結論
ミナトホールディングスは、産業機器向けのメモリーモジュールを売る会社を軸に、ROM書込みの受託、会議システムの販売、電線商社などを束ねた持株会社だ。筆者の結論は割高である。2026年3月期の利益はメモリー価格の急騰が押し上げたもので、この水準が10年続く見込みは薄い。
稼ぎの核はデジタルデバイス部門で、売上の6割、営業利益のほぼすべてを占める。メモリーを仕入れて検査し、モジュールにして売る事業だ。仕入れ値が上がれば売値も上がり、手持ちの在庫は値上がり益を生む。値が崩れれば、その在庫が一気に重荷になる。
2026年3月期の営業利益は前期の5倍超の42億円、ROEは26%だった。一方で棚卸資産は3倍の約124億円に膨らみ、営業キャッシュフローは61億円の流出だった。利益の裏で、お金が在庫に化けている。
メモリー不足は2027年まで続くという見方が多く、目先の決算は強いだろう。それでも10年で見れば、供給が増えて価格は戻る。確率で重みを付けた価値は、今の時価総額の3割前後にとどまる。楽観の筋書きでも、10年の年率リターンは資本コストに届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点でまず問うのは、10年後もこの利益が残るかだ。ミナトの利益の源は、メモリー市況の追い風と、小さな会社が在庫を持てる資金力にある。独自の技術や顧客の囲い込みで値段を決めているわけではない。堀は薄い。
次に、利益が株主の手元に残るかを問う。この会社は儲かるほど運転資金が要る。2026年3月期は純利益21億円に対し、営業キャッシュフローは61億円の流出だった。帳簿の利益が、そのまま株主のものになる形ではない。
経営は動きが速く、M&Aで事業の幅を広げてきた。ただ買収先の多くはメモリー事業と接点が薄い。資本の配分が冴えているかは、まだ判断できない。
安全域の面では、好況の利益に15倍前後の値が付いている今は、厚みがない。メモリーが平時の価格に戻る筋書きでも、財務が持ちこたえるかを確かめる必要がある。筆者は、好況の最中にこの会社を持つ理由を見つけにくい。
何で稼ぐ会社か
事業は5つに分かれる。最大のデジタルデバイスは、2026年3月期の売上が223億円。子会社のサンマックス・テクノロジーズが、DIMM(パソコンやサーバーに挿すメモリー基板)やeMMC(小型機器向けの記憶部品)を全数検査して納める。用途はPC、POSレジ、複合機、ATMなどだ。米キングストンの製品も扱い、香港と上海の拠点が海外の調達と販売を担う。
2つ目のデジタルエンジニアリングは、機器へのプログラム書込み(ROM書込み)の受託と、書込み装置の開発、函館のエクスプローラによる産業・医療機器の設計製造受託だ。売上は36億円。2024年に新社屋を建て、書込み能力を約3.6倍に増やした。
3つ目のICTプロダクツ(売上93億円)では、プリンストンが会議システム、PC周辺機器、スマホ用品を売る。4つ目のエレクトリカルマテリアルズは、2026年4月に子会社になった電線商社の富士電工で、古河電工の特約店だ。5つ目のデジタルマーケティングは、広告制作や音楽関連のブレーン、ダイキサウンドなどをまとめる。
顧客の上位はアドテックやエプソンダイレクトなどのメーカーで、この2社だけで売上の2割を超える。2012年から若山健彦氏が率い、M&Aで事業を広げてきた。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。メモリーの仕入れ先は大手で、ミナトが値段を決める立場にはない。強みは3つある。全数検査による品質管理、DDR4のような古い規格を長く安定して供給する力、そして小回りのよさだ。大手電機メーカーや半導体商社が顧客に並ぶのは、この信頼があるからだ。
資本効率は市況次第である。2026年3月期のROEは26%だが、前の期は6%、過去10年の中央値は12%弱にとどまる。営業利益率も、2025年3月期までの最高は6.5%だった。2026年の11.6%は市況が押し上げた数字と読むのが自然だ。
弱点は3つある。1つ目は顧客の集中で、上位2社だけで売上の2割を超える。2つ目は財務で、自己資本比率は25%と中期計画の目標30%を下回り、在庫を支える借入が膨らんだ。3つ目は事業の寄せ集め感だ。会議システム、電線、広告、音楽がメモリーとどう噛み合うかは、実績でまだ示されていない。
