結論
アスタリスクは、バーコードやRFIDを読み取る「AsReader」を軸に、物流、製造、小売、医療の現場を省人化する会社だ。結論は割高である。RFIDの普及余地は認めるが、将来の大きな利益を現在の株主が十分に受け取れると判断するには、実績がまだ足りない。
2026年8月期の売上高は15.17億円、営業損失は1.90億円だった。2023年8月期から4期連続の営業赤字であり、2027年8月期も会社は3.34億円の営業赤字を見込む。主力のAsReader事業自体は黒字だが、研究開発、海外展開、システム開発などを含めた会社全体では利益が残らない。成長市場にいることと、その市場で株主に利益を残せることは別問題である。
会社は2030年の売上高100億円を目指し、RFIDによる一括会計、スマートカート、防犯、画像認識へ事業を広げようとしている。しかし、その目標に対して足元の売上規模はまだ小さい。2026年には大型案件の売上計上が翌期以降へずれ、株式発行による資金調達で財務を立て直した。長く持つ株主にとっては、製品の可能性よりも、案件が確実に売上となり、繰り返し現金を生むかが先に問われる。
10年後の中立では、現場向け製品の販売が増え、主力事業の規模拡大によって開発費や間接費を吸収できると見る。全社の営業利益率は約5.6%まで回復するが、資本コストを超えるROEには届かない。ただし、2026年の増資で確保した現金は事業に使われながらも一部が残り、本社不動産にも換金可能な価値がある。中立の企業価値は、こうした残存資産の回収可能価値を上回る必要がある。
10年後の中立時価総額は約23.0億円と見込む。やや悲観では赤字の継続によって現金の大部分が失われ、税後の回収可能資産は約8.0億円まで縮小する。5つの筋書きを確率で加重し、資本コストで現在に割り戻した本質価値は約21.1億円となった。最新の発行済株式数で計算した現在の時価総額約74.6億円を約72%下回る。新製品が大きく成功する余地はあるが、その成功を先に高く買うより、増分利益と資本効率の改善を確かめたい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、魅力的な技術があることより、10年後にも利益を予測できることの方が大切だ。アスタリスクの読み取り機器は、現場に存在する物を正確に把握するための道具である。商品の入荷、在庫の確認、医療現場の照合といった仕事そのものは、AIが進歩しても残る。この部分には長期需要の確かさがある。
しかし、必要な仕事が残ることと、その仕事からアスタリスクが大きく稼げることは別である。機器は技術の進歩で置き換わり、顧客は複数の供給元を比較できる。タグの読み取りから会計や防犯へ広がる構想にも、顧客が業務全体を変更する負担が伴う。10年先の業績を考えるなら、採用事例の数より、既存顧客が更新し続けているか、値上げを受け入れているか、開発費を差し引いて現金が残るかを重視すべきだ。
過去の赤字は、新規事業への投資という説明だけでは消えない。2022年の好業績から数年で利益が失われた事実は、案件の集中、製品構成、固定費の重さを示している。2026年に調達した資金も、株主にとっては無料の成長原資ではない。既存株主は希薄化を受け入れ、その対価として将来の利益を期待している。
一方、純現金と本社不動産の存在を無視するのも適切ではない。中立では、2027年の赤字予想を出発点に、数年間の追加損失と売上拡大に必要な資金を差し引いても、2036年に相当額の現金が残る。継続企業としての価値は、残る資産の回収可能価値を下回らないか確認する必要がある。反対に、悲観では今の現金を床として固定してはならない。長い赤字期間に使われた現金は、10年後の株主には残らない。
筆者が評価したいのは、主力AsReader事業ではなお利益を計上している点である。全社の間接費を抑え、投資先を絞り、売れた製品の保守や追加導入から継続収益を生み出せば、会社全体の収益構造は変わり得る。それでも、現時点では堀の深さと経営の資本配分を高く評価するには早い。大きな夢を持つ会社だからこそ、実現確率の低い成功まで現在の価値に全額加えることは避けたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、スマートフォンと組み合わせて使うバーコード・RFID読み取り製品のAsReader事業である。従来の専用ハンディターミナルを置き換え、既存のスマートフォンを業務端末として使えるようにする。物流倉庫での商品照合、製造現場での工程管理、医療機関での患者と薬剤の照合など、読み取りの正確さが労働時間や事故防止に直結する場所が顧客となる。
2026年8月期のAsReader事業の売上高は13.32億円、セグメント利益は0.74億円だった。顧客は端末だけでなく、業務に合わせたソフトウェアや保守、導入支援も必要とする。現在はバーコード関連の既存需要が収益の土台だが、会社はRFIDによる商品単位の一括認識を次の柱に育てようとしている。RFIDはタグを一つずつ目視する必要がないため、大量の在庫を短時間で照合できる。
新しい取り組みでは、スーパーの商品にRFIDタグを付け、入荷から在庫、会計、防犯までつなぐ構想が中心だ。スマレジとの協業、一括読み取り装置、RFIDスマートカート、画像認識技術などは、この構想を実現するための製品群である。ただし、タグの取り付け費用、金属や液体による読み取り障害、店舗ごとのシステム改修などの負担が残り、大規模導入がすぐに進むわけではない。
システムインテグレーション事業は、AsReaderの導入に伴う受託ソフトウェア開発を担う。2026年8月期は売上高1.73億円に対し、0.64億円のセグメント損失を計上した。不採算案件や開発費用が利益を圧迫しており、端末の販路を広げる役割はあっても、単独で高収益を生む事業とは評価しにくい。
賃貸事業は本社兼研究所の3フロアを貸し出す小規模な事業だ。期末稼働率は67%で、売上高は0.12億円にとどまる。会社は製造設備を大量に持つメーカーではなく、製品の設計、ソフトウェア、特許、営業を軸とするファブレス型に近い。その分、巨大な工場投資は不要だが、研究開発と販売網の維持に資金がかかり続ける。
優良さと弱いところ
競争上の強みは、読み取り機器と現場業務を結びつける製品設計力にある。既存のスマートフォンを利用できれば、顧客は専用端末の導入費用を抑えられる。医療や物流の現場では、正確な読み取りが日々の仕事に組み込まれるため、一度導入した仕組みを変更するには機器の交換だけでなく、業務手順の見直しや従業員教育も必要となる。この切り替えの手間には、一定の競争力がある。
