結論
芝浦メカトロニクスは、半導体を積み重ねて一つのチップに仕立てる後工程の装置と、洗浄・FPD・真空などの装置を手がける中堅メーカーだ。AI向けGPUの組み立てに使うボンダ(チップを基板に載せて接合する装置)が伸び、2026年3月期は営業利益が4年連続で過去最高になった。
筆者の結論は「割高」である。事業の質は悪くない。だが売上が900億円規模の専業で、顧客は台湾に偏り、半導体投資の波をまともにかぶる。10年先も今の利益率を保てると見込むには、競争相手の顔ぶれが大きすぎる。
強みは先端パッケージの2.5D実装で早く実績を作ったことだ。2019年に市場へ投入し、AI需要が来る前から顧客の工程に入った。受注は直近で急に増えている。ただ接合の主役は、より精密なハイブリッド接合へ動きつつある。ここで同社が主役に残れるかが、10年の利益を決める。
一方で財務は堅い。純現金があり、借金で無理をする会社ではない。10年後の中立の姿は、売上1,600億円、営業利益270億円前後と今の1.7倍だ。それでも今の時価総額には届かない。事業の稼ぎに対して、今の値段は先の成長を前払いしすぎている。
筆者がいちばん気にしているのは、利益の山の高さではなく、山のあとの姿だ。装置会社は景気が悪いときに固定費が重くのしかかる。芝浦も2009年や2013年の前後は赤字を経験している。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、芝浦は「好調な時に買うのは怖い会社」だ。事業は理解しやすい。装置を売り、保守で稼ぐ。だが10年後の利益を読むには、接合方式の技術の行方という一点が重すぎる。
堀は中程度と見る。顧客の工程に入った実績は価値があるが、方式が変われば価値は落ちる。ROEの20%超は、AIの設備投資が山にある今の数字で、10年の平均には使えない。
資本の使い方は堅実だ。借金は無く、配当も着実に出す。ただし利益の大半を設備と開発に再投資しており、オーナーの手元に残る利益は見かけより少ない。
安全域の面では、10年の中立の事業価値を資本コストで割り引くと、今の時価総額に届かない。強気の筋書きでは期待を上回るが、悪い筋書きでは今の時価総額の3割にも満たない。払う値段に見合う安全域は、足元では確認できない。
要するに、事業の質は評価できるが、値段が事業の将来の姿を先に払っている。10年という長さで測ると、その差が埋まる筋書きは少ない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は二つある。後工程のメカトロニクスシステム部門と、前工程のファインメカトロニクス部門だ。2026年3月期の売上は前者が314億円、後者が522億円だった。
後工程は先端パッケージ向けのボンダが中心だ。AIチップの大型化で、複数のチップをシリコンの土台の上に並べる2.5D実装が増えている。芝浦はこの工程の装置を2019年に投入し、台湾の顧客を軸に納入を広げた。2026年9月には、ハイブリッド接合の前処理を1台で行う装置HSM-1000の販売も始めた。接合の質を左右する洗浄や表面処理を取り込み、ボンダとの組み合わせで売る狙いだ。
前工程は、ウェット洗浄、FPD(液晶・有機ELの表示パネル)の洗浄・貼り合わせ装置、スパッタなどの真空装置、レーザ装置から成る。FPDは縮む市場で、半導体向けの洗浄へ重心を移している最中だ。パネル用のスピン装置のように、次世代パッケージの工程に使う新製品も出てきた。
地域別の売上は台湾41%、中国30%、日本24%だ。海外が8割近い。会社は2026年度から3年の中期経営計画で、売上1,000億円以上とROE20%以上の維持を掲げる。
顧客との関係では、装置の納入後の保守や部品の供給も収益になる。一度入った装置は数年の周期で買い替えや増設の話になるので、顧客との結びつきの強さがそのまま次の受注を左右する。
事業の収益性は、後工程が部門利益率で25%近く、前工程が15%前後と差がある。会社が後工程の比率を高めたいと考えるのは当然だ。
優良さと弱いところ
堀はあるが、広くはない。強みは2.5D向けボンダの先行実績と、洗浄・接合の前処理まで一括で提案できる点だ。顧客の工程に一度入ると、装置を入れ替えるには再検証の手間がかかる。この切り替えの面倒さが、同社の守りになっている。
弱みは規模だ。接合の最先端ではBESIなど海外勢が強く、TCボンダではASMPTやハンミ半導体が競う。売上900億円の会社が、これらと開発費で張り合い続けるのは重い。シェアを数字で示せないことも、強みを測りにくくしている。
資本効率は良い。ROEは直近で20%、営業利益率は17%と、この10年で最も高い水準にある。だが利益率が3%台だった時代が長く、今の水準はAI向けの需要が押し上げた面が大きい。筆者は、この利益率が10年先もそのまま続くとは見ていない。
経営は堅実だ。借金に頼らず、増収増益を5期続けた。今村社長のもとでFPDから半導体への転換を進めたのは評価できる。ただし、顧客の名前も受注残も開示が薄く、投資家から見える情報が少ない点は割り引く。
