結論
ジャパンディスプレイは、車載を中心に中小型の液晶パネルを作る会社だ。2012 年にソニー・東芝・日立の液晶部門を束ねて生まれ、今は不動産会社系のいちごトラストが株の大半を握る。筆者の結論は「大幅な割高」だ。理由はひとつ、稼ぐ力がまだ見えないのに、株価がすでに再生を織り込んでいるからである。
売上は 10 年で 7,700 億円から 1,300 億円まで縮み、営業赤字は 12 期続いた。茂原工場を止め、国内の従業員を約 6 割減らして固定費を削った。それでも黒字化の目標は 2027 年度だ。今期の営業赤字は 100 億円の見込みである。
命綱はいちごの新株予約権だ。最大約 960 億円で、行使価額は今の株価より低い。すでに 100 個のうち 21 個が行使され、残りも段階的に行使される公算が大きい。全部が行使されると株数は今の約 1.7 倍に増え、既存株主の取り分は 4 割ほど薄まる。
筆者は、再建が計画どおり進んでも、10 年後の会社全体の価値は数百億円どまりと見る。そこから株数の増加分を引くと、既存株主の取り分はさらに小さい。センサーとガラス基板が育てば上振れるが、パネル事業の利益率は中国勢の下で低いままだ。自己資本は 6 月にようやくプラスに戻ったばかりで、安全域はほとんどない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「理解はできるが、持ちたくない」部類に入る。
第一に、事業が予測しにくい。10 年後に車載パネルの価格がどうなるか、センサーが本当に売れるのか、筆者には言い切れない。わからない事業には、安全域を厚く取るのが原則だ。
第二に、稼いだ利益のうち株主の手に残る分がほとんどない。工場を持たない形に変わっても、設計や開発の人件費と設備投資は要る。再建に必要な資金は、いちごが今の株価より低い値段で払い込んで埋めている。新しく入る株は安い値段で、既存の株主の取り分が薄まる。
第三に、資本の使い方に疑問が残る。過去 10 年で自己資本は 4,000 億円から赤字に落ちた。eLEAP の量産投資を詰めきれなかったことも、事業の見立てを誤った例だ。
一方で、筆者が評価する点もある。人員と工場の整理は、数字で見ると本気だ。損益分岐点は大きく下がり、2027 年度の黒字化は届かない目標ではない。
ただ、黒字になっても、取り分は薄い。今の値段に安全域はなく、築けるのは楽観のごく一部だけだと筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は車載ディスプレイだ。インパネ、センターディスプレイ、デジタルミラーに使う低温ポリシリコン液晶を、自動車メーカーとその一次部品会社に納める。車載事業は 2025 年 10 月に分社して Autotech が引き継いだ。2 画面を 1 枚で見せる 2VD も、高級車向けの新しい売り物だ。
残りは、スマートウォッチや VR 向けの小型パネル、産業機器向けの液晶だ。スマートフォン向けの液晶は 2023 年に撤退を決め、売上はほぼ消えた。
会社が次の柱に据えるのは、パネルの外にある。ひとつはセンサーだ。ディスプレイの薄膜技術で面状のセンサーを作り、2026 年 6 月に量産を始めた。もうひとつは先端半導体パッケージングだ。ガラスのコアを使う基板で、衛星通信用アンテナ向けには Kymeta と共同開発の契約を結んだ。いずれも自前の工場は持たず、外部と組むファブレスで進める。
工場の整理は進んでいる。茂原工場は 2026 年 3 月に生産を止め、売却先を探している。鳥取工場は売却が済んだ。次世代有機 EL の eLEAP は量産計画が止まり、ファブレスでの展開を探る段階に後退した。
優良さと弱いところ
筆者は、この会社に堀(他社がまねできない強み)は見当たらないと見る。
車載パネルは、車種ごとに設計に組み込まれるため、一度採用されれば数年は売れ続ける。これが唯一の粘りだ。ただ、液晶そのものは差のつきにくい部品である。サムスン、LG、BOE、天馬微電子など、資金力のある競合に価格を決められてきた。
財務は弱い。ここ 10 年で自己資本は 4,000 億円から赤字へ落ち、2026 年 3 月末は債務超過だった。営業利益が利払いをまかなえない状態も続いている。6 月に純資産が 36 億円のプラスに戻ったのは、いちごが新株予約権を行使して現金を入れたからで、稼いだ結果ではない。
人の面では、国内の従業員を約 2,600 人から約 1,100 人へ減らす大手術を終えた。損益分岐点は 2024 年度の売上 3,000 億円超から、2026 年度は 600 億円台へ下がる計画だ。身軽にはなったが、売上が 800 億円まで縮む中での話である。
筆者は、この会社を一言でいえば「安い部品を作る小さな会社に戻る途中」と見ている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
中小型ディスプレイは、作りすぎが続く業界だ。
車載向けは、1 台に載る画面が増え、大型化も進むため、市場は広がる。ただ、需要の伸びは供給の伸びに追いつかない。中国の BOE や天馬微電子が車載に攻め込み、値下がりが続く。自動車メーカーが中国で調達を現地化する流れも、日本のパネル会社には向かい風だ。
