結論
ヤギは、繊維原料から衣料品の企画・生産、TATRASなどのブランド販売までを扱う繊維専門商社である。筆者の結論は「やや割安」だ。伝統的な卸売には深い堀がないものの、ブランドの収益拡大、政策保有株式の売却、株主還元の強化が同時に進み始めた。10年の期待価値は保有株式と賃貸不動産の調整後で約480億円となり、基準時価総額402億円を約20%上回る。ただし、割安幅の大半は経営が資本の使い道を変え続けることを条件としている。
直近の利益改善は単なる物価上昇ではない。売上高がかつての1,100億円台から859億円に縮む一方、営業利益は42億円まで伸びた。低採算取引の整理と、アパレルの製品提案、TATRASの販売が利益率を変えた。ところが、衣料品は流行と気温に大きく左右され、海外調達先の変更も難しくない。直近の4.9%という営業利益率が全社の新しい永久水準と断言するのは早い。
会社は2029年3月期の売上960億円、経常利益60億円、ROE10%を約束した。株主への利益還元も従来より具体的になり、資産をため込む会社から稼いで戻す会社への転換が本物かが焦点である。中立ではブランドが成長しても全社の競争が残るため、2036年の利益率を急激には引き上げない。期待価値と市場価格の差は魅力だが、景気後退とブランド失速を同時に耐えられるほど厚い安全域ではない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主なら、まずこの会社が10年後にも顧客から選ばれる理由を探す。素材を集めて渡す機能は必要でも、同じ仕様の品を安く調達できる商社は複数ある。商品を右から左へ流すだけの取引には高いのれん代を払えない。反対に、顧客がブランド名で指名し、値上げを受け入れるTATRASの売上には、単なる取扱高と違う価値がある。
しかし、ブランドの成功は永久保証ではない。ダウンが暖冬でも売れるか、年齢を重ねた顧客の後に新しい購入者がつくか、海外の直営・卸売店が利益を生むかを確かめる必要がある。店舗を増やすほど固定費が先に発生し、見た目の売上成長がオーナーの現金収入と逆行することがある。ブランド以外の卸売が稼ぐ薄い利幅は、この弱さを吸収する大きな余裕にはならない。
資本配分には改善の兆しがある。低収益の取引から距離を置き、政策保有株の縮減と自社株買いを示したことで、株主は利益の使い方を検証しやすくなった。一方、保有有価証券や不動産の評価益は、配当を生む営業利益と同じ倍率で二重に数えてはいけない。売却時の税、借入、株主へ届くまでの距離を考慮して別に評価すべきである。
現状の株価にはやや安全域があるが、それは成長の絵だけでなく、成長が止まったときの貸借対照表の回収可能性も確かめた後の判断だ。中期目標を達成しても、売掛金や在庫が膨らみ、還元を実行できなければ評価を引き下げる。所有したいのは売上の大きさではなく、残る利益を無駄なく株主に戻せる経営である。
何で稼ぐ会社か
収益の土台は三つの物の流れである。マテリアルは糸・織物・機能性素材を調達して国内外の製造業者に供給する。アパレルは顧客ブランド向けの企画、生地選定、縫製の委託管理から納品までを引き受ける。いずれも原料や完成品の売買が収益の中心で、人月単価で売るコンサルタントではない。仕入れ先の探索、納期管理、品質の確認に価値がある反面、大手顧客がそれらを自前で行えば粗利は薄くなる。
成長の中心はTATRASを含むブランド・リテールである。冬物の高価格帯ダウンを軸に、直営店、百貨店、卸売、自社の電子商取引を組み合わせる。企画と販路を握るため通常の衣料品卸より値段を決めやすい。2026年3月期のブランド・リテール売上は約133億円となり、会社が2029年へ向けて掲げるTATRAS国内売上140億円、海外17億円が成長の主要な道筋になる。NIKEの店舗を担うWINWIN YJVは成長投資先だが、持分法の合弁事業であり、店舗の取扱高を連結売上と取り違えてはいけない。
生活資材ではタオル、コットン、化粧品周辺素材などの小口商材を扱い、衣料と違う使用頻度で取引を分散する。不動産では保有する大阪・東京などの賃貸物件から賃料を得る。2026年3月期の開示区分はマテリアル、ライフスタイル、アパレル、ブランド・リテール、不動産の五つである。2027年以降の区分変更に合わせて、リテールの販売高と投資利益を重複させない。
開示上の各セグメント売上には内部取引が入り、五区分の合計は全社売上を上回る。また、区分ごとの利益には営業外項目が混じるため、全社営業利益との差は本社費と内部取引の調整で見る。数量の全社開示がないため、衣料は着数、素材は重量、ブランドは衣服換算の販売点数という推計を使う。数を確定できないこと自体が、この会社の予測に残る不確実性である。
優良さと弱いところ
ヤギの強みは、川上の素材調達から企画、縫製手配、納品、店頭販売までをつなぐ実務の積み重ねにある。衣料の品質不良や納期遅延は小売店にとって大きな損失であり、検品と調達網を使い慣れた商社には発注を維持する理由がある。しかし、その強みは特許や独占契約ではなく、他の繊維商社も似た機能を持つ。したがって、既存の素材・受託製品には高い価格決定力を認めにくい。