経営の動きは速い。2026年3月期は業績予想を3回引き上げた。ただ、その上振れは市況に乗った面が大きい。事業の質が変わったとまでは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
メモリー市場は、数十年に一度という品薄の最中にある。AIサーバーとHBM(AI用の高速メモリー)に製造能力が回り、汎用メモリーの供給が絞られた。調査会社TrendForceは、2026年10〜12月期も従来型DRAMの契約価格が1割台前半上がると見る。報道では、Micronが2027年を2026年より逼迫と語り、新工場の稼働は2027年半ば以降とされる。
古い規格のDDR4は各社が生産を減らしている。産業機器で長く使われてきた規格の品薄は、ミナトにとって追い風だ。在庫と調達力を持つ小さなモジュール業者が、値上げを通しやすい。
ただしメモリーは典型的な市況品である。品薄は増産を呼び、数年後の供給過剰と値崩れで終わる歴史を繰り返してきた。中国の新興メーカーが汎用品の供給を増やせば、その時期は早まる。10年の単位では、今の価格をそのまま延ばす見方に安全域はない。
ほかの事業はおだやかだ。ROM書込みは車載・産業機器の台数に左右される。会議システムとスマホ用品は競争が激しく、利益率は薄い。電線は銅価格と国内の設備投資に連動する。広告制作は、生成AIが制作の工程を置き換えていく分野に入っている。
資本政策と M&A
株主還元は配当、自社株買い、株主優待の3本立てで、総還元性向30%を目標に掲げる。ただ実績は年によって1割台から3割台まで振れ、利益が落ち込んだ年には7割を超えた。直近の自社株買いも年1億円ほどと小さい。2027年3月期は、設立70周年の記念配当を足して増配する予定だ。優待は自社通販で使える20%割引券で、年の費用は1億円に満たない。
成長の手段はM&Aだ。2016年のサンマックス、2020年のプリンストン、2021年のエクスプローラ、2025年のブレーンと続き、2026年に富士電工を加えた。ブレーンは取得したその期に5億円の減損を出した。目利きの確かさは、まだ検証の途中にある。
自己資本比率は25%で、短期借入金は1年で約66億円増えた。M&Aと在庫の両方に資金が要る。買われる側としては、時価総額が小さく大株主も分散しているため、TOB(株式公開買い付け)の余地はある。ただ、在庫と借入が重い今の財務のまま買い手がつくかは別の話だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
メモリー不足は一時の波ではなく、AI需要で構造が変わった。HBMにウエハーが回る限り、汎用DRAMの供給は絞られたままだ。DDR4が終わりに向かう中、産業機器メーカーは長く安定して買える相手を探している。全数検査と在庫を持つミナトは選ばれやすい。大手メーカーの幹部が、不足は2027年から2028年まで続くと語ったと報じられている。この間、売上は480億円規模を超え、営業利益も35億円から40億円台を保てる。
利益率の底上げも見込める。固定費の管理が進み、書込み事業は減価償却が3年前の6割減になって、利益が出やすい形になった。
富士電工とブレーンの買収効果が加われば、10年で売上は900億円に届く。M&Aで得た事業が育てば、メモリーへの依存が薄れて、評価も上がる。小さな持株会社が、複数の収益源を持つ企業群に変わる好機にある。
さらに、財務も改善に向かう。営業キャッシュフローは在庫が減る局面で黒字に転じ、借入を返せる。2026年3月期にROEは26%に達し、純資産が1.4倍に増えた事実は、利益が積み上がる力を示している。自己資本比率30%への回復は、時間の問題と見ることもできる。
慎重な見方
メモリー価格は必ず戻る。品薄が続くほど各社は増産に動き、新工場は2027年半ば以降に立ち上がる。供給が需要を上回れば、契約価格は短期間で大きく下がる。その時、ミナトは124億円の在庫を抱えている。高値で仕入れた在庫を安値で売れば、粗利は消え、評価損が出る。借入は在庫の分だけ膨らみ、自己資本比率は25%と薄い。
ミナトは製造しない。大手が作ったメモリーを仕入れ、モジュールにして売るだけで、値段を決める力がない。好況の前の営業利益率は1〜3%台の年が多く、最高でも6.5%だった。2026年の11.6%は市況が作った数字だ。
M&Aで加わった電線商社は利益率が1%台と薄い。広告や音楽の事業は、AIに置き換わる側にいる。ブレーンは取得したその期に5億円の減損を出した。次の買収でも同じことが起こりうる。