有機 EL への移行も重荷だった。スマートフォンやウォッチの画面が有機 EL に変わる中で、JDI は液晶に偏ったまま、量産投資を決められなかった。eLEAP は技術としては評価されたが、顧客と資金が揃わず、量産には至っていない。
センサーとガラス基板は、ディスプレイと比べれば伸びる領域だ。フィジカル AI でセンサーの需要が増え、AI の半導体では、シリコンの下に敷くガラス基板が注目されている。ただ、どちらも専業の大手が先行しており、JDI は後発である。市場が伸びても、取れるシェアは 1% 台にとどまると筆者は見る。
業界の分かれ目は、中国勢の車載パネルの値下げがどこで止まるかだ。止まらなければ、車載のシェアを守っても利益は出ない。
資本政策と M&A
資本政策は、いちごへの依存そのものだ。
いちごトラストは 2020 年に資本提携して筆頭株主となり、2023 年から支配株主である。今は普通株の約 8 割を持つ。2025 年 6 月には最大約 960 億円の新株予約権を決め、行使価額は今の株価より低く決めた。行使が進めば持株比率は 9 割を超える。
この仕組みには二つの意味がある。ひとつは、赤字を埋める現金が途切れないことだ。もうひとつは、いちご以外の株主の持分が薄まることだ。
上場維持の問題もある。市場に出回る株の割合は 2025 年 3 月末で約 2 割で、プライムの基準の 35% に遠い。2028 年 3 月末が期限である。満たせなければ監理銘柄になり、上場廃止もありうる。
配当と自社株買いは当面できない。工場や知的財産の売却で借入を返す段階だ。茂原工場の売却は 2027 年 3 月期中の決済を目指しているが、価格は公表されていない。TOB や完全子会社化は、いちごが 9 割を持つ以上、今後の現実的な選択肢のひとつだ。その場合の価格が、今の株価を大きく上回る保証はない。
新株予約権は第14回で、100個、全部で約 38.5 億株分にあたる。2026 年 9 月末までに 21 個が行使され、79 個(約 761 億円)が残る。この分析は、残り全部が行使される前提で、既存株主の取り分を「会社全体の価値 × 今の株数 ÷ 行使後の株数」で測る。行使で入る現金は会社に残り、損失の穴埋めと設備に使われて、会社全体の価値に反映される。いちごが持つ E 種優先株が普通株に転換されると、さらに約 23 億株分が増える。この追加の希薄化は数字に入れていない。
点検済み:中立の営業利益率3.1%が過去最高(2017年3月期の1.2%)を超え、会社は今期まで赤字、28年3月期でようやくゼロの予想だったため、車載2.5%・その他3.5%に置き直した(全社0.9%)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
固定費の削減は、計画どおりに進んでいる。茂原を止め、鳥取を売り、国内の従業員を約 6 割減らした。損益分岐点は大きく下がり、2026 年 4〜6 月期の純損失は前年の 202 億円から 34 億円に縮んだ。2027 年度の黒字化は射程にある。
新しい事業の芽もある。センサーは 2026 年 6 月に量産が始まった。ガラス基板は、AI の半導体の積層が進めば、シリコンに代わる土台として需要が膨らむ。Kymeta との衛星アンテナ向けの契約は、顧客がすでに決まっている証拠だ。ディスプレイで磨いた薄膜と高精細配線の技術は、そのまま転用できる。
車載も底堅い。2VD やデジタルミラーなど、他社が持たない用途で単価を守れる。フィリピンの量産が立ち上がれば、コストでも中国勢に近づく。
さらに、茂原工場の売却額が見えれば、借入が減り、財務は一気に軽くなる。いちごは今の株価より低い値段でも現金を入れてきた。見捨てるつもりなら、そこまでしない。株主としての利益を取りに来ている以上、再建を成功させる動機は強い。
慎重な見方
黒字化の目標は 2027 年度だが、会社の予想は営業赤字 100 億円だ。計画が一度でも遅れれば、いちごの追加の資金に頼るしかない。
売上は 10 年で 7,700 億円から 1,300 億円に縮み、今期は 800 億円の見込みだ。縮んだ会社が黒字になるには、固定費が売上に見合うまで落ちていなければならない。損益分岐点の計画は意欲的だが、車載パネルの値下げが続けば、分岐点は下がっても利益は残らない。
新しい事業は、まだ売上が小さい。センサーとガラス基板は、専業の大手が先行しており、後発が取れる分は限られる。ファブレスで進める以上、利益の大半は製造を受け持つ相手に残る。
株の問題も重い。いちごの新株予約権は今の株価より低い行使価額で、行使が進むほど既存株主の取り分は薄まる。流通株の割合は 2 割で、上場維持の基準に遠い。最悪の場合、上場廃止と完全子会社化が、安い値段で進む。
今の株価は、これらの問題をほとんど織り込まず、再建が成功する前提に寄っている。
どちらに重みを置いたか
固定費削減の実行力は強気の見方に分がある。ただ、再建後の利益の水準を考えると、慎重な見方の指摘が上回る。売上が 800 億円台で黒字になっても、株主に残る利益は数十億円だ。そこに新株予約権の希薄化がかぶさり、既存株主の取り分は 6 割弱に縮む。
