結論
オプテックスグループは、人や物の動きを見つけるセンサーの会社だ。泥棒を見つける防犯センサー、自動ドアを開けるセンサー、工場で品物を見張るセンサーと検査用の照明を作る。本社は滋賀県大津市にある。
筆者の結論は、本質価値は今の時価総額を 1 割ほど下回る、というものだ。事業はよい。ただ、安いと言えるほどの余白は無く、値段はやや先取りしている。足元の利益は円安とデータセンターの勢いで盛り上がっており、そのまま続くとは見ない。
いちばんの稼ぎ頭は防犯だ。屋外の侵入検知センサーでは世界首位級とされ、レーザーで人を見分ける製品がデータセンターの警備に採用されている。防犯を含む SS 事業の利益率は、5 年で 11% から 16% へ上がった。
もう一つの柱の IA 事業は、半導体や電子部品の設備投資に連動する。景気が悪い年には利益が大きく減る。2009 年と 2020 年は営業利益率が 4〜6% まで落ちた。
10 年では、防犯が実質で年 2〜3% 伸び、IA は中国・台湾勢の競争で伸びが鈍るとみる。営業利益率は 13% 台で落ち着く。
純現金が時価総額の 14% ほどあり、財務は強い。その半分ほどは運転資金に要るので、事業の価値とは分けて足した。強気の筋書きなら今の 2 倍を超え、悲観なら 8 割減る。振れは大きいが、確率で重みをつけると、今の値段にやや届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点から見て、オプテックスは「いい会社の入り口にいる」会社だ。防犯センサーという、売れ続け、壊れにくく、誤報の少なさで選ばれる製品を持つ。この事業だけなら、10 年後も存在し、今より厚いシェアを持つ可能性が高い。
問題は、IA 事業が混ざっていることだ。ここは景気の波に乗って利益が上下し、自分で値段を決めにくい。全社の利益率は、防犯の高さと IA の低さの平均で決まる。防犯が伸びても、IA の重さで平均が上がりにくい。会社が事業ポートフォリオ経営を掲げるのは、この問題を自覚しているからだ。筆者は、不採算の事業を整理できるかを重く見る。
オーナーとして気になるのは、稼いだ利益が株主に戻るか、買収に消えるかだ。現金は増え、還元は引き上げの途上にある。買収の履歴を見ると、小さな買い物を重ねる慎重な型で、大きな失敗は目立たない。この点は評価できる。
安全域はどうか。財務は強く、悲観の筋書きでも赤字にはならない。ただ、10 年の期待値は今の時価総額を 1 割ほど下回る。強気の当たりに賭ければ大きいが、確かな割安とまでは言えない。
筆者の見立ては、よい会社だが、値段はやや高い、というものだ。安全域は足りない。待つなら、IA の谷で利益が落ちた時が好機になる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は二つの事業にある。売上は 2025 年 12 月期で約 660 億円。そのうち SS 事業が約 310 億円、IA 事業が約 340 億円を占める。
SS 事業は、防犯と自動ドアと社会・環境の三つに分かれる。防犯は、屋外の塀や敷地への侵入を赤外線やレーザーで見つけるセンサーだ。誤報が少ないことが売りで、データセンター、発電所、空港などが顧客になる。自動ドアは、人が近づくとドアを開けるセンサーで、国内シェアは 5 割とされる。社会・環境は、駐車場の車両検知や水質の計測だ。
利益を生むのは SS 事業である。売上は 5 年で 5 割伸び、利益は倍以上になった。
IA 事業は、工場の生産ラインに組み込まれる製品を作る。光電センサー、画像検査用の照明、半導体装置メーカーに納める産業用 PC、二次電池などの自動化装置だ。顧客は半導体、電子部品、自動車、電池の工場で、設備投資が増えれば売れる。2026 年は半導体向けが +36% と強く、電池向けの装置が −43% と弱い。
地域では海外の比率が高く、欧州と北米が大きい。英国の Raytec(照明)や欧米の販売会社を通じて、現地の警備会社や施工業者に売る。
会社は、製品を売り切る形から、センサーとカメラとソフトを組み合わせて提案する形へ移そうとしている。ソリューション売上の比率は、2024 年の 19% から 2028 年に 31% へ上げる目標だ。保守や管理サービスが加われば、売上が安定し、利益率も上がる。ここがうまくいくかが、10 年の質を左右する。
優良さと弱いところ
防犯センサーの強みは、誤報の少なさと、世界に広がった販売と施工の網にある。屋外防犯で世界シェアは 4 割、自動ドアのセンサーで 3 割と、証券会社のレポートは書く(独立した調査では未確認)。警備会社は、誤報が多いセンサーを嫌う。一度採用されると、保守の都合で同じ製品を使い続ける。これがオプテックスの堀、つまり他社がまねしにくい強みだ。
