:2025年の売上46.4億円からAIoTの18.1億円を引いた約28.3億円をLSIとした。出荷個数800万個(推定。開示なし)で割った単価。営業利益は推定で−4.0億円(2026年第1四半期のLSI営業損失4.0億円から類推)。価格は半導体の平均単価が物価に届かないとして、中立は1.20倍。
AIoT(通信モジュール・AIサーバー)
4G/5G通信モジュール、通信ゲートウェイ、AIサーバー。子会社ザインモバイルテックが中心。
| 数量出荷台数相当(万台、推定) | 価格1単位あたり売上(万円/単位相当、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 40.0 | 0.45 | 18 | 1 |
| 10 年後 中立 | 72.0 | 0.61 | 44 | 1 |
取り方:AIoTの2025年売上18.1億円を、出荷台数相当40万台(推定)で割った単価。営業利益は全社の営業損失−3.4億円との差から推定し、+0.6億円。AIサーバーを含めて中立は数量1.8倍、価格は物価並みの1.34倍。
リスクと懸念
本業の赤字
過去20年で赤字は6回。2025年も営業損失は3億円を超えた。研究開発費は売上が変わっても減らせず、売上が小さいほど利益が大きく揺れる。
単一の規格への依存
V-by-Oneという規格に利益が偏る。次の規格への移行や大手の採用方針の変更が、売上に直結する。
AIサーバーの利益の薄さ
AIoTの伸びは、仕入れて売る形のAIサーバーが中心で利益は薄い。客も富士通とマクニカに偏り、売上が増えても利益はあまり増えない。
光半導体の開発リスク
PCI Express 6.0/7.0向けの光チップセットは、2027〜2028年の投入を目指している。市場は大手が並び、成功しなければ開発費だけが残る。
現金が株主に戻らないこと
純現金は64億円で時価総額の56%だが、10年以上積まれたままだ。経営の判断で新事業の失敗に使われれば、株主の価値は目減りする。
米国の関税と中国向け
米国の関税で、中国向けの受注に不安がある。車載の米国向け出荷は伸びているが、通商政策に左右される。
今後の分かれ目
- 光半導体で大手データセンター事業者の採用が決まったら
- LSIの数量と利益率の前提を上げ、楽観側へ確率を移す。
- LSIの営業利益率が10%を超えて2年続いたら
- 中立の利益率を上げ、倍率の質も見直す。
- LSIの赤字が3年続いたら
- 悲観側の確率を上げる。
- 自社株買いや特別配当で現金を戻す方針が出たら
- 戻り方を引き上げる。
- AIサーバーの売上が縮み、AIoTが赤字になったら
- AIoTの前提を下げる。
- TOBの提案が出たら
- 価格を本質価値と比べ、筋書きの外の事象として別に評価する。
見ておくもの
- LSI事業の営業利益
- 光半導体の開発の進み具合と採用の発表
- AIoTの利益率
- 純現金の推移
- 車載向けの出荷比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は式の上限(ROE が k 以下なので 1÷k = 10.8 倍)に対し、利益の質が低いため7割〜8.3割に置いた。過去・現在・同業の PER や PBR は使っていない。余った現金は40億円と分け、戻り方0.5を掛けて足した。悲観側は赤字で稼ぐ力がないため、目減り後の純現金から床を置いた。減価償却は小さく、物価で増やすことはしなかった。新リース会計基準の影響は小さい。結果は今の値段を大きく下回ったが、計算を株価に寄せる調整はしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9→13.13 倍・やや楽観 PER 8→12.9 倍・中立 PER 7.5→11.7 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.75% を足した 9.25%。小さな規模の脆さは quality の寿命で見て、さらには k に足さなかった。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 9.00%。