結論
日本セラミックは、駐車支援に使う超音波センサと、人の動きを熱で捉える防犯用の赤外線センサを軸にした電子部品メーカーである。鳥取に本社を置く。筆者の結論は、今の値段はほぼ妥当で、割安とも割高とも言い切れないというものだ。決め手は、利益率が過去最高の水準にあることと、時価総額の4割に当たる現金(定期預金を含む約299億円)があることの、2つがせめぎ合う点にある。
稼ぐ力は本物だ。2025年12月期は売上273億円、営業利益62億円で、営業利益率は22.8%に達した。車載の運転支援(ADAS)向けと防犯向けが伸び、受注は売上を上回った。会社は2028年12月期に売上300億円、営業利益71.5億円を目指している。
財布の中身も厚い。自己資本比率は84%で、実質無借金のうえ、手元の現金が余っている。会社は今後3年で約220億円を株主に返す計画を出した。この資本政策が、価値の下支えになる。
弱みは、車載センサが中国勢の値下げと、カメラ・レーダへの置き換えにさらされることだ。売上の2割強は、取引先1社に頼っている。
10年後の中立の筋書きでは、営業利益は89億円ほどで、今の1.4倍にとどまる。確率を掛けた本質価値は、今の時価総額をわずかに下回る。楽観(確率8%)なら今の2倍を超え、悲観(確率8%)なら5分の1まで縮む。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い小さな事業を、現金が余るまま放置していない会社」に見える。
事業の質は悪くない。利益率が高く、設備が軽く、成長にたくさんの資本を要しない。稼いだお金を株主に返せる事業は、持ち続ける価値がある。経営も、ROEの改善と還元を掲げ、資本の使い方を変え始めた。
一方で、堀の幅には慎重になる。車載センサは、中国勢の値下げと置き換えの危険にさらされている。取引先が偏り、単一の部品カテゴリーに寄りかかる点も気になる。利益率が過去最高の水準にある今の姿を、そのまま10年後に置くのは危うい。
安全域の判断はこうだ。余った現金の約238億円は、今の時価総額の3割ほどにあたり、実質的な下支えになる。しかし事業の利益を10年先まで評価すると、中立の筋書きでようやく今の値段と釣り合う。安く買えるという余裕はない。値段が2割下がれば、見方を改める価値がある。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源はセンサである。同社は単一の事業で、開示は用途別に分かれていない。実態に近い見方は、車載、防犯、家電・照明・産業の3つに分けることだ。
車載は超音波センサと電流センサが主力になる。超音波センサは、駐車のときにバンパー周りの障害物を知らせる部品だ。運転支援の普及で、1台に載る数が増えた。電流センサは、電動車の電池やモーターの電流を測る。同社は、テレビのリモコン用の超音波センサから出発した会社で、いまは自動車を重点分野に置いている。車載は全体の半分弱と筆者は推定する。
防犯は、焦電型の赤外線センサが柱になる。人の体が出す熱の変化を捉える部品で、侵入警報や人感スイッチに入る。防犯用では世界トップとされる。家電・照明・産業向けには、エアコンや照明に入る赤外線センサ、LED照明のモジュール、ガスセンサなどがある。
生産は鳥取の本社工場のほか、フィリピンのスービックと上海にある。2025年11月にフィリピンの新工場が動き出し、生産が中国に偏るリスクを下げる。最大の取引先は株式会社中外で、売上の22%を占める。
優良さと弱いところ
優良さの中身は、小さな市場での強い地位と、軽い資産にある。防犯用の焦電型赤外線センサは世界トップ、車載の超音波センサは国内トップとされる。大きな市場ではないが、取引先が一度採用した部品を簡単には替えない分野で、利益率が厚い。営業利益率は2014年の9%から、2025年には22.8%まで上がった。
財務は極めて堅い。自己資本比率は84%で、実質の借金はない。設備も軽く、2025年の設備投資は21億円にとどまった。稼いだ現金は配当と自社株買いに回っており、2025年は純利益の9割近くを株主に返した。ためこむだけの会社ではない点を、筆者は評価する。
弱みも3つある。1つ目は取引先の偏りだ。最大の取引先に売上の2割強を頼る。2つ目は在庫で、回転は3.4か月と重く、2028年に2か月以下を目指している。3つ目は、2025年4月のランサムウェア被害である。情報が漏れた事実は、体制の甘さを示した。