堀の強さをもう一段厳しく測ると、技術の差が続くかどうかは接合の方式が変わる節目ごとに試される。現在の優位が次の世代にも続く前提は置かない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
先端パッケージの装置市場は、AIの計算基盤の拡大とともに伸びている。GPUとHBM(積み重ねた高速メモリ)を同じ土台に載せる構造が標準になり、後工程の装置は前工程並みに注目される分野になった。芝浦は2026年3月期に後工程の受注が7割増え、2026年4〜6月期の受注は前年同期の3倍近くに跳ねたとみられる。
半導体の装置の需要は、電気機器ノートが置く前提どおり、10年で実質は伸びる。ただし伸び方は一定ではない。2018〜2019年や2008〜2009年のように、需要が4割前後縮む年が必ず来る。芝浦は規模が小さく、この波の影響を直に受ける。
競争では、ハイブリッド接合を握るBESI、TCボンダのASMPT・ハンミ、前工程の洗浄を押さえるSCREENや東京エレクトロンがいる。接合の方式は数年で変わりうる。ガラスや樹脂のインターポーザーへの移行も議論されていて、芝浦はその新型ボンダを開発する方針だ。
FPD装置は構造的に縮む。有機ELの設備投資は一巡し、中国勢の内製も進む。会社は半導体比率を9割へ高める計画で、残りの事業は縮小を前提に見たほうがよい。中国向けの売上は3割あり、輸出規制の動きも気になる。
筆者は、この市場の追い風は本物だが、同社の取り分は限られるとみる。市場が10年で倍近くになっても、シェアを守れる会社と落とす会社に分かれる。
資本政策と M&A
還元は安定している。配当性向は約35%で、2027年3月期は増配を予想する。自社株買いは2017年のToSTNeT-3による買付けが確認できるが、それ以降の継続した方針は見当たらない。
成長投資は厚い。2026年度は成長投資に213億円を見込み、前期から増える。設備と研究開発に回し、フリーキャッシュフローは5億円にとどまる見通しだ。稼いだ利益を再投資に回す局面で、還元を一気に増やす余地は小さい。
大きな買収はしていない。過去の事業再編は、1998年の東芝メカトロニクスとの合併、2005年の本多エレクトロンからの検査装置事業の移管が中心だ。東芝は2017年に関係会社でなくなり、2023年に保有株を売って資本関係は解消した。信越エンジニアリングが5.9%を持つ大株主だが、支配株主はいない。
TOBの可能性は、kabufuの試算で10年以内に2割弱ある。小型の装置会社を海外勢や国内大手が買う動きは起こりうる。ただし筆者は、TOBを前提にした価値は置かない。
資本政策で筆者が望むのは、成長投資の効果が見えたあとの株主還元の引き上げだ。ROE20%を保つには、利益が伸び続けるか、還元で自己資本の膨らみを抑える必要がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AIの半導体は大型化が続き、2.5Dやチップレットの組み立て工程は10年先も増える。芝浦は2019年に先端パッケージ向けボンダを投入し、AI需要が来る前から顧客の工程に入った。台湾の大手顧客との関係は一朝一夕には作れない。
足元の受注は急に伸びている。2026年3月期は後工程の受注が7割増え、2026年4〜6月期の受注は前年同期の3倍近くになった。通期の売上990億円は、まだ控えめな計画だ。
ハイブリッド接合の前処理装置HSM-1000、パネル用スピン装置、ガラスや樹脂のインターポーザー向けボンダと、次の世代の製品も手がけている。洗浄と接合の組み合わせで売れれば、1台あたりの売上も増える。財務は無借金で、配当は着実に増やしている。AI向けの設備投資が10年続けば、売上2,000億円超も見える。
中国向けの規制が強まっても、台湾と日本、米国向けの装置で穴を埋められる。会社が掲げる半導体比率9割という方針は、AI向けの装置に経営資源を集中させるという意思表示でもある。
慎重な見方
売上900億円の会社が、BESI、ASMPT、ハンミ、SCREEN、東京エレクトロンと張り合う構図は重い。接合の本命はハイブリッド接合へ動きつつあり、2.5D向けボンダで築いた実績が次の世代でも通用する保証はない。
顧客は台湾に偏り、売上の4割強がここから来る。大手顧客が投資を止めれば、受注は一気に消える。2026年4〜6月期の売上と営業利益は前年を下回り、受注の急増が利益に結びつくまでには時間がかかることを示した。
過去のこの会社は、赤字の期が5回あり、利益率が3%台だった時期が長い。今の17%の営業利益率は、AI投資の山の数字だ。会社自身が予想する今期の営業利益率は16%に下がる。FPD装置は縮み、中国向けは3割あって規制の不安もある。10年の平均で今の利益率を保つのは難しい。
