結論
メガチップスは、任天堂のゲーム機に使うカスタム半導体を設計・販売する会社である。売上の77%が任天堂向けで、この依存が強みでもあり弱みでもある。
筆者の結論は、今の値段はおおむね妥当というものだ。割安に見える最大の理由は本業ではなく、保有する米SiTime(サイタイム)株の含み益にある。302万株は時価で税引き前に約2,100億円。税を引いても約1,500億円あり、時価総額1,416億円に迫る。
それでも割安と言い切れない。会社はこの株を2030年度まで時間をかけて売る方針で、売るまでの間、手元の現金は低い利息しか生まない。SiTime株自体も、期待が先行した成長株で値動きが荒い。本業は営業利益がほぼゼロに沈み、任天堂の端境期とASICの不振が重なった。
経営は自社株買いに積極的で、5年で流通株を約4割減らした。この点は評価できる。一方で、売却資金を新興企業への投資や買収に回す計画もある。稼ぐ力が戻らないうちの新分野投資は、疑ってかかるべきだ。
価値を決めるのは、SiTime株の値動きと、売却益を株主にどれだけ返すかの2点である。本業の稼ぎは、そこに少し上乗せされるにすぎない。TOBや上場廃止の動きは確認できなかった。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を「事業」と「資産」に分けて見る。
事業は、持ち続けたいと思える質ではない。売上の77%が1社で、その1社の仕様次第で数量も単価も動く。利益は過去10年のうち半分近くの期で赤字か薄利だった。10年後に今より強いと言える根拠は乏しい。
資産は別だ。SiTime株はこの会社の最良の持ち物で、税を引いても時価総額に近い価値がある。ただし、筆者が重くみるのは「いつ、いくらで現金にし、誰に返すか」である。株主に返せば価値は残る。成長投資に回して外れれば、価値は消える。会社は、返す方針と使う方針を同時に掲げている。
安全域は、ある程度ある。10年の悲観の筋書きでも、現金と自社株買いで今の値段の7割は戻る計算だ。ただし、割安と呼べるほどの余裕はない。売却に10年かかる間の目減りを引くと、今の値段は適正の範囲に収まる。
何で稼ぐ会社か
事業は、任天堂向けと、それ以外の2本である。
任天堂向けは、ゲーム機とゲームソフトに入る半導体を納める仕事だ。ソフトの中身を収めるメモリ(マスクROM、フラッシュ)は、台湾のマクロニクスから仕入れて任天堂に売る。最低の発注枚数を定めた長期の契約があり、独占的な代理店に近い。ほかに、任天堂向けの専用チップも設計している。2026年3月期の任天堂向け売上は279億円で、全体の77%だった。
それ以外が、ASIC(顧客専用のLSI)とASSP(特定用途向けのLSI)である。通信(光アクセス)、カメラなどの画像機器、複合機、産業機器向けが中心で、設計料(NRE)と量産品の売上が柱になる。ここは需要の戻りが遅く、利益はほぼ出ていない。会社自身が「事業の立て直し」と書いている。
開示は単一セグメントで、利益の内訳は出ない。筆者は、任天堂向けが利益を出し、ASICと新規事業が穴を開けているとみている。
新規事業では、米Acumino(AIロボットの訓練)、米CargoSense(物流の自動化)と組む。売上はまだ小さく、実を結ぶかは読めない。
会社の形は、SiTime株の売却で大きく変わってきた。かつて子会社だったSiTimeの株を2020年以降に売り出し、2024年3月期末に持分法の対象からも外れた。いまは時価で評価される投資有価証券として持つ。
優良さと弱いところ
優良さを一言でいえば、「1社に深く入り込んだ設計会社」である。
強みは、任天堂のゲーム機づくりに長く関わってきたことだ。メモリ技術とセキュリティ技術で信頼を得ており、他社に切り替えるのは手間がかかる。この関係のおかげで、売上の7割超が安定してきた。
弱みも同じところにある。任天堂が仕様を変えれば、売上は動く。実際、任天堂のゲーム機の出荷が前期に倍増したのに、メガチップスの任天堂向け売上は9%減った。ソフトの流通がダウンロードに移り、中身の入らないカードも出てきた。半導体の使われ方が変わっているとみる。
本業の稼ぐ力は弱い。売上はピークの952億円から362億円まで6割減り、営業利益はほぼゼロになった。ROE(自己資本利益率)が資本コストを下回る期が続いている。