財務は市況の追い風を前提に組まれている。営業キャッシュフローは61億円の流出で、利益は在庫に化けた。価格が下がれば、運転資金の回収が進むどころか、売掛金の回収遅れと在庫の滞留が重なる。ROEの26%は、薄い自己資本が生んだ見かけの数字でもある。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。メモリーが10年を通じて高止まりする根拠より、市況が反転する根拠のほうが歴史的に厚い。目先2年の決算は強気の見方に近い数字が出るだろう。しかし10年後の価値を決めるのは、反転後の稼ぐ力である。そのため確率は中立より下の筋書きに重く寄せた。在庫と借入の厚さが、悲観側の傷を深くする点も重い。一方で、M&Aが当たる筋書きと品薄が長引く筋書きにも一定の確率は残す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,121 円307 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 654 円49 億円)。 今の値に割り戻すと 2,166 円161 億円、今との差 −45.9%、 期待の年率 +1.8%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 13,837 円1,031 億円 | 1,623 円121 億円 | +286.0% | +14.5% | 1,082 円81 億円 |
| やや楽観 | 18% | 6,914 円515 億円 | 950 円71 億円 | +96.3% | +7.0% | 1,415 円105 億円 |
| 中立 | 33% | 4,399 円328 億円 | 703 円52 億円 | +27.4% | +2.5% | 1,684 円125 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,419 円106 億円 | 404 円30 億円 | −54.5% | −7.6% | 492 円37 億円 |
| 悲観 | 15% | 490 円37 億円 | 191 円14 億円 | −83.0% | −16.2% | 102 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,121 円307 億円 | 654 円49 億円 | +19.2% | +1.8% | 4,775 円356 億円 |
今の株価時価総額 4,005 円298 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 品薄が長引き、M&Aも当たる 利益 57 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 13,837 円1,031 億円
メモリーの品薄が2028年まで長引き、その後も産業・車載・エッジAI向けの需要が積み上がって、汎用メモリーの値段は平時の水準に戻りきらない。ミナトは調達力と全数検査の信頼で顧客を広げ、販売する容量は今の3倍近くになる。デジタルデバイスの営業利益率は12%で、今の19%より低いが、好況前の9〜11%を上回る水準で安定する。
富士電工とブレーンの買収は想定どおり利益を出し、ROM書込みの新設備は高い稼働に乗る。グループの売上は900億円台、純利益は57億円に達する。大型の失敗買収は起きず、自己資本比率は30%を回復する。10年間の還元は120億円を超え、倍率も平時より高く評価される。
- デジタルデバイス(産業用メモリー):数量 46.0(販売したメモリー容量(百万 GB 相当・推定))× 価格 1,050(1GB あたりの販売単価(円・名目))→ 売上 483 億円・営業利益 58 億円。容量 46 百万 GB × 単価 1.05 千円、利益率 12%
- デジタルエンジニアリング(ROM書込み・開発受託):数量 190(受託の処理量(百万個相当・推定))× 価格 52(1 個相当あたりの受託単価(円・名目))→ 売上 99 億円・営業利益 15 億円。処理量 1.9 倍、利益率 15%
- ICTプロダクツ(会議システム・PC周辺):数量 140(販売点数(万点・推定))× 価格 11,200(1 点あたりの販売単価(円・名目))→ 売上 157 億円・営業利益 10 億円。140 万点、利益率 6.5%
