結論
SMK は、東京都品川区に本社を置くコネクタとリモコンの電子部品メーカーである。2026 年 3 月期の売上は 482 億円で、コネクタが中心の CS 事業部が 225 億円、リモコンと操作ユニットの SCI 事業部が 256 億円を稼ぐ。創立 100 周年の記念配当を出した老舗でもある。
筆者の結論は、割高だ。営業利益は 2026 年 3 月期で 4.3 億円、利益率は 0.9% にとどまる。過去 3 年のうち 2 年は営業赤字で、20 年で赤字の期は 8 回ある。それでも財務は軽く、自己資本比率は 54%、純有利子負債は自己資本の 12% しかない。時価総額は自己資本を下回っていて、一見安く見えるが、稼ぐ力が資本コストに届かない会社の自己資本は、額面どおりの価値を持たない。
追い風は車載だ。電池・二輪関連のコネクタと、E-Bike 向けのユニットが伸びている。希望退職 118 名などの構造改革で、国内の固定費は年 7 億円、欧米は年 2 億円軽くなる。2027 年 3 月期の営業利益は 8 億円の予想だ。
一方、中期経営計画の 2027 年 3 月期の目標は、売上 600 億円、営業利益 21 億円だった。予想は売上 490 億円、営業利益 8 億円と大きく届かない。情報通信の新製品の採用時期のずれ、車載の主要顧客の動き、家電の大口顧客の企画のずれが重なった。
10 年後の中立は、売上 720 億円、営業利益 23 億円(利益率 3.2%)。強気なら営業利益 59 億円、慎重なら 13 億円、最悪は赤字に戻る。
焦点は二つだ。車載で売上を伸ばしながら、コネクタの利益率を 5% 台に保てるか。もう一つは、赤字が続くリモコンと新分野が、会社全体の足を引っ張り続けないかである。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、安く見えて安くない会社だ。時価総額は自己資本の 0.67 倍で、数字だけ見れば割安に見える。ただ、ROE は 2026 年 3 月期で 0.2%、過去 10 年の中央値は −0.4% と、自己資本が利益を生んでいない。
自己資本が利益を生まないなら、その資本の価値は額面を下回る。工場も、在庫も、売掛金も、稼ぐ力につながって初めて価値が出る。10 年の中立でも ROE は 4.8% と、資本コスト 9.0% の半分だ。
良い点は、借金が軽いことと、経営陣が弱みを認めて対処していることだ。118 名の希望退職、茨城営業所や海外拠点の閉鎖など、固定費に手を入れた。ただ、売上を増やす方の計画は、目標を外している。
安全域は、今の値段にはない。売れる資産の価値は 74 億円と置いたが、土地や投資有価証券の時価が分からないため、これは粗い推定だ。時価が簿価を大きく上回れば、床は上がる。
買うなら、利益率が 5% を超える確証を得てからだ。それまでは、事業の利益ではなく、資産の価値だけを買うことになり、その資産の中身は確認できていない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は CS 事業部で、2026 年 3 月期の売上は 225 億円、営業利益は 11.9 億円と、利益率は 5.3% ある。コネクタを中心に、車載の電池・二輪向け、アミューズメント・再生可能エネルギー向け、スマートフォン向けを手がける。売上は前の期より 1.6% 増えたが、営業利益は 22.6% 減った。スマートフォン向けの落ち込みと、中華圏の稼働減が響いた。
SCI 事業部は、リモコンと操作ユニットを作る。売上は 256 億円で、営業利益は −3.8 億円の赤字だった。サニタリー用リモコンと、車両用・E-Bike 用ユニットが好調だった一方、住設用とスマート家電用が減った。前の期の赤字 13.1 億円からは、赤字幅が 9.3 億円縮んだ。第 4 四半期にはメキシコの退職給付費用が出て、また赤字に戻っている。
イノベーションセンターは新規事業の部門で、売上は 0.6 億円しかなく、営業利益は −3.8 億円と、会社全体の利益をほぼ食い尽くす。音声による頭の健康度分析と、筋電センサーの事業化を進めており、2028 年 3 月期の売上目標はそれぞれ 2.4 億円と 2.5 億円と小さい。
売上を市場別に見ると、家電が 199 億円で最も大きく、車載が 172 億円、情報通信が 58 億円、産機・その他が 53 億円。地域別は中国 104 億円、日本 179 億円、北米 97 億円。為替の影響は大きく、ドル円が 1% 円安になると売上が約 3 億円、営業利益が約 0.3 億円増える。
中期経営計画「SMK Next100」は 2025 年 3 月期から 2027 年 3 月期までの 3 年で、最重点を「車載」に置く。2026 年 2 月にはインドに事務所を開き、四輪・二輪の拡大市場を取りにいく。
優良さと弱いところ
強みは、車載の電池・二輪向けのコネクタと、サニタリー用リモコンのように、顧客と長く付き合う製品を持つことだ。長い歴史の中で、家電メーカーや自動車部品メーカーとの取引を積み上げてきた。
