結論
日本電計は、電子計測器や電子部品、検査装置を、メーカーの研究開発や工場に売る技術商社だ。仕入先は約5,000社、顧客は約13,000社に及ぶ。計測器の国内取扱いでは、約3割のシェアを持つとされる。
筆者の結論は「適正」だ。今の時価総額は約318億円で、純利益の約9倍にとどまる。10年の稼ぎと配当を積み上げた価値は、今の値段とほぼ同じになる。
足もとの勢いは強い。2026年3月期の売上は1,331億円で前の年より9.8%増え、営業利益は49.7億円だった。受注残は449億円に積み上がり、2027年3月期の第1四半期も売上が2割以上伸びた。
弱みは運転資金の重さだ。売上が伸びるほど売掛金が膨らみ、2026年3月期の営業キャッシュ・フローは36億円の赤字だった。借入で賄うため、純有利子負債は99億円に増えている。
あいホールディングスが約21.7%を持つ「その他の関係会社」である点も、価値の見方に影を落とす。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目では、日本電計は「堅実な売り込み役」だ。派手さはないが、顧客の数と営業網が、地味な稼ぎを支えている。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、見かけより小さい。純利益は36.5億円でも、売上の伸びに伴う運転資金の増加で、営業キャッシュ・フローは36億円の赤字だった。稼ぎの多くは売掛金に変わり、現金にはなっていない。
資本の使い方は無理がない。配当性向は35%程度に抑え、残りは運転資金と小口のM&Aに回す。大きな買収で減損を重ねるタイプではない。
安全域は薄い。純利益の約9倍という値は、成長が続けば安く映るが、不況で赤字に転じた過去がある以上、崩れる筋書きの重みも大きい。
確信度は中程度だ。関係会社の存在と運転資金の重さは、注意すべき要素である。配当が着実に増え続け、売掛金の回収が追いつくかどうかを、決算ごとに確かめたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、仕入れた機器を顧客に納めたときの差益だ。2026年3月期の売上は1,331億円、粗利率は13.9%だった。薄い利幅を、数の多さと営業網でカバーする商売である。
売る品物は三つに分かれる。電子計測機器が413億円、電子部品・機構部品が173億円、製造・加工・検査装置が116億円で、残りは多数の機器が占める。仕入先は、キーサイト・テクノロジーやテクトロニクス、菊水電子工業、日置電機、日本ナショナルインスツルメンツなど、計測器の世界的な名前が並ぶ。
地域では、日本が売上の約77%、中国が約17%を占める。国内には48拠点があり、校正や修理も請け負う。2026年3月期のセグメント利益は、日本が65億円で利益率6.4%、中国が5億円で2.1%だった。海外売上は333億円で、中期計画の目標350億円に近づいた。
成長の柱は、次世代自動車、AI・データセンター、防衛関連だ。ロボットや医療機器、半導体の開発現場も顧客に含まれる。
M&Aは小ぶりに積み上げる。2024年9月にホクエン、2026年2月にサープレスを子会社にした。欧州には2023年と2024年に拠点を開いた。
優良さと弱いところ
優良さを分けるのは、顧客の数と、メーカーとの距離だ。日本電計は、約5,000社の仕入先と約13,000社の顧客をつなぐ点で、小口の注文をまとめて引き受ける役を担っている。
堀、つまり他社がまねできない強みは中程度だ。計測器は、メーカーが直接売ることもできる。だが、顧客が多様で、1社あたりの注文が小さい分野では、全国の営業網と校正・修理を持つ商社の出番がある。この「点と点をつなぐ」役割が、粗利率13.9%を支えている。
利益は景気に敏感だ。リーマン後の2009年と2010年は、営業利益が赤字になった。2020年の谷でも営業利益率は2.6%まで下がった。最近は4%前後まで改善したが、これは過去10年で最も高い水準である。
財務は強くない。自己資本比率は41.6%、有利子負債は約182億円、現預金は78億円だ。売上債権が463億円と、総資産の6割近くにのぼる。売上が伸びるほど資金が先に出ていく構造だ。
経営は堅実で、配当性向35%程度を守っている。ただし、米国とインドの販売子会社、中国の受託試験会社は苦戦しており、海外の収益化はこれからの課題だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電子計測器の市場は、2025年度で約1,438億円、年率2.4%ほどの緩やかな成長が見込まれる。この数字は物価の上昇率より低く、実質では縮小を意味する。市場そのものに追い風は少ない。
追い風は、計測器を使う側の動きにある。次世代自動車の開発、AI・データセンター向けの高速通信、防衛関連の電子機器など、試験や評価の需要が増える分野が広がっている。日本電計の売上が10%近く伸びた背景に、これらの新しい用途がある。
一方で、計測器の価格は上がりにくい。メーカーの値決めに左右され、商社は値上げを通しにくい。人件費は物価並みに上がるため、粗利が伸びなければ利益率は下がる。