財務はきわめて堅い。ただし、この堅さは本業が稼いだ結果ではない。SiTime株の値上がりという幸運の産物である。経営の資本配分は、自社株買いを進めた点で株主寄りだ。成長投資の目利きはまだ試されていない。筆者は、本業の堀を「中程度。ただし1社依存」と見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社の外部環境は、性格の違う二つの市場である。
まずゲーム機。任天堂のSwitch 2は2025年6月に出て、前期に1,986万台売れた。今期の会社予想は1,650万台と、発売1年目より減る。ゲーム機は6〜7年の周期で動き、メガチップスの売上もその波に乗る。谷では売上が落ち、山でも伸びは限られる。近年は、ソフトがダウンロードで売れる比率が上がり、カートリッジに載るメモリの量は減る方向にある。
次にASIC。通信・画像・産業機器向けの専用チップだ。同じ領域に、売上がメガチップスの数倍あるソシオネクストなど、設計を受ける会社が並ぶ。AIデータセンター向けの大型案件は、規模のある会社に集まりやすい。メガチップスは光アクセスやセキュリティの技術を軸に、北米とアジアで案件を広げようとしている。
回復の兆しはある。2027年3月期の第1四半期は売上が56%増えた。ただし、前年が低すぎた反動でもある。
SiTimeが属する、MEMS方式のタイミング部品の市場は、AI向けの通信需要で追い風を受けている。それでも株価は、直近の高値901ドルから472ドルまで半値近くに下がった。値動きの荒い資産を、メガチップスは大きく抱えている。
資本政策と M&A
資本政策は、この会社の分析でいちばん大事な欄である。
まず、TOBや上場廃止の動きは確認できなかった(2026年10月時点の適時開示)。動いているのは株数だ。会社は2026年2月から続けて自社株買いを決め、流通株は2026年8月末で約1,380万株。5年前より約4割少ない。2026年度だけで約200億円を買う見込みで、うち約91億円は6月までに済んだ。配当も増やし、2027年3月期の予想は2025年3月期の約1.9倍になる。
財源はSiTime株の売却である。会社は持ち株比率を今の11.5%から、2030年度に5%程度へ下げる。2026年5月に40万株を売り、売却益は484億円だった。税がかかるため、手取りは約7割になる。
気になるのは、成長投資の使い道だ。会社はスタートアップ投資、提携、M&Aに資金を回すと明言している。本業の稼ぐ力が戻っていない段階での新分野投資は、外れたときの傷が大きい。筆者はここを最大の疑問点とみる。
株主には、進藤姓の個人・法人(同じ住所)が合わせて約24%いる。買収を仕掛けにくい構造だ。
10年の還元は、純利益でなくSiTime株の売却代金から出す。各筋書きの余った現金は今の1,655億円から還元とSiTime株の値動きを織り込んで減らして置いてあり(中立は1,066億円)、二重には数えていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
SiTime株が主役である。302万株は税を引いても約1,500億円あり、時価総額に近い。しかもAI向けの通信需要で、SiTimeの事業は伸び続けている。株価が高値の半分まで下がった今は、むしろ拾い場だ。会社は毎年のように売却して現金化し、その大半を自社株買いと配当で返している。流通株を5年で4割減らした実績が、それを裏づける。
本業も底を打った。任天堂のSwitch 2は発売2年目も堅調で、2027年3月期の第1四半期は売上が56%増え、営業利益は黒字に戻った。任天堂は次の世代機でも、メモリとセキュリティの設計でメガチップスを使い続けるだろう。ASICは通信・光アクセスで北米の案件が育ち、中期目標の売上800億円、営業利益100億円に近づく。新規事業のAIロボットや物流の自動化も、当たれば第3の柱になる。
会社の財務方針も明快だ。SiTime株の売却資金を、成長投資、事業基盤の強化、株主還元の三つに配ると文書で示し、自社株買いは中期で200億円規模を掲げた。進藤姓の株主が合わせて約24%を握り、経営と大株主の利害は近い。ROE 8%という目標も公表しており、自己資本を減らす圧力は強い。
資産が厚く、本業が戻れば、10年後の時価総額は今を大きく上回る。
慎重な見方
本業はこの10年、一度も力強く戻ったことがない。売上はピークから6割減り、営業利益はゼロ前後だ。任天堂向けは売上の77%を占めるが、ゲーム機の出荷が倍増した年に売上が9%減った。ダウンロード販売や、メモリの入らないカードが広がれば、任天堂向けの単価は構造的に下がる。独占的に近い代理店の地位も、任天堂が仕様を変えれば意味をなくす。