財務は健全だ。自己資本比率は 2026 年 3 月期末で 54%、現預金 96 億円に対し純有利子負債は 37 億円にとどまる。20 年で 8 回の赤字を出しても、配当を DOE 2% 程度で保ってきた。
一方で、堀は浅い。営業利益率は 2015 年 3 月期の 3.2% から、2019 年 3 月期の −3.2%、2024 年 3 月期の −2.7% まで振れ、直近も 0.9% にとどまる。顧客の新製品の採用時期のずれや、為替の動きで、利益が簡単に消える。
中計の目標を外す癖もある。2027 年 3 月期の営業利益目標 21 億円に対し、予想は 8 億円。この数字は、2025 年 3 月期に決めた構造改革の効果(年 9 億円)を入れた後のものだ。
実行面にも課題がある。2025 年 3 月期には事業構造改革費用 8.7 億円と減損損失 5.0 億円、2026 年 3 月期にも減損損失 3.1 億円を出した。メキシコの子会社では退職給付費用も計上している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
コネクタは、スマートフォン、自動車、家電、産業機械、サーバーなど、電子機器のほぼすべてに入る部品だ。世界の市場は調査会社によって差が大きく、2025 年に 870 億ドル前後との推計もある。上位の TE Connectivity、Amphenol、Molex などで 3 割半ばを占める。日本ではヒロセ電機、日本航空電子工業、ホシデン、イリソ電子、ヨコオなどが競う。
車載は、電動化と電子化で一台あたりの数が増える。電池の周りの高電圧コネクタ、カメラ、センサー、二輪の制御に使われる。ただ、日本の部品メーカーは自動車メーカーの計画変更の影響を強く受け、新車の発売が遅れると売上も遅れる。
スマートフォン向けは、数量が頭打ちで、価格は下がり続けている。SMK のスマートフォン向けも 2026 年 3 月期に 16% 減った。中国メーカーの低価格品も、汎用品の領域で圧力になる。
リモコンと操作ユニットは、家電と住設の需要に結びつく。国内の人口は減るので、数量は実質で伸びにくい。値上げを顧客に認めてもらえるかが、利益率の分かれ目になる。
費用の面では、賃金と材料費の上昇が重い。会社は原材料高と最低賃金の上昇を売値に転嫁する方針だが、顧客との交渉次第だ。為替は円安が追い風になるが、人民元高は費用の増加につながる。2026 年 3 月期は為替の影響で営業利益が 3.7 億円減った。
資本政策と M&A
株主還元は、株主資本配当率(DOE)2% 程度を目安にしている。2025 年 3 月期は 100 周年の記念配当を含めて高く、2026 年 3 月期は DOE の方針どおりに戻した。利益が出なくても配当を保つ方針で、2025 年 3 月期の純損失 18.8 億円の期にも、配当を減らさなかった。
2025 年 3 月期から 2027 年 3 月期の 3 年で、営業キャッシュフロー 96 億円を見込む。そのうち投資に 75 億円、配当に 22 億円を使う。計画では営業キャッシュフローの 8 割を成長投資、2 割を還元に充てる方針だった。
経常利益が営業利益を上回る分は、不動産収支や為替差益などから来る。2026 年 3 月期は 8.1 億円で、営業利益 4.3 億円の約 2 倍にあたる。ただ、不動産の中身は確認できておらず、安定した収入と見てよいかは分からない。
資本効率では、事業部ごとの ROIC(投下した資本に対する利益)の測定を始めた。機関投資家との対話は 2025 年度に 21 件。ROE の目標は、2027 年 3 月期に 5.0% とした。予想は 2.6% で、こちらも届かない。
M&A は、買う側として大きなものを確認できなかった。買われる側としては、当サイトの別の試算で 10 年以内の買収・TOB の確率は 24% とされる。株主には信託銀行が上位に並び、協力業者の持株会も大きいとされるが、原典では確かめていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
構造改革の成果が数字に出ている。営業利益は 2024 年 3 月期の −12 億円、2025 年 3 月期の −2 億円から、2026 年 3 月期に 4 億円の黒字へ転じた。固定費の削減は 2026 年 3 月期に 6.7 億円、2027 年 3 月期以降は年 9 億円の効果が続く。2027 年 3 月期の営業利益 8 億円は、その積み上げで十分に届く。
成長の軸は車載にある。電池・二輪向けのコネクタ、E-Bike 向けのユニットは、2026 年 3 月期に車載の売上を 6.8% 伸ばした。電動化は 10 年続くテーマで、インドの二輪・四輪市場も開く。再生可能エネルギー向けも伸びている。
財務は健全で、自己資本比率は 54%、純有利子負債は 37 億円。赤字の期にも配当を保つだけの余裕があり、新分野に投じても揺らがない。ROE の目標は 5.0%、長期ビジョンは営業利益率 10% だ。
しかも、時価総額は自己資本の 0.67 倍で、土地や投資有価証券に含み益があれば、純資産より安く買える。業績が少し戻るだけで、評価が大きく変わる余地がある。