最も堀に近いのはTATRASという消費者が指名して選ぶブランドである。ダウンの品質、デザイン、直営店と電子商取引の体験が積み重なれば、同じ機能の衣服との単純な価格競争を避けられる。会社は国内販売と海外販路を広げているが、冬物に偏る商品構成や流行の変化はブランドの経済的な寿命を短くしうる。解約率や長期の値上げ定着率のような堀の定量的証明は開示されていない。全社を強い堀の会社として扱わない理由である。
過去のROEは長く5%前後にとどまったが、直近は7.8%へ改善した。自己資本比率は56.6%で純有利子負債も約31億円と小さく、資金繰りの逼迫は見えない。一方、利益が積み上がって資本が厚くなるほど、低利回りの卸売へ再投資し続けるならROEは再び下がる。ブランド成長と還元の両輪が必要である。
株主にとって大切なのは利益額だけでなく利益の現金化である。売掛金や在庫の積み上がり、冬物の売れ残り、出店費用を差し引いた後に、継続的な配当と買い戻しへ回せるかを重視する。直近の改善を全面的に信じることも、昔の低収益だけで固定的に評価することも避けたい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の衣料品市場は人口の減少と衣服の長期使用に直面する成熟市場である。矢野経済研究所の国内アパレル小売市場調査では2024年の市場規模が約8.5兆円で、名目市場が伸びても実質の購入点数が伸びるとは限らない。業界調査による2025年の国内衣料品供給は約37億着で、輸入品の比率が高い。衣料の製品原価には原材料、縫製、物流費が入り、物価が年3%上がる世界でも小売側がすべてを値上げできるわけではない。
競争相手はモリリン、瀧定名古屋、蝶理などの繊維専門商社や総合商社系の事業部であり、アパレル顧客は自社調達と複数社への分散発注も選べる。各社が開示する繊維関連売上には素材、委託製品、小売、海外取引が混在するため、分母を統一したヤギの市場シェアは算定できない。衣料品の供給着数と同社の推定納品着数を比べた約0.5%も、国内向け製品だけを厳密に抽出したシェアではない。シェアが少し変わるだけで、薄い利幅の業績には大きく響く。
素材では海外生産と三国間貿易の拡大が見込まれるものの、顧客が商社を通さず発注できる仕組みも進む。生活資材はタオルと化粧品用品の需要が安定的な反面、異なる市場を一つにまとめた総市場規模はなく、個別商品の棚取りで競争する。ブランドではTATRASがカナダグース、モンクレール、ヘルノ、デュベティカなど高価格帯外衣と競い合う。国内の高価格品市場は訪日客や所得上位層にも支えられるが、流行、暖冬、為替と観光消費に敏感である。
10年間の中心は、成熟した素材・衣料市場の数量が微減し、商品の名目単価はおおむね物価に沿って上がる姿である。TATRASだけは販路と海外展開により数量を増やせる可能性があり、その成否が全社の構造を左右する。中国・東南アジアの縫製集積が変われば納期と原価が揺れるため、150円の固定為替前提でも競争は消えない。
資本政策と M&A
資本政策はこの会社を評価し直す最大の理由である。2026年5月公表の中期経営計画2029は、2029年3月期に売上高960億円、経常利益60億円、親会社株主帰属利益47億円、ROE10%、PBR1倍超を掲げた。2034年を視野に入れた長期目標はROE12%である。会社は従来より明確に資本効率を経営の約束へ移した。
還元では配当性向40%以上、総還元性向70%を目安とし、中計3年間の配当総額50億円と自社株取得40億円を掲げる。政策保有株式の売却は20〜30億円を計画し、成長投資と株主還元に振り向ける構えだ。2026年には株式分割や自己株式の消却、追加の買い戻しを実行・発表している。運用面では増配と自社株買いの実績があるものの、過去5年を通じて純利益の半分以上を恒常的に戻したとはまだいえない。余剰資産の株主への実現率は慎重に見る。
ブランドの店舗網と海外販売、NIKE関連合弁の店舗拡大には投資が要る。中期計画はTATRASの販路拡大とアパレルの物流・企画力に資金を回すが、販売高が伸びても利益が残らなければ意味はない。経営側の取得・売却判断を問うべきなのは今後の数年である。買収や完全子会社化による非公開化は本分析の前提にせず、政策保有株を売った金額は事業の儲けとして重ねていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
繊維卸という名前から想像される会社と、現在のヤギは違い始めている。2022年3月期から2026年3月期にかけて連結売上は小幅の回復にとどまったが、営業利益は11億円から42億円に増えた。これは売上だけを追う低採算商社から、企画の付加価値と自社ブランドの利益を取り込む企業への転換を示している。アパレル事業の製品提案には取引先の品質・納期管理が組み込まれ、TATRASは消費者が直接指定して買う商品だ。価格決定力の違う事業を同じ卸売業の目線で一括評価するべきではない。
TATRASの国内売上目標は2029年3月期140億円で、海外17億円と次のブランドの育成も予定されている。ブランドの数量が10年で増えれば、素材とアパレルが物価並みにしか伸びなくても全社の利益構造は変わる。NIKEの合弁店舗には売上の総額が連結に入らない難しさがあるが、運営実績が積み上がれば持分法利益という別の稼ぎも育つ。独自の生産管理と電子商取引を組み合わせれば、粗利率を保ちながら海外展開を進められる。
