結論
FDK は、ニッケル水素電池、アルカリ乾電池、リチウム電池を作る電池メーカーだ。2025 年 3 月に台湾の SILITECH が公開買付けで約 45% を握り、富士通は親会社でなくなった。上場は続いている。筆者の結論は、10 年では割高である。
理由は、稼ぐ力が資本コストに届かないからだ。2026/03 期の営業利益は 17 億円と、前期から 2 割増えたが、営業利益率は 2.8%。自己資本 191 億円に対し純利益は 7 億円で、ROE は 4% にとどまる。借入が 160 億円あり、金利が 3.5% に上がると、利益の大きな部分が利払いに消える。
新しい親会社の下で、次世代電池への投資が始まった。2026 年 9 月には SILITECH 向けに 25 億円の転換社債を出した。この投資が実を結べば評価は変わりうる。ただし今は、電子事業の縮小と汎用電池の価格競争で、利益の質を高く置けない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業の質が低く、資本の効率も低い。安く見える理由は、安いからではなく、稼げないからだ。
自己資本の 191 億円に対し、純利益は 7 億円。ROE は 4% で、資本コストの 9% を大きく下回る。借入が重く、金利が上がれば利払いがさらに利益を削る。10 年を通じて見ても、この構造は大きくは変わらない。
新しい親会社の下で投資が増える点は、好材料にも悪材料にもなる。次世代電池が当たれば利益率が上がる。当たらなければ、償却と借入だけが残る。
筆者は、新しい事業の成果が数字に出るまで、高い値段は払えないと見る。転換社債の転換価格を超える株価になって初めて、既存の株主の取り分が薄まる。その水準に届かない限り、薄まりの心配は小さい。
逆に、薄まりが起きるほど株価が上がっているなら、株主は先に得をしている。その非対称性は、転換社債の唯一の救いだ。
何で稼ぐ会社か
FDK は旧富士電気化学で、電池事業と電子事業の二つを持つ。2026/03 期の売上は 596 億円、営業利益は 17 億円。
電池事業は売上 482 億円、利益 17 億円。ニッケル水素電池(車載・産業・充電式)、アルカリ乾電池、リチウム電池を作る。2026/03 期はリチウム電池が増え、ニッケル水素電池とアルカリ乾電池が減った。アルカリ乾電池では 3.3 億円の減損を出している。
電子事業は売上 113 億円で、損失 0.4 億円。各種モジュール、スイッチング電源、トナーを扱う。2026/03 期は 20% 減収で、2027/03 期の第 1 四半期も半分近く減った。
工場は高崎、鳥取、湖西と、台湾・廈門(アモイ)。海外売上は 44.7%、従業員は連結で 2,420 人。
2027/03 期の会社予想は、売上 600 億円、営業利益 14 億円、純利益 5 億円。電子事業の縮小と原材料の上昇を織り込み、2 割弱の減益を見込む。2026 年 9 月に発行する 25 億円の転換社債の資金は、次世代電池の設備投資に充てる。
優良さと弱いところ
優良さは低い。堀は薄く、財務に余裕が無い。
強みは、ニッケル水素電池の車載・産業向けの技術と、国内で小さな特殊電池を作る力だ。富士通の傘下で長く経営が守られ、台湾の SILITECH が新しい親会社になって、次世代電池の投資が再開した。
弱みは三つ。第一に、汎用の電池は中国メーカーの価格に左右される。第二に、利益率が薄い。営業利益率は過去 12 年で最高 3.4% にとどまり、10 年の ROE の中央値は 1.6%。第三に、借入が重い。有利子負債は 160 億円で、純有利子負債は自己資本の 0.56 倍。
2016〜2017 年には大きな赤字を出し、自己資本が 39 億円まで減ったことがある。今期の期末配当は見送られ、無配が続いている。
経営の方向は、規模を追うより、特殊用途の電池に絞って利益率を高める形だ。その転換は進行中で、成果が数字に現れるまでは時間がかかる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電池の市場は、車載と蓄電を中心に実質で伸びるが、日本の中堅メーカーは守勢に立っている。
乾電池とニッケル水素電池は、成熟した市場だ。国内の市販向けは人口減と、電子機器の充電式への移行で縮む。ニッケル水素電池は、海外の車載用途で需要が増えている。
リチウムイオン電池では、中国の CATL、BYD、さらに国内のパナソニックなどの大手が先行し、FDK は小さな特殊用途を狙う位置だ。全固体電池など次世代電池は、開発が先行する他社も多く、事業化の時期は読めない。
原材料のニッケル、亜鉛、リチウム、レアアースの価格が営業利益に大きく響く。電子事業のモジュールや電源は、大口の顧客の需要に左右され、縮小が続いている。
国内メーカーの電池は、価格で勝てず、技術や信頼性で差をつけるしかない。
電池の使い道が広がるほど、顧客は複数の調達先を使い、価格の交渉力を強める。FDK のような中堅は、特定の顧客と長く組む形で生き残る道を探ることになる。
電池の価格は原材料と為替で動き、製品の値上げが利益に残りにくい。供給の不安から、車載向けでは国内で作る電池の需要が根強いが、それが利益率の差として確実に現れる保証は無い。
