結論
デンヨーは、工事現場や災害時に使う可搬形・非常用の発電機と溶接機の専業メーカーだ。国内の可搬形では首位を争う。売上の約8割が発電機で、約4割は米国などの海外が占める。
筆者の結論は「やや割高」だ。事業は堅い。だが資本が厚すぎて、自己資本利益率(ROE)が10年を通して資本コストにわずかに届かない。この会社の値打ちを分けるのは成長ではなく、余った資本をどこまで株主に返すかだ。
追い風は2つある。国内では、データセンターと防災で非常用電源の需要が伸びる。そして物言う株主が筆頭株主に座り、配当は大きく引き上げられた。売上は10年で1,000億円を超え、営業利益は110億円前後まで伸びると筆者は見る。
向かい風は、米国のレンタル需要に左右される海外事業と、資金力のある競合のヤンマーだ。大容量の非常用機には、そもそも参入していない。電池や水素への転換で、ディーゼル発電機の出番が縮むリスクもある。
純現金が時価総額の2割を超える点は評価できる。ただ、その現金は工場投資と運転資金に回る。余りの分だけを足しても、今の値段は本質価値を1割半ほど上回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず問うのは「10年後も同じ事業を続けているか」だ。発電機は電力網が止まる限り必要な機械で、事業は続く。ただ、電池やインバータへの置き換えが進めば、エンジン式は一部の用途から退く。確信は中程度にとどまる。
次に、オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益を見る。工場、在庫、保守網にお金がかかり、稼いだ利益のうち自由に使えるのは6〜7割にすぎない。しかもROEが資本コストを下回るので、ためた利益は額面未満の価値しかない。
経営の資本配分は、改善の途上だ。過去は現金と政策保有株を積み上げ、株主に返す力が弱かった。今は還元を厚くし、保有株を減らす方向に変わった。この変化が本物なら、評価は上がる。
安全域は薄い。本質価値は今の時価総額を1割余り下回り、純現金がその差の一部を埋めるにとどまる。良い会社を適正な値段で買うのは悪くない。だがそれは、安く買える値段ではない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、エンジンで電気をつくる機械の製造と、その保守だ。主力は可搬形発電機で、建設現場の電動工具、イベント、停電時の応急電源に使われる。2026年3月期の売上722億円のうち、発電機が約595億円、溶接機が約49億円を占める。残りはコンプレッサ、部品、保守だ。
顧客は大きく3つに分かれる。国内の工事会社とレンタル会社、官公庁や病院などの非常用電源、そして米国のレンタル会社だ。米国は売上の3割強を占め、現地法人を通じて大手に売る。アジア・中近東は販売店経由の小口取引が中心になる。
防災用の定置形発電機は、子会社のニシハツが担う。消防法の基準を満たす機器が要り、新規参入はしにくい。中期計画で新本社工場を建て、生産能力を引き上げている。
断っておくと、事業ごとの売上は開示が粗い。国内発電機・海外発電機・溶接機とコンプレッサ・保守その他の4つに分け、中計の地域別・製品別の目標から按分した推定値を使う。
保守は売った台数が積み上がるほど厚くなる。壊れた機械の部品と修理は値段が決まりにくく、利益率が高い。東日本と西日本に大型修理拠点を置き、売った後の稼ぎを伸ばす構えだ。
優良さと弱いところ
筆者が評価するのは、現場で使われ続けてきた信頼と、自前の工場を持つ作り手としての安定だ。国内の可搬形発電機は首位を争い、溶接機でも長年の顧客を持つ。売上は10年で4割近く伸びながら、営業利益率は7〜10%台を保った。台数を追って値引きしていない証拠だ。
一方で、堀、つまり他社がまねできない強みは強くない。発電機はエンジンを調達して組む製品で、技術の差はつきにくい。入札や大手レンタル会社との取引では、値段を市場に決められる。国内の非常用ではヤンマーが4割ほどを握り、デンヨーは2割で2位にとどまる。
資本効率は弱みだ。自己資本比率は約78%、純現金は約190億円もある。ROEは過去10年の中央値で6.2%だ。利益を稼いでも、使い道のない資本が膨らんで、率が上がらない。余った資本を寝かせてきた経営の癖が、価値を削ってきた。
ガバナンスは変わりつつある。上場の政策保有株は28銘柄あり、中計で3銘柄以上減らすと明言した。物言う株主のファンドが10%超を持つ。経営への規律は強まるが、資本配分が実際に変わるかは、これからの数字で確かめるしかない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の発電機の需要は、人口でなく防災と電力インフラが決める。大きな災害のたびに、自治体や病院の備蓄が増える。データセンターの新増設も、非常用電源を押し上げる。ヤンマーは、2030年度の国内データセンター向け電力需要が2025年度の約9倍に膨らむと見て、北九州に大容量機の新工場を建てる。
