結論
QDレーザは、量子ドットという微小な結晶を使った半導体レーザの会社だ。2006年に富士通研究所から分かれ、売上は14億円、従業員は約50人。上場来、毎年赤字を出してきた。
筆者の結論は、割高である。技術は本物だが、時価総額853億円は、まだ注文のない量産の成功を先に払った値段だ。会社自身も、量子ドットレーザの量産は今期の計画に入れていない。
事業は3本ある。既存のレーザ部品は黒字で堅実だ。網膜投影は消費者向けから法人向けへ作り直している途中だ。本命は、データセンターの光配線に使う量子ドットレーザである。量産技術を持つのは当社とドイツのInnolumeの2社とされる。ただ、足元の光源は外付け方式が先行しており、量子ドットが選ばれる保証はない。
10年の中立は、量子ドット事業が売上100億円規模に育つ姿だ。それでも、10年後の時価総額は今の1割ほどにとどまる。今の値段を超えるのは、大成功の筋書きだけだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ここは「わかる事業」ではない。10年後に量子ドットレーザがデータセンターの標準部品になっているか。誰にも言い切れない。わからないものには、高い値を払わない。
堀は、量産できる技術という一点にしかない。量産技術を持つのが世界で2社なら、うまくいけば強い。だが、内製か別方式で崩れる確率も低くない。堀というより、細い橋に近い。
稼ぐ力はまだない。既存のレーザ部品が出す利益は小さく、全社費用に消える。量子ドットの売上が立っても、設備と研究開発に再投資が要る。株主の手元に残る「オーナー利益」が出るまでには、長い年月がかかる。
経営の資本配分については、黒字化を第一目標に置いたことを評価する。一方、2023年に示した年100万個の目標が動かなかった事実は重い。時間表を信じて先に払うことはしない。
安全域はない。純現金は24億円と、時価総額のわずか3%だ。853億円の値段が成り立つには、大成功の筋書きが現実になる必要がある。その確率は1割に満たないと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、レーザデバイスだ。2026年3月期の売上は11.7億円、営業利益は1.3億円。高出力レーザ、波長を一色に絞るDFBレーザ、小型の可視光レーザなどを、計測・加工・医療などの機器メーカーに売る。認定を受けた製品は124。顧客は分散しており、1社が止まっても揺らぎにくい。
この中に、量子ドットレーザがある。いまは研究開発向けの試作品が中心で、売上は小さい。量子ドットは熱に強く、高温でも安定して光る。AI向け半導体の周辺で、チップ間を光でつなぐ光配線の光源として狙っている。
もう1つが、旧・視覚情報デバイス事業から名前を変えたレーザ・オプティカルソリューションだ。網膜に直接映像を描く眼鏡型機器が源流で、売上は2億円、営業損失は1.4億円。消費者向けの製品は自主回収の影響で売上がほぼ消え、いまはXRグラス向けの光学ユニットの開発受託が中心になっている。
全社の営業損失は3.3億円で、2つの事業の損益より大きい。研究開発や管理の費用が、事業別の損益に入らず全社に積まれているためだ。
製造は、必要な設備だけを自社で持つ形だ。量子ドットを結晶として育てる装置(MBE)は1台が動いており、2027年6月に2台目を入れて生産能力を4倍にする計画である。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、量子ドットを量産水準で作るノウハウだ。日経クロステックは、光配線向けの量産技術を持つ企業は世界で当社とInnolumeの2社と伝えている。他社がすぐ追いつける技術ではない。
ただし、強みが利益になった実績はまだない。2023年の説明会では、光配線向けを2025〜2026年に年100万個の出荷へ育てる目標を示していた。いま量産規模の注文はなく、量産は2〜3年先と会社は説明している。時間表は何度も後ろにずれている。
顧客は、名前を出せない大手の海外半導体企業だ。1社の採用に事業の命運がかかる構図は、技術が優れていても弱い。大手が自社で内製するか、別方式を選べば、行き先は消える。
財務は厚い。自己資本比率は88%で、純現金もある。ただ、この比率は94.8%から下がった。設備のために借入を始めたからだ。営業赤字が続く間は、現金が減っていく。
経営は、新社長の大久保潔氏が2025年6月に就いた。黒字化を会社の第一目標に置く姿勢は評価できる。一方で、網膜投影のような消費者向けに先に突っ込み、作り直しになった過去もある。資本の使い方の巧みさは、まだ証明されていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
