結論
クロスプラスは名古屋の婦人服の企画・製造卸だ。専門店チェーンや総合スーパーの売り場に並ぶ服を、企画から東南アジアの工場での生産まで請け負って納める。筆者の結論は「おおむね適正」で、安くも高くもない。株価は自己資本の半分ほどだが、稼ぐ力が資本コストに届かないので、その割安は見かけほど大きくない。
事業の柱である卸は、納める先の売り場が縮む中にある。過去10年で売上は年2%ずつ減り、赤字の年も2度あった。一方で雑貨・季節品と自社のECは伸びており、中計は2028年1月期に営業利益20億円を掲げる。ただ今期は円安で仕入れ原価が上がり、営業利益は7億円と前期の半分に落ちる見込みだ。
価値を下から支えるのは、約60億円の政策保有株と、配当を自己資本の2.5%まで上げる方針だ。10年で見れば配当の受け取りが価値のかなりの部分を占め、株価の上がり幅には多くを期待しにくい。悲観でも、政策保有株を売った税後の額が下支えになり、価値は今の半分ほどで止まる。楽観でも、株価が自己資本に届くのがやっとだ。振れ幅の小さい、地味な銘柄である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安く見えるが、持ち続けて報われる事業ではない」部類に入る。株価は自己資本の半分ほどだ。しかし資本を預けても、資本コストを上回って増やしてくれる力が無い。ためた利益は、株主にとって帳簿ほどの価値を生まない。
持ち続けるなら、その理由は配当と手元の資産だ。DOEの方針で配当は自己資本に連動し、利益が多少落ちても簡単には減らない。政策保有株と純現金は合わせて時価総額に近い額があり、事業がゼロになっても全部は失わない。安全域は、事業の稼ぎよりこちらにある。
一方で、その資産が株主に戻るとは限らない。会社は売却の代金を買収に使うと言っている。小さな買収が卸の目減りを埋めるのか、それとも価値を薄めるのか。筆者は、それを数年の実績で見極めてからでも遅くない会社だと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は単純だ。取引先の専門店やGMS(総合スーパー)が売りたい服を企画し、協力工場で作って納める。売上の4分の3がこのアパレル卸売で、販路は専門店が46%、量販店が35%を占める。自社の名前は表に出ず、店の棚には取引先のブランドで並ぶことが多い。
利益は薄い。1枚あたりの卸値は千数百円で、そのうち会社に残る営業利益は数十円にすぎない。為替が円安に振れると、ドル建ての仕入れが先に上がり、値上げが半年遅れで追いかける。2027年1月期の減益もこの形だ。
残りの4分の1は、伸びる側の事業だ。ライフスタイル卸売は季節の雑貨や冷感帽子をドラッグストアや雑貨店に納め、前年比2割超で伸びている。小売は「join park」「DECOY」などの店舗と、外部モールのEC専用ブランド「for/c」で消費者に直接売る。2026年6月にはレディースカジュアルの「スカラー」を持つシャルズを買い、ECとブランドの層を厚くした。SNSやライブ配信で売る腕も一緒に手に入れた形だ。生産は中国と東南アジアの主力工場に8割を集約し、不良品率を下げてきた。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。服の企画と生産管理の腕はあるが、取引先が同じことを自社でやる、あるいは別の卸に切り替えることを止める仕組みは無い。値段を決めるのは大口の取引先の側だ。
資本効率も弱い。過去10年のROEの中央値は6.6%で、筆者が置く資本コスト9%に届かない。会社自身も株主資本コストを8%程度と認め、ROE9%を目標に掲げた。届いた年は2021年1月期と2024年1月期の2度だけだ。
よい点は財務の堅さと経営の素直さだ。自己資本比率は65%で、純現金もある。PBR(株価÷1株あたり純資産)が1倍を割っていることを中計で正面から認め、DOEの導入と政策保有株の売却を約束した。前中計で営業利益の目標を達成した実績もある。売上の未達を利益率の改善で補った点は、経営が数字に正直であることの表れだと筆者は受け止めている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の衣料品の小売市場は8兆円台で横ばいだが、その中身が卸に不利な方へ動いている。伸びているのは、自社で企画から生産までを抱える製造小売と、中古衣料、それにECだ。クロスプラスの主な納め先である郊外型の専門店と総合スーパーの衣料売り場は、売り場面積そのものが減っている。