しかし、切り替えに手間がかかることと、会社が自由に値上げできることは同じではない。顧客にはキーエンス、デンソーウェーブ、Zebra Technologies、Honeywell、Datalogicなどの選択肢がある。専用端末に比べて安価であるという製品の特徴も、競争相手が同様の仕組みを提供すれば価格差が縮まる。継続的な値上げの成功や低解約率を裏付ける数字は確認できず、強い価格決定力が実証されたとはいえない。
特許には価値があるが、特許の存在だけを独占的な堀とは評価しない。過去にはファーストリテイリングとのRFID関連の特許紛争があったものの、2021年12月に和解しており、現在も相手企業から独占的な特許使用料を取り続けているという前提は採れない。新たな特許の取得や再取得が、今後どの程度の継続収益につながるかを見極める必要がある。
資本効率の実績は厳しい。2022年8月期には全社の営業利益率が16%台に達したが、その後は4期連続で営業赤字となった。2026年の純資産増加も、利益の蓄積ではなく主に新株予約権の行使による資金調達の結果である。長期の増分ROICが資本コストを上回ることを示すには、新製品の導入店舗数、保守収益、開発投資に対する利益の増加をまだ積み上げる必要がある。
中立で重要なのは、製品販売の拡大と全社利益の改善を区別することだ。売上が大きくなれば、共通のファームウェアや読み取り技術を多数の顧客に販売できる。2022年には全社で二桁の営業利益率を実現した時期もあり、標準化された製品の規模拡大によって収益性が改善する余地はある。ただし、過去の最高利益率をそのまま10年後に再現するとは考えない。
以上から、事業の堀は弱いと判断する。現場で使う物理的な読み取り機器の需要は簡単には消えないが、製品の世代交代は速く、国際的な大手企業との競争も続く。優れた技術を持つ小企業であることは認めても、10年先まで超過利益を守れる企業とは、まだ認定できない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自動認識市場は、バーコードの成熟とRFIDの用途拡大が同時に進む市場である。日本自動認識システム協会の調査では、2025年の国内自動認識関連市場は2,633億円で、2026年は2,692億円と予測された。ただし、その内訳ではバーコードリーダーが前年比15.2%減の234億円、RFID関連も1.7%減の498億円だった。省人化という長期の方向が正しくても、毎年すべての製品が伸びるわけではない。
RFIDは、読み取り機、タグ、プリンター、ソフトウェア、業務導入費用から成り立つ。会社が引用する矢野経済研究所の調査では、RFIDソリューションの世界市場は2027年に約2兆3,379億円へ拡大すると予測されている。ただし、これはタグや関連ソフトウェアも含む広い市場である。アスタリスクが販売する読み取り機器だけの市場規模と混同してはならない。大きな市場全体の成長率を、そのまま同社の端末販売台数に当てはめるのは危険だ。
より狭い市場で見ると、会社の過去の成長可能性資料には、2024年の国内RFIDリーダー出荷金額105.58億円に対して、自社の国内RFIDリーダー売上が1.40億円と示されている。同じ定義で比べた当時のシェアは約1.3%である。大きな市場に参入している一方、まだ支配的な地位にあるわけではない。Zebra、Honeywell、Datalogicといった世界企業に加え、国内のキーエンス、デンソーウェーブ、サトーなどが顧客の予算を争う。競合各社の同一定義による国内RFIDリーダーシェアは公開資料だけでは比較できず、架空の順位は付けない。
今後10年の成長源は、国内でバーコード端末が自然に増えることより、RFID導入の対象商品と顧客業種を広げることにある。アパレル、物流、医薬品の先行需要が食品小売や外食へ広がれば、読み取り台数だけでなく、業務全体をまとめた導入単価も上がり得る。一方、食品はタグ単価の負担が重く、安価な商品ほど採算の壁が高い。画像認識やスマートフォン内蔵カメラで代替できる読み取りは、専用機器の市場を削る。
中立では、国内の既存バーコード需要は実質横ばいから緩やかな縮小とし、アスタリスクの数量増加はRFIDと海外の新規顧客獲得によって生じると見る。世界市場の予測は上振れの余地を示すものだが、同社の販売実績がそれに追いつく確証はない。金利3%、物価上昇率3%、ドル円150円という共通前提の下でも、タグや端末の価格競争が強まれば、売上が伸びても利益率は改善しない。
資本政策と M&A
資本配分で最大の論点は、利益を生まない期間の研究開発を誰が負担するかである。会社は2026年8月期に新株予約権の行使などで約23.8億円を調達した。期末の純資産は約38.3億円となり、現金も大きく増えた。ただし、資金が増えたのは営業活動で稼いだからではなく、新たに株式を発行したからである。期末発行済株式数は前年の779万6,800株から919万6,800株に増えており、既存株主の取り分は薄まった。
2026年8月期の営業キャッシュフローは約2.0億円のマイナスだった。設備投資そのものは大きくないが、人員、ソフトウェア、特許、海外開発の費用は続く。現在の現金を使って新製品が黒字化すれば、調達した資本には意味が生まれる。しかし、採算を確認する前に研究領域を広げ続ければ、追加調達と希薄化を繰り返す危険がある。
2026年10月公表の成長可能性資料では、2030年売上高100億円を目標とし、M&Aについて3~5社の取得を構想している。これは経営上の目標であり、受注済み売上ではない。営業利益、ROE、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額については、長期の具体的な数字の約束なしと判断する。2027年8月期の配当予想も無配である。
大型買収を行う場合は、買収先の利益だけでなく、支払対価、のれん、追加の開発費、株式交換による希薄化を合わせて考える必要がある。これまでの利益実績では買収による資本効率の改善を証明できていないため、中立には大規模M&Aによる飛躍を織り込まない。余剰現金の株主への戻り方は、還元実績と持株構成の条件に照らし、帳簿価額の75%として評価する。
現在の純現金約24億円は、長期投資家にとって重要な安全資産である。ただし、その全額を2036年にも保有しているとは考えない。中立では初期の赤字と売上拡大に伴う運転資金の増加を見込み、残存純現金を約16億円と推計する。やや悲観では長期間の赤字によって大半が失われ、残存純現金は約2.5億円にとどまる。財務の強さは現在の残高だけでなく、それを10年間で何に使い、どの程度残せるかで評価しなければならない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