ASICは受注が戻らず、会社は事業の立て直しを認めている。そこへ売却資金を回して新興企業に投資すれば、外れたときの損失は大きい。SiTime株も、PERが数百倍の成長株だ。直近の高値からすでに半値近くに下がっており、売却を進めるあいだに、さらに下がるかもしれない。
経営の姿勢にも疑問が残る。中期の目標は売上800億円、営業利益100億円だが、売上は10年で6割減った会社が、数年で倍以上にすると言っている。目標の達成を前提に今の値段を正当化するのは、危うい。
含み益は税で3割が消える。残りも、売る間は利息しか生まず、資本コストを下回る。資産の厚さを、そのまま価値と考えるのは危うい。
どちらに重みを置いたか
SiTime株の厚みでは強気の見方が強い。本業の弱さと、成長投資の使い道への不安では慎重な見方が強い。両者はほぼ釣り合うが、本業の10年の実績を重くみて、確率はやや悲観側に寄せた。
中立を最も厚くしつつ、やや悲観と悲観を合わせて4割近くを置いた。ただし資産の下支えがあり、悲観でも今の値段の約7割は戻る。結論は、割安でも割高でもない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 19,279 円2,661 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 9,651 円1,332 億円)。 今の値に割り戻すと 14,416 円1,990 億円、今との差 +47.6%、 期待の年率 +11.5%(資本コスト 9.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 27,804 円3,837 億円 | 16,665 円2,300 億円 | +355.2% | +16.4% | 3,558 円491 億円 |
| やや楽観 | 20% | 23,246 円3,208 億円 | 13,767 円1,900 億円 | +278.8% | +14.2% | 7,403 円1,022 億円 |
| 中立 | 34% | 21,558 円2,975 億円 | 10,869 円1,500 億円 | +231.9% | +12.7% | 11,025 円1,522 億円 |
| やや悲観 | 24% | 18,135 円2,503 億円 | 6,521 円900 億円 | +152.4% | +9.7% | 5,918 円817 億円 |
| 悲観 | 14% | 5,166 円713 億円 | 2,174 円300 億円 | −24.9% | −2.8% | 1,028 円142 億円 |
| 加重平均 | 100% | 19,279 円2,661 億円 | 9,651 円1,332 億円 | +196.1% | +11.5% | 28,930 円3,993 億円 |
今の株価時価総額 9,770 円1,348 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 次世代機も任天堂が使い、ASICが花開く 利益 82 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 27,804 円3,837 億円
任天堂は次の世代機でも、メモリとセキュリティの設計でメガチップスを使い続ける。カートリッジの比率が思ったほど落ちず、任天堂向けの売上は今より伸びる。
ASICは通信(光アクセス)で北米の大口案件を取り、市場の伸びも追い風になる。新規事業のAIロボットと物流自動化のうち、少なくとも1つが事業として立つ。営業利益は90億円近くまで戻り、中期目標に近づく。
SiTimeは、AI向けの通信需要を取り込んで株価が数倍になる。会社は計画どおり売却を進め、売却益の大半を自社株買いと配当で返す。10年の還元は2,300億円に達し、売却で株数も大きく減る。
- アミューズメント(任天堂向け):数量 215(任天堂のゲーム機とソフトの年間出荷の合計(百万個))× 価格 1.58(メガチップスの任天堂向け売上(億円)÷ 任天堂の出荷(百万個)。名目の指数)→ 売上 340 億円・営業利益 41 億円。任天堂の出荷2.15億個、価格は物価に対し実質で小幅に低下、営業利益率12%