確率は、中立と、やや悲観にほぼ同じ重みを置いた。ガラス基板が大化けする楽観は 6% にとどめた。再建が止まって上場廃止か完全子会社化に至る悲観は、いちごが支配株主であることを踏まえて、18% を置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6 円258 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 0 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 2 円91 億円、今との差 −93.2%、 期待の年率 −15.2%(資本コスト 11.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 36 円1,588 億円 | 0 円0 億円 | +18.7% | +1.7% | 2 円95 億円 |
| やや楽観 | 16% | 17 円748 億円 | 0 円0 億円 | −44.1% | −5.6% | 3 円120 億円 |
| 中立 | 30% | 2 円93 億円 | 0 円0 億円 | −93.0% | −23.4% | 1 円28 億円 |
| やや悲観 | 30% | 1 円46 億円 | 0 円0 億円 | −96.6% | −28.6% | 0 円14 億円 |
| 悲観 | 18% | 0 円9 億円 | 0 円0 億円 | −99.4% | −39.6% | 0 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6 円258 億円 | 0 円0 億円 | −80.7% | −15.2% | 6 円258 億円 |
今の株価時価総額 30 円1,337 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 11.0% を下回るほど割高。
楽観 6% ガラス基板とセンサーが当たり、再建が定着 利益 255 億円 · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 36 円1,588 億円
2027 年度の黒字化が計画どおりに届き、その後もセンサーとガラス基板が伸びる。衛星アンテナ向けのガラス基板が量産に入り、AI の半導体向けの基板でも採用が決まる。センサーは量産で顧客を広げ、非車載の売上は今の 4 倍を超える。
車載は、2VD とデジタルミラーで単価を守り、フィリピンの量産で中国勢に近いコストに寄る。シェアは 7% を保つ。
いちごの新株予約権の行使は進み、自己資本は 1,400 億円を超えるが、増資で株数が増えるため、1 株の取り分は薄まる。上場維持の基準は、いちごが一部を市場に放出して満たす。
10 年後は、売上が 3,000 億円を超える小さくて身軽な会社になる。ただ、ディスプレイの利益率は 1 桁にとどまる。
既存株主の取り分は、会社全体の価値に、今の株数÷行使後の株数(0.5765)を掛けて測る。
- 車載ディスプレイ:数量 130(世界の車載ディスプレイ市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 14(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,829 億円・営業利益 146 億円。市場 130 億ドル(実質)× シェア 7.0%、営業利益率 8%
- 非車載(ウォッチ・VR・産業・センサー・パッケージング):数量 300(対象市場(小型パネル・センサー・パッケージ基板の合計・億ドル・実質))× 価格 4.82(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,447 億円・営業利益 203 億円。市場 300 億ドル(実質)× シェア 2.4%、営業利益率 14%
倍率:事業の純利益 255 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.5% が k 11.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 14.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.3 倍。全体の PER 10.25 倍、時価総額 2,614 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ガラス基板の採用が広がり、センサーも量産で顧客を取り、しかも車載パネルの値下げが止まる、という複数の条件が揃う必要があり、5% 台にとどめる。支配株主のいちごが再建の成功を狙っている点は織り込んだ。
やや楽観 16% 新事業が育ち、小さいが黒字の会社になる 利益 135 億円 · PER 9.6 倍 · 株価時価総額 17 円748 億円
黒字化は 2027 年度から 2028 年度にずれ込むが、その後は黒字が定着する。センサーとガラス基板が小さな柱として育ち、非車載の売上は今の 3 倍強になる。ただ、後発のため、ガラス基板で取れるシェアは限られる。
