結論
富士ユナイトホールディングスは、旧富士興産を母体に、石油製品の卸売、産業廃棄物の再資源化、家庭向けLPG、バイオ燃料、建設機械レンタルを営む企業グループである。筆者の結論は「やや割安」だ。石油卸には強い値決め力がないが、資源循環事業の成長余地と株主還元を慎重に評価しても、現在の時価総額約89億円に対し、本質価値は約101億円と考える。
ただし、単純に純資産が時価総額を上回るから割安なのではない。2026年3月期の売上高は約751億円だが、営業利益は約12億円にとどまった。売上の約9割を石油事業が占め、燃料価格の変動で売上高が大きく動く割に、卸売会社として手元に残る利益は薄い。国内の石油需要は長期的に減り、現在の収益構造を変えなければ、物価上昇で売上が増えても株主価値の持続的な成長は難しい。
経営陣はこの問題を理解し、リサイクルと環境対応エネルギーを次の利益の柱に育てようとしている。2025年10月の持株会社化、加島の子会社化、姫路のバイオ燃料製造所の稼働は、そのための具体的な行動だ。2026~2028年度の中期計画では、M&Aに75億円を投じる方針を示した。これは現在の時価総額に近い規模であり、成功すれば収益構造が変わるが、買収価格と投資回収を誤れば大きく価値を毀損する。
2027年3月期第1四半期には営業利益が約10.5億円に達したが、大型の油漏洩事故対応案件や石油製品の需給逼迫が寄与した。会社が通期予想を営業利益10億円に据え置いたことも踏まえ、この四半期の利益を10年間続く収益力とは考えない。重視するのは、事故対応などの特殊案件を除いた利益が増えるか、バイオ燃料の赤字が解消するか、買収によって投下資本に見合う利益が得られるかである。
10年後の中立では、営業利益約17億円、純利益約10.5億円を見込む。成熟した石油卸の数量減をグリーン領域が補い、配当性向60%以上の方針も維持される姿だ。大きな安全域があるわけではなく、買収に失敗する可能性も相応に高く評価したうえで、やや割安という判断に至った。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安定した石油卸を買う話」ではなく、「縮む卸売事業の現金を使い、資源循環企業へ変わる試み」を買う話である。石油の販売先と配送網は長年にわたって維持されるだろう。しかし、同社が燃料の価格を自由に決められるわけではない。石油卸だけを見れば、資本コストを大きく超える利益を長期間生み続ける事業ではない。
評価したいのは、リサイクルの仕組みだ。廃油を回収し、許認可を持つ設備で再生し、既存の燃料顧客へ販売する流れが完成すれば、同じ顧客網から複数の利益を得られる。単に廃棄物処理会社を高く買うのではなく、この流れを強化する買収なら意味がある。しかし、許認可や設備があることと、価格を上げても顧客が離れないことは同じではない。処理単価の改善と顧客の継続率を確認するまでは、強い堀を持つ企業とは見なせない。
オーナー利益を測る際には減価償却も重要だ。2026年3月期の減価償却費は約10.3億円、固定資産等への投資額は約12.6億円だった。既存資産の償却は昔の取得価格に基づくため、物価が上がっても同じ割合では増えない。一方、新しいレンタル機械や処理設備を買う費用は上がる。会計利益が増えても、更新投資を差し引いた株主の自由になる現金は同じようには増えない可能性がある。
もう一つの焦点は、経営が規模拡大と価値創造を区別できるかだ。75億円のM&Aを実行すれば売上高は増えるだろうが、税後の投資利回りが資本コストより低ければ株主価値は減る。買収後の利益、追加投資、のれん償却、負債の増減を一体で見なければならない。
現状の価格には、利益の大きな成長を前提としない一定の安全域がある。配当を受け取りながら事業転換の成果を確かめることができる点は魅力だ。ただし、長期間安心して放置できるほど確かな堀はまだない。安いという理由だけで優良企業と判断せず、買収後の資本効率が改善しているかを追い続けたい会社である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの土台は石油事業である。ENEOSなどの元売りから燃料油を仕入れ、工場、建設現場、物流会社、農業、医療機関などに供給する。主力商品は灯油、軽油、A重油、アスファルト、潤滑油、ディーゼル車向け尿素水のAdBlueである。2026年3月期の石油事業売上高は約679億円、セグメント営業利益は約6.8億円だった。燃料油の販売が大部分を占めるため、売上の規模と利益の大きさは一致しない。
グリーン領域には三つの事業がある。リサイクル事業では、環境開発工業や加島などを通じて廃油・廃液・産業廃棄物を回収し、再生重油や再生資源として販売する。排出事業者から処理料金を受け取り、回収した資源を売ることもできる。処理施設、許認可、回収車両、顧客との継続取引が必要なため、単なる商品の転売よりも地域に根づいた商売である。2026年3月期は売上約16.1億円、営業利益約2.7億円で、石油事業より利益率が高かった。
ホームエネルギー事業では、富士ホームエナジーが北海道の札幌・苫小牧を中心に、家庭や集合住宅へLPGと灯油を販売する。住宅設備機器の販売や関連サービスも収益源だ。顧客宅の供給設備、安全点検、配送体制を維持する必要があり、日々の契約は比較的粘着的である。ただし、人口減少、住宅の電化、暖冬によって販売数量は減る方向にある。2026年3月期は売上約26.3億円、営業利益約2.7億円だった。
再生可能エネルギー事業は、バイオディーゼル燃料、再生重油、太陽光発電からなる。姫路製造所は2025年11月に稼働し、既存拠点と合わせたバイオ燃料の製造・混合能力は年間約2万キロリットル規模になった。建設現場などで使うB5、B30、B100燃料の普及を狙っている。しかし、現時点では設備負担が重く、2026年3月期の同事業は売上約5.6億円に対し営業損失約1.8億円だった。需要の成長と採算の改善は別の問題である。
