結論
かわでんは、ビルや工場、データセンターの電気をさばく配電盤と制御盤を、注文に合わせて一品ずつつくる専業メーカーだ。創業は1940年、山形に主力工場がある。
筆者の結論は、ほぼ適正だ。割安とは言えない。直近の決算は、営業利益率が15.5%と過去最高で、受注残も売上の1年近い。強い。ただ、この利益率は築60年の工場の償却が終わっていることにも支えられている。
会社は山形県上山市に、約250億円の新工場を建てる。今の自己資本(203億円)や時価総額に並ぶ額で、完成は2029年ごろ。生産量は1.5倍になるが、償却と金利が毎年乗る。
筆者は、10年後の中立の営業利益率を11%と置く。会社の中計(2030年3月期に売上350億円、営業利益40億円)に近い水準だ。
結果、確率で重みをつけた本質価値は、今の時価総額とほぼ同じだ。悪くない会社だが、今の値段は、強い時期の持続をおおむね織り込んでいる。
財務は堅い。自己資本比率は7割を超え、純現金も98億円ある。そのため、失敗しても倒れにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、かわでんは「良い会社だが、値段が安いわけではない」。
良い点は3つある。無借金に近い財務、顧客の細かい要望に応える現場力、そして株主に配る姿勢だ。損をしにくい経営をしている。
気になる点も3つある。利益が「フロー型」で、10年先を予測しにくい。顧客が電気工事会社に集中している。そして、築60年の工場を建て替える250億円の新工場は、事業の規模に比べて大きい。
投資額が大きく、償却は毎年乗る。需要が続かなければ、遊休設備と償却だけが残る。一方、続けば生産量は1.5倍になる。
筆者は、今の15.5%の営業利益率を、平常な水準とは見ない。会社自身の中計も、営業利益率を11%台に置いている。中立のROEは資本コストと同程度になる。
値段が今の半分に近づくなら、考えたい会社だ。それまでは、決算の数字より、新工場の進み具合を見る。
何で稼ぐ会社か
配電盤とは、受けた電気を建物や設備に振り分ける箱の装置だ。かわでんは、高圧と低圧の配電盤、制御盤、分電盤を、顧客の仕様に合わせてつくる。単一事業で、売上の100%をこれが占める。
顧客は電気工事会社が中心で、きんでんが売上の13.6%、関工商事が9.9%を占める。最終の需要家はビル、工場、大型マンション、データセンターで、半導体工場や首都圏の再開発向けが近年の伸びを支えている。海外の売上はほぼない。
強みは、研究、設計、製造、販売、アフターサービスまでを社内で一貫して持つことだ。仕様変更や短い納期に付き合う力が、大型案件の受注につながる。
工場は山形(築60年超)と九州にある。新工場は山形県上山市に建て、山形工場の機能を引き継ぐ。データセンター向けの新製品も、ここで生産する。
受注は2期連続で伸び、直近の受注高は273億円、受注残は240億円。売上は1つひとつの案件の完成で立つ「フロー型」で、大きな案件が終わると落ちやすい。
利益の質で見ると、原価の大半は鋼材や部品、それに設計・組み立ての人件費だ。値段は案件ごとの見積もりで決まり、材料費の上昇を転嫁できるかが採算を分ける。
優良さと弱いところ
堀は、あるが深くはない。特注品なので、図面と現場を知る人の腕が競争力になる。社内一貫の体制で、顧客の細かい要望と納期に応えられる。ただ、規格の標準品ではないので、他社がまねできない技術と言い切れる所まではいかない。
同業は日東工業(売上1,847億円)や大崎電気、正興電機、戸上電機、指月電機などで、かわでんの規模は小さい。ただ、同業の多くが非上場の中堅で、地域ごとの顧客関係が収益を支える。
値決め力は、案件ごとの見積もりで決まり、電気工事会社が間に入るので、強くはない。過去10年の営業利益率は2.6%から15.5%まで大きく動いた。
経営の資本の使い方は評価できる。無借金に近く、配当は性向35%以上を打ち出している。一方、250億円の新工場は大きな賭けだ。需要が続くかを事前に確かめられない投資を、時価総額に並ぶ額で行う。
資本効率は、直近2期でようやく上向いた。過去10年のROE中央値は6.5%で、資本コストを下回る年が多かった。直近の14.4%は、築60年の工場が償却を終えた恩恵を含み、そのまま続く数字とは見ない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
配電盤の需要は、建物と工場の新設・更新で決まる。いま追い風は3つ。半導体工場の新設、データセンター、首都圏の大型再開発だ。電力を使う設備が増えれば、配電盤の数も増える。
