結論
萬世電機は、三菱電機の特約店として、工場の自動化機器、半導体、空調設備を売る大阪の専門商社だ。筆者の結論は、10年の見通しで見た価値は今の時価総額とほぼ釣り合う、というものだ。割安とも割高とも言い切れない。
2026年3月期は売上270億円、営業利益16億円で、利益率5.8%は過去最高だった。工場の自動化とインフラの更新が追い風だ。ただ、この水準は景気の山に近い。過去の利益率は長く3%台にとどまっていた。
財務は厚い。純現金は54億円で、時価総額の半分近くを占める。2025年3月期には約26億円の自己株式を取得し、現金を株主に戻す姿勢も見せた。
10年の中立の姿は、売上360億円、営業利益17億円。利益率は4%台後半に戻る。三菱電機の販売方針に左右される構造があるため、倍率は高く置けない。
試算では、10年後の価値は時価総額の約9割に収まる。割安でも割高でもなく、判断の根拠は余剰現金30億円の扱いと、悲観の筋書きの重さにある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は、堅実だが、安く買える理由のない普通の商社だ。
時価総額は純現金の2倍強で、事業は60億円台で買える計算になる。純利益に対して10倍ほどだ。魅力に見えるが、利益率が過去最高に近い点に注意したい。山の利益に高い倍率を掛けてはならない。
事業の基盤は、三菱電機の代理店という立場だ。メーカーが販売方針を変えれば、堀は消える。代理店事業の譲受は規模を広げるが、同じ弱点を抱えたまま大きくなる。
救いは、財務と、現金を株主に戻した実績だ。余った現金は満額に近く評価できる。
事業の稼ぐ力は資本コストをわずかに上回る程度で、10年の中立の姿でも、今の時価総額とほぼ釣り合う。大きな安全域があるとは言えない。
経営者が株主の資本をどう使うかは、配当と買収の両面で見る必要がある。現時点では配当の継続を重く見て、買収は小口にとどまる前提で置いた。
何で稼ぐ会社か
萬世電機は、三菱電機の販売代理店として1946年に生まれた専門商社だ。売上の4割強を電気機器・産業用システムが占める。モーター、遮断器、インバータ、サーボなど、工場やビルを動かす機器を売り、受変電設備や生産ラインの制御システムも組み上げる。
3割強が電子デバイス・情報通信機器だ。半導体、パワー素子、液晶、パソコン、サーバーを扱い、電子機器の受託生産も手がける。利益率は5%台で、最も低い。
2割強が設備機器だ。空調、冷凍機、非常用発電機、エレベーターなどを売るだけでなく、電気・空調の工事や保守も請け負う。食品工場や物流倉庫の需要で前の期は3割近く伸び、利益率は7%を超える。
太陽光発電は売上の0.4%だが、利益率は47%と高い。
2026年3月には、三菱電機グループの販売会社から、和歌山のFA機器代理店事業を譲り受けると発表した。取得は同年9月末の予定だ。三菱電機とは販売代理店契約を結び、同社は持株15%の関係会社でもある。連結従業員は約190人だ。
収益は商社の粗利にあたる販売差益で決まり、設備機器と電気機器の営業利益率が全体の水準を左右する。太陽光は売上1億円と小さい。
優良さと弱いところ
一言でいえば、メーカーの看板を借りた堅実な商社だ。自社に独自の製品はない。
強みは、三菱電機の機器を売る権利と、据え付けや保守まで担う技術力だ。メーカーの代理店として長年の取引先を持ち、顧客の工場の仕様を知っている。この関係が堀、つまり他社がまねしにくい強みの中身になる。ただし堀は薄い。商権はメーカーが握る。メーカーが直販に切り替えれば、利益の源泉は失われる。
過去の利益率は3%前後が長く、5%台に乗ったのは直近3年だ。景気の山にいる可能性が高い。ROEの中央値は5%に届かない。
財務は堅い。自己資本比率は54%、純現金は54億円。赤字の年は2010年3月期の1回だけだ。
経営は、代理店事業の取得で動き始めた。取得価額は開示されていない。のれんは12億円で、利益が期待を下回れば減損になる。社長の持株は3.5%で、三菱電機が15%を持つ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
数量は国内の設備投資と更新で決まる。工場の自動化、省エネ、データセンターや電力インフラの整備が柱だ。人手不足が続く限り、FA機器の需要は底堅い。筆者は、10年の数量を1割増とみる。
価格は、系列メーカーの機器の値段に物価を乗せたものだ。商社の取り分は、メーカーが決める。物価が3%上がる世界でも、商社マージンは横ばいにとどまる。
電子デバイスは別の動きをする。半導体の景気に左右され、パソコンやサーバーは企業向け大口案件の波がある。単価は下がりやすい。
設備機器は、食品工場や物流倉庫の更新需要が続く。人手不足で工事の人件費が上がり、収益の足かせになる。
業界は再編の流れにある。同じ三菱電機系のRYODENも、北海道で代理店事業を譲り受けた。萬世電機も、和歌山の事業を取得して同じ道を歩む。規模が大きくなる一方、メーカーの販売方針の影響は強まる。
同業の間でも、地方の代理店を買い取って規模を広げる動きが続いている。ただし売り手は後継者難の小さな会社が中心で、買収で得られる利益は限られる。成長は買収頼みになりやすく、既存の顧客基盤の維持が前提になる。
