結論
アライドテレシスは、スイッチや無線 LAN などのネットワーク機器を作り、導入後の保守まで担う会社だ。売上の3分の2は日本で、自治体・学校・病院といった公共に近い顧客が中心になる。2025年12月期は売上500億円、営業利益42億円(利益率8.5%)と過去最高を付けた。筆者の結論は、本質価値は今の値段とほぼ同じ、つまり適正だ。純現金の厚みが安全域になる一方、利益はすでに山を越えている。
数字の見た目より、中身を割り引く必要がある。追い風だった NEXT GIGA、つまり学校の通信環境の更新需要は、2025年が山と見られる。利益の2割を稼いだ米軍基地向けのケーブルテレビ・通信サービスは、2026年2月に売却済みだ。この二つが重なるため、会社は2026年12月期の営業利益を36億円と、減益で見ている。
守りは厚い。純現金は140億円と時価総額の4割強にあたる。ただ筆頭株主の資産管理会社が約46%を握るオーナー会社で、現金がどこまで株主に戻るかは読み切れない。そこで余った現金の半分だけを価値に数えると、10年後の中立は純利益30億円、時価総額400億円ほどに育つ。それでも期待の年率は6%弱で、資本コストの8%に届かない。大きな割安も割高も見えない会社だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社の魅力は事業の質ではなく、値段の安全域にある。事業は成熟したネットワーク機器で、堀は公共顧客との関係と保守網にとどまる。10年後も存在するのは間違いないが、今より強くなっている保証はない。
オーナー利益、つまり再投資を引いたあとに株主のものになる利益は、年に25億円前後とみる。設備投資が軽いので、利益の大半は現金になる。問題はその使い道だ。経営がこの現金をどう配分するかで、価値の半分が決まる。配当は増やす方針で、方向は正しい。ただ、積み上がった現金の大部分は、戻るとは限らない。
筆者は、手元の現金の半分だけを株主の価値として数える。残りは、事業に張り付けるか、買収で使われる可能性があるからだ。事業そのものには、資本コストを少し超える稼ぎ力しか認めない。そう見ると、価値は今の値段の周辺に収まり、大きな割安も割高も出ない。払う値段の4割強を現金が占めるのは安全域になるが、その現金を取り戻せるかはオーナー次第だ。事業の稼ぎだけで測ると、時価総額は妥当な水準にある。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、スイッチ(社内ネットワークの交通整理をする装置)と無線 LAN だ。日本では官公庁・自治体・教育・医療向けが厚く、機器を納めたあとの保守契約が安定した収益になる。日本セグメントは売上332億円、利益率7%で、全社の3分の2を占める。2025年は NEXT GIGA の更新需要と無線 LAN の販売増で前年比1割増えた。
海外は米州78億円、欧州・中東・アフリカ60億円、アジア・オセアニア29億円。米国では連邦政府と防衛、カナダの防衛案件に強く、欧州は企業と公共向けだ。米政府の歳出が滞った2025年は米州が1割減り、アジアは拠点の再編で2割近く減った。
米軍基地とその周辺向けのケーブルテレビ・ネット・電話(IP トリプルプレイ)は、米州の中でも利益率が飛び抜けて高かった。2024年12月期で売上23億円、営業利益9億円だ。顧客が通信をクラウド電話や動画配信へ移し、契約も2028年4月に切れるため、会社は2026年2月に米国企業へ売った。売上は小さく、利益は大きい事業を手放した点が、今後の利益の読みを難しくしている。
製品は自社設計で、仕入れの多くはドル建てだ。メモリや光部品の価格と為替が原価を動かす。
優良さと弱いところ
強みは、公共の現場に張り付いた販売と保守の網だ。学校や自治体のネットワークは、一度入れると運用の手間から入れ替えにくい。ここを押さえているから、日本セグメントは増収と増益を両立できた。会社は国内シェアを27%と説明しているが、出典が二次情報で範囲も不明なため、筆者は根拠に使わない。市場全体の中では、シスコ、ヤマハ、アラクサラ、バッファローなどと競る中堅で、シェアは1割前後とみる。
弱みは三つある。第一に規模が小さい。世界のキャンパス向けスイッチはシスコ、ファーウェイ、HPE(ジュニパー含む)が大きな差で先行し、ポート単価は7四半期続けて下がっている。第二に、価値の源が手元の現金に偏っている。第三に、オーナー支配の会社なので、少数株主は経営の速度も現金の使い道も決められない。
資本の使い方は、方針としては良くなった。累進配当(減らさず、増やす約束)と中間配当を2026年に始め、2028年度の配当を2025年度の5割増にする。ただ過去4年は純現金が66億円から140億円へ積み上がっており、戻すより貯める傾向が強かった。利益率は2014〜15年に赤字、2019年に1%を割った。8.5%はこの会社の歴史では異例の高さだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の企業向けネットワーク機器市場は、調査会社の IDC によると2023年に3,633億円と、前年より9%伸びた。ただし企業向けスイッチは2023〜2028年に年1.2%と、物価の伸びを下回る予測だ。無線 LAN も新規導入の余地が減り、入れ替え需要が中心になる。成長するのはデータセンター向けだが、アライドテレシスはほぼ関わらない。