堀、つまり他社がまねできない強みは、ほどほどだ。車載は安全に関わる部品で、認定に時間がかかる。ただ、中国勢が同じ部品を安く作り始めており、価格を自分で決める力が強いとまでは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
車載と防犯は、どちらも数量が伸びるが、価格が下がりやすい市場である。
車載の超音波センサは、駐車支援や低速の運転支援に使われる。調査会社は、車載の超音波技術の世界市場が2025年の65億ドルから2033年の111億ドルへ、年率7%近くで伸びると見る。車の台数は増えないが、1台に載るセンサの数が増える。主な競合は、ボッシュ、村田製作所、ヴァレオ、中国のオーディウェルなどだ。
懸念は、この部品がいつまで要るかである。運転支援はカメラとレーダへ重心が移っている。一部の車種では、超音波センサを外してカメラに任せる動きも出た。駐車支援が安価な超音波センサで足りる限り、需要は残る。ただ、1台あたりの数が増え続けると決めつけるのは危うい。
防犯の焦電型赤外線センサは、調査会社の予測で年率5%前後の成長だ。スマートホームや防犯カメラ、照明の人感制御が需要を支える。成熟した部品で、中国勢の参入による値下がりは避けにくい。
家電・照明向けは、省エネ需要が支えになる一方で、LED照明のモジュールは価格競争が厳しい。全体で見ると、数量は年に数%伸び、価格は物価に届かないというのが筆者の見立てだ。
資本政策と M&A
資本政策は、この会社のいちばんの見どころである。2026年2月に出した中期経営計画は、ROEを12%以上にすると掲げた。手元の現金約100億円と営業の稼ぎ約170億円のうち、約220億円を株主に返し、設備には約50億円を使う。配当は性向50%以上を目安とし、自社株買いを機動的に重ねる。
2025年は、純利益の大半を配当と自社株買いで返した。昆山の子会社を清算した益で純利益は膨らんだが、会社は一過性の益を除いてROEを見ている。経営が資本効率を意識し始めたことは、前向きに受け取れる。
買収は、いまのところ大きなものを打っていない。計画にも、M&Aの具体的な額は出てこない。余った現金を成長投資に回すより、還元に回す方針が読み取れる。政策保有株は、山陰合同銀行の株だけで、約21億円にとどまる。
最大の株主は谷口興産で、持ち株比率は約18%だ。時価総額が小さく、現金が厚いため、買収や株主提案の標的になる余地はある。10年以内にTOBが起きる確率を、筆者は2割弱とみる。
10年の還元は、配当性向50%以上の方針と、中計の3年で約220億円の範囲に置いた。中立は純利益の合計の約95%で、余った現金は配らずに別に足している。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
車載の運転支援が、いまの勢いを10年保つ。1台に載るセンサの数は増え続け、超音波センサは駐車支援だけでなく、低速の自動運転や自動駐車でも使われる。電動車が増えれば、電流センサの需要も伸びる。会社は車載を重点分野に据え、鳥取とフィリピンで生産を増やす体制を整えた。2025年に新工場が動き出した効果は、これから数字に出る。
防犯と照明も追い風が吹く。スマートホームの普及で、人の動きを知るセンサは、家のあちこちに入る。焦電型赤外線センサは世界トップの地位にあり、新しい用途の受注も増えている。会社が掲げた営業利益率23.8%は、2025年の22.8%から小さな上積みで、無理のない目標である。
資本政策も変わった。約220億円を3年で株主に返し、ROE12%以上を掲げる。現金をため込まない姿勢が続けば、株主の取り分は大きく増える。時価総額が小さく、買収されれば割増の値がつく可能性もある。
新工場の稼働で生産の余力ができ、車載の受注を取りこぼさない。取引先が広がれば、最大の取引先への依存も薄れる。利益が増える一方で、手元の現金は戻され続けるため、ROEは2割を超える水準まで上がる。
慎重な見方
利益率は、過去最高の水準にある。2014年は9%、2018年から2021年は15〜19%で、いまの22.8%は特別に高い。車載と防犯の部品は、中国勢が同じものを安く作り始めており、この利益率が10年続く前提は強すぎる。
車載の超音波センサは、運転支援の主役ではない。カメラとレーダが主役で、一部の車種では超音波センサを外す動きも出た。1台あたりの数が増え続けるとは限らない。自動車メーカーと部品大手は、毎年のコストダウンを求めてくる。
最大の取引先1社が売上の2割強を占める点も、利益の安定を損なう。2025年の純利益70億円は、子会社の清算益を含んでいる。実力の利益は50億円に届かず、会社自身もROEを一過性を除いて9%台と見ている。