資本政策と M&A
資本政策は、還元と成長投資の両方に動き始めた。2025年3月期には約26億円の自己株式を取得し、自己資本は1割ほど減った。配当は純利益の3割ほどで、年3億円強を払っている。
現金は82億円あるが、仕入先への支払いを含む運転資金も大きい。純現金は54億円とみる。
成長投資は、2026年3月に発表した和歌山のFA機器代理店事業の譲受だ。三菱電機の系列から、取引先と人員を引き継ぐ形になる。三菱電機は持株15%の関係会社で、販売代理店契約を結ぶ。系列再編の中で、買い手にも売り手にも回りうる位置だ。
株主構成は流動的だ。日光産業が持株を9%まで増やした。買収や非公開化の動きがあっても不思議ではないが、今のところ具体的な材料はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
工場の自動化は、人手不足で10年続く。三菱電機はFAを重点事業として資源を集めており、代理店は恩恵を受ける。萬世電機は、受変電や生産ライン制御など、技術提案の力が必要な分野に強い。和歌山の事業を取得すれば、営業の網は西日本で厚くなる。
設備機器も食品工場と物流倉庫の需要が強く、前の期は3割近く伸びた。2027年3月期の第1四半期は、売上が26%伸びた。
財務は厚く、純現金は時価総額の半分近い。自社株買いの実績もあり、現金は株主に戻る。事業の稼ぐ力はROEで14%に届き、その事業を時価総額の半分で買えるのは割安だ。
上の姿は、売上440億円、営業利益27億円。利益率は6%を超える。
強気の側は、受注残と更新需要が続けば、設備機器と電気機器の利益率が上の筋書きの水準まで改善すると見る。余剰現金が満額で評価される点も追い風になる。
加えて、三菱電機との取引は長年の関係で、すぐには崩れにくい。代理店として顧客に提案から保守まで届ける機能は、メーカー単独では代わりにくい。
慎重な見方
利益率5.8%は、過去最高だ。2022年までは3%台が長く続いた。山の水準を前提にすれば、先の利益を見誤る。電子デバイスは半導体とパソコンの波を受け、前の期は売上が減った。
三菱電機は、事業の選択と集中を進めている。FA機器の販売で、直販や別の代理店網を強める動きがあれば、商権が揺らぐ。代理店の取り分は、メーカーが決める。
和歌山の取得は、のれんを積み増す。すでに12億円ののれんがあり、利益が期待を下回れば減損になる。人手不足で工事の人件費も上がる。
時価総額が純現金の2倍強にとどまるのは、安いのではなく、事業の価値が低いからだ。事業は、資本コストをわずかに上回る程度の稼ぐ力しかない。
弱気の側は、メーカー依存の高さと、景気後退時に営業利益率が3%台まで落ちる点を重く見る。資産の下値は純資産の約4割という低い評価になる。
加えて、メーカーが直販を増やせば代理店の取り分は縮む。買収で規模を広げても、利益率の低い事業が増えれば全体の収益性は上がらない。
どちらに重みを置いたか
強気の根拠は、自動化需要と厚い現金だ。慎重な見方の根拠は、過去最高に近い利益率と、メーカーに握られた商権だ。後者のほうが重い。中立は38%に置き、強気側は27%、弱気側は35%とした。事業の稼ぐ力が資本コストをわずかに超える程度で、倍率を上限近くまで置いても、今の値段と釣り合う水準にとどまる。
結論として、両方の主張に根拠があり、中立の筋書きは今の株価とほぼ釣り合う。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 12,009 円195 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,673 円43 億円)。 今の値に割り戻すと 7,382 円120 億円、今との差 +5.5%、 期待の年率 +7.7%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 23,151 円376 億円 | 3,695 円60 億円 | +283.5% | +14.4% | 1,879 円31 億円 |
| やや楽観 | 20% | 17,251 円280 億円 | 3,387 円55 億円 | +194.8% | +11.4% | 4,128 円67 億円 |
| 中立 | 38% | 14,227 円231 億円 | 3,079 円50 億円 | +147.2% | +9.5% | 6,576 円107 億円 |
| やや悲観 | 25% | 4,933 円80 億円 | 1,971 円32 億円 | −1.4% | −0.1% | 1,726 円28 億円 |
| 悲観 | 10% | 2,987 円49 億円 | 739 円12 億円 | −46.8% | −6.1% | 373 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 12,009 円195 億円 | 2,673 円43 億円 | +109.7% | +7.7% | 14,682 円238 億円 |