車載は、2VD などの新用途が一定の単価を保つ一方、中国勢の値下げでシェアは 6.5% に下がる。利益率は 6% どまりだ。
いちごの新株予約権の行使が進み、自己資本は 900 億円ほどになる。茂原工場の売却で借入が減り、利払いが軽くなる。
10 年後は、売上 2,600 億円弱、営業利益 150 億円ほどの会社だ。成長は物価並みで、再投資も要るので、株主に配れる分は少ない。
既存株主の取り分は、会社全体の価値に、今の株数÷行使後の株数(0.5765)を掛けて測る。
- 車載ディスプレイ:数量 120(世界の車載ディスプレイ市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 13(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,568 億円・営業利益 94 億円。市場 120 億ドル(実質)× シェア 6.5%、営業利益率 6%
- 非車載(ウォッチ・VR・産業・センサー・パッケージング):数量 280(対象市場(小型パネル・センサー・パッケージ基板の合計・億ドル・実質))× 価格 3.82(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,069 億円・営業利益 107 億円。市場 280 億ドル(実質)× シェア 1.9%、営業利益率 10%
倍率:事業の純利益 135 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.7% が k 11.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 9.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 9.6 倍。全体の PER 9.61 倍、時価総額 1,297 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:固定費削減は進んでおり、2027 年度前後の黒字化は現実的な範囲にある。センサーとガラス基板が小さく育つ想定で、会社計画に近い。
中立 30% 黒字にはなるが、利益は薄いまま 利益 18 億円 · PER 9.1 倍 · 株価時価総額 2 円93 億円
黒字化は 2029 年度にずれ込み、その後は薄い利益を出し続ける。車載の世界シェアは 6% へ下がり、中国勢との価格競争で営業利益率は 3% に届かない。センサーとガラス基板は小さな事業として残るが、非車載の売上は今の 2 倍強にとどまり、利益も薄い。
いちごの新株予約権は順に行使され、自己資本は 290 億円ほどになる。借入は、茂原工場の売却と増資で大きく減る。それでも、設備更新と開発の費用で、手元の現金はぎりぎりの水準が続く。
10 年後は、売上 2,100 億円、営業利益 20 億円の小さな会社だ。名目では伸びているが、実質では今より小さい。上場は維持されるが、株主に配る余力は乏しい。
既存株主の取り分は、会社全体の価値に、今の株数÷行使後の株数(0.5765)を掛けて測る。
- 車載ディスプレイ:数量 115(世界の車載ディスプレイ市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 12(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,387 億円・営業利益 35 億円。市場 115 億ドル(実質)× シェア 6.0%(今の 6.7% から低下するので、価格は物価の 1.34 倍に届かず 1.21 倍)、営業利益率 2.5%
- 非車載(ウォッチ・VR・産業・センサー・パッケージング):数量 260(対象市場(小型パネル・センサー・パッケージ基板の合計・億ドル・実質))× 価格 2.81(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 732 億円・営業利益 26 億円。市場 260 億ドル(実質)× シェア 1.4%、営業利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 11.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 9.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 9.1 倍。全体の PER 9.09 倍、時価総額 162 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:固定費削減は進むが、車載パネルの値下げが続き、新事業の取れるシェアは 1% 台にとどまる。会社が示す黒字化の目標をやや遅れで達成する見立てを中立とした。
やや悲観 30% 黒字化に届かず、いちごの支援で延命 利益 −20 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1 円46 億円
黒字化が 2027 年度に届かず、その後も赤字と小幅の黒字を行き来する。車載のシェアは中国勢に 5% まで削られ、利益率は 2% どまりだ。センサーとガラス基板は顧客がつかず、非車載は赤字のまま縮む。