在庫の回転も3.4か月と重く、需要が落ちれば評価損が出る。中国拠点への依存や、2025年4月のランサムウェア被害も、体制の弱さを示した。10年の間に、こうした小さな傷が利益率をじわじわ削ると見るのが自然だ。
余った現金が価値を支える面はあるが、それは今の時価総額にすでに入っている。事業の利益だけで測れば、今の値段に上乗せの余地は小さい。
どちらに重みを置いたか
強気の見方には説得力がある。ADAS向けの伸びと、現金を返す資本政策は、利益を守る力として本物だ。慎重な見方の指摘も重い。利益率が過去最高で、取引先が偏り、車載センサは置き換えと値下げを受けやすい。
勝負は互角と見て、確率は中立に最も厚く置いた。慎重な見方の指摘が強い分、やや悲観に24%、悲観に8%を割り、楽観側は合わせて30%にとどめた。結果として、本質価値は今の値段をわずかに下回る程度に収まった。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 6,918 円1,412 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,503 円511 億円)。 今の値に割り戻すと 5,199 円1,061 億円、今との差 +43.2%、 期待の年率 +10.0%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 13,004 円2,654 億円 | 3,381 円690 億円 | +351.4% | +16.3% | 1,311 円268 億円 |
| やや楽観 | 22% | 10,158 円2,073 億円 | 2,940 円600 億円 | +260.8% | +13.7% | 2,881 円588 億円 |
| 中立 | 38% | 7,994 円1,632 億円 | 2,646 円540 億円 | +193.1% | +11.4% | 4,043 円825 億円 |
| やや悲観 | 24% | 2,180 円445 億円 | 2,009 円410 億円 | +15.4% | +1.4% | 1,005 円205 億円 |
| 悲観 | 8% | 1,025 円209 億円 | 1,225 円250 億円 | −38.0% | −4.7% | 180 円37 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,918 円1,412 億円 | 2,503 円511 億円 | +159.5% | +10.0% | 9,421 円1,923 億円 |
今の株価時価総額 3,630 円741 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 運転支援と防犯が伸び続け、資本政策も実る 利益 107 億円 · PER 23.3 倍 · 株価時価総額 13,004 円2,654 億円
運転支援の普及が続き、車載センサの出荷は10年で2倍になる。超音波センサは駐車支援から低速の自動運転まで広がり、電動車向けの電流センサも伸びる。防犯は、スマートホームの普及で人感センサが家のあちこちに入り、世界トップの地位を固める。家電・照明も、省エネ需要と新用途で緩やかに伸びる。
中国勢の追い上げは続くが、車載の安全に関わる部品では、認定を通した実績が効き、価格の下げは物価の上昇を一部削る程度で済む。利益率は過去最高の水準を保ち、23%台に乗る。会社は3年で約220億円の還元を終えたあとも、純利益の8割ほどを返し続ける。時価総額が小さく現金が厚いことから、買収されて割増しの値がつく可能性もある。
- 車載センサ(超音波・電流):数量 80.0(超音波・電流など車載センサの年間出荷個数(百万個、推定))× 価格 391(1 個あたり平均単価(円・名目、推定))→ 売上 313 億円・営業利益 75 億円。数量 80 百万個 × 単価、営業利益率 24%
- 防犯・セキュリティ用赤外線センサ:数量 272(防犯用などの焦電型赤外線センサの年間出荷個数(百万個、推定))× 価格 63(1 個あたり平均単価(円・名目、推定))→ 売上 170 億円・営業利益 48 億円。数量 272 百万個 × 単価、営業利益率 28%
- 家電・照明・産業向け:数量 137(家電・照明・産業向け部品の年間出荷個数(百万個、推定))× 価格 72(1 個あたり平均単価(円・名目、推定))→ 売上 98 億円・営業利益 18 億円。数量 136 百万個 × 単価、営業利益率 18%