光配線は、AI向けの計算機で電力と熱を食う電気配線を、光に置き換える動きだ。チップのすぐ横に光の部品を載せるCPO(コ・パッケージド・オプティクス)が代表で、市場は2020年代の終わりから普及期に入るとみられる。調査会社の市場規模は定義により桁が違い、あてにしにくい。
光源の方式が、この会社の運命を決める。いまデータセンターで実用が進んでいるのは、レーザを外に出して温度管理された場所に置く外付け光源(ELS)だ。NVIDIAの光スイッチもこの方式をとる。外付けなら、熱への強さという量子ドットの売りは効きにくい。
量子ドットが活きるのは、光源をチップの隣に内蔵する形だ。熱の厳しい場所でも安定して光る。ここで当社の競争相手は、まずドイツのInnolumeだ。米国のQuintessentのような新興や、中国勢も開発している。
既存のレーザ部品は、中国の安価なメーカーと競る成熟市場だ。当社は大手の汎用品ではなく、特殊な波長や出力の注文品で生きており、大きくは伸びないが、急には崩れない。
網膜投影とXR向け光学は、スマートグラスが普及するかどうかに賭ける事業だ。普及の速さは読めず、市場は小さい。
資本政策と M&A
還元はない。配当も株主優待もなく、東証プライムへの移行も予定していない。会社は成長投資と還元の均衡を課題としつつ、いまは前者に使う段階だ。
資金の使い道は、量子ドットの設備だ。2027年6月に2台目のMBE装置を入れ、生産能力を4倍にする計画だ。設備の資金は借入が中心になりそうだ。資金調達は、確実な受注が見えれば問題ではなくなると会社は話した。裏を返せば、受注より先に設備を持つ賭けでもある。受注が来なければ、設備は重荷になる。
増資は2025年5月の時点で考えていないと社長が述べた。ただ、量産が立ち上がる局面では資金が足りなくなる公算が大きい。その場合、株数が増え、既存の株主の取り分は薄まる。筆者は、成功した筋書きほど増資の影響が大きいと見ている。
2026年の株主総会では、欠損の穴埋めを目的に、資本金と資本準備金を減らす議案が通った。純資産は変わらない。
買収される側になる可能性は、kabufuの推計で10年以内に15%ほどだ。ただ、売上14億円で赤字の会社を大手が買う理由は、量子ドットの技術だけだ。技術が認められた時に、買収が起きる。
点検済み(割高の見落とし点検 2026-10-19):起点は売上 14 億円で利益の山は無く、増資の希薄化は成功側の筋書きに入れ、倍率は式の下限・上限の範囲。悲観の確率は量産が来ない場合の現実性に合わせた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
量子ドットレーザは、光配線という巨大な市場で、世界に2社しか量産できない技術だ。AIの計算機は電力と熱で限界に近づいており、チップ間を光でつなぐ流れは止まらない。熱に強い量子ドットは、光源をチップの隣に置く内蔵型で、他方式より有利になる。
顧客は、名前を出せない大手の海外半導体企業だ。一部の顧客が量産目的で購入しているという説明は、試作の域を出つつある兆しだ。2台目のMBE装置で生産能力が4倍になれば、注文に応える準備は整う。
Innolumeは非上場で、資金力と販路に限界がある。当社には量子ドットを育てるノウハウと、ウエハの形で売る柔軟さがある。外付け光源の方式が熱の問題で壁に当たれば、内蔵型への流れが一気に来る。
その時の売上は、桁が変わる。年100万個という昔の目標が数年遅れで現実になり、光配線市場の1割近くを取れば、売上は数百億円に達しうる。固定費は小さいので、売上が立てば利益率は急に上がる。
既存のレーザ部品は黒字で、事業を支える土台になる。網膜投影はスマートグラスの普及で、光学ユニットの供給元として立ち上がる。小さな会社が10年で桁違いに化ける例は、半導体の歴史に少なくない。
慎重な見方
量子ドットレーザは、10年以上前から「あと数年で量産」と言われ続けてきた。2023年の説明会では、2025〜2026年に年100万個の出荷を目指すとした。いま量産の注文はなく、今期の計画にも入っていない。時間表は一度も守られていない。
足元の市場は外付け光源が先行している。NVIDIAの光スイッチも、光源を別の場所に置く。外付けなら量子ドットの熱への強さは決め手にならず、通常のレーザで足りる。LumentumやCoherentなど資本力の大きい競合が、通常の方式で値段を詰めてくる。
顧客は名前を出せない1社で、その1社が内製に動けば行き先が消える。Innolumeや米国の新興、中国勢も開発を進めている。
財務の体力も、見かけほど強くない。営業赤字が続くなか、設備のための借入で純現金は24億円まで減った。量産へ進むには多額の投資が要り、増資の可能性は高い。株数が増えれば、成功しても既存の株主の取り分は薄まる。
網膜投影は消費者向けが自主回収の影響で止まり、法人向けに作り直しの途中だ。上場来の累計赤字は大きく、営業黒字は創業以来一度もない。853億円は、これらを無視した期待の値段だ。