ただ、デンヨーの主戦場は中小型の可搬形と防災用だ。2,000キロボルトアンペア級の大容量機は、三菱重工エンジン&ターボチャージャ、ヤンマー、川崎重工の領域で、デンヨーは入っていない。データセンター特需の恩恵は限られる、というのが筆者の読みだ。
海外では、米国のレンタル会社向けが最大の需要になる。建設投資が伸びる局面では、発電機の買い替えも進む。逆に、レンタル会社が在庫を絞る年は、注文がまとめて止まる。競合は、ジェネラックやアトラスコプコなど多い。
長い目で見れば、発電方式の転換が最大の不確実性だ。会社は水素混焼機、燃料電池電源車、バッテリ溶接機を挑戦分野に置く。ただ、脱炭素製品の売上は計画で30億円と、まだ全体の4%だ。この比率が上がらないまま電池式が現場に広がれば、ディーゼル機の寿命は縮む。
資本政策と M&A
資本政策は、いま大きく動いている最中だ。2024年5月の中計で、総還元性向40%を目安とし、累進配当を続けると明言した。2026年7月には年間の配当予想を大きく引き上げている。自社株買いも毎年のように実施し、2026年3月期の還元は約29億円と、純利益の半分を超えた。
背景には、PBR1倍割れと物言う株主の存在がある。ファンドが10%超を保有し、信託口、久栄が続く。株主構成は、資本効率の改善を迫る形だ。
投資の側では、中計3年間で設備投資150億円、M&A枠50億円、研究開発30億円を見込む。M&A枠は行き先が決まっていない。筆者は、買収が価値を生む前提では見ていない。
政策保有株の縮減で回す資金は15億円と小さいが、方針そのものは評価できる。TOBの可能性は、時価総額が800億円規模で買い手が現れやすい大きさだ。ただ確かな話は見当たらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内の非常用発電機は、データセンターと防災で構造的に伸びる。ヤンマーが大容量機の新工場を建てるほどの需要がある。デンヨーも、防災用のニシハツが新工場で能力を3〜4割引き上げる。国内2位のシェア2割を、3割近くまで引き上げる余地はある。
米国では、建設とデータセンターの工事に伴うレンタル需要が戻り、2026年4〜6月期の経常利益は8割増となった。会社は海外生産能力を3割引き上げ、アジア・中近東と米国でシェアを積む。保守の収益は、売った台数に比例して厚みを増す。
資本の側では、物言う株主が入り、配当は大きく引き上げられた。政策保有株の縮減と自社株買いが続けば、ROEは8〜9%に上がる。会社の長期目標は、2035年に売上1,000億円、経常利益120億円だ。達成すれば本質価値は大きく上がり、今の値段は割安になる。
水素混焼機や燃料電池電源車が自治体や大手の工事会社に採用されれば、脱炭素でも先行できる。先行者の立場は、値段を市場に決められる弱みを和らげる。
慎重な見方
利益率の天井は低い。売上が10年で4割近く伸びても、営業利益率は10%前後で頭打ちだった。ROEは6%台で、資本コストを下回り続けている。成長しても資本が膨らむだけでは、株主の価値は増えない。
データセンター特需は大容量機の話で、デンヨーの主戦場ではない。首位のヤンマーが、資金力で新工場を建てれば、中小型の領域にも手を伸ばしてくる。米国のレンタル向けは、在庫調整の年に注文が止まり、中国や韓国の安価な発電機とも競う。
長期の寿命にも疑いがある。電池式の発電機と電動工具の普及は、ディーゼル発電機の出番を減らす。脱炭素製品の売上は計画で30億円と、売上の4%にすぎない。M&A枠の50億円は行き先が決まっておらず、資本を無駄にする危うさが残る。
加えて、物言う株主はいつか売って去る。配当の引き上げが、株価を押し上げるための一時の対応にすぎないなら、翌年からまた資本は積み上がっていく。過去には純現金が100億円台から200億円近くまで膨らんだ年月がある。
どちらに重みを置いたか
強いのは慎重な見方だ。国内の防災需要は確かに追い風だが、利益率の天井とROEの低さは過去10年のデータが示している。還元の強化は価値を上げるが、10年先まで続く保証は、まだ配当方針の言葉にとどまる。
確率は、中立に36%を置き、やや悲観を23%、悲観を12%と厚めにした。楽観は9%にとどめた。悲観に厚みを持たせたのは、電池への転換と米国の需要変動という構造の不確実さが、同領域の内需型の会社より大きいからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,935 円1,188 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,910 円382 億円)。 今の値に割り戻すと 4,379 円877 億円、今との差 +15.8%、 期待の年率 +7.6%(資本コスト 7.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 10,577 円2,118 億円 | 2,433 円487 億円 | +244.2% | +13.2% | 1,171 円234 億円 |
| やや楽観 | 20% | 8,507 円1,703 億円 | 2,173 円435 億円 | +182.5% | +10.9% | 2,136 円428 億円 |