- ASIC・ASSP・新規事業:数量 110(狙う通信・画像・産業向けカスタムLSI市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 3.62(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア × 150円 × 物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 398 億円・営業利益 46 億円。市場110億ドル × シェア1.8%、営業利益率11.6%
倍率:事業の純利益 63 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.1% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)1,391 億円。全体の PER 13.08 倍、時価総額 2,209 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:任天堂の次世代機でも取引が続き、ASICが中期目標に近づき、SiTimeの値上がりも続く。3つが同時に当たる必要があり、確率は低くした。
やや楽観 20% ASICが戻り、任天堂向けは手堅い 利益 55 億円 · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 23,246 円3,208 億円
任天堂向けは、Switch 2の世代を通じて売上が横ばい圏を保つ。ゲームソフトのダウンロード比率は上がるが、メモリとカスタムICの納入は続く。
ASICは通信と画像機器で案件を積み、営業黒字に転じる。ただしシェアは1%台前半にとどまり、会社の目標の売上800億円には届かない。営業利益は50億円台に乗る。
SiTimeは資本コスト並みに値上がりし、売却は計画どおり進む。売却益は自社株買いと配当に回り、10年で1,900億円を返す。新規事業への投資は当たり外れが相殺し、全体の損益にはほとんど響かない。
会社の筋書きに近い形だが、利益の水準は目標の売上800億円・営業利益100億円には届かない。任天堂向けの安定と、ASICの黒字化が、時間をかけて数字になる10年である。
自己資本には、SiTime 株の値上がりの評価益(税後)を含む。余った現金は今の 1,655 億円から 1,130 億円になり、1,900 億円を返した後も、持ち株の評価益が約 1,375 億円(=1,130 − 1,655 + 1,900)残る。これが、今の自己資本に純利益の合計を足して還元を引いた流れより厚い理由である。
- アミューズメント(任天堂向け):数量 200(任天堂のゲーム機とソフトの年間出荷の合計(百万個))× 価格 1.55(メガチップスの任天堂向け売上(億円)÷ 任天堂の出荷(百万個)。名目の指数)→ 売上 310 億円・営業利益 34 億円。任天堂の出荷2億個、営業利益率11%
- ASIC・ASSP・新規事業:数量 95.0(狙う通信・画像・産業向けカスタムLSI市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 2.81(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア × 150円 × 物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 267 億円・営業利益 20 億円。市場95億ドル × シェア1.4%、営業利益率7.5%
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)1,130 億円。全体の PER 11.54 倍、時価総額 1,580 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中期計画の中心に近い。ASICの回復と任天堂向けの安定は、いずれも2027年3月期の第1四半期の数字が示している。
中立 34% 任天堂向けは横ばい、ASICはゆっくり黒字化 利益 40 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 21,558 円2,975 億円
任天堂向けの売上は、今より少し減る。ゲーム機の出荷は世代交代で上下するが、ダウンロード販売や中身の入らないカードの広がりで、1個あたりの半導体の売上は目減りする。物価は上がるのに、売上は名目で横ばいに近い。
ASICは、通信と画像機器で案件を積み、赤字から小さな黒字に変わる。シェアは1%程度で、受注は大型案件に偏る。新規事業は小さく、全体の利益を大きくは動かさない。
