結論
東光高岳は、送配電の機器とスマートメーターを作る東京電力系の中堅メーカーだ。変圧器や開閉装置の電力機器と、電力量計の計量が稼ぎの柱で、東京電力パワーグリッドが筆頭株主かつ最大の顧客を兼ねる。筆者の結論は、今の値段はやや割高というものだ。いちばんの理由は、足元の利益率が出来すぎに見えることにある。
2026年3月期の営業利益率は 8.7% で、過去 10 年の中央値の 3 倍近い。品質不正で止まっていた入札の再開、次世代スマートメーターの更新、特別高圧変圧器の需要が重なった結果だ。会社は 2027 年度の営業利益を 110 億円、2030 年度を 150 億円とする。筆者はこの水準を、10 年先の中立にほぼ置いた。
電力インフラの更新は 10 年続く太い需要で、事業は長く残る。ただ売上の約 4 割は東京電力向けで、値段は入札と親会社の事情で決まる。値決めの力は強くない。品質不正の傷も癒えたばかりだ。
10 年後の中立は、利益が今の 5 割増で、時価総額は今の 1.2 倍ほどになる。ただ悪い方の筋書きの落ち込みが深く、確率をかけた価値は今を 2 割強下回る。ここから先は、利益率を保てるかと、親会社が少数株主をどう扱うかで評価が動く。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「わかりやすいが、利益の質に自信が持てない」事業だ。電力インフラの更新は、10 年先も続くとかなり確信を持って言える。変圧器もメーターも、無くなる事業ではない。
ただ、問題は利益の持続性だ。売上の約 4 割が親会社から来て、値段は入札で決まる。値決めの力が弱い事業は、好況でも利益を株主の手元に残しにくい。足元の営業利益率 8.7% は、品質不正で止まった入札の再開、メーターの更新需要、仕入れ値の転嫁がそろって出た結果だと筆者は見る。長く続く力のある利益率は、もう少し低いところにある。
経営の資本配分は、評価が分かれる。純現金を抱えて借金をせず、配当性向を引き上げた点は評価できる。他方、品質不正を長年見逃した経営の目は、まだ信頼を取り戻していない。
安全域の面では、今の値段は中立の見立てを上回る。利益率の上振れを先に払って買う形で、安全域は乏しい。筆者なら、利益率が落ちる局面か、品質問題の収束がはっきりした後で、改めて考えたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は 4 つの事業だ。最大は電力機器で、売上の約 6 割を占める。特別高圧や高圧の変圧器、開閉装置、受変電設備のプラントを作り、電力会社や工場に納める。次が計量で、約 3 割。電力量計、つまり家庭の電気メーターと、電圧・電流を測る計器用変成器が中心だ。子会社の東光東芝メーターシステムズがメーターを製造する。
GXソリューションは EV 用の急速充電器「SERA」と、公共施設の運営を民間が担う PPP/PFI 事業を持つ。急速充電器は国内の設置場所の 4 割を占めるとされるが、事業全体はまだ赤字に近い。光応用検査機器は、半導体パッケージ基板のバンプ、つまり接続用の小さな突起を測る検査装置を作る。国内シェアは首位とされるが、売上は 20 億円ほどと小さい。
顧客の偏りが大きい。東京電力パワーグリッド向けが連結売上の約 4 割を占める。東京電力は筆頭株主として 35% を持ち、取締役も出している。顧客であり、株主であり、取締役会にも人を出す。この三重の関係が、事業の安定と、値決めの弱さの両方を生んでいる。
2021 年にガス絶縁開閉装置の不適切な検査が発覚し、その後の総点検で変成器の試験成績の不正なども明らかになった。2024 年度は入札停止で営業利益が約 25 億円押し下げられた。2024 年 10 月に品質優先の改革を打ち出し、立て直しの途中にある。
優良さと弱いところ
優良さは、中の上だ。強みは、電力インフラという代わりのきかない仕事を、国内の電力会社と長く取引してきたことにある。変圧器や開閉装置は一度入れると数十年使う。メーターは一斉に更新される。需要が読みやすく、潰れにくい事業だ。
弱みは 3 つある。1 つ目は値決めの力。電力会社の入札で値段が決まり、利益率は過去 10 年の多くで 1〜4% にとどまった。いまの 8.7% は例外的に高い。2 つ目は顧客の集中。最大顧客が親会社でもあるため、発注方針の転換がそのまま業績に響く。3 つ目は品質。不正は現場と経営の断絶から起きたと会社自身が認めており、文化の立て直しは数年では終わらない。
資本の使い方は保守的だ。自己資本比率は 56% で、純現金が 142 億円ある。借金に頼らず、投資は営業キャッシュで賄える。一方で、PBR が 5 年にわたり 1 倍を割っていたのは、資本効率が低かったからだ。会社も ROE の低さを課題に挙げ、配当性向を 30% から 40% に上げた。