アスタリスクの可能性は、単なる小型バーコードリーダーの販売会社として見ると過小評価される。日本の労働人口は減少し、物流、医療、小売では、人が商品や情報を一件ずつ確認する作業の削減が長期の経営課題になる。RFIDを使えば、商品の束や棚全体をまとめて認識できる。読み取り機器、タグ、画像認識、会計を組み合わせる提案は、単なる端末の置き換えより大きな契約につながる。
同社はスマートフォンと業務用読み取り機器の融合を早くから手掛け、製品設計と現場への導入経験を蓄積してきた。2026年にはスマレジとの協業を始め、小売向けのRFID一括会計や防犯システムの開発を進めた。国内の大学病院や自動車関連物流など、用途の異なる現場で採用された実績もある。これらが標準製品として横展開できれば、案件ごとに大きな開発費をかけずに販売台数を増やせる。
会社の成長構想では、2030年の売上高100億円を目指している。世界のRFIDソリューション市場は拡大が予測され、今のアスタリスクのシェアは小さい。巨大企業の市場を独占する必要はなく、国内の限られた用途で数%のシェアを獲得するだけでも、現在の売上規模からは大きな成長になる。2026年に確保した現金は、研究開発、海外販売網、M&Aに取り組む時間を与える。
2022年8月期には全社営業利益率16%台を実現したことがある。販売規模が大きくなり、開発費を複数の顧客で分担できれば、現在の低い利益率を改善する余地は大きい。スマートカートや一括会計が採算の合う商品として普及すれば、読み取り装置の販売だけでなく、保守、利用料、更新需要が重なる。新製品の成功と固定費の吸収が同時に進む場合、現在の時価総額を超える企業価値は十分に考えられる。
慎重な見方
最大の問題は、RFIDの将来性が高いという説明と、アスタリスクが実際に利益を生んでいるという証拠との距離である。国内の自動認識市場は、直近の統計では大きく成長していない。RFID関連の出荷金額も2025年には前年割れとなった。会社の過去資料から推計できる国内RFIDリーダーのシェアは約1%台であり、大手競合が追随できないほどの規模や流通網を築いたわけではない。
製品の広がりも、経営資源の分散につながり得る。バーコード、RFID、顔認証、ロボット、スマートカート、セルフレジでは、必要な開発人材も顧客の購買決定も異なる。どれも技術的には有望でも、同時に育てれば研究開発費と営業費が先行する。2026年8月期には米国と国内の大型案件で売上計上が遅れ、当初の黒字予想が大幅な赤字へ変わった。将来の案件を確実な売上と見なせない実例である。
既存端末の事業も安全ではない。スマートフォンのカメラ性能向上、業務用端末の高機能化、RFIDリーダーの汎用化により、製品の差別化は縮み得る。価格競争が進む中では、安さを売りにすることが利益率の上限にもなる。顧客がシステムを変更する手間を負うとしても、それがアスタリスクの料金値上げを保証するわけではない。過去の特許紛争も和解しており、独占的な収入源として評価するのは適切でない。
財務面では、2026年の純資産増加の大部分が新株発行によるものだった。4期連続の営業赤字に続き、2027年も損失拡大を会社が予想している。利益が出るまで現金を消費し、さらに株式を発行する場合、会社の総価値が伸びても現在の株主の取り分は薄まる。2030年の売上目標やM&A構想を額面どおりに信じるより、現実の受注、営業キャッシュフロー、株数の推移に厳しい条件を課すべきだ。
さらに、現在の純現金を10年後の悲観価値にそのまま加えることもできない。営業赤字が継続すれば、現金は従業員の給与、研究開発、製品更新、在庫、海外拠点の維持に使われる。清算が行われなければ、不動産や現金をいつ株主に戻すかも経営判断に左右される。長い損失を経た後には、帳簿の自己資本よりもはるかに低い価値しか回収できない可能性がある。
どちらに重みを置いたか
RFIDによる現場の省人化という需要は10年先も残り、会社の製品には成功の可能性がある。しかし、現在は4期連続の営業赤字で、2027年も赤字拡大予想である。新製品の採算、海外大型案件の売上計上、M&Aの効果はいずれも確定していない。したがって慎重な見方が優勢だ。
確率は上側27%、中立30%、下側43%とした。下側を厚くした主因は、会社固有の案件遅延、固定費負担、資金調達と希薄化の実績である。中立では2036年に残る純現金と不動産価値を保守的に見ても企業価値がそれを上回り、やや悲観では10年間の赤字によって資産価値が大きく減る。事業の成否と現金消費の違いが、筋書きの価値を分ける。AIエージェントによる受託開発需要の縮小は、数量と長期成長率に織り込んでおり、同じ理由を確率でさらに重ねてはいない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 502 円46 億円(+ 還元の換算額還元の合計 19 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 229 円21 億円、今との差 −69.6%、 期待の年率 −3.7%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,387 円220 億円 | 130 円12 億円 | +234.3% | +13.3% | 252 円23 億円 |
| やや楽観 | 17% | 944 円87 億円 | 33 円3 億円 | +29.7% | +2.7% | 166 円15 億円 |
| 中立 | 30% | 250 円23 億円 | 0 円0 億円 | −66.8% | −10.4% | 75 円7 億円 |
| やや悲観 | 25% | 87 円8 億円 | 0 円0 億円 | −88.4% | −19.4% | 22 円2 億円 |
| 悲観 | 18% | 33 円3 億円 | 0 円0 億円 | −95.7% | −26.9% | 6 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 502 円46 億円 | 19 円2 億円 | −30.9% | −3.7% | 520 円48 億円 |
今の株価時価総額 753 円69 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% RFIDの標準化と海外展開が重なり、製品群が大きく成長 利益 18 億円 · PER 12.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,387 円220 億円
スーパーでのRFID一括会計と商品単位の在庫管理が本格普及し、スマートカート、防犯、棚卸しをつなぐ製品群が標準化される。国内の物流・医療に加え、米国や欧州の販売代理店を通じて導入件数が増える。スマレジとの協業が商談獲得のきっかけとなり、端末販売だけでなく、保守や追加ライセンスが同じ顧客から繰り返し発生する。