慎重な見方
利益が出ない期間が長すぎる。2015 年 3 月期から 2026 年 3 月期の 12 年で、営業赤字は 4 期、営業利益率が 3% を超えたのは 2 期だけだ。中計の目標を外す癖は直っておらず、2027 年 3 月期の営業利益目標 21 億円に対し、予想は 8 億円と、目標の 4 割に届かない。
車載は成長市場でも、競争は激しい。TE や Amphenol のような世界大手が規模で上回り、中国メーカーが汎用品の価格を下げる。SMK のコネクタのシェアは小さく、値決めの力は弱い。顧客の計画変更がたびたび売上を遅らせる。
リモコンと操作ユニットは、2026 年 3 月期も 3.8 億円の赤字で、前の期の赤字 13.1 億円からの改善も、固定費の削減と開発費の回収が主因だ。人口が減る国内の家電・住設の需要に、売上は支えられている。
新分野のイノベーションセンターは、売上 0.6 億円に対し赤字 3.8 億円。2028 年 3 月期の売上目標が 5 億円足らずでは、投資が回収できるか疑わしい。
最後に、時価総額が自己資本より低いことは、安さの根拠にならない。ROE がゼロに近い会社は、自己資本が利益を生んでおらず、株式市場は正しくそこを織り込んでいる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、構造改革の効果と車載の成長を確かな足場にしているが、利益率が 5% を超えた期の少なさを説明できない。慎重な見方のほうが、実績と整合する。
確率は慎重側に寄せた。やや悲観を 27%、悲観を 13% と置き、同領域の標準(25%、10% 前後)より厚くした。総合では、今の時価総額を半分ほど下回る。
財務が軽いので、すぐに事業が傾く心配は小さい。ただ、今の値段は、事業の稼ぐ力に対して高く、買う理由は見当たらない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,999 円190 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 773 円49 億円)。 今の値に割り戻すと 1,769 円112 億円、今との差 −45.1%、 期待の年率 +1.6%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 7,842 円496 億円 | 1,833 円116 億円 | +200.5% | +11.6% | 484 円31 億円 |
| やや楽観 | 17% | 5,249 円332 億円 | 1,296 円82 億円 | +103.3% | +7.4% | 1,113 円70 億円 |
| 中立 | 38% | 3,160 円200 億円 | 837 円53 億円 | +24.2% | +2.2% | 1,519 円96 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,337 円85 億円 | 490 円31 億円 | −43.3% | −5.5% | 493 円31 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,172 円74 億円 | 79 円5 億円 | −61.1% | −9.0% | 163 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,999 円190 億円 | 773 円49 億円 | +17.1% | +1.6% | 3,772 円239 億円 |
今の株価時価総額 3,220 円204 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 5% 車載とセンシングが当たり、営業利益は 59 億円へ。会社の目標にはなお届かない 利益 44 億円 · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 7,842 円496 億円
車載の電池・二輪・E-Bike 向けのコネクタとユニットが主力に育つ。インドの事務所を足場に、四輪・二輪の拡大市場に深く入り込み、コネクタ事業のシェアは 2.2% から 2.35% に上がる。市場そのものも 10 年で実質 4 割伸びる。
コネクタ事業の営業利益率は 8.5%、リモコンと操作ユニットは 4.5% まで上がる。筋電センサーと音声分析も、実証の段階を抜けて 29 億円の売上と黒字に育つ。
営業利益は 59 億円、純利益は 44 億円。売上は 870 億円で、会社が掲げる 2036 年 3 月期の売上 1,500 億円、営業利益率 10% には届かない。ためた利益で借金は消え、純現金が 27 億円できる。
それでも ROE は 9.7% と、資本コスト 9.0% をわずかに超えるだけだ。倍率は上限の約 9 割(11.33 倍)にとどまる。