インフラ領域では、富士レンタルが北海道を中心に建設機械や仮設資材を貸し出している。公表されている会社紹介では約5,000台の機材と7店舗を持つ。2026年3月期は売上約23.5億円、営業利益約3.3億円だった。レンタル料は継続的に入るが、機械の購入、修繕、更新に資金を要する。グループ全体では五つの事業の利益から本社費用などが控除される構造である。
優良さと弱いところ
この会社の競争上の強みは、全国的な独占力ではなく、地域ごとの顧客接点と物流・処理設備の組み合わせにある。石油事業では長い取引関係と配送網があるものの、燃料は基本的に代替可能な商品だ。顧客は価格に敏感で、元売りの供給条件や競合卸の見積もりに左右される。売上高営業利益率が長期間おおむね1%前後だった事実は、強い価格支配力がないことを示している。
一方、リサイクルには比較的守りやすい部分がある。廃油処理には許認可と設備が必要であり、排出企業は適法な処理と追跡可能性を重視する。回収から処理、再資源化、燃料としての再販売までを一体で手掛けられれば、地域内の競争力を高められる。既存の石油販売先へ再生重油を販売できることも強みだ。ただし、競合の大栄環境やTREホールディングスに比べて事業規模は小さい。処理施設や地域顧客の蓄積が堀を作る可能性はあるが、他社を排除できるほどの堀ではない。
収益力を評価する際は、売上の増加より資本効率を見るべきだ。旧富士興産から引き継いだ過去10年のROE中央値は約6.6%であり、想定資本コスト8%を下回る。純現金があり財務破綻の危険は相対的に低いが、利益を内部に残しただけでは価値は増えない。2026年3月期の営業キャッシュフロー約20.3億円に対し、投資キャッシュフローは約21.2億円の流出だった。成長投資が膨らむと、会計上の利益があっても現金が残らない。
今後の優良さを決めるのは、グリーン領域へ投じる資本の増分利回りである。買収や新設備が資本コストを上回る税後利益を継続して生めば、石油依存を脱して堀が広がる。反対に、低採算の買収を重ねれば、のれんと借入金ばかりが増える。AIエージェント代替の指定業務型には該当しない。事務の自動化は進むが、燃料配送、廃棄物処理、現物の建機貸与そのものをAIが置き換えるわけではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の石油製品市場は、数量が縮む成熟市場である。JOGMECによれば2025年度の国内石油製品消費は約1億3,685万キロリットルだった。経済産業省が2025年に示した需要見通しでは、燃料油需要は2024年度から2029年度に約1割減少する。EVの普及、燃費改善、工場の燃料転換、暖房用灯油の減少が背景にある。2036年にも産業用軽油や重油の需要は残るが、同社が大幅に販売量を増やせる市場ではない。
同社の石油事業について、製品構成を含む販売数量は継続的に開示されていない。売上高と卸売価格から年間約60万キロリットル相当と推計すると、全国燃料油需要に対する規模は約0.4%となる。競合は伊藤忠エネクス、カメイ、シナネンホールディングスなどのエネルギー商社に加え、地域の燃料販売会社である。供給側にはENEOS、出光興産、コスモエネルギーホールディングスなどの元売りが存在する。石油卸の10年後の数量は業界全体で2割程度減る可能性が高く、会社が市場シェアを維持しても販売量は減る。
LPG市場も縮小傾向にある。日本LPガス協会による2024年度の国内需要は約1,191万トンだった。家庭業務用需要は人口減少や電化の影響を受けるが、既存住宅への配送と保安業務は残る。富士ホームエナジーの契約数は非開示であり、売上から推計した約2万件を国内約2,000万件規模の家庭需要と比較すると、全国シェアは約0.1%にすぎない。競争力は北海道の個別地域で評価すべきだ。
資源循環市場は石油とは違う。環境省による2023年度の国内産業廃棄物排出量は約3億6,725万トンで、量は大きく伸びていない。ただし、適正処理、再資源化、汚染土壌対策への支出がある。産業廃棄物処理市場は数兆円規模と推定されるが、同社が扱う廃油・廃液・スクラップはその一部分だ。リサイクル事業売上約16億円は大手処理企業と比べても小さく、全国的なシェアは限定的である。むしろ地域の小規模事業者を買収し、回収量と処理単価を高められる余地がある。
バイオ燃料市場には政策支援と供給制約が併存する。国内のFAME製造量は2024年に約1.17万キロリットルだったが、同社が公表する年間約2万キロリットルの能力は混合後のB5・B30なども含むため、両者を比較してシェアを計算することはできない。廃食油の確保、FAMEとHVOの競争、燃料規格、炭素削減制度が市場を左右する。建機レンタルでは国内市場がおおむね1兆円規模であり、アクティオ、カナモト、西尾レントオールなどの大手と競合する。同社の全国シェアは小さいが、北海道の公共工事・除雪・インフラ補修への対応力が重要になる。
資本政策と M&A
経営陣の資本配分は、守りの石油事業から得る資金を成長分野へ移す方針が明確になった。2025年10月に富士興産を完全子会社とする単独株式移転を実施し、富士ユナイトホールディングスがテクニカル上場した。旧富士興産の上場廃止は持株会社化に伴うものであり、現在の416Aが上場廃止予定という意味ではない。同月には京滋地区で燃料・リサイクル事業を営む加島をグループに迎えた。
2026~2028年度の中期経営計画は具体的である。2028年度の領域別営業利益18億円、共通費用など控除後の連結営業利益13億円、ROE8%以上を目標としている。2030年度には領域別営業利益を20億円規模に伸ばし、その約6割をグリーン領域で稼ぐ構想だ。3年間の資金配分はM&A75億円、戦略投資11億円、事業維持投資25億円、株主還元14億円である。配当性向は60%以上を掲げているが、自社株買いについて定量的な金額の約束は確認できない。
ここには厳しく検証すべき問題がある。計画で示される提携・M&Aの期待営業利益は、のれん負担を除いて3億~5億円である。M&A枠75億円と単純に比べると税前で4~7%程度の利回りにすぎず、税後では資本コストに届かない可能性がある。両数値が完全に一対一で対応するとは限らないが、投資額の大きさに対して利益目標が十分なのかは重要な論点だ。