今の株価時価総額 7,000 円114 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 自動化と電力インフラの需要を取り込み、代理店網も広がる 利益 20 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 23,151 円376 億円
工場の自動化とデータセンター・電力インフラの投資が長く続き、電気機器・産業用システムの数量が3割強増える。和歌山の事業の取得が当たり、西日本の顧客が厚くなる。
設備機器は食品・物流の更新需要で伸び、利益率は7%台を保つ。電子デバイスは半導体の回復に乗る。
売上は440億円、営業利益は27億円(6.1%)、純利益は20億円。自社株買いと配当で現金を戻し続ける。三菱電機が代理店網を維持する前提で、事業のROEは14%に届く。
好況が長引き、各事業が利益率の上限に近づく筋書きだ。余剰現金も積み上がり、価値を押し上げる。確率は低く置いた。
- 電気機器・産業用システム:数量 135(FA・電気機器の取扱数量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 1.61(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 217 億円・営業利益 15 億円。電気機器 営業利益率6.8%
- 電子デバイス・情報通信機器:数量 115(電子デバイス・情報通信機器の取扱数量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 1.01(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 116 億円・営業利益 6 億円。電子デバ 営業利益率5.0%
- 設備機器:数量 125(設備機器・工事の取扱数量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.86(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 108 億円・営業利益 8 億円。設備機器 営業利益率7.5%
- 太陽光発電:数量 90.0(売電量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.01(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。太陽光発 営業利益率40.0%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)95 億円。全体の PER 15.08 倍、時価総額 376 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自動化の需要、代理店事業の取得の成功、現金の還元がそろう筋書き。利益率が過去最高圏にある点を踏まえ、7%にとどめた。
やや楽観 20% 電気機器が2割伸び、利益率は直近の水準をほぼ保つ 利益 15 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 17,251 円280 億円
電気機器・産業用システムの数量が2割増え、設備機器も堅調に伸びる。電子デバイスは波の中で小さく伸びる。
利益率は5%台前半で、直近の水準をほぼ保つ。売上は390億円、営業利益は21億円、純利益は15億円。
三菱電機の販売方針は変わらず、商社マージンは横ばい。配当は純利益の3割台、自社株買いも時折行う。事業のROEは11%で、資本コストを上回る。
需要は堅調で、利益率はやや改善する。株主還元も増えるため、倍率はわずかに上がる。中立よりやや良い筋書きだ。
営業利益は20億円前後、純利益は15億円前後になる。余剰現金は積み上がるが、配当と買収に一部が回るため、満額の上の筋書きには届かない。
- 電気機器・産業用システム:数量 120(FA・電気機器の取扱数量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 1.59(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 190 億円・営業利益 11 億円。電気機器 営業利益率5.8%
- 電子デバイス・情報通信機器:数量 105(電子デバイス・情報通信機器の取扱数量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.99(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 104 億円・営業利益 5 億円。電子デバ 営業利益率4.4%
- 設備機器:数量 110(設備機器・工事の取扱数量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.86(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 95 億円・営業利益 6 億円。設備機器 営業利益率6.8%
