結論
指月電機製作所は、フィルムコンデンサ(電気を一時ためて流れをなめらかにする部品)の専業メーカーだ。もう一つ、工場の電力品質を整える機器も手がける。2026年3月期は売上280億円、営業利益25億円(利益率9.0%)と過去最高になった。筆者の結論は、本質価値が今の値段を3割ほど下回る割高だ。電力機器の高い利益率を認めても、会社全体の稼ぐ力は資本コストと同じ程度で、純資産が積み上がるほど価値は薄まる。
稼ぎの形は偏っている。電力機器システムは売上の36%だが、セグメント利益の76%を稼ぐ。利益率は30%と、コンデンサの5%とは別の事業に見える。コンデンサは電気自動車向けが採用モデルの切り替えで伸びず、2期連続で売上が減った。
株主は特殊だ。三菱電機が約17%、村田製作所が約14%を持ち、両社で3割を超える。取引先でもあり、経営の独立性よりも、この二社との関係が会社の運命を左右する。純現金はほぼゼロで、財務は健全だが余力は大きくない。
10年の中立でも、純利益は27億円、時価総額は300億円前後にとどまる。今の値段とほぼ同じ額が10年後に残るだけで、株主への還元を足しても期待の年率は2%台半ばだ。資本コストの8%台には遠い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社の本質価値は、電力機器システムの利益率が10年続くかどうかにかかっている。コンデンサ事業だけなら、利益率は5%台で資本コストを稼げない。電力機器が全体の利益を支え、ROEがようやく資本コストに並ぶ。
株主のものになる利益、つまり設備投資と運転資金を引いた後の利益は、純利益のおよそ6割とみる。設備投資が重く、営業キャッシュフローの半分は工場に消える。その分だけ配当や自社株買いに回せる額は小さい。
経営は資本配分を意識し始めたが、実績は浅い。ROEが資本コストと同じ程度では、純資産を積み上げても価値は増えない。大きな割安を取る場面ではなく、払う値段に安全域があるかどうかが問われる会社だ。今の値段は、利益率の山が続くことを前提にしており、払う値段に安全域は見えない。
何で稼ぐ会社か
指月電機は二つの事業を持つ。コンデンサ・モジュールは売上178億円で、電気自動車(xEV)の駆動用インバータ、産業機器、太陽光やパワコンなどに使うフィルムコンデンサを作る。秋田、九州、岡山、米国、タイに工場を持つ。利益率は5〜7%と低く、中国や台湾、日本の大手と競る。
電力機器システムは売上102億円で、進相コンデンサ(工場の電力のロスを減らす機器)や直列リアクトル、回生電力再利用装置(エレベーターなどが生む電気を蓄えて使い回す機器)を扱う。九州指月が作り、指月電機が全量を仕入れて売る。国内の設備投資が増える局面で売上が1割伸び、セグメント利益は31億円、利益率は30%に達した。
顧客の偏りがある。TMEIC(東芝三菱電機産業システム)が売上の14.5%、三菱電機とその子会社が1割強を占める。一方でこの二社は大株主でもあり、関係は深い。
もう一つ重要なのが、村田製作所との合弁会社だ。2016年に村田が65%、指月が35%を出して作った会社で、新素材のフィルムコンデンサを電気自動車向けに事業化する狙いだった。2026年3月末の純資産はマイナス45億円と、債務超過に陥っている。指月は持分法で処理しており、連結の数字には小さな影響にとどまる。ただし、再建や整理の費用が発生する余地は残る。
優良さと弱いところ
強みは、電力機器システムの収益性だ。利益率30%は、売上が伸びる国内の設備投資という追い風があったからではあるが、顧客の機器と組み合わせて導入され、保守や追加の需要が続く点で、単なる部品売りとは違う。会社もこの分野に重点を置く方針を明示している。
弱みは三つある。第一に、コンデンサが中国勢、台湾勢との価格競争で5%台の利益率に沈む。第二に、売上が三菱電機・TMEIC に偏る。第三に、電力機器の利益率30%が長く保てるかは未知数で、設備投資の波が引けば縮む。
資本の使い方には疑問も残る。2024年3月期に約36億円の自己株式を取得した後、純現金は純負債に変わり、合弁会社の債務超過も解消されていない。ただ、2025年4月からの中期経営計画では、ROE 8%以上、PBR 1倍以上、配当性向30%以上を明確に掲げ、方針は前向きだ。過去を見ると、営業利益率は2014年の10.9%から2021年の3%台まで落ち、7%台、9%台に戻ったのは直近の二年だけだ。この回復が構造の変化によるのか、波の頂上なのかが、すべての論点だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