どちらに重みを置いたか
技術の希少さと世界2社の位置では、強気の見方に説得力がある。ただ、時間表の遅れ、量産注文の不在、外付け光源の先行、顧客1社への依存という4つの事実は、慎重な見方の方が重い。
確率は、慎重な側に寄せた。うまくいく筋書きは2割、うまくいかない筋書きは5割とした。大成功は残してあるが、起きる確率は低い。
結論として、10年の本質価値は、今の時価総額を大きく下回る。割高である。技術が否定されたのではなく、成功の確率に比べて、値段が先に進みすぎている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 663 円278 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 12 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 308 円129 億円、今との差 −84.6%、 期待の年率 −10.3%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 6,093 円2,559 億円 | 143 円60 億円 | +211.9% | +12.0% | 374 円157 億円 |
| やや楽観 | 14% | 1,252 円526 億円 | 24 円10 億円 | −36.2% | −4.4% | 179 円75 億円 |
| 中立 | 28% | 314 円132 億円 | 0 円0 億円 | −84.3% | −16.9% | 88 円37 億円 |
| やや悲観 | 32% | 83 円35 億円 | 0 円0 億円 | −95.9% | −27.3% | 27 円11 億円 |
| 悲観 | 20% | 36 円15 億円 | 0 円0 億円 | −98.2% | −33.0% | 7 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 663 円278 億円 | 12 円5 億円 | −66.3% | −10.3% | 674 円283 億円 |
今の株価時価総額 1,999 円840 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 6% 量子ドットが光配線の標準部品になる 利益 150 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 6,093 円2,559 億円
外付け光源が熱の壁に当たり、チップの隣に光源を置く内蔵型が主流になる。熱に強い量子ドットレーザが選ばれ、当社は名前を出せない大手の海外半導体企業を皮切りに、複数の顧客に量産品を納める。2027年6月に入れる2台目のMBE装置で能力は4倍になり、さらに設備を増やす。Innolumeとの2社体制が続くことで値崩れもしにくい。
光配線向けの売上は数百億円に達し、利益率は固定費の小ささから3割近くまで上がる。量産の資金は増資と借入で賄うが、利益が立つ時期のため株数の増加は限られる。既存のレーザ部品は堅実に伸び、網膜投影はスマートグラスの光学ユニット供給で小さな黒字になる。
それでも、10年後の時価総額は今の2倍ほどで、年率にすると資本コストに届かない。これが一番うまくいった姿だ。
- レーザデバイス(既存の高出力・DFB・可視光):数量 3,600(当社が狙う産業・計測・医療向け特殊半導体レーザの世界市場(億円・今の値段で測った実質、推定)× シェア)× 価格 0.6%(シェア × 価格指数(物価 3% で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 22 億円・営業利益 4 億円。市場 3,600 億円 × シェア 0.45%、価格は物価並み、利益率 17%
- 光配線用量子ドットレーザ:数量 9,000(シリコンフォトニクス・CPO・光配線向けのレーザ光源の世界市場(億円・今の値段で測った実質、推定)× シェア)× 価格 9.5%(シェア × 価格指数(実質の値下がりと物価 3% が相殺して 1.0 が基本))→ 売上 851 億円・営業利益 238 億円。光配線光源 9,000 億円(実質)× シェア 9%、価格は実質の下落と物価が相殺し 1.05、利益率 28%
- レーザ・オプティカルソリューション(網膜投影・XR光学):数量 1,200(網膜投影・XR グラス向けレーザ光学ユニットの市場(億円・実質、推定)× シェア)× 価格 3.4%(シェア × 価格指数(物価 3% で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 40 億円・営業利益 8 億円。XR 向け 1,200 億円 × シェア 2.5%、利益率 20%
