結論
昭栄薬品は、天然の油脂から作る化学品(オレオケミカル)を扱う大阪の専門商社だ。仕入れの約4割が花王で、その国内の主な代理店を務める。売上は269億円あるが、営業利益は5億円、売上の2%にも届かない。
筆者の結論は、10年の稼ぐ力で測ると今の値段はやや高い、というものだ。商社の口銭は薄く、値段を決める力はない。ROE(自己資本利益率)は6%前後で、資本コストに届かない。
この会社の貸借対照表で目立つのは、花王の株だ。帳簿で43億円あり、時価総額57億円の4分の3に当たる。受取配当は年1億円を超え、純利益の2割近くを生む。ただ、取引を守るための持ち合いで、売って株主に返す計画は示されていない。
会社はROE8%とPBR1倍を目標に掲げ、累進配当と株主優待を始めた。筆者は方向は正しいと見るが、花王株を抱えたままでは目標に届きにくい。
10年で見ると、取扱量は横ばいからやや増え、単価は物価並みに上がる。利益は物価並みに伸びるが、ROEは5%前後にとどまると筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「つぶれにくいが、稼ぎも薄い商社」と見る。
オーナーとして持つなら、まず稼ぐ力を見る。営業利益5億円に花王株の配当を足しても、純利益は6億円前後だ。自己資本94億円に対して6%で、資本コストに届かない。ためた利益が、それに見合う価値を生まない形だ。
花王株は資産としては立派だが、株主のものとして数えにくい。会社は取引を守るために持っており、売って返すとは言っていない。筆者は配当として利益に入る分だけを数えた。
経営は還元に前向きになった。累進配当と優待、自社株買いの方針は評価できる。ただ、目標のROE8%に届く道筋は、花王株を手放すか、利幅の厚い分野を育てるかの2つしかない。どちらも見えるまでは、安全域は薄い。
それでも、この会社がつぶれる姿は想像しにくい。赤字の年が一度もなく、借金もない。下がった時に買えば安全域が取れる種類の会社だと筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
事業は3つある。化学品が売上の9割強の249億円、家庭用洗剤などの日用品が7億円、土木建設資材が13億円だ。
化学品の中心は、パーム油などの天然油脂から作る脂肪酸、脂肪アルコール、グリセリンと、それを原料にした界面活性剤だ。花王から仕入れて、繊維の油剤、洗浄剤、化粧品、自動車部品、食品などのメーカーに売る。最大の売り先は三洋化成工業で、売上の1割を占める。
商社の稼ぎは、仕入れと売りの値段の差だ。2026年3月期の売上総利益は22億円で、5期続けて過去最高だった。ただ、人件費と物流費を引くと、営業利益は5億円しか残らない。従業員は80人と少なく、1人あたりの売上は大きいが、利幅は薄い。
日用品は、安全をうたった家庭用洗剤を他社のブランドで作って売る。土木建設資材は、地盤を固める薬剤やコンクリートの補修材、汚染土壌の改良剤を扱う。どちらも小さく、全社の利益への寄与は限られる。
上海とタイに販売の子会社があり、海外と輸入品の売上を伸ばす方針だ。
利益の形は単純だ。売上総利益の8割近くは人件費と物流費で消え、残りが営業利益になる。だから取扱量が1割増えても、費用がほぼ同じなら利益は大きく増える。逆も同じで、量が減れば利益はすぐに消える。
優良さと弱いところ
事業の質は、商社としては平凡だ。理由は2つある。
1つ目は、値段を決める力がないことだ。オレオケミカルの値段はパーム油などの相場で動き、商社はその間で口銭を取るだけだ。営業利益率は過去12年で0.7〜2.2%の間にとどまる。
2つ目は、花王への依存だ。仕入れの4割を1社に頼り、その代理店の地位が稼ぎの土台になっている。花王が直接の販売を広げれば、この会社の取り分は細る。長い取引と持ち合いの株が関係を支えているが、契約で守られた堀ではない。
良い点もある。顧客は繊維、化粧品、自動車、食品と幅広く、1つの業界の不振で崩れにくい。借金はほとんどなく、赤字の年は過去20年で一度もない。小さな会社だが、つぶれにくい形ではある。
資本効率は低い。自己資本の半分近くを花王株などの投資有価証券が占め、その配当利回りは2%台にとどまる。事業そのもののROEは1割近いが、株を抱えた全社では6%に下がる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
化学品の商社の市場は、数量で見ると横ばいだ。国内の化学品の流通は約4.3兆円で、2030年までほとんど伸びない見通しがある。長瀬産業と稲畑産業の2社が4割を握り、その下に品目ごとの中小の専門商社が並ぶ。
オレオケミカルは、その中でも地味で安定した分野だ。洗剤やシャンプー、繊維の油剤、化粧品の原料として、景気にあまり左右されずに使われる。脱石油の流れで、植物由来の原料を選ぶ動きは追い風になる。
一方で、値段は相場で決まる。パーム油の値段が上がれば売上は膨らむが、口銭は大きくは増えない。円安で輸入の値段が上がる時は、価格転嫁の速さが利益を左右する。
業界の大きな流れは、メーカーの直接取引だ。大手の化学メーカーは物流と販売を自前で効率化し、商社を通す量を減らしたい。小さな商社が生き残るには、用途の提案や小口の配送など、メーカーが手間をかけたくない仕事を担うしかない。