| 中立 | 36% | 6,618 円1,325 億円 | 1,923 円385 億円 | +125.9% | +8.5% | 3,075 円616 億円 |
| やや悲観 | 23% | 3,134 円627 億円 | 1,723 円345 億円 | +28.5% | +2.5% | 1,117 円224 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,487 円298 億円 | 1,399 円280 億円 | −23.7% | −2.7% | 346 円69 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,935 円1,188 億円 | 1,910 円382 億円 | +107.5% | +7.6% | 7,845 円1,571 億円 |
今の株価時価総額 3,780 円757 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 9% 楽観:非常用の追い風と米国の回復が重なる 利益 117 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 10,577 円2,118 億円
国内では、防災の見直しとデータセンターの新設が重なり、中小型の非常用機の需要が市場全体で2割伸びる。ニシハツの新工場が立ち上がり、国内シェアは21〜22%に上がる。ヤンマーの大容量機とはすみ分けられる。
米国はレンタル会社の購入が戻り、海外の生産能力を3割引き上げた分が回る。アジア・中近東の販売店網も定着し、海外の売上は10年で1.9倍に伸びる。
ニシハツと福井工場の増強も、需要を取りこぼさない形で効く。保守は、売った台数の積み上げで厚くなり、営業利益率が18%に近づく。バッテリ溶接機と水素混焼機も小さく売れ始める。配当と自社株買いは続き、物言う株主の求める水準が定着する。
- 国内発電機(可搬形・防災用・非常用):数量 387(国内の中小型発電機の市場(約 1,500 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 138(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 534 億円・営業利益 85 億円。価格の指数 138(今 100)、営業利益率 16.0%
- 海外発電機(米国・アジア・中近東):数量 428(海外の中小型可搬形発電機の市場(約 7,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 138(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 590 億円・営業利益 56 億円。価格の指数 138(今 100)、営業利益率 9.5%
- 溶接機・コンプレッサ:数量 56.0(国内の可搬形溶接機・コンプレッサの市場(約 1,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 136(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 76 億円・営業利益 6 億円。価格の指数 136(今 100)、営業利益率 7.5%
- 保守・部品・その他:数量 88.4(自社機を含む対象の保守・部品市場(約 700 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 138(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 122 億円・営業利益 22 億円。価格の指数 138(今 100)、営業利益率 18.0%
倍率:事業の純利益 116 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 17 倍、時価総額 2,058 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:データセンターと防災の追い風、米国の回復、還元強化が全部そろう筋書き。中計の 2035 年目標を超える水準で、物言う株主の圧力が続くことも前提なので 1 割に届かない確率。
やや楽観 20% やや楽観:中計どおりに成長する 利益 98 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 8,507 円1,703 億円
会社が掲げる長期の姿に近づく。国内の防災・非常用が着実に伸び、シェアは21%に上がる。米国のレンタル向けは、建設投資の波を受けながらも、平均で見れば中計の計画どおりに伸びる。
海外の発電機は、販売店網の拡充とアジア・中近東の開拓で1.3倍の数量に増える。国内ではニシハツの新工場が稼働し、防災用の供給が追いつく。営業利益率は為替と関税の波に削られつつ、8%台で安定する。