AsReaderの販売規模は大幅に拡大する。RFIDが普及する新しい市場では、安価なバーコード端末よりも一式の導入契約を多く獲得できるため、1セット当たりの売上も高まる。会社の技術が現場システムの標準的な一部となり、競合のZebraやHoneywellに対しても、国内で培った業務ノウハウを強みに顧客を増やす。
開発した基本製品を複数の顧客に販売できるようになり、研究開発費と本社費を吸収する。M&Aは不足する販路やソフトウェア機能を補う小規模案件に絞られ、過大なのれんを生まない。AIの進歩で受託開発の人月需要は増えないが、機器連携の仕事は残り、SI事業も小幅黒字に転換する。財務から事業へ投じた資本がようやく高い利回りを生み、株主還元も始まる。
- AsReader事業:数量 65,000(端末・導入セット換算台数(台・年、推計))× 価格 0.00(端末・導入セット換算の1台当たり年間売上(億円、関連ソフト・保守を含む))→ 売上 137 億円・営業利益 30 億円。端末・ソリューション換算65,000台、平均売上21万円。RFID導入契約と保守の構成比が高まり、主力事業の営業利益率22%。大型案件を複数年にわたり横展開できる例外的成功。
- システムインテグレーション事業:数量 120(受託開発人月(人月・年、推計))× 価格 0.02(受託開発1人月当たり売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替を受けても現場機器との連携需要が残る。数量は現在未満で、単価は高付加価値の導入支援により上昇。
- 賃貸事業:数量 3.0(賃貸稼働フロア換算(フロア))× 価格 0.08(稼働1フロア当たり年間賃料(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。3フロアの満室稼働と長期の賃料改定を想定。
倍率:資本コストk=8.75%、2036年のROE=17.56÷109=16.11%。堀が弱いため超過収益の残存割合を3分の1とし、RONIC=8.75%+(16.11%-8.75%)÷3=約11.20%。2036年以降の名目成長g=2%から正当化PER=(1-g÷RONIC)÷(k-g)=12.17倍。主力事業の大幅拡大と22%の営業利益率が実現する筋書きだが、市場PERではなく事業収益率で倍率を決めた。余剰現金10億円の税後利息相当0.14億円を純利益から除き、株主への戻り方75%を別に加える。
確率:国内の小売、物流、医療でRFIDの導入が加速し、同社が海外にも製品と保守の販売網を確立する必要がある。2030年100億円という会社目標に近い成長を実現するには、既存の大型案件だけでなく新製品を横展開する連続成功が必要なため、確率は10%に抑えた。
やや楽観 17% RFID関連の採用が広がり、全社黒字が定着 利益 7 億円 · PER 11.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 944 円87 億円
国内のRFID導入は、費用対効果を説明しやすい物流、医療、アパレル、比較的単価の高い小売商品から拡大する。海外でも一部の大口案件が定着し、複数の拠点でAsReaderの追加導入が進む。スーパー向けの全商品RFID化は採算の良い商品から段階的に進み、あらゆる食品を短期間で置き換えるほどの普及には至らない。
端末・導入セットの販売数量は増えるが、価格面では国際大手との競争が続く。それでも高度な読み取り装置や保守の構成が増えるため、物価上昇に加えて幾分の製品構成改善が期待できる。開発した共通ソフトウェアを多くの案件で再利用できれば、主力事業の利益率も改善する。
会社全体では、本社費と研究開発費の増加を抑えることに成功する。SI事業はAIエージェントによる開発工程の自動化で人月が減るものの、現場設置と既存顧客への保守支援が一定の収益を残す。大型買収による急拡大はなく、営業利益を少しずつ蓄積しながら、限定的な株主還元を始める10年となる。
- AsReader事業:数量 45,000(端末・導入セット換算台数(台・年、推計))× 価格 0.00(端末・導入セット換算の1台当たり年間売上(億円、関連ソフト・保守を含む))→ 売上 81 億円・営業利益 14 億円。端末・導入セット換算45,000台、平均売上18万円。RFIDと保守の比重増加による販売構成の改善を含む。
- システムインテグレーション事業:数量 110(受託開発人月(人月・年、推計))× 価格 0.02(受託開発1人月当たり売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AI代替で実質人月は現在の約85%。価格上昇は約20%で、物価上昇率3%を10年間複利で反映した額を下回る。
- 賃貸事業:数量 2.7(賃貸稼働フロア換算(フロア))× 価格 0.08(稼働1フロア当たり年間賃料(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。稼働率90%と賃料改定を想定。
倍率:2036年のROE=6.9÷53=13.02%、k=8.75%、弱い堀の残存割合3分の1からRONIC=約10.17%。g=2%として正当化PER=約11.90倍の上限そのものを採用する。余剰現金8億円の利息相当0.112億円を純利益から控除し、その帳簿価額の75%を加算する。
確率:物流・小売の一部用途でRFIDが普及し、研究開発費を既存製品の売上増で回収できる可能性はある。ただし新製品の採用速度と海外案件の計上には不確実性が残り、会社の高い成長目標を全面的には採用しない。
中立 30% RFID販売が拡大し、固定費を吸収して小幅黒字が定着 利益 2 億円 · PER 11.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 250 円23 億円
物流、医療、製造でのバーコード・RFID読み取り需要は続き、一部の小売チェーンでもRFIDを使った棚卸しや防犯が採用される。しかし、食品小売の全商品へのタグ付けは費用負担が大きく、全国の店舗へ一斉に普及することはない。会社は用途を広げて現在より多くの端末と導入セットを売るものの、標準的な装置として高い価格を維持することは難しい。
米国の大型案件は一部が実現するが、継続的な追加発注の規模は限定的となる。スマレジとの協業や新しい読み取り機器は販路拡大に寄与するが、国内外の競合も同様の製品を投入する。主力事業では、共通の読み取り技術とソフトウェアを複数の顧客に使い回す販売形態が増え、開発費を一件ごとに負担する比率が下がる。販売規模の拡大によって主力事業の利益率は改善するが、全社では海外拠点や研究開発の固定費が残るため、高収益企業にはならない。