堀、つまり他社が簡単に真似できない強みは、電力会社との認定と実績、それに急速充電器と検査装置の技術にある。ただ、いずれも売上の規模が小さい。主力の受変電とメーターは、日立エナジー、三菱電機、明電舎、大崎電気工業などと競り合う市場で、堀は広くない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の送配電は、10 年以上続く設備更新の時期に入っている。高度成長期に入れた変圧器や開閉装置が寿命を迎える。再生可能エネルギーの接続や、データセンターの電力需要も重なり、東京電力パワーグリッドなど電力会社の投資計画は上向きだ。業界ノートの前提でも、受変電の需要は 2030 年代前半まで高水準とみる。人口が減っても、更新と増強で数量は大きくは減らない。
一方で、値段の主導権は電力会社にある。入札で複数社が競い、メーターは次世代機の仕様が全社で統一される。仕様が揃うと差がつきにくく、価格競争が強まりやすい。第 1 世代の入札では、大崎電気工業、GE 富士電機メーター、三菱電機、東光東芝メーターシステムズが並んだ。同じ顔ぶれが次世代機でも争う。
特別高圧の変圧器は、世界的に品不足だ。日立エナジー、シーメンス・エナジー、GE Vernova といった世界の大手が増産に動いており、国内の中堅は設備と人手の制約が大きい。東光高岳は工場の再生を進め、他社との提携で供給を増やす方針だ。
EV 充電は、国内で設置が進む途上で、競争が激しい。国内外の企業が参入し、値段は下がりやすい。半導体の検査装置は、パッケージ基板の大型化で需要が出るが、半導体の設備投資の波に左右される。電力機器の中でも、この 2 つは小さく、全体の利益を左右する力はまだない。
資本政策と M&A
還元は厚くなる方向だ。会社は 2025 年に配当性向 30% を目安とし、2026 年 4 月の見直しで 40% に引き上げた。計画の 3 年間の還元は 130 億円で、投資の 110 億円を上回る水準だ。ROE の目標も 8% から 14% に上げた。PBR が 1 倍を割り続けた反省の表れだ。
投資は品質の立て直しに回る。品質改革に 110 億円、スマートメーターや工場の DX、成長分野にも資金を回す。自己資本比率 56% の厚い財務を使い、借金は増やさない方針だ。
M&A は目立たない。むしろ重要なのは親会社との関係だ。東京電力パワーグリッドが 35.2% を持つ親子上場で、10 年以内の TOB(公開買付け)の確率は、外部の推計で約 19% とされる。完全子会社化されれば、少数株主は売却の機会を得るが、買付価格は親会社が主導する。東京電力は自らの財務を立て直す途中でもあり、重い判断だ。
政策保有株や遊休不動産の含み益について、確かめられた開示は見つけられなかったので、価値には数えていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
次世代スマートメーターの更新が 2026 年度から全電力会社で始まる。仕様が統一されるので、量産に強い会社には追い風だ。子会社の製造ラインは自動化率 100% を掲げ、コストでも他社に引けを取らない。更新のピークは数年続き、その間に利益率の高い計量が稼ぐ。
特別高圧の変圧器は世界的な品不足で、国内でも電力会社の更新が待ったなしだ。工場再生と他社との提携で供給が増えれば、入札停止で逃した受注を取り戻せる。2026 年度の第 1 四半期は営業利益が前年から 4 割超伸び、会社の 100 億円の計画に対して順調だ。
GX は赤字を抜ける見込みで、EV 充電は国内の設置場所の 4 割を占める。検査装置は国内首位で、半導体パッケージの大型化に乗れば小さな売上が急に化ける。会社は 2030 年の売上 1,500 億円・営業利益 150 億円を据え置いており、利益率 10% は到達できる水準だ。
配当性向は 40% に上がり、還元は厚くなる。純現金も厚く、財務は堅い。PBR 1 倍割れの改善を会社が公言した以上、資本効率は上がり続ける。
慎重な見方
今の利益率は出来すぎで、長続きしない。過去 10 年の営業利益率の中央値は 3% 台で、8.7% は 3 倍に近い。しかも品質不正で止まっていた入札が戻り、積み残しの受注が一気に売上に出た面がある。一巡すれば利益率は戻る。
値決めは電力会社が握る。売上の約 4 割を占める東京電力パワーグリッドは、親会社でもあり、調達コストの削減を迫る立場にある。次世代メーターは仕様が統一され、大崎電気工業や三菱電機との価格競争が強まる。2018 年にはメーターの基板発熱で交換が出るなど、品質で負けた前例もある。
品質不正は、経営と現場の断絶という根が深い。2021 年に発覚して 5 年が過ぎても、新たな不適切事案が出ている。再発すれば、入札停止で売上と利益が同時に落ちる。2024 年度の営業利益 25 億円の押し下げは、いつでも繰り返しうる。
EV 充電は赤字で、競争が激しい。検査装置は売上が 20 億円しかなく、全体を動かせない。会社が掲げる 2030 年の営業利益 150 億円は、物価の上昇を含めれば、実質では大きな伸びではないが、利益率 10% は過去に例がない高さで、中計は楽観的だと筆者は見る。
どちらに重みを置いたか