還元は総還元性向で5割台が定着し、自己資本の積み上がりを抑える。売上は1,200億円、営業利益は130億円台に届くが、資本が大きいためROEは8%台にとどまる。
- 国内発電機(可搬形・防災用・非常用):数量 361(国内の中小型発電機の市場(約 1,500 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 136(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 491 億円・営業利益 74 億円。価格の指数 136(今 100)、営業利益率 15.0%
- 海外発電機(米国・アジア・中近東):数量 384(海外の中小型可搬形発電機の市場(約 7,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 136(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 522 億円・営業利益 44 億円。価格の指数 136(今 100)、営業利益率 8.5%
- 溶接機・コンプレッサ:数量 54.0(国内の可搬形溶接機・コンプレッサの市場(約 1,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 135(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 73 億円・営業利益 5 億円。価格の指数 135(今 100)、営業利益率 7.0%
- 保守・部品・その他:数量 83.0(自社機を含む対象の保守・部品市場(約 700 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 136(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 113 億円・営業利益 19 億円。価格の指数 136(今 100)、営業利益率 17.0%
倍率:事業の純利益 97 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 16.02 倍、時価総額 1,640 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中計と長期目標(2035 年に売上 1,000 億円)が、ほぼ実現する筋書き。国内の需要は堅く、実現の見込みは 2 割。
中立 36% 中立:堅実に伸びるが資本の重さは残る 利益 80 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 6,618 円1,325 億円
国内は人口が減るので、市場は実質で1割ほどしか伸びない。それでも防災の備蓄、老朽化した発電機の更新、データセンターの付帯需要が支え、シェアは今の20%を保つ。米国と新興国では数量が2割弱増える。
値段は物価並みの1.34倍になる。レンタル会社や入札の相手に値段を押されるため、値上げが利益率の上昇にはつながらず、利益率は今と同じ水準にとどまる。営業利益は110億円前後、純利益は80億円前後になる。
還元は純利益の5割台を続けるが、工場投資と運転資金で自己資本はなお膨らみ、ROEは7%台前半にとどまる。強みの保守は厚くなるが、事業全体の伸びは物価と同程度に収まる。
- 国内発電機(可搬形・防災用・非常用):数量 330(国内の中小型発電機の市場(約 1,500 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 134(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 442 億円・営業利益 62 億円。価格の指数 134(今 100)、営業利益率 14.0%
- 海外発電機(米国・アジア・中近東):数量 348(海外の中小型可搬形発電機の市場(約 7,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 134(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 466 億円・営業利益 35 億円。価格の指数 134(今 100)、営業利益率 7.5%
- 溶接機・コンプレッサ:数量 53.0(国内の可搬形溶接機・コンプレッサの市場(約 1,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 134(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 71 億円・営業利益 5 億円。価格の指数 134(今 100)、営業利益率 6.5%
- 保守・部品・その他:数量 78.2(自社機を含む対象の保守・部品市場(約 700 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 134(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 105 億円・営業利益 17 億円。価格の指数 134(今 100)、営業利益率 16.5%