- エレクトリカルマテリアルズ(電線商社):数量 3.5(電線・電材の販売量(銅換算の千トン・推定))× 価格 440(1 トンあたりの販売単価(万円・名目、銅価格を含む))→ 売上 154 億円・営業利益 3 億円。銅換算 3.5 千トン、利益率 2.2%
- デジタルマーケティング(広告・制作・音楽):数量 150(稼働する人員(人・推定))× 価格 3,300(1 人あたりの売上(万円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 3 億円。150 人、利益率 6%
倍率:事業の純利益 57 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 33.5% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 21.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.24 倍、時価総額 931 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:品薄の長期化と M&A の成功が重なる筋書き。メモリーは歴史的に反転するので、重ねて起きる確率は低いと見て 7% とした。
やや楽観 18% 品薄は2027年まで、価格調整は穏やか 利益 29 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 6,914 円515 億円
品薄は2027年いっぱい続き、その後の価格調整は穏やかに終わる。デジタルデバイスの容量は今の2倍強に増え、営業利益率は10%を保つ。ROM書込みは新設備の稼働が上がり、利益率は13%まで改善する。電線とICTは物価並みに伸びる。
売上は680億円、純利益は29億円になる。買収の一部は期待に届かないが、減損は小さい。借入は着実に減り、自己資本比率は30%を超える。還元は総還元性向の目標に近づく。
富士電工は古河電工の特約店としてデータセンター向けの電線需要を取り込み、利益率を少し上げる。ブレーンなどデジタルマーケティングは、AIを使う側に回って人員を抱えたまま利益を保つ。会社が掲げるデジタルコンソーシアム構想は、完成形ではないが、事業の寄せ集めを卒業する途中経過として評価される。
- デジタルデバイス(産業用メモリー):数量 34.0(販売したメモリー容量(百万 GB 相当・推定))× 価格 880(1GB あたりの販売単価(円・名目))→ 売上 299 億円・営業利益 30 億円。容量 34 百万 GB × 単価 0.88 千円、利益率 10%
- デジタルエンジニアリング(ROM書込み・開発受託):数量 148(受託の処理量(百万個相当・推定))× 価格 49(1 個相当あたりの受託単価(円・名目))→ 売上 73 億円・営業利益 9 億円。処理量 1.5 倍、利益率 13%
- ICTプロダクツ(会議システム・PC周辺):数量 128(販売点数(万点・推定))× 価格 10,900(1 点あたりの販売単価(円・名目))→ 売上 140 億円・営業利益 8 億円。128 万点、利益率 5.5%
- エレクトリカルマテリアルズ(電線商社):数量 3.1(電線・電材の販売量(銅換算の千トン・推定))× 価格 410(1 トンあたりの販売単価(万円・名目、銅価格を含む))→ 売上 127 億円・営業利益 2 億円。銅換算 3.1 千トン、利益率 1.8%
- デジタルマーケティング(広告・制作・音楽):数量 125(稼働する人員(人・推定))× 価格 3,150(1 人あたりの売上(万円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 2 億円。125 人、利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.0% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 14.99 倍、時価総額 436 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:品薄が長引いても反転の波は一度は来るが、緩やかに着地する筋書き。強気の見方を一定程度とって 18% とした。