計量と受変電の追い風、財務の厚さ、還元の強化は、強気の見方が説得力を持つ。他方、利益率が過去に例のない高さにあること、顧客と親会社が同じ東京電力に偏ること、品質不正の根が深いことは、慎重な見方の指摘が強い。確率は中立に最も重みを置いたうえで、やや悲観を楽観側より厚くした。その結果、本質価値は今の時価総額を 2 割強下回り、やや割高になった。ただし悲観の確率は、品質問題の再発が重なる複合の筋書きに限り、1 割強にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 8,001 円1,264 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,582 円408 億円)。 今の値に割り戻すと 5,571 円880 億円、今との差 −10.7%、 期待の年率 +5.4%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 14,609 円2,308 億円 | 3,481 円550 億円 | +189.9% | +11.2% | 1,447 円229 億円 |
| やや楽観 | 20% | 11,655 円1,842 億円 | 3,164 円500 億円 | +137.5% | +9.0% | 2,964 円468 億円 |
| 中立 | 36% | 9,472 円1,497 億円 | 2,785 円440 億円 | +96.4% | +7.0% | 4,412 円697 億円 |
| やや悲観 | 24% | 3,797 円600 億円 | 2,089 円330 億円 | −5.7% | −0.6% | 1,412 円223 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,498 円237 億円 | 1,392 円220 億円 | −53.7% | −7.4% | 347 円55 億円 |
| 加重平均 | 100% | 8,001 円1,264 億円 | 2,582 円408 億円 | +69.6% | +5.4% | 10,583 円1,672 億円 |
今の株価時価総額 6,240 円986 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 受変電とスマートメーターが伸び、利益率 11% に届く 利益 144 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 14,609 円2,308 億円
電力会社の設備更新とデータセンター向けの送電設備が重なり、受変電の需要は 10 年を通じて強い。特別高圧変圧器の工場再生が早く進み、他社との提携で供給力も足りる。次世代スマートメーターは更新のピークを取り込み、シェアを上げる。EV 充電は黒字化して利益の柱の一つになり、バンプ検査装置は半導体パッケージの大型化に乗って V 字で伸びる。売上は 2,000 億円近くになる。品質の仕組みが定着し、入札停止は二度と起きない。親会社との関係は安定したまま、還元は純利益の半分を超える。物価の上昇を価格にしっかり転嫁でき、利益率は 11% に届く。10 年先も東京電力パワーグリッドの設備投資が高水準で続くことが前提だ。
- 電力機器:数量 790(国内の受変電機器市場(約 8,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.40(価格の指数(今=1.00、物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 1,106 億円・営業利益 127 億円。自社の実質売上 790 億円(市場 9,200 億円×シェア 8.6%)、価格 1.40 倍、利益率 11.5%
- 計量:数量 400(国内の計量関連市場(約 1,400 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.30(価格の指数(今=1.00))→ 売上 520 億円・営業利益 70 億円。実質 400 億円、価格 1.30 倍、利益率 13.5%
- GXソリューション:数量 190(EV 充電・PPP/PFI の市場(約 1,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.40(価格の指数(今=1.00))→ 売上 266 億円・営業利益 20 億円。実質 190 億円、価格 1.40 倍、利益率 7.5%
- 光応用検査機器:数量 50.0(バンプ検査装置の市場(約 300 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.35(価格の指数(今=1.00))→ 売上 68 億円・営業利益 10 億円。実質 50 億円、価格 1.35 倍、利益率 14%
倍率:事業の純利益 144 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍。全体の PER 15.71 倍、時価総額 2,262 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:東京電力の送配電投資の拡大、次世代メーターの取り込み、検査装置の急回復が 10 年続く必要がある。品質不正の傷が残る会社で、重なる確度は低い。