倍率:事業の純利益 104 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 33.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 20.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 23.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 23.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)238 億円。全体の PER 23.26 倍、時価総額 2,654 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:車載の数量が 2 倍近くに伸び、同時に利益率が過去最高の水準を保つ必要がある。重なる条件が多く、確率は 1 割に届かない。ここは「慎重な見方が強い」ので 8% に抑えた。
やや楽観 22% 車載と防犯が成長を保つ 利益 85 億円 · PER 22.5 倍 · 株価時価総額 10,158 円2,073 億円
車載は運転支援の普及に沿って、10年で8割増の出荷になる。防犯は5割弱の増加で、家電・照明は小幅に伸びる。会社が掲げる2028年の営業利益71.5億円を達成し、その後も緩やかに利益を積み上げる。
中国勢との値下げ競争はあるが、車載と防犯の主力品は価格をほどほどに保てる。利益率は22%前後で、過去最高の水準からわずかに下がる。株主還元は、配当性向5割以上と自社株買いの組み合わせが続く。資本効率は高まり、ROEは2割を超える。ただし、10年先の成長率は物価に近い水準まで落ち着く。
生産はフィリピンの新工場と鳥取に分かれ、中国への偏りが薄れる。車載の受注は、ADAS向けを中心に安定して積み上がる。最大の取引先への依存は残るが、取引先が増えて、売上の2割強という割合は少しずつ下がる。
- 車載センサ(超音波・電流):数量 72.0(超音波・電流など車載センサの年間出荷個数(百万個、推定))× 価格 376(1 個あたり平均単価(円・名目、推定))→ 売上 270 億円・営業利益 61 億円。数量 72 百万個 × 単価、営業利益率 22%
- 防犯・セキュリティ用赤外線センサ:数量 247(防犯用などの焦電型赤外線センサの年間出荷個数(百万個、推定))× 価格 60(1 個あたり平均単価(円・名目、推定))→ 売上 148 億円・営業利益 39 億円。数量 246 百万個 × 単価、営業利益率 26%
- 家電・照明・産業向け:数量 121(家電・照明・産業向け部品の年間出荷個数(百万個、推定))× 価格 69(1 個あたり平均単価(円・名目、推定))→ 売上 83 億円・営業利益 13 億円。数量 121 百万個 × 単価、営業利益率 16%
倍率:事業の純利益 82 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 27.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)238 億円。全体の PER 22.47 倍、時価総額 2,073 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:運転支援の普及と防犯の伸びが続き、利益率が 2 割強を保つ筋書き。会社計画の 2028 年の水準(営業利益率 23.8%)の延長にあたるので、4 分の 1 弱を割いた。
中立 38% 稼ぐ力は保つが、利益率は過去最高から下がる 利益 67 億円 · PER 21.8 倍 · 株価時価総額 7,994 円1,632 億円
車載は年に5%弱ずつ数量が増え、10年で6割増になる。防犯は3割強、家電・照明は小幅の増加にとどまる。単価は物価の上昇に届かず、10年で1割ほどしか上がらない。売上は436億円と、今の1.6倍になる。
利益率は2割に下がる。過去最高の22.8%は、運転支援の需要増と在庫・生産の改善が重なった山で、10年続くとは見ない。会社が掲げる2028年の営業利益71.5億円は達成し、その後は年2〜3%の伸びにとどまる。還元は3年で約220億円、そのあとは純利益の8割ほどを返す。中国勢との競争と、カメラ・レーダへの置き換えの圧力が、緩やかに利益率を削る10年である。