中抜きの危険もある。メーカーが直販に切り替えたり、ネット通販が小口の需要を吸い上げたりする。特に標準品の計測器は、直販やECに移りやすい。
景気の振れには強くない。設備投資と研究開発費は、不況で真っ先に削られる。リーマン後に営業利益が赤字になったのは、その典型だ。国内製造業の海外移転が進めば、国内の需要は構造的に細る。長い目では、顧客の数が多く注文が小さい分野ほど、商社の営業網と校正・修理の機能が価値を持つ。
資本政策と M&A
還元は安定している。方針は連結配当性向35%程度で、2026年3月期の配当は総額11億円、2027年3月期は約12億円を見込む。増配が続いており、自社株買いは近年していない。
お金の使い道は運転資金が大半だ。売上が伸びれば売掛金が増え、そのぶん借入が増える。2026年3月期は、短期借入金を27億円増やして営業キャッシュ・フローの赤字を埋めた。
M&Aは小口で、金額は開示されていない。ホクエンとサープレスの買収は、いずれも国内の既存事業に近い。大きな買収で資本を毀損するタイプではない。
あいホールディングスは約21.7%を持つ。日本電計は、あいHDの持分法適用関連会社の位置づけで、社外取締役を2名受け入れている。親会社に近い立場の大株主がいるため、TOB(株式公開買い付け)の可能性は、当サイトの参考値で10年以内に2割台半ばある。
政策保有株は小さい。最大の保有銘柄は仕入先の菊水ホールディングスで、金額は6億円ほどだ。含み益を当てにする必要はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
日本電計には、まだ伸びる余地がある。計測器を使う側の分野が広がっているからだ。次世代自動車、AI・データセンター、防衛関連は、いずれも試験や評価の機器を大量に必要とする。受注残は449億円まで積み上がり、直近の第1四半期も売上が2割以上伸びた。
海外の取り込みも進む。海外売上は333億円まで来ており、中期計画の350億円に手が届く。欧州の新拠点とインドの販売子会社、総代理店の中国メーカー発掘が、これから数字に表れる。
M&Aで商材を増やせる。計測器だけでなく、分析機器や受託試験、二次電池の試験など、新しい領域に入る土台を作っている。ホクエンやサープレスのような小口の買収を重ねれば、シェアは着実に上がる。
財務は堅実で、配当は増配が続く。配当性向35%程度の方針を守りながら、利益が伸びれば配当も自然に増える。営業利益率は4%台を保てれば、純利益は2倍近くになる。
関係会社のあいHDの存在も、安定株主として働く面がある。
慎重な見方
利益の質に懸念がある。純利益は36.5億円でも、営業キャッシュ・フローは36億円の赤字だった。売上が伸びるほど売掛金が膨らみ、借入に頼る構造が続く。純有利子負債は99億円に増えている。
市場そのものが伸びない。電子計測器の市場は年率2.4%成長にとどまり、物価の上昇率を下回る。実質では縮む市場で、商社だけが伸び続けるのは難しい。
計測器の価格はメーカーが決める。商社は値上げを通しにくく、人件費だけが物価並みに上がる。営業利益率は4%前後と、過去10年で最も高い水準にあり、これ以上は上がりにくい。
中抜きの危険は現実的だ。メーカーの直販やネット通販が、標準品の計測器から商社を外す。国内製造業の空洞化が進めば、国内の需要は縮む。
海外は苦戦中だ。米国とインドの販売子会社、中国の受託試験会社は赤字に近い。あいHDが21.7%を持つ構造は、少数株主の取り分が後回しにされるリスクにもなる。景気の谷が来れば、受注は急に細り、売掛金の回収も遅れやすい。
どちらに重みを置いたか
成長分野の追い風と受注残という強気の言い分は、足もとの数字で裏づけられている。運転資金の重さと中抜きの危険という慎重な言い分も、無視できない。
そこで、中立に最も厚く置き、楽観とやや楽観を合わせて27%、やや悲観と悲観を合わせて35%とした。景気の谷で赤字に転じた過去があるため、悲観側を重めにみた。
結果として、本質価値は今の時価総額とほぼ同じになった。景気の谷で崩れる筋書きと、成長が続く筋書きが拮抗し、安くも高くもない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,366 円609 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,273 円145 億円)。 今の値に割り戻すと 3,420 円388 億円、今との差 +24.7%、 期待の年率 +9.2%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 9,545 円1,084 億円 | 1,674 円190 億円 | +309.0% | +15.1% | 785 円89 億円 |
| やや楽観 | 20% | 7,413 円842 億円 | 1,474 円167 億円 | +224.0% | +12.5% | 1,777 円202 億円 |
| 中立 | 38% | 6,783 円770 億円 | 1,400 円159 億円 | +198.3% | +11.5% | 3,110 円353 億円 |