- 太陽光発電:数量 90.0(売電量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.01(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。太陽光発 営業利益率40.0%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)82 億円。全体の PER 14 倍、時価総額 280 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自動化の需要が続き、直近の利益率がほぼ保たれる筋書き。2027年3月期第1四半期の売上増も踏まえ、20%に置いた。
中立 38% 中立:数量は1割増え、利益率は景気の山から戻る 利益 13 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 14,227 円231 億円
国内の設備投資が底堅く、電気機器・産業用システムの数量は1割増える。設備機器は5%増え、電子デバイスは横ばいにとどまる。価格はメーカーの機器単価に物価を乗せるが、商社の取り分は増えない。
利益率は景気の山から戻り、4.7%となる。売上は360億円、営業利益は17億円、純利益は13億円。
配当は純利益の3割台を保ち、現金は積み上がる。三菱電機の方針は大きく変わらない。事業のROEは9〜10%で、資本コストをわずかに上回る。
景気は平均的に推移し、利益率は過去の水準に戻る。営業利益は17億円前後で、現金は少しずつ積み上がる。最も重い確率を置く筋書きだ。
- 電気機器・産業用システム:数量 110(FA・電気機器の取扱数量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 1.56(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 172 億円・営業利益 9 億円。電気機器 営業利益率5.2%
- 電子デバイス・情報通信機器:数量 100(電子デバイス・情報通信機器の取扱数量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.97(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 97 億円・営業利益 4 億円。電子デバ 営業利益率4.0%
- 設備機器:数量 105(設備機器・工事の取扱数量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.86(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 91 億円・営業利益 6 億円。設備機器 営業利益率6.2%
- 太陽光発電:数量 90.0(売電量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.01(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。太陽光発 営業利益率40.0%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)77 億円。全体の PER 13.23 倍、時価総額 231 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:最も重みを置く筋書き。山に近い利益率が戻る点と、財務の厚さの両方を踏まえ、確率の中心に置いた。
やや悲観 25% 景気が下向き、メーカーの値下げで利益率が下がる 利益 8 億円 · PER 7.6 倍 · 株価時価総額 4,933 円80 億円
景気が下向き、電子デバイスと電気機器の数量が5〜10%減る。商社の取り分はメーカーの値下げで圧迫され、利益率は3%台に下がる。
和歌山の代理店事業の取得は期待ほど利益を生まず、のれんの一部を減損する。売上は310億円、営業利益は10億円、純利益は8億円。
配当は維持するが、自社株買いはなくなる。余った現金は、買収の失敗と運転資金の増加で目減りする。事業のROEは5%台で、資本コストを下回る。
需要が弱まり、利益率が3%台に下がる。余剰現金の一部は事業に取られ、倍率も下がる。比較的起こりやすい下振れだ。
- 電気機器・産業用システム:数量 95.0(FA・電気機器の取扱数量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 1.50(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 143 億円・営業利益 6 億円。電気機器 営業利益率4.0%