- 車載センサ(超音波・電流):数量 64.0(超音波・電流など車載センサの年間出荷個数(百万個、推定))× 価格 360(1 個あたり平均単価(円・名目、推定))→ 売上 230 億円・営業利益 48 億円。数量 64 百万個 × 単価、営業利益率 21%
- 防犯・セキュリティ用赤外線センサ:数量 230(防犯用などの焦電型赤外線センサの年間出荷個数(百万個、推定))× 価格 58(1 個あたり平均単価(円・名目、推定))→ 売上 132 億円・営業利益 33 億円。数量 230 百万個 × 単価、営業利益率 25%
- 家電・照明・産業向け:数量 110(家電・照明・産業向け部品の年間出荷個数(百万個、推定))× 価格 67(1 個あたり平均単価(円・名目、推定))→ 売上 74 億円・営業利益 10 億円。数量 110 百万個 × 単価、営業利益率 14%
倍率:事業の純利益 64 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)238 億円。全体の PER 21.75 倍、時価総額 1,632 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は年に数% 伸び、価格は物価に届かず、利益率が 2 割に下がる。会社計画よりやや控えめで、2 人の議論の落としどころとして最も厚く置いた。
やや悲観 24% 中国勢の値下げで、利益率が大きく縮む 利益 34 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 2,180 円445 億円
中国勢の技術が上がり、車載の超音波センサと防犯用の赤外線センサの両方で、価格競争が厳しくなる。車載の数量は3割増にとどまり、単価は5%しか上がらない。家電・照明は数量が1割減る。営業利益率は14%まで落ち、利益は今の4分の3になる。
取引先の偏りが響く局面もあり、最大の取引先が調達先を分散すれば、数量はさらに削られる。会社は在庫を減らし、フィリピンの新工場で固定費を抑えるが、価格の下落には追いつかない。配当は守るものの、自社株買いは細る。ROEは9%前後に落ちる。事業は崩れないが、成長株としての評価は外れる。
- 車載センサ(超音波・電流):数量 52.0(超音波・電流など車載センサの年間出荷個数(百万個、推定))× 価格 329(1 個あたり平均単価(円・名目、推定))→ 売上 171 億円・営業利益 26 億円。数量 52 百万個 × 単価、営業利益率 15%
- 防犯・セキュリティ用赤外線センサ:数量 196(防犯用などの焦電型赤外線センサの年間出荷個数(百万個、推定))× 価格 53(1 個あたり平均単価(円・名目、推定))→ 売上 103 億円・営業利益 20 億円。数量 196 百万個 × 単価、営業利益率 19%
- 家電・照明・産業向け:数量 94.5(家電・照明・産業向け部品の年間出荷個数(百万個、推定))× 価格 60(1 個あたり平均単価(円・名目、推定))→ 売上 57 億円・営業利益 5 億円。数量 94 百万個 × 単価、営業利益率 9%
倍率:ROE 11.0%・資本コスト 7.25% から正当化 PER 13.1 倍を計算し、その 65% をやや悲観の倍率に置いた。余った現金は谷で食う想定で 0.75 倍の 179 億円。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8.45 倍・時価総額 445 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:中国勢が車載・防犯の汎用部品に広がり、価格競争で利益率が 14% まで縮む筋書き。利益率が過去最高で、取引先が偏る事実を踏まえ、4 分の 1 近くを割いた。
悲観 8% 車載の置き換えと値下げで、事業の稼ぎが崩れる 利益 8 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,025 円209 億円
運転支援の主役がカメラとレーダに移り、車載の超音波センサは1台あたりの数が減る。中国勢の安値攻勢で単価が1割下がり、最大の取引先を含む複数の客先でシェアを失う。防犯の赤外線センサも汎用品になり、家電・照明向けは赤字に落ちる。