一方、国内の建設は人手不足と人口減が重なる。長い目では、数量は減る方向に傾く。データセンターは電力インフラの更新に結びつくが、投資が止まると反動も大きい。
市場の大きさは調査会社によって3,000億円から1兆円と幅があり、はっきりしない。かわでんの売上265億円はその数%にすぎず、シェアというより、個別案件の取り合いに近い。
競合は日東工業、大崎電気のような大手のほか、各地の非上場の中堅が多い。大手は標準品に強く、かわでんのような特注の高圧・大型盤で競う。
価格は物価に合わせて上がるが、人件費と鋼材も同じく上がる。値上げが通る期間は、受注が強い今のような時期に限られる。
配電盤の価格は、鋼材・銅と人件費が上がれば見積もりに乗せていく。ただ受注が弱い時期は、転嫁できずに利益率が削られる。
この領域の業界ノートは無いので、数量は今の1.15倍、価格は物価並みを中立とした。数量を伸ばす理由は、新工場で能力が増えることと、データセンターの更新需要が続くことだ。
資本政策と M&A
配当性向は35%以上が目標で、2026年3月期は約36%。優待はない。自社株買いはなく、株数は1,600万株で動いていない。
最大の論点は、新工場への約250億円の投資だ。自己資本203億円、純現金98億円に対し、大きな額になる。自己資金と営業キャッシュフローに借入を足して賄うことになり、一時的に純現金が借金に変わる可能性がある。借入は3.5%前後に直すと、年数億円の利払いが乗る。
減価償却は、既存の工場は取得時の値段のまま、新工場だけが新しい値段で足される。新工場の償却は年15億円ほどと見る。建築費が上がっているため、投資額は計画から膨らむリスクもある。会計上の利益は物価で見かけ上ふくらむが、更新投資で現金は細る。
M&Aの履歴は確認できなかった。TOBの確率は、参考値で10年25%(kabufu 推定)。時価総額が小さく、特注の盤を持つ会社は電気工事・設備会社にとって魅力があるが、実際の動きは確認できなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
データセンターと半導体の投資は、まだ初期だ。電力を食う設備が増えるたびに、配電盤は必ず要る。受注残は240億円と売上の1年近くあり、見えている需要だけで来期の売上を支える。
新工場は能力を1.5倍にし、データセンター向けの新製品を載せる。築60年の山形工場に頼る制約が外れ、納期と品質が上がる。顧客の電気工事会社は、納期を守れる相手を選ぶので、値上げも通りやすくなる。
利益率の実績も強い。2026年3月期は営業利益率15.5%で、過去最高を更新した。中計は初年度で目標を達成した。会社の計画は慎重で、実績が上回る流れが続いている。
財務は純現金で、借入に頼らず投資できる。配当性向35%以上の方針も守られる。投資が当たれば、10年後の営業利益は75億円まで届く。
電力の使用量が増える時代の「受け皿」の製品なので、需要の底は他の機械よりも堅い。かわでんは、その受け皿をつくる数少ない上場企業の1つだ。
慎重な見方
今の利益率は、景気の山と、償却が終わった古い工場がつくった数字だ。2023年3月期の営業利益率は2.6%、2024年3月期は5.3%だった。直近2期で急に変わった理由は、案件の好調と古い設備の償却が終わったことだけで、構造が変わったわけではない。
新工場は約250億円で、時価総額に並ぶ。完成する2029年ごろに需要が引いていれば、遊休設備と償却だけが残る。建築費の高騰で、投資額が膨らむ危険もある。
顧客は電気工事会社に集中し、きんでんだけで売上の13.6%を占める。生産は山形に集中し、海外の売上はほぼない。1つの災害や工場の不具合で、全体が止まる。
国内の建設は、人口減で長い目では細る。データセンター向けも、投資の波が引けば受注が一気に減る。
同業の日東工業のような大手や、地域の非上場の中堅との価格競争は、需要が弱まるたびに強まる。
中計の営業利益40億円は、初年度で実績が上回った。計画が低く置かれているのは、会社自身が今の利益率を一時的な水準と見ているからだ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が少し強い。受注残と実績は強気を支えるが、10年という期間では、利益率の高さが続く根拠が薄い。新工場の250億円は、成功しても利益率を押し下げ、失敗すれば大きな重荷になる。確率は、中立に最も厚く置き、悲観側を楽観側よりわずかに多くした。