成長投資に213億円を使い、フリーキャッシュフローは5億円にとどまる計画だ。受注が計画より伸びなければ、設備と人件費の負担だけが残る。小さな会社が大手と同じ開発競争を続ける重さは、利益率に必ず響く。
どちらに重みを置いたか
事業の勢いと財務の堅さでは強気の見方が正しい。だが、10年で測ると慎重な見方が勝つ。小さな専業が、接合の方式が変わる10年を同じ位置で乗り切れる確率は高くない。確率は中立を最も厚くし、シェアを失う方向のやや悲観にも同じ厚みを置いた。楽観は、業界の追い風が続く場合に限るため1割にとどめた。どちらの言い分にも根拠があり、足元の勢いは本物だが、10年先の位置づけは読み切れない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,954 円3,252 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 892 円586 億円)。 今の値に割り戻すと 2,843 円1,866 億円、今との差 −10.9%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 11,134 円7,308 億円 | 1,449 円951 億円 | +294.4% | +14.7% | 1,258 円826 億円 |
| やや楽観 | 22% | 7,590 円4,982 億円 | 1,141 円749 億円 | +173.7% | +10.6% | 1,921 円1,261 億円 |
| 中立 | 33% | 5,377 円3,530 億円 | 929 円610 億円 | +97.7% | +7.1% | 2,081 円1,366 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,505 円988 億円 | 683 円448 億円 | −31.4% | −3.7% | 481 円316 億円 |
| 悲観 | 13% | 503 円330 億円 | 305 円200 億円 | −74.7% | −12.8% | 105 円69 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,954 円3,252 億円 | 892 円586 億円 | +83.3% | +6.2% | 5,846 円3,838 億円 |
今の株価時価総額 3,190 円2,094 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% AIパッケージの定番装置として定着 利益 392 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 11,134 円7,308 億円
AIチップの大型化は止まらず、2.5Dやチップレットの組み立て工程は10年先も増え続ける。世界の先端パッケージ向け装置市場は実質で今の3倍、75億ドルに育つ。芝浦はハイブリッド接合の前処理まで含めた一括の提案で顧客の工程に入り込み、シェアを10%まで高める。ガラスや樹脂を使う新型インターポーザー向けの次世代ボンダも、他社より早く量産に乗せる。後工程の営業利益率は27%に上がる。前工程側はパネル用スピン装置などが当たり、FPDの落ち込みを埋める。台湾の大手ファウンドリとの関係が深まり、受注の波も小さくなる。会社は売上2,500億円近い中堅の装置メーカーになり、配当と自社株買いで利益の4割を返し続ける。筆者はこの姿を、うまくいった場合の上限と見ている。
- 後工程装置(先端パッケージ用ボンダなど):数量 75.0(先端パッケージ向けボンダ・中工程装置の世界市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 20(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,508 億円・営業利益 407 億円。市場75億ドル(実質)× シェア10%、営業利益率27%
- 前工程・その他装置(洗浄・FPD・真空・レーザ):数量 230(装置の年間売上台数(台、推定))× 価格 4.17(1 台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 959 億円・営業利益 153 億円。230台 × 1台約4.2億円、営業利益率16%
倍率:事業の純利益 392 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.8% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍。全体の PER 17.83 倍、時価総額 6,989 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:先端パッケージの投資が10年続き、同社が2.5D実装の標準装置の地位を守る筋書き。シェア拡大と高採算の両立が要るので、確率は1割にとどめた。