2026年3月期末の純現金は約24.5億円で、借入余力はある。ただし75億円の買収計画は手元の純現金を上回るため、借入や既存事業のキャッシュフローに依存する。金利3%の国債を前提とする環境では、借入後の収益力が一層重要になる。ENEOSホールディングスは約15%を保有する大株主だが、支配株主ではない。近年の配当実績と配当性向60%以上の方針を踏まえ、余剰現金が株主に戻る割合は100%と評価する。ただし、株主還元の実現性は買収による資金需要にも左右される。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この企業の価値は、過去の石油卸の利益率だけからは測れない。石油販売では確立した顧客網と仕入れ・配送体制があり、今後も社会インフラとして必要とされる。国内燃料需要が減っても、取引先の集約や地域事業者の撤退によってシェアを保つことはできる。産業用の燃料はすぐにすべて電化されるわけではなく、建設現場、物流、農業、医療機関には長い移行期間がある。
成長の中心となるのはリサイクル事業だ。廃油・廃液を回収して再生燃料を作り、既存の石油顧客へ売る仕組みは、回収と販売を別々に行う企業にはない強みになる。環境開発工業に加え、加島のような地域企業を取得して回収網を広げれば、固定設備の稼働率を上げられる。地域の中小処理事業者には事業承継需要があり、資本と物流網を持つ会社には統合の機会がある。
姫路製造所の稼働でバイオ燃料の供給範囲も広がった。建設現場向けのB5やB30が定着し、低炭素燃料を求める企業が増えれば、従来の燃料卸から環境対応燃料の供給会社へ移れる。建機レンタルもインフラ更新や北海道の公共工事に支えられる。これらがうまく組み合わされば、2036年には石油以外の利益が現在より大きく増え、グループ全体の営業利益率が改善する。
純現金があり、配当性向60%以上という明確な還元方針もある。現時点の時価総額は大きくないため、グリーン領域の利益が数億円増えるだけでも株主価値への影響は大きい。成長投資を規律ある価格で実行できれば、配当と事業成長の両方を受け取れる可能性がある。
慎重な見方
石油卸から環境関連企業へ変わるという物語は魅力的だが、今の利益を実際に生むのは成熟した石油流通である。2026年3月期の石油事業営業利益率は約1%しかなく、原油価格や元売りの販売条件が少し変わるだけで利益が動く。国内の石油製品需要は構造的に減る。数量減を価格上昇で補えても、物流費や人件費まで上がれば利益は増えない。
リサイクル事業は一見参入障壁が高いが、許認可があれば高収益になるわけではない。設備の稼働率、処理単価、廃棄物の組成、回収距離が利益を決める。大栄環境やTREホールディングスのような規模の大きい競合も存在する。地域企業を買収して売上が増えても、設備更新や労務費が想定より大きければ、買収価格を回収できない。
最大の懸念は、M&A枠75億円の大きさである。現在の純現金では賄えず、借入や手元資金の使用が増える可能性が高い。会社が公表した買収・提携による期待営業利益は3億~5億円であり、税後利回りを考えると必ずしも高収益ではない。これまでのROE中央値が資本コストを下回る会社が、大型買収によって資本効率を高められる証拠は十分ではない。
バイオ燃料には別の危険がある。2025年に新しい設備が動き始めたが、2026年3月期は赤字だった。国内のFAME市場はまだ小さく、廃食油は航空燃料向けSAFや次世代ディーゼル燃料との取り合いになる。原料が高騰し、B5・B30の販売価格に転嫁できなければ、稼働率が上がっても利益は残らない。
自己資本にはのれんや顧客関連資産などの無形資産が含まれる。買収が失敗した際には簿価の回収可能性が問題になるため、帳簿の純資産をそのまま株主の安全域と考えるのは危険だ。業績が良く見えた四半期の特殊利益を10年続くものとみなすことも避けるべきである。
どちらに重みを置いたか
資産の厚さと還元方針では前向きな見方に分があるが、成長投資の利回りについては慎重な見方が強い。とりわけ75億円のM&A計画は会社の規模に対して大きく、買収額に見合う税後利益が確保できるかは未証明である。
このため確率は楽観側26%に対し、やや悲観・悲観を合わせて41%と下に寄せた。中立の33%では、グリーン領域が一定の成長を遂げるものの、経営目標を全面的には達成しないと考える。それでも現在の時価総額には、配当と既存資産から生じる収益に対して一定の安全域があり、総合評価はやや割安となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,413 円160 億円(+ 還元の換算額還元の合計 772 円51 億円)。 今の値に割り戻すと 1,643 円109 億円、今との差 +25.0%、 期待の年率 +10.9%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,147 円340 億円 | 1,361 円90 億円 | +395.3% | +20.7% | 521 円34 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,844 円254 億円 | 1,043 円69 億円 | +272.0% | +16.6% | 880 円58 億円 |
| 中立 | 33% | 2,387 円158 億円 | 817 円54 億円 | +143.8% | +11.1% | 1,057 円70 億円 |
| やや悲観 | 28% | 1,423 円94 億円 | 650 円43 億円 | +57.8% | +5.7% | 581 円38 億円 |
| 悲観 | 13% | 944 円62 億円 | 181 円12 億円 | −14.4% | −1.7% | 146 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,413 円160 億円 | 772 円51 億円 | +142.4% | +10.9% | 3,185 円211 億円 |