- CS 事業部(コネクタ):数量 14,662(接続部品の世界の出荷額(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 3.1%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 462 億円・営業利益 39 億円。市場 1.40 倍 × シェア 2.35%、利益率 8.5%
- SCI 事業部(リモコン・操作ユニット):数量 6,000(家電・住設・車両向けのリモコン・操作ユニットの市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 6.3%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 378 億円・営業利益 17 億円。市場 1.00 倍 × シェア 4.7%、利益率 4.5%
- イノベーションセンター(新規事業):数量 2,000(ヘルスケア向けセンシング・分析サービスの市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 1.5%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 30 億円・営業利益 3 億円。市場 1.0 倍 × シェア 1.1%、利益率 10%
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.3 倍。全体の PER 11.33 倍、時価総額 496 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:5%。車載の電池・二輪向けコネクタが主力に育ち、新分野のセンサーも黒字化して、営業利益率が 7% に迫る形。会社が掲げる 2036 年 3 月期の営業利益率 10% には届かない設定で、過去に営業利益率が 6% を超えたのは 2008 年 3 月期前後の一時期だけであることを踏まえ、5% に置いた。
やや楽観 17% 車載コネクタが伸び、リモコンも黒字化して営業利益は 40 億円に届く 利益 30 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 5,249 円332 億円
構造改革の効果が出きり、年 9 億円の固定費の削減が定着している。コネクタ事業の売上は 417 億円に伸び、営業利益率は 7% に戻る。車載の電池関連と再生可能エネルギー向けが引っ張る。
リモコンと操作ユニットは売上 355 億円、営業利益率 3% で、赤字を脱する。住設用の値上げが通り、サニタリー用とエアコン用が堅調だ。
新分野のイノベーションセンターは売上 16 億円で、赤字は消える。全体の営業利益は 40 億円、純利益は 30 億円。配当性向は 45% 前後で、DOE 2% 程度の方針を保つ。
利益率は 5.1% で、過去の山の高さに戻るだけであり、ROE は 7.3% と資本コストを下回ったままだ。
- CS 事業部(コネクタ):数量 13,824(接続部品の世界の出荷額(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 3.0%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 417 億円・営業利益 29 億円。市場 1.32 倍 × シェア 2.25%、利益率 7.0%
- SCI 事業部(リモコン・操作ユニット):数量 5,880(家電・住設・車両向けのリモコン・操作ユニットの市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 6.0%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 355 億円・営業利益 11 億円。市場 0.98 倍 × シェア 4.5%、利益率 3.0%
- イノベーションセンター(新規事業):数量 2,000(ヘルスケア向けセンシング・分析サービスの市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 0.8%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。市場 1.0 倍 × シェア 0.6%、利益率 0%
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 332 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:17%。構造改革の効果が出きり、車載向けが成長して、営業利益率が 5% 台に戻る筋書き。過去の山(2014 年 3 月期の 3.5%、2016 年 3 月期の 5.4%)に近い水準で、起きうるが、中計の目標を何度も外している実績から 17% にとどめた。
中立 38% 車載で売上は伸びるが、利益率は 3% 台にとどまる 利益 18 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 3,160 円200 億円