SiTimeは資本コスト並みに上がり、会社は2030年度に持ち株を5%まで、その後も売り切る。売却益から1,500億円を自社株買いと配当で返し、残りは現金で持つ。株数は減り続けるが、1株あたりの稼ぎは伸びない。
自己資本には、SiTime 株の値上がりの評価益(税後)を含む。余った現金は今の 1,655 億円から 1,066 億円になり、1,500 億円を返した後も、持ち株の評価益が約 910 億円(=1,066 − 1,655 + 1,500)残る。これが、今の自己資本に純利益の合計を足して還元を引いた流れより厚い理由である。
- アミューズメント(任天堂向け):数量 190(任天堂のゲーム機とソフトの年間出荷の合計(百万個))× 価格 1.48(メガチップスの任天堂向け売上(億円)÷ 任天堂の出荷(百万個)。名目の指数)→ 売上 281 億円・営業利益 28 億円。任天堂の出荷1.9億個。価格は物価の1.34倍に対し、ダウンロード化で実質0.83倍。営業利益率10%
- ASIC・ASSP・新規事業:数量 85.0(狙う通信・画像・産業向けカスタムLSI市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 2.01(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア × 150円 × 物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 171 億円・営業利益 7 億円。市場85億ドル × シェア1.0%、営業利益率4%
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)1,066 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 1,347 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:本業の10年の実績が弱く、任天堂の販売形態も変わる中で、改善は緩やかとみるのが最も現実的。SiTimeの値上がりも、資本コスト並みとみた。
やや悲観 24% 任天堂向けが細り、ASICは赤字が続く 利益 19 億円 · PER 6.3 倍 · 株価時価総額 18,135 円2,503 億円
任天堂向けは、ダウンロード販売とメモリの入らないカードの広がりで、1個あたりの半導体の売上が大きく目減りする。ゲーム機の出荷は保たれても、売上は今の8割を割る。
ASICは大型案件を取れず、シェアは1%を割る。新規事業への投資も、期待した売上に届かない。営業利益は10億円程度に落ちる。
SiTimeは10年でわずかしか上がらず、売却益も小さい。会社は成長投資の一部を失敗させ、還元は900億円にとどまる。売却した現金の多くは、使い道が定まらないまま積み上がる。
会社は財務の安定と事業の立て直しを掲げ続けるが、本業の数字が伴わず、経営への信頼が薄れる。株主からの圧力が強まる可能性はあるが、10年のうちに形になるとは限らない。
- アミューズメント(任天堂向け):数量 160(任天堂のゲーム機とソフトの年間出荷の合計(百万個))× 価格 1.38(メガチップスの任天堂向け売上(億円)÷ 任天堂の出荷(百万個)。名目の指数)→ 売上 220 億円・営業利益 15 億円。任天堂の出荷1.6億個。価格は実質で0.77倍。営業利益率7%
- ASIC・ASSP・新規事業:数量 75.0(狙う通信・画像・産業向けカスタムLSI市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 140.7%(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア × 150円 × 物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 106 億円・営業利益 −5 億円。市場75億ドル × シェア0.7%、赤字
倍率:事業の利益が小さくROE 2.3%はk 9%を大きく下回る。伸びても価値は増えず、正当化PERは1÷k=10.5倍まで。稼ぐ力が弱い筋書きなので、上限の6割の6.3倍に置いた。余った現金は戻り方1.0で足す。
確率:ゲームの販売がダウンロードへ進み、ASICの回復も遅れる。この10年の本業の実績に近い道筋で、確率は厚めにした。