さらに政策保有株式と賃貸不動産には事業利益と別に残る価値がある。会社は中期の自社株取得40億円と総還元性向70%目安を公表した。単に株価が安いからではなく、稼ぎ方と現金の返し方がともに改善する企業である。持ち合いを整理して資本効率を上げれば、10年後の利益は本業から増え、途中の株主還元も従来とは異なる水準で期待できる。
慎重な見方
直近の利益率が過去10年の最高水準であることは、むしろ警戒材料にもなる。長い期間のROE中央値は5%にも届かず、素材とアパレルの数量は日本の人口減少や衣料の節約志向と無縁ではない。中国や東南アジアの取引先が価格や納期を直接競争させれば、長年の取引関係だけで粗利を守るのは難しい。製品企画の書類仕事や発注管理はAIによって効率化され、顧客企業が商社を挟む理由も一部薄れる。
TATRASのブランド力も、長年の値上げ実績や顧客再購入率が詳細に開示されているわけではない。冬物への依存は暖冬や消費マインド悪化に弱い。新しい店舗と海外販路の拡大が先に家賃、人件費、販促費を膨らませる可能性がある。2027年3月期第1四半期にはブランドの売上が増えても先行費用で損失が出ており、増収が利益につながるまで時間がかかることを示した。2029年のTATRAS計画は目標であって、現在確実に実現した利益ではない。
保有株式には含み益があっても、全額が少数株主に戻るとは限らない。売却が遅れたり、新規ブランド買収や出店に再投資されたりすれば、資産の回収には時間がかかる。持ち合い株の時価と賃貸物件の価値をそのまま株主価値とするのも危険だ。借入と売却税を引き、政策保有株の取引関係を失う副作用も考える必要がある。高いROEの継続にはブランド成功と資産圧縮の両方が要り、いずれかが失敗すれば見かけほどの安全域は残らない。
どちらに重みを置いたか
ブランドの実績改善と資本政策の具体化を評価するが、目標をそのまま10年間延長することはできない。上側の確率を30%、下側を36%とし、冬物ブランドの需要変動、直近の利益率が高水準にあること、海外とNIKE合弁の実行リスクから慎重側に少し寄せた。一方、政策保有株と賃貸不動産の回収可能性、実行済みの増配・買い戻しは下支えとなる。期待価値は時価総額を約20%上回るが、資本政策の後退やブランドの採算悪化があれば、その差は容易に消える。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,821 円687 億円(+ 還元の換算額還元の合計 1,055 円257 億円)。 今の値に割り戻すと 2,025 円493 億円、今との差 +18.2%、 期待の年率 +10.2%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 6,129 円1,493 億円 | 1,806 円440 億円 | +363.2% | +20.0% | 793 円193 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,204 円1,024 億円 | 1,535 円374 億円 | +235.0% | +15.7% | 1,148 円280 億円 |
| 中立 | 34% | 2,734 円666 億円 | 1,202 円293 億円 | +129.8% | +10.7% | 1,338 円326 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,519 円370 億円 | 583 円142 億円 | +22.7% | +2.4% | 504 円123 億円 |
| 悲観 | 12% | 614 円150 億円 | 156 円38 億円 | −55.1% | −8.4% | 92 円23 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,821 円687 億円 | 1,055 円257 億円 | +126.3% | +10.2% | 3,876 円945 億円 |
今の株価時価総額 1,713 円417 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% TATRASの国際展開が成功し、資本効率も定着 利益 100 億円 · PER 14.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6,129 円1,493 億円
TATRASが日本以外でも定番ブランドとして認知され、価格を上げながら販売点数を大きく増やす。国内の直営店と自社ECに加え、アジア・欧州向けの卸売が伸び、次のブランドも小さな収益の柱に育つ。ブランド部門には新たな店舗投資が要るが、既存店売上が固定費を吸収し、営業利益が急拡大する。衣料品の数量は日本国内の市場より強く、独自企画と調達管理によって顧客の発注を取り込む。