やや楽観 20% 東電の投資が高水準で続き、利益率は 10% 台 利益 120 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 11,655 円1,842 億円
東京電力パワーグリッドの設備投資が高水準で続き、受変電は数量・価格とも順調に伸びる。次世代メーターの更新も計画どおり進む。EV 充電は赤字から抜けるが、競争が強く利益率は一桁にとどまる。検査装置は半導体の波に合わせて拡大する。中計が示す 2030 年の売上 1,500 億円・利益率 10% を、少し遅れて達成するイメージだ。資本政策は配当性向 40% を守り、自社株買いを足して還元を厚くする。ROE は 10% 台に乗る。ただし電力会社への依存は残り、親会社の影響下という構造は変わらない。品質問題の再発もなく、会社の改革が地味に実を結ぶ穏やかな成功の姿だ。
- 電力機器:数量 745(国内の受変電機器市場(約 8,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.37(価格の指数(今=1.00、物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 1,021 億円・営業利益 107 億円。実質 745 億円、価格 1.37 倍、利益率 10.5%
- 計量:数量 380(国内の計量関連市場(約 1,400 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.28(価格の指数(今=1.00))→ 売上 486 億円・営業利益 62 億円。実質 380 億円、価格 1.28 倍、利益率 12.8%
- GXソリューション:数量 165(EV 充電・PPP/PFI の市場(約 1,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.37(価格の指数(今=1.00))→ 売上 226 億円・営業利益 14 億円。実質 165 億円、価格 1.37 倍、利益率 6%
- 光応用検査機器:数量 40.0(バンプ検査装置の市場(約 300 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.33(価格の指数(今=1.00))→ 売上 53 億円・営業利益 7 億円。実質 40 億円、価格 1.33 倍、利益率 12.5%
倍率:事業の純利益 120 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.86 倍、時価総額 1,783 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計が掲げる 2030 年の利益率 10% に近い筋書き。2026 年度の営業利益 100 億円の計画に対し、1 四半期目は前年から 4 割超伸びており、実現の見込みは十分ある。
中立 36% 受変電は物価並みに伸び、利益率は 9% に落ち着く 利益 99 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 9,472 円1,497 億円
国内の受変電と計量は、人口が減る中でも老朽設備の更新と再エネの接続で数量が少し伸びる。シェアは横ばいで、価格は物価並みに上がる。ただし電力会社の入札では値段が簡単には通らず、次世代メーターは仕様の統一で競争が強まる。利益率はいまの 8.7% から 9% 前後に収まる。EV 充電は黒字になるが小さい。検査装置は半導体の循環に合わせて振れる。売上は 1,600 億円台、営業利益は 150 億円弱。配当性向は 40% を守り、自己資本は純利益の積み上げで厚くなる。親会社の持ち分は変わらず、上場は続く。
- 電力機器:数量 706(国内の受変電機器市場(約 8,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.34(価格の指数(今=1.00、物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 946 億円・営業利益 90 億円。実質 706 億円(今の 1.08 倍・シェア横ばい)、価格 1.34 倍、利益率 9.5%
- 計量:数量 360(国内の計量関連市場(約 1,400 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.25(価格の指数(今=1.00))→ 売上 450 億円・営業利益 54 億円。実質 360 億円、価格 1.25 倍(入札で物価に届かない)、利益率 12%
- GXソリューション:数量 140(EV 充電・PPP/PFI の市場(約 1,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.34(価格の指数(今=1.00))→ 売上 188 億円・営業利益 8 億円。実質 140 億円、価格 1.34 倍、利益率 4.5%