財務の堅さと無借金に近い体質が、悲観の底を支える。そのため、悲観でも株主に残る値は小さくないと置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,099 円496 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 621 円99 億円)。 今の値に割り戻すと 1,936 円310 億円、今との差 +24.3%、 期待の年率 +9.1%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,183 円990 億円 | 1,049 円168 億円 | +364.5% | +16.6% | 579 円93 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,725 円757 億円 | 849 円136 億円 | +258.0% | +13.6% | 1,115 円179 億円 |
| 中立 | 37% | 3,496 円560 億円 | 706 円113 億円 | +169.9% | +10.4% | 1,555 円249 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,198 円192 億円 | 462 円74 億円 | +6.6% | +0.6% | 382 円61 億円 |
| 悲観 | 12% | 749 円120 億円 | 0 円0 億円 | −51.9% | −7.1% | 90 円14 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,099 円496 億円 | 621 円99 億円 | +138.9% | +9.1% | 3,720 円596 億円 |
今の株価時価総額 1,557 円249 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% データセンター特需を新工場で取り切る 利益 55 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 6,183 円990 億円
データセンターと半導体工場、首都圏の再開発という3つの投資が10年途切れず、かわでんは新工場で生産量を1.5倍近くに増やしても受注を埋める。配電盤は一品ずつの特注なので、設計と現場の対応力が値段に出る。顧客に「納期を守る」「仕様変更に付き合う」と評価され、値上げが通りやすくなる。
利益率は14%を保つ。今の15.5%は、築60年の山形工場が償却を終えているために出ている面もあり、新工場の償却が重くなる分は、自動化による省力化で補う。売上は538億円、営業利益は75億円ほどに育つ。
自己資本比率の高い財務は変わらず、借入は新工場の資金に限られて早く返済できる。配当は利益の4割を守り、中計のROE10%を超える水準が続く。
- 配電盤・制御盤・分電盤:数量 9,570(出荷面数(推定))× 価格 0.06(1面あたりの売上(億円、名目))→ 売上 538 億円・営業利益 75 億円。9570面×0.0562億円/面(今の1.40倍)、営業利益率14.0%
倍率:事業の純利益 55 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍。全体の PER 17.5 倍、時価総額 959 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新工場で能力を1.5倍にし、データセンターと半導体の投資が10年続き、かつ高い利益率を保つ必要がある。実現すれば大きいが、条件が重なる。
やや楽観 20% 受注残が積み上がり高採算が続く 利益 43 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 4,725 円757 億円
受注残は積み上がり、需要は期待どおり続く。データセンター向けの新製品が加わり、数量は今の1.3倍まで伸びる。価格は物価並みに少し上乗せされ、営業利益率は12.5%に落ち着く。
新工場の償却が乗るため、今の15.5%よりは下がるが、中計の目標11.4%(営業利益40億円÷売上350億円)は上回る。
利益は増えるが、配当と新工場の償却を差し引くと、ROEは10%前後で資本コストを少し上回る程度にとどまる。データセンター向けの新製品が軌道に乗り、新工場の能力の6割ほどが埋まる姿で、強気の見方としては控えめな置き方だ。顧客は電気工事会社に集中したままで、きんでんの比率は大きく動かない。配当は利益の4割近くを維持する。
- 配電盤・制御盤・分電盤:数量 8,580(出荷面数(推定))× 価格 0.05(1面あたりの売上(億円、名目))→ 売上 472 億円・営業利益 59 億円。8580面×0.05499億円/面(今の1.37倍)、営業利益率12.5%