素材では海外販売の拡大が国内の数量減を上回り、機能性素材の需要が収益を下支えする。WINWIN YJVのNIKE店舗運営は当初の投資負担を超えて持分法利益を生み、取扱高を連結売上に混同しないまま株主の利益に寄与する。経営は持ち合い株を処分し、買い戻しも着実に実行する。競合との差は主にブランドと製品企画に生まれ、全社の利益率は高いが独占的ではない。
- マテリアル(繊維原料・生地):数量 22,500(取扱繊維原料・生地の重量換算(トン、推定))× 価格 0.02(重量換算1トン当たり受取売上(億円、名目))→ 売上 428 億円・営業利益 16 億円。海外機能性素材販路が拡大し重量は現状比25%増
- ライフスタイル(タオル・生活資材):数量 15,000,000(タオル・衛生小物などの個数換算(個、推定))× 価格 0.00(個数換算1個当たり受取売上(億円、名目))→ 売上 90 億円・営業利益 10 億円。消耗小物の定番化で数量25%増
- アパレル(OEM・ODM製品):数量 24,000,000(衣服の納品枚数・着数換算(着、推定))× 価格 0.00(衣服1着当たりの平均卸売売上(億円、名目))→ 売上 768 億円・営業利益 73 億円。企画差別化と顧客開拓で着数20%増
- ブランド・リテール(TATRAS等):数量 580,000(TATRASその他の衣服販売点数換算(点、推定))× 価格 0.00(1点当たりグループ売上(億円、名目、卸と直販の混合))→ 売上 464 億円・営業利益 102 億円。TATRAS海外拡大と次ブランド育成で販売点数2.32倍
- 不動産(賃貸等):数量 12,800(賃貸可能な延べ面積換算(㎡、推定))× 価格 0.00(1㎡・1年当たり賃料収入(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 6 億円。稼働改善、賃料はインフレ以上に上昇
倍率:余剰現金・有価証券・賃貸不動産の収益を除いた事業純利益約95.1億円、対応する事業自己資本約593.6億円でROE約16.0%。k8%、堀normalで超過ROEの残存を半分とみるRONIC約12.0%、g_long2.5%から正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)≈14.4倍。入力時価総額は全社純利益100億円×14.4倍=1,440億円とする。政策保有株式の受取配当と賃貸不動産の損益を除外し、対応する税後資産価値を加算する処理は最上位のholdings・rentalによって計算側で別途行うため、mcap_okuに手動加算しない。
確率:国内140億円という中計のTATRAS目標の達成に加え、海外でのブランド定着と株主還元の継続成功まで要るため10%とする。
やや楽観 20% ブランドが成長し計画を上回る 利益 70 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,204 円1,024 億円
中期経営計画2029のブランド販売目標をおおむね達成し、2030年代も直営店と自社ECの接点を増やす。海外売上の比率が上がって冬物衣料の生産量が増え、売上の伸びを上回ってブランドの利益が増える。独自のデザインだけでなく、商品を適時に届ける製造管理が評価され、春夏の商材も収益に寄与する。
アパレルは国内の服の供給点数が減る中でも得意先を乗り換え需要から獲得する。マテリアルでは機能性素材と海外での三国間取引が国内縮小を補い、生活資材ではタオル以外の消耗品が伸びる。NIKE合弁店舗は売上の総額ではなく持分法投資の利益として徐々に成果が出る。大型買収は行わず、配当と自社株買いを続ける。優良さはTATRASを中心に増すが、素材・製品卸全体の値決め力は競合との価格交渉に制約される。
- マテリアル(繊維原料・生地):数量 20,500(取扱繊維原料・生地の重量換算(トン、推定))× 価格 0.02(重量換算1トン当たり受取売上(億円、名目))→ 売上 385 億円・営業利益 13 億円。海外売上拡大で数量14%増
- ライフスタイル(タオル・生活資材):数量 13,000,000(タオル・衛生小物などの個数換算(個、推定))× 価格 0.00(個数換算1個当たり受取売上(億円、名目))→ 売上 73 億円・営業利益 7 億円。機能性・衛生小物の棚を獲得
- アパレル(OEM・ODM製品):数量 21,000,000(衣服の納品枚数・着数換算(着、推定))× 価格 0.00(衣服1着当たりの平均卸売売上(億円、名目))→ 売上 641 億円・営業利益 54 億円。高付加価値ODMにより着数5%増
- ブランド・リテール(TATRAS等):数量 420,000(TATRASその他の衣服販売点数換算(点、推定))× 価格 0.00(1点当たりグループ売上(億円、名目、卸と直販の混合))→ 売上 311 億円・営業利益 62 億円。販売点数1.68倍、単価は物価やや上
- 不動産(賃貸等):数量 11,500(賃貸可能な延べ面積換算(㎡、推定))× 価格 0.00(1㎡・1年当たり賃料収入(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 5 億円。賃料改定はおおむね物価に沿う