やや楽観 22% 先端パッケージの有力な二番手として成長 利益 269 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 7,590 円4,982 億円
世界の先端パッケージ向け装置市場は実質で58億ドルまで伸び、芝浦のシェアは9%に落ち着く。2.5D向けボンダの実績は残るが、ハイブリッド接合の本命はBESIなど海外勢で、芝浦は前処理や洗浄と組み合わせて食い込む。営業利益率は25%と今と同じ水準を保つ。前工程はウェット洗浄の新製品が育つ一方、FPDは縮み、全体では台数が少し増える程度にとどまる。顧客は台湾が中心のままで、中国向けは規制で細る。それでも配当性向35〜40%を守り、自己資本は着実に積み上がる。成長は市場並みで、会社の売上は10年で2.2倍ほどになる。
- 後工程装置(先端パッケージ用ボンダなど):数量 58.0(先端パッケージ向けボンダ・中工程装置の世界市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 18(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,049 億円・営業利益 262 億円。市場58億ドル(実質)× シェア9%、営業利益率25%
- 前工程・その他装置(洗浄・FPD・真空・レーザ):数量 220(装置の年間売上台数(台、推定))× 価格 3.99(1 台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 878 億円・営業利益 123 億円。220台 × 1台約4.0億円、営業利益率14%
倍率:事業の純利益 269 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.6% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.22 倍、時価総額 4,632 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:同社が先端パッケージ向けの需要を着実に取り込み、市場の拡大で売上が倍以上になる筋書き。足元の受注の急増と中期計画の方向に近いので、確率を厚めに置いた。
中立 33% 市場は伸びるがシェアは少し譲る 利益 192 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 5,377 円3,530 億円
先端パッケージ向け装置の市場は実質で47億ドルと今の1.9倍になる。ただし接合の工程は技術の移り変わりが速く、芝浦のシェアは8%へ少し下がる。2.5Dボンダで築いた先行の利益は、次の世代では競争で薄まる。営業利益率は22%で、今の25%近い水準より下がる。前工程はFPDが細り、洗浄や真空の装置で補う形で、台数は2割弱の増加にとどまる。台湾の顧客の投資が一巡する年は、受注と利益が大きく落ちる。10年の利益は今の1.7倍で、自己資本の増え方は還元で抑えられ、ROEは13%前後と今より落ち着く。中期計画の売上1,000億円は通過点にすぎず、その後は市場の伸びと同じ速さでしか増えない。技術の差で値段を保てる局面は短く、受注は半導体の景気に沿って上下する。
- 後工程装置(先端パッケージ用ボンダなど):数量 47.0(先端パッケージ向けボンダ・中工程装置の世界市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 16(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 756 億円・営業利益 166 億円。市場47億ドル(実質)× シェア8%、営業利益率22%
- 前工程・その他装置(洗浄・FPD・真空・レーザ):数量 205(装置の年間売上台数(台、推定))× 価格 3.99(1 台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 818 億円・営業利益 110 億円。205台 × 1台約4.0億円、営業利益率13.5%
倍率:事業の純利益 192 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍。全体の PER 16.5 倍、時価総額 3,168 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場の拡大を取り込むが、ASMPT・BESI・ハンミなどとの競争でシェアは今より少し下がるとみる、最も起こりやすい筋書き。
やや悲観 22% 投資の一巡と競争で成長が止まる 利益 90 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,505 円988 億円