- 光応用検査機器:数量 30.0(バンプ検査装置の市場(約 300 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.30(価格の指数(今=1.00))→ 売上 39 億円・営業利益 4 億円。実質 30 億円、価格 1.30 倍、利益率 11%
倍率:事業の純利益 99 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.2 倍、時価総額 1,406 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:東電向けが 4 割という構造と、いま 8.7% の利益率が過去 10 年の中央値の 3 倍近いことから、中立は中計よりやや低い利益率に置いた。品質問題の収束と業績の回復という足元の勢いは中立に織り込む。
やや悲観 24% 入札の値下げ圧力と品質問題の再燃で、利益率は 6% 弱 利益 54 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 3,797 円600 億円
電力会社が調達コストの削減を強め、入札の値段が下がる。特別高圧変圧器は再生計画が遅れ、他社との提携も思うように機能しない。次世代メーターは大崎電気や三菱電機との競争で単価が下がる。シェアも少し落ちる。品質問題が小さく再燃し、一部の顧客で入札参加が一時止まる。EV 充電は競争が激しく、赤字が残る。営業利益は 80 億円台まで落ち、いまの水準を割る。配当は維持するが、自社株買いは見送る。事業が崩れるわけではないが、成長を売りにした評価は後退する。売上は 1,400 億円弱にとどまり、物価の上昇分を価格に乗せきれない。国内の受変電は数量が横ばいで、シェアを守るための値引きが続く。
- 電力機器:数量 625(国内の受変電機器市場(約 8,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.30(価格の指数(今=1.00、物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 813 億円・営業利益 53 億円。実質 625 億円(シェア 7.5% 台へ後退)、価格 1.30 倍、利益率 6.5%
- 計量:数量 330(国内の計量関連市場(約 1,400 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.20(価格の指数(今=1.00))→ 売上 396 億円・営業利益 36 億円。実質 330 億円、価格 1.20 倍、利益率 9%
- GXソリューション:数量 115(EV 充電・PPP/PFI の市場(約 1,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.30(価格の指数(今=1.00))→ 売上 150 億円・営業利益 2 億円。実質 115 億円、価格 1.30 倍、利益率 1%
- 光応用検査機器:数量 22.0(バンプ検査装置の市場(約 300 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.25(価格の指数(今=1.00))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。実質 22 億円、価格 1.25 倍、利益率 6%
倍率:ROE 5.1% は k 7.75% を下回る。ためた利益は額面未満の価値なので、稼ぐ力(純利益÷k=13.3 倍が上限)の約 7 割を置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9 倍・時価総額 486 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:過去の 10 年は利益率 1〜4% の期間が長く、今の 8.7% が続く保証はない。東電の投資は計画に左右され、品質問題の再発も排除できないため、やや悲観を厚めに置く。
悲観 12% 品質不正の再発と東電の発注抑制で、構造的に負ける 利益 21 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,498 円237 億円
品質の仕組みが定着せず、新たな不適切事案が出る。電力会社が発注先を分散し、東京電力パワーグリッド向けの受注が縮む。特別高圧変圧器の工場は稼働が上がらず、固定費が重くなる。次世代メーターは他社に仕様面で劣り、シェアを落とす。EV 充電は海外勢と中国勢に押され、撤退も視野に入る。営業利益は 30 億円台前半まで落ちる。親会社は発注元としての立場を強め、少数株主に不利な条件で再編を迫る余地もある。優良な電力インフラ企業だった評価は外れ、稼ぐ力は小さく、手元の純現金が価値の下支えになる。売上は物価の上昇があっても 1,100 億円ほどと、今とほぼ変わらない。固定費が重く、利益は薄いまま残る。