レーザースキャン式の REDSCAN は、2009 年の発売から長い。IPVM という専門の評価機関は、同等の製品が少なく直接比べにくい、と書く。2025 年には設置の手間を減らした廉価版も出し、販売の裾野を広げている。
弱みは三つある。一つは、IA 事業の利益率が 1 割前後と低いことだ。検査用照明や FA センサーは、キーエンスやシーシーエスなどが強く、中国勢も育つ。値段を自分で決める力は弱い。
二つ目は、事業の幅が広く、買収で寄せ集めた面があることだ。2004 年から 2021 年まで国内外の会社を買ってきた。グループの生産機能は、2018 年から集約を進めている。まとめきる力が、利益率の差になって出る。
三つ目は、IA の景気への弱さだ。設備投資が減ると、自動化装置は大きく落ちる。2025 年は EMS の受託生産が赤字になった。
資本の効率は、可もなく不可もない。ROE は過去 10 年の中央値で 11%。借金は無く、自己資本比率は 72% と厚い。筆者は、この財務の厚さを強みと見る一方、使い道がまだ定まっていない点を気にしている。防犯の利益が伸びるほど、現金が積み上がる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界は二つの市場に分けて見る必要がある。防犯と自動ドアの市場は、景気に比較的強い。
防犯は、データセンターが追い風だ。AI の計算基盤が増え、世界で大規模な施設の建設が続く。物理的な侵入を防ぐ設備は、情報の安全を守る前提になる。オプテックスは、北米と欧州の施設でレーザースキャンセンサーの採用が増えていると説明する。国内は警備会社向けが弱く、大型施設向けに頼る。
自動ドアは成熟市場だ。数量は人口と建物の数で決まり、伸びは小さい。北米は好調で、欧州は不況が続く。国内の高いシェアは守りの基盤になる。
社会・環境のセンサーは、駐車場の車両検知が伸びている。人手不足と無人化が背景にある。数量の伸びは年 1 桁台が続くだろう。
IA の市場は循環が強い。半導体、電子部品、電池の工場が設備を増やすと注文が入り、止めると急に減る。2026 年は半導体と AI 向けの投資が戻り、FA センサーと産業用 PC が伸びた。電池は EV の需要鈍化で供給が過剰になり、自動化装置が落ち込んだ。
競合は、センサーではキーエンスなど FA 機器の大手と中国勢、検査用照明ではシーシーエスなどだ。防犯センサーでは各国のメーカーが分かれて競う。中国勢は、まず廉価品で入り、技術を磨いて上へ登ってくる。
10 年の見通しとして、防犯は実質で年 2〜3%、IA は 2% 前後の伸びを中立とみる。価格は、防犯は物価に沿って上がるが、IA は競争で物価に届かない。円は 150 円で動かない前提なので、足元の円安の押し上げは見込まない。
資本政策と M&A
資本の使い方は、守りから攻めへ動き始めたところだ。会社は 2025 年に中期経営計画を出し、3 年間の資本配分を示した。M&A に約 150 億円、成長投資に 130〜150 億円、株主還元に約 60 億円という案だ。
還元の方針は、配当性向 30% 目安から 35% へ上げ、純資産に対する配当の割合(DOE)も 3.5% 以上を目標にする。自社株買いは機動的に行うとする。2026 年 1 月には 1 株を 15 株に分割し、買いやすさを上げた。
M&A は、会社の大事な成長手段だ。2020 年にはサンリツオートメイションを買った。2025 年 11 月には、英国の子会社 Raytec がフィンランドの ATEXOR を 100% 取得した。買うものは小さく、技術と販路を足す目的のものが中心である。
政策保有株は、1 銘柄 55 百万円(2023 年末)と軽く、縮減の方針だ。ここは問題にならない。
筆者が気にするのは、純現金 164 億円の使い道だ。会社は、買収の原資に使う考えを示す。買収が価値を足せば、現金は事業に姿を変える。足せなければ、現金が低い利回りで寝たままになる。創業者の影響や大株主の構成は、ここでは確認できていない。TOB の可能性は、kabufu の推計で 10 年以内に 16.6% ほどだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
防犯の需要は、構造的に伸びる。AI の計算基盤は世界中で増え、データセンターの敷地や建屋の警備は必須の投資になる。オプテックスのレーザースキャンセンサーは、誤報が少なく、カメラと連動できる。2026 年上期の防犯は +19% の増収で、北米と欧州の重要施設向けが引っ張った。