今の株価時価総額 1,314 円87 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 資源循環の買収が成功し、利益構造が変わる 利益 22 億円 · PER 14.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,147 円340 億円
リサイクル事業の買収が成功し、北海道から関東・関西まで廃油・廃液の回収と処理のネットワークが広がる。処理施設の稼働率が上がり、従来より高単価の環境処理案件を継続的に獲得する。回収した再生重油は、既存の石油販売網を通じて工場や建設現場へ販売できるようになり、回収と販売の両方で利益が増える。
姫路を含むバイオ燃料製造所では、B5・B30などの販売が本格化する。廃食油の安定調達契約を確保し、原料価格の上昇も顧客との長期契約へ転嫁できる。新しい設備への投資が続くものの、稼働率の改善によって固定費を回収し、再生可能エネルギー事業が十分な利益を生み始める。
石油製品の国内需要減少は続くが、ENEOSとの供給関係と販売網を生かして市場シェアを高める。建設会社や公共工事向けのレンタル需要も好調で、機材の稼働率と単価が改善する。競合の大手が参入しにくい地域の処理・配送・レンタルの組み合わせが強みになる。
買収した事業の追加投資利回りが資本コストを上回り、財務を悪化させずに増益と配当を両立する。2036年には石油卸への依存が利益面で大きく低下し、現在より広い事業基盤と高い資本効率を持つ企業になる。
- リサイクル事業:数量 60,000(年間処理・再資源化量(トン、推計))× 価格 0.00(1トン当たり処理・再生販売収入(億円、推計))→ 売上 65 億円・営業利益 13 億円。M&Aで回収処理量3倍、処理単価は物価並み上昇。高付加価値案件が定着し営業利益率20%。
- ホームエネルギー事業:数量 21,000(年間顧客契約件数(件、推計))× 価格 0.00(1契約当たり年間売上(億円、推計))→ 売上 38 億円・営業利益 4 億円。地域シェア拡大で契約数が微増、単価上昇が浸透。
- 再生可能エネルギー事業:数量 30,000(バイオ燃料販売量相当(kL、太陽光等を含む売上換算の推計))× 価格 0.00(バイオ燃料換算1kL当たりの売上(億円、推計))→ 売上 33 億円・営業利益 6 億円。製造能力をさらに増強。原料調達と販売契約が安定し、高稼働率を実現。
- 石油事業:数量 520,000(燃料油換算の年間販売数量(kL、推計))× 価格 0.00(燃料油換算1kL当たりの石油事業売上(億円、推計))→ 売上 806 億円・営業利益 10 億円。国内需要減をシェア拡大で一部補填。値上げと物流効率化で卸売利益率を維持。
- レンタル事業:数量 7,500(保有機械・機材台数(台))× 価格 0.01(1台当たり年間レンタル・関連売上(億円))→ 売上 48 億円・営業利益 10 億円。機材を増やし、北海道のインフラ更新・公共工事を取り込む。
倍率:資本コスト8%、余剰現金を除いた事業ROE約14.61%、通常の堀による残存割合1/2からRONIC約11.31%。g_long2.5%として正当化PER=(1−0.025÷0.1131)÷(0.08−0.025)≒14.16倍。上限を手で割り引かない。純利益22億円から余剰現金8億円の税後受取利息0.112億円を控除して倍率を掛け、余剰現金8億円を足す。
確率:買収した処理会社が順調に統合され、設備稼働率、処理単価、バイオ燃料需要、建機レンタル稼働率が同時に上向く必要がある。高収益な成長事業への転換には複数の成功が必要なため8%。
やや楽観 18% 買収と環境燃料が着実に利益を押し上げる 利益 17 億円 · PER 13.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,844 円254 億円
リサイクル事業では、加島に続いて地域の廃油処理・資源再生会社を取得する。統合の過程で人員や設備の重複が生じるが、既存の回収ルートや燃料販売網を利用することで採算を改善する。大栄環境などの大手との競争は続くものの、地域に根づいた処理事業者として一定の地位を確立する。
バイオ燃料は、姫路などの設備稼働率が上昇する。廃食油の調達競争が厳しく、燃料単価を大きく引き上げることはできないが、建設会社向けの継続取引が増えて黒字化する。再生重油と太陽光発電も一定の利益を維持する。
国内石油需要の減少は避けられず、石油事業の数量は縮小する。しかし産業用燃料とAdBlueなどの販売を守り、物流の効率化によって利益額の減少を抑える。ホームエネルギーでは契約減少を設備販売と適正料金で補う。建機レンタルは機材更新と公共工事需要を背景に着実に増益する。
成長投資のすべてが成功するわけではないが、買収した事業の利益が既存事業の縮小を十分に上回る。2036年には営業利益が現在の2倍程度となり、配当性向60%以上を保ちながら、資本コストを上回るROEを実現している。
- リサイクル事業:数量 42,000(年間処理・再資源化量(トン、推計))× 価格 0.00(1トン当たり処理・再生販売収入(億円、推計))→ 売上 45 億円・営業利益 8 億円。既存拠点と買収企業の拡大で処理量2.1倍。
- ホームエネルギー事業:数量 20,000(年間顧客契約件数(件、推計))× 価格 0.00(1契約当たり年間売上(億円、推計))→ 売上 36 億円・営業利益 4 億円。人口減を顧客獲得と設備販売で補い、契約数は横ばい。
- 再生可能エネルギー事業:数量 25,000(バイオ燃料販売量相当(kL、太陽光等を含む売上換算の推計))× 価格 0.00(バイオ燃料換算1kL当たりの売上(億円、推計))→ 売上 27 億円・営業利益 3 億円。販売量が増加し、原料と製造コストを回収できる。
- 石油事業:数量 500,000(燃料油換算の年間販売数量(kL、推計))× 価格 0.00(燃料油換算1kL当たりの石油事業売上(億円、推計))→ 売上 755 億円・営業利益 9 億円。数量は17%減、価格は物価を反映。