倍率:事業の純利益 150 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍。全体の PER 17.07 倍、時価総額 2,559 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:内蔵型の光源が主流になり、当社が量産で勝つ必要がある。2023年の量産目標が動かなかった実績と、量産注文がまだない現状から、確率は低く置く。
やや楽観 14% 光配線で2桁の売上を持つ会社になる 利益 32 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 1,252 円526 億円
外付け光源が当面主流のまま、熱の厳しい一部の用途で量子ドットが採用される。当社は、いまの大手顧客に加えて数社に納め、光配線向けの売上は200億円台に乗る。量産は会社の想定より2〜3年遅れて立ち上がり、MBE装置の増設は2回目の投資まで進む。
利益率は2割ほどで、設備の償却が重いため一気には上がらない。一部の資金は増資で賄い、株数が1割ほど増える。既存のレーザ部品は小さな黒字を保ち、網膜投影は法人向けの受託で収支が合う。
配当は少額で始まる程度にとどまる。会社は、創業以来初めての黒字を過ぎ、小さくても自立した部品メーカーになる。
- レーザデバイス(既存の高出力・DFB・可視光):数量 3,450(当社が狙う産業・計測・医療向け特殊半導体レーザの世界市場(億円・今の値段で測った実質、推定)× シェア)× 価格 0.5%(シェア × 価格指数(物価 3% で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 19 億円・営業利益 3 億円。市場 3,450 億円 × シェア 0.40%、利益率 15%
- 光配線用量子ドットレーザ:数量 6,000(シリコンフォトニクス・CPO・光配線向けのレーザ光源の世界市場(億円・今の値段で測った実質、推定)× シェア)× 価格 4.0%(シェア × 価格指数(実質の値下がりと物価 3% が相殺して 1.0 が基本))→ 売上 240 億円・営業利益 53 億円。光配線光源 6,000 億円 × シェア 4%、価格 1.0、利益率 22%
- レーザ・オプティカルソリューション(網膜投影・XR光学):数量 700(網膜投影・XR グラス向けレーザ光学ユニットの市場(億円・実質、推定)× シェア)× 価格 2.7%(シェア × 価格指数(物価 3% で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 19 億円・営業利益 3 億円。XR 向け 700 億円 × シェア 2%、利益率 14%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍。全体の PER 16.33 倍、時価総額 526 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:外付け光源と内蔵型が併存し、当社は一部の内蔵型で採用される想定。量産が2〜3年遅れで始まり、そこから伸びる筋書きで、実現の確度は中程度。
中立 28% ニッチな光源として生き残る 利益 9 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 314 円132 億円
量子ドットレーザは、熱の厳しい用途と特殊な光配線で採用され、光配線向けの売上は100億円規模にとどまる。主流は外付け光源のままで、当社は大手の海外半導体企業とあと数社に納める専業部品メーカーになる。量産の立ち上がりは2030年前後だ。
利益率は1割台半ばにとどまる。顧客は少なく、値決めは顧客に握られる。設備の投資負担と研究費で、全社の利益は小さい。既存のレーザ部品は中国勢の値下げを受けつつ、特殊品で堅実に稼ぐ。網膜投影は法人向けの開発受託が中心で、ほぼ収支が合う程度だ。
配当は出せず、増資は避けられるが、借入は残る。会社は黒字になり、研究開発型のニッチ企業として落ち着く。10年後の純利益は10億円に届かない。
- レーザデバイス(既存の高出力・DFB・可視光):数量 3,300(当社が狙う産業・計測・医療向け特殊半導体レーザの世界市場(億円・今の値段で測った実質、推定)× シェア)× 価格 0.5%(シェア × 価格指数(物価 3% で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。市場 3,300 億円 × シェア 0.38%、利益率 13%