SS 事業の利益率は 5 年で 11% から 16% へ上がった。ソリューション提案が進めば、保守と管理のサービス収入が加わり、さらに上がる余地がある。会社は 2030 年に営業利益率 15% を目標に掲げ、2026 年の予想はすでに 14% 台に入っている。
IA も戻りつつある。半導体と AI 向けの検査需要で、FA は +36%、産業用 PC は +26% と伸びた。自動化装置は電池の谷を抜ければ、増益に寄与する。
資本政策も変わった。配当性向を 35% に上げ、DOE 3.5% を下限にした。純現金 164 億円は買収の弾薬になり、Raytec のような海外の会社を買い足せる。小粒で堅実な買収を積み、防犯の網を厚くすれば、利益は 10 年で倍近くになりうる。
慎重な見方
今の利益は山に近い。2026 年の営業利益は 105 億円の予想で、2025 年から 3 割増える。円安が売上を 22 億円押し上げ、半導体と AI 向けの需要が一斉に戻った結果だ。過去に同じ水準の利益率を長く保った例は無い。2009 年と 2020 年は 4〜6% まで落ちた。
防犯の競争は、これから強まる。レーザースキャンは強い製品だが、レーダーと AI 映像解析が安く進化している。データセンターの警備は、顧客が大手のクラウド会社で、値下げの圧力も大きい。独自の技術で値段を守れるのは、先行している間だけだ。
IA は、もともと儲かる事業ではない。利益率は 1 割前後で、自動化装置と EMS は赤字になる年もある。キーエンスやシーシーエス、中国勢に挟まれて、値段の決定権は弱い。事業ポートフォリオ経営といっても、売却や撤退の動きはまだ見えない。
買収と現金の使い方にも不安が残る。現金が積み上がる一方、還元は 35% 止まりで、買収の成否は外から見えにくい。小さな会社を重ねる型は、統合の手間がかさみ、利益率を押し下げる。
どちらに重みを置いたか
防犯の質は強気の言い分が勝つが、全社の価値を決めるのは平均の利益率で、そこでは慎重な言い分に分がある。IA の重さと景気の波は、過去の利益率の落ち込みという事実が裏づけている。
確率は、中立を最も厚く置き、強気と慎重を同じ重みで残した。強気側は、防犯の足元の勢いと会社の利益率目標の裏づけがあるので、やや楽観を厚めにした。悲観は 1 割に抑えた。純現金と防犯の標準部材としての地位が、構造的な負けを遠ざけるからだ。
結果として、10 年後の価値は今の時価総額を 1 割ほど下回る。事業は優良でも、足元の利益が山に近く、平均に戻る分を差し引くと、割安とは言えず、やや割高の側に出る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 5,337 円1,902 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,308 円466 億円)。 今の値に割り戻すと 3,572 円1,273 億円、今との差 +14.8%、 期待の年率 +7.9%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 10,239 円3,649 億円 | 1,964 円700 億円 | +292.4% | +14.6% | 1,220 円435 億円 |
| やや楽観 | 24% | 7,871 円2,805 億円 | 1,627 円580 億円 | +205.4% | +11.8% | 2,280 円812 億円 |
| 中立 | 30% | 6,069 円2,163 億円 | 1,347 円480 億円 | +138.4% | +9.1% | 2,225 円793 億円 |
| やや悲観 | 24% | 2,160 円770 億円 | 926 円330 億円 | −0.8% | −0.1% | 741 円264 億円 |
| 悲観 | 12% | 706 円252 億円 | 786 円280 億円 | −52.0% | −7.1% | 179 円64 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,337 円1,902 億円 | 1,308 円466 億円 | +113.6% | +7.9% | 6,644 円2,368 億円 |
今の株価時価総額 3,110 円1,108 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 10% 防犯の追い風が長く続き、IA も検査需要を取り込む 利益 183 億円 · PER 19.7 倍 · 株価時価総額 10,239 円3,649 億円