足元の追い風は NEXT GIGA だ。学校のネットワークは5年周期で更新され、需要の山は2025年と言われる。文科省も校務系と学習系のネットワーク統合を支援する。山が過ぎた後の反動をどう埋めるかが、日本事業の分かれ目になる。次の更新は2030年前後に来るが、その時にこの会社が選ばれるとは限らない。
構造の変化は二つある。一つは、機器をクラウドで管理する仕組み(シスコ・メラキや HPE アルバ、ジュニパー・ミストなど)が標準になり、箱を売る会社より運用まで含めて売る会社が有利になること。もう一つは、無線 LAN の Wi-Fi 7 への切り替えだ。単価を押し上げるが、顧客が機器の追加を減らす面もある。
海外は定義によって市場規模が大きくぶれる。47億ドルから148億ドル超まで、推計に開きがある。アライドテレシスの海外売上は約1億ドルで、市場に対して1%に満たない。小さな会社が狙えるのは、米国や欧州の公共、防衛、交通のように、実績と認証が物を言う領域に限られる。
資本政策と M&A
還元は方針が前に進んだ。2026年の中間配当開始と累進配当で、2028年度の配当は2025年度の5割増を目標にする。配当性向は29%、純資産に対する配当率は3.9%と低い。中計の最終年度の純利益26億円に対し、目標の配当は5割近くになる計算だ。自社株買いは「機動的に継続」と書くだけで、規模や時期は示していない。
現金の積み上がりが、この会社の資本政策の核心だ。純現金は2022年末の66億円から140億円まで増えた。設備投資は年6億円と軽く、営業キャッシュフローは67億円ある。使い道の示しがない限り、積み上がりは続く。筆頭株主は資産管理会社で、約46%を握る。少数株主が戻りを強く求めにくい構造だ。
M&A は「戦略的に慎重に検討」とだけ書かれている。実績としては、米軍基地向け事業の売却がある。収益が先細るものを手放し、売却益(約470万ドル)をコア事業へ回す判断は妥当だ。買われる側としての可能性は、オーナーが約46%を持つため低い。株主優待は500株以上に電子ギフトを贈る制度で、費用は年1億円に満たず、価値の判断には影響しない。
2028/03期から始まる新リース会計は、拠点の賃借が多い会社に影響する。本社と海外拠点は賃借だが、規模は小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
日本事業は NEXT GIGA の山を越えても崩れない。学校だけでなく自治体・医療・交通へ顧客が広がっており、2025年の日本の増収は教育だけの話ではない。会社は2028年度に売上570億円・営業利益率7%を掲げるが、IP トリプルプレイ(売却済み)の抜けた分を除いても、年6%近い増収を意味する。その裏には、AI を使った開発の効率化とセキュリティ統合ソリューションへの転換がある。シリコンバレーに技術拠点を作り、インドや中東にも投資を進めており、売上の3割前後を占める海外が小さな土台から伸びる余地は大きい。
財務の面でも、純現金は時価総額の4割強で、事業をほぼタダで買える水準だ。累進配当と中間配当の導入で、現金は戻る方向に動いた。ストックオプションや譲渡制限付株式の導入予定は、経営陣の目線を株価に合わせる。2025年の営業利益率8.5%は、固定費の削減と値上げが効いた結果であり、一時的とは言い切れない。ポート単価が下がる業界でも、保守とサービスの積み上げで利益率を維持できる。中計どおりなら、純利益は26億円、配当は5割増える。
慎重な見方
2025年の好決算は、いくつかの偶然が重なった結果だ。NEXT GIGA は5年周期の更新需要で、山を越えれば日本の売上は戻る。営業利益の2割近くを稼いだ米軍基地向け事業は売却済みで、2026年の営業利益は36億円と、すでに2割近く減る見込みだ。会社が示す2028年度の営業利益率7%も、2025年の8.5%を下回る。利益の質は、すでに悪化の方向にある。
海外はもっと厳しい。米州は連邦政府の歳出停止で1割減り、欧州は大型案件の減少で2割減、アジアは再編が続く。1億ドル規模の売上でファーウェイ、シスコ、HPE と戦うのは分が悪い。ポート単価は7四半期連続で下がっており、機器の値上げは難しい。メモリや光部品の高騰は原価を押し上げる。
さらに、機器をクラウドで運用管理する仕組みが標準になれば、保守で稼ぐ日本の公共向けのモデルが崩れうる。そして、筆頭株主が約46%を握るため、少数株主は現金の使い道を決められない。純現金140億円のうち、事業に必要な分と、実際に戻ってくる分を引くと、時価総額に見合う価値は目減りする。それでも事業そのものが衰えるわけではなく、慎重な見方の核心は、成長が資本コストに届かない会社に高い値段は付かないという点にある。
どちらに重みを置いたか