筆者は、10年でこの会社の取扱量は今と同じかやや増え、単価は物価並みに上がると見る。花王の洗剤や化粧品の生産が国内で続く限り、原料の流れは細らない。ただ、国内の人口が減る分、生活用品の量は大きくは伸びない。
資本政策と M&A
還元の方針は、累進配当と配当性向25%以上だ。2026年3月期の配当性向は28%だった。2023年に株主優待を始め、ポイントで商品を選べる形にした。優待の会社の負担は年0.35億円ほどと筆者は見積もり、10年の還元に足した。
2025年に資本コストを意識した経営の方針を出し、ROE8%以上とPBR1倍以上を目標にした。営業キャッシュフローの45%を還元に回し、自社株買いも機動的に行うとしている。
ただ、花王株43億円の扱いには触れていない。総資産の4分の1を占めるこの株を売れば、自社株買いの原資になるが、代理店の関係を考えると売りにくい。大株主は創業家の流れをくむ個人、投資育成会社、社員持株会で、親会社はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
昭栄薬品は、帳簿だけで見ても安い。花王株43億円と純現金13億円を足すと、時価総額57億円にほぼ並ぶ。事業の価値は、ほとんどただで手に入る計算だ。
事業も悪くない。売上総利益は5期続けて過去最高で、赤字の年は過去20年で一度もない。洗剤や化粧品、繊維の油剤など、生活に欠かせない用途が多く、景気に強い。植物由来の原料を選ぶ流れも追い風だ。
経営も変わってきた。累進配当を始め、株主優待を導入し、ROE8%とPBR1倍を目標に掲げた。営業キャッシュフローの45%を還元に回すと約束している。
東証の要請で、政策保有株を減らす会社は増えている。花王株の一部を売って自社株買いに回すだけで、ROEは目標に近づき、株主の取り分は一気に増える。
花王との関係も、すぐに崩れるものではない。何十年も続く取引で、小口の配送や用途の提案など、花王が自分でやりたくない仕事を担ってきた。代理店を絞る時も、実績のある会社が残る。今の値段は、こうした強みを何も織り込んでいない。
慎重な見方
花王株は株主のものではない。会社は花王との取引を守るために持っており、売る計画は示していない。代理店の地位を失うのが怖くて売れない株は、少数株主から見れば絵に描いた餅だ。
事業の稼ぎは薄い。営業利益率は過去12年で2%を超えたのは1度だけだ。口銭は相場と仕入れ先に決められ、値上げの力はない。人件費と物流費が物価で上がれば、利益はすぐに削られる。
仕入れの4割を花王に頼る形も危うい。花王が販売網を見直せば、稼ぎの土台が一気に崩れる。大手メーカーの直接取引の流れは、業界全体で進んでいる。
ROEは6%前後で、資本コストに届かない。花王株を持ち続ける限り、目標のROE8%は遠い。
株主優待で個人の買いを集めたことも、値段を事業の価値より高く見せている。優待の額は会社の負担としては小さいが、利回りを目当てに買う人が多いほど、株価は稼ぐ力から離れる。安く見えるのは帳簿の上だけで、稼ぐ力で測れば今の値段に安全域はない。
どちらに重みを置いたか
資産の厚みについては、強気の言い分に理がある。ただ、花王株を売る計画が無い以上、それを株主の価値として数えるのは早い。10年の稼ぐ力は資本コストに届かず、確率は中立を中心に置き、花王への依存を見て慎重な側をやや厚くした。花王株の売却が始まれば見方は変わる。その時は、余った資産の戻り方を上げ、確率を強気の側に寄せる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,201 円75 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 685 円23 億円)。 今の値に割り戻すと 1,457 円50 億円、今との差 −11.9%、 期待の年率 +5.7%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,020 円103 億円 | 1,139 円39 億円 | +151.3% | +9.7% | 333 円11 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,774 円95 億円 | 803 円28 億円 | +116.2% | +8.0% | 787 円27 億円 |
| 中立 | 38% | 2,441 円84 億円 | 715 円25 億円 | +90.8% | +6.7% | 1,200 円41 億円 |
| やや悲観 | 21% | 1,595 円55 億円 | 514 円18 億円 | +27.5% | +2.5% | 443 円15 億円 |
| 悲観 | 11% | 788 円27 億円 | 343 円12 億円 | −31.6% | −3.7% | 124 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,201 円75 億円 | 685 円23 億円 | +74.4% | +5.7% | 2,887 円99 億円 |