総合スーパーは衣料の自社売り場を縮め、テナントに貸す形へ移ってきた。郊外型の専門店チェーンは規模を生かし、海外の工場と直接取引する割合を上げている。どちらも、間に立つ卸の取り分を細らせる動きだ。同業の婦人服の製造卸は、ブランドの再編や合併で数を減らしている。
逆風の中にも、伸びる隙間はある。猛暑の長期化で冷感や紫外線対策の機能性衣料が売れ、ドラッグストアや雑貨店は棚を広げている。クロスプラスが雑貨と機能性に力を入れるのは、この隙間を取りにいく動きだ。ただ、規模はまだ売上の1割に満たない。
為替は大きな変数だ。仕入れの多くがドル建てで、円が対ドルで1%安くなるだけで、利益は数千万円単位で削られる。物価3%の世界で値上げが通るかどうかは、取引先の店頭で消費者が値上げを受け入れるかにかかる。
資本政策と M&A
資本政策は、PBR1倍割れを受けて株主に向き直った段階だ。配当はDOE2.5%を2028年1月期の目標に掲げ、毎年の増配を約束した。今期も2割の増配を予想する。2026年9月には3.5億円を上限とする自社株買いを決め、9月25日に3億円分を取得した。
中計の3年間で政策保有株を10億円売り、成長投資30億円と配当13億円に充てる計画だ。成長投資の中心はM&Aで、2023年の中初、2024年のアイエスリンク、2026年のシャルズと小さな買収を重ねている。株主優待はEC用のクーポンで、会社の費用は年1億円に届かず、価値への影響は小さい。買収防衛策を続けている点は、外からの再編の圧力を弱める。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
雑貨と小売の伸びは本物だ。ライフスタイル卸売は前年比2割超で伸び、「Yoki」や冷感帽子のような当たり品が出ている。猛暑が常態になる中で、機能性衣料と季節の雑貨はドラッグストアの棚で売り場を広げる。小売もEC専用ブランドが育ち、シャルズの買収でブランドとライブ販売の腕が加わった。売上の4分の1を占めるこの2つが年6〜8%で伸びれば、卸の目減りを十分に埋められる。
今期の減益は円安による一時の原価高で、構造の悪化ではない。値上げは半年遅れで通っており、為替が落ち着けば利益率は2〜3%台に戻る。前中計でも営業利益の目標は達成した。
財務も株主にやさしい。自己資本の3割に当たる政策保有株を売って現金に変え、DOE2.5%で配当を毎年上げると約束した。PBR0.5倍前後という値段は、事業が縮み続ける前提をすでに映している。卸が横ばいで止まるだけで、株価は自己資本に向けて戻る余地がある。買収防衛策はあるが、PBRの低い小型株として、いずれ同業や投資ファンドの目に留まる可能性も残る。
慎重な見方
売上の4分の3を占める卸は、納め先の売り場ごと縮んでいる。総合スーパーは衣料売り場を減らし、郊外型の専門店は海外工場との直接取引を広げる。中間に立つ卸の取り分は、景気と関係なく細っていく。過去10年で売上は年2%減り、赤字の年も2度あった。
値決め力も無い。円安で原価が上がるたびに、利益が先に削られる。今期の営業利益は前期の半分の見込みだ。ROEが資本コストを上回った年は、10年で2度しかない。
雑貨と小売の伸びは、規模が小さすぎる。売上の1割未満の雑貨が2倍になっても、卸の1割の目減りを埋めるのがやっとだ。ECも前中計で計画100億円に対し28億円にとどまった。政策保有株を売った現金も、株主に戻すより小さな買収に回る。買収防衛策もあり、外からの再編で価値が表に出る道も狭い。PBRの低さは割安ではなく、事業の実力そのものの値段だ。資本コストを下回る会社が利益をためるほど、株主の取り分は目減りしていく。
どちらに重みを置いたか
事業の見立てでは、慎重な見方に分がある。卸の目減りは構造的で、雑貨と小売の伸びはそれを埋める程度にとどまる。一方で、配当方針と政策保有株という下支えは確かで、悲観でも価値が大きく崩れない。確率は中立を中心に、やや悲観をやや楽観より厚くした。結果は今の時価総額とほぼ同じで、割安とも割高とも言いにくい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した株価時価総額 2,145 円155 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 819 円59 億円)。 今の値に割り戻すと 1,439 円104 億円、今との差 +11.7%、 期待の年率 +8.7%(資本コスト 9.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,712 円268 億円 | 1,176 円85 億円 | +279.5% | +14.3% | 391 円28 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,949 円213 億円 | 996 円72 億円 | +206.3% | +11.8% | 789 円57 億円 |