中立 33% 価格は平時に戻り、堅実な中堅に落ち着く 利益 18 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 4,399 円328 億円
メモリー価格は反転し、2036年3月期には平時の水準に落ち着く。今は1GBあたり約1.4千円だが、中立ではその5割台まで戻る。一方で容量は今の1.75倍に増える。AIとエッジ機器、DDR5への移行で産業用の需要は積み上がるが、サイクルの谷は一度は通る。
デジタルデバイスの営業利益率は9%で、好況前の9〜11%の下限にとどまる。ROM書込みは12%、会議システムとスマホ用品は5%、電線は1.6%。売上は約560億円、営業利益は28億円、純利益は18億円。本社費は物価で増えて8億円になる。買収は続くが、投じた資金は資本コスト並みの稼ぎにとどまる。
- デジタルデバイス(産業用メモリー):数量 28.0(販売したメモリー容量(百万 GB 相当・推定))× 価格 760(1GB あたりの販売単価(円・名目))→ 売上 213 億円・営業利益 19 億円。容量 28 百万 GB × 単価 0.76 千円(今の 5 割台)、利益率 9%
- デジタルエンジニアリング(ROM書込み・開発受託):数量 130(受託の処理量(百万個相当・推定))× 価格 48(1 個相当あたりの受託単価(円・名目))→ 売上 62 億円・営業利益 8 億円。処理量 1.3 倍、利益率 12%
- ICTプロダクツ(会議システム・PC周辺):数量 120(販売点数(万点・推定))× 価格 10,768(1 点あたりの販売単価(円・名目))→ 売上 129 億円・営業利益 7 億円。120 万点 × 物価並み、利益率 5%
- エレクトリカルマテリアルズ(電線商社):数量 3.0(電線・電材の販売量(銅換算の千トン・推定))× 価格 402(1 トンあたりの販売単価(万円・名目、銅価格を含む))→ 売上 121 億円・営業利益 2 億円。銅換算 3.0 千トン、利益率 1.6%
- デジタルマーケティング(広告・制作・音楽):数量 105(稼働する人員(人・推定))× 価格 3,216(1 人あたりの売上(万円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 1 億円。105 人(AI 代替で 3 割減)、利益率 4%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.0% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.84 倍、時価総額 255 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:メモリーが平時に戻り、M&A は資本コスト並みの稼ぎにとどまる筋書き。強気と慎重の議論の落としどころとして 33% を置いた。
やや悲観 27% 供給過剰で価格が下がり、評価損を出す 利益 7 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,419 円106 億円
2027年後半から2028年にメモリーの供給が追いつき、価格が大きく下がる。ミナトは在庫の評価損を出し、赤字の期も一度は通る。その後の稼ぎは、2023年から2025年3月期の水準を物価分だけ上回る程度にとどまる。
デジタルデバイスの営業利益率は5.5%、容量は今の1.6倍。会議システムは価格競争で単価が伸びず、広告制作はAIに置き換わって縮む。売上は470億円、営業利益は12億円、純利益は6.6億円。借入の返済が重く、買収は止まり、還元も絞られる。
富士電工の電線は銅価格と国内投資の弱さで足踏みする。ROM書込みは新設備の稼働が上がらず、減価償却の軽さという追い風が薄れる。取引銀行は担保と財務制限を厳しくし、運転資金の余裕が削られる。大型の失敗はないが、成長の物語は止まり、地味な中堅商社として扱われる。
- デジタルデバイス(産業用メモリー):数量 26.0(販売したメモリー容量(百万 GB 相当・推定))× 価格 650(1GB あたりの販売単価(円・名目))→ 売上 169 億円・営業利益 9 億円。容量 26 百万 GB × 単価 0.65 千円、利益率 5.5%