今の株価時価総額 1,655 円57 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 花王株の一部を売って還元し、海外と高付加価値品で口銭を厚くする 利益 8 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,020 円103 億円
筆者が描く上振れは、資本の使い方が変わる姿だ。会社はROE8%の目標に向けて花王株の約半分を売却し、その代金で10年に15億円の自社株買いを行う。花王との取引は、代理店としての実績で保たれる。
事業では、海外の子会社と輸入品、化粧品や食品の用途が伸び、取扱量は1割増える。用途の提案が効く品目が増え、化学品の利益率は2.9%に上がる。日用品と土木資材も黒字が厚くなる。
受取配当は花王株の売却で減るが、営業利益の伸びがそれを埋め、純利益は8億円台になる。それでもROEは6%台で、資本コストにはわずかに届かない。それでも、株主が受け取る額は今の形よりはっきり増える。
- 化学品(オレオケミカル・界面活性剤):数量 92.0(取扱数量(千トン、推定))× 価格 42(1トンあたりの販売単価(万円、推定))→ 売上 386 億円・営業利益 11 億円。海外・輸入品で量と口銭
- 日用品(家庭用洗剤のOEM):数量 260(販売本数(万本、推定))× 価格 402(1本あたりの売上(円、推定))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。OEMが伸びる
- 土木建設資材:数量 9.5(出荷量(千トン、推定))× 価格 20(1トンあたりの単価(万円、推定))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。補修需要
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)5 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 103 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:政策保有株の売却と自社株買いは、東証の要請と会社の目標(PBR1倍)に沿う。ただ花王との関係を考えると売却の可能性は低く、1割に届かない確率とした。
やや楽観 22% 輸入品と海外が伸び、口銭が少し厚くなる 利益 8 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,774 円95 億円
上海とタイの子会社が現地の日系メーカーへの販売を伸ばし、輸入した油脂化学品の扱いも増える。取扱量は1割弱増え、単価は物価並みに上がる。
化学品の利益率は2.7%に上がる。小口の配送と用途の提案を担うことで、メーカーとの間で口銭を守れるからだ。人件費と物流費は物価並みに増える。
受取配当は花王の増配で少しずつ増える。純利益は7.5億円になり、累進配当と優待を続けて、小さな自社株買いも行う。花王株は持ち続け、ROEは5%台にとどまる。資本コストとの差は縮むが、埋まるまでには至らない。花王株の配当が利益を下支えする形は、この筋書きでも変わらない。
- 化学品(オレオケミカル・界面活性剤):数量 90.0(取扱数量(千トン、推定))× 価格 41(1トンあたりの販売単価(万円、推定))→ 売上 369 億円・営業利益 10 億円。量と口銭が少し上向く
- 日用品(家庭用洗剤のOEM):数量 240(販売本数(万本、推定))× 価格 402(1本あたりの売上(円、推定))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。横ばい
- 土木建設資材:数量 9.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 20(1トンあたりの単価(万円、推定))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。小さな黒字
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)5 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 95 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外と輸入品を伸ばす方針は既に動き、売上総利益は5期続けて過去最高。量の上積みと口銭の改善が続く姿として2割強。
中立 38% 量は横ばい、口銭も横ばいで、利益は物価並み 利益 7 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,441 円84 億円
筆者が最も起こりやすいと見るのは、今の形がそのまま続く姿だ。国内の化学品の需要は横ばいで、海外の伸びが少しだけ上乗せになる。取扱量は5%増え、単価は物価並みに上がる。
口銭は相場と仕入れ先に決められるので、化学品の利益率は2.5%のままだ。本社の費用も物価並みに増える。営業利益は7億円台になるが、物価を差し引けばほぼ横ばいだ。