資本政策と M&A
資本政策の主役は、親会社の交代だ。2025 年 2 月、富士通は、SILITECH による公開買付けに保有分を応募する契約を結んだ。買付けは 3 月に成立し、SILITECH は議決権の約 45% を持つ筆頭株主になった(FDK は SILITECH の持分法適用会社)。富士通は親会社でなくなり、約 17% を持つにとどまると伝えられた。上場は続いている。
2025 年 9 月に資本金などを減らして欠損を埋めた。2026 年 9 月には SILITECH 向けに 25 億円の転換社債を発行する。利率は 0.3%、転換価格は今の株価の約 1.3 倍で、全部が転換されると 500 万株が増える。資金は次世代電池の設備投資などに使う。
配当は 2 期続けて無配で、有利子負債と成長投資を理由に、事業収益力と財務基盤の強化を優先するとしている。復配を目指す。余った現金は無く、純有利子負債は 107 億円ある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
台湾の SILITECH という新しい親会社が付き、次世代電池への投資が動き出した。25 億円の転換社債を出し、設備投資を増やす。親会社は今の株価より高い転換価格で株を持つことになり、株価を上げる動機がある。
車載向けのニッケル水素電池は海外で増えており、リチウム電池も伸びた。2026/03 期は営業利益が 2 割増え、純利益は 39% 増えた。アルカリ乾電池の減損と構造改善費は、今期で出し切った。
時価総額 135 億円は、自己資本 191 億円の 7 割。事業が少しでも改善すれば、PBR 1 倍への回帰で大きく動く。富士通の傘下で守られた特殊電池の技術は、台湾の量産力と組み合わせて価値を出せる。
配当の復活も視野に入り、株主還元の転換点にもなりうる。台湾の電池・電子部品の産業と日本の技術が組む構図は、他社にもある成功の型だ。中国勢の価格攻勢を、特殊用途で避けられるかどうかが、再評価の鍵になる。借入の返済が進めば、利払いの負担が軽くなり、利益が急に増える効果もある。
慎重な見方
安く見えるのは、稼げないからだ。営業利益率は 12 年で 3.4% が最高で、ROE の中央値は 1.6%。資本コストを 10 年以上稼げていない会社の帳簿は、額面より安く評価するのが筋だ。
来期の会社予想は、営業利益が 14 億円と 16% 減る。電子事業は半分近く縮み、アルカリ乾電池も減損が出た。借入は 160 億円に増え、金利が 3.5% に上がれば、利払いは営業利益の 3 分の 1 に達する。
次世代電池の事業化は、先行する中国・韓国・日本の大手が多く、FDK が勝つ根拠は薄い。全固体電池は、量産の時期も読めない。新しい親会社が投資を求めても、回収の保証は無い。過去に富士通の傘下でも赤字を出した事業で、親会社が替わっただけで収益力が変わる根拠は乏しい。
転換価格は今の株価より 3 割高く、転換が起きる前提は高い。起きなければ、25 億円は借入として残る。
新しい親会社の支援は、資金を出す約束ではなく、あくまで関係の強化にとどまる。支援が止まれば、借入の更新の条件が厳しくなり、利払いが先に利益を食う。
どちらに重みを置いたか
稼ぐ力が資本コストに届かず、借入も重いという慎重な見方のほうが強い。親会社の交代と次世代電池の投資は将来の可能性だが、数字に出るまでは価値に算入できない。中立を 37% とし、やや悲観と悲観を合わせて 4 割に置いた。強気の見方が当たるのは、投資の成果が利益率の改善として現れた時だ。それまでは、親会社の交代を好材料として数えず、筋書きの確率で表した。株価が安いのは市場の見落としではなく、稼げない事業への妥当な評価だという見方のほうが、過去の数字とよく合う。割安に見える水準は、資産の質が帳簿どおりでない可能性や、今後の追加の損失を織り込んだ結果でもある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 343 円118 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 52 円18 億円)。 今の値に割り戻すと 171 円59 億円、今との差 −55.3%、 期待の年率 +0.3%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 845 円291 億円 | 134 円46 億円 | +155.5% | +9.8% | 59 円20 億円 |
| やや楽観 | 17% | 575 円199 億円 | 91 円31 億円 | +74.0% | +5.7% | 113 円39 億円 |
| 中立 | 37% | 387 円134 億円 | 61 円21 億円 | +17.0% | +1.6% | 166 円57 億円 |
| やや悲観 | 27% | 150 円52 億円 | 20 円7 億円 | −55.5% | −7.8% | 46 円16 億円 |