防犯の需要が、データセンターから電力・通信・物流の重要施設へと広がり続ける。オプテックスは境界警備の標準部材として地位を固め、世界の防犯センサー市場で今より厚いシェアを持つ。数量は 10 年で 1.65 倍、価格も機能の高い製品への移行で物価を少し上回る。営業利益率は 20% に乗る。
IA 事業は、半導体の検査装置と AI 向けの検査需要を取り込む。検査用照明と産業用 PC が伸び、自動化装置も立て直す。数量は 1.55 倍、利益率は 14% まで上がる。
売上は 1,400 億円を超え、営業利益は 230 億円台に届く。M&A は海外の防犯・検知の会社を数件買い、うまく溶け込ませる。還元は純利益の半分強で、配当と自社株買いの両方が厚くなる。
- SS 事業(防犯・自動ドア・社会環境のセンサー):数量 165(出荷台数(万台、推定))× 価格 4.29(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 708 億円・営業利益 142 億円。165.0×4.292(数量 1.65 倍・価格 1.38 倍)、営業利益率 20.0%
- IA 事業(FA センサー・検査用照明・産業用 PC・自動化装置、EMS を含む):数量 53.9(出荷台数(万台、推定))× 価格 13(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 723 億円・営業利益 101 億円。53.94×13.4(数量 1.55 倍・価格 1.34 倍)、営業利益率 14.0%
倍率:事業の純利益 182 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)64 億円。全体の PER 19.72 倍、時価総額 3,649 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:データセンター向けの防犯が 10 年伸び続け、IA も半導体と AI の検査で取り込み、さらに価格も維持できる、という当たりがそろう必要がある。事業の質は高いが、全部そろう確率は低く 1 割に置いた。
やや楽観 24% 防犯は着実に伸び、IA は半導体・AI 検査で戻る 利益 144 億円 · PER 19.0 倍 · 株価時価総額 7,871 円2,805 億円
防犯は数量が 10 年で 1.45 倍に伸びる。北米と欧州のデータセンター、電力・水道などの重要施設が中心だ。車両検知センサーも、駐車場のシステム化で伸びる。自動ドアは国内で成熟するが、省エネの訴求で価格は保てる。
IA は、半導体と電子部品向けの FA センサー、AI 向けの検査用照明、半導体装置メーカー向けの産業用 PC が数量を押し上げる。二次電池の装置は戻りが鈍く、全体の伸びを抑える。
売上は 1,240 億円ほど、営業利益は 180 億円台となり、営業利益率は 15% 近くまで上がる。会社が掲げる 2030 年に 15% という目標に近い姿だ。還元は配当性向 35% を土台に、自社株買いを足す。
- SS 事業(防犯・自動ドア・社会環境のセンサー):数量 145(出荷台数(万台、推定))× 価格 4.17(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 604 億円・営業利益 109 億円。145.0×4.167(数量 1.45 倍・価格 1.34 倍)、営業利益率 18.0%
- IA 事業(FA センサー・検査用照明・産業用 PC・自動化装置、EMS を含む):数量 48.0(出荷台数(万台、推定))× 価格 13(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 634 億円・営業利益 82 億円。48.024×13.2(数量 1.38 倍・価格 1.32 倍)、営業利益率 13.0%
倍率:事業の純利益 143 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)64 億円。全体の PER 19.01 倍、時価総額 2,779 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防犯の追い風は、サイバーと物理の両方を守る必要があるデータセンター需要という構造要因に支えられている。足元の利益の勢いも強い。強気側の中心として厚めに置いた。
中立 30% 防犯は伸びるが、IA の競争で全体の利益率は 13% 台にとどまる 利益 114 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 6,069 円2,163 億円