コンデンサ事業は、電気自動車(xEV)と産業機器の二つの需要で成り立つ。世界のフィルムコンデンサ市場は調査によって34億〜46億ドルと幅があり、成長率も年2.7〜4%と見方が割れる。電気自動車向けは、インバータの高電圧化で需要が増えるが、採用モデルの入れ替えで数量が揺れる。指月も直近は xEV 向けが採用モデルのピークアウトで減収になった。
競争はパナソニック、ニチコンなど国内勢に、海外のTDK(EPCOS)、ビシェイ、KEMET(ヤゲオ)が加わり、中国勢の追い上げが続く。価格が下がりやすい世界で、指月は数量で戦わず、特定顧客向けの高耐圧・高寿命品に絞っている。
電力機器システムの市場規模は調査がない。需要は、国内の工場の電力品質対策や省エネ投資、再生可能エネルギーの接続で決まる。データセンターや半導体工場の新設が追い風になるが、設備投資の波に左右される。回生電力再利用装置や V2X システム(電気自動車の電気を家や建物で使う仕組み)は、まだ育成の段階だ。
10年の分かれ目は二つある。電力機器の高収益が定着するか、コンデンサが車載の次のモデルを確保できるかだ。
資本政策と M&A
還元は、中期経営計画で配当性向30%以上を掲げている。2026年3月期は30.4%だった。自己株式の取得は、2024年3月期に約36億円を実施した例がある。買われた先は確認できないが、それ以外の年は1億円前後で、機動的というより単発だ。
政策保有株は、村田製作所が約15億円など、上位7銘柄で約23億円を計上する。村田は大株主でもあり、持ち合いの性格が強い。配当は利益に残っているため、価値は別に足さない。
三菱電機は約17%、村田製作所は約14%を保有する。両社が TOB で買い増す可能性は否定できないが、どちらも事業での提携関係が主で、支配を強める動きは見えない。株主優待は確認できなかった。
M&A は積極的ではない。本社の生産棟に21億円、秋田指月の増産に十数億円と、投資は自前の設備が中心だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電力機器システムは、一時の追い風ではなく構造に近い。データセンターや半導体工場、再生可能エネルギーの接続が増え、工場の電力品質への投資は10年続く。しかも、セグメント利益30%は、顧客の機器と組んで導入し保守が続くという仕組みから出ている。会社は2028年度に売上380億円を掲げ、2027年3月期の予想はすでに売上312億円、営業利益30億円だ。コンデンサも、電気自動車の次のモデルで採用を取り戻せば、設備投資が済んだ秋田指月の増産が効く。
加えて、中期経営計画は ROE 8%以上、PBR 1倍以上を明示した。村田・三菱電機が大株主として控えているので、資本政策で株主の意向が強く働く。株価が低いと、さらなる還元強化か提携の再編が起きやすい。10年続けて名目で売上が年4%伸びれば、営業利益は40億円近くまで増え、現在の時価総額は十分に支えられる。 村田製作所との合弁も、債務超過が出ているとはいえ、車載で新素材の技術を磨くための先行投資であり、成果が出れば指月の持分に大きな価値が生まれる。
慎重な見方
好業績の中身を見る必要がある。2026年3月期の営業利益は5億円増えたが、中身は電力機器システムの増益4億円と本社費の減少4億円で、コンデンサは3億円の減益だった。電力機器は売上の36%、セグメント利益の76%を占める。国内の設備投資という波に乗っただけなら、利益率30%は2、3年で縮む。実際、コンデンサは2期連続の減収で、受注も4%減った。
コンデンサの利益率5%は、資本コストを稼げる水準ではない。中国や台湾の勢いが続く限り、値上げの余地はない。三菱電機・TMEIC に売上が偏るため、価格交渉の主導権も弱い。合弁会社の債務超過45億円は、持分法の外にあっても、整理の局面で追加の負担が出る余地が残る。
さらに、中期経営計画の目標は営業利益率8%以上と、直近の9%を下回る。会社自身が、今の利益率を維持できるとは言っていない。ROEが資本コストと同じ程度では、純資産が増えても価値は増えず、現在のPBR 1.2倍は先取りだ。10年かけて見れば、先取りの分だけ割高になる。 加えて、受注残が1.2%減と、先行きの余力も乏しい。
どちらに重みを置いたか
電力機器の高収益が10年続くという強気の見方には根拠があるが、続かない場合の落ち込みは大きく、慎重な見方の方が強い。中立の確率は36%に抑え、やや悲観を2割、悲観を1割と、悲観側を3割残した。楽観側は3割強で均衡に近いが、中立でも ROE は資本コストに届かず、ためた利益が価値を増やさない。この点が決め手となり、価値は今の時価総額を約35%下回る割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,288 円325 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 397 円100 億円)。 今の値に割り戻すと 866 円219 億円、今との差 −21.2%、 期待の年率 +4.4%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 2,459 円621 億円 | 630 円159 億円 | +180.7% | +10.9% | 371 円94 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,747 円441 億円 | 503 円127 億円 | +104.6% | +7.4% | 495 円125 億円 |