| 悲観 | 13% | 81 円28 億円 | 0 円0 億円 | −78.8% | −14.4% | 11 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 343 円118 億円 | 52 円18 億円 | +3.0% | +0.3% | 394 円136 億円 |
今の株価時価総額 383 円132 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 次世代電池と車載向けのニッケル水素電池が当たり、SILITECH との協力が収益に結びつく 利益 32 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 845 円291 億円
車載と産業用のニッケル水素電池が海外で伸び続け、電池の出荷数が 10 年で 35% 増える。全固体電池などの次世代電池が実を結び、利益率の高い新製品の比率が上がる。台湾の SILITECH との協力で、生産と販売の効率も上がる。
電子事業は、モジュールの縮小を電源とトナーの伸びで補い、横ばいに戻る。
営業利益率は 5% まで上がるが、過去の山(3% 台)を超えるため、新製品の収益が実際に現れることが前提になる。増えた利益で借入は減り、配当を再開する。2026 年 9 月に発行した転換社債は、株価が転換価格を上回って全部が株式になる。
- 電池事業:数量 433(電池の出荷数(百万個))× 価格 204(円/個(平均卸値))→ 売上 884 億円・営業利益 44 億円。数量 1.35 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 5.0%
- 電子事業:数量 52.0(電子製品の出荷数(百万個))× 価格 292(円/個(平均卸値))→ 売上 152 億円・営業利益 5 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 334 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:車載向けの電池と全固体電池などの次世代電池が当たり、SILITECH(台湾 PSA グループ)との協力が実を結ぶ筋書き。過去 12 年の営業利益率は 3% 台が山で、5% は届いたことがなく、複数の条件が重なる必要があるので 6% に置いた。
やや楽観 17% 車載向けの電池が伸び、アルカリの縮小を補って利益率が上がる 利益 22 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 575 円199 億円
車載用のニッケル水素電池とリチウム電池が増え、電池の出荷数は 2 割増える。アルカリ乾電池は国内の市販向けが縮むが、全体に占める割合が小さくなり、影響は限られる。電子事業は 1 割減る。
営業利益率は 4% 台に乗る。借入は少しずつ減り、配当を再開する。転換社債は、株価が転換価格を上回って、全部が株式に変わる。
新製品の設備投資は、今期の 26 億円規模が続く。償却が増えるため、利益率の上がり幅は限られる。
アルカリ乾電池は縮小しても、リチウム電池や車載向けが穴を埋め、会社全体の売上は物価並みに増える。
- 電池事業:数量 385(電池の出荷数(百万個))× 価格 203(円/個(平均卸値))→ 売上 780 億円・営業利益 33 億円。数量 1.20 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 4.2%
- 電子事業:数量 46.8(電子製品の出荷数(百万個))× 価格 292(円/個(平均卸値))→ 売上 137 億円・営業利益 2 億円。数量 0.90 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 1.5%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 227 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:車載向けのニッケル水素電池とリチウム電池が伸び、アルカリ乾電池の縮小を補う筋書き。直近の営業利益は増えたが、来期は 14 億円の減益予想で、強気の確率は 2 割弱にとどめた。
中立 37% 電池は物価並みに稼ぎが増えるが、電子事業が縮み、資本の効率は低いまま 利益 13 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 387 円134 億円
電池は車載とリチウム電池の伸びで出荷数が 5% 増える。アルカリ乾電池は国内の市販向けが縮み、横ばいに近づく。価格は物価並みに上がるが、ニッケル・亜鉛・リチウムなどの原材料と電気代の上昇が、利益を削る。
電子事業は 2 割減り、利益はほぼゼロ。電池事業の営業利益率は 3.3% で、今期の 3.5% を少し下回る。
借入は 160 億円前後で推移し、金利が 3.5% 前後に上がって利払いが営業利益の 2 割強を食う。配当は復配するが、利益の 2 割弱にとどまる。転換社債は、株価が転換価格に届かず、借入として残る。