防犯と自動ドアのセンサーは、実質で年 2〜3% 伸び続ける。データセンターが成長を支え、国内の自動ドアと警備会社向けは横ばいだ。価格は物価に沿って上がる。
IA は数量が 10 年で 2 割ほど増える。検査用照明と産業用 PC は伸びるが、FA センサーは中国勢との競争で値上げが物価に届かない。自動化装置は電池の過剰投資が一巡して戻るものの、利益は薄い。
売上は 1,090 億円ほど、営業利益は 146 億円、営業利益率は 13% 台で落ち着く。2026 年の 14% は円安とデータセンターの勢いが乗った水準で、そこから少し戻る。ROE は 11% 前後になる。配当性向 35% の方針は守られ、自社株買いが時折入る。M&A は小粒で、買収が価値を壊しもしなければ、大きく足すこともない。
- SS 事業(防犯・自動ドア・社会環境のセンサー):数量 130(出荷台数(万台、推定))× 価格 4.17(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 542 億円・営業利益 89 億円。130.0×4.167(数量 1.30 倍・価格 1.34 倍)、営業利益率 16.5%
- IA 事業(FA センサー・検査用照明・産業用 PC・自動化装置、EMS を含む):数量 42.5(出荷台数(万台、推定))× 価格 13(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 552 億円・営業利益 64 億円。42.456×13.0(数量 1.22 倍・価格 1.30 倍)、営業利益率 11.5%
倍率:事業の純利益 113 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)64 億円。全体の PER 18.13 倍、時価総額 2,109 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防犯の伸びは確かだが、IA は中国・台湾勢との競争と景気の波で伸びが鈍る。強気と慎重の言い分の落としどころで、最も厚く置いた。
やや悲観 24% 景気の谷と値下げ競争で IA が削られ、防犯の伸びも鈍る 利益 64 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 2,160 円770 億円
防犯は 2 桁成長が続かず、数量は 10 年で 1.1 倍にとどまる。データセンターの境界警備には競合のレーダーや AI カメラが入り込み、値段の上げ幅が物価に届かない。自動ドアは欧州の不振が続く。
IA は景気の谷が 2 回来て、数量は横ばい、価格は 1.15 倍にしか上がらない。中国・台湾の照明・センサーメーカーが中級品から値を崩す。
売上は 830 億円ほど、営業利益は 85 億円前後、営業利益率は 10% 前後に下がる。ROE は 7% 弱で、資本コストに届かない。還元は配当性向 35% を守る程度で、自社株買いは止まる。
- SS 事業(防犯・自動ドア・社会環境のセンサー):数量 110(出荷台数(万台、推定))× 価格 3.89(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 428 億円・営業利益 60 億円。110.0×3.887(数量 1.10 倍・価格 1.25 倍)、営業利益率 14.0%
- IA 事業(FA センサー・検査用照明・産業用 PC・自動化装置、EMS を含む):数量 34.8(出荷台数(万台、推定))× 価格 12(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 400 億円・営業利益 32 億円。34.8×11.5(数量 1.00 倍・価格 1.15 倍)、営業利益率 8.0%
倍率:ROE 6.8% は k 7.25% を下回り、PBR に直すと 1 倍に届かない水準。長期 g 4% の PBR=(ROE−g)÷(k−g)=0.8 倍、PER で 11.8 倍が上限。稼ぐ力に近い 10.0 倍に置いた。余った現金は、今の 0.75 倍の額に戻り方 0.5 を掛けて足した。
確率:防犯のデータセンター需要が一巡する年と、半導体・電子部品の設備投資の谷が重なる筋書き。過去にも 2009 年と 2020 年に営業利益率が 4〜6% まで落ちており、無視できない確率がある。
