結論
サンコーは、長野県塩尻市の精密プレス・ユニット加工メーカーだ。車の電装用の部品、エアバッグ用の部品、バッテリー関連の部品を作る。筆者の結論は、10 年の価値は今の時価総額をやや下回る、というものだ。現金は時価総額の 8 割を占めるが、稼ぐ力は資本コストに届かない。
この会社は、電動化で需要が増える側にいる。電動車は配線や接続の部品が増えるからだ。エンジン部品の会社とはちがい、主力の需要が消える心配は小さい。
ただ、売上の 4 割を住友電装とデンソーの 2 社が占める。値決めはその 2 社が握る。しかも 2024 年に親会社ができ、田村商事が議決権の 51.2% を持つ。現金が少数株主に戻る保証はない。
中立では、10 年後の営業利益は 11 億円、売上は 255 億円。物価の上昇を主に、数量も少し増える見立てだ。
現金の裏づけがあるので、悲観でも大きくは崩れない。ただ、稼ぐ力が資本コストに届かない会社に、現金の分だけ高く払う理由はない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、現金の厚さと、その現金の持ち主を分けて見る。時価総額の 8 割が現金で裏づけられている点は、安全域として大きい。
ただ、本業の稼ぐ力は弱い。ROE が資本コストの半分で、ためた利益は額面の価値に届かない。事業を維持するための投資を引いた後の利益は、さらに小さい。減価償却は年 8.7 億円、設備投資は 5〜7 億円で、ほぼ見合う。
追い風は電動化だ。電装部品の点数が増え、エンジン部品の会社とはちがい、需要が消える心配は小さい。10 年後も存在し、今より強いかという問いには、強まる可能性があると答えられる。
ただ、親会社が過半を持つ。現金の使い道は、少数株主には決められない。資本配分を評価するには、実績が足りない。
見極めは、電動車向けの量産が受注残に表れるか、親会社が現金を戻す方針に動くかにかかる。
何で稼ぐ会社か
サンコーは、金属板を打ち抜き、曲げて部品を作るプレス加工と、樹脂の成形、それらを組み立てるユニット加工を行う。単一の事業で、売上は 183 億円、従業員は連結で 484 人。
売上の約 74%(136 億円)が自動車関連だ。車の配線をつなぐ電装部品、エアバッグに使う角絞りの金属部品、バッテリーターミナル、ジャンクションボックスやヒューズモジュールの部品などを作る。残りは住宅設備(スマートメーターなど、16 億円)、デジタル家電(デジタルカメラなど、22 億円)、事務機(プリンターなど、3 億円)向けだ。
主な取引先は住友電装が 28.2%、デンソーが 12.6%。海外はタイの子会社が電装品を作り、売上は 34 億円ある。
親会社は田村商事で、議決権の 51.2% を持つ。損害保険の代理業を営む会社で、サンコーとの取引はないと有報にある。
金型の制作から量産までを自社で行い、受注残は 110 億円と、売上の 7 か月分ある。
2024 年には、2011 年から停止していた梓川工場に組立エリアを新設して生産を再開した。設備投資は年 5 億円台で、国内とタイの工場の更新が中心だ。
優良さと弱いところ
一言でいえば、金型から量産までこなす堅実な精密部品メーカーだが、規模が小さく、顧客を選べない会社だ。
強みは、金型と生産技術の一貫体制と、住友電装・デンソーという大手との取引だ。電装部品は車種ごとに設計に組み込まれるため、採用されれば長く供給が続く。
弱みは 3 つある。1 つ目は顧客の集中で、2 社で 4 割。2 つ目は価格決定力の弱さ。3 つ目は規模の小ささで、新しい製品への投資余力が限られる。
資本効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は 3.9% で、資本コストの半分に満たない。現金と投資が積み上がり、利益に対して自己資本が大きすぎる。営業利益率は 12 年の山でも 5.0% だ。
経営は慎重で、財務は健全。ただ、現金を事業に使うか、株主に戻すかの方針は見えない。堀の評価は普通にとどめる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自動車部品の最大の変化は、電動化と、中国メーカーの台頭だ。世界の電気自動車は 2025 年に新車の約 25% に達した。日本国内では 3% に届かず、ハイブリッド車が中心だ。
サンコーが作る電装部品は、電動化で需要が増える側にある。電気自動車はモーターや電池をつなぐ高電圧の配線が増え、端子や接続部品の点数が増えるからだ。会社も、有報で電動車向けの受注拡大を狙うと述べ、タイで電装品の設備投資を行う。
一方で、日本の完成車メーカーの世界での販売は、中国勢に押されている。国内の生産が細れば、取引先の調達量も減る。米国の関税は不確実性だ。
自動車以外の分野は、デジタルカメラが底堅い一方、スマートメーターは更新需要の波で振れる。
自動車メーカーは、部品の値下げを毎年求める。物価が年 3% の世界では、小さな部品メーカーほど原価の上昇を転嫁しにくい。