車載とエネルギー向けのコネクタが伸び、コネクタ事業の売上は 377 億円になる。市場の実質は 1.25 倍、シェアは今とほぼ同じ 2.15% を保つ。営業利益率は 5.5% で、2026 年 3 月期の 5.3% をわずかに上回る。
リモコンと操作ユニットは売上 336 億円。市場は人口減で実質 5% 縮み、価格転嫁で売上の目減りを補うが、利益率は 1.0% にとどまる。新分野は売上 8 億円、赤字 0.8 億円。
全体の営業利益は 23 億円、利益率は 3.2%。純利益は 18 億円で、配当性向 45% 前後の還元を続けると、自己資本は 376 億円に増える。ROE は 4.8% と低く、資本コストを大きく下回る。
10 年たっても、堅実に売上を伸ばすが、利益率は上がらない中堅の部品メーカーという姿に収まる。
- CS 事業部(コネクタ):数量 13,091(接続部品の世界の出荷額(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 2.9%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 377 億円・営業利益 21 億円。市場 1.25 倍 × シェア 2.15%、利益率 5.5%
- SCI 事業部(リモコン・操作ユニット):数量 5,700(家電・住設・車両向けのリモコン・操作ユニットの市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 5.9%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 336 億円・営業利益 3 億円。市場 0.95 倍 × シェア 4.4%、利益率 1.0%
- イノベーションセンター(新規事業):数量 2,000(ヘルスケア向けセンシング・分析サービスの市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 0.4%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 8 億円・営業利益 −1 億円。市場 1.0 倍 × シェア 0.3%、利益率 −10%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 200 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:38%。最も起きやすい形。車載の伸びで売上は 1.4 倍になるが、リモコンの利益率は 1% にとどまり、新分野の赤字も残る。全体の営業利益率は 3% 台と、過去 12 年の平均(1% 前後)よりは高いが、山には届かない。同じ領域の会社の中心は 3 割台半ばで、それに合わせた。
やや悲観 27% 情報通信と家電が細り、営業利益は 13 億円の横ばいに沈む 利益 11 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,337 円85 億円
情報通信と家電の需要が弱く、新製品の採用時期のずれがまた起きる。コネクタ事業の売上は 306 億円で、営業利益率は 4.5%。為替が円高に振れると、営業利益は削られる(ドル円が 1% 動くと約 0.3 億円)。
リモコンと操作ユニットは売上 289 億円で、利益率は 0.5%。赤字は消えるが、利益はほとんど残らない。新分野は売上 2 億円にとどまり、赤字が続く。
営業利益は 13 億円と、今の 4 億円から 3 倍になるが、物価が上がる中では実質の横ばいに近い。純利益は 11 億円、配当性向は 40% に落ちる。
会社は黒字を保つが、投資した分は回収できない。ROE は 3% で、事業は資本コストをまったく稼げない。
- CS 事業部(コネクタ):数量 11,730(接続部品の世界の出荷額(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 2.6%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 307 億円・営業利益 14 億円。市場 1.12 倍 × シェア 1.95%、利益率 4.5%
- SCI 事業部(リモコン・操作ユニット):数量 5,400(家電・住設・車両向けのリモコン・操作ユニットの市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 5.4%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 289 億円・営業利益 1 億円。市場 0.90 倍 × シェア 4.0%、利益率 0.5%
- イノベーションセンター(新規事業):数量 2,000(ヘルスケア向けセンシング・分析サービスの市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 0.1%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 2 億円・営業利益 −3 億円。市場 1.0 倍 × シェア 0.08%、利益率 −120%