倍率:事業の純利益 79 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 14.83 倍、時価総額 1,258 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内は人口減を防災と更新で相殺し、米国はレンタル需要の山谷を平均して成長する。会社目標をやや下回る筋書きで、最も確率が高い。
やや悲観 23% やや悲観:国内シェアが削られ、米国は低迷 利益 55 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 3,134 円627 億円
国内の市場は伸びず、ヤンマーなど競合の値引きで、シェアは19%台に下がる。価格転嫁が物価に追いつかず、値段は10年で1.3倍に届かない。
米国は、関税とレンタル会社の購入抑制が重なり、数量が伸びない。海外の営業利益率は5%台に落ちる。電池式の溶接機と投光機が現場に広がり始め、溶接機の数量は減る。保守や部品の稼ぎだけが、かろうじて利益を支える。
営業利益は77億円と、今の水準に近いまま10年が過ぎる。還元は6割に上げるが、利益が伸びず、ROEは5%台に沈む。資本を持ちすぎた会社の姿が、そのまま続く。
- 国内発電機(可搬形・防災用・非常用):数量 293(国内の中小型発電機の市場(約 1,500 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 130(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 380 億円・営業利益 46 億円。価格の指数 130(今 100)、営業利益率 12.0%
- 海外発電機(米国・アジア・中近東):数量 295(海外の中小型可搬形発電機の市場(約 7,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 128(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 378 億円・営業利益 21 億円。価格の指数 128(今 100)、営業利益率 5.5%
- 溶接機・コンプレッサ:数量 50.0(国内の可搬形溶接機・コンプレッサの市場(約 1,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 128(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 64 億円・営業利益 3 億円。価格の指数 128(今 100)、営業利益率 5.0%
- 保守・部品・その他:数量 73.4(自社機を含む対象の保守・部品市場(約 700 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 130(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 95 億円・営業利益 13 億円。価格の指数 130(今 100)、営業利益率 14.0%
倍率:ROE 5% 台は資本コスト 7% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k=12.9 倍が上限)の約 7 割 8.8 倍を置いた。シェアを削られ続ける会社で、堀もない。
確率:国内のシェアがヤンマーなどに削られ、米国のレンタル向けが在庫調整と関税で低迷する。ROE が 5% 台に沈む。過去 10 年の営業利益率の低い期(6〜8%)が長く続く場合に相当し、確率を厚めに置く。
悲観 12% 悲観:電池への転換と価格競争で構造的に負ける 利益 20 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,487 円298 億円
電池式の発電機とインバータ発電機が現場の主役になり、中小型のディーゼル発電機の出番が減る。国内のシェアは16%まで下がり、市場も縮む。
米国は、中国・韓国の安価な機種に価格で押され、レンタル会社の大型契約を失う。海外の数量は2割減り、営業利益率は2%まで落ちる。水素や燃料電池の製品は、採算が取れないまま開発費だけを食う。
M&A枠で買った事業も当てが外れ、減損が出る。営業利益は30億円を切り、純利益は20億円にとどまる。配当は維持しようとするが、積み上げた現金が還元を支える形になる。物言う株主は持ち株を手放し、経営への圧力は消えて、資本の使い方が昔に戻る。
- 国内発電機(可搬形・防災用・非常用):数量 216(国内の中小型発電機の市場(約 1,500 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 120(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 259 億円・営業利益 18 億円。価格の指数 120(今 100)、営業利益率 7.0%