営業利益率は5%まで下がり、純利益は8億円ほどに細る。在庫と設備の減損で、自己資本も100億円近く目減りする。余った現金は、失敗した投資と減損で半分ほどしか残らない。配当は積み上げた現金から続け、不要になった設備や遊休資産の売却も進める。成長を失った会社として評価される10年である。財務が行き詰まることはないが、優良企業の評価は外れる。
- 車載センサ(超音波・電流):数量 40.0(超音波・電流など車載センサの年間出荷個数(百万個、推定))× 価格 282(1 個あたり平均単価(円・名目、推定))→ 売上 113 億円・営業利益 8 億円。数量 40 百万個 × 単価、営業利益率 7%
- 防犯・セキュリティ用赤外線センサ:数量 153(防犯用などの焦電型赤外線センサの年間出荷個数(百万個、推定))× 価格 45(1 個あたり平均単価(円・名目、推定))→ 売上 69 億円・営業利益 7 億円。数量 153 百万個 × 単価、営業利益率 10%
- 家電・照明・産業向け:数量 73.5(家電・照明・産業向け部品の年間出荷個数(百万個、推定))× 価格 54(1 個あたり平均単価(円・名目、推定))→ 売上 40 億円・営業利益 0 億円。数量 74 百万個 × 単価、営業利益率 0%
倍率:悲観の純利益 8 億円は、事業の ROE が資本コスト 7.25% を下回る。ためた利益は額面未満の価値なので、稼ぐ力(純利益÷k、PER は 1÷k=13.81 倍が上限)の 100% を置いた。余った現金は失敗した投資と減損で半分の 70 億円とみて足した。
確率:運転支援の主役がカメラとレーダに移り、超音波センサの数が減って、最大の取引先を失う複合の筋書き。起きにくいが、一度始まると戻りにくいので 8% を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
車載センサ(超音波・電流)
駐車支援や運転支援に使う超音波センサ、電動車の電流を測る電流センサなど。ADAS の普及で 1 台に載る数が増える。
| 数量超音波・電流など車載センサの年間出荷個数(百万個、推定) | 価格1 個あたり平均単価(円・名目、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 40.0 | 313 | 125 | 28 |
| 10 年後 中立 | 64.0 | 360 | 230 | 48 |
取り方:用途別の売上は開示されていないため、売上 273 億円のうち車載を 125 億円(約 46%)と推定した。年に 4,000 万個前後の出荷として、超音波センサの安い単価と電流センサの高い単価の加重平均で 1 個あたり約 3 百円台とした。営業利益率は全社の率を用途別の競争の強さで配り、約 22% とした。単価は名目。中立では 10 年で 1.15 倍(物価の 1.34 倍に届かない)に置く。理由は、自動車メーカーと部品大手が毎年のコストダウンを求めること、中国勢が同種の超音波センサを安く作り始めたこと。
防犯・セキュリティ用赤外線センサ
人体の熱を捉える焦電型赤外線センサ・モジュール。侵入警報や人感検知に入り、防犯用では世界トップとされる。
| 数量防犯用などの焦電型赤外線センサの年間出荷個数(百万個、推定) | 価格1 個あたり平均単価(円・名目、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 170 | 50 | 85 | 26 |
| 10 年後 中立 | 230 | 58 | 132 | 33 |
取り方:用途別の売上は開示されていないため、防犯・セキュリティ向けを 85 億円(約 31%)と推定した。年に 1.7 億個前後の出荷として、1 個あたり数十円台。焦電型赤外線センサの世界市場は調査会社の予測で 2026 年に 6 億ドル台で、同社はその中で上位の地位にあると見た。営業利益率は約 30%。単価は名目。中立では 10 年で 1.15 倍に置く。成熟した部品で、中国勢の参入による値下がりが物価の上昇を一部打ち消すため。
家電・照明・産業向け
エアコンや照明に入る赤外線センサ、LED 照明のモジュール、ガスセンサなど。
| 数量家電・照明・産業向け部品の年間出荷個数(百万個、推定) | 価格1 個あたり平均単価(円・名目、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 105 | 60 | 63 | 10 |
| 10 年後 中立 | 110 | 67 | 74 | 10 |