倍率:事業の純利益 10.6 億円・ROE 約 3.0% は k 9.0% を大きく下回る。上限は 1÷k=11.1 倍で、その約 72% の 8.0 倍に置いた。構造的な負けの入り口なので、7 割を超えて引き上げていない。
確率:27%。スマートフォンや家電の需要が細り、中国メーカーとの価格競争も続く形。直近 3 期のうち 2 期が営業赤字で、この筋書きは今の姿の延長に近いため、同領域の標準(25% 前後)より厚く置いた。
悲観 13% 中国勢に押され、リモコンの赤字が残り、営業利益は赤字に戻る 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,172 円74 億円
中国メーカーとの競争でコネクタ事業のシェアは 1.65% に下がり、営業利益率は 1.5% に低下する。車載の主要顧客の計画変更が重なり、新製品の採用が遅れる。
リモコンと操作ユニットは、量の減少と価格競争で営業利益率が −2% に沈み、4.5 億円の赤字になる。新分野は事業化できず、赤字 2.4 億円を残して整理される。
営業利益は −3.4 億円で、純利益も −1 億円。国内の工場や新分野の投資が減損され、自己資本が 25 億円ほど減る。配当は DOE の方針を維持できず、性向 30% に切り下がる。
稼ぐ力では値が付かない状態で、売れる資産の価値が株主の取り分の床になる。
- CS 事業部(コネクタ):数量 10,473(接続部品の世界の出荷額(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 2.2%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 232 億円・営業利益 4 億円。市場 1.00 倍 × シェア 1.65%、利益率 1.5%
- SCI 事業部(リモコン・操作ユニット):数量 4,920(家電・住設・車両向けのリモコン・操作ユニットの市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 4.6%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 224 億円・営業利益 −5 億円。市場 0.82 倍 × シェア 3.4%、利益率 −2%
- イノベーションセンター(新規事業):数量 2,000(ヘルスケア向けセンシング・分析サービスの市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 0.0%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 1 億円・営業利益 −2 億円。市場 1.0 倍 × シェア 0.03%、利益率 −300%
倍率:赤字の筋書きなので、稼ぐ力ではなく資産に床を置く。減損後の自己資本 297 億円に 0.25 倍を掛けた。売れる資産の価値は床の資産(74 億円)の内訳に書いた。
確率:13%。構造的な負け。車載でも顧客の動向に左右され、リモコンは赤字から抜けず、中国勢に価格で押される。2019 年 3 月期と 2024 年 3 月期に営業赤字が深かった実績があり、標準(10% 前後)より厚く置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
CS 事業部(コネクタ)
車載の電池・二輪向け、再生可能エネルギー向け、スマートフォン向けなどのコネクタ。売上の約 47%。
| 数量接続部品の世界の出荷額(今の値段で測った実質・億円)× シェア | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10,473 | 2.2% | 225 | 12 |
| 10 年後 中立 | 13,091 | 2.9% | 377 | 21 |
取り方:売上 225.2 億円、営業利益 11.9 億円(利益率 5.3%)は開示。市場は、FISCO のレポートが示した接続部品の世界出荷 1 兆 473 億円(2024 年度)をそのまま使った。範囲は確認できておらず、シェア約 2.15% は粗い推定。数量は実質の市場、物価 3% は価格の側に入れた。
SCI 事業部(リモコン・操作ユニット)
家電・住設・車両用のリモコン、スイッチ、E-Bike 用ユニット。売上の約 53%、赤字。
| 数量家電・住設・車両向けのリモコン・操作ユニットの市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,000 | 4.3% | 256 | −4 |
| 10 年後 中立 | 5,700 | 5.9% | 336 | 3 |
取り方:売上 256.2 億円、営業利益 −3.8 億円は開示。市場は公表された統計が見つからず、家電・住設・車両向けの操作部品の世界市場を約 6,000 億円と置いた粗い推定で、シェアは約 4.3%。