- 海外発電機(米国・アジア・中近東):数量 236(海外の中小型可搬形発電機の市場(約 7,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 115(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 271 億円・営業利益 5 億円。価格の指数 115(今 100)、営業利益率 2.0%
- 溶接機・コンプレッサ:数量 45.0(国内の可搬形溶接機・コンプレッサの市場(約 1,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 115(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 52 億円・営業利益 2 億円。価格の指数 115(今 100)、営業利益率 3.0%
- 保守・部品・その他:数量 65.0(自社機を含む対象の保守・部品市場(約 700 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 120(値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側)→ 売上 78 億円・営業利益 8 億円。価格の指数 120(今 100)、営業利益率 10.0%
倍率:ROE 2% 台は資本コストを大きく下回る。構造的に負けた後の利益なので、稼ぐ力(純利益÷k=12.9 倍が上限)の約 6.5 割 8.5 倍を置いた。純現金を上回るかどうかは、結果として確認しただけで、倍率の根拠にはしていない。
確率:電池式と電動工具の普及で可搬形のディーゼル発電機の出番が減り、中国・韓国の安価な機種との競争も加わる構造的な負け。電池への転換は進みつつあるが、速さは読めないため 12% を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内発電機(可搬形・防災用・非常用)
建設現場・イベント向けの可搬形と、防災用・非常用の定置形(ニシハツ)。国内の工事会社、レンタル会社、自治体、病院が顧客。
| 数量国内の中小型発電機の市場(約 1,500 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円) | 価格値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 100 | 300 | 45 |
| 10 年後 中立 | 330 | 134 | 442 | 62 |
取り方:国内の可搬形・防災用・非常用の中小型機の市場を約 1,500 億円(推定)とし、国内の発電機売上約 300 億円(中計の国内売上目標 419 億円から溶接機・保守などを除いた推定)をシェア約 20% とみた。非常用の国内シェアが約 2 割で 2 位という報道とも合う。営業利益率は約 15% と推定。
海外発電機(米国・アジア・中近東)
米国のレンタル会社向けと、アジア・中近東の販売店経由の可搬形発電機。
| 数量海外の中小型可搬形発電機の市場(約 7,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円) | 価格値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 295 | 100 | 295 | 22 |
| 10 年後 中立 | 348 | 134 | 466 | 35 |
取り方:米国の売上は約 220 億円、アジア・中近東などで約 75 億円と推定(中計の地域別目標から按分)。対象市場は米国のレンタル向けと新興国の可搬形を合わせて約 7,000 億円と置き、シェア約 4% とみた。営業利益率は為替と関税の影響を受けるため約 7.5% と推定。
溶接機・コンプレッサ
エンジン溶接機とバッテリ溶接機、可搬形コンプレッサ。建設・造船・工事会社向け。
| 数量国内の可搬形溶接機・コンプレッサの市場(約 1,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円) | 価格値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 59.0 | 100 | 59 | 4 |
| 10 年後 中立 | 53.0 | 134 | 71 | 5 |
取り方:溶接機約 49 億円、コンプレッサ約 10 億円(中計の製品別売上から)。国内の対象市場を約 1,000 億円と置き、シェア約 6% とみた。営業利益率は薄く約 7% と推定。
保守・部品・その他
自社機の修理・部品・メンテナンス契約と、周辺機器。大型修理拠点が東日本・西日本にある。
