結論
千代田インテグレは、プリンターやスマートフォン、自動車の内部に入る小さな部材を、型で打ち抜いて作る会社だ。会社はこれを「ソフトプレス」と呼ぶ。顧客は電機・自動車メーカーで、従業員の9割が海外にいる。
筆者の結論は「割安」だ。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を3割ほど上回る。理由は財務にある。純現金が時価総額の半分に近く、会社は毎年、利益を超える額を配当と自社株買いで返している。2025年12月期の総還元性向は161%だった。
事業そのものは平凡だ。売上は10年で横ばい、営業利益率は5〜9%の間を動く。民生機器向けは成熟し、関税で生産地も動く。伸びしろは自動車のADAS(運転支援)用センサーと電池、そして医療用品にある。
注目すべきは株主構成だ。シンガポール籍のいちごトラストが約32%を持つ筆頭株主で、還元の強化を後押ししている。政策保有株の売却も進む。
筆者は、事業の伸びに頼らず、現金と還元の確かさで評価する会社だと見ている。ただし、現金を持ち続ける価値は、会社が実際に返し続ける間だけだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社の本質価値をどう見るか。
事業は、10年先を自信を持って予想できる種類ではない。部材は安く、顧客の生産地の移動に左右され、値下げも続く。堀はあるが深くはなく、確信度は下げる。
見るべきは、現金と、その使い方だ。純現金は時価総額の半分に迫る。会社は利益を超える額を株主に返し、株数を減らしてきた。経営が資本を無駄遣いしない姿勢は、評価できる。大きな買収に走らず、投資も設備の更新と海外の増設に限られる。
安全域は、現金の厚みにある。事業の価値がゼロに近づいても、現金は残る。ただ、現金が少数株主に届くのは、会社が返し続ける間だけだ。筆頭株主のいちごトラストが約32%を持つため、返す圧力は強く、この点は安心材料になる。
オーナー利益は、見かけの純利益に近い。工場の更新は、物価で費用が膨らむが、古い設備の償却は取得時の値段のままで、利益は有利に見える。実際の現金の流出は、更新で膨らむ。この二面を、筆者は意識して読む。
総合すると、割安だが、事業の成長は期待しない。現金と還元の確かさで持つ銘柄だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、電子機器や自動車の内部に入る、小さな打抜き部品である。
素材はフェルト、フォーム(発泡素材)、フィルム、粘着テープなど。これを顧客の設計に合わせて型で打ち抜き、貼り合わせて納める。クッションや防振、絶縁、遮音、封止を担う部材だ。用途は、プリンター・複合機などのOA機器が売上の34%、自動車(AE機器)が31%、テレビや音響などのAV機器が14%、ゲーム機や医療などが12%、スマートフォンなど通信機器が3%。
生産は海外が中心で、連結の従業員2,756人のうち、東南アジアが1,436人、中国が806人、北米が233人。日本は246人にとどまる。2025年12月期の売上は、日本が97億円、東南アジアが137億円、中国が94億円、北米が43億円だった。
子会社には、手芸向けにフェルトを加工するサンフェルトがある。研究開発では液晶ポリマー(LCP)フィルムの開発を進めている。中期計画では、自動車向けの設備を日本に整え、ベトナムに第二工場用地を取得し、欧米のAE機器向け設備を増強する。
優良さと弱いところ
堀は、顧客との設計の付き合いと、アジア・北米・欧州に広がる拠点網にある。
顧客の新製品の開発段階から入り込み、部材の形と素材を一緒に決める。一度採用されると、顧客の工程に組み込まれ、簡単には他社に替えられない。ただ、部材は一つひとつが安く、顧客は毎年の値下げを求める。値段を自分で決められる事業ではない。
数字は、強さと弱さの両方を映す。営業利益率は2024年12月期に9.4%に達したが、2025年12月期は7.8%まで下がった。10年の売上はほぼ横ばいで、過去最高だった2016年12月期の566億円から380億円まで減っている。顧客が最終製品の生産を動かすたびに、受注も動く。
財務は極めて強い。自己資本比率は80%で、純現金が158億円ある。借金で苦しむ心配はない。
経営の資本配分は、最近は筋がよい。自社株買いと消却を続け、政策保有株を売り、総還元性向の目標を120%に置いた。過去に1株あたりの利益を、株数を減らすことで支えてきた面もある。事業の伸びの乏しさを、還元で補っている会社だと筆者は見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社が売る打抜き部材の市場は、電子機器と自動車の生産量に連動する。数量は、完成品の台数の伸びと、1台に入る部材の数で決まる。