| やや悲観 | 23% | 2,084 円237 億円 | 985 円112 億円 | +11.9% | +1.1% | 706 円80 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,320 円150 億円 | 856 円97 億円 | −20.7% | −2.3% | 261 円30 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,366 円609 億円 | 1,273 円145 億円 | +142.0% | +9.2% | 6,639 円754 億円 |
今の株価時価総額 2,743 円311 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% AI・次世代車・防衛の追い風で、市場を上回って伸びる 利益 72 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 9,545 円1,084 億円
AI・データセンター、次世代自動車、防衛関連の試験需要が、10年にわたって国内市場を実質で12%押し上げる。日本電計はそこで着実にシェアを取り、国内の取扱シェアは約11.2%まで上がる。
海外は、総代理店の中国メーカーと欧州・インドの新拠点が育つ。中国は市場の拡大に合わせてシェアを3.6%まで伸ばし、その他地域も2.4%に届く。海外ビジネスは中期計画の350億円を大きく超える。
売上は2,440億円、営業利益は103億円、純利益は72億円に達する。営業利益率は4.2%で、過去12年の最高を少し超える程度にとどまる。配当は純利益の35%程度で増え続け、ROEは10%台に乗る。
- 日本(電子計測器・電子部品・検査装置などの技術商社):数量 11,200(国内の取扱市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 15.0%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 1,681 億円・営業利益 108 億円。市場は実質12%増(AI・防衛・次世代車)、シェア11.2%
- 中国:数量 10,400(中国の取扱市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 4.8%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 502 億円・営業利益 18 億円。市場は実質30%増、シェア3.6%(総代理店の拡大)
- その他(欧州・ASEAN・インド・米国):数量 8,000(その他地域の取扱市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 3.2%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 257 億円・営業利益 8 億円。欧州・ASEAN・インドで市場は実質60%増、シェア2.4%
倍率:事業の純利益 72 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 15.03 倍、時価総額 1,084 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:成長分野の追い風が10年続き、海外も軌道に乗る必要がある。運転資金の重さと景気の振れを考え、7%と低めに置いた。
やや楽観 20% 新分野と海外が、市場を上回る伸びを支える 利益 59 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 7,413 円842 億円
国内の取扱市場は、新分野の追い風で実質6%増える。日本電計のシェアは10.5%まで上がり、国内の売上は1,490億円ほどになる。
海外は、中国が実質20%、その他の地域が実質36%の市場拡大を取り込む。ただし、米国・インドの販売子会社と中国の受託試験会社の苦戦は一部残り、利益率は海外全体で2〜3%にとどまる。
売上は2,094億円、営業利益は85億円、純利益は59億円になる。営業利益率は4.1%で、過去12年の最高に並ぶ。配当は純利益の35%程度で、2026年3月期の約5倍の水準になる。ROEは9%台だ。
- 日本(電子計測器・電子部品・検査装置などの技術商社):数量 10,600(国内の取扱市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 14.1%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 1,491 億円・営業利益 97 億円。市場は実質6%増、シェア10.5%
- 中国:数量 9,600(中国の取扱市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 4.3%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 412 億円・営業利益 12 億円。市場は実質20%増、シェア3.2%