- 光配線用量子ドットレーザ:数量 4,000(シリコンフォトニクス・CPO・光配線向けのレーザ光源の世界市場(億円・今の値段で測った実質、推定)× シェア)× 価格 2.5%(シェア × 価格指数(実質の値下がりと物価 3% が相殺して 1.0 が基本))→ 売上 100 億円・営業利益 16 億円。光配線光源 4,000 億円 × シェア 2.5%、価格 1.0、利益率 16%
- レーザ・オプティカルソリューション(網膜投影・XR光学):数量 400(網膜投影・XR グラス向けレーザ光学ユニットの市場(億円・実質、推定)× シェア)× 価格 2.0%(シェア × 価格指数(物価 3% で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。XR 向け 400 億円 × シェア 1.5%、利益率 8%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.35 倍、時価総額 132 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:量子ドットが採用される用途はあるが、光配線の主流にはならない。技術の希少さと、時間表の遅れ・顧客の少なさを合わせた中心の想定。
やや悲観 32% 量産が来ず、既存事業だけが残る 利益 −2 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 83 円35 億円
光配線の量産は、期待したほど立ち上がらない。顧客の大手半導体企業は、内製か別方式に動き、当社への注文は研究開発向けの小口にとどまる。MBE装置の2台目は入れたが、稼働率は低い。借入の利払いと償却が、利益を削る。
既存のレーザ部品は、中国勢の値下げで価格が思うように上がらず、利益は薄い。網膜投影は法人向けの開発受託が細り、赤字が続く。会社は黒字になれないまま、現金を少しずつ使う。
増資で株数が増える一方、技術への評価は下がる。純資産は、減損を見込んだうえで、いまの半分ほどに目減りする。事業の稼ぐ力はなく、持つ資産の価値が値段の下限になる。
- レーザデバイス(既存の高出力・DFB・可視光):数量 3,000(当社が狙う産業・計測・医療向け特殊半導体レーザの世界市場(億円・今の値段で測った実質、推定)× シェア)× 価格 0.4%(シェア × 価格指数(物価 3% で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。市場 3,000 億円 × シェア 0.30%、中国勢の値下げで価格 1.2、利益率 8%
- 光配線用量子ドットレーザ:数量 2,500(シリコンフォトニクス・CPO・光配線向けのレーザ光源の世界市場(億円・今の値段で測った実質、推定)× シェア)× 価格 1.1%(シェア × 価格指数(実質の値下がりと物価 3% が相殺して 1.0 が基本))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。光配線光源 2,500 億円 × シェア 1.2%、価格 0.9、利益率 6%
- レーザ・オプティカルソリューション(網膜投影・XR光学):数量 200(網膜投影・XR グラス向けレーザ光学ユニットの市場(億円・実質、推定)× シェア)× 価格 1.8%(シェア × 価格指数(物価 3% で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。XR 向け 200 億円 × シェア 1.5%、赤字
倍率:赤字なので稼ぐ力では測れない。今の自己資本49億円に近い、純現金と設備・在庫・知的財産の売却で見込める価値35億円(税引き後)の0.71倍を床に置いた。稼ぐ力は負で、これを超える根拠はない。
確率:量産の注文が来ないまま、赤字が続く筋書き。2023年の目標の未達、今期計画に量産が入っていない事実、外付け光源の先行から、最も起きやすい姿の1つとして厚く置く。
悲観 20% 量産に失敗し、増資を繰り返して縮む 利益 −5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 36 円15 億円
大手顧客が量子ドットを使わない決定を下す。外付け光源とInnolumeの量産、中国勢の安い光源の三方から攻められ、当社は光配線の量産にたどり着けない。MBE装置の2台目の借入が重荷になり、現金は尽きかける。
増資で延命するが、株数が大きく増え、既存の株主の取り分は大きく薄まる。研究開発を絞り、人員も減らす。既存のレーザ部品は黒字を保てず、網膜投影は撤退に近い形になる。
会社は、量子ドットの技術が評価されても、事業としては続かない。他社への身売りや、特殊品の小さな専業への縮小が現実的な行き先で、残る価値は設備と技術の売却額だけだ。