OA機器、AV機器、スマートフォンは成熟し、世界の台数はほぼ横ばいか、わずかに減る。プリンターや複合機は、オフィスの紙が減るにつれて縮む。一方、自動車は電装化が進み、1台に入る部材は増える。ADAS用のカメラやレーダー、電池まわりの絶縁・防振・放熱の部材が、新しい需要だ。医療用の使い捨て品やヘルスケア品も、部材の用途が広がる分野である。
米国の関税政策が、足元の最大の変数だ。2025年12月期は、東南アジアでOA・AV機器の受注が減り、中国のAE機器は米国への生産移管が進み、メキシコではOEM生産が縮んだ。顧客が生産地を動かすたびに、部材の拠点も動かざるをえない。
競合は、粘着材メーカーの加工部門や、各地に点在する加工専業だ。参入障壁は高くなく、価格で競う局面が多い。為替も大きく、2026年上期は円安が売上を12億円押し上げた。ただし、円換算の利益は為替で動くだけで、事業の力ではない。
資本政策と M&A
還元は、この会社でいちばん分厚い論点だ。
2025年12月期は、配当に加えて約28億円の自社株買いを実施し、総還元性向は161%だった。同じ期に株式200万株、約57億円分を消却した。2026年も、2月と6月に合計約23億円の自社株買いを済ませている。中期計画では、総還元性向120%、純資産配当率4%、自己資本利益率8%以上、株価純資産倍率1倍を掲げる。
筆者は、この目標を信頼している。理由は二つある。純現金が158億円と厚く、返す余力があること。もう一つは、筆頭株主のいちごトラストが約32%を持ち、還元を求め続けることだ。
政策保有株の縮減も進む。有価証券報告書では53銘柄、約31億円で、日本毛織やブラザー工業などが主な銘柄だ。2026年上期は1銘柄の売却で11億円の益が出た。ただ、額は小さく、価値を大きく動かさない。
M&Aは、中期計画に方針が見当たらない。自前の設備投資と海外拠点の再編が中心だ。TOBの確率は、市場の推計で10年に約27%とされる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
純現金は158億円で、時価総額の半分に迫る。会社は2025年12月期に、利益の1.6倍を株主に返した。目標の総還元性向120%と純資産配当率4%は、現金を使い切る前提ではなく、利益と余った現金の両方を使うことで達成できる。いちごトラストが約32%を持つため、還元の後退は考えにくい。
事業の伸びしろもある。中期計画は、売上450億円、営業利益42.5億円、自己資本利益率8%以上を掲げる。自動車のADAS・電池向け部材は、数量も単価も伸びる。ゲーム機や医療用品も新しい柱になる。2026年12月期の会社予想は、売上400億円(5%増)、営業利益30億円、為替は想定を上回る円安で、上期は営業利益が15%増えた。
政策保有株の売却は続き、純資産の効率が上がる。自己資本比率は80%で、事業の景気が悪化しても、現金が盾になる。TOBの確率も市場は約27%と見ており、買収される側に回れば、現金の厚みが値段に乗る。
慎重な見方
事業は10年で売上が横ばいどころか、566億円から380億円へ縮んだ。OA、AV、スマートフォンは成熟し、関税で生産も動く。2025年12月期は、OA・AV・通信の合計で約30億円の減収だった。営業利益は2割減り、日本の利益はほぼゼロまで落ちた。
中期計画は、売上450億円、営業利益42.5億円を掲げるが、直近の実績とは距離がある。会社の目標が実績に追いついたことは、過去に多くない。
純現金は厚いが、その価値は会社が返す間だけだ。返し続ければ現金は減り、余力は削られる。2025年は総還元性向161%で、現金は取り崩されている。いちごトラストの圧力も、長期では事業への投資余地を狭める。顧客依存が強く、値下げ要求と関税の下で、利益率が落ちる年が続く可能性がある。
為替の追い風も、円安が戻れば消える。2026年の利益には、11億円の株式売却益が含まれ、本業の稼ぎは予想の35億円より小さい。
筆頭株主の存在も両刃だ。いちごトラストが約32%を持つため、少数株主は買い手が現れにくい構造に置かれる。政策保有株の売却益は一度きりで、続かない。株数を減らして1株の利益を支える手法には限りがある。
どちらに重みを置いたか
現金の厚みと還元の確かさは、強気の見方が正しい。事業の伸びは、慎重な見方が突く実績に乏しい。ただ、どちらの見方でも、現金が残る点は動かない。中立の筋書きでは、事業は物価並みにしか伸びず、それでも10年後の時価総額は今の1.5倍、配当と自社株買いの合計は今の時価総額を上回る。確率は、中立に0.38を置き、やや悲観に0.25、悲観に0.10を置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 5,833 円491 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 3,641 円306 億円)。 今の値に割り戻すと 5,366 円451 億円、今との差 +58.1%、 期待の年率 +10.8%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 12,246 円1,030 億円 | 5,230 円440 億円 | +414.8% | +17.8% | 1,223 円103 億円 |