悲観 14% 任天堂向けを失い、投資も外れ、SiTimeも崩れる 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 5,166 円713 億円
任天堂が次の世代機でメモリの調達先や構成を変え、メガチップスの出る幕が大きく縮む。ダウンロード専用への移行で、カートリッジ向けの売上はほぼ消える。
ASICは大型案件を取れず、事業の縮小を迫られる。新規事業への投資は全額を失い、損失が出る。営業利益は赤字になる。
SiTimeはAI向けの需要が一巡して株価が半分以下に崩れ、売却が進むほど手取りも細る。それでも借金はなく、残る現金は700億円ほどある。会社は還元を絞り、10年で300億円しか返せない。事業の価値はほぼゼロで、残った現金が床になる。
この筋書きでは、任天堂向けの売上が大きく縮み、ASICの縮小で人員の整理も必要になる。売上は10年で6割減り、会社は小さな設計会社として残る。進藤姓の株主が合わせて約24%を持つため、買収で救われる形は描きにくい。
- アミューズメント(任天堂向け):数量 120(任天堂のゲーム機とソフトの年間出荷の合計(百万個))× 価格 1.00(メガチップスの任天堂向け売上(億円)÷ 任天堂の出荷(百万個)。名目の指数)→ 売上 120 億円・営業利益 4 億円。任天堂の出荷1.2億個。価格は実質で0.56倍。営業利益率3%
- ASIC・ASSP・新規事業:数量 60.0(狙う通信・画像・産業向けカスタムLSI市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 80.4%(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア × 150円 × 物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 48 億円・営業利益 −15 億円。市場60億ドル × シェア0.4%、赤字
倍率:稼ぐ力では測れない筋書き。事業の価値はほぼゼロとみて、純現金の残り(SiTime株の売却手取りと手元現金から、還元と失敗した投資を引いた約713億円)を床にした。床は今の自己資本(約1,848億円)に対する比で書いた。
確率:任天堂の仕様変更で取引が縮み、ASICと新規投資が外れ、SiTimeも急落する。3つが重なる複合の筋書きで、起きる確率は低いが無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アミューズメント(任天堂向け)
任天堂のゲーム機・ゲームソフトに使うマスクROM・フラッシュの販売と、任天堂向けカスタムICの設計・販売。
| 数量任天堂のゲーム機とソフトの年間出荷の合計(百万個) | 価格メガチップスの任天堂向け売上(億円)÷ 任天堂の出荷(百万個)。名目の指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 209 | 1.33 | 279 | 26 |
| 10 年後 中立 | 190 | 1.48 | 281 | 28 |
取り方:任天堂向け売上278.6億円(有報)を、任天堂の2026年3月期の出荷(ゲーム機2,366万台+ソフト1億8,562万本=約2億930万個)で割った。ソフトにはダウンロード版が含まれ、半導体の入るカートリッジとは一致しない。開示は単一セグメントのため利益は推定で、全社の営業損益がほぼゼロであることから、任天堂向けは約9%の黒字(26億円)、残りは赤字と置いた。10年の価格は、物価の1.34倍に対しダウンロード化で実質目減りするとみた。
ASIC・ASSP・新規事業
通信(光アクセス)・画像機器・複合機・産業機器向けの専用LSIの設計・量産と、AIロボットなど新規事業。
| 数量狙う通信・画像・産業向けカスタムLSI市場(億ドル・今の値段で測った実質) | 価格実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア × 150円 × 物価の倍率(10年1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 138.4% | 83 | −28 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 2.01 | 171 | 7 |