受取配当は花王の増配で年1.5億円ほどに増え、純利益は6.5億円になる。累進配当と優待、小さな自社株買いで10年に25億円ほどを返す。ROEは5%前後で、会社の目標の8%には届かない。花王株を持ち続ける限り、この差は埋まらない。
- 化学品(オレオケミカル・界面活性剤):数量 87.0(取扱数量(千トン、推定))× 価格 40(1トンあたりの販売単価(万円、推定))→ 売上 350 億円・営業利益 9 億円。量は5%増・単価は物価並み
- 日用品(家庭用洗剤のOEM):数量 230(販売本数(万本、推定))× 価格 402(1本あたりの売上(円、推定))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。横ばい
- 土木建設資材:数量 8.5(出荷量(千トン、推定))× 価格 20(1トンあたりの単価(万円、推定))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。とんとん
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)5 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 83 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去12年の営業利益率は1〜2%台で動き、取扱量も大きくは変わっていない。今の形が続く最も自然な筋書きとして4割弱。
やや悲観 21% メーカーの直接取引が進み、取扱量が細る 利益 3 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,595 円55 億円
大手の化学メーカーが物流と販売を自前で効率化し、商社を通す量を減らす。花王の取扱の一部も直接取引に移り、取扱量は今より1割強減る。値段の競争で単価は物価ほどには上がらない。
化学品の利益率は1.8%に下がる。人件費と物流費は物価並みに上がるので、口銭の目減りがそのまま利益を削る。日用品と土木資材も伸びない。
純利益は3億円台に落ちる。累進配当の方針は守るが、自社株買いは止め、優待も縮める。価値は稼ぐ力より、現金と投資有価証券の売れる値で決まる。花王株は持ち続けるので、その時価は株主の手に届きにくい。少数株主に戻るのは、その4分の3ほどとみる。
- 化学品(オレオケミカル・界面活性剤):数量 72.0(取扱数量(千トン、推定))× 価格 38(1トンあたりの販売単価(万円、推定))→ 売上 274 億円・営業利益 5 億円。直接取引に一部が移る
- 日用品(家庭用洗剤のOEM):数量 200(販売本数(万本、推定))× 価格 380(1本あたりの売上(円、推定))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。縮む
- 土木建設資材:数量 7.5(出荷量(千トン、推定))× 価格 19(1トンあたりの単価(万円、推定))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。とんとん
倍率:ROEは約2.7%で稼ぐ力は年金で見て約40億円。価値は床の資産(現金と投資有価証券の税後に戻り方0.75)で測り、今の自己資本94億円に0.468倍をかけた44億円とする。
確率:大手メーカーは販売の効率化を進めており、商社を通す量が減る流れは業界全体にある。花王の取扱の一部が直接取引に移る筋は十分ありうるので2割強。
悲観 11% 花王が代理店を絞り、稼ぎの土台が崩れる 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 788 円27 億円
花王が国内の販売網を見直し、代理店を絞る。昭栄薬品は主要な取扱を失い、化学品の取扱量は4割減る。残る顧客との取引でも、相場の下げで単価が伸びない。
化学品はかろうじて黒字だが、本社の費用を賄えず、営業利益は赤字になる。受取配当と利息で純利益はわずかに黒字を保つ。
持ち合いの理由が消えた花王株は売られるが、その現金の使い道は会社が決める。会社は清算されず、少数株主には半分ほどしか戻らないとみる。床は、現金と投資有価証券の税後の半分だ。小さな商社は、稼ぎ頭の仕入れ先を失うと立て直しが難しい。残った顧客を守りながら、事業を縮めていくことになる。
- 化学品(オレオケミカル・界面活性剤):数量 50.0(取扱数量(千トン、推定))× 価格 36(1トンあたりの販売単価(万円、推定))→ 売上 180 億円・営業利益 2 億円。主要な取扱を失う
- 日用品(家庭用洗剤のOEM):数量 150(販売本数(万本、推定))× 価格 360(1本あたりの売上(円、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。とんとん
- 土木建設資材:数量 6.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 18(1トンあたりの単価(万円、推定))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。縮む