| やや楽観 | 20% | 8,734 円735 億円 | 4,445 円374 億円 | +288.2% | +14.5% | 2,636 円222 億円 |
| 中立 | 38% | 6,438 円542 億円 | 3,922 円330 億円 | +205.2% | +11.8% | 3,937 円331 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,670 円225 億円 | 2,853 円240 億円 | +62.7% | +5.0% | 1,381 円116 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,154 円97 億円 | 1,819 円153 億円 | −12.4% | −1.3% | 297 円25 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,833 円491 億円 | 3,641 円306 億円 | +179.1% | +10.8% | 9,474 円797 億円 |
今の株価時価総額 3,395 円286 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 車載とヘルスケアが主役に育つ 利益 53 億円 · PER 18.5 倍 · 株価時価総額 12,246 円1,030 億円
車載のADAS用センサーと電池向けの部材が伸び、出荷個数は10年で1.6倍になる。日系自動車メーカーの採用が広がり、欧米のメガサプライヤーからも受注を取る。北米とスロバキアの工場が稼働して関税の影響を避け、営業利益率は10.5%まで上がる。
ゲーム機や医療用使い捨て品、液晶ポリマーの高機能材料も、数量が2倍になる。民生機器向けは縮みが緩やかで、出荷は今の95%を保つ。
売上は650億円、営業利益は約59億円(利益率9%)。過去の山に並ぶ水準だ。総還元性向は110%を保ち、自社株買いで株数が減る。いちごトラストが筆頭株主として株主還元を後押しし続ける。
- OA・AV・通信・家電機器向け:数量 26.0(出荷個数(億個・年、推定))× 価格 11(1個あたり売上(円・名目、億円÷億個))→ 売上 275 億円・営業利益 21 億円。OA・AV・通信・家電向け:出荷26.03億個、1個あたり売上10.5504、営業利益率7.5%
- 自動車(AE機器)向け:数量 6.2(出荷個数(億個・年、推定))× 価格 41(1個あたり売上(円・名目、億円÷億個))→ 売上 255 億円・営業利益 27 億円。自動車(AE機器)向け:出荷6.24億個、1個あたり売上40.8、営業利益率10.5%
- ゲーム機・メディカル・デバイス向け:数量 1.5(出荷個数(億個・年、推定))× 価格 82(1個あたり売上(円・名目、億円÷億個))→ 売上 120 億円・営業利益 16 億円。ゲーム・メディカル・デバイス向け:出荷1.47億個、1個あたり売上81.6、営業利益率13.0%
倍率:事業の純利益 52 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)70 億円。全体の PER 18.46 倍、時価総額 1,030 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:車載のADAS・電池と医療用品が計画どおり育ち、営業利益率が過去の山(9.4%)に並ぶ必要がある。中計の売上450億円という目標に対し、直近は減収で、実績が追いついていないため7%。
やや楽観 20% 車載が伸び、利益率が戻る 利益 41 億円 · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 8,734 円735 億円
車載の出荷個数が1.4倍に伸び、ADASと電池が計画の7割ほど進む。為替の追い風も残り、営業利益率は8%台に戻る。民生機器向けは0.9倍に減るが、単価の下落は小さい。
ゲーム機・医療・デバイスは1.7倍に伸びる。医療用使い捨て品への参入は時間がかかるが、立ち上がる。
売上は約570億円、営業利益は約47億円。総還元性向は110%程度を保つ。自己資本利益率は9%台で、資本コストをわずかに上回る。海外の増設投資は進むが、現金の余力は十分に残る。配当は安定し、自社株買いも続く。車載の伸びが想定を超えれば、さらに上の筋書きに近づくが、そこまでは織り込んでいない。