倍率:保有株受取配当と不動産賃貸損益の税後計約4.9億円を除いた事業純利益65.1億円、事業自己資本約509.6億円、ROE約12.8%。k8%、normalの残存割合1/2からRONIC約10.4%、g2.5%、正当化PER≈13.81倍をそのまま用いる。入力時価総額は全社純利益70億円×13.81倍=966.7億円とする。政策保有株式と賃貸不動産の税後回収可能価値への再評価はholdings・rentalの処理に任せ、ここでは事業価値への手動加算を行わない。
確率:すでに確認できるTATRASの国内販売、顧客への製品提案強化が続けば現実的な上振れだが、海外拡大と出店採算の定着にはなお時間がかかるため20%。
中立 34% 繊維卸は低成長、TATRASで着実に稼ぐ 利益 47 億円 · PER 12.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,734 円666 億円
国内の衣料品供給は人口減少と節約志向で少しずつ縮み、ヤギの素材・アパレル数量もやや減る。単価は物価上昇と付加価値素材への転換で上がるが、小売顧客との交渉により一部を吸収する。主力のアパレルは国内物流の効率化と高採算製品への絞り込みで、一定の利益率を維持する。出店と海外販売を続けるTATRASは衣料の販売点数を増やし、全社で最も高い伸びを担う。
会社は2029年の業績目標に挑戦するが、その完全な達成と維持までは中立に織り込まない。2030年代にはブランド成熟による伸びの鈍化と店舗費用が現れる。NIKEの合弁は拡大しても全部の店舗売上が連結の販売高となるわけではなく、持分法利益を純利益に限って織り込む。買収による大きな上乗せは採用せず、政策保有株の処分、適度な配当、自社株買いを続ける。結果として、将来も求められる商社だが、強い堀を持つ会社へ全面的に変わるわけではない。
- マテリアル(繊維原料・生地):数量 17,200(取扱繊維原料・生地の重量換算(トン、推定))× 価格 0.02(重量換算1トン当たり受取売上(億円、名目))→ 売上 316 億円・営業利益 9 億円。国内縮小で実質数量4.4%減、単価は物価並み
- ライフスタイル(タオル・生活資材):数量 11,700,000(タオル・衛生小物などの個数換算(個、推定))× 価格 0.00(個数換算1個当たり受取売上(億円、名目))→ 売上 64 億円・営業利益 6 億円。数量2.5%減、価格は物価相当
- アパレル(OEM・ODM製品):数量 19,000,000(衣服の納品枚数・着数換算(着、推定))× 価格 0.00(衣服1着当たりの平均卸売売上(億円、名目))→ 売上 564 億円・営業利益 43 億円。顧客の内製化で数量5%減、単価1.34倍
- ブランド・リテール(TATRAS等):数量 335,000(TATRASその他の衣服販売点数換算(点、推定))× 価格 0.00(1点当たりグループ売上(億円、名目、卸と直販の混合))→ 売上 241 億円・営業利益 42 億円。販売点数34%増、単価1.35倍
- 不動産(賃貸等):数量 11,000(賃貸可能な延べ面積換算(㎡、推定))× 価格 0.00(1㎡・1年当たり賃料収入(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 4 億円。面積不変、賃料は物価相当
倍率:純利益47億円のうち配当・賃貸損益の税後約4.9億円を資産評価側に移し、事業純利益42.1億円、対応する事業自己資本約475.6億円でROE約8.85%。k8%、超過ROEの残存1/2、RONIC約8.43%、g_long2.5%より正当化PER≈12.79倍。入力時価総額は全社純利益47億円×12.79倍=601.13億円とする。政策保有株式の配当と賃貸不動産の利益を除き、税後資産価値を加算する処理はholdings・rentalの計算で別途実施するため、入力時価総額には手動で加えない。
確率:国内衣料品の実質数量の減少とブランドの販路拡大が併存する最も説明しやすい進路。計画の一部は達成するがROE10%を10年維持するとは見ず、34%。
やや悲観 24% 衣料数量が減り、ブランド投資の回収が遅れる 利益 20 億円 · PER 12.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,519 円370 億円
冬物衣料の市場が暖冬と消費者の節約で伸びず、TATRASの直営店は維持できても既存店売上が停滞する。新規店舗の損益分岐点到達が遅れ、ブランド部門の利益率が下がる。素材の海外販路開拓も顧客の価格競争に阻まれ、アパレルでは製品の仕様作成や発注管理を小売側が内製化する。縫製品の数量が減る一方、価格は必要な原価上昇の一部しか転嫁できない。
利益に見合わないブランド拡大や買収を経営が手控え、販管費と店舗運営を縮小するため、営業赤字へは落ちない。NIKE合弁の店舗増加は一時的に遅くなり、2029年の総還元性向目安は利益減少を受けて規模が小さくなる。売れる株式や一部の不動産は持ち直しの資金に充て、少数株主へ戻る割合が減る。品質管理や調達網は残るものの、ブランド以外は買い手の交渉力に押され、資本効率が下がる。