倍率:稼ぐ力はほぼ消える。価値は床の資産で測り、今の自己資本94億円に0.287倍をかけた27億円とする。
確率:仕入れの4割を1社に頼る形は、関係が変われば一気に崩れる。長い取引と持ち合いがあり、すぐには起きにくいので1割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
化学品(オレオケミカル・界面活性剤)
花王などから仕入れた脂肪酸・脂肪アルコール・グリセリン・界面活性剤を各業界のメーカーに売る。
| 数量取扱数量(千トン、推定) | 価格1トンあたりの販売単価(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 83.0 | 30 | 249 | 6 |
| 10 年後 中立 | 87.0 | 40 | 350 | 9 |
取り方:2026年3月期の化学品の売上248.99億円、利益6.30億円(有報)。数量の開示はなく、油脂化学品の単価を1トン30万円前後と置いて割り戻した推定。
日用品(家庭用洗剤のOEM)
家庭用洗剤などを他社ブランドで企画・販売する。
| 数量販売本数(万本、推定) | 価格1本あたりの売上(円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 242 | 300 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 230 | 402 | 9 | 1 |
取り方:2026年3月期の日用品の売上7.27億円、利益0.50億円(有報)。本数は開示がなく、1本0.03万円前後で割り戻した推定。
土木建設資材
地盤改良の薬剤、コンクリート補修材、汚染土壌の改良剤。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格1トンあたりの単価(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.6 | 15 | 13 | 0 |
| 10 年後 中立 | 8.5 | 20 | 17 | 0 |
取り方:2026年3月期の土木建設資材の売上12.96億円、損失0.05億円(有報)。出荷量は開示がなく、1トン15万円で割り戻した推定。
リスクと懸念
花王への依存
仕入れの約4割が花王で、その国内の主な代理店であることが稼ぎの土台だ。花王が販売網を見直し、直接取引や代理店の絞り込みを進めれば、取扱量と利益は大きく減る。
メーカーの直接取引
大手の化学メーカーは物流と販売の効率化を進めており、商社を通す量を減らしたい。用途の提案や小口の配送で役割を示せなければ、口銭はさらに薄くなる。
花王株の値動きと資本効率
花王株は総資産の4分の1を占め、株価の上下で自己資本が大きく動く。配当利回りは低く、持ち続ける限りROEを押し下げる。会社の目標のROE8%に届くには、この株の扱いが避けて通れない。
相場と為替
オレオケミカルはパーム油などの相場で値段が決まり、円安で輸入の値段も上がる。値上がりを顧客に転嫁するのが遅れれば、薄い口銭がさらに削られる。
小さな会社の人手
従業員は80人と少なく、営業と物流の担い手の確保が成長の制約になる。基幹システムの更新と人材の採用に投資を続ける必要があり、本社の費用は物価以上に増えうる。
今後の分かれ目
- 花王株の一部を売却し、自社株買いに回す
- 資本の使い方が変わった証拠。戻り方を1.0に見直し、強気の側に確率を寄せる。
- 花王との取引の条件や代理店の体制が変わる
- 稼ぎの土台が揺らぐ。化学品の取扱量の中立を下げ、悲観の確率を上げる。
- ROEが2期続けて7%を超える
- 目標のROE8%に近づいている。中立の利益率と倍率の置き方を見直す。
- 海外子会社の売上が2割以上伸びる
- 海外の伸びが量を押し上げている。取扱量の中立を引き上げる。
- 株主優待を縮めるか廃止する
- 還元の方針が配当と自社株買いに寄る。優待の分を還元から外し、配当の伸びを見直す。
見ておくもの
- 花王からの仕入れの比率と代理店の体制
- 化学品の売上総利益と営業利益率
- 花王株の保有額と売却の有無
- ROEと配当性向・自社株買い
- 海外子会社の売上
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEが資本コスト8.25%を下回るため、式の上限1÷k=11.8倍を基準に、中立は8割の9.4倍とした。今のPER・PBRは見ていない。花王株は配当が利益に入るので余った資産に足さず(二重を避けた)、床の計算だけに入れた。優待は会社の負担の推定年0.35億円を還元に足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→12.12 倍・やや楽観 PER 10→12.12 倍・中立 PER 9.4→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。