- デジタルエンジニアリング(ROM書込み・開発受託):数量 110(受託の処理量(百万個相当・推定))× 価格 46(1 個相当あたりの受託単価(円・名目))→ 売上 51 億円・営業利益 5 億円。処理量 1.1 倍、利益率 9%
- ICTプロダクツ(会議システム・PC周辺):数量 110(販売点数(万点・推定))× 価格 10,000(1 点あたりの販売単価(円・名目))→ 売上 110 億円・営業利益 4 億円。110 万点 × 1.24 倍、利益率 3.5%
- エレクトリカルマテリアルズ(電線商社):数量 2.9(電線・電材の販売量(銅換算の千トン・推定))× 価格 390(1 トンあたりの販売単価(万円・名目、銅価格を含む))→ 売上 113 億円・営業利益 2 億円。銅換算 2.9 千トン、利益率 1.4%
- デジタルマーケティング(広告・制作・音楽):数量 90.0(稼働する人員(人・推定))× 価格 2,900(1 人あたりの売上(万円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。90 人、利益率 2.5%
倍率:事業の ROE 3.4% は k 9% を大きく下回る。上限は 1÷k=10.5 倍だが、市況の谷を越えた利益の質は低く、中立より下の約 76% の 8.0 倍に置いた。
確率:市況の反転が早く、在庫損と借入の重さで稼ぐ力が落ちる筋書き。慎重な見方の本命の一つとして 27% を置いた。
悲観 15% 価格崩壊と財務の傷で構造的に負ける 利益 −4 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 490 円37 億円
供給過剰と価格崩壊が重なり、ミナトは構造的に負ける。大手のモジュールメーカーや中国メーカーが産業用でも直販に動き、古い規格の優位は消える。124億円の在庫に大きな評価損が出て、自己資本比率は一桁台に落ち、借り換えのために資産を売る。
買収した事業でも減損が続く。ROM書込みは稼働が上がらず、広告制作はAIに置き換わる。営業利益は赤字に沈み、純利益はマイナス4億円。10年後の会社は、残った事業の売れる資産の価値で測るしかない。
仕入先の大手メーカーは、品薄の間に整理した取引先を戻さず、割当を絞られたミナトは数量を維持できない。顧客のアドテックやエプソンダイレクトなどもほかの調達先に分散する。資産の売却による再建が議論される局面に入る。
- デジタルデバイス(産業用メモリー):数量 18.0(販売したメモリー容量(百万 GB 相当・推定))× 価格 520(1GB あたりの販売単価(円・名目))→ 売上 94 億円・営業利益 1 億円。容量 18 百万 GB × 単価 0.52 千円、利益率 1.5%
- デジタルエンジニアリング(ROM書込み・開発受託):数量 80.0(受託の処理量(百万個相当・推定))× 価格 42(1 個相当あたりの受託単価(円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 1 億円。処理量 0.8 倍、利益率 4%
- ICTプロダクツ(会議システム・PC周辺):数量 95.0(販売点数(万点・推定))× 価格 9,200(1 点あたりの販売単価(円・名目))→ 売上 87 億円・営業利益 1 億円。95 万点、利益率 1%
- エレクトリカルマテリアルズ(電線商社):数量 2.7(電線・電材の販売量(銅換算の千トン・推定))× 価格 360(1 トンあたりの販売単価(万円・名目、銅価格を含む))→ 売上 97 億円・営業利益 1 億円。銅換算 2.7 千トン、利益率 1%
- デジタルマーケティング(広告・制作・音楽):数量 60.0(稼働する人員(人・推定))× 価格 2,500(1 人あたりの売上(万円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。60 人、利益率 0%
倍率:赤字の悲観では稼ぐ力では測れないので、PBR で今の自己資本 81 億円に 0.45 を掛けた。値は売れる資産の税後(床の資産 36 億円)の水準。
確率:好況の借入と在庫が裏目に出て、価格崩壊と顧客の直販化が同時に来る筋書き。在庫の大きさと財務の薄さを踏まえ 15% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
デジタルデバイス(産業用メモリー)