| 中立 | 36% | 1,361 円344 億円 | 424 円107 億円 | +62.3% | +5.0% | 643 円162 億円 |
| やや悲観 | 20% | 402 円102 億円 | 253 円64 億円 | −40.4% | −5.0% | 131 円33 億円 |
| 悲観 | 10% | 377 円95 億円 | 71 円18 億円 | −59.3% | −8.6% | 45 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,288 円325 億円 | 397 円100 億円 | +53.1% | +4.4% | 1,684 円425 億円 |
今の株価時価総額 1,100 円278 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 電力機器の高収益が定着し、コンデンサも復調 利益 44 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 2,459 円621 億円
データセンターと再エネの接続投資が10年続き、電力機器システムは売上約214億円、利益率26%を保つ。コンデンサは xEV の新モデルで採用を取り戻し、世界シェア相当が3.4%へ上がる。中期経営計画の目標を上回り、売上は約520億円、営業利益は59億円になる。ROE は10%を超え、資本政策も株主に優しく変わる。村田・三菱電機との提携が深まり、事業の再編でさらに価値が上がる。利益率は過去の山(10.9%)を超えて11%台に乗る。この筋書きが成り立つ条件は二つある。電力機器の顧客である三菱電機・TMEIC が設備投資を続けること、そしてコンデンサで新しい車載モデルを継続して獲得することだ。本社の新しい生産棟が2027年に完成し、生産性も上がる。
- コンデンサ・モジュール:数量 6,800(世界のフィルムコンデンサ市場(今の値段で測った実質・億円))× 価格 4.6%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア相当 × 物価の倍率)→ 売上 310 億円・営業利益 23 億円。新モデル獲得でシェア相当 3.4%(実質の市場 6,800 億円、物価込みで名目)
- 電力機器システム:数量 1,000(国内の電力品質・省エネ機器の市場(進相コンデンサ・リアクトル・回生電力再利用、今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 21.4%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 214 億円・営業利益 56 億円。設備投資が続き利益率 26%(実質の市場 1,000 億円 × シェア 16%、物価込みで名目)
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.24 倍、時価総額 621 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電力機器の利益率が高止まりし、コンデンサも新モデルの獲得で復調する。村田・三菱電機が大株主で後押しする。実現のハードルが高いため1割台前半に抑えた。
やや楽観 22% 中計をほぼ達成し、電力機器が高水準を保つ 利益 34 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,747 円441 億円
電力機器システムは設備投資の追い風が続き、売上は約190億円、利益率は25%に下がりながらも高水準を保つ。コンデンサは xEV の採用が横ばいに戻り、産業機器向けで穴を埋める。売上は約470億円、営業利益は47億円で、利益率は10%に乗る。ROE は8%台と資本コストをわずかに上回る。配当性向は4割台後半へ上がり、純資産の積み上がりも緩やかになる。会社の計画が営業利益率8%以上と控えめなことを考えると、この水準は達成の見込みが比較的高い。ただ資本の積み上がりが続くため、ROE は資本コストをわずかに超える程度にとどまる。