- OA・AV・通信・家電機器向け:数量 24.7(出荷個数(億個・年、推定))× 価格 10(1個あたり売上(円・名目、億円÷億個))→ 売上 252 億円・営業利益 18 億円。OA・AV・通信・家電向け:出荷24.66億個、1個あたり売上10.2307、営業利益率7.2%
- 自動車(AE機器)向け:数量 5.5(出荷個数(億個・年、推定))× 価格 41(1個あたり売上(円・名目、億円÷億個))→ 売上 221 億円・営業利益 21 億円。自動車(AE機器)向け:出荷5.46億個、1個あたり売上40.5、営業利益率9.5%
- ゲーム機・メディカル・デバイス向け:数量 1.3(出荷個数(億個・年、推定))× 価格 81(1個あたり売上(円・名目、億円÷億個))→ 売上 101 億円・営業利益 12 億円。ゲーム・メディカル・デバイス向け:出荷1.25億個、1個あたり売上81.0、営業利益率12.0%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)58 億円。全体の PER 16.84 倍、時価総額 735 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:車載が計画の7割ほど伸び、為替の追い風も残る想定。過去10年は売上がほぼ横ばいで、成長が実績で裏づけられていないため20%にとどめた。
中立 38% 民生は細り、車載が補う 利益 33 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 6,438 円542 億円
民生機器向けは、OA・AV・通信の成熟需要で出荷個数が0.85倍に減る。価格は物価に届かず1.25倍。顧客の値下げ要求と、関税で生産が日本・中国から米国に移ることが重しになる。
車載は出荷個数が1.25倍、価格は物価並みの1.34倍。ゲーム・メディカルは1.4倍に伸びる。中期計画の売上450億円(2027年12月期)は、実績が届かないと見る。
売上は約510億円、営業利益は約38億円(利益率7.4%)。設備の償却は今の約15億円(推定)から新しい工場の分だけ増えるが、古い設備の償却は増えない。更新の費用は物価で膨らむ。配当は安定し、自社株買いも続けて総還元性向は110%。余った現金は少しずつ減り、自己資本利益率は10%近くになる。
- OA・AV・通信・家電機器向け:数量 23.3(出荷個数(億個・年、推定))× 価格 9.99(1個あたり売上(円・名目、億円÷億個))→ 売上 233 億円・営業利益 16 億円。OA・AV・通信・家電向け:出荷23.29億個、1個あたり売上9.9909、営業利益率6.8%
- 自動車(AE機器)向け:数量 4.9(出荷個数(億個・年、推定))× 価格 40(1個あたり売上(円・名目、億円÷億個))→ 売上 196 億円・営業利益 17 億円。自動車(AE機器)向け:出荷4.88億個、1個あたり売上40.2、営業利益率8.5%
- ゲーム機・メディカル・デバイス向け:数量 1.0(出荷個数(億個・年、推定))× 価格 80(1個あたり売上(円・名目、億円÷億個))→ 売上 83 億円・営業利益 9 億円。ゲーム・メディカル・デバイス向け:出荷1.03億個、1個あたり売上80.4、営業利益率11.0%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 15.34 倍、時価総額 542 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:民生は縮み、車載が補う中心の筋書き。直近10年の売上の動き(年−2.7%)と、2026年の増収予想を合わせて、物価並みの伸びを置いた。
やや悲観 25% 関税と値下げ圧力で利益が痩せる 利益 21 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 2,670 円225 億円
関税で生産の移管が続き、OA・AV向けの受注が細る。民生機器向けの出荷は0.78倍、単価は物価に届かず1.20倍。顧客の値下げ要求が利益率を削る。
車載は期待ほど伸びず、出荷は今と同じ水準。ゲーム・メディカルも横ばいだ。海外の増設投資が先行し、償却が増えて利益率は5.8%に落ちる。
売上は約410億円、営業利益は約24億円。総還元性向は100%に下げ、現金の取り崩しを止める。自己資本利益率は6%台で、資本コストに届かない。いちごトラストは還元の強化を求めるが、業績の下振れが重なる。純現金は厚く、財務の面での不安は小さい。ただ、成長の見通しが立たない中で、自社株買いの価格は上がりにくく、1株あたりの価値の積み上がりは遅くなる。