- 電子デバイス・情報通信機器:数量 90.0(電子デバイス・情報通信機器の取扱数量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.93(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 84 億円・営業利益 2 億円。電子デバ 営業利益率2.8%
- 設備機器:数量 95.0(設備機器・工事の取扱数量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.84(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 80 億円・営業利益 4 億円。設備機器 営業利益率5.0%
- 太陽光発電:数量 90.0(売電量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.01(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。太陽光発 営業利益率30.0%
倍率:事業のROE 5.4%は k 8%を下回り、伸びても価値は増えない(上限 1÷k = 11.4 倍)。商権の揺らぎで利益率が下がる筋書きで、利益の質が低いので、上限の 6.7 割の 7.6 倍に置いた。余った現金は谷で食われるとして 0.75 倍にした。
確率:景気の下向きと商社の取り分の圧迫で、利益率が過去の水準へ戻る筋書き。過去の3%台が長かったので、25%に置いた。
悲観 10% 三菱電機が直販に切り替え、商権の一部を失う 利益 3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 2,987 円49 億円
三菱電機がFA機器の販売を直販や別の代理店網へ切り替え、商権の一部を失う。電気機器の数量が3割減り、電子デバイスは4割減る。
営業利益率は1%台に落ち、売上は210億円、営業利益は3億円にとどまる。のれんと在庫の減損が出る。
純現金が事業を支える最後の砦になる。残る価値は、純現金と太陽光の設備が中心だ。配当は大きく減り、自社株買いもなくなる。
深い不況で売上が大きく減り、利益率は1%台まで落ちる。資産価値を基準に評価し、下値を純資産の4割弱に置く。起こる確率は低いが備えておく。
純資産も配当と損失で120億円まで減る。営業利益は3億円前後にとどまり、収益で価値を測ることができない。そのため資産の水準で値段を決める。
- 電気機器・産業用システム:数量 70.0(FA・電気機器の取扱数量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 1.44(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 101 億円・営業利益 3 億円。電気機器 営業利益率2.5%
- 電子デバイス・情報通信機器:数量 60.0(電子デバイス・情報通信機器の取扱数量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.84(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 51 億円・営業利益 1 億円。電子デバ 営業利益率1.5%
- 設備機器:数量 70.0(設備機器・工事の取扱数量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.77(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 54 億円・営業利益 2 億円。設備機器 営業利益率3.0%
- 太陽光発電:数量 90.0(売電量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.01(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。太陽光発 営業利益率30.0%
倍率:商権を失う筋書きで、稼ぐ力でなく売れる資産で測る。純現金の戻り分と太陽光設備から整理費用を引いた約 48 億円を床とし、今の自己資本 131 億円の 0.37 倍(約 48 億円)に置いた。EV÷営業利益は営業利益が消えるので意味を失う。
確率:メーカーの販売方針の転換で商権を失う、代理店モデルの構造的な負けの筋書き。厚い現金があるので、10%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電気機器・産業用システム
モーター・遮断器・インバータ・サーボなどの機器と、受変電・生産ライン制御システム。
| 数量FA・電気機器の取扱数量の指数(2026/03期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.20 | 120 | 7 |
| 10 年後 中立 | 110 | 1.56 | 172 | 9 |
取り方:電気機器・産業用システムの売上は約120億円、利益は7.5億円(開示)。数量は工場の自動化とインフラ更新で中立は1.10倍と推定。価格は系列メーカーの機器単価に物価を乗せるが、商社の取り分は横ばいのため1.30倍。