- コンデンサ・モジュール:数量 6,500(世界のフィルムコンデンサ市場(今の値段で測った実質・億円))× 価格 4.3%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア相当 × 物価の倍率)→ 売上 279 億円・営業利益 20 億円。産業機器向けで穴を埋める(実質の市場 6,500 億円 × シェア相当 3.2%)
- 電力機器システム:数量 950(国内の電力品質・省エネ機器の市場(進相コンデンサ・リアクトル・回生電力再利用、今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 20.1%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 191 億円・営業利益 48 億円。利益率 25%を維持(実質の市場 950 億円 × シェア 15%)
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.94 倍、時価総額 441 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期経営計画の方向どおりに進み、電力機器が高水準を保つ。蓋然性の高い好ケースとして2割強を置いた。
中立 36% 電力機器の利益率が下がりつつ、全体は緩やかに伸びる 利益 28 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,361 円344 億円
設備投資の波は引くが、電力品質と省エネの需要は底堅く、電力機器システムは売上約170億円、利益率25%を保つ。コンデンサは xEV の採用モデルの入れ替えを経て、世界シェア相当3.0%を保つ。物価の上昇で売上は年3.4%ほど伸び、10年後に約420億円。営業利益は38億円、利益率は9.0%と今の水準を保つ。純利益は27億円だが、純資産が積み上がるため、ROE は7%台にとどまる。配当性向は45%に引き上がる。会社の目標(2028年度に売上380億円)は、この筋書きの10年後の水準にほぼ並ぶ。つまり計画の達成が遅れても、10年かければ届く水準だ。電力機器の利益率が下がる分を、コンデンサの安定とコスト削減で補う。
- コンデンサ・モジュール:数量 6,300(世界のフィルムコンデンサ市場(今の値段で測った実質・億円))× 価格 4.0%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア相当 × 物価の倍率)→ 売上 253 億円・営業利益 17 億円。横ばいで推移(実質の市場 6,300 億円 × シェア相当 3.0%)
- 電力機器システム:数量 900(国内の電力品質・省エネ機器の市場(進相コンデンサ・リアクトル・回生電力再利用、今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 18.8%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 169 億円・営業利益 42 億円。利益率が 25%に低下(実質の市場 900 億円 × シェア 14%)
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 344 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電力機器の利益率が30%から25%へ下がり、コンデンサは横ばいの成長で、会社の中期計画(営業利益率8%以上)を超える程度に収まる。最も蓋然性が高い。
やや悲観 20% 価格競争と設備投資の反動で、利益率が過去に戻る 利益 11 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 402 円102 億円
国内の設備投資の波が引き、電力機器システムは売上約130億円、利益率は19%に下がる。コンデンサは中国・台湾勢の攻勢でシェア相当が2.7%に落ち、利益率も5.5%にとどまる。売上は約350億円と伸びるが、営業利益は16億円で、利益率は4.7%と2021年〜2024年の水準に戻る。純利益は11億円、ROE は3%で、資本コストを大きく下回る。電力機器は、設備投資が一巡すれば顧客が内製へ戻す動きも出る。コンデンサの価格競争は続き、増産した設備の償却が重い。大株主の二社が購買を絞ることもありうる。配当は据え置きに近く、現金の戻りも小さくなる。