- レンタル事業:数量 6,500(保有機械・機材台数(台))× 価格 0.01(1台当たり年間レンタル・関連売上(億円))→ 売上 41 億円・営業利益 8 億円。公共工事を中心に機材数・稼働率が改善。
倍率:余剰現金8億円を除いた事業ROE約12.07%、k8%、通常の堀の残存割合1/2からRONIC約10.03%。長期名目g2.5%の正当化PERは約13.65倍となる。事業利益から余剰現金の税後受取利息を除き、余剰現金8億円を別途加える。市場の同業倍率は使わない。
確率:リサイクルの設備と買収候補が存在し、会社は具体的な投資計画を示している。ただし全案件で高い投下資本利益率を実現するとは限らないため18%。
中立 33% 石油の縮小をリサイクルが補う 利益 11 億円 · PER 12.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,387 円158 億円
石油事業は2036年にも売上の大部分を占めるが、燃料油の販売数量は現在より約2割減少する。地域の顧客基盤を維持し、販売価格は物価に合わせて上がるため、名目売上高は大きく減らない。しかし人件費と物流費も増え、利益率は現在よりやや低い水準にとどまる。
リサイクルでは買収と設備投資が進み、廃油・廃液の回収量が増える。産業廃棄物処理の許認可と顧客の継続取引を生かして処理料金を引き上げるが、大手との競争や取得事業の統合費用も残る。グリーン領域の営業利益は増えるものの、会社が描く2030年度の構成比目標を全面的に実現するほどの急成長にはならない。
バイオ燃料は新設備の稼働率が高まり、小幅ながら黒字になる。原料の廃食油はSAFや他の再生燃料との競争で高値が続き、大きな利益率を得ることは難しい。ホームエネルギーは顧客減少を単価上昇と設備関連売上で補い、レンタルはインフラ更新需要を取り込み緩やかに成長する。
買収資金の調達で負債は一時的に増えるが、既存事業の営業キャッシュフローで返済を進める。高水準の配当方針も維持する。事業全体の成長は穏やかだが、収益源が少しずつ分散され、2036年のROEは資本コストとほぼ同程度になる。
- リサイクル事業:数量 34,000(年間処理・再資源化量(トン、推計))× 価格 0.00(1トン当たり処理・再生販売収入(億円、推計))→ 売上 35 億円・営業利益 6 億円。買収と回収網の整備で処理量1.7倍、平均単価は10年で約1.30倍。
- ホームエネルギー事業:数量 18,500(年間顧客契約件数(件、推計))× 価格 0.00(1契約当たり年間売上(億円、推計))→ 売上 33 億円・営業利益 3 億円。契約件数7.5%減、料金はほぼ物価並み上昇。
- 再生可能エネルギー事業:数量 17,000(バイオ燃料販売量相当(kL、太陽光等を含む売上換算の推計))× 価格 0.00(バイオ燃料換算1kL当たりの売上(億円、推計))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。混合燃料の販売増で黒字化するが、太陽光の固定価格と原料競争で価格上昇はCPIを下回る。
- 石油事業:数量 470,000(燃料油換算の年間販売数量(kL、推計))× 価格 0.00(燃料油換算1kL当たりの石油事業売上(億円、推計))→ 売上 714 億円・営業利益 6 億円。数量約22%減、名目価格約34%増。市況と競争により利益率は約0.85%。
- レンタル事業:数量 5,500(保有機械・機材台数(台))× 価格 0.01(1台当たり年間レンタル・関連売上(億円))→ 売上 34 億円・営業利益 5 億円。保有機材が約10%増え、年間単価は物価並みに上昇。更新投資も増える。
倍率:10年後の全社ROEは約8.09%。余剰現金8億円と対応する税後利息0.112億円を除いた事業ROEは約8.53%となる。k8%、残存割合1/2でRONIC約8.26%、長期名目成長率g2.5%。正当化PER=(1−0.025÷0.08264)÷(0.08−0.025)≒12.68倍。資本コストをわずかに上回る事業利益に大きな超過収益を認めず、式の上限そのものを使用。余剰現金8億円は別途加算する。
確率:国内石油需要の数量減は確実性が高く、リサイクル事業には実際の収益基盤がある。買収計画が一部成功し、一部で投資回収が遅れる姿を中心に考えるため33%。
やや悲観 28% 買収の成果が乏しく、石油の減少が利益を圧迫する 利益 7 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,423 円94 億円
国内石油需要の縮小が想定より速く進み、燃料卸は顧客数と販売数量を失う。元売りと競合販売会社の価格競争が続き、燃料価格の上昇を十分な販売マージンに結びつけられない。物流費や人件費が上がり、名目売上高の減少以上に利益が圧迫される。
リサイクル事業では買収した企業の統合が難航する。廃油回収網は広がるが、処理施設の稼働率は期待ほど上がらず、設備の更新費用と人件費が増える。買収による売上高は維持できても追加利益が少なく、グループ全体のROEは資本コストを下回る。
バイオ燃料は販売先を増やすものの、廃食油の調達価格と製造コストを十分に転嫁できない。SAF向け原料需要の増加やHVOとの競争もあり、再生可能エネルギー事業の赤字が続く。ホームエネルギーでは北海道の人口減少が顧客数を減らす。レンタル事業は機材の更新価格が上がり、設備投資を続けても収益性は伸びない。
経営陣は配当性向60%程度の方針をできる限り守るが、純利益そのものが低下するため還元額は縮小する。会社は存続し、燃料配送やリサイクルの需要も残るものの、事業構造の転換が期待ほど進まない。2036年には低収益の複合商社としての性格が強くなる。
- リサイクル事業:数量 23,000(年間処理・再資源化量(トン、推計))× 価格 0.00(1トン当たり処理・再生販売収入(億円、推計))→ 売上 23 億円・営業利益 4 億円。買収後の数量はわずかしか伸びず、処理単価上昇もCPIを下回る。
- ホームエネルギー事業:数量 17,000(年間顧客契約件数(件、推計))× 価格 0.00(1契約当たり年間売上(億円、推計))→ 売上 29 億円・営業利益 3 億円。契約数15%減。値上げは限定的。