SI受託はAIエージェントの普及で開発に必要な人月が減る。機器の設置や業務連携は残るが、画面や単純な処理を作る対価は縮小する。会社全体は数年間の赤字を経て小幅な黒字へ移るものの、ROEは資本コストに届かない。成長の初期には2026年に調達した資金を使うが、後半は事業の現金消費が収まり、2036年にも一定の純現金が残る。
この筋書きでは、2026年末の約24億円の純現金から、前半の累積赤字、売上拡大に伴う売掛金と在庫の増加、ソフトウェア更新投資を差し引いても、約16億円の純現金を維持すると見る。本社兼研究所の土地・建物にも売却可能な価値が残る。事業の稼ぐ力が大きくなくても、こうした残存資産を失わずに黒字化することが、中立の価値を支える。
- AsReader事業:数量 26,000(端末・導入セット換算台数(台・年、推計))× 価格 0.00(端末・導入セット換算の1台当たり年間売上(億円、関連ソフト・保守を含む))→ 売上 39 億円・営業利益 5 億円。端末・導入セット換算26,000台、平均売上15万円。数量は現在の約2.17倍、価格は約1.35倍。物価上昇率3%に近い価格上昇を仮定し、追加の強い値決め力は見込まない。2026年のAsReader事業利益率約5.5%から、共通製品の再利用、標準化、固定費吸収によって14%まで改善する。2022年の全社営業利益率16.6%を恒常的に上回るような強い収益性は前提にしない。
- システムインテグレーション事業:数量 85.0(受託開発人月(人月・年、推計))× 価格 0.02(受託開発1人月当たり売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の人月型。130人月から85人月へ約35%縮小し、単価上昇約20%は物価上昇に届かない。
- 賃貸事業:数量 2.4(賃貸稼働フロア換算(フロア))× 価格 0.08(稼働1フロア当たり年間賃料(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。稼働率80%。賃料上昇は10年間で約30%。
倍率:2036年のROE=1.60÷34.00=約4.71%でk=8.75%を下回る。新規投資の超過利益を認めず、正当化PERの上限を1÷k=11.43倍とする。余剰現金8億円の税後利息相当0.112億円を純利益から除外し、現金の株主への戻り方75%を別に加える。事業純利益1.488億円×11.43倍+現金評価6億円=約23.01億円となる。 資産側からも独立に検算した。2026年8月期末の純現金約24.04億円に対し、2027~2036年の純損益合計を約マイナス4.37億円、売掛金・在庫の増加による資金拘束を約5.0億円、追加投資を約2.5億円、非現金の減価償却等の戻りを約3.7億円とすると、2036年の残存純現金は約15.9億円になる。これは純損益とは別に売上規模拡大のための運転資金を必要とするという仮定である。土地・建物の税後売却可能額を約5.5億円とすれば、残存資産の回収可能価値は合計約21.4億円となり、利益から求めた継続企業価値23.01億円を下回る。したがって、中立の価値は資産の回収可能額によって下支えされており、残存現金を無視して過小に評価していない。
確率:現場の自動認識需要は残る一方、国際競争、食品小売への導入費用、開発固定費が制約となる。2030年100億円の会社目標ではなく、既存事業の実績と新規用途への段階的な拡大から数量を見積もった。中立では新製品の大成功は必要とせず、既存のAsReader製品を標準化して販売規模を拡大することで、現在より高いセグメント利益率を得ると考える。2022年に全社営業利益率16.6%を実現した事実は、収益性の改善余地を示すが、その水準を中立で継続できるとは見ない。
やや悲観 25% 新製品の商用化が遅れ、長期赤字で現金が大幅に減少 利益 −2 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 87 円8 億円
RFIDの普及は進むが、アスタリスクの新製品は大手小売業の標準機器として採用されない。食品の全商品RFID化ではタグ費用が障害となり、スマートカートも実証から大規模導入へ移るのに時間がかかる。従来のバーコード端末はZebra、デンソーウェーブ、Honeywellなどとの価格競争にさらされ、販売規模は伸び悩む。
米国の大口案件は一部が縮小または中止となり、海外拠点の固定費が残る。研究開発の優先順位を見直しても、既存製品の更新と顧客支援を続けるため、短期間では費用を十分に減らせない。SI受託はAIエージェントによって開発工程が省力化され、単純な受託売上の縮小が続く。
会社は営業赤字を解消できず、2026年に確保した現金を新製品開発や運転資金に使う。2027年の大幅赤字から始まり、その後も年によって損失額を変えながら、10年間で純損失が累積する。開発投資を縮小しても、人件費、海外拠点の維持、顧客への保守負担が残り、2036年にも黒字化できない。追加資金調達の可能性はあるが、この筋書きでは未実施の増資による現金を価値に含めない。
2026年末には約24億円あった純現金も、長期赤字を支えるために大半が失われる。減価償却などの非現金費用と一部の在庫処分による現金回収はあるものの、2036年の残存純現金は約2.5億円にとどまると見る。本社兼研究所の土地・建物には売却可能な価値が残るが、建物の老朽化、売却費用、利用制約を考慮すると帳簿価額全額は回収できない。
株主への還元は行われず、残るのは縮小した事業と限られた換金可能資産となる。この筋書きでは、現在の純現金を床として固定するのでなく、10年間の現金消費後に残る金額を評価する。中立では事業が黒字化して現金の流出が止まるのに対し、やや悲観では資産価値そのものが減少し続ける。この違いが両者の企業価値を大きく分ける。
- AsReader事業:数量 14,000(端末・導入セット換算台数(台・年、推計))× 価格 0.00(端末・導入セット換算の1台当たり年間売上(億円、関連ソフト・保守を含む))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。端末・導入セット換算14,000台にとどまり、低価格の既存端末の構成比が高いため名目価格もほぼ横ばい。
- システムインテグレーション事業:数量 75.0(受託開発人月(人月・年、推計))× 価格 0.01(受託開発1人月当たり売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AI代替で人月は現在の約58%まで減少。受託開発の採算改善が進まない。