取り方:任天堂向けを除く売上83億円(全体362億円-任天堂向け279億円)。対象市場は通信・画像機器・産業機器向けの専用LSIのうちメガチップスが取りに行ける範囲を、同業のソシオネクストなどの売上規模から約60億ドルと推定し、シェアは約0.9%(83億円÷150円÷60億ドル)。利益は、全社の営業損益(-1.7億円)から任天堂向けの黒字26億円を引いた-28億円と置いた(推定)。
リスクと懸念
任天堂1社への依存
売上の77%が任天堂向けで、同社の仕様変更・調達先の変更・販売形態の変化がそのまま業績に響く。ゲーム機の出荷が倍増した年にも、任天堂向け売上は9%減った。
ダウンロード販売の拡大
ソフトの販売がダウンロードに移り、中身の入らないカードも出ている。カートリッジに載るメモリの量が減れば、売上の主力が細る。
SiTime株の値動き
含み益の大半はSiTime株で、株価は直近の高値901ドルから472ドルまで下がった。売却を進める間に下げ続ければ、手取りは目減りする。売却益にも約3割の税がかかる。
成長投資の失敗
スタートアップ投資・提携・M&Aに売却資金を回すと会社は明言している。稼ぐ力が弱いままの新分野投資は、外れたときの損失が大きい。
ASICの立て直しの遅れ
通信・画像・産業機器向けは需要の戻りが遅く、利益が出ていない。大型案件はソシオネクストなど規模のある会社に集まりやすく、受注を取りきれない恐れがある。
資本効率の低さ
自己資本の大半を、利息も配当も生まない株式が占める。会社は2030年度までにROE 8%を目標とするが、事業の利益だけでは届かず、自己資本を減らす還元が欠かせない。
今後の分かれ目
- 任天堂の次世代機で、メモリや専用チップの調達先が変わると報じられたら
- やや悲観・悲観の確率を上げ、アミューズメントの売上の前提を下げる。
- ASICの売上が4四半期続けて前年を上回り、営業黒字が定着したら
- 楽観・やや楽観の確率を上げ、ASICの利益率の前提を引き上げる。
- SiTime株の売却と自社株買いが計画どおり進み、現金が積み上がらなければ
- 余った現金を株主へ返す前提を強め、還元の額を上げる。
- 会社が大型のM&Aや新規投資を発表したら
- 売却資金が還元でなく投資に向かうとみて、悲観側の確率を上げる。投資額と買収先の稼ぐ力を確かめる。
- SiTime株が大きく下がり、保有の価値が半分以下になったら
- 資産の下支えが薄れるため、価値の前提を下げる。売却の進め方が変わるかも確かめる。
- 進藤姓の株主や外部の大株主が、TOBや株主提案に動いたら
- 資本の使い方が早く改善する可能性があり、還元の前提を上げる。
見ておくもの
- 任天堂のSwitch 2の出荷(今期1,650万台の計画)と、パッケージ・ダウンロードの比率
- メガチップスの任天堂向け売上の前年比と、全体に占める比率(今は77%)
- ASIC事業の受注・NRE売上と、営業黒字の定着
- SiTime株の保有株数(今は302万株)と売却の時期・株価、持ち株比率(今は11.5%)
- 自社株買いの進み方(2026年度に約200億円)と、流通株の推移
- 成長投資・M&Aの発表(Acumino、CargoSenseなどへの追加投資)
倍率と資本コストの決め方
倍率は式と事業の経済性から置き、今や過去の株価の倍率には寄せていない。本業の純利益に掛ける倍率は、k 9%(基本7.5%に循環+0.5%・値決め力+0.5%・寿命+1.0%)とg 4%の式の上限に対し、楽観8.5割・やや楽観8割・中立7.5割・やや悲観6割。SiTime株とその売却後の現金は、事業と分けて「余った現金」とし、税引き後の7割、戻り方1.0(過去5年に流通株を約4割減らした実績)で足した。SiTime株は10年の値上がりの道筋を筋書きごとに置き(楽観4.5倍〜悲観0.45倍、確率加重で資本コスト並み)、10年で売り切る前提で現金に直した。自己資本は、この値上がり分(評価差額)を含むため、今+純利益−還元より大きい。店舗や倉庫の賃借がほぼ無く、新リース会計の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.22→13.08 倍・やや楽観 PER 8.55→11.54 倍・中立 PER 7.89→11.11 倍)。 2026-10-22:余り資産を R4 の holdings・rental に移したので、時価総額を式で出し直した(楽観〜中立の PER は新しい上限に置き直し、ほかは倍率そのまま:やや悲観 875 → 874.5(PER 6.32 倍))。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。