- マテリアル(繊維原料・生地):数量 14,200(取扱繊維原料・生地の重量換算(トン、推定))× 価格 0.02(重量換算1トン当たり受取売上(億円、名目))→ 売上 241 億円・営業利益 6 億円。顧客減により数量21%減、値上げ不完全
- ライフスタイル(タオル・生活資材):数量 9,300,000(タオル・衛生小物などの個数換算(個、推定))× 価格 0.00(個数換算1個当たり受取売上(億円、名目))→ 売上 47 億円・営業利益 4 億円。取扱量22.5%減、単価は物価未達
- アパレル(OEM・ODM製品):数量 16,000,000(衣服の納品枚数・着数換算(着、推定))× 価格 0.00(衣服1着当たりの平均卸売売上(億円、名目))→ 売上 432 億円・営業利益 26 億円。顧客が調達を内製化し着数20%減
- ブランド・リテール(TATRAS等):数量 255,000(TATRASその他の衣服販売点数換算(点、推定))× 価格 0.00(1点当たりグループ売上(億円、名目、卸と直販の混合))→ 売上 161 億円・営業利益 19 億円。暖冬・販路投資失敗で数量は横ばい近辺
- 不動産(賃貸等):数量 10,100(賃貸可能な延べ面積換算(㎡、推定))× 価格 0.00(1㎡・1年当たり賃料収入(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 3 億円。空室増とテナント交渉で賃料上昇鈍化
倍率:2036年のROEは20÷609=3.3%と資本コスト8%を大幅に下回る。成長による価値上乗せを禁じた上限1/k=12.5倍より低いPER12.0倍で、稼ぐ力20×12=240億円。保有株の売却代金は不振事業の資金・閉店費・還元に消費されるため、楽観側に加える不動産・政策株の再評価額を別に重ねない。想定した税後回収可能資産床は概ね200億円で稼ぐ力が上回る。
確率:ブランドの店舗先行費用や小売顧客の内製化が既に見えるため、通常の循環悪化より高い24%。販路が残り事業継続する可能性は高い。
悲観 12% 顧客に商社機能を奪われ、ブランドも後退 利益 −16 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 614 円150 億円
海外工場と国内小売企業が直接取引を増やし、ヤギの素材・製品取扱量が大きく減る。設計情報の共有、発注、検品書類の自動化が進む一方、ヤギが独自に担う機能の割合は縮む。価格交渉力を失い、物価が上昇しても販売単価を十分には上げられない。衣料品の数量も減り、店舗への納品額が大きく縮小する。TATRASは暖冬と流行の変化でブランドの指名買いが弱まり、返品や在庫処分の負担が増す。
投資してきた海外店舗や合弁が利益を回収できず、減損とリストラ費用が発生する。素材調達の経験は残るものの、競合と顧客に主導権を握られ、元の利益率には戻らない。経営は配当と自社株買いを大幅に削減し、一部物件や政策保有株を換金して赤字を補填する。10年の後半は損失が続き、総額の純資産も減る。これは一時的な景気後退ではなく、競争上の地位を失った会社として、生き残る資産から価値を見直す筋書きである。
- マテリアル(繊維原料・生地):数量 9,000(取扱繊維原料・生地の重量換算(トン、推定))× 価格 0.02(重量換算1トン当たり受取売上(億円、名目))→ 売上 140 億円・営業利益 1 億円。主要顧客離脱、数量半減
- ライフスタイル(タオル・生活資材):数量 7,000,000(タオル・衛生小物などの個数換算(個、推定))× 価格 0.00(個数換算1個当たり受取売上(億円、名目))→ 売上 32 億円・営業利益 0 億円。商材整理、数量4割超減
- アパレル(OEM・ODM製品):数量 12,500,000(衣服の納品枚数・着数換算(着、推定))× 価格 0.00(衣服1着当たりの平均卸売売上(億円、名目))→ 売上 263 億円・営業利益 5 億円。数量38%減、価格も一部下落
- ブランド・リテール(TATRAS等):数量 120,000(TATRASその他の衣服販売点数換算(点、推定))× 価格 0.00(1点当たりグループ売上(億円、名目、卸と直販の混合))→ 売上 60 億円・営業利益 −4 億円。TATRASの需要後退で数量半減
- 不動産(賃貸等):数量 8,500(賃貸可能な延べ面積換算(㎡、推定))× 価格 0.00(1㎡・1年当たり賃料収入(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。賃貸稼働減・空室率上昇で採算悪化
倍率:2036年純利益は赤字で永久利益へのPERを使えない。床は今ある現預金・回収できる売掛金・換金可能な棚卸品・上場株・賃貸資産から借入、仕入債務、税、解約・撤退費を差し引いた約100億円。見込み時価総額149.6億円は2026年自己資本467.5億円に対してPBR0.32倍に相当し、これは市場の過去の底ではなく回収可能資産約100億円と残存する商社の小さな営業権から判断した値である。2036年自己資本415.5億円には掛けない。
確率:衣料調達の顧客内製化とTATRASの需要後退が同時に進み、長期赤字に陥る複合的な構造敗北である。発生可能性は低いが、薄利卸と暖冬依存の強さから12%を割り当てる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