- 賃貸事業:数量 2.0(賃貸稼働フロア換算(フロア))× 価格 0.08(稼働1フロア当たり年間賃料(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。期末稼働率は約67%のまま。修繕費や管理費が収益を圧迫。
倍率:2036年も営業赤字・純損失が続くため、利益にPERを掛ける方法を採用しない。10年間の累積損失によって資本と現金が減少した後の、純現金と実物資産の税後回収可能額8.0億円を価値の基礎とする。添付factsの2025年8月期自己資本約17.3億円をPBRの共通評価基準とした場合、8.0÷17.3=約0.46243倍となる。これは現在または過去の株価から選んだ倍率ではなく、独立に算定した資産価値を帳簿上の共通基準で表した結果である。 2026年の増資後自己資本約38.3億円から、2027~2036年の純損失合計を約24.3億円と見込むため、2036年の自己資本は約14.0億円となる。将来の自己資本が増加して価値を押し上げると仮定しているわけではない。現在の純現金約24.04億円も2036年まで残らず、残存純現金約2.5億円と土地・建物の税後処分価値約5.5億円が企業価値のほぼ全額となる。
確率:2026年に海外・国内大型案件の売上計上遅延が発生し、翌2027年も大幅赤字を予想するため、研究開発費を回収できない状態が長引く危険を重視した。下に寄せる理由は同社固有の案件集中、開発固定費、過去の計画未達であり、AI代替リスクを確率でも重ねて引くものではない。
悲観 18% 主要製品の競争力を失い、現金を使い切る寸前まで縮小 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 33 円3 億円
専用の読み取り機器は、スマートフォンのカメラや競合の安価なRFID端末に置き換えられていく。アスタリスクは国内外の大型案件を継続的に獲得できず、既存顧客の更新需要も減る。全商品RFID化やスマートカートは、タグ費用と設備改修費用を回収できず、限られた実証案件にとどまる。特許を保持していても、それによって市場を独占することはできない。
販売数量の減少に合わせて人員と開発テーマを絞るが、研究所、海外拠点、保守、既存顧客への対応に費用が残る。SI受託はAIエージェントによる開発工数の削減を受け、現場機器との接続に必要な一部の仕事しか残らない。事業を支える共通費を十分に吸収できず、営業赤字が続く。
会社は2026年に調達した資金を数年にわたり取り崩す。新たな株式発行で存続する可能性はあるが、その場合は現在の株主の経済的な持分がさらに薄まる。ここでは資金調達に頼らない残存価値を考え、純現金の大半が10年間の営業損失と開発費用で消費される筋書きとした。
10年間の純損失合計は約30億円に達する。純損失には減価償却や減損など現金支出を伴わない費用も含まれるが、設備の更新、海外拠点の撤退、取引先への支払いも必要になる。事業からの現金創出が回復しないため、保有していた有形資産の一部を売却し、現金を確保する可能性もある。2036年には自由に使える純現金がほとんど残らない。
最後まで残る土地・建物にも価値はあるが、資金繰りに追われた状態での売却には値引きや整理費用が発生する。事業の存続価値をほぼ認められず、実物資産の処分価値だけが株主に残る。この筋書きは、やや悲観よりもさらに資産の消耗が進み、事業の再建可能性も小さくなった状態である。
- AsReader事業:数量 7,500(端末・導入セット換算台数(台・年、推計))× 価格 0.00(端末・導入セット換算の1台当たり年間売上(億円、関連ソフト・保守を含む))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。端末・導入セット換算7,500台。価格競争で名目単価も低下し、主力事業まで営業赤字となる。
- システムインテグレーション事業:数量 50.0(受託開発人月(人月・年、推計))× 価格 0.01(受託開発1人月当たり売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AI代替と受注消失で人月は現在の約38%まで縮小。単価もほぼ維持できない。
- 賃貸事業:数量 1.3(賃貸稼働フロア換算(フロア))× 価格 0.07(稼働1フロア当たり年間賃料(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。空室と維持費負担が重く、賃貸事業も赤字となる。
倍率:事業の赤字が継続しているため、将来純利益にPERを掛けない。10年間の現金消費、事業撤退、設備の老朽化を経て、2036年に税後で回収可能な資産価値を3.0億円とする。添付factsの2025年8月期自己資本約17.3億円を共通の帳簿基準とした場合、3.0÷17.3=約0.17341倍となる。これは市場の過去の谷の倍率ではなく、残存資産の回収可能額を表現した結果である。 2026年の増資後自己資本約38.3億円から、2027~2036年の累積純損失約30.4億円を反映すると、2036年の自己資本は約8.0億円となる。ただし、その大部分は稼ぐ力を持たない資産や換金が難しい資産であり、帳簿価額全額を株主価値にはできない。残る不動産等の処分価値約3.0億円を、継続事業の評価をほぼ認められない場合の企業価値とする。
確率:4期連続赤字の状態から、新製品の商用化失敗、端末の汎用化、追加資金調達の難化が重なる場合を想定する。足元には約24億円の純現金があるため直ちに経営破綻する筋書きではないが、長期に損失を出せば財務上の余裕は失われる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
AsReader事業
スマートフォン連携型のバーコード・RFID読み取り機器と、導入に必要な関連ソフトウェア、保守、現場向けソリューションを販売する主力事業。
| 数量端末・導入セット換算台数(台・年、推計) | 価格端末・導入セット換算の1台当たり年間売上(億円、関連ソフト・保守を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 12,000 | 0.00 | 13 | 1 |
| 10 年後 中立 | 26,000 | 0.00 | 39 | 5 |