- レーザデバイス(既存の高出力・DFB・可視光):数量 2,700(当社が狙う産業・計測・医療向け特殊半導体レーザの世界市場(億円・今の値段で測った実質、推定)× シェア)× 価格 0.3%(シェア × 価格指数(物価 3% で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。市場 2,700 億円 × シェア 0.25%、価格 1.1、利益ゼロ
- 光配線用量子ドットレーザ:数量 1,500(シリコンフォトニクス・CPO・光配線向けのレーザ光源の世界市場(億円・今の値段で測った実質、推定)× シェア)× 価格 0.2%(シェア × 価格指数(実質の値下がりと物価 3% が相殺して 1.0 が基本))→ 売上 3 億円・営業利益 −1 億円。光配線光源 1,500 億円 × シェア 0.3%、価格 0.75、赤字
- レーザ・オプティカルソリューション(網膜投影・XR光学):数量 100(網膜投影・XR グラス向けレーザ光学ユニットの市場(億円・実質、推定)× シェア)× 価格 1.1%(シェア × 価格指数(物価 3% で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 1 億円・営業利益 −1 億円。XR 向け 100 億円 × シェア 1%、赤字
倍率:営業損失が続き、稼ぐ力では測れない。純現金のうち使い残した分と、MBE装置・試作設備の売却で見込める15億円(税引き後)だけを床とし、今の自己資本49億円の0.31倍に置いた。やや悲観の床(35億円)より低い。
確率:大手顧客が内製か別方式に移り、量子ドットが選ばれず、設備の借入だけが残る複合の筋書き。10年の間に資金が尽きかけて縮小する確率として、2割を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
レーザデバイス(既存の高出力・DFB・可視光)
計測・加工・医療機器向けの高出力レーザ、波長を絞ったDFBレーザ、小型の可視光レーザを、認定を受けた製品として売る事業。
| 数量当社が狙う産業・計測・医療向け特殊半導体レーザの世界市場(億円・今の値段で測った実質、推定)× シェア | 価格シェア × 価格指数(物価 3% で 10 年 1.34 倍が基本) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 0.3% | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3,300 | 0.5% | 17 | 2 |
取り方:レーザデバイス事業の売上 11.73 億円から、光配線向け量子ドットレーザの試作売上(推定 1.5 億円)を除いた 10.2 億円。市場は産業・計測・医療向けの特殊半導体レーザのうち当社が狙う高出力・DFB・可視光の領域を 3,000 億円(実質、推定)とし、シェアは 0.34%。事業全体の営業利益 1.28 億円は、量子ドットの利益が別に開示されないためここに含める。
光配線用量子ドットレーザ
データセンターの光配線(シリコンフォトニクス・CPO)の光源に使う量子ドットレーザ。いまは研究開発向けの試作が中心。
| 数量シリコンフォトニクス・CPO・光配線向けのレーザ光源の世界市場(億円・今の値段で測った実質、推定)× シェア | 価格シェア × 価格指数(実質の値下がりと物価 3% が相殺して 1.0 が基本) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,200 | 0.1% | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 4,000 | 2.5% | 100 | 16 |
取り方:開示がないため推定。光配線向けレーザ光源の世界市場を、通信用レーザ全体のうちシリコンフォトニクス向けの連続光源として 1,200 億円(実質、推定)とした。当社の量子ドットの売上は研究開発向けで、レーザデバイス事業の 11.73 億円のうち 1.5 億円と推定、シェアは 0.125%。量産規模の注文はまだない。損益は別に開示されないので 0 とし、研究費は全社費用(adjust)に入っている。
レーザ・オプティカルソリューション(網膜投影・XR光学)
旧・視覚情報デバイス事業。網膜に直接映像を描く機器と、XRグラス向け光学ユニットの開発受託。
| 数量網膜投影・XR グラス向けレーザ光学ユニットの市場(億円・実質、推定)× シェア | 価格シェア × 価格指数(物価 3% で 10 年 1.34 倍が基本) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 2.0% | 2 | −1 |