| 数量自社機を含む対象の保守・部品市場(約 700 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円) | 価格値段の指数(今=100、物価 10 年 1.34 倍=134 が中立)。シェアは数量の側 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 68.0 | 100 | 68 | 12 |
| 10 年後 中立 | 78.2 | 134 | 105 | 17 |
取り方:発電機・溶接機を除いた売上約 68 億円(全社 722 億円から製品別の差し引き)。稼働している自社機が増えるほど増える部品と修理で、営業利益率は約 17% と推定。
リスクと懸念
電池・インバータへの置き換え
建設現場の電動工具や投光機が電池式に移れば、可搬形ディーゼル発電機の出番は減る。会社の脱炭素製品の売上は計画で 30 億円、全体の 4% ほどにとどまり、転換に乗り遅れる恐れがある。寿命は 10 年の筋書きで最も大きな不確実性だ。
米国レンタル需要の振れ
米国のレンタル会社は景気や金利で在庫の購入を一斉に絞る。売上の 3 割強を占める米国で注文が止まる年は、会社全体の利益率が下がる。関税や為替も利益を削る。
国内の首位ヤンマーと大容量機の壁
非常用発電機の国内シェアはヤンマーが約 4 割、デンヨーは約 2 割で 2 位。ヤンマーはデータセンター向け大容量機の新工場を建てており、その資金力が中小型へ及ぶ恐れがある。大容量機にはデンヨーは入れない。
資本の重さと低い ROE
ROE は過去 10 年の中央値で 6.2%、資本コストに届かない。純現金と政策保有株が利益を生まないまま積み上がる。還元の強化が続かなければ、成長しても株主の価値が増えない。
M&A 枠 50 億円の使い道
中計は M&A 枠を 50 億円置くが、行き先は決まっていない。グローバルサウスへの進出を M&A も含めて検討するという。買収が成功する保証は薄く、価値を壊す余地が残る。
品質・安全の事故
防災用の非常用発電機は、いざという時に動かなければ信頼を失う。ニシハツの新工場の立ち上げや、福井工場の増強で品質管理が緩めば、不具合の影響は大きい。
今後の分かれ目
- 電池式の溶接機・投光機が国内の建設現場で標準になったら
- 溶接機とコンプレッサの数量が減り、可搬形発電機への波及も始まる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- データセンター向けで、中小型の非常用機の受注が目立って増えたら
- 国内シェアが 20% を超える道が開く。楽観・やや楽観の確率を少し上げてよい。ただし大容量機は別の話だ。
- 政策保有株の縮減と自社株買いが、中計どおりかそれ以上に進んだら
- ROE が 8% に近づき、中立の倍率の上限が上がる。還元の厚さが続くかが本質価値の分かれ目だ。
- 米国のレンタル向けの出荷が前年割れに転じたら
- 海外の利益率が 5% 台に落ち、やや悲観の筋書きに近づく。
- 50 億円を超える M&A を発表したら
- 買収の中身(事業の近さ、価格、PMI の体制)で評価が分かれる。割高な買収なら悲観の確率を上げる。
- 筆頭株主の物言う株主が持ち株を売って去ったら
- 還元強化の圧力が弱まり、資本の重さが戻る恐れがある。慎重な見方を強める。
見ておくもの
- 米国のレンタル大手の発電機の購入計画と、デンヨー米国法人の出荷
- ニシハツ新工場の立ち上げと国内の非常用発電機の受注残
- 政策保有株の縮減の銘柄数と、自社株買いの規模
- 脱炭素製品(水素混焼機・バッテリ溶接機)の売上が 30 億円計画に届くか
- ヤンマーの大容量非常用機の新工場の立ち上がりと、中小型機への展開
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに、市場の大きさ(実質)× シェア × 値段の指数(物価 10 年 1.34 倍)で売上を置き、利益率から営業利益、純利益を出した。倍率は資本コスト 7% と事業の ROE から、正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) を引いた。ROE が k を下回る筋書きは 1÷k=12.9 倍が上限なので、中立は上限の 8 割台に置いた。今の PER や過去の PBR は使っていない。悲観は構造的に負けた後の純利益で置いた。新リース会計基準で BS の形が変わるが、数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れる形)にそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→17 倍・やや楽観 PER 12.2→16.02 倍・中立 PER 11.32→14.83 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.25% を足して k 7%。会社は株主資本コストを 6.5〜7.0% と想定しているが、ここでは式どおりに置く。事業は傾いておらず、上乗せなし。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.00%。