悲観 12% 防犯もセンサーも汎用品となり、ニッチの小さな専業に戻る 利益 25 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 706 円252 億円
防犯のレーザーセンサーが、安価なレーダーと AI 映像解析に置き換わる。オプテックスの強みだった誤報の少なさが、価格差を埋められなくなる。数量は 10 年でほぼ横ばい、価格は 1.1 倍にとどまる。
IA は中国勢の価格破壊で、検査用照明も FA センサーも赤字すれすれまで追い込まれる。自動化装置は不採算で、のれんを含めて 100 億円ほど減損する。
売上は 620 億円ほど、営業利益は 30 億円前後になる。ROE は 4% を割り込む。純現金は残るので財務は傷まないが、成長の物語は終わり、配当を守るだけの会社になる。
- SS 事業(防犯・自動ドア・社会環境のセンサー):数量 95.0(出荷台数(万台、推定))× 価格 3.42(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 325 億円・営業利益 29 億円。95.0×3.421(数量 0.95 倍・価格 1.10 倍)、営業利益率 9.0%
- IA 事業(FA センサー・検査用照明・産業用 PC・自動化装置、EMS を含む):数量 29.6(出荷台数(万台、推定))× 価格 10(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 296 億円・営業利益 9 億円。29.58×10.0(数量 0.85 倍・価格 1.00 倍)、営業利益率 3.0%
倍率:ROE 3.6% は k 7.25% を大きく下回り、事業の稼ぐ力は低い。長期 g 4% の PBR=(ROE−g)÷(k−g) は 0 近く。稼ぐ力と純現金のどちらも割り込まない 9.0 倍に置いた。余った現金は今の半分の額に戻り方 0.5 を掛けて足した。
確率:中国のセンサー・照明メーカーの技術が追いつき、防犯の高機能品も置き換えられる筋書き。単一の技術や顧客に寄らない事業で、純現金もあるため確率は 1 割台とした。5% を超えるのは、IA が景気と競争の両方に弱いからだ。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
SS 事業(防犯・自動ドア・社会環境のセンサー)
屋外・屋内の防犯センサー、自動ドア用センサー、駐車場の車両検知や水質計測などの社会・環境向けセンサー。データセンターなど重要施設向けが伸びている。
| 数量出荷台数(万台、推定) | 価格1 台あたり平均単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 3.11 | 311 | 49 |
| 10 年後 中立 | 130 | 4.17 | 542 | 89 |
取り方:2025/12 期の SS 事業の売上は 310 億円、セグメント利益は 48.9 億円(利益率 15.7%)。台数の開示は無いので、安価な自動ドア用や家庭向けから高価なレーザースキャンまでを混ぜた平均単価を約 3.1 万円と推定し、約 100 万台とした。台数は実質、価格は物価で上がる名目。
IA 事業(FA センサー・検査用照明・産業用 PC・自動化装置、EMS を含む)
工場向けの光電センサーや IO-Link 機器、画像検査用の照明、半導体装置向けの産業用 PC、二次電池などの自動化装置。受託生産の EMS 事業 10 億円も含める。
| 数量出荷台数(万台、推定) | 価格1 台あたり平均単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 34.8 | 10 | 348 | 38 |
| 10 年後 中立 | 42.5 | 13 | 552 | 64 |
取り方:2025/12 期の IA 事業の売上は 337 億円、EMS は 10 億円。合わせて 348 億円とし、利益は IA 38.3 億円と EMS の −0.3 億円を合算した 38 億円。開示は金額だけなので、照明・センサー・産業用 PC・装置を混ぜた平均単価を約 10 万円と推定して約 35 万台に分けた。全社の営業利益 81.5 億円との差(約 −5 億円)は本社費と消去で、調整に入れる。
リスクと懸念
IA 事業の景気への弱さ
半導体、電子部品、電池の設備投資が減ると、IA 事業は大きく落ちる。2009 年と 2020 年は全社の営業利益率が 4〜6% まで下がった。2026 年は FA が +36% と強いが、自動化装置は −43% で、事業の中でも差が大きい。山の利益を 10 年の基準にしない。
防犯の競争と価格の圧力