倍率:事業の純利益 43 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍。全体の PER 16.57 倍、時価総額 708 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残が240億円と1年分近くあり、会社の中計の売上350億円、営業利益40億円は既に手が届く位置にある。10年で需要が続く側に寄せた。
中立 37% 中立:新工場は立ち上がるが利益率は平常化 利益 32 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 3,496 円560 億円
10年後の中立は「強い時期を過ぎて、普通の高収益企業に戻る」姿だ。データセンターと半導体の投資は続くが、需要のピークは越え、数量は今の1.15倍にとどまる。新工場が能力を1.5倍にしても、人手不足と国内建設の細りで全部は埋まらない。
価格は物価並み。営業利益率は11%で、中計の水準に近い。今の15.5%は過去最高で、築60年の山形工場の償却が終わっていることが追い風になっている。新工場で毎年15億円ほど償却が増えるので、その分を差し引く。
売上は408億円、営業利益は45億円。純利益は32億円ほどで、ROEは8%台。資本コストと同じ水準で、「普通に優良」の評価に収まる。
- 配電盤・制御盤・分電盤:数量 7,590(出荷面数(推定))× 価格 0.05(1面あたりの売上(億円、名目))→ 売上 408 億円・営業利益 45 億円。7590面×0.05379億円/面(今の1.34倍)、営業利益率11.0%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍。全体の PER 15.42 倍、時価総額 495 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注環境は強いが、利益は大型案件の有無で動く「フロー型」。新工場の償却が乗る分、利益率は今の15.5%から平常化すると見て、いちばん厚く置いた。
やや悲観 23% 新工場の償却が重く、利益率が薄くなる 利益 13 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,198 円192 億円
需要の波が過ぎ、数量は今の0.95倍に戻る。新工場の稼働が思うように上がらず、能力だけが1.5倍に増えて固定費が重くなる。価格は競争で物価に届かず1.28倍にとどまる。
営業利益率は6.5%。2023年3月期の2.6%や、2024年3月期の5.3%に近い水準で、過去の薄利の年に戻る。売上は322億円、営業利益は21億円。
利益は薄いが、無借金に近い財務で配当は続く。ROEは4%弱まで落ち、資本コストに届かない会社として評価される。顧客の電気工事会社は値引きを求め、見積もりの競争は厳しくなる。新工場は半分ほどしか埋まらず、償却と人件費が利益を圧迫する。
- 配電盤・制御盤・分電盤:数量 6,270(出荷面数(推定))× 価格 0.05(1面あたりの売上(億円、名目))→ 売上 322 億円・営業利益 21 億円。6270面×0.05138億円/面(今の1.28倍)、営業利益率6.5%
倍率:ROE 3.9%はkを下回り、上限は1÷k=12.5倍。薄利の谷の利益に、受注の波が戻る余地を見て8割の10.0倍を置いた。
確率:需要の波が一巡し、新工場の稼働率が上がらないまま償却と人件費だけ重くなる筋書き。過去の10年の営業利益率は2.6〜15%で、この谷は珍しくない。
悲観 12% 設備投資が引き、新工場が重荷になる 利益 −6 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 749 円120 億円
設備投資の反動でデータセンターと半導体の案件が止まり、数量は今の0.75倍まで落ちる。同業の日東工業や、未上場の中堅との価格競争で値上げは通らず、価格は1.20倍にとどまる。
その中で新工場の償却と金利、人件費が固定費として残る。営業利益はほぼゼロになり、借入の利払いも重なって赤字になる。
経営は新工場の一部を遊休化し、減損を迫られる。売れる資産と運転資本から借入を引いた額が、株主に残る値になる。配当は性向の方針を守れず、減らさざるをえない。電気工事会社は調達先を絞り、価格の主導権はさらに買い手へ移る。無借金に近い財務のおかげで倒れはしないが、10年の間に新工場への投資は回収できないままになる。