先端パッケージ投資が一巡し、市場は実質33億ドルで頭打ちになる。接合の主役がハイブリッド接合へ移り、2.5D向けのボンダが中心の芝浦はシェアを6.5%まで落とす。TSMCなどの大手顧客が内製や他社への切り替えを進め、値引き圧力も強まる。営業利益率は17%まで下がる。前工程ではFPD装置が縮み、洗浄の新製品も立ち上がりが遅れる。受注の波に合わせて人員と固定費を調整するが、利益は今を下回る水準で横ばいになる。ROEは資本コストに届かず、利益の積み上がりは価値になりにくい。2.5Dで先行した実績は残るが、新しい世代の装置では顧客が複数の会社を競わせる。配当は守るものの、増配の余地は利益の伸びが止まるぶん小さくなる。
- 後工程装置(先端パッケージ用ボンダなど):数量 33.0(先端パッケージ向けボンダ・中工程装置の世界市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 13(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 431 億円・営業利益 73 億円。市場33億ドル(実質)× シェア6.5%、営業利益率17%
- 前工程・その他装置(洗浄・FPD・真空・レーザ):数量 175(装置の年間売上台数(台、推定))× 価格 3.87(1 台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 678 億円・営業利益 68 億円。175台 × 1台約3.9億円、営業利益率10%
倍率:ROE 8.2% が k 8.25% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER は 1÷k=11.4 倍が上限。シェアを失い、利益率が薄れ、投資の波にも振れる事業なので、稼ぐ力から 8.0 倍に置いた。
確率:AIパッケージ投資が一巡し、新型の接合方式で芝浦のシェアが落ちる筋書き。小さな専業の装置会社には珍しくない展開で、確率を厚めに置いた。
悲観 13% 構造的に優位を失う 利益 5 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 503 円330 億円
次世代の接合方式が別の会社の装置で標準になり、芝浦のボンダは主要な工程から外れる。大手顧客の内製化と中国勢の台頭が重なり、シェアは4%まで落ちる。市場は実質22億ドルにとどまり、値引きが続く。後工程の営業利益率は2%に沈む。FPD装置は需要が消え、前工程も採算割れに近づく。会社は固定費を削るが、研究開発を止めれば次の世代を逃すので、利益はほぼ出ない。ただし純現金と土地・設備の価値は残るので、会社が解散値を割り込むことはない。事業を続けるより資産の価値が主になる10年である。経営は事業の絞り込みと固定費の削減に追われ、中期計画の目標は取り下げられる。純現金と設備の価値が株価の下支えになるが、成長の物語は終わる。還元の200億円は、利益が落ちる前半の配当と、ためた手元資金と、遊休資産の売却による支払いである。
- 後工程装置(先端パッケージ用ボンダなど):数量 22.0(先端パッケージ向けボンダ・中工程装置の世界市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 8.04(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 177 億円・営業利益 4 億円。市場22億ドル(実質)× シェア4%、営業利益率2%
- 前工程・その他装置(洗浄・FPD・真空・レーザ):数量 130(装置の年間売上台数(台、推定))× 価格 3.58(1 台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 465 億円・営業利益 14 億円。130台 × 1台約3.6億円、営業利益率3%
倍率:事業の稼ぐ力は純利益 5 億円で、k 8.25% で割っても 60 億円にとどまるため、純現金と売れる資産の税後 330 億円を床にした。今の自己資本 556 億円に 0.59 倍を掛けた(ためた利益には掛けない)。
確率:接合の方式が変わり、同社の装置が主流から外れて、さらにFPDも消える複合の筋書き。顧客が少数の専業メーカーでは起こりうるので、1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
後工程装置(先端パッケージ用ボンダなど)
AI向けGPUなどの組み立てに使うボンダと中工程の装置。メカトロニクスシステム部門の中核。
| 数量先端パッケージ向けボンダ・中工程装置の世界市場(億ドル・今の値段で測った実質) | 価格実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 13 | 314 | 78 |
| 10 年後 中立 | 47.0 | 16 | 756 | 166 |