- 再生可能エネルギー事業:数量 10,000(バイオ燃料販売量相当(kL、太陽光等を含む売上換算の推計))× 価格 0.00(バイオ燃料換算1kL当たりの売上(億円、推計))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。販売数量は増えるが、原料調達競争で採算が改善しない。
- 石油事業:数量 400,000(燃料油換算の年間販売数量(kL、推計))× 価格 0.00(燃料油換算1kL当たりの石油事業売上(億円、推計))→ 売上 576 億円・営業利益 6 億円。数量約33%減。残存顧客向けの採算維持に努めるが、利益額は成長しない。
- レンタル事業:数量 4,800(保有機械・機材台数(台))× 価格 0.01(1台当たり年間レンタル・関連売上(億円))→ 売上 29 億円・営業利益 3 億円。機材数は減少し、更新投資負担で利益率が低下。
倍率:ROE約5.4%がk8%を下回り、内部留保による成長には価値を加えない。PER上限は1÷k=12.5倍。将来の競争と追加投資の低収益を考えて10.5倍とする。やや悲観では余剰現金8億円のうち6億円を評価し、その税後利息約0.084億円を純利益から控除する。事業利益の価値と現金を別々に数え、市場の低迷期の倍率は使用しない。
確率:M&A計画の規模が大きく、想定税後利回りが資本コストを下回る恐れがある。新設備も直近は赤字で、需要増加が採算改善につながる保証がないため、やや悲観に28%を配分する。
悲観 13% 買収減損と需要縮小で収益基盤を失う 利益 −2 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 944 円62 億円
国内石油製品の需要減少に加え、燃料流通の再編が進み、大手元売りや大規模卸売会社へ販売が集約される。富士ユナイトは販売数量と顧客を失い、取引量の減少で物流効率も悪化する。利益率の薄い石油事業は固定費を十分に賄えなくなる。
成長の柱として取得したリサイクル会社では、買収価格に見合う利益を得られない。処理単価の低下、許認可対応コスト、設備の修繕・更新費用が重なり、のれんや顧客関連資産を減損する。買収後に増やした借入金の利払いが残り、利益と資本の双方を傷める。
バイオ燃料では原料を調達できても採算が合わず、製造所の一部稼働停止や撤退を迫られる。建機レンタルも大手との競争と北海道の建設需要減少により機材が余剰となる。家庭向けLPGは人口減少と電化によって契約数が減り、維持する配送網の固定費が負担となる。
初期の数年間は配当を続けるが、後半には減配と投資縮小を余儀なくされる。10年間の累積純損益は大幅な買収減損を含めて赤字になり、自己資本は現在より減少する。会社が直ちに倒産するとは考えないが、継続事業の利益だけでは大きな価値を認められない。評価の中心は残る現金、土地、回収可能な債権、売却可能な設備などの実体資産になる。
- リサイクル事業:数量 16,000(年間処理・再資源化量(トン、推計))× 価格 0.00(1トン当たり処理・再生販売収入(億円、推計))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。買収失敗と処理単価低下、固定費負担により利益率が低下。
- ホームエネルギー事業:数量 14,000(年間顧客契約件数(件、推計))× 価格 0.00(1契約当たり年間売上(億円、推計))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。契約数30%減で配送の固定費負担が重くなる。
- 再生可能エネルギー事業:数量 3,000(バイオ燃料販売量相当(kL、太陽光等を含む売上換算の推計))× 価格 0.00(バイオ燃料換算1kL当たりの売上(億円、推計))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。バイオ燃料の稼働縮小と設備負担で赤字継続。
- 石油事業:数量 320,000(燃料油換算の年間販売数量(kL、推計))× 価格 0.00(燃料油換算1kL当たりの石油事業売上(億円、推計))→ 売上 445 億円・営業利益 2 億円。数量約47%減、価格転嫁にも失敗し卸売利益率0.4%。
- レンタル事業:数量 3,800(保有機械・機材台数(台))× 価格 0.01(1台当たり年間レンタル・関連売上(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 2 億円。稼働率低下と高額な更新費用により収益性が悪化。
倍率:買収失敗による減損と累積損失を反映した2036年の自己資本78億円に0.80倍を掛け、62.4億円とする。現在の自己資本97.8億円を超える将来の留保利益に床の倍率を掛けてはいない。想定する売却可能資産の税後価値約52億円を下回らず、同時に悲観側の配当込みの10年後価値が現在の時価総額を超えないよう、残存事業の収益力と実体資産から判断した。市場の過去のPBR水準は根拠に使用しない。
確率:石油需要の想定以上の縮小と買収失敗、バイオ燃料設備の低稼働、建機レンタルの競争激化が同時に起こる厳しい筋書きである。大型投資計画の規模が大きいため、発生確率を13%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
リサイクル事業
産業廃棄物、廃油、廃液などを回収・処理し、再生重油や再生資源として販売する。処理料金と再生素材の売却が収入になる。
| 数量年間処理・再資源化量(トン、推計) | 価格1トン当たり処理・再生販売収入(億円、推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20,000 | 0.00 | 16 | 3 |
| 10 年後 中立 | 34,000 | 0.00 | 35 | 6 |