車載ネットワークの高速化で配線が集約されれば、同じ機能でも配線部品の点数が減る可能性もある。電装部品の増加は、必ずしも一直線ではない。国内の人口減で、自動車の保有台数も長期では減る。
資本政策と M&A
還元は穏やかだ。配当は年 1 回の期末で、2026 年 3 月期は配当性向が約 3 割。自社株買いの記載はない。
純現金は約 49 億円。有利子負債は記載がなく、財務は実質無借金だ。5 年前も純現金 45 億円ほどあり、積み上がりは遅い。ただ、自己資本に対して利益が小さく、現金がだぶついている。
2024 年 11 月に田村商事が議決権の 51.2% を持ち、親会社になった。損害保険の代理業を営む塩尻市の会社で、サンコーとの取引はない。親会社が過半を持つので、現金の使い道を決めるのは親会社だ。少数株主への還元は保証されない。
上場株は純投資で約 5 億円、政策保有で約 2.6 億円。大きな額ではなく、配当収入は利益に入る。TOB の発表は確認できなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電動化は、この会社にとって追い風だ。電気自動車には高電圧の配線が増え、端子と接続の部品が 1 台あたり増える。住友電装の比率が 16% から 28% へ上がった事実は、需要の強さを示す材料だ。受注残も 110 億円と、売上の 7 か月分ある。
タイ子会社は電装品の生産体制を強化している。日本の完成車メーカーが海外生産を増やすほど、現地で供給できる体制が生きる。
時価総額の 8 割が現金で裏づけられており、本業が少し回復するだけで、再評価の余地は大きい。営業利益は直近で 4 割増えた。親会社ができたことで、経営が資本効率を意識し、現金を使う動きも出る。株主との対話が増えれば、配当の引き上げや自社株買いも現実味を帯びる。
小さな会社が金型から量産まで一貫でこなす強みは、小さな会社でも、顧客の設計変更に素早く応じられる利点になる。
タイと国内の二拠点で供給できる体制は、取引先が調達を絞る局面で選ばれる理由になる。
慎重な見方
売上の 4 割を 2 社が握る構造は危うい。住友電装の比率は 1 年で 12 ポイント上がったが、同じ速さで下がることもある。値決めはその 2 社が決め、物価が上がっても転嫁は遅れる。
営業利益率は 12 年の山でも 5.0% で、直近は 4.2%。稼ぐ力が資本コストの半分しかない。現金は厚いが、利益を生まずに積み上がっているだけだ。10 年で見れば、ROE が一度も資本コストに届いていない。
親会社の田村商事が過半を持つ。現金を少数株主に戻す理由が親会社にはなく、自社株買いも行われてこなかった。時価総額の 8 割が現金だとしても、手に入る保証はない。
日本の完成車メーカーは中国で苦戦し、米国の関税も重い。国内生産が細れば、数量は減る。電動化の恩恵は、国内の生産減で打ち消される恐れがある。
中国の電装部品メーカーが価格で攻めれば、日本の完成車メーカーも調達先を見直す。小さな会社は、その波に対抗する余力が乏しい。
どちらに重みを置いたか
強い論点は慎重な側にある。稼ぐ力が資本コストに届かず、現金が戻る保証も弱い。ただ、電動化の追い風で、エンジン部品の会社よりは筋書きが明るい。
確率は、中立を 34% と最も重く置き、やや悲観と悲観を合わせて 40% にした。楽観側は合わせて 26%。現金の厚さが悲観の深さを抑えるので、慎重な側に寄せすぎなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,242 円110 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 281 円25 億円)。 今の値に割り戻すと 782 円69 億円、今との差 +14.9%、 期待の年率 +8.4%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,421 円215 億円 | 620 円55 億円 | +346.5% | +16.1% | 243 円22 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,882 円167 億円 | 451 円40 億円 | +242.6% | +13.1% | 420 円37 億円 |
| 中立 | 34% | 1,490 円132 億円 | 338 円30 億円 | +168.4% | +10.4% | 622 円55 億円 |
| やや悲観 | 26% | 599 円53 億円 | 135 円12 億円 | +7.9% | +0.8% | 191 円17 億円 |
| 悲観 | 14% | 338 円30 億円 | 0 円0 億円 | −50.4% | −6.8% | 47 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,242 円110 億円 | 281 円25 億円 | +123.6% | +8.4% | 1,523 円135 億円 |