いちごは新株予約権の行使を続け、さらに追加の資金も入れる。これで債務超過は避けるが、株は薄まり、自己資本は 200 億円ほどにとどまる。
いちごが完全子会社化を選ぶ場合、価格は市場の期待より低いはずだ。上場を残す場合も、株主に残る価値は、茂原工場の売却代金と設備・知的財産の売却で決まる。
10 年後は、売上 1,500 億円、営業赤字の会社だ。
既存株主の取り分は、会社全体の価値に、今の株数÷行使後の株数(0.5765)を掛けて測る。
- 車載ディスプレイ:数量 105(世界の車載ディスプレイ市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 10(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,055 億円・営業利益 21 億円。市場 105 億ドル(実質)× シェア 5.0%、営業利益率 2%
- 非車載(ウォッチ・VR・産業・センサー・パッケージング):数量 220(対象市場(小型パネル・センサー・パッケージ基板の合計・億ドル・実質))× 価格 2.01(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 442 億円・営業利益 0 億円。市場 220 億ドル(実質)× シェア 1.0%、営業利益率 0%
倍率:赤字が続き稼ぐ力では測れない。床の価値(売れる資産の税後 80 億円・会社全体)を、10 年後の自己資本 200 億円に対して 0.4 倍とした。既存株主の取り分(× 0.5765)は build.py が最後に掛ける。
確率:車載パネルの値下げが想定より早く、新事業も立ち上がりが遅れ、黒字化が 2030 年代にずれ込む。固定費削減が進んでも、売上が先に縮む筋書きで、中立と同じ重みを置く。
悲観 18% 再建が止まり、上場廃止か完全子会社化 利益 −100 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 0 円9 億円
黒字化が実現せず、車載パネルの値下げが続いて、営業赤字から抜けられない。いちごは新株予約権の行使で資金を入れ続けるが、再建の見込みがないと判断すると、完全子会社化に動く。
その時の価格は、市場の期待ではなく、会社に残る資産の価値で決まる。茂原工場は売却済みで、借入の返済に充てた後は、設備と知的財産の売却益がわずかに残る程度だ。
センサーとガラス基板は顧客を取れず、後発のまま終わる。車載も、中国勢にシェアを奪われ、設計の採用を失う。
10 年後は、売上 900 億円ほど、営業赤字が続く小さな会社が残る。株主に残る価値は、ほぼ整理価格に近い。
既存株主の取り分は、会社全体の価値に、今の株数÷行使後の株数(0.5765)を掛けて測る。
- 車載ディスプレイ:数量 90.0(世界の車載ディスプレイ市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 8.04(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 724 億円・営業利益 −29 億円。市場 90 億ドル(実質)× シェア 4.0%、営業利益率 -4%
- 非車載(ウォッチ・VR・産業・センサー・パッケージング):数量 180(対象市場(小型パネル・センサー・パッケージ基板の合計・億ドル・実質))× 価格 120.6%(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 217 億円・営業利益 −22 億円。市場 180 億ドル(実質)× シェア 0.6%、営業利益率 -10%
倍率:営業赤字が続き稼ぐ力では測れない。株主に残る整理価格の見立て(15 億円・会社全体)を、10 年後の自己資本 50 億円に対して 0.3 倍とした。既存株主の取り分(× 0.5765)は build.py が最後に掛ける。
確率:支配株主のいちごが 9 割を持つので、上場維持の基準に届かず、再建が進まなければ、完全子会社化が現実の選択肢になる。12 期連続の赤字で、傾いた会社の悲観の確率は高めに置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
車載ディスプレイ
車載向けの低温ポリシリコン液晶を、自動車メーカーと一次部品会社に供給する。2VD やデジタルミラーが新しい用途。
| 数量世界の車載ディスプレイ市場(億ドル・今の値段で測った実質) | 価格実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 10 | 1,000 | −50 |
| 10 年後 中立 | 115 | 12 | 1,387 | 35 |
取り方:開示は事業別の細目が少ないので推定した。2025 年 3 月期の車載売上は 1,258 億円で、26 年 3 月期は全体 1,323 億円から非車載を引いて約 1,000 億円とみた。世界の車載ディスプレイ市場を約 100 億ドルと置くと、シェアは約 6.7%。営業損益は全社の赤字 187 億円のうち、車載を 50 億円の赤字とみた。市場は実質で置き、物価の分は価格(シェア × 150 円 × 物価の倍率)に入れた。