マテリアル(繊維原料・生地)
糸・繊維原料・機能性素材の内外取引。国内外の衣料メーカーと産業資材向けに供給する。
| 数量取扱繊維原料・生地の重量換算(トン、推定) | 価格重量換算1トン当たり受取売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18,000 | 0.01 | 247 | 6 |
| 10 年後 中立 | 17,200 | 0.02 | 316 | 9 |
取り方:2026年3月期有報のマテリアル売上247.25億円、セグメント利益5.89億円を採用。重量の全社開示はなく、糸・生地・機能性素材の構成差を含む1.8万トン相当を仮の取扱重量として逆算し、単価は約137万円/トンとした。繊維メーカー・商社全体の統一されたトン建て分母がないため会社シェアの断定を避ける。推定値であり実際の出荷トン数ではない。
ライフスタイル(タオル・生活資材)
タオル、化粧用コットン、生活資材、ウェルネス製品。衣料以外の継続需要を取り込む。
| 数量タオル・衛生小物などの個数換算(個、推定) | 価格個数換算1個当たり受取売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12,000,000 | 0.00 | 49 | 4 |
| 10 年後 中立 | 11,700,000 | 0.00 | 64 | 6 |
取り方:2026年3月期有報のライフスタイル売上49.13億円、セグメント利益4.43億円。タオル・コットン・衛生用品は異種製品なので1,200万個相当の代表品換算で試算し、平均409円程度の卸収入とした。国内タオル小売市場は参照市場の一部に過ぎず、49億円全額を割った数字を市場シェアとは呼ばない。
アパレル(OEM・ODM製品)
アパレル企業向けにデザイン提案、生地調達、製造委託、検品・納品を担う製品卸。
| 数量衣服の納品枚数・着数換算(着、推定) | 価格衣服1着当たりの平均卸売売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20,000,000 | 0.00 | 443 | 35 |
| 10 年後 中立 | 19,000,000 | 0.00 | 564 | 43 |
取り方:有報のアパレル売上443.41億円、区分利益35.08億円を採用。全社納品着数の非開示を受け、2,000万着相当、卸売収入約2,217円/着と仮置き。国内衣料供給約37億着に対して換算0.5%ほどだが同社には海外向けや多品種が含まれ、数量と市場シェアの厳密な実測ではない。モリリン・瀧定名古屋・蝶理などの同業売上も取扱段階が異なり単純合算できない。
ブランド・リテール(TATRAS等)
TATRASなどの高価格帯衣料の直営・EC・卸売。WINWIN YJVのNIKE小売取扱高は直接の連結売上と区別する。
| 数量TATRASその他の衣服販売点数換算(点、推定) | 価格1点当たりグループ売上(億円、名目、卸と直販の混合) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 250,000 | 0.00 | 133 | 20 |
| 10 年後 中立 | 335,000 | 0.00 | 241 | 42 |
取り方:2026年3月期のブランド・リテール売上133.48億円、区分利益20.06億円。TATRAS国内113億円、海外12億円を含む。実売点数未開示のため25万点、平均グループ売上約5.34万円/点を推定。店頭価格より低い卸経由分、冬物と春夏物の混合を含む。TATRASは広い衣料市場の中のプレミアムなニッチであり、共通分母のブランド別シェアは非開示。WINWIN YJVのNIKE店舗GMVは売上に追加しない。
不動産(賃貸等)
保有する賃貸ビルなどからの賃料収入。簿価とは別に売却可能価値を持つ。
| 数量賃貸可能な延べ面積換算(㎡、推定) | 価格1㎡・1年当たり賃料収入(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11,000 | 0.00 | 9 | 3 |
| 10 年後 中立 | 11,000 | 0.00 | 12 | 4 |
取り方:2026年3月期有報の不動産セグメント売上8.95億円、利益3.13億円を採用。複数物件と付随収入をまとめて延べ約1.1万㎡相当の代理数量に換算し、年約8.14万円/㎡の売上とした。賃貸等不動産注記の年間損益3.09億円、時価93.68億円、簿価16.71億円とは目的が異なる。面積は推定であり開示された個別物件の賃貸面積の合計と同一とは限らない。
リスクと懸念
TATRASの流行・暖冬と固定費
高価格帯ダウンは形・色・シルエットの流行、冬の気温、実質所得に左右される。直営店と海外販路を広げるほど家賃、人件費、宣伝費が先行し、売れ残りを値引きで処理すればブランドの値段そのものが損なわれる。新しいブランドがTATRASの採算を補えるとはまだいえず、販売点数と定価販売比率を同時に見る必要がある。