| 中立 | 37% | 2,454 円177 億円 | 858 円62 億円 | +157.1% | +9.9% | 1,225 円89 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,185 円86 億円 | 692 円50 億円 | +45.7% | +3.8% | 431 円31 億円 |
| 悲観 | 12% | 649 円47 億円 | 415 円30 億円 | −17.4% | −1.9% | 128 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,145 円155 億円 | 819 円59 億円 | +130.1% | +8.7% | 2,964 円214 億円 |
今の株価時価総額 1,288 円93 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 専門店の棚とECで取り返す 利益 24 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 3,712 円268 億円
アパレル卸売の枚数は年0.5%ほどの目減りで踏みとどまる。「CROSS FUNCTION」のような機能性の企画が専門店の売り場を取り、値上げも物価並みに通る。雑貨と季節品は10年で2倍超に育ち、ドラッグストアや雑貨店の棚に定着する。小売はECの自社サイトが固定客を持ち、シャルズの「スカラー」がブランドの軸になる。営業利益率は3.6%と、この会社としては最良の水準まで上がる。円相場が落ち着き、東南アジアの主力工場への集約で原価も下がる。それでも事業は「他社の売り場に服を納める」形のままで、ROEは資本コストに届かない。株価は自己資本の9割弱にとどまる。
- アパレル卸売:数量 2,829(納める衣料の枚数(万枚・年、推定))× 価格 2,010(1枚あたりの卸値(円・名目))→ 売上 569 億円・営業利益 18 億円。0.95倍の枚数 × 1枚の単価 1.34倍、営業利益率 3.2%
- ライフスタイル卸売:数量 946(納める雑貨の個数(万個・年、推定))× 価格 804(1個あたりの卸値(円・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 4 億円。2.20倍の個数 × 単価 1.34倍、営業利益率 5.0%
- 小売(店舗・EC):数量 504(購入件数(万件・年、推定))× 価格 5,360(1件あたりの客単価(円・名目))→ 売上 270 億円・営業利益 11 億円。1.60倍の購入件数 × 客単価 1.34倍、営業利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 268 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:機能性ブランドと雑貨が育ち、シャルズの買収も実を結ぶ筋書き。中計の数字を10年かけて上回る形で、過去の最良期に近い利益率まで戻る道は細く、確率は低めにした。
やや楽観 20% 中計の線を少し遅れてなぞる 利益 19 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 2,949 円213 億円
中計の目標は2028年1月期には届かないが、数年遅れで追いつく。アパレル卸売は大手専門店チェーン向けの品目を広げ、枚数の減りを年1%強に抑える。雑貨・季節品は「Yoki」や冷感帽子「-TEN」のような当たり品が続き、売上は2倍近くになる。小売はEC専用ブランドの好調が続き、店舗の閉店をECが埋める。営業利益率は3%強で、過去の山を超えない。政策保有株の売却で得た現金は小さな買収と増配に回り、DOE(自己資本に対する配当の割合)2.5%の方針が守られる。ROEは7%前後まで上がるが、資本コストにはなお届かない。