今の株価時価総額 681 円60 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 電動車の配線部品が伸び、タイの拠点も軌道に乗る 利益 16 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,421 円215 億円
電動車の普及で、1 台あたりの電装部品の点数が増える。高電圧の配線につなぐ端子や、電池まわりの部品が増え、自動車向けの販売は今の 1.5 倍になる。タイ子会社も電装品の生産体制を強化し、日本の取引先の海外生産にともなって受注が伸びる。
値上げは物価並みの 1.34 倍が通る。電装部品は点数が多く、車種ごとの設計に組み込まれるため、値下げ要請が比較的緩い。
利益率は 5.5% に上がる。売上が 3 割ほど伸びて固定費が薄まり、梓川工場などの新ラインの立ち上げ費用も一巡する。それでも過去 12 年の山(5.0%)を少し超える程度で、自動車部品としては控えめな水準だ。
- 自動車関連(電装部品・エアバッグ部品・バッテリー関連):数量 510(年間の販売数(百万個相当))× 価格 0.05(1 個あたり売上(千円))→ 売上 274 億円・営業利益 15 億円。自動車関連 営業利益率 5.5%
- 家電・住宅設備・事務機・その他:数量 80.0(年間の販売数(百万個相当))× 価格 0.08(1 個あたり売上(千円))→ 売上 63 億円・営業利益 4 億円。家電・住宅設備ほか 営業利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 215 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電動車の電装部品が想定より早く伸び、住友電装向けのシェアも維持される条件が重なる必要がある。顧客が 2 社に偏るので 8% にとどめた。
やや楽観 18% 電装部品が伸び、家電向けは横ばい 利益 12 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,882 円167 億円
電動車の普及で電装部品の点数が増え、自動車向けの販売は今の 1.3 倍に伸びる。住友電装向けは比率が 16% から 28% へと急に上がった年もあり、この関係が続けば伸びを支える。
家電・住宅設備向けは、スマートメーターの更新需要とデジタルカメラの底堅さで、今の 0.95 倍にとどまる。
値上げは 1.31 倍で物価に少し届かない。人件費と材料費の上昇を転嫁しきれないためだ。営業利益率は 4.9% で、売上規模は 290 億円になる。タイの拠点が電装品を現地で供給し、日本の完成車メーカーの海外生産の増加を取り込む。受注残は積み上がり、投資の回収も早まる。
- 自動車関連(電装部品・エアバッグ部品・バッテリー関連):数量 442(年間の販売数(百万個相当))× 価格 0.05(1 個あたり売上(千円))→ 売上 232 億円・営業利益 11 億円。自動車関連 営業利益率 4.8%
- 家電・住宅設備・事務機・その他:数量 76.0(年間の販売数(百万個相当))× 価格 0.08(1 個あたり売上(千円))→ 売上 58 億円・営業利益 3 億円。家電・住宅設備ほか 営業利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 167 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電動車の電装部品が順調に伸びる筋書きで、直近の受注残(110 億円・約 7 か月分)の水準が下支えになる。
中立 34% 電装部品の点数増が、国内生産の細りを少し上回る 利益 9 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,490 円132 億円
中立では、日本の完成車メーカーの国内生産は伸びないが、電動化で車 1 台あたりの電装部品が増える。自動車向けの販売は今の 1.15 倍になる。内燃機関の部品とちがい、同社の電装向け部品は電動化で需要が増える側にいる。
住友電装とデンソーで売上の 4 割を占める。この 2 社が値決めを握り、値上げは物価の 1.34 倍に届かず、1.28 倍にとどまる。
家電・住宅設備向けは、デジタルカメラとスマートメーターの需要が落ち着き、販売は今の 0.9 倍。営業利益は 11 億円で、利益率は 4.4%。直近の 4.2% を少し上回る程度で、梓川工場の再開など新しい投資の償却を織り込んだ水準だ。
- 自動車関連(電装部品・エアバッグ部品・バッテリー関連):数量 391(年間の販売数(百万個相当))× 価格 0.05(1 個あたり売上(千円))→ 売上 201 億円・営業利益 8 億円。自動車関連 営業利益率 4.2%