- その他(欧州・ASEAN・インド・米国):数量 6,800(その他地域の取扱市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 2.8%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 191 億円・営業利益 5 億円。市場は実質36%増、シェア2.1%
倍率:事業の純利益 59 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.18 倍、時価総額 838 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:成長分野の追い風が続くが、利益率は4%前後で頭打ちになる筋書き。蓋然性のある強気の姿として20%を置いた。
中立 38% 市場並みに伸び、M&Aで少しシェアを上積みする 利益 54 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 6,783 円770 億円
国内の取扱市場は実質2%の緩やかな伸びにとどまるが、日本電計はM&Aと営業網で、シェアを10.2%から10.8%へ上げる。国内の売上は1,480億円ほどになる。
海外は、中国が実質15%、その他の地域が実質30%の市場拡大を取り込む。海外全体の売上は530億円ほどで、中期計画の350億円を超える。利益率は2〜2.5%と低いままだ。
全社共通費は物価の上昇で増える。営業利益は78.5億円、営業利益率は3.9%で、2026年3月期の3.7%をわずかに上回る。純利益は54億円、純利益÷営業利益は0.69と、過去の中央値0.71に近い。配当は純利益の35%程度で、ROEは8〜9%だ。
- 日本(電子計測器・電子部品・検査装置などの技術商社):数量 10,200(国内の取扱市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 14.5%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 1,476 億円・営業利益 95 億円。市場は実質2%増、シェア10.8%(M&Aで上積み)
- 中国:数量 9,200(中国の取扱市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 4.0%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 370 億円・営業利益 9 億円。市場は実質15%増、シェア3.0%
- その他(欧州・ASEAN・インド・米国):数量 6,500(その他地域の取扱市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 2.5%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 166 億円・営業利益 3 億円。市場は実質30%増、シェア1.9%
倍率:事業の純利益 54 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍。全体の PER 13.94 倍、時価総額 757 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内市場は緩やかに伸び、小口のM&Aと海外の積み上げで売上が5割増える筋書き。いちばん確からしい姿として38%を置いた。
やや悲観 23% 中抜きと景気の谷で、国内シェアが下がる 利益 27 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 2,084 円237 億円
国内の取扱市場は実質5%縮み、日本電計のシェアは9.8%に下がる。標準品の計測器はメーカー直販やネット通販に移り、残るのは校正や修理など手間のかかる仕事だ。
海外は広がらない。中国は市場が横ばいで、受託試験の赤字が続く。その他の地域も、米国・インドの販売子会社の苦戦が残り、利益率は0.5%にとどまる。
全社共通費は物価で増えるが、売上は伸びない。営業利益は43億円、営業利益率は2.7%まで下がり、2020年の谷に近づく。純利益は27億円で、配当は純利益の35%程度に収まる。ROEは5%台で、資本コストには届かない。
- 日本(電子計測器・電子部品・検査装置などの技術商社):数量 9,500(国内の取扱市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 13.1%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 1,248 億円・営業利益 69 億円。市場は実質5%減、シェア9.8%に低下
- 中国:数量 8,000(中国の取扱市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 3.4%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 268 億円・営業利益 3 億円。市場は横ばい、シェア2.5%、受託試験の赤字が残る