- 配電盤・制御盤・分電盤:数量 4,950(出荷面数(推定))× 価格 0.05(1面あたりの売上(億円、名目))→ 売上 238 億円・営業利益 2 億円。4950面×0.04817億円/面(今の1.20倍)、営業利益率1.0%
倍率:赤字で稼ぐ力では測れない。売れる資産の税後から新工場の借入を引いた120億円を、今の自己資本203億円に掛けて置いた(PBR 0.59倍)。
確率:設備投資の反動と、250億円の新工場による固定費、価格競争が重なる構造的な負けの筋書き。ただ無借金に近い財務で、倒れる確率は低く、1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
配電盤・制御盤・分電盤
ビル・工場・データセンター・大型マンション向けの高低圧配電盤、制御盤、分電盤の受注生産。
| 数量出荷面数(推定) | 価格1面あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,600 | 0.04 | 265 | 41 |
| 10 年後 中立 | 7,590 | 0.05 | 408 | 45 |
取り方:面数は開示がなく、売上264.9億円を、1面あたり約400万円の推定で割り戻した6,600面。大型盤は1面数千万円、分電盤は数十万円と幅が広いため、平均として扱う。中立は新工場で能力が1.5倍になるが、人手不足と国内建設の細りで埋まるのはその3割弱とみて1.15倍、価格は物価並みの1.34倍。
リスクと懸念
250億円の新工場
投資額は自己資本203億円、時価総額254億円に並ぶ。完成は2029年ごろで、需要が引いていれば遊休設備と償却が残る。建築費が上がれば、投資額が膨らむ。借入の金利は3.5%前後で、年数億円の負担になる。
フロー型の利益
売上は個々の案件の完成で立つ。大型案件が終われば落ちやすく、過去10年の営業利益率は2.6%から15.5%まで動いた。今の15.5%は、過去最高を更新した水準だ。
顧客の集中
きんでんが売上の13.6%、関工商事が9.9%を占める。2社で23%を超える。取引条件の変更や、取引先の調達方針の変更が、利益に直結する。
生産拠点の集中
生産は山形に集中し、築60年を超える工場に頼っている。災害や設備の故障が起きれば、全体の出荷が止まる。新工場への移行期にも、二重の費用がかかる。
国内建設の細り
海外売上はほぼない。人口減で国内の建設は長い目で細る。データセンターや半導体向けの投資が引けば、受注が一気に減りうる。
人件費と鋼材の上昇
価格は物価並みに上がるが、人件費と鋼材も同じく上がる。値上げが通るのは受注が強い時期に限られ、需要が弱まると利益率が縮む。
今後の分かれ目
- 新工場の投資額が300億円を超えて膨らむ
- 償却と利払いが増え、利益率の見通しを下げる。
- 受注残が2期続けて減る
- フロー型の山が過ぎたとみて、中立から悲観寄りに動く。
- データセンター向けの受注が売上の2割を超える
- 新工場の能力が埋まる確度が上がり、強気の確率を上げる。
- 営業利益率が12%を下回る期が続く
- 今の高収益が一過性だったとみて、見通しを下げる。
- 電気工事会社・設備会社による買収の提案が出る
- 特注盤の技術に評価が乗る可能性があり、確率を上げる。
見ておくもの
- 受注高と受注残の推移
- 営業利益率
- 新工場の投資額と工期の変更
- 配当性向の方針
- 顧客上位2社の売上比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は資本コスト7.5%(基本7.5%+quality0.5%)とROEから決めた。中立のROEは8.1%でkと同水準のため、RONICはk並み、g4%から正当化PERは約12.6倍で、フロー型の利益と新工場の償却を見て7.5割の9.5倍に置いた。今の株価や同業の倍率は使っていない。利益率は、過去最高の15.5%を中立に使わず、中計の水準(11.4%)と、新工場の償却(年15億円ほど)から置いた。数量は実質、価格は名目で、物価は二重に掛けていない。減価償却は既存分を取得時のままとし、新工場だけを新しい値段で足した。悲観の床は、売れる資産の税後から借入を引いて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→17.5 倍・やや楽観 PER 13→16.57 倍・中立 PER 12.5→15.42 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。