- アパレル卸売:数量 2,621(納める衣料の枚数(万枚・年、推定))× 価格 1,980(1枚あたりの卸値(円・名目))→ 売上 519 億円・営業利益 15 億円。0.88倍の枚数 × 1枚の単価 1.32倍、営業利益率 2.9%
- ライフスタイル卸売:数量 817(納める雑貨の個数(万個・年、推定))× 価格 804(1個あたりの卸値(円・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 3 億円。1.90倍の個数 × 単価 1.34倍、営業利益率 4.5%
- 小売(店舗・EC):数量 441(購入件数(万件・年、推定))× 価格 5,360(1件あたりの客単価(円・名目))→ 売上 236 億円・営業利益 8 億円。1.40倍の購入件数 × 客単価 1.34倍、営業利益率 3.2%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 211 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の売上680億円・営業利益20億円を数年遅れで達成し、その先も緩やかに伸びる筋書き。雑貨と小売の伸びは実績があり、確率を中立の次に置いた。
中立 37% 縮む卸を雑貨と小売が埋める 利益 15 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 2,454 円177 億円
アパレル卸売の枚数は10年で2割減る。郊外型の専門店とGMS(総合スーパー)の衣料売り場が縮み、納める先そのものが細るからだ。値段は物価に少し届かない。大口の取引先が仕入れ値の上げを渋るためだ。雑貨・季節品は1.6倍に伸び、小売もECが店舗の閉店を補う。全体の営業利益率は2.7%で、ここ10年の平均を少し上回る程度にとどまる。為替の振れで1年ごとの利益は上下するが、10年をならせば大崩れはしない。配当はDOE2.5%を守るが、ROEは5%台で資本コストに届かず、ためた利益は帳簿ほどの価値を生まない。
- アパレル卸売:数量 2,382(納める衣料の枚数(万枚・年、推定))× 価格 1,950(1枚あたりの卸値(円・名目))→ 売上 465 億円・営業利益 12 億円。0.80倍の枚数 × 1枚の単価 1.30倍、営業利益率 2.6%
- ライフスタイル卸売:数量 688(納める雑貨の個数(万個・年、推定))× 価格 804(1個あたりの卸値(円・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 2 億円。1.60倍の個数 × 単価 1.34倍、営業利益率 4.0%
- 小売(店舗・EC):数量 394(購入件数(万件・年、推定))× 価格 5,360(1件あたりの客単価(円・名目))→ 売上 211 億円・営業利益 5 億円。1.25倍の購入件数 × 客単価 1.34倍、営業利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 164 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上の7割を占める卸の目減りと、雑貨・小売の伸びが打ち消し合う筋書きを中心に置いた。過去10年の売上の年2%減と、直近の雑貨・小売の伸びの両方に合う。
やや悲観 23% 取引先の売り場が先に縮む 利益 9 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,185 円86 億円
GMSの衣料売り場の縮小が加速し、郊外型の専門店チェーンも自社で中国・東南アジアの工場と直接取引を広げる。アパレル卸売の枚数は10年で3割減る。値上げは物価に追いつかず、営業利益率は1.8%まで下がる。雑貨は伸びるが規模が小さく、卸の目減りを埋めきれない。円安が長引けば仕入れ原価が先に上がり、値上げが半年遅れで追いかける形が続く。配当はDOEの方針で細りながらも続き、政策保有株の売却益で決算を整える年が増える。株価は自己資本の3割ほどで、稼ぐ力の割に低い値が続く。小さな買収も卸の目減りを埋めるには足りず、のれんの償却が利益を重くする。