- その他(欧州・ASEAN・インド・米国):数量 5,000(その他地域の取扱市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 2.1%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 107 億円・営業利益 1 億円。市場は横ばい、シェア1.6%
倍率:事業のROEは5%前後で資本コスト7.75%に届かない。式の約9.1倍の範囲で、稼ぐ力の弱さを見て約7割の7.0倍を置いた。
確率:メーカーの直販化と景気の谷が重なり、利益率が下がる姿。過去にも赤字に転じた経緯があり、23%と中立に近い厚みで置いた。
悲観 12% 構造的に負ける:メーカー直販と空洞化で、利益が消える 利益 2 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,320 円150 億円
メーカーの直販とネット通販が、標準品の計測器を商社から奪う。国内の取扱市場は国内製造業の海外移転で実質18%縮み、日本電計のシェアも9.0%に下がる。
海外は赤字に沈む。中国は市場が実質20%縮んで赤字になり、その他の地域も赤字が続く。海外の撤退や子会社の整理で、特別損失が出る。
全社共通費は物価で増え続ける。営業利益は9億円、営業利益率は0.75%まで落ちる。純利益は2億円にとどまり、配当は純利益の半分に近づく。それでも売掛金と在庫は回収でき、会社は存続する。自己資本は425億円まで積み上がるが、稼ぐ力は戻らない。国内の顧客が減り、海外の赤字拠点を畳む費用も出る。売れる資産が株主の価値を下支えする姿だ。
- 日本(電子計測器・電子部品・検査装置などの技術商社):数量 8,200(国内の取扱市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 12.1%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 989 億円・営業利益 40 億円。市場は実質18%減(国内製造業の空洞化)、メーカー直販でシェア9.0%に低下
- 中国:数量 6,400(中国の取扱市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 2.4%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 154 億円・営業利益 −2 億円。市場は実質20%減、シェア1.8%、赤字
- その他(欧州・ASEAN・インド・米国):数量 4,000(その他地域の取扱市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 1.6%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 64 億円・営業利益 −1 億円。市場は実質20%減、シェア1.2%、赤字
倍率:稼ぐ力はほぼなく、事業のROEは資本コスト7.75%を大きく下回る。そこで値は、売掛金・在庫・現金などの売れる資産から負債を引いた床(約150億円、今の自己資本の約0.46倍)で置いた。EVで見ると営業利益9億円の約28倍と高く映るが、これは利益が消える筋書きだからで、利益の倍率では評価しない。市場の値付けは根拠にしない。
確率:メーカーの直販化と国内製造業の海外移転が重なり、利益がほぼ消える構造的な負けの姿。12%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本(電子計測器・電子部品・検査装置などの技術商社)
国内48拠点で、電子計測器、電子部品・機構部品、製造・加工・検査装置を、メーカーの研究開発や生産現場の約13,000社に売る。校正・修理も手がける。
| 数量国内の取扱市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10,000 | 10.2% | 1,020 | 65 |
| 10 年後 中立 | 10,200 | 14.5% | 1,476 | 95 |
取り方:日本の販売高1,020億円とセグメント利益65億円は2026年3月期の決算による。取扱う市場は開示がなく、計測器の市場1,438億円(シェア約30%)に電子部品・検査装置・FA機器・理化学を足した約1兆円と推定し、シェアを約10.2%と逆算した。数量は実質の市場、物価3%は価格に入れた。
中国
電計科技(上海)などで、日系・中資系の工場に計測器や電子部品を売る。受託試験の子会社も持つ。
| 数量中国の取扱市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8,000 | 2.8% | 225 | 5 |
| 10 年後 中立 | 9,200 | 4.0% | 370 | 9 |