- 電池事業:数量 337(電池の出荷数(百万個))× 価格 201(円/個(平均卸値))→ 売上 678 億円・営業利益 22 億円。数量 1.05 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 3.3%
- 電子事業:数量 41.6(電子製品の出荷数(百万個))× 価格 292(円/個(平均卸値))→ 売上 122 億円・営業利益 1 億円。数量 0.80 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 0.5%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 133 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電池の需要が緩やかに増え、電子事業の縮小が続く筋書き。営業利益率は過去 12 年の帯(−0.4〜3.4%)の上の方で動くとみて最も重く置いた。2026/03 期は 2.8% で、その水準を保つ前提である。
やや悲観 27% 中国メーカーの価格攻勢と原材料の上昇で、電池の利益率が下がる 利益 4 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 150 円52 億円
中国メーカーが汎用のアルカリ・ニッケル水素電池で価格を下げ、国内の取り分が減る。車載向けも、顧客が複数の調達先を使うようになり、値下げの要求が強まる。電池の出荷数は 1 割減る。
電子事業は 3 分の 2 にまで縮み、赤字になる。営業利益率は 2% 台前半に下がる。
借入の利払いが、金利の上昇で営業利益の半分に達する。配当は復配するが、小さく、設備投資を絞らざるをえなくなる。
設備を絞れば次世代電池の事業化が遅れ、競争力はさらに落ちる。悪循環に入るかどうかが、この筋書きの分かれ目になる。
株価は自己資本を大きく下回る水準で、事業の値打ちより売れる資産の価値で評価される。
- 電池事業:数量 289(電池の出荷数(百万個))× 価格 195(円/個(平均卸値))→ 売上 563 億円・営業利益 13 億円。数量 0.90 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 2.3%
- 電子事業:数量 33.8(電子製品の出荷数(百万個))× 価格 283(円/個(平均卸値))→ 売上 96 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.65 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 -1.0%
倍率:事業の ROE は 1% 台と k を大きく下回り、PER の上限は 1÷k=10.8 倍。利益の質が低く借入も重いので、上限の約 7.4 割の 8.0 倍に置いた。
確率:中国の電池メーカーが価格を主導し、原材料の上昇も転嫁しきれない筋書き。過去 12 年で営業利益が 10 億円を下回った年が 6 回あり、ここまで下がるのは十分ありうるので、強気側より厚く置いた。
悲観 13% 汎用電池が崩れ、電子事業を畳み、借入の重さだけが残る 利益 −8 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 81 円28 億円
アルカリ乾電池と汎用のニッケル水素電池が中国勢に価格で負け、出荷数が 3 分の 1 減る。電子事業は工場を畳み、赤字が続く。電池事業の営業利益は 2 億円ほどに縮む。
金利が 3.5% に上がり、160 億円の借入の利払いが利益を食い尽くす。全体は赤字に転じ、自己資本が減る。
この局面では、SILITECH の支援が続くかどうかで会社の姿が決まる。事業としての値打ちは薄く、売れる資産が値段を決める。配当は出せない。
工場の一部を売って借入を返し、残した事業を小さく続ける形になる。再び公開買付けで上場を終える可能性も否定できない。
- 電池事業:数量 209(電池の出荷数(百万個))× 価格 188(円/個(平均卸値))→ 売上 391 億円・営業利益 2 億円。数量 0.65 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 0.5%
- 電子事業:数量 23.4(電子製品の出荷数(百万個))× 価格 273(円/個(平均卸値))→ 売上 64 億円・営業利益 −3 億円。数量 0.45 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 -4.0%
倍率:稼ぐ力は赤字でゼロ。売れる資産の税後から借入を引いた約 28 億円を床とし、今の自己資本 191 億円に約 0.15 倍を掛けた。EV÷営業利益は赤字で意味を持たない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.147 倍・時価総額 28 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:汎用電池が中国勢に奪われ、電子事業の縮小が止まらない複合の筋書き。FDK は 2016 年から 2017 年にかけて大きな赤字を出した前歴があり、1 割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電池事業