電子デバイス・情報通信機器
半導体・パワー素子・液晶・パソコン・サーバー・ネットワーク機器・受託生産。
| 数量電子デバイス・情報通信機器の取扱数量の指数(2026/03期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.84 | 84 | 4 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.97 | 97 | 4 |
取り方:電子デバイス・情報通信機器の売上は約84億円、利益は4.4億円(開示)。数量は半導体の波があり横ばいの1.0倍。価格は電子部品とパソコンの値下がりで物価に届かず1.15倍。
設備機器
空調・冷凍機・非常用発電機・エレベーターと、電気・空調の工事・保守。
| 数量設備機器・工事の取扱数量の指数(2026/03期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.65 | 65 | 5 |
| 10 年後 中立 | 105 | 0.86 | 91 | 6 |
取り方:設備機器の売上は約64億円、利益は4.9億円(開示)。食品工場・物流倉庫の更新需要で中立は1.05倍。価格は工事の人件費の転嫁で物価並みの1.34倍。
太陽光発電
連結子会社の日本原ソーラーエナジーによる太陽光発電の売電。
| 数量売電量の指数(2026/03期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.01 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 90.0 | 0.01 | 1 | 0 |
取り方:太陽光の売上は約1億円、利益は0.5億円(開示)。売電価格は固定で、設備の劣化で数量は0.9倍、価格は1.0倍。
リスクと懸念
三菱電機の販売方針
商権はメーカーが握る。直販への切り替えや別の代理店網の強化が起きれば、利益の源泉を失う。持株15%の関係会社でも、販売方針は変えられる。
利益率が景気の山にある
営業利益率5.8%は過去最高で、2022年3月期までは3%台が長かった。山の水準が続くと考えると、先の利益を見誤る。
代理店事業の取得とのれん
和歌山の取得は価額が非公表で、すでにのれんが12億円ある。取り込んだ事業が期待を下回れば、減損が出る。
電子デバイスの波
半導体とパソコンは投資サイクルと大口案件の波を受け、前の期は売上が減った。単価は下がりやすく、利益率も低い。
工事人件費の上昇
設備機器は工事を伴い、人手不足で人件費が上がる。価格に転嫁できなければ、利益率が下がる。
株主構成の流動性
株数が少なく、日光産業が持株を増やすなど、株主構成が動いている。買収や非公開化の可能性も、持株の売却も、需給に影響する。
今後の分かれ目
- 営業利益率が5%台を3期続けて保ったら
- 中立の利益率を上げ、強気側へ確率を移す。
- 三菱電機が代理店網の再編や直販の強化を打ち出したら
- 商権喪失の筋書きを厚くし、悲観側へ確率を移す。
- 自社株買いや増配など、現金の還元を厚くしたら
- 強気側の還元を上げる。
- 和歌山の事業取得でのれんの減損が出たら
- 代理店事業の取得の成果を下げ、やや悲観側へ確率を移す。
- 電子デバイスの売上が2期続けて2割以上減ったら
- 電子デバイスの数量を下げる。
見ておくもの
- 営業利益率と、電気機器・産業用システムの受注
- 三菱電機の販売方針と持株比率
- 和歌山の代理店事業の取り込みの成果とのれん
- 純現金の推移と、自社株買い・配当
- 日光産業ほか株主の持株の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は式の上限(事業のROEが k を上回る筋書きは RONIC 方式、下回る筋書きは 1÷k = 11.4 倍)の 6.7〜9.7 割に置いた。ROE が k をわずかに上回る中立は、下限の 1÷k を割らない水準にした。市場の PER・PBR は使っていない。時価総額が純現金の2倍強でも、利益率が過去最高に近いので、山の利益に高い倍率を掛けていない。余った現金は戻りの実績から満額で足し、中立以上の筋書きは利益の残りが積み上がるとして筋書きごとに置いた。新リース会計基準で BS の形が変わるが、数字は今と同じ形(家賃を営業費用に含める形)でそろえた。計算を今の株価に寄せる調整はしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.4→15.08 倍・やや楽観 PER 11.9→14 倍・中立 PER 11.5→13.23 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.25% を足した 8.75%。三菱電機との関係の危うさは k に足さず、悲観の筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.00%。