取り方:2026年3月期決算短信の外部売上16.05億円、セグメント利益2.65億円を使用。数量・処理単価の会社開示は確認できないため、全国の産業廃棄物処理・資源再生事業の料金水準と、廃油回収料・再生重油売却収入を組み合わせ、年間約2万トン、処理と売却を合わせた平均収入約8万円/トンとする推計である。1トンから処理収入と再生販売収入の双方が発生する場合を含み、純粋な処理料金ではない。国内産業廃棄物の全排出量約3億6,725万トンとの比較は市場の大きさを示すだけで、同社が扱う廃油等の市場シェアとは同一視しない。出典:2026年3月期決算短信、環境省2026年3月27日公表の産業廃棄物排出・処理統計。
ホームエネルギー事業
北海道の札幌・苫小牧を中心とした家庭向けLPG、灯油、住宅設備機器の販売・保安サービス。
| 数量年間顧客契約件数(件、推計) | 価格1契約当たり年間売上(億円、推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20,000 | 0.00 | 26 | 3 |
| 10 年後 中立 | 18,500 | 0.00 | 33 | 3 |
取り方:2026年3月期決算短信の売上26.31億円、利益2.71億円を起点とする。会社は契約件数を定量的に開示していないため、富士ホームエナジーの札幌・苫小牧の2拠点、家庭用LPGと灯油の販売形態から約2万契約を仮定し、LPG・灯油・住宅設備等を含む年間売上約13.2万円/契約を導いた。実際の契約数と顧客別売上には不確実性がある。国内需要は日本LPガス協会公表の2024年度約1,191万トンを参照し、数量減少と物価による単価上昇を分けて考える。
再生可能エネルギー事業
廃食油由来のバイオ燃料の製造・販売、再生重油の販売、太陽光発電による売電を営む。
| 数量バイオ燃料販売量相当(kL、太陽光等を含む売上換算の推計) | 価格バイオ燃料換算1kL当たりの売上(億円、推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7,000 | 0.00 | 6 | −2 |
| 10 年後 中立 | 17,000 | 0.00 | 17 | 1 |
取り方:決算短信の外部売上5.61億円、営業損失1.77億円を使用。バイオ燃料単独の販売量、太陽光発電の売上内訳は非開示のため、全体を販売量相当約7,000kLに換算した暫定的な数量モデルであり、純粋なFAME製造量を表すものではない。富士興産は姫路1.2万kL、野田5,000kL、岸和田5,400kL、佐野300kLの製造・混合能力を公表しているが、能力と実販売数量は区別する。国内FAME製造量とB5・B30などの混合後の燃料数量も比較できない。太陽光売電の固定価格部分は、10年後の平均単価がCPIほど上昇しない理由として扱う。出典:https://www.fkoil.co.jp/products/biodiesel-fuel/
石油事業
灯油、軽油、重油、アスファルト、潤滑油、AdBlueなどを元売りから仕入れ、企業・工場・建設現場・物流事業者へ販売する。
| 数量燃料油換算の年間販売数量(kL、推計) | 価格燃料油換算1kL当たりの石油事業売上(億円、推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600,000 | 0.00 | 679 | 7 |
| 10 年後 中立 | 470,000 | 0.00 | 714 | 6 |
取り方:2026年3月期決算短信の石油事業売上679.14億円のうち、燃料油売上は613.72億円、その他は65.42億円である。会社が販売kLを開示していないため、燃料油を約60万kL、燃料油実質平均売上を約102円/Lと推計した。その他の商品売上は同じ数量に按分し、事業全体の換算単価約113円/Lとした。潤滑油・アスファルト・AdBlueをすべて実際に燃料油として60万kL販売したという意味ではない。国全体の石油製品消費約1.37億kLに対し換算数量は約0.4%。数量は実質、価格は物価と商品構成による名目変化とし、原油価格の恣意的な上昇は織り込まない。
レンタル事業
北海道の建設・土木・公共工事現場向けに建設機械、発電機、仮設資材等を貸し出し、販売・修理も行う。
| 数量保有機械・機材台数(台) | 価格1台当たり年間レンタル・関連売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,000 | 0.00 | 23 | 3 |
| 10 年後 中立 | 5,500 | 0.01 | 34 | 5 |
取り方:2026年3月期決算短信のレンタル事業売上23.45億円、利益3.29億円を使用。富士レンタルの会社紹介には約5,000台、取扱機器約260種類とある。売上のうちレンタル等の収益は約18.29億円、販売等の収益は約5.15億円であり、機材1台当たり平均年間売上を約46.9万円とした。年間レンタル契約数ではなく機材台数が数量の指標で、価格には稼働率と販売・修理収益の双方が含まれる。国内市場は国土交通省の建設機械器具レンタル業等の統計を参照し、建設機械器具賃貸だけでも約1兆円規模と見込む。
リスクと懸念
国内石油需要の構造的縮小
国内の燃料油需要はEV化、燃費改善、工場の燃料転換、暖房用灯油の減少などで長期的に縮小する。燃料販売は2026年3月期の石油事業売上の大部分を占めるため、会社が新規顧客を獲得できなければ取扱量が減る。物流設備や人員の固定費が残れば、数量減少率以上に利益が落ちる。
石油価格と卸売マージン
石油製品の売上高は燃料価格に大きく左右されるが、販売価格の上昇がそのまま利益増加を意味するわけではない。2026年3月期には需給逼迫と在庫評価益が利益を押し上げた。価格が下落する局面では逆の影響が生じ得る。元売りの供給条件や競合卸の値下げによってマージンが縮めば、販売数量を維持しても営業利益は大きく悪化する。
75億円のM&Aと増分資本効率
3年間で75億円のM&Aを予定しているが、会社の利益規模と純現金残高を考えると極めて大きい投資だ。買収額が高すぎたり、設備更新・人員確保などの追加費用が膨らんだりすれば、投下資本利益率が資本コストを下回る。買収後ののれん減損や借入金増加は、配当余力にも影響する。売上拡大ではなく買収後の税後利益とキャッシュフローが重要である。