非車載(ウォッチ・VR・産業・センサー・パッケージング)
スマートウォッチと VR 向けの小型パネル、産業機器向けの液晶、ミニ LED 向けのバックプレーン、新しいセンサーと半導体パッケージング。
| 数量対象市場(小型パネル・センサー・パッケージ基板の合計・億ドル・実質) | 価格実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 200 | 1.62 | 323 | −100 |
| 10 年後 中立 | 260 | 2.81 | 732 | 26 |
取り方:全体 1,323 億円から車載を引いた約 323 億円を、この区分の売上とみた。ウォッチ・VR・産業向けの小型パネルとセンサー・パッケージ基板をあわせた対象市場を約 200 億ドルと置くと、シェアは約 1.1%。営業赤字は 100 億円と推定した。市場は実質で置き、物価の分は価格に入れた。
リスクと懸念
いちごへの資金依存と希薄化
再建の資金は、いちごトラストの新株予約権(行使価額は今の株価より低く、最大約 960 億円)に頼る。すでに 21 個が行使され、全部が行使されると株数は今の約 1.7 倍になる。いちご以外の株主の持分は薄まり、E 種優先株の転換があればさらに薄まる。
上場維持の基準に届かない
市場に出回る株の割合は約 2 割で、プライムの基準の 35% に遠い。期限の 2028 年 3 月末までに満たせないと、監理銘柄から上場廃止に進みうる。完全子会社化の価格が市場の期待を下回る可能性も高い。
黒字化の遅れ
目標は 2027 年度の黒字化だが、会社予想では今期も営業赤字 100 億円だ。売上が 800 億円まで縮むなか、車載パネルの値下げが続けば、固定費を削っても利益は出ない。
中国・韓国勢との価格競争
BOE や天馬微電子など、資金力のある競合が車載に攻め込んでいる。自動車メーカーが中国で現地調達を増やせば、日本のパネル会社が取れる量は減る。値段は市場に決められる。
新事業の立ち上がり
センサーとガラス基板は後発で、専業の大手が先行している。ファブレスで進めるため、製造を受け持つ相手に利益の大半が残る。売上が小さいうちは、開発費が利益を食う。
茂原工場の売却の遅れ
売却先との交渉が長引き、2027 年 3 月期中の決済を目指している段階だ。売却額は公表されておらず、遅れれば借入の返済と自己資本の回復が後ろにずれる。
今後の分かれ目
- 2027 年度に営業黒字化が届き、その後も黒字が続いたら
- やや楽観・楽観の確率を上げてよい。固定費削減の効果が利益に出ているかを、売上 1,000 億円未満の水準で確かめる。
- ガラス基板やセンサーで、売上の見える顧客が増えたら
- 非車載の利益率とシェアの前提を上方修正する。ただし後発のため、1% 台のシェアを超えるかが分かれ目。
- 茂原工場の売却額が公表され、借入の返済に回ったら
- 財務の安全域が見えるので、悲観側の確率を下げる。額が小さければ逆に上げる。
- いちごが新株予約権の行使を止めたら
- 資金繰りの先行きが怪しくなる。悲観の確率を大きく上げ、上場廃止と完全子会社化の前提で見直す。
- いちごが完全子会社化を発表したら
- TOB の価格が整理価格に近いなら悲観の筋書きに合う。価格が今の株価を大きく上回るかは、公表を待つしかない。
- 車載パネルの値下げが想定より早く進んだら
- やや悲観・悲観の確率を上げ、車載の利益率の前提を下げる。
見ておくもの
- 営業黒字化の時期(2027 年度)と四半期ごとの営業損益
- いちごの新株予約権の行使の進み方と、発行済株式数の増え方
- 茂原工場の売却額と決済の時期、借入の残高
- センサー(ZINNSIA)とガラス基板の採用顧客と売上
- 市場に出回る株の割合と、いちごの持株比率
倍率と資本コストの決め方
今の株価(時価総額約 1,560 億円)は見ず、事業ごとの市場 × シェアと営業利益率から 10 年後の利益を積み、利益の質から倍率を決めた。倍率は正当化 PER の式で置き、中立は ROE が k とほぼ等しいので下限の 1÷k とした。悲観側は稼ぐ力がマイナスなので、茂原工場の売却代金などの売れる資産だけを床に置き、過去の PBR の底は使っていない。自己資本は今の 36 億円にいちごの新株予約権の行使約 500 億円と 10 年の損益を足した値で、検査の流れの式と離れる分は増資の理由を story に書いた。筋書きの倍率は会社全体の価値を出す式のまま置き、時価総額の欄には既存株主の取り分を書いた。取り分は、行使後の価値に今の株数(44.6 億株)÷ 行使後の株数(77.3 億株)= 0.5765 を掛けた値である。E 種優先株の転換は入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.3→10.25 倍・やや楽観 PER 9→9.61 倍・中立 PER 8.7→9.09 倍)。
資本コスト 11.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.0%。