- 電力機器:数量 540(国内の受変電機器市場(約 8,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.22(価格の指数(今=1.00、物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 659 億円・営業利益 26 億円。実質 540 億円(シェア 6% 台へ後退)、価格 1.22 倍、利益率 4%
- 計量:数量 270(国内の計量関連市場(約 1,400 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.10(価格の指数(今=1.00))→ 売上 297 億円・営業利益 18 億円。実質 270 億円、価格 1.10 倍、利益率 6%
- GXソリューション:数量 85.0(EV 充電・PPP/PFI の市場(約 1,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.20(価格の指数(今=1.00))→ 売上 102 億円・営業利益 −3 億円。実質 85 億円、価格 1.20 倍、赤字(利益率 −3%)
- 光応用検査機器:数量 12.0(バンプ検査装置の市場(約 300 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円))× 価格 1.15(価格の指数(今=1.00))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。実質 12 億円、価格 1.15 倍、利益率 0%
倍率:悲観の純利益 21 億円は ROE 2.4% で k 7.75% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k=13.3 倍が上限)の 6 割を置いた。結果は手元の純現金 142 億円を上回る。ためた自己資本は床にしない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8 倍・時価総額 168 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:東電向け 4 割という顧客集中、2021 年以降の品質不正の連鎖、次世代メーターの競争が同時に悪い方へ振れる複合の筋書き。顧客と信用を同時に失う前例が実際にあるため、1 割強を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電力機器
特別高圧・高圧の変圧器、開閉装置、受変電設備のプラント。東京電力パワーグリッドなど電力会社が主な顧客。
| 数量国内の受変電機器市場(約 8,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円) | 価格価格の指数(今=1.00、物価 10 年 1.34 倍が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 654 | 1.00 | 654 | 62 |
| 10 年後 中立 | 706 | 1.34 | 946 | 90 |
取り方:国内の特高・高圧受変電機器の市場を約 8,000 億円(推定)とし、自社の売上 654 億円をシェア約 8.2% とみた。数量は市場×シェアの実質、物価分は価格の指数に入れた。電力会社の入札で値段が決まるため、価格は中立でも物価並みにとどめた。
計量
電力量計(スマートメーター)、計器用変成器、計器センター事業。次世代スマートメーターの更新が主な需要。
| 数量国内の計量関連市場(約 1,400 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円) | 価格価格の指数(今=1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 332 | 1.00 | 332 | 44 |
| 10 年後 中立 | 360 | 1.25 | 450 | 54 |
取り方:計量関連(メーター・変成器・計器センター)の市場を約 1,400 億円(推定)とし、自社の売上 332 億円をシェア約 24% とみた。次世代機は仕様が全社で統一され、価格競争が強まる前提。
GXソリューション
EV 用急速充電器(SERA)、PPP/PFI 事業、エネルギー関連のサービス。
| 数量EV 充電・PPP/PFI の市場(約 1,000 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円) | 価格価格の指数(今=1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 106 | 1.00 | 106 | −2 |
| 10 年後 中立 | 140 | 1.34 | 188 | 8 |
取り方:EV 充電と PPP/PFI の市場を約 1,000 億円(推定)とし、自社の売上 106 億円をシェア約 10.6% とみた。急速充電器は国内の設置場所の 4 割を占めるとされる(2023 年時点)。
光応用検査機器