- 家電・住宅設備・事務機・その他:数量 72.0(年間の販売数(百万個相当))× 価格 0.08(1 個あたり売上(千円))→ 売上 55 億円・営業利益 3 億円。家電・住宅設備ほか 営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.7% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 132 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電動化による電装部品の増加と、国内の自動車生産の伸び悩みが打ち消し合う落としどころ。いちばん重く置く。
やや悲観 26% 大口顧客の調達が変わり、国内生産も細る 利益 4 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 599 円53 億円
日本の完成車メーカーが中国で苦戦し、米国の関税も重なって、国内生産が細る。自動車向けの販売は今の 0.85 倍に減る。住友電装の発注が変わると、1 社で数十億円の売上が動く。
値下げ要請が強まり、値上げは 1.22 倍にとどまる。固定費は減らせず、利益率は 2.5% に落ちる。家電向けも、デジタルカメラが減って 0.8 倍。
営業利益は 4 億円台に細る。自己資本比率は 7 割あり、配当は守られる。ただし、新ラインの投資は止まり、タイの拠点の稼働率が下がる。取引先に値下げを求められる局面で、現金が厚いことは耐える力になるが、利益を生む力にはならない。
- 自動車関連(電装部品・エアバッグ部品・バッテリー関連):数量 289(年間の販売数(百万個相当))× 価格 0.05(1 個あたり売上(千円))→ 売上 141 億円・営業利益 4 億円。自動車関連 営業利益率 2.5%
- 家電・住宅設備・事務機・その他:数量 64.0(年間の販売数(百万個相当))× 価格 0.07(1 個あたり売上(千円))→ 売上 47 億円・営業利益 1 億円。家電・住宅設備ほか 営業利益率 3.0%
倍率:事業の ROE 2.1% は資本コスト 7.75% の 4 分の 1。稼ぐ力の床(純利益÷k)の範囲内で、PER は 7.5 倍。余った現金は今の額の 0.75 倍に戻り方 0.5 を掛けて足した。
確率:2 社で売上の 4 割を占め、中国メーカーの台頭と米国の関税が重なると、自動車向けが縮むのは十分ありうる。過去 12 年で営業利益率が 5% を安定して超えた年がないことも踏まえた。
悲観 14% 主要顧客が離れ、赤字の中で現金だけが残る 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 338 円30 億円
住友電装の調達方針が変わり、発注が半分以下に落ちる。デンソー向けも減り、自動車向けの販売は今の 0.55 倍まで縮む。家電向けも 0.6 倍。
単価も崩れ、自動車関連は赤字になる。固定費の重い国内工場の稼働率が下がり、再編の費用もかかる。営業は 2 億円の赤字。
この局面では、稼ぐ力ではなく手元の資産が株主の取り分になる。現金と上場株が床だ。ただ、親会社の田村商事が 5 割を持つので、現金が少数株主に戻る保証はない。戻り方 0.5 を掛けて数える。工場を閉じても、売却に時間がかかり、撤退費用が先に出る。
- 自動車関連(電装部品・エアバッグ部品・バッテリー関連):数量 187(年間の販売数(百万個相当))× 価格 0.05(1 個あたり売上(千円))→ 売上 86 億円・営業利益 −2 億円。自動車関連 営業利益率 -2.0%
- 家電・住宅設備・事務機・その他:数量 48.0(年間の販売数(百万個相当))× 価格 0.07(1 個あたり売上(千円))→ 売上 32 億円・営業利益 0 億円。家電・住宅設備ほか 営業利益率 0.0%
倍率:赤字なので稼ぐ力では測れず、売れる資産の税後(30 億円)を床に置いた。今の自己資本 163 億円に対する PBR は 0.18 倍。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.184 倍・時価総額 30 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:住友電装またはデンソーの発注が大きく減り、同時に自動車の需要が落ちる筋書き。2 社集中の会社にはありうるので 14% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自動車関連(電装部品・エアバッグ部品・バッテリー関連)
住友電装向けの電装用プレス部品や樹脂部品、エアバッグ用の角絞り部品、バッテリーターミナルなど。売上の約 74%。