- コンデンサ・モジュール:数量 6,000(世界のフィルムコンデンサ市場(今の値段で測った実質・億円))× 価格 3.6%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア相当 × 物価の倍率)→ 売上 217 億円・営業利益 12 億円。価格競争で縮小(実質の市場 6,000 億円 × シェア相当 2.7%)
- 電力機器システム:数量 800(国内の電力品質・省エネ機器の市場(進相コンデンサ・リアクトル・回生電力再利用、今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 16.8%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 134 億円・営業利益 26 億円。利益率 19%へ低下(実質の市場 800 億円 × シェア 12.5%)
倍率:事業の ROE は3%で k を大きく下回る。ためた利益は額面未満の価値なので PER の上限は 1÷k の12.1 倍で、その8割弱に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9.5 倍・時価総額 102 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:電力機器の高収益が薄れ、コンデンサの価格競争も続く。過去の10年(営業利益率4〜5%)に近い。顧客の偏りもあるため、2割と厚く置いた。
悲観 10% 車載が外れ、電力機器も価格競争で構造的に負ける 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 377 円95 億円
xEV の次世代モデルを取れず、秋田指月の増産設備が重荷になる。コンデンサは世界シェア相当が2.2%に落ち、利益率は2%に沈む。電力機器システムも、顧客の内製化と競合の参入で利益率が12%まで下がる。村田指月FCソリューションズの整理で追加の負担も出る。営業利益はほぼゼロ、純利益も1億円に細り、自己資本は減損で50億円ほど減る。それでも流動資産と上場株、工場の簿価が残るため、売れる資産の税後が床になる。ここでは追加の整理費用が出ても、財務は持ちこたえる。大株主の二社が事業の立て直しに動くか、再編に動く可能性もあるが、少数株主に有利になる保証はない。
- コンデンサ・モジュール:数量 5,400(世界のフィルムコンデンサ市場(今の値段で測った実質・億円))× 価格 2.9%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア相当 × 物価の倍率)→ 売上 159 億円・営業利益 3 億円。車載を失い縮小(実質の市場 5,400 億円 × シェア相当 2.2%)
- 電力機器システム:数量 700(国内の電力品質・省エネ機器の市場(進相コンデンサ・リアクトル・回生電力再利用、今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 13.4%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 94 億円・営業利益 11 億円。内製化と競争で縮小(実質の市場 700 億円 × シェア 10%)
倍率:稼ぐ力はほぼ消え、価値は売れる資産の税後で決まる。今の自己資本に PBR 0.375 倍を掛けた額が、floor_assets_oku の内訳(流動資産−全負債、上場株の税後、工場・土地の一部)と一致する。
確率:xEV 向けが新モデルで外れ、電力機器も内製化と価格競争で収益性を失う。売れる資産が床になる。大株主の支えがあるので1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コンデンサ・モジュール
xEV・産業機器・小型産業用のフィルムコンデンサ。国内外の自社工場で作る。
| 数量世界のフィルムコンデンサ市場(今の値段で測った実質・億円) | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア相当 × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,000 | 3.0% | 178 | 10 |
| 10 年後 中立 | 6,300 | 4.0% | 253 | 17 |
取り方:世界のフィルムコンデンサ市場は調査で 34 億〜46 億ドルと幅があり、約 40 億ドル(6,000 億円)を使った。コンデンサ・モジュールの売上 178 億円を割ってシェア相当 3.0% を逆算した(モジュール製品を含むため市場の定義より広い)。数量は実質、物価 3% は価格に入れた。セグメント利益は 9.7 億円(利益率 5.4%)。