イノベーションセンター(新規事業)
音声による頭の健康度分析、筋電センサーなど。売上は 0.6 億円、赤字。
| 数量ヘルスケア向けセンシング・分析サービスの市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 0.0% | 1 | −4 |
| 10 年後 中立 | 2,000 | 0.4% | 8 | −1 |
取り方:売上 0.62 億円、営業利益 −3.8 億円は開示。市場は公表値が無く、約 2,000 億円と置いた粗い推定。シェアは 0.03% に過ぎず、売上目標は 2028 年 3 月期で約 5 億円。
リスクと懸念
顧客の計画変更と新製品の遅れ
中計の目標を外した理由の筆頭が、情報通信の新製品採用時期のずれ、車載の主要顧客の動き、家電の大口顧客の企画のずれだった。顧客に依存する部品メーカーとして避けがたく、売上が数四半期遅れるだけで利益が消える。
中国メーカーとの価格競争
汎用のコネクタとリモコンでは、中国メーカーの低価格品が市場を侵食する。世界大手の TE や Amphenol も規模で上回る。値決めの力が弱く、利益率は上がりにくい。
為替の変動
ドル円が 1% 動くと売上が約 3 億円、営業利益が約 0.3 億円動く。2026 年 3 月期は円高・人民元高で営業利益が 3.7 億円減った。営業利益が 4 億円の会社には大きな振れ幅だ。
新規事業の赤字
イノベーションセンターは売上 0.6 億円に対して赤字 3.8 億円で、会社全体の利益を食う。音声分析と筋電センサーの事業化が進まなければ、減損や撤退のリスクがある。
設備の更新費用
工場や金型、検査設備は、更新時の価格が物価とともに上がる。今ある設備の償却は取得時の値段のままだが、更新の投資は膨らみ、会計の利益ほど現金が残らない。償却額と更新計画は、確認できた資料では読み取れなかった。
海外拠点とメキシコの退職給付
2026 年 3 月期の第 4 四半期に、メキシコの子会社で退職給付費用を計上し、SCI 事業部が赤字に戻った。海外は北米と中国の売上が大きく、現地の賃金・規制・関税の変化を受けやすい。
資産の価値が見えにくい
経常利益は不動産収支と為替差益で営業利益を大きく上回るが、賃貸等不動産や投資有価証券の時価を確認できなかった。含み益が大きければ評価は上がるが、逆の場合もある。
今後の分かれ目
- コネクタ事業の営業利益率が 2 期続けて 6% を超える
- 車載の伸びが利益に変わった合図。強気側の確率を引き上げる。
- SCI 事業部の営業利益が 2 期続けて黒字になる
- 赤字体質を脱した合図。中立の利益率を 0.5 ポイント上げる。
- 営業利益が 2027 年 3 月期の予想 8 億円を下回る
- 構造改革の効果が売上減で消えている。やや悲観に重みを移す。
- イノベーションセンターで減損や撤退が出る
- 新規事業の赤字は止まるが、投資の回収は失敗。赤字は縮み、自己資本は減る。
- 賃貸等不動産や投資有価証券の売却益、または大きな含み益の開示が出る
- 床の資産が上がる。悲観の床の見直しと、資本の使い方の見直しを確かめる。
- 大株主の動きや公開買付けの報道が出る
- 事業の稼ぐ力とは別の価値が出る。買付価格が事業の価値を超えるかを確かめる。
見ておくもの
- コネクタ事業(CS)の営業利益率(6% を超えるか)と車載の売上
- SCI 事業部の黒字化と住設・家電の価格転嫁
- イノベーションセンターの売上と赤字(2028 年 3 月期に売上目標 5 億円)
- 営業外収益(不動産収支・為替)の中身と賃貸等不動産の時価
- 中計の次の計画での目標と、DOE・還元の方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の純利益と資本コスト 9.0%(基本 7.5%+quality 1.5%)から、ROE が k 以下の筋書きでは 1÷k=11.1 倍を上限にし、中立はその約 76% の 8.5 倍に置いた。強気は ROE が k をわずかに超えるので、正当化 PER(11.3 倍)の約 9 割、慎重側は上限の約 7 割以下に置いた。悲観は赤字なので稼ぐ力では値が付かず、売れる資産(74 億円、粗い推定)と減損後の自己資本の 0.25 倍に置いた。今の PER や株価には寄せていない。数字は、家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。新リース会計基準(2028 年 3 月期以降)で営業利益が少し増え、負債が増える形になるが、評価は変わらない。賃借の約束額は確認できた資料の範囲では不明。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.33 倍・やや楽観 PER 9.5→11.11 倍・中立 PER 8.5→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5% を足した。個別のリスクは筋書きと確率で表す。