商社の中抜きとAIエージェント代替
マテリアル、アパレル、生活資材は物品売買であり、人月受託、SaaSの席課金、広告運用、情報販売に該当しない。したがってAIエージェント代替の専用数量削減表は直接適用しない。ただし、顧客がAIで仕様書・発注・見積比較・在庫照合を自動化すれば商社経由の必要性が下がる。これを中立の衣料数量減と長期成長率に反映し、資本コストへ重ねていない。
政策保有株・不動産の価値実現
上場株式の含み益と賃貸資産の時価は大きいが、取引先との関係を理由に売却が遅れる恐れがある。売れば税金が発生し、物件に借入が結び付いていれば残余価値も減る。株主への還元に回らず、新規店舗や低収益の買収へ使われるなら、貸借対照表の資産価値をそのまま投資家に帰属させられない。
原材料・人件費・円建て調達価格
綿花、合成繊維、織物、縫製、海上運賃が同時に高騰すると、納入先と決めた価格へ転嫁するまで利幅が縮む。基準のドル円は10年間150円で固定するが、海外の賃金や供給網の再配置まで一定にはならない。国際物流の混乱は数量と納期を同時に悪化させるため、売上の伸びだけで価値を判断できない。
合弁のGMVと利益の取り違え
WINWIN YJVのNIKE販売網には大きな拡大計画があるが、店舗の取扱高195億円という中期目標はヤギ連結の売上高195億円増を意味しない。出店数が3倍になっても、合弁先への利益配分や店舗投資が重くなれば親会社に入る持分法利益は小さい。出店件数と持分法損益、投下資本を照合する必要がある。
負債の借換え、売掛金と新リース会計
純有利子負債約31億円は小さいが、衣料商社の在庫と売掛金は運転資金を拘束し、取引先の信用不安に弱い。長期金利3%の前提では借換え費用が増え、店舗の賃料も固定の現金流出である。2028年3月期からの新リース会計基準によって貸借対照表の負債表示が増える可能性があり、利益・純負債の時系列比較には調整が要る。
今後の分かれ目
- TATRASの国内販売が2029年3月期目標140億円に届き、海外17億円も達成したら
- 既存店と海外販路の販売点数を増やして評価し、ブランドの利益率が同時に上昇していればやや楽観の確率を高める。出店費用に対する回収年数を確認する。
- TATRASの店舗数だけ増えて既存店売上と定価販売比率が低下したら
- ブランドの数量成長と粗利率を引き下げ、減損や閉店費を加味してやや悲観・悲観の確率を上げる。
- 政策保有株式を中計期間に20~30億円売却し、自社株取得40億円を実行したら
- 余剰資産が株主へ戻る確度を引き上げ、excess_cash_returnの0.75を再評価する。売却益を本業利益として二重計上しない。
- アパレルの納品着数が推計の中心より2割以上落ち、得意先の直接発注が広がったら
- 薄利の製品卸が構造的に縮むと判断し、10年数量を悲観側へ移す。営業利益率の低下もあわせて見直す。
- NIKE関連合弁の店舗数が3倍になっても持分法利益が増えなかったら
- 店舗取扱高を親会社の売上と混同せず、成長投資の採算を下方修正する。新規出店を増やすことより投資回収を優先する。
- 全社の営業利益率が5%を超え、売掛金・在庫の回転も改善したら
- 商品構成の改善が会計上の利益だけでなく現金を増やしている証拠と捉え、中立の利益率とオーナー利益を上方修正する。
見ておくもの
- 2029年3月期の売上960億円・経常利益60億円・当期純利益47億円・ROE10%の進捗
- TATRAS国内販売113億円から140億円、海外12億円から17億円への推移と既存店採算
- ブランドの直営・EC売上、値引き率、秋冬物の在庫と店舗当たり利益
- 配当性向40%以上・総還元性向70%目安、自社株取得40億円の実行額
- 政策保有株式20~30億円の縮減・含み益課税と賃貸不動産の売却・賃料収入
- アパレルOEM/ODMの推定納品着数と営業利益率、主要顧客の内製化
- WINWIN YJVのNIKE店舗数・GMVと持分法損益の差、投下資本利益率
- 資金繰り、売掛金と棚卸資産の回転、借入金利、新リース基準での表示変更
倍率と資本コストの決め方
売値や現在のPERから逆算せず、五事業の現実の商品の重量・着数・個数・面積を代表数量として推定し、数量と単価の伸びから2036年の利益を出した。全社のセグメント利益は内部取引と本社費を調整し、直近の特殊に高い純利益対営業利益率を延長しない。資本コストは国債3%とリスクプレミアム4.5%、素材の弱い値決め力0.5%を加えた8%で、βと時価総額規模は使わない。PERは資産利息を除いた事業ROE・RONIC・長期成長率2.5%の式による上限で決めた。楽観から中立までの入力時価総額は、それぞれ純利益×PERの1440億円、966.7億円、601.13億円で統一した。政策保有株式と賃貸不動産はholdings・rentalによる計算側の調整に任せ、入力時価総額には手動で加算しない。悲観は過去のPBRの谷ではなく、負債と税を控除した資産の回収額を確認した。家賃は今と同様に営業費用扱いとし、新リース会計での見かけの負債増加と混同しない。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。