| 10 年後 中立 | 400 | 2.0% | 8 | 1 |
取り方:売上 1.99 億円・営業損失 1.35 億円は決算説明のとおり。消費者向けは自主回収の影響で売上がほぼ消え、開発受託が中心。市場は網膜投影とXRグラス向けの光学ユニット・受託開発を 100 億円(実質、推定)とし、シェアは 2%。
リスクと懸念
量産の時間表が守られない
2023年の説明会で、光配線向けを2025〜2026年に年100万個出荷すると示したが、量産規模の注文はまだない。会社も量産は2〜3年先と述べ、今期の計画には入れていない。遅れが続けば、設備と研究費の負担だけが先に膨らむ。
光源の方式が量子ドットを選ばない
データセンターで実用が進むのは、光源を外に出す外付け方式だ。この方式では、熱に強いという量子ドットの売りが決め手にならない。チップの隣に光源を置く内蔵型が主流にならなければ、量子ドットの出番は小さいままだ。
顧客が1社に偏る
量子ドットの主な顧客は、名前を出せない大手の海外半導体企業だ。その1社が自社で作る、または別の方式を選べば、事業の行き先が消える。採用の決定権は顧客が握っている。
増資による株数の増加
量産に向けて設備投資が膨らめば、借入だけでは足りず増資が要る可能性が高い。社長は2025年5月に増資を考えていないと述べたが、量産が立ち上がる局面では状況が変わりうる。株数が増えれば、既存の株主の取り分は薄まる。
資金の減少と借入
営業赤字は続き、純現金は24億円まで減った。2027年6月に入れる2台目のMBE装置は借入の負担を増やす。会社が黒字化の計画どおりに進まない場合、財務の余裕は見かけより早く失われる。
競合と中国勢
量子ドットレーザの量産技術はInnolumeとの2社とされるが、米国のQuintessentのような新興や中国勢も開発している。既存のレーザ部品も、中国の安価なメーカーと競る成熟市場で、値下げの圧力が続く。
網膜投影の収益化が難しい
消費者向けの網膜投影機器は自主回収の影響で売上がほぼ消え、法人向けの開発受託に作り直している。スマートグラスの普及時期が読めず、赤字が長引く可能性がある。
今後の分かれ目
- 量子ドットレーザの量産注文が、金額と数量つきで開示されたら
- 光配線の量産が立ち上がる確度が上がる。楽観・やや楽観の確率を引き上げ、悲観の確率を下げる。
- 大手顧客が量子ドットの採用見送りや内製を示したら
- 量子ドット事業の価値はほぼ消える。やや悲観・悲観に重みを移し、設備の借入負担を見直す。
- データセンターの主流が、光源を外に出す方式のまま固まったら
- 量子ドットの出番が小さくなる。中立の売上を100億円から下げ、確率を慎重な側に寄せる。
- 増資や新株予約権の発行が発表されたら
- 株数の増加分を値段に織り込み、既存の株主の取り分の減少を筋書きに反映する。
- 2027年3月期に創業以来初の営業黒字を達成し、2台目のMBE装置が予定どおり稼働したら
- 既存のレーザ部品の安定性は確認できる。ただし量子ドットの量産には別の証拠が要るので、確率の大幅な引き上げはしない。
- 大手の光部品メーカーが、当社への出資や買収を示したら
- 技術が認められた証拠になる。買収価格が本質価値を上回る可能性を、筋書きの上振れとして考える。
見ておくもの
- 量子ドットレーザの量産注文(金額・数量)の開示
- 2台目のMBE装置の稼働時期と稼働率
- 光配線の主流が外付け光源か内蔵型か(NVIDIAなど大手の設計)
- 2027年3月期の営業利益(会社計画は3百万円の黒字)
- 増資・借入・新株予約権の発行
- 次期中期経営計画の目標数値
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額853億円から逆算せず、3つの事業を市場規模×シェア×価格で積み上げた。光配線向けの市場は定義により桁が違う調査しかないので、推定であることを各所に書いた。倍率は、事業のROEと資本コスト8.25%から式で出し、顧客が少なく値決め力が弱い点を上限の7〜9割に反映した。悲観は稼ぐ力が負なので、純現金と設備の売却額の税引き後を床とし、過去のPBRの底からは置いていない。純現金24億円は時価総額の約3%で、赤字と設備投資に使う現金なので、余った現金として分けていない。リースは主要な論点でない。結論の割高は、今の株価が量子ドットの大成功を前提にしていることから出たもので、今の株価に寄せて筋書きを作ってはいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.56→17.07 倍・やや楽観 PER 11.12→16.33 倍・中立 PER 10.26→14.35 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。