取り方:売上高13.31820億円とセグメント利益0.73668億円は2026年8月期決算短信の実績。機種別販売台数と実際の平均販売単価は非開示であるため、公開販売例に見られる13万円台のリーダー価格を参考に、卸値、製品構成、システム同梱、保守収入を含めた平均売上約11.10万円を仮定し、12,000台の端末・導入セット換算とした。これは実際の端末出荷台数ではなく、開示売上を数量と価格に分解するための推計単位である。市場占有率については2025年11月の会社資料にある2024年国内RFIDリーダー市場105.58億円と自社RFIDリーダー国内売上1.40億円から当時の約1.33%を算出した。AsReader事業全体にはバーコードやサービスも入るため、そのシェアを全社に適用しない。根拠:https://www2.jpx.co.jp/disc/65220/140120251119505848.pdf
システムインテグレーション事業
AsReaderを利用する顧客を中心に、業務用ソフトウェアの受託開発と導入システムの構築を行う。人月・工数で売る部分はAIエージェント代替の影響を受ける。
| 数量受託開発人月(人月・年、推計) | 価格受託開発1人月当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 130 | 0.01 | 2 | −1 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 0.02 | 1 | 0 |
取り方:売上高1.72975億円、セグメント損失0.64265億円は2026年8月期の実績。人数・人月・平均契約単価は非開示のため、1人月約133.1万円と仮定して年間130人月と逆算した概算であり、従業員の実稼働量を示すものではない。AIエージェント代替の型は『人月・工数で売るSI受託』である。10年中立の数量は130人月の約0.65倍、単価は物価上昇率3%による1.34倍より低い約1.20倍とし、2036年以降の持続成長は名目0%とする。人員による開発工数と業務画面の価値は縮小し得る一方、RFIDの現場設置や機器連携は残る。独自データや記録の正本としての堀を認定できる証拠は2件以上確認できない。
賃貸事業
本社兼研究所の一部フロアをテナントに賃貸し、少額の賃料収入を得る事業。
| 数量賃貸稼働フロア換算(フロア) | 価格稼働1フロア当たり年間賃料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 2.0 | 0.06 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 0.08 | 0 | 0 |
取り方:決算短信では本社兼研究所の7~9階、計3フロアを賃貸し、2026年8月期末の入居率は67%と開示している。3フロア×67%=2.01フロアを数量とし、セグメント売上高0.11925億円から1稼働フロア当たり約0.0593億円の年間賃料を推計した。実際の各契約賃料は非開示である。
リスクと懸念
大型案件の計上遅延と顧客集中
2026年8月期には、米国の大型案件約6.08億円と国内の大型案件約2.31億円で、当初見込んだ時期の売上計上が難しくなったと会社が説明した。現在の売上規模に対して一件当たりの影響が大きい。契約があることと検収・入金が確定することを区別しなければならない。新規受注だけでなく、既存案件がいつ売上と現金に変わるかが重要である。
RFID導入費用と市場普及の遅れ
小売店の全商品RFID化には、商品ごとのタグ付け、読み取り設備、POS連携、現場運用の変更が必要になる。商品単価が低い食品では、タグの費用だけでも採算を左右する。技術的な読み取り精度が改善しても、顧客が費用を回収できなければ導入は進まない。世界のRFID市場の成長予測だけを理由に、アスタリスクの受注が増えると考えることはできない。
価格競争と読み取り技術の代替
Zebra、Honeywell、Datalogic、キーエンス、デンソーウェーブなど、企業向け読み取り機器には多くの競合が存在する。スマートフォン内蔵カメラの性能向上や、安価な汎用RFID機器の普及も価格への圧力となる。現場の自動認識需要自体が残っても、自社製品の単価と利益率が上がるとは限らない。値上げの実績、採用継続率、保守収益の開示を確認したい。
AIエージェント代替による受託開発の縮小
システムインテグレーション事業は、人が業務用ソフトウェアを開発する工数を対価に変える部分が中心である。AIエージェントによって画面作成、テスト、単純な連携処理が自動化されれば、顧客が買う人月は減少する。RFID端末の設置や物理的な業務連携は残るが、受託の数量と単価には圧力がかかる。中立では10年間の人月を約35%減らし、2036年以降の成長率も名目0%としている。
研究開発費の固定化と現金消費
2026年8月期にはAsReader事業で黒字を確保したものの、会社全体は営業赤字だった。韓国の研究開発拠点、新製品、顔認証、ロボット、海外事業を並行して育てるには継続的な費用が要る。研究開発に失敗したとき、支出した資金が換金可能な資産として残るわけではない。赤字が続けば、2026年に増えた現金も減り、悲観時の資産価値は現在の純現金より低くなる。
増資・M&Aによる既存株主の持分低下
2026年8月期には新株予約権の行使により発行済株式数が約18%増えた。2030年売上高100億円を目指す成長戦略には、研究開発、販路開拓、3~5社のM&A構想が含まれる。しかし、買収の資金源が新株発行であれば、会社全体の売上が増えても既存株主の1株当たり価値は増えない可能性がある。今後も発行済株式数と買収後の投下資本利益率を追う必要がある。
技術の独占性を過大評価する危険
RFID関連の特許取得と再取得は、同社の事業戦略で重視されている。ただし、特許を持つことと、顧客が高い料金を払い続けることは別である。過去のファーストリテイリングとの特許紛争は2021年に和解しており、独占的な継続使用料を現在の稼ぐ力に加える根拠にはならない。特許の存在ではなく、特許を使った製品から生まれる利益を見極めるべきである。
現金の回収可能性と帳簿価額の違い
2026年の増資によって純現金は約24億円となったが、これは10年後の清算価値を保証するものではない。中立では初期損失と成長のための運転資金を差し引いても約16億円の純現金が残る。一方、やや悲観では長期赤字で約2.5億円まで減少する。建物や土地にも売却可能な価値はあるが、建物の老朽化、税金、売却費用、事業用部分の利用制約を無視できない。将来の企業価値は、利益だけでなく現金をどれだけ残せるかに大きく左右される。
今後の分かれ目
- 延期された米国・国内の大型案件が検収と入金まで進み、翌期以降に継続的な追加受注も発生したら