電力機器システム
進相コンデンサ・直列リアクトルなど力率改善機器、回生電力再利用システム。九州指月が作り、全量を同社が仕入れて販売する。
| 数量国内の電力品質・省エネ機器の市場(進相コンデンサ・リアクトル・回生電力再利用、今の値段で測った実質・億円、推定) | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 800 | 12.7% | 102 | 31 |
| 10 年後 中立 | 900 | 18.8% | 169 | 42 |
取り方:この製品群の市場規模は調査も会社の開示もなく、800 億円と推定して売上 102 億円からシェア 12.7% を逆算した。顧客の設備投資に連動する。セグメント利益 30.9 億円(利益率 30.3%)。全社の調整額 −15.3 億円(本社費・研究開発)を引いて連結営業利益 25.3 億円になる。
リスクと懸念
電力機器の高収益が一時の波
セグメント利益の76%を占める電力機器システムの利益率30%が、国内設備投資の波で押し上げられている可能性がある。波が引けば、営業利益は一気に2〜3割減りうる。
コンデンサの車載依存と価格競争
xEV 向けは採用モデルのピークアウトで減収した。次のモデルを取れなければ、増産した秋田指月の設備が重くなる。中国・台湾勢の価格競争も続く。
三菱電機・TMEIC への偏り
売上の4分の1を二社グループが占める。価格交渉で弱く、二社が内製や他社へ切り替えれば影響が大きい。大株主でもあるため、関係が経営の独立性を縛る。
村田指月FCソリューションズの債務超過
村田65%・指月35%の合弁会社は、2026年3月末で45億円の債務超過だ。整理や追加出資の局面で、指月に負担が及ぶ可能性が残る。
資本効率が資本コスト並み
ROE は直近で8%弱と資本コストとほぼ同じで、過去10年の中央値は3.5%にとどまる。ためた利益が価値を増やさず、純資産が膨らむほど ROE が薄まる。
為替・関税・原材料
米国・タイ・中国に拠点を持ち、為替や関税、フィルムなど原材料価格の影響を受ける。価格転嫁は顧客との交渉で遅れやすい。
今後の分かれ目
- 電力機器システムの受注が2期続けて減る
- 設備投資の波が引いた証拠で、セグメント利益率30%の前提が崩れる。慎重な筋書きの確率を上げる。
- コンデンサが xEV の新モデルを複数獲得し、売上が増加に転じる
- 増産投資が回収される見通しが立ち、コンデンサの利益率が6%台に乗る。強気の筋書きの確率が上がる。
- 自己株式取得や増配で、総還元性向が5割を超える
- 純資産の積み上がりが止まり、ROE が資本コストを上回る方向に動く。倍率の見方が変わる。
- 村田指月FCソリューションズの整理方針が示される
- 債務超過の負担が確定し、特別損失の大きさで資本コストを超える稼ぎの水準を見直す。
- 三菱電機または村田製作所が保有比率を引き上げる、または売却する
- 資本関係の再編が起き、TOB や提携の可能性が具体的になる。いずれも価値に直接影響する。
- TMEIC や三菱電機向けの売上比率が2割を超える
- 顧客依存が一段と強まり、価格交渉で不利になる。やや悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 電力機器システムの受注とセグメント利益率
- コンデンサの xEV 向け売上の推移
- 中期経営計画 FY2028 の売上380億円・営業利益率8%以上の進捗
- 総還元性向と自己株式取得
- 村田指月FCソリューションズの債務超過の推移
- 三菱電機・村田製作所の保有比率
- TMEIC・三菱電機向けの売上比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PER を見ず、セグメントごとの市場規模とシェア、利益率から10年後の利益を積み、k 8%・長期成長 4%・残る割合 0.5 の式を使った。ROE が資本コスト付近のため PER の上限は 1÷k(12.1 倍)で、利益の質に応じて置いた。悲観は稼ぐ力より売れる資産の床から置き、過去の PBR の底は使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.3→14.24 倍・やや楽観 PER 12.2→12.94 倍・中立 PER 11→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.75%(循環・値決め・寿命が各 +0.25)を足して k 8%。純有利子負債はほぼゼロで借金の加算はなく、事業が傾いてもいないので extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 8.00%。