ニッケル水素電池(車載・産業・充電式)、アルカリ乾電池、リチウム電池を作る事業。高崎・鳥取・湖西の工場と、台湾・廈門(アモイ)の海外拠点で生産する。
| 数量電池の出荷数(百万個) | 価格円/個(平均卸値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 321 | 150 | 482 | 17 |
| 10 年後 中立 | 337 | 201 | 678 | 22 |
取り方:有報の電池事業の売上 482.2 億円・セグメント利益 17.1 億円(2026/03、売上は前期比 1.5% 減)を、出荷 3.2 億個(推定。個数は未開示)で割った平均卸値。リチウム電池は増え、ニッケル水素電池・設備関連・アルカリ乾電池は減った。アルカリ乾電池の関連で 3.3 億円の減損を計上している(営業利益に入っていない特別損失の側)。
電子事業
各種モジュール、スイッチング電源、トナー(複写機用の粉)を作る事業。
| 数量電子製品の出荷数(百万個) | 価格円/個(平均卸値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 52.0 | 218 | 113 | 0 |
| 10 年後 中立 | 41.6 | 292 | 122 | 1 |
取り方:有報の電子事業の売上 113.4 億円・セグメント損失 0.4 億円(2026/03、売上は前期比 20.2% 減)を、出荷 5,200 万個相当(推定)で割った平均卸値。各種モジュールとスイッチング電源が減り、トナーは増えた。2027/03 期の第 1 四半期も電子事業は半分に近い減収だった。
リスクと懸念
中国勢の価格攻勢
汎用のアルカリ乾電池とニッケル水素電池は中国メーカーの価格に左右される。値下げの要求が強まると、薄い利益率が一気に削られる。
次世代電池の事業化の不確かさ
全固体電池などの次世代電池は、先行する大手が多く、量産と採算の時期は読めない。投資が先行して回収が遅れれば、償却と利払いだけが重くなる。
借入と金利の上昇
有利子負債は 160 億円で、金利が 3.5% 前後に上がると、利払いは営業利益の 2〜3 割に達する。2026 年 9 月の転換社債は、株価が転換価格に届かなければ借入として残る。
電子事業の縮小
モジュールとスイッチング電源の縮小が続き、2027/03 期の第 1 四半期は電子事業が半分近く減った。損失が拡大すれば全体の利益を削る。
親会社の方針と原材料
SILITECH が約 45% を持つ筆頭株主で、経営と投資の方針に強い影響を持つ。ニッケル・亜鉛・リチウムなどの原材料価格と電気代の変動も、営業利益に大きく響く。
今後の分かれ目
- 次世代電池(全固体電池など)の量産と、顧客からの受注が発表された
- 強気の筋書きに近づく。電池の数量と利益率を引き上げ、確率を楽観側に寄せる。
- 営業利益率が 2 期続けて 3.5% を超えた
- 山ではなく新しい水準になった可能性を考え、中立の営業利益率を引き上げる。
- 株価が転換価格を上回り、転換社債の転換が始まった
- 既存株主の取り分が約 87% に薄まる。借入は減るが、1 株あたりの価値は薄まる点を見る。
- 電子事業が赤字を拡大させ、事業の縮小・撤退を決めた
- 一時の損失は出るが、赤字の源が絶たれる。中立の利益率を少し上げる。
- SILITECH が持株比率を引き上げ、公開買付けを発表した
- 買付価格が価値の上限になる。公開買付けが発表された時点で分析の前提を見直す。
見ておくもの
- 次世代電池(全固体電池)の事業化・受注の発表
- 電池事業と電子事業のセグメント損益(四半期ごと)
- 有利子負債と純有利子負債の推移、転換社債の転換の動き
- ニッケル・亜鉛・リチウムの価格と、営業利益への影響
- SILITECH の持株比率と経営への関与
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の ROE(4% 台)が資本コスト 9.5% を大きく下回るため、式の上限 1÷k=10.8 倍の 7.4〜9 割に置いた。今の株価や PBR 0.7 倍は使っていない。営業利益率は過去 12 年の山 3.4% を超えない 3% 台に置いた。余った現金は無く、純有利子負債 107 億円は倍率でなく利払いに入れた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→10.53 倍・やや楽観 PER 9.5→10.53 倍・中立 PER 8.5→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.75% を足して 9.25%。赤字の期はあるが、新しい親会社が支えており存続に疑いは無いため extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 9.50%。