取り方:後工程部門の売上314億円・利益78億円は会社開示。世界の市場規模は開示がなく、TCボンダ・ハイブリッドボンダ・フリップチップボンダなど先端パッケージ向けの装置を合わせて約25億ドルと推定し、シェアは約8.4%(推定)。数量は実質の市場、物価3%は価格(シェア×150円×物価の倍率)に入れた。市場の伸びの根拠は電気機器ノートのWFEの見通しとAIのパッケージ需要の拡大。
前工程・その他装置(洗浄・FPD・真空・レーザ)
ウェット洗浄、FPD洗浄・貼り合わせ、真空、レーザなどの装置。ファインメカトロニクス部門とその他。
| 数量装置の年間売上台数(台、推定) | 価格1 台あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 190 | 2.98 | 566 | 81 |
| 10 年後 中立 | 205 | 3.99 | 818 | 110 |
取り方:ファインメカトロニクス部門522億円とその他44億円を合わせた566億円を、1台約3億円で約190台と推定(FPD洗浄・貼り合わせは大型で高額、洗浄・真空は中型)。台数は実質の数量で、半導体向け洗浄の増加とFPDの減少が打ち消し合う。物価3%と高機能化の単価上昇は1台あたり売上に入れた。部門利益は81億円。
リスクと懸念
接合方式の変化
ハイブリッド接合の普及や、ガラス・樹脂インターポーザーへの移行で、2.5D向けボンダの出番が減るおそれがある。芝浦は新型ボンダを開発するが、BESIやASMPTのほうが先を行く分野もあり、方式が変わるたびにシェアを守る保証はない。
台湾の顧客への偏り
売上の4割強が台湾向けで、大手ファウンドリの投資計画に大きく左右される。顧客名は開示されず、1社の設備投資が止まれば受注が急に消える。内製化や他社への切り替えが起きても、外から変化を知りにくい。
半導体投資の波
半導体装置の需要は、2009年や2019年のように4割近く縮む年がある。芝浦は規模が小さく固定費も重いので、売上が落ちると利益が大きく崩れる。過去には赤字の期が5回あった。
FPD事業の縮小
FPD装置は有機ELの投資が一巡して構造的に縮む。会社は半導体比率を9割へ高める計画だが、残る事業の撤退や減損が出れば、利益を押し下げる。
対中規制と中国勢
中国向けの売上は3割ある。輸出規制が強まれば売上が失われ、中国の装置メーカーの台頭で単価も下がる。洗浄や真空の装置では、中国勢との競争がすでに始まっている。
成長投資の回収
2026年度は成長投資に213億円を見込み、フリーキャッシュフローは5億円にとどまる。投資に見合う受注が来なければ、減価償却の負担が利益率を押し下げる。
今後の分かれ目
- 次の四半期でも受注の急増が続き、売上と営業利益に結びついたら
- 楽観・やや楽観の筋書きの確率を少し上げてよい。受注残と利益率の改善を合わせて確認する。
- ハイブリッド接合の前処理装置HSM-1000が複数の顧客で量産採用されたら
- 接合の前処理まで含む一括提案が機能しているとみて、シェアを守る前提を強める。
- 台湾の大手顧客が先端パッケージの投資を先送りしたら
- やや悲観・悲観の筋書きへ重みを移す。受注高と売上の差を見る。
- ガラスや樹脂のインターポーザーが急速に広がり、芝浦の新型ボンダが採用されなかったら
- 後工程のシェアが落ちる前提に切り替え、悲観側の確率を上げる。
- 他社が芝浦に買収提案をしたら
- 事業の価値と提示額を比べて見直す。TOBは前提にしないが、起きれば筋書きは変わる。
- FPD装置の撤退や大型の減損が発表されたら
- 利益の質が上がる面と、一時の損失が出る面を分けて見る。
見ておくもの
- 四半期の受注高と受注残(後工程の動き)
- 台湾の大手顧客の先端パッケージ投資の発表
- BESI・ASMPT・ハンミのハイブリッド接合とTCボンダの受注
- 中期経営計画のフェーズ2(売上1,000億円・ROE20%)の進み具合
倍率と資本コストの決め方
今の値段は見ずに、先端パッケージ向けの市場(推定)とシェアから売上を積み、物価3%は価格に入れた。倍率は資本コスト8.25%(基本7.5%に循環+0.5%・値決め力+0.25%・寿命+0.5%)と長期の成長率4%から、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)で決め、中立は上限の8.6割にした。悲観は稼ぐ力が小さいので純現金と売れる資産の床から置いた。10年の価値は今の時価総額を大きく下回ったが、計算に従った。リースは小さく、新リース会計基準でBSの形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.63→17.83 倍・やや楽観 PER 12.12→17.22 倍・中立 PER 11.46→16.5 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。