- 商談を実際の売上と現金に転換できる証拠となる。AsReader事業の数量と海外シェアを引き上げ、やや楽観の確率を再検討する。ただし単発案件なら恒常的な利益率の改善とは区別する。
- RFIDスマートカートや一括会計の有償導入店舗数、継続利用率、導入単価が定期的に開示され、増加し始めたら
- 研究開発段階から再現可能な販売モデルへ移った証拠になる。端末・導入セット換算の数量を上方修正し、保守など継続収益の定着が確認できれば、長期の事業の堀も見直す。
- 会社全体で営業黒字と営業キャッシュフローの黒字が複数期続き、研究開発費を増やしても純現金が減らなくなったら
- 固定費の吸収と増分投資の採算を高く評価できる。中立の純利益とROEを引き上げ、追加増資が必要になる確率を下げる。
- 2027年8月期の会社予想どおり赤字が拡大し、その後も売上高が20億円に届かない状態が続いたら
- 2030年の成長目標との隔たりがさらに広がる。研究開発費の回収期間を長く見直し、やや悲観と悲観の確率を引き上げる。特に追加資金調達と株数の増加を確認する。
- SI事業の受託人月が減る一方、現場機器の導入保守や成果課金による収益が増えたら
- AIエージェント代替を単なる減収ではなく、低採算受託からの転換として再評価する。成果課金の契約金額と収益率が確認できる部分だけ、数量や単価を上方修正する。
- M&Aを実施し、取得価格、株式対価、買収先利益、のれん、投下資本利益率が開示されたら
- 既存事業の価値とは分けて買収の価値を評価する。ROICが資本コストを上回り、既存株主の希薄化を補える場合のみ、10年後の取り分を増やす。
- 営業赤字が続いても現金の減少が小さく、売掛金・在庫・設備投資を含めた資金繰りが改善したら
- 純損失の全額が現金流出になるわけではないことを実績で確認できる。2036年の残存純現金見通しを上方修正し、特にやや悲観側の資産価値を見直す。ただし、売掛金の回収遅延や在庫の滞留による一時的な表示改善とは区別する。
見ておくもの
- 四半期ごとのAsReader事業の売上高、セグメント利益率、製品別販売構成
- 米国約6.08億円、国内約2.31億円の延期案件の検収・売上計上・現金回収
- RFID一括会計、スマートカート、BOX-Typeの有償導入店舗数と継続利用率
- 営業キャッシュフロー、研究開発費、販管費、純現金の推移
- SI事業の売上高と採算、AIエージェントを活用した開発効率の改善
- 発行済株式数、新株予約権の残高、配当・自己株式取得の有無
- 2030年売上高100億円という経営目標に対する実績と、M&A後の資本効率
- 日本自動認識システム協会のバーコードリーダー・RFID市場統計
- 2026年8月期末の純現金約24億円が、今後の損失・投資・借入返済によってどの程度減るか
- 本社兼研究所の土地・建物の帳簿価額、賃貸稼働率、売却可能価値の変化
倍率と資本コストの決め方
事業の数量は端末・導入セット換算、人月、稼働フロアで見積もり、物価上昇は単価側に入れた。端末の実販売台数と契約平均単価は非開示なので、数量と価格の分解は推計であり、開示事実と区別している。楽観・やや楽観・中立のPERは、事業のROE、資本コスト8.75%、弱い堀による超過収益の残存割合3分の1、2036年以降の成長率2%から決めた。悲観側は現金消費を明示し、売却可能資産を床とした。現在の株価や同業PERから将来価値を逆算していない。
添付factsの基準は2025年8月期、株数8,046,618株、自己資本約17.3億円だが、その後の2026年10月15日公表の決算短信では、2026年8月期末の発行済株式数が9,196,800株、自己株式が182株である。最新決算の株数9,196,618株を優先し、基準株価811円で現在の時価総額を約74.58億円とした。2026年8月期末の純現金は約24.04億円である。2026年の大規模な増資は、その時点から2036年までの自己資本と現金の推移に反映した。
中立の営業利益率を再点検した。2026年のAsReader事業の利益率は約5.5%だが、同事業の売上規模が約3倍に近づけば、共通開発費と固定費を吸収する効果がある。2022年には全社で16.6%の営業利益率を実現した事実も踏まえ、中立ではAsReader事業の利益率を14%とし、本社・共通費約3.1億円を別途差し引いた。これによる全社の営業利益率は約5.6%であり、過去最高期の高収益性が復活することを前提にしていない。
さらに、中立の10年間の自己資本と純現金の推移を別に確認した。2026年の自己資本約38.3億円から、2027~2036年の累積純損失約4.37億円を差し引くと、2036年の自己資本は約34.0億円となる。2036年末の純現金は、初期純現金約24.04億円から累積損失、売上増加に必要な売掛金と在庫、追加投資を控除し、減価償却等の非現金費用を戻すと約15.9億円となる。土地・建物等の税後回収可能価値約5.5億円を加えた資産価値は約21.4億円である。中立の時価総額23.01億円はこれを上回り、営業利益の改善と残存資産の価値が矛盾しない。
やや悲観では、2027~2036年の累積純損失約24.3億円により、2026年の自己資本38.3億円が約14.0億円まで縮小すると見た。現金の消費後に残る純現金約2.5億円と土地・建物等の税後処分価値約5.5億円の合計8.0億円が床となる。悲観では、累積純損失約30.4億円によって自己資本が約8.0億円まで減少し、最終的な回収可能資産も約3.0億円まで減る。両筋書きとも、2026年の純現金24.04億円が10年後にも残ると仮定していない。
悲観側のPBRは、将来の自己資本の増加を理由に床を引き上げないよう、添付factsの2025年8月期自己資本約17.3億円を共通の倍率表示基準として確認した。やや悲観は8.0÷17.3=約0.46243倍、悲観は3.0÷17.3=約0.17341倍である。中立のPBRは23.01÷34.0=約0.67676倍であり、やや悲観の床のPBRを上回る。2036年の時価総額も、悲観3.0億円、やや悲観8.0億円、中立23.01億円、やや楽観86.79億円、楽観219.50億円の順に増加する。
将来の新リース会計基準による表示変更は、現金収支を二重に減額する理由としない。資本コスト8.75%で、10年後の時価総額を10年間割り引き、還元額を5年間割り引いた確率加重現在価値は約21.07億円となる。現在時価総額74.58億円との差は約マイナス71.75%であり、総合判定は割高となる。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 0.5%。基本7.5%に事業の質による0.75%と、継続赤字に対する0.5%を加えた8.75%。株価のβや小型株であること自体への上乗せは使わない。