日本の保守網という強気の根拠は本物だが、2026年の減益見通しと更新需要の反動は、すでに見えている事実だ。足元の事実に近いのは慎重な見方なので、中立の確率は4割に抑え、やや悲観を2割、悲観を1割と、悲観側を楽観側より厚く残した。一方で純現金とオーナー利益が下値を支えるため、悲観の確率を1割より上げる理由はない。結果として、価値は今の時価総額を約1割下回る程度で、適正の範囲に収まる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 584 円602 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 140 円144 億円)。 今の値に割り戻すと 373 円384 億円、今との差 +20.4%、 期待の年率 +8.9%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,035 円1,066 億円 | 209 円215 億円 | +301.1% | +14.9% | 124 円128 億円 |
| やや楽観 | 20% | 800 円824 億円 | 170 円175 億円 | +212.9% | +12.1% | 194 円200 億円 |
| 中立 | 40% | 649 円668 億円 | 146 円150 億円 | +156.3% | +9.9% | 318 円327 億円 |
| やや悲観 | 20% | 269 円277 億円 | 104 円107 億円 | +20.3% | +1.9% | 75 円77 億円 |
| 悲観 | 10% | 74 円77 億円 | 57 円59 億円 | −57.5% | −8.2% | 13 円14 億円 |
| 加重平均 | 100% | 584 円602 億円 | 140 円144 億円 | +133.5% | +8.9% | 724 円746 億円 |
今の株価時価総額 310 円319 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 保守網と海外の拡大で、中計を超える 利益 48 億円 · PER 20.3 倍 · 株価時価総額 1,035 円1,066 億円
日本は NEXT GIGA の山のあとも、自治体・医療・交通へ顧客を広げ、保守とセキュリティの積み上げで市場より速く伸びる。国内シェアは8%台から9%台へ上がり、利益率も8.5%まで届く。海外では米国の公共と防衛、インド・中東の新規拠点が育ち、海外の市場シェアが0.6%近くまで上がる。AI を使った開発の効率化で人件費の伸びを抑え、利益率は9%に近づく。売上は10年で1.5倍の約780億円、営業利益は67億円。純現金は配当と自社株買いで厚く戻され、株主還元の姿勢も変わる。この筋書きが成り立つには、公共の更新を落とさずに、保守契約の積み上げで売上の質を変える必要がある。中計が掲げる人材投資(国内社員の平均年収を2030年末に1,000万円へ)は費用を押し上げるが、技術の厚みが公共の信頼を支える。クラウド管理型の製品でも自社の強みを出せれば、機器の値下がりを保守の厚みで埋められる。
- 日本(国内ネットワーク機器・保守):数量 4,100(国内企業向けネットワーク機器市場(今の値段で測った実質・億円))× 価格 12.3%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア相当 × 物価の倍率)→ 売上 505 億円・営業利益 43 億円。日本は公共以外へ広がり、シェア相当 9.2%(実質の市場 4,100 億円 × シェア、物価込みで名目)
- 海外(米州・欧州中東アフリカ・アジア):数量 35,000(日本を除く企業・官公庁向けキャンパス・エッジスイッチ+無線 LAN 市場(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 0.8%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 272 億円・営業利益 25 億円。米国公共・防衛とインド・中東で伸びる(実質の市場 3.5 兆円 × シェア 0.58%、物価込みで名目)
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 20.34 倍、時価総額 1,029 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の売上 CAGR 4〜6% と営業利益率7%を超え、クラウド管理型やセキュリティ統合が日本の公共で定着する筋書き。会社の計画を上回るため1割に抑えた。
やや楽観 20% 日本の保守網が効き、中計を達成する 利益 38 億円 · PER 19.5 倍 · 株価時価総額 800 円824 億円