- アパレル卸売:数量 2,085(納める衣料の枚数(万枚・年、推定))× 価格 1,875(1枚あたりの卸値(円・名目))→ 売上 391 億円・営業利益 7 億円。0.70倍の枚数 × 1枚の単価 1.25倍、営業利益率 1.8%
- ライフスタイル卸売:数量 559(納める雑貨の個数(万個・年、推定))× 価格 780(1個あたりの卸値(円・名目))→ 売上 44 億円・営業利益 1 億円。1.30倍の個数 × 単価 1.30倍、営業利益率 3.0%
- 小売(店舗・EC):数量 347(購入件数(万件・年、推定))× 価格 5,200(1件あたりの客単価(円・名目))→ 売上 180 億円・営業利益 3 億円。1.10倍の購入件数 × 客単価 1.30倍、営業利益率 1.5%
倍率:ROE 3.6% と k を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)は時価総額を上回るが、取引先の売り場の縮小が続く筋書きなので、PER は 7.5 倍まで下げた。
確率:量販店・郊外型専門店の衣料売り場の縮小が中立より速い筋書き。過去10年で2度の赤字があり、悪い方へ振れる余地は大きいとみて、確率を中立の次に厚くした。
悲観 12% 納め先を失う 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 649 円47 億円
取引の大きい郊外型専門店が、企画から生産までを自前の直接調達に切り替える。アパレル卸売の枚数は10年で45%減り、工場の稼働も落ちる。営業利益はほぼゼロになり、在庫の評価損と人員の整理が続く。主力工場との取引量も保てず、生産の集約で下げてきた原価が再び上がる。雑貨と小売も伸びが止まる。会社の価値を支えるのは、政策保有株と運転資金を除いた手元の現金だけになる。それも、買収や赤字の穴埋めに使われれば株主には戻らない。株価は自己資本の4分の1ほどに沈む。配当も減り、DOEの約束は取り下げられる。買収防衛策が外からの再編を遠ざけ、資産が株主の手に渡る道も開かない。
- アパレル卸売:数量 1,638(納める衣料の枚数(万枚・年、推定))× 価格 1,770(1枚あたりの卸値(円・名目))→ 売上 290 億円・営業利益 1 億円。0.55倍の枚数 × 1枚の単価 1.18倍、営業利益率 0.5%
- ライフスタイル卸売:数量 430(納める雑貨の個数(万個・年、推定))× 価格 750(1個あたりの卸値(円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 0 億円。1.00倍の個数 × 単価 1.25倍、営業利益率 1.0%
- 小売(店舗・EC):数量 284(購入件数(万件・年、推定))× 価格 5,000(1件あたりの客単価(円・名目))→ 売上 142 億円・営業利益 0 億円。0.90倍の購入件数 × 客単価 1.25倍、営業利益率 0.0%
倍率:赤字すれすれで利益の倍率は使えない。床は政策保有株の税後の売却額と、運転資金を除いた現金に戻り方 0.5 を掛けた額(floor_assets_oku)。今の自己資本 191 億円に 0.245 倍を掛けて同じ額になる。
確率:大口の専門店が直接調達に切り替え、卸の枚数が半減近くまで落ちる筋書き。過去に2015年1月期と2022年1月期の赤字があり、無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アパレル卸売
婦人服を中心に、専門店チェーン・GMS・通販向けに企画から生産まで請け負って納める(ODM・OEM)。中国・東南アジアの協力工場で生産する。
| 数量納める衣料の枚数(万枚・年、推定) | 価格1枚あたりの卸値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 2,978 | 1,500 | 447 | 12 |
| 10 年後 中立 | 2,382 | 1,950 | 465 | 12 |
取り方:枚数は開示が無いので推定。アパレル卸売とその他の売上 446.7 億円を、婦人のトップス・ボトムスの卸値の目安(1枚千五百円)で割り、約 2,980 万枚とした。営業利益は事業別の開示が無く、全社 13.95 億円を卸の利益率が小売より高い前提で割り振った(推定)。
ライフスタイル卸売