サンマックス・テクノロジーズなどが、DRAM・NAND を使ったメモリーモジュールを全数検査して、機器メーカーと半導体商社に売る。海外の調達と販売は港御(香港・上海)。
| 数量販売したメモリー容量(百万 GB 相当・推定) | 価格1GB あたりの販売単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 16.0 | 1,391 | 223 | 43 |
| 10 年後 中立 | 28.0 | 760 | 213 | 19 |
取り方:開示は金額だけで容量は無い。販売容量を年 1,600 万 GB と推定し、売上 222.6 億円を割って 1GB あたり約 1.39 千円(約 9 ドル)と置いた。産業用は大手の汎用品より値が高い。数量は実質の容量で、物価の分は価格に入れる。この単価は 2025 年後半からの契約価格の連続上昇を受けた水準で、10 年先は市況の反転と 1GB あたりの製造原価の低下で今の 5 割台まで戻るとみる。物価 3% を上回る値下がりを置く理由はこれ。
デジタルエンジニアリング(ROM書込み・開発受託)
機器へのプログラム書込み受託、書込み装置の開発・販売、函館のエクスプローラによる産業・医療機器の設計製造受託。
| 数量受託の処理量(百万個相当・推定) | 価格1 個相当あたりの受託単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 36 | 36 | 5 |
| 10 年後 中立 | 130 | 48 | 62 | 8 |
取り方:開示は金額だけ。書込みの個数、装置の販売、設計製造受託を 1 個相当の処理量にならして年 1 億個相当と推定し、売上 35.7 億円を処理量で割って受託単価とした。書込み能力は 2024 年の新社屋で約 3.6 倍に増えたが、稼働は受注で決まる。物価の分は価格に入れる。
ICTプロダクツ(会議システム・PC周辺)
プリンストンが会議システム、PC 周辺機器、スマホ用品を売り、自社通販も運営する。
| 数量販売点数(万点・推定) | 価格1 点あたりの販売単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 116 | 8,036 | 93 | 5 |
| 10 年後 中立 | 120 | 10,768 | 129 | 7 |
取り方:開示は金額だけ。会議システムの高単価品とアクセサリの低単価品が混ざるので、平均単価を約 8 千円と置き、売上 93.2 億円から販売点数を年 116 万点と推定した。数量は実質の点数、物価の分は価格に入れる。
エレクトリカルマテリアルズ(電線商社)
2026 年 4 月に子会社になった富士電工。電線・ケーブル・電子部品・電材を扱い、古河電工の特約店。
| 数量電線・電材の販売量(銅換算の千トン・推定) | 価格1 トンあたりの販売単価(万円・名目、銅価格を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 300 | 90 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 402 | 121 | 2 |
取り方:連結は 2027 年 3 月期から。参考に前期の年商(報道で 83 億円、会社の紹介で 102 億円)の間を取って 90 億円と置き、銅換算 3 千トン、1 トンあたり 300 万円と推定した。利益率は報道の営業利益 1.2 億円(2025 年 3 月期)から 1.5%。
デジタルマーケティング(広告・制作・音楽)
日本ジョイントソリューションズ、ダイキサウンド、ブレーン、インテグなど。Web・動画の制作、広告、音楽関連サービス、端末販売。
| 数量稼働する人員(人・推定) | 価格1 人あたりの売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 150 | 2,400 | 36 | 1 |
| 10 年後 中立 | 105 | 3,216 | 34 | 1 |
取り方:2027 年 3 月期の新セグメントで、2026 年 3 月期の「その他」21 億円にブレーンの通期分などを足した参考値 36 億円。グループ会社の人員を約 150 人と推定した。1 人あたりの売上が大きいのは、端末の販売と広告媒体の取次を含むため。人月で稼ぐ制作は生成 AI に置き換わる側にあり、10 年先の人員は減らして置く。