日本は NEXT GIGA の反動を保守と無線 LAN の入れ替えで埋め、シェアは8.8%まで上がる。営業利益率は7.7%を保ち、会社の2028年度の目標7%を超えて維持する。海外は米州が連邦政府案件で戻り、欧州は大型案件に頼らない安定した売上を作る。IP トリプルプレイの利益の抜けは、日本の増益で埋め合わせる。売上は約710億円、営業利益は54億円。配当は増額が続き、自社株買いも小規模に実施される。会社が2028年度に掲げる売上570億円は、売却した IP トリプルプレイの分を除いて年6%近い成長を意味する。この筋書きはそこまでは届かず、10年かけて年3.5%ほど伸びる姿を描く。配当は中計どおり増え、現金の戻りも少しずつ増す。
- 日本(国内ネットワーク機器・保守):数量 3,950(国内企業向けネットワーク機器市場(今の値段で測った実質・億円))× 価格 11.8%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア相当 × 物価の倍率)→ 売上 466 億円・営業利益 36 億円。日本は保守で堅調、シェア相当 8.8%(実質の市場 3,950 億円)
- 海外(米州・欧州中東アフリカ・アジア):数量 34,000(日本を除く企業・官公庁向けキャンパス・エッジスイッチ+無線 LAN 市場(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 0.7%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 242 億円・営業利益 18 億円。米州が回復、欧州は安定(実質の市場 3.4 兆円 × シェア 0.53%)
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 19.49 倍、時価総額 784 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計のおおよそ達成に近い筋書き。日本の保守網が山の反動を吸収し、海外も緩やかに戻る。実現しやすい好ケースとして2割を置いた。
中立 40% 山の反動のあと、緩やかに伸びる 利益 31 億円 · PER 18.9 倍 · 株価時価総額 649 円668 億円
日本は NEXT GIGA の反動で数年は踊り場に入るが、保守と入れ替え需要が下支えする。市場の数量は実質で5%ほど縮み、同社はシェア8.4%を保つ。物価の上昇で売上は年2.5%ほど伸び、日本の利益率は7%を保つ。海外は市場が緩やかに伸び、IP トリプルプレイの抜けた分を米州の防衛や欧州の公共で埋めていく。売上は約630億円、営業利益は44億円で、利益率は7.0%と2025年より低い。余った現金には手を付けず、配当は中計どおり増えていく。派手さはないが崩れもしない姿で、2025年の利益水準を名目で保つ。物価の分だけ売上は伸びるが、人件費も物価で増えるため、利益率は上がらない。この筋書きでは、純現金の積み上がりを配当で一部戻し、残りは事業の運転資金と将来の投資に回る。
- 日本(国内ネットワーク機器・保守):数量 3,800(国内企業向けネットワーク機器市場(今の値段で測った実質・億円))× 価格 11.3%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア相当 × 物価の倍率)→ 売上 428 億円・営業利益 30 億円。日本は踊り場のあと緩やかに伸びる(実質の市場 3,800 億円 × シェア 8.4%)
- 海外(米州・欧州中東アフリカ・アジア):数量 31,500(日本を除く企業・官公庁向けキャンパス・エッジスイッチ+無線 LAN 市場(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 0.6%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 198 億円・営業利益 14 億円。海外は小幅な増収(実質の市場 3.15 兆円 × シェア 0.47%)
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 18.87 倍、時価総額 624 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:NEXT GIGA の山を越えて日本が横ばい圏を保ち、海外が小幅に伸びる最も蓋然性の高い筋書き。会社の計画の一部だけが実現する。
やや悲観 20% 価格競争と公共依存で、利益率が戻る 利益 20 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 269 円277 億円
NEXT GIGA の反動のあと、日本は自治体の予算制約と大手のクラウド管理型機器に押されてシェアを失い、7.8%まで下がる。営業利益率は5.5%に落ち、過去の平均に近づく。海外は米政府の歳出制約が続き、欧州はシェアを守れず売上が伸び悩む。IP トリプルプレイの利益の抜けも補えない。売上は約530億円、営業利益は28億円。余った現金は将来の投資や谷の損失で、一部が目減りする。この水準は、会社が赤字だった2015年ほど悪くはなく、2019年の利益率1%よりは高い。公共依存の弱さが出る中程度の悪化で、10年かけて競争が少しずつ利益を削る姿だ。配当は据え置きに近く、現金の戻りも小さくなる。