半導体パッケージ基板向けの三次元バンプ検査装置。国内シェア No.1 とされる。
| 数量バンプ検査装置の市場(約 300 億円・実質)× シェア=自社の実質売上(億円) | 価格価格の指数(今=1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 1.00 | 20 | 2 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 1.30 | 39 | 4 |
取り方:バンプ検査装置の市場を約 300 億円(推定)とし、自社の売上 20 億円をシェア約 6.7% とみた。半導体の設備投資に左右され、利益は振れる。
リスクと懸念
利益率が過去の水準へ戻る
営業利益率 8.7% は、過去 10 年の中央値の 3 倍近い。入札停止からの回復と更新需要の一巡後に、利益率が 4〜6% へ戻れば、利益は今の 6 割ほどに減る。中計の 10% は物価の上昇を含めても高い目標だ。
最大顧客が親会社
売上の約 4 割が東京電力パワーグリッド向けで、同社は筆頭株主として 35% も持つ。調達の削減、発注の分散、設備投資の先送りは、そのまま業績に響く。値段の交渉でも、買い手が株主という立場の差が出る。
品質不正の再発
2021 年以降、総点検のたびに新しい不適切事案が出た。経営と現場の断絶という根は深く、文化の立て直しには年単位かかる。再発すれば入札停止が再び起き、2024 年度のように営業利益が数十億円削られる。
次世代メーターの価格競争
次世代スマートメーターは仕様が全社で統一され、差がつきにくい。大崎電気工業や三菱電機との入札で単価が下がれば、計量事業の高い利益率が崩れる。2018 年の基板発熱のような品質問題が出れば、シェアも失う。
特別高圧変圧器の供給力
世界的な品不足の中、国内の中堅は設備と人手の制約が大きい。工場の再生が遅れれば、受注があっても売上にできず、固定費だけが残る。他社との提携が思うように機能しない場合の影響が大きい。
親会社による再編
親子上場の構造では、完全子会社化の可能性が残る。外部推計では 10 年以内の TOB の確率は約 19%。買付価格は親会社が主導するため、少数株主にとって有利とは限らず、上場が続く場合も資本政策が親会社の事情に左右される。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 2 年続けて 9% を超えたら
- 品質改革と更新需要が利益を押し上げており、強気の筋書きに確率を移す。ただし入札停止の積み残し分が消えた後の水準かを確かめる。
- 次世代メーターの入札で、単価が大きく下がる落札が出たら
- 計量の利益率が下がる前触れとして、やや悲観に確率を移す。
- 新たな不適切事案が公表され、顧客が入札参加を停止したら
- 悲観の筋書きの確率を上げる。2024 年度の営業利益 25 億円の押し下げが目安になる。
- 東京電力パワーグリッドが完全子会社化の方針を示したら
- 買付価格が本質価値とどう違うかを確かめる。親会社の事情で決まる値段であり、価値の判断は変えない。
- 特別高圧変圧器の工場再生が計画どおりに進み、提携で供給が増えたら
- 受変電の数量を上方に見直し、やや楽観に確率を寄せる。
- EV 充電が通期で黒字に定着したら
- GX の利益率を上方修正する。ただし事業が小さく、全社への影響は限られる。
見ておくもの
- 電力機器の受注残と営業利益率の推移
- 次世代スマートメーターの入札結果と納入台数
- 品質改革の進み具合と新たな不適切事案の有無
- 東京電力パワーグリッドの設備投資計画
- 親会社の持ち分と取締役構成の変化
倍率と資本コストの決め方
事業ごとに市場×シェアの実質の数量と、物価 1.34 倍を基にした価格の指数で積み上げ、利益率は構造から置いた。倍率は資本コスト 7.75%(quality 0)から利益ベースの正当化 PER を計算し、ROE が k を上回る中立は 1÷k の 13.3 倍を下限に、約 9 割(13.5 倍)を置いた。今の株価や過去の倍率は使っていない。数量の単位は開示されないため、市場×シェアの推定で出した自社の実質売上を数量に置き、価格は物価を含む指数にした(価格 1 の注意はこの理由による)。悲観は構造的に負けた後の稼ぐ力で置いた(時価総額は純現金 142 億円を上回り、PBR が低いのは自己資本を床にしないため)。10 年後の数字は、リースを営業費用に入れた今と同じ形で揃えている(新リース会計基準で形は変わるが、価値は変えない)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.2→15.71 倍・やや楽観 PER 14.2→14.86 倍・中立 PER 13.5→14.2 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 0(循環と値決めが相殺、寿命・借金は 0)。事業は傾いていないので上乗せなし。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.75%。