リスクと懸念
メモリー価格の反転と在庫の評価損
棚卸資産は約124億円で、前の期の3倍に膨らんだ。仕入れ値が下がる局面では、売値が下がるのに在庫は高値のまま残る。価格が1〜2割下がるだけで、評価損は十数億円に達しうる。利益の源である価格上昇が、そのまま損失の源になる。
借入の増加と薄い自己資本
自己資本比率は25%と、中期計画の目標30%を下回る。短期借入金は1年で約66億円増えた。借り換えの金利が上がれば、利益の1割以上が利息に消えうる。取引銀行の姿勢が変われば、運転資金に支障が出る。
仕入先と規格への依存
メモリーは大手数社の割当に左右される。AI向けに製造能力が回って、汎用品が絞られた今は売り手市場だが、供給が緩めば価格を決める力は仕入先に戻る。DDR4の終わりで、古い規格の優位が消える可能性もある。
顧客の集中
アドテックとエプソンダイレクトの2社だけで売上の2割を超える。前の期にはダイワボウ情報システムが最大の顧客だった。1社が仕入れ先を切り替えるだけで、デジタルデバイスの数量が数割動く。
M&Aと内部管理
グループは13社になり、メモリー、書込み、会議システム、電線、広告、音楽が並ぶ。ブレーンは取得したその期に5億円の減損を出した。買収を重ねるほどのれんが積み上がり、管理の目が行き届かなくなる危険が増す。
AIエージェントによる代替
広告・Web・動画の制作と運用は、人の時間で売る仕事だ。生成AIとAIエージェントが工程を置き換えれば、デジタルマーケティングの数量は減る。会議システムや周辺機器の販売でも、直販とネット通販への移行が価格を押し下げる。
今後の分かれ目
- メモリーの契約価格が2四半期続けて下がり始めたら
- 在庫の評価損と粗利の悪化が同時に来る。やや悲観・悲観の確率を上げて見直す。
- 2027年に品薄が続き、新規に連結した事業を含めて営業利益が40億円を超えたら
- やや楽観の筋書きに近づく。ただ好況の利益は10年の価値に直結しない。在庫と借入の動きもあわせて確かめる。
- 棚卸資産が売上の伸び以上に増え続けたら
- 価格上昇への賭けが膨らんでいる印だ。反転時の損失が大きくなるので、慎重な筋書きの確率を上げる。
- 自己資本比率が30%を回復し、借入が減り始めたら
- 財務の傷が浅くなり、悲観の確率を下げる余地が出る。
- 電線商社の富士電工が営業利益率2%を超えたら
- M&Aが利益を足す形になる。買収の目利きへの見方を上げる。
- 総還元性向30%を実際に守る年が続いたら
- 運転資金に埋もれていた利益が株主に回る。還元の見込みを上げる。
見ておくもの
- DRAM・NANDの契約価格(TrendForceなどの四半期予測)
- 棚卸資産と短期借入金の残高、自己資本比率
- デジタルデバイスの営業利益率と粗利益率の推移
- アドテック・エプソンダイレクトなど主要顧客への売上の比率
- 富士電工・ブレーンなど新規連結会社の損益と減損
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額と今の倍率は見ずに、デジタルデバイスはメモリーの販売容量と1GBあたりの単価に分けて積み上げた。ほかの4事業も点数・処理量・銅換算の量・人員と単価に分けた。資本コストは基本 7.5% に、循環 1.0%・値決め力 0.5%・借金 0.5% を足した 9.5%。中立の事業の ROE は 8.0% で k 以下のため、PER の上限は 1÷k の 10.5 倍とし、市況品で利益の質が低いので約 83% の 8.7 倍に置いた。楽観は ROE が k を上回る式の上限の約 9 割。悲観は稼ぐ力ではなく、売れる資産の税後で床を測った。2028/03 期から新リース会計で数字の形が変わるが、事業所の賃借は小さく、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.3→16.24 倍・やや楽観 PER 10.6→14.99 倍・中立 PER 8.7→13.84 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に、メモリー市況の振れ、値段を市場に決められる商社型、在庫を支える借入の厚さを足した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 9.00%。