- 日本(国内ネットワーク機器・保守):数量 3,500(国内企業向けネットワーク機器市場(今の値段で測った実質・億円))× 価格 10.5%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア相当 × 物価の倍率)→ 売上 366 億円・営業利益 20 億円。日本はシェアを落とす(実質の市場 3,500 億円 × シェア 7.8%)
- 海外(米州・欧州中東アフリカ・アジア):数量 30,000(日本を除く企業・官公庁向けキャンパス・エッジスイッチ+無線 LAN 市場(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 0.6%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 169 億円・営業利益 8 億円。海外は低迷(実質の市場 3 兆円 × シェア 0.42%)
倍率:事業の ROE は約8%と k 7.75% とほぼ同じで、PER の上限は 1÷k の12.5倍。そこから競争で稼ぎが削られる分を割り引いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9.5 倍・時価総額 232 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:反動のあとに価格競争が重なり、利益率が過去の水準に近づく筋書き。小規模で値決め力が弱いため、2割と厚めに置いた。
悲観 10% クラウド管理型に押され、構造的に負ける 利益 6 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 74 円77 億円
公共の更新がクラウドで運用を一括する大手の製品に移り、同社は日本でシェアを6%まで失う。ポート単価は下がり続け、値決め力も弱まる。米国の政府案件は大手に奪われ、欧州とアジアは撤退や再編が続く。営業利益率は2.5%まで落ち、10年後の営業利益は8億円に細る。それでも保守契約は残り、純現金も一部は使われないまま残る。稼ぐ力が小さくなる中、価値は現金とわずかな事業で決まる。それでも会社は破綻せず、保守契約と現金で存続する。ただ、成長の見込みを失った小規模な機器会社に、投資家が払う値段は低い。オーナー支配のため、現金も少数株主には十分に戻らない。
- 日本(国内ネットワーク機器・保守):数量 3,200(国内企業向けネットワーク機器市場(今の値段で測った実質・億円))× 価格 8.0%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア相当 × 物価の倍率)→ 売上 257 億円・営業利益 6 億円。日本はシェアを失う(実質の市場 3,200 億円 × シェア 6.0%)
- 海外(米州・欧州中東アフリカ・アジア):数量 27,000(日本を除く企業・官公庁向けキャンパス・エッジスイッチ+無線 LAN 市場(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 0.5%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 127 億円・営業利益 1 億円。海外は縮小(実質の市場 2.7 兆円 × シェア 0.35%)
倍率:悲観の純利益は ROE 2% 弱で k 7.75% を下回る。ためた利益は額面未満なので PER は 1÷k が上限で、稼ぐ力の価値に床の純現金を合わせた。
確率:10年で公共の入れ替え需要がクラウド管理型に流れ、小規模の同社が構造的に負ける筋書き。純現金が床を作るので1割に抑えた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本(国内ネットワーク機器・保守)
官公庁・自治体・教育・医療・企業向けのスイッチ、無線 LAN、セキュリティと、その導入・保守サービス。
| 数量国内企業向けネットワーク機器市場(今の値段で測った実質・億円) | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア相当 × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4,000 | 8.3% | 332 | 23 |
| 10 年後 中立 | 3,800 | 11.3% | 428 | 30 |
取り方:IDC Japan の 2023 年の国内企業向けネットワーク機器 3,633 億円(+9.2%)を起点に、NEXT GIGA の更新需要が重なる 2025 年は約 4,000 億円と推定。日本セグメントの売上 332 億円(保守・サービス込み)を割ってシェア相当 8.3% を逆算した。数量は実質の市場、物価 3% は価格(シェア × 物価の倍率)に入れた。営業利益は日本セグメント利益 23 億円(利益率 7.0%)。