- OA・AV・通信・家電機器向け:数量 21.4(出荷個数(億個・年、推定))× 価格 9.59(1個あたり売上(円・名目、億円÷億個))→ 売上 205 億円・営業利益 12 億円。OA・AV・通信・家電向け:出荷21.37億個、1個あたり売上9.5912、営業利益率6.0%
- 自動車(AE機器)向け:数量 3.9(出荷個数(億個・年、推定))× 価格 39(1個あたり売上(円・名目、億円÷億個))→ 売上 152 億円・営業利益 11 億円。自動車(AE機器)向け:出荷3.9億個、1個あたり売上39.0、営業利益率7.0%
- ゲーム機・メディカル・デバイス向け:数量 0.7(出荷個数(億個・年、推定))× 価格 78(1個あたり売上(円・名目、億円÷億個))→ 売上 57 億円・営業利益 5 億円。ゲーム・メディカル・デバイス向け:出荷0.73億個、1個あたり売上78.0、営業利益率9.0%
倍率:事業のROE約6.4%がk7.5%を下回るので、上限は1÷k=12.1倍。RONICは約7.3%、g2.5%から正当化PERは約11.4倍だが、やや悲観は構造的な負けを織り込み、上限の6割台の8倍に置いた。余った現金は今の0.75倍を足した。
確率:関税で生産の移管が続き、民生の受注が細る想定。2025年12月期にOA・AV・通信が合計で約30億円減った実績があり、重く25%を置いた。
悲観 10% 主要顧客が離れ、海外拠点が空く 利益 9 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 1,154 円97 億円
米中の分断と関税で、主要顧客が生産を日本・米国に移す。東南アジアと中国の工場は稼働率が下がり、減損が出る。民生機器向けは出荷が0.6倍に減る。
車載は出荷が0.8倍、単価も下がる。営業利益率は3〜5%に落ち、営業利益は10億円ほどになる。現金は薄くなるが、純現金が厚いため倒産の恐れは小さい。
配当は残るが、自社株買いは止まる。現金を持つことの価値は大きいが、事業の利益が出ないため、少数株主には使い道を決められない。優良な会社ではなくなる。
10年後の売上は300億円を割り、営業利益は10億円ほどだ。減損で自己資本は350億円まで細る。それでも配当は4%の純資産配当率を目安に続き、10年で150億円ほどが株主に渡る。現金の使い道は、少数株主が決められないため、評価は大きく割り引かれる。
- OA・AV・通信・家電機器向け:数量 16.4(出荷個数(億個・年、推定))× 価格 8.79(1個あたり売上(円・名目、億円÷億個))→ 売上 145 億円・営業利益 6 億円。OA・AV・通信・家電向け:出荷16.44億個、1個あたり売上8.792、営業利益率4.0%
- 自動車(AE機器)向け:数量 3.1(出荷個数(億個・年、推定))× 価格 36(1個あたり売上(円・名目、億円÷億個))→ 売上 112 億円・営業利益 6 億円。自動車(AE機器)向け:出荷3.12億個、1個あたり売上36.0、営業利益率5.0%
- ゲーム機・メディカル・デバイス向け:数量 0.6(出荷個数(億個・年、推定))× 価格 72(1個あたり売上(円・名目、億円÷億個))→ 売上 42 億円・営業利益 3 億円。ゲーム・メディカル・デバイス向け:出荷0.59億個、1個あたり売上72.0、営業利益率6.0%
倍率:事業のROEが約2%でk7.5%を大きく下回るので、ためた利益は額面未満。稼ぐ力から値付けし、伸びを織り込まない。構造的な負けを前提に6.5倍に置いた。余った現金は今の0.5倍を足した(失敗した投資や谷で食う)。
確率:主要顧客が生産を移し、海外工場の稼働が落ちて減損が出る筋書き。純現金が厚く、悲観の深さは限られるため10%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
OA・AV・通信・家電機器向け
プリンター・複合機、テレビ・音響、スマートフォン、家電の内部に入る打抜き部品。クッション・絶縁・防振・粘着の部材。成熟用途。
| 数量出荷個数(億個・年、推定) | 価格1個あたり売上(円・名目、億円÷億個) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 27.4 | 7.99 | 219 | 16 |
| 10 年後 中立 | 23.3 | 9.99 | 233 | 16 |
取り方:2025/12期の用途別構成(OA34.0%・AV13.9%・通信3.3%+家電・フェルト等の残り)から合計約219億円と推定。1個あたり一桁円台の部品とみて約27億個(推定)。営業利益16億円は全社の地域別利益率(日本・中国・東南アジア平均で約8%)からの配分の推定。数量は実質、物価は単価に入れる。
自動車(AE機器)向け
ADAS用センサー、電池、車内電装まわりの部材。単価が高く、会社が最も伸ばしたい領域。