取り方:中国の販売高224.5億円とセグメント利益5億円は2026年3月期の決算による。市場は開示がなく約8,000億円と推定し、シェアを約2.8%と逆算した。数量は実質の市場、物価3%は価格に入れた。
その他(欧州・ASEAN・インド・米国)
ドイツ・ハンガリー・ASEAN・インド・米国の販売子会社で、非日系企業や総代理店を通じて計測器を売る。
| 数量その他地域の取扱市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,000 | 1.7% | 87 | 1 |
| 10 年後 中立 | 6,500 | 2.5% | 166 | 3 |
取り方:その他地域の販売高86.8億円は決算による。利益は非開示のため約1億円と推定した。市場は約5,000億円と推定し、シェアを約1.7%と逆算した。連結営業利益49.7億円との差(セグメント利益の合計71億円−49.7億円=約21億円)は全社共通費で、各筋書きの調整額に物価で増やして入れた。
リスクと懸念
運転資金の重さと借入の増加
売上債権は463億円と総資産の6割近くを占める。2026年3月期は売掛金が43億円増えて営業キャッシュ・フローが36億円の赤字になり、短期借入金を27億円増やした。売上が伸びるほど資金繰りは重くなる。
景気の谷で赤字に転じる
設備投資と研究開発費に連動し、2009年と2010年は営業利益が赤字だった。2020年も営業利益率が2.6%まで下がった。足もとの利益率4%前後は過去10年で最高で、景気の谷では大きく下がる。
メーカー直販・ネット通販による中抜き
標準品の計測器は、メーカーの直販やネット通販に移りやすい。商社が値上げを通しにくい一方、人件費は物価並みに上がるため、粗利が伸びなければ利益率は下がる。
国内製造業の空洞化
顧客の主力は国内メーカーの研究開発と生産現場だ。製造業の海外移転が進めば、国内の試験・評価の需要は構造的に細る。日本の売上は連結の約77%を占める。
海外事業の収益化の遅れ
中国のセグメント利益率は2.1%と低く、受託試験子会社は苦戦している。米国とインドの販売子会社も苦戦中だ。海外の目標350億円を達成しても、利益が伴うとは限らない。
あいホールディングスの存在
あいHDが約21.7%を持つ「その他の関係会社」で、社外取締役を2名受け入れている。少数株主の取り分が後回しになる余地があり、TOBの可能性は当サイトの参考値で10年以内に2割台半ばある。
仕入先への依存
キーサイト・テクノロジーやテクトロニクスなど、計測器の主要メーカーが仕入れの柱だ。代理店契約が切り替わったり、メーカーが直販を強めたりすれば、取扱い品目が減る。
今後の分かれ目
- 営業キャッシュ・フローが黒字に戻り、売掛金の回収が改善する
- 運転資金の重さが一時的だった証拠になる。倍率の上限(卸売の重さ)を見直す。
- 営業利益率が4%を超えて定着する
- 規模の経済が効いている証拠になる。中立の営業利益率を引き上げる。
- 海外ビジネスの売上が350億円を超え、中国の利益率が3%を超える
- 海外が利益を生み始めた証拠になる。楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 仕入先のメーカーが日本での直販を強める、または代理店契約が切れる
- 中抜きが現実になった証拠になる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- あいホールディングスが持分を増やす、または売却する
- 経営の自由度が変わる。TOBなら提示価格を確認する。
- 受注残が減り、受注高が前年を下回る
- 足もとの勢いが終わる合図になる。中立の売上の伸びを引き下げる。
見ておくもの
- 受注高・受注残と売上の伸び
- 営業利益率と粗利率
- 営業キャッシュ・フローと売掛金
- 海外ビジネスの売上と中国・その他の利益率
- 仕入先の代理店契約とメーカーの直販の動き
- あいホールディングスの保有比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPERを見ず、各筋書きの事業のROEと資本コスト7.75%(基本7.5%に循環+0.5・値決め+0.25・借金+0.25)から正当化PERを計算し、堀が中程度(残る割合1/2)の上限の95%前後に置いた(ROEがkを超える筋書きは1÷kを下限とした)。ROEがkに届かないやや悲観は稼ぐ力、悲観は売れる資産から負債を引いた床で置いた。純現金ではなく純有利子負債99億円で、余った現金は足していない。実行済みの自社株買いはなく、自己資本の起点は直近の決算の328億円をそのまま使った。優待は確認できず、還元に入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→15.03 倍・やや楽観 PER 11.8→14.18 倍・中立 PER 11.8→13.94 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+1.0%(循環+0.5・値決め+0.25・借金+0.25)を足してk 7.75%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。