海外(米州・欧州中東アフリカ・アジア)
北米の政府・防衛、欧州の企業・公共、アジアの再編後の拠点向けスイッチ・無線 LAN。2026 年 2 月に売却した米軍基地向け IP トリプルプレイ事業を含む。
| 数量日本を除く企業・官公庁向けキャンパス・エッジスイッチ+無線 LAN 市場(今の値段で測った実質・億円、推定) | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 30,000 | 0.6% | 167 | 19 |
| 10 年後 中立 | 31,500 | 0.6% | 198 | 14 |
取り方:海外の市場は定義で幅が大きい(調査会社の推計は 47 億〜148 億ドル超)。無線 LAN を含めて広めに約 200 億ドル=3 兆円と推定し、海外売上 167 億円(米州 78・欧州中東アフリカ 60・アジア 29)を割ってシェア 0.56% を逆算した。ここには売却済みの IP トリプルプレイ事業(売上約 21 億円・営業利益約 8 億円と推定)が入っており、先の筋書きでは外れる。営業利益は全社 42.3 億円から日本を引いた残り(連結の消去を含む)。
リスクと懸念
学校向け更新需要の反動
NEXT GIGA の更新需要は2025年が山と見られ、日本の売上の1割増は繰り返せない。山のあとに谷が来れば、日本セグメントの利益は2割近く落ちうる。次の更新は2030年前後で、その時に選ばれる保証もない。
高収益の米軍基地向け事業の抜け
売却した IP トリプルプレイは、2024年で売上23億円、営業利益9億円と、利益では全社の2割を占めた。これを代替する収益源は示されておらず、2026年の営業利益は36億円と減益の見通しだ。
海外の小規模と政府依存
海外売上は約1億ドルで、世界の大手と競うには小さい。米州は連邦政府の予算と閉鎖に左右され、欧州は大型案件の有無で売上が2割動く。アジアは事業の再編を続けている。
部品高騰と為替
仕入れの多くはドル建てで、メモリや光部品の価格にも左右される。2025年は為替差損3億円が出た。価格を転嫁しにくいため、利益率が薄くなりやすい。
オーナー支配と現金の使い道
筆頭株主の資産管理会社が約46%を持つ。少数株主は経営も現金の使い道も決められない。積み上がった現金が、割高な買収や非効率な投資に回る危険を排除できない。
クラウド管理型への移行
機器の運用をクラウドで一括する仕組みが広がると、導入と保守を自社で担う従来型は付加価値が下がる。シスコ、HPE などの大手が先行しており、追う側に回る。
今後の分かれ目
- NEXT GIGA の山のあとも、日本の売上が横ばいか増収を保つ
- 公共の更新に依存した会社ではなく、保守網の厚い会社として評価が変わる。楽観側の確率が上がる。
- 日本セグメントの営業利益率が7%を割り込む
- 山の反動に加えて値下げ競争が効いている証拠で、慎重な筋書きの確率を上げる。
- 米州の売上が連邦政府案件の回復で2桁増に戻る
- 海外の弱さが一時的だった証拠になり、海外の利益率7%の前提が上振れしやすい。
- 自社株買いの規模が純現金の1割以上で公表される
- 現金の戻り方を0.5から引き上げる材料になり、価値の見積もりが上がる。
- 大型の海外 M&A で純現金が大きく減る
- 資本の使い方が悪化する懸念が強まり、現金の価値を下げて見る必要が出る。
- メモリや光部品の高騰が続き、販売価格への転嫁が進まない
- 利益率が1ポイント下がるだけで営業利益が1割減るため、やや悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 日本セグメントの売上と利益率の四半期推移
- 米州・欧州中東アフリカの売上の回復
- 2028年度の売上570億円・営業利益率7%の進捗
- 自社株買いの規模と時期
- 純現金の増減と配当の増額
- メモリ・光部品の調達価格と為替
- クラウド管理型製品の売上比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PER を見ず、セグメントごとの市場規模とシェア、利益率から10年後の利益を積み、k 7.75%・長期成長 4%・残る割合 0.5 の式の正当化 PER の8割前後に置いた。余った現金は半分の戻り方で足した。やや悲観・悲観は稼ぐ力と売れる資産の床から置き、過去の PBR は使っていない。新リース会計は賃借の規模が小さく、10年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→20.34 倍・やや楽観 PER 13.5→19.49 倍・中立 PER 12→18.87 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5%(値決め +0.25、寿命 +0.25)を足して k 7.75%。純現金で借金の上乗せはなく、事業が傾いているわけでもないので extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.75%。