| 数量年間の販売数(百万個相当) | 価格1 個あたり売上(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 340 | 0.04 | 136 | 5 |
| 10 年後 中立 | 391 | 0.05 | 201 | 8 |
取り方:用途別売上の自動車関連 136.2 億円(2026/03、有報)。個数は開示がなく、小型の精密プレス・樹脂部品の単価を 1 個あたり 0.04 千円(数十円)と置いた年 3.4 億個の推定。単一セグメントのため利益は開示がなく、全社の営業利益 7.6 億円を用途別に配った推定(5.3 億円・3.9%)。
家電・住宅設備・事務機・その他
スマートメーター向け、デジタルカメラ向け、プリンター向けの精密部品と、電子部品・産業用機器向けなど。売上の約 26%。
| 数量年間の販売数(百万個相当) | 価格1 個あたり売上(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 80.0 | 0.06 | 47 | 2 |
| 10 年後 中立 | 72.0 | 0.08 | 55 | 3 |
取り方:住宅設備 15.9 億円・デジタル家電 22.1 億円・事務機 2.8 億円・その他 5.8 億円の合計 46.7 億円(有報)。個数は年 8,000 万個、単価は 1 個あたり 0.06 千円弱とした推定。利益は全社を配った推定(2.3 億円・4.9%)。
リスクと懸念
主要顧客 2 社への集中
住友電装が売上の 28.2%、デンソーが 12.6%。住友電装の比率は前の期の 16.4% から急に上がった。この 2 社の調達方針が変われば、数十億円の売上が動く。
自動車生産の減少と関税
売上の約 74% が自動車向け。日本の完成車メーカーの国内生産が細る、または米国の関税で北米向けが減ると、数量が落ちる。有報も自動車生産量の減少を最大のリスクに挙げる。
価格の下落と原価高
部品の値下げ要請は毎年続く。物価が年 3% の世界では、人件費と材料費の上昇を転嫁しにくい。受注価格の下落も有報に明記されている。
親会社が現金の使い道を決める
2024 年 11 月に田村商事が議決権の 51.2% を持つ親会社になった。純現金は時価総額の 8 割に近いが、配当性向は 3 割ほどで、自社株買いはない。少数株主に現金が戻るかは親会社次第だ。
タイの拠点と為替
タイ子会社の売上は 34 億円。電装品の設備投資が進むが、カントリーリスクがある。為替は 150 円で固定の前提だが、円高は為替差損につながる。
単一事業の規模の小ささ
売上 183 億円、従業員 484 人の小さな会社で、新しい製品の開発に使える資金には限りがある。営業利益率は 4% 前後で、少しの受注減で赤字に落ちる。過去には 2009〜2014 年の間に赤字の年が 5 回ある。
今後の分かれ目
- 住友電装向けの売上が 3 割以上減ったら
- 自動車向けの数量を下方に直し、やや悲観の筋書きに確率を移す。
- 電動車向けの電装部品が量産に入り、受注残が 150 億円を超えたら
- 自動車向けの伸びを上方に直し、やや楽観の筋書きに確率を移す。
- 田村商事が TOB で完全子会社化を発表したら
- 価格を確かめ、買付けが成立すれば分析の対象から外す。
- 配当性向が 5 割を超える、または自社株買いが始まったら
- 余った現金の戻り方を 0.5 から 0.75 に直す。
- 米国の関税で日本の完成車メーカーの北米向けが落ち込んだら
- 自動車向けの数量を下げ、利益率の見方を厳しくする。
見ておくもの
- 住友電装・デンソー向けの売上比率
- 受注残の推移(110 億円)
- 電動車向け電装部品の量産開始
- 田村商事の動き(追加の買い増し・TOB)
- 配当性向と自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の ROE と資本コスト 7.75% から置いた。ROE が k に届かないので PER は 1÷k の 11.8 倍を上限に、中立は 9.0 倍。今の株価・過去の PER や PBR・同業の倍率は使っていない。現金は事業に要る分を除いて 26 億円を余った現金として分け、親会社が過半を持つことから戻り方 0.5 を掛けて足した。悲観の床は、現金と上場株の税後(30 億円)で置き、帳簿の自己資本は床にしていない。新リース会計基準で BS の形は変わるが、数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→12.9 倍・やや楽観 PER 9.5→12.9 倍・中立 PER 9→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足して 8.5%。同じ電装系の会社(村上開明堂 +1.0%、日本精機・ハイレックス +1.2%)に揃えた。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。