レーザースキャンセンサーは先行しているが、レーダーや AI 映像解析が安価に進化している。データセンターの顧客は大手のクラウド会社で、値下げの交渉力が強い。誤報の少なさという差が、価格差を超えて評価され続けるかが焦点になる。
中国・台湾勢の台頭
検査用照明や FA センサーでは、中国・台湾のメーカーが廉価品から入り、技術を上げている。IA の価格は物価に届かず、利益率が下がる恐れがある。防犯の廉価品にも波及すれば、SS 事業の利益率も圧縮される。
買収の統合と現金の使い方
会社は 3 年で M&A に約 150 億円を使う案を示した。小粒の買収が中心で大失敗は少ないが、統合には手間がかかる。現金が使われず積み上がれば資本効率が下がり、買収が割高なら価値を壊す。外からは成否が見えにくい。
為替と関税
2026 年は円安で売上が 22 億円押し上げられた。10 年の前提は 150 円で動かないが、円高に振れれば海外売上の円換算が減る。米国関税は IA の自動化装置などに響き、会社は関税の影響と還付見込みを両方織り込んでいる。
事業の寄せ集めによる利益率の希薄化
防犯の利益率は 16% 近いのに、IA は 1 割前後で、EMS は赤字だ。全社の利益率は混ぜた平均になる。不採算の事業を整理できなければ、防犯が伸びても全体の利益率は上がらない。ポートフォリオ経営の実行が問われる。
データセンター需要の一巡
AI の計算基盤への投資は急ぎ足で進んでいる。建設が一巡する、あるいは投資が減速する年には、防犯の高機能品の受注が鈍る。足元の 2 桁成長は、10 年続く前提では置けない。
今後の分かれ目
- 防犯(SS 事業)の利益率が 17% を超えて定着したら
- やや楽観・楽観の筋書きに重みを移してよい。データセンター向けの値段の強さが確かめられたことになり、全社の利益率目標の 15% も現実味を帯びる。
- IA 事業の半導体・AI 向けの勢いが失速し、受注が前年を割り込んだら
- やや悲観に重みを寄せる。2026 年の山の利益を基準に置かず、利益率 10% 割れの年が混じる前提に戻す。
- 中国・台湾のメーカーが防犯や検査用照明の高機能品で価格を落としてきたら
- 構造的な負けの始まりと見て、悲観の確率を上げる。防犯の利益率が 13% 台まで落ちるかを見る。
- 純現金 164 億円を使った大型の買収(100 億円超)が行われたら
- 対象の利益率と統合の進み具合を確かめる。事業の価値が足されるなら現金を事業側に移し、足されなければ価値を割り引く。
- 自社株買いが毎年入り、配当性向 35% を超えて還元が厚くなったら
- 余った現金の戻り方を 0.5 から 1.0 へ上げて見直す。資本効率が改善し、中立の ROE と倍率も上がる。
- 不採算の事業(自動化装置・EMS)の売却や撤退が出てきたら
- 全社の利益率の平均が上がるので、中立の利益率を 1 ポイント程度引き上げて見直す。
見ておくもの
- SS 事業の防犯の売上の伸びと利益率(データセンター向けが 15% 台を保てるか)
- IA 事業の FA・検査用照明の受注(半導体・AI 向けの勢いが続くか)と自動化装置の底打ち
- 全社の営業利益率(2026 年の 14% 台から、会社目標の 15% へ上がるか、12% 台へ戻るか)
- ソリューション売上比率(2028 年に 31% の目標)と買収の中身・価格
- 純現金(164 億円)の使い道と、自社株買い・配当の厚み
倍率と資本コストの決め方
倍率は、今の株価・過去の PER・同業の倍率から置かず、事業の稼ぐ力と資本コストから式で出した。k は基本 7.5% に、循環 +0.25% と値決め力 −0.25% を入れて 7.5%。中立の倍率は、g 4%、新しく投じる資金の稼ぎは k を超える分の半分が残るとした正当化 PER の 8 割に置いた。余った現金 85 億円は事業と分け、戻り方 0.5 を掛けて足した。2026 年の予想(営業利益 105 億円)は円安と一時の勢いを含むとみて、10 年の起点にそのまま使わず、数量×価格で積み直した。リース会計は、新基準で営業利益と純有利子負債の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。今の株価が倍でも半分でも、この数字は動かない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.9→19.72 倍・やや楽観 PER 14.4→19.01 倍・中立 PER 12.9→18.13 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。