取り方:用途別の売上は開示されていないため、家電・照明・産業向けを 63 億円(約 23%)と推定した。年に約 1 億個の出荷として、1 個あたり数十円台。営業利益率は約 16%。単価は名目。中立では 10 年で 1.12 倍に置く。LED 照明のモジュールなど価格競争の厳しい品が多く、物価の上昇を価格に転嫁しきれないため。
リスクと懸念
最大の取引先への依存
株式会社中外が売上の22%を占める。この取引先が調達を分散したり、需要を落としたりすると、利益が大きく揺れる。取引条件の見直しで価格を下げさせられる可能性もある。
中国勢の値下げ攻勢
車載の超音波センサも防犯の赤外線センサも、中国メーカーが同種の部品を安く作り始めている。汎用品に近づくほど価格が下がり、利益率が削られる。2025年の過去最高の利益率が続かない主因になりうる。
運転支援のセンサ構成の変化
運転支援の主役はカメラとレーダだ。一部の車種で超音波センサを外してカメラに任せる動きがあった。1台あたりの搭載数が増え続けるという前提が崩れれば、車載の数量が想定を割る。
中国拠点の地政学リスク
上海の子会社が生産の一部を担う。米中の対立や規制の変化で、供給や輸出に支障が出る可能性がある。フィリピンの新工場は、そのリスクを下げる手当てだが、立ち上げの費用が先に出る。
サイバー攻撃と情報管理
2025年4月、サーバーがランサムウェアの被害を受け、情報が漏れた。再発すれば、取引先の信頼と生産に響く。体制の強化は進行中で、費用の増加要因にもなる。
在庫と一過性の利益
在庫の回転は3.4か月と重く、需要が落ちると評価損が出やすい。2025年の純利益は子会社の清算益を含み、実力の利益より大きい。数字を比べるときは、清算益を除いて見る必要がある。
今後の分かれ目
- 車載センサの売上が、会社計画の2028年を上回って伸びたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。数量の前提を上方に直す。
- 中国勢が車載の超音波センサで国内の大手自動車メーカーへ入り込んだら
- 価格の前提を下げ、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- カメラ・レーダ中心の設計で、超音波センサを搭載しない車種が増えたら
- 車載の数量を下げ、悲観の確率を上げる。
- 約220億円の株主還元が計画どおりか、それ以上に進んだら
- 余った現金の戻り方を確かめ、中立の筋書きの価値を見直す。
- 最大の取引先が調達を分散した、または取引の縮小が明らかになったら
- 利益の前提を下げ、やや悲観側の確率を上げる。
- 谷口興産や海外の投資家が持ち株を増やす、または買収提案が出たら
- 買収時に付く割増しは筋書きに入れていない。出れば別に評価する。
見ておくもの
- 車載センサの売上の伸びと受注(2028年の売上300億円・営業利益71.5億円との差)
- 営業利益率が22.8%から上下どちらへ動くか
- 在庫の回転月数(2028年に2か月以下の目標)
- 株主還元の実績(約220億円・配当性向50%以上・自社株買い)
- 最大の取引先への売上の割合
倍率と資本コストの決め方
車載・防犯・家電照明の3つに分け、出荷個数(実質)×単価(名目)で積んだ。用途別の売上は開示がなく推定で、howに根拠を書いた。価格は物価の1.34倍に届かず、車載と防犯は1.15倍、家電照明は1.12倍とした。資本コストは基本7.5%にquality +1.0%の8.5%。倍率は式の上限(g 4.0%、残る割合0.50)に対し、中立は8割、楽観は9割、やや悲観は7割に置き、今の株価は見ていない。余った現金238億円(定期預金など約98億円を足した)は帳簿の値で足し、悲観側は0.75倍・0.5倍にした。リースは主要でなく、新リース会計は影響が小さい。結果として本質価値は今の値段にほぼ並んだが、倍率は市場の値付けから出していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.3→23.26 倍・やや楽観 PER 13.81→22.47 倍・中立 PER 12.42→21.75 倍・悲観 PER 11.76→13.81 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%。同じ領域の湖北工業・山一電機と同じ水準。純現金で借金のリスクは無く、小粒で取引先が偏る点と、車載・防犯の部品が値決めを市場に握られる点を上乗せにした。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.25%。