| 数量出荷個数(億個・年、推定) | 価格1個あたり売上(円・名目、億円÷億個) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3.9 | 30 | 117 | 11 |
| 10 年後 中立 | 4.9 | 40 | 196 | 17 |
取り方:AE機器30.8%=約117億円。民生の約4倍の高単価部材(1個あたり売上は二桁円台の後半)として約3.9億個(推定)。営業利益11億円は推定。中期計画はAE機器を拡大領域とし、2024年度比で140%(3年)を掲げる。
ゲーム機・メディカル・デバイス向け
ゲーム機向け部材、医療用使い捨て品やヘルスケア品、高機能材料(液晶ポリマー等)。
| 数量出荷個数(億個・年、推定) | 価格1個あたり売上(円・名目、億円÷億個) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.7 | 60 | 44 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 80 | 83 | 9 |
取り方:ゲーム・メディカル他11.6%=約44億円。民生の約8倍の高付加価値部材として約0.73億個(推定)。営業利益5.5億円は推定。本社費などの調整は約−4億円(全社の営業利益29.7億円に合わせた)。
リスクと懸念
関税と顧客の生産地の移動
米国の関税で、東南アジアのOA・AV機器の受注が減り、中国のAE機器は米国へ生産が移った。顧客が生産地を動かすたびに、拠点の稼働率と利益が動く。
民生機器の成熟と縮小
OA・AV・通信は売上の半分を占めるが、世界の台数はほぼ横ばいか減少。プリンターや複合機は紙の減少で縮む。2025年は3用途で合計約30億円の減収だった。
顧客の値下げ要求
部材は一つあたり安く、顧客は毎年の値下げを求める。値段を市場に決められるため、物価の上昇を価格に転嫁しきれない。営業利益率は過去10年に5〜9%の間を動いた。
現金の使い道と還元の持続
純現金158億円の価値は、会社が返し続ける間だけ。2025年は総還元性向161%で現金を取り崩している。返す余力が細れば、評価の前提が崩れる。
為替の変動
円換算の売上と利益は為替で動く。2026年上期は円安が売上を12億円押し上げたが、円高に戻れば消える。事業の力とは別に、利益が振れる。
海外拠点の減損
従業員の9割が海外で、アジアが中心。稼働率が下がれば固定資産の減損が出る。カントリーリスクも有価証券報告書で挙げられている。
今後の分かれ目
- 自動車(AE機器)の売上が計画どおり伸び、営業利益率が8%台に戻ったら
- やや楽観の確率を上げる。ADAS・電池向けの伸びが本物かを見る。
- 総還元性向が100%を割り込む、または自社株買いの停止が出たら
- 現金の価値の前提が揺らぐ。やや悲観に重みを移す。
- OA・AV・通信の減収が、さらに2桁で続いたら
- 民生向けの数量0.78倍以下を検討する。
- いちごトラストが保有比率を引き上げる、または株主提案が出たら
- 還元の強化が進む。ただし事業への投資余地は狭まる。
- 米国の関税が緩和され、生産の移管が止まったら
- 東南アジアと中国の稼働率が戻り、利益率が回復する。
- TOBが出たら
- 市場が約27%と見る確率が現実になる。本質価値の計算は変えず、動いた値段は別に見る。
見ておくもの
- 四半期の営業利益率と用途別(AE・OA・AV)の売上
- 総還元性向と自社株買いの実績
- 純現金と余った現金の推移
- いちごトラストの保有比率
- 米国関税の動きと東南アジア・中国の稼働率
倍率と資本コストの決め方
倍率は資本コスト7.5%と、物価並みの成長(g 3.5〜4%)から、利益ベースの正当化PERで決めた。今の株価の倍率や純資産倍率は見ていない。時価総額は、事業の純利益に倍率を掛けて、余った現金を戻り方1.0で足した。現金は帳簿の値のまま足しており、PERに混ぜて上げていない。悲観は稼ぐ力から値付けし、谷の倍率は使っていない。2026年12月期の予想純利益35億円には11億円の株式売却益が含まれるため、流れの起点には27億円を使った。2026年の自社株買い(約23億円)はすでに株数に入っており、自己資本の起点と還元の両方から外した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.3→18.46 倍・やや楽観 PER 12.6→16.84 倍・中立 PER 12.2→15.34 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質の合計0.75%を足した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.50%。