季節の雑貨(「Yoki」)、冷感帽子(「-TEN」)、美容・健康の小物をドラッグストアや雑貨店に納める。
| 数量納める雑貨の個数(万個・年、推定) | 価格1個あたりの卸値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 430 | 600 | 26 | 1 |
| 10 年後 中立 | 688 | 804 | 55 | 2 |
取り方:個数は開示が無いので推定。売上 25.8 億円を雑貨の平均卸値の目安(1個六百円)で割り約 430 万個とした。利益は全社から割り振った推定。
小売(店舗・EC)
自社ブランドの店舗(「join park」「DECOY」など)と、外部モール・自社サイトのEC(「for/c」「ELLE girl」)で消費者に直接売る。
| 数量購入件数(万件・年、推定) | 価格1件あたりの客単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 315 | 4,000 | 126 | 2 |
| 10 年後 中立 | 394 | 5,360 | 211 | 5 |
取り方:件数は開示が無いので推定。小売の売上約 126 億円を客単価の目安(1件四千円)で割り約 315 万件とした。ECの外部モール手数料と店舗の家賃が重く、利益率は卸より低いとみて割り振った(推定)。
リスクと懸念
納め先の売り場の縮小
総合スーパーの衣料売り場の縮小と、郊外型専門店の店舗の整理が続いている。納める先の棚が減れば、卸の枚数は景気と関係なく減る。過去10年の売上の年2%減の主な理由だ。
取引先の直接調達
規模の大きい専門店チェーンは、海外の工場と直接取引する割合を上げられる。大口の取引先が企画と生産を内に取り込めば、卸の仕事はまとまって消える。取引先の集中が高い分、1社の方針転換が効く。
円安と原価
仕入れの多くがドル建てで、円安は原価を先に押し上げる。値上げは半年ほど遅れて通るので、その間の利益が削られる。2027年1月期の営業利益が前期の半分になる見込みなのも、この形だ。
小さな買収の積み重ね
政策保有株の売却代金は、成長投資としてM&Aに回す計画だ。中初、アイエスリンク、シャルズと小さな買収が続く。買った会社が伸びなければ、のれんの減損と現金の目減りが株主の取り分を削る。
天候と在庫
季節の衣料は天候に売れ行きが左右される。残暑や暖冬で秋冬物が売れ残ると、在庫の評価損が出る。2022年1月期の赤字も、店頭の不振と在庫の処理が重なった結果だ。
今後の分かれ目
- 2028年1月期に営業利益20億円の中計目標に届く
- やや楽観の筋書きに近づく。卸の値上げと雑貨の伸びが同時に効いた証拠になる。
- 雑貨と小売の売上が全体の3割を超える
- 卸の目減りを埋める形が見えたとみて、中立の利益率を上げる。
- 大口の専門店向けの売上が2年続けて1割以上減る
- 取引先の直接調達が進んだとみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 政策保有株の売却代金が自社株買いに回る
- 手元の資産が株主に戻る道が見えたとみて、悲観の床と還元を引き上げる。
- 1億円を超える減損を伴う買収の失敗が出る
- M&Aで価値を薄める会社とみて、中立の倍率を下げる。
見ておくもの
- アパレル卸売の専門店向け売上の前年比
- ライフスタイル卸売と小売の売上の構成比
- 売上総利益率と平均の為替レート
- 政策保有株の売却額と使い道
- DOEと自社株買いの実績
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEと資本コスト9%から決めた。どの筋書きでもROEが資本コストを下回るので、PERの上限は1÷kの11.8倍で、利益の質に応じてその7.6〜9割に置いた。今のPBR0.5倍や過去のPERは使っていない。悲観は過去のPBRの底でなく、政策保有株の税後の売却額と現金の戻り方から出した。2028年1月期から新リース会計で店舗の賃借がBSに載るが、小売の比率は2割で影響は小さく、10年後も家賃を営業費用に入れた今の形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→11.11 倍・やや楽観 PER 9.8→11.11 倍・中立 PER 9→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。