バイオ燃料の原料・制度・技術リスク
国内のFAME燃料市場はまだ小さく、B5・B30の普及には燃料規格、顧客の設備対応、価格差などの制約がある。廃食油はSAF向け原料需要やHVOなどの競合燃料と取り合いになる。輸入原料の価格が上昇した場合、完成燃料の販売価格へ転嫁できなければ赤字が長期化する。姫路などの製造設備への投資回収ができるかを慎重に見る必要がある。
産業廃棄物の処理責任と環境事故
廃油・廃液の収集、運搬、保管、処理には許認可と厳格な法令遵守が必要である。漏洩、火災、不適正処理などが起これば、処理施設の操業停止、行政処分、損害賠償、追加の設備投資が生じる可能性がある。2027年3月期第1四半期に利益へ寄与した大型油漏洩事故対応案件のように、特殊案件は収益機会にもなるが、毎年繰り返す利益として評価してはならない。
建機レンタルの減価償却と更新投資
レンタル機材の利益は稼働率と料金に左右される。機械は利用しなくても保管や修繕費が発生し、古くなれば更新が必要になる。物価が上昇しても既存機材の減価償却費は昔の取得原価で計算される一方、新たに購入する機材は高くなる。会計利益が増えても、機械購入後に残る現金が少なくなるリスクがある。北海道の公共投資の変化や大手レンタル会社の出店も注意点である。
大株主との取引関係と資本配分の透明性
ENEOSホールディングスは約15%を保有する大株主であり、燃料の供給関係も事業上重要である。仕入れ条件が変化したときの交渉力は限られる可能性がある。また、グループ化後の資金配分が透明でなければ、少数株主は大型M&Aの採算を評価しにくい。取得した会社の営業利益だけでなく、取得価格、のれん、追加借入、投下資本利益率の開示を継続的に確認する必要がある。
今後の分かれ目
- リサイクル事業の営業利益が買収後も継続して増え、増分の税後投下資本利益率が8%を超えたら
- 中立とやや楽観の確率を引き上げる。買収によって単に売上を増やしたのではなく、資本コストを上回る再投資先を確保できたことになるため、長期の本質価値を上方修正する。
- M&Aに75億円規模を投じたにもかかわらず、追加営業利益が3億円程度にとどまったら
- 買収の税後投資利回りが資本コストを下回る可能性を強く疑い、やや悲観の比重を増やす。借入残高、取得のれん、追加設備投資を含め、成長への再投資が本当に株主価値を生んでいるかを再検証する。
- バイオ燃料事業が安定して営業黒字となり、原料価格上昇を販売価格へ転嫁できたら
- 中立の再生可能エネルギー事業の利益率を引き上げる。設備稼働率の上昇だけでなく、処理原料の確保、顧客との継続契約、キャッシュフローの黒字化がそろうことを条件にする。
- 国内燃料需要の減少以上の速さで石油事業の販売数量が減ったら
- 単なる市場縮小ではなくシェア低下を疑い、石油事業の数量と営業利益を下方修正する。売上高だけでは燃料価格の影響を分離できないため、販売数量と粗利単価の開示を重視する。
- 中期計画の2028年度連結営業利益13億円とROE8%以上を継続的に達成し、配当性向60%以上を維持できたら
- 経営計画の実行力への評価を高める。ただし、のれんや借入金が増えていないかを合わせて確認する。達成が一時的な石油需給逼迫や事故対応の利益だけによる場合は、長期の収益力を上方修正しない。
- 純有利子負債が営業利益の4倍を超え、買収後のキャッシュフローが低迷したら
- 財務の安全域が低下したと判断する。配当の持続性を下方修正し、追加買収の停止、事業売却、減損の可能性を悲観シナリオに強く反映する。
- 建機レンタルの稼働率と料金が上昇しても、機械更新投資が営業キャッシュフローを上回り続けたら
- 会計利益の増加をオーナー利益の増加とはみなさず、還元可能な現金の見通しを引き下げる。償却費と実際の更新投資額の差を確認する。
見ておくもの
- 石油事業の販売数量(kL)と1kL当たり粗利益、国内燃料需要に対するシェア
- リサイクル事業の処理数量(トン)、平均処理単価、セグメント利益率
- M&Aの取得価格、対象会社の利益、のれん、買収後の追加投資、増分ROIC
- 2028年度の連結営業利益13億円、ROE8%以上の達成状況
- 2030年度に向けたグリーン領域の営業利益構成比と収益化の進捗
- バイオ燃料の販売kL、製造所の稼働率、廃食油の調達単価、燃料販売価格
- レンタル事業の保有台数、稼働率、平均料金、設備投資と減価償却費の差
- 純有利子負債、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、配当総額
- 配当性向60%以上の維持と余剰現金の取り扱い
- 燃料販売の在庫評価損益や特殊な事故対応案件を除いた継続的な営業利益
倍率と資本コストの決め方
2026年10月23日の時価総額約89億円や現在のPER・PBRから10年後の価値を逆算していない。石油事業は国内燃料需要の数量減と名目単価上昇を分け、リサイクル、LPG、バイオ燃料、レンタルについても実質の数量と名目の単価から売上と利益を組み立てた。数量の開示がない部分は推計と明記し、全社売上を単に指数配分する方法は避けた。
資本コストは8%、2036年以降の名目成長率は2.5%。楽観から中立の倍率はROE、RONIC、長期成長率から正当化PERの上限を求めた。やや悲観は低収益な事業の利益価値、悲観は減損後の実体資産を重視した。悲観の時価総額62.4億円は、清算可能資産の推計床52億円を上回り、配当を加えても現在の時価総額を下回る。
自己資本は今の約97.8億円から、10年間の純利益合計と配当等の累計の差で流した。中立は累計純利益約86億円、累計還元54億円で2036年の自己資本約129.8億円となる。悲観は大型買収の減損と損失によって自己資本が減る。2028年3月期以降の新リース会計基準による使用権資産・リース負債の表示変更は、事業の本質的な利益増加と混同せず、家賃等の実際の固定支出を一貫して考慮する。
想定確率8%、18%、33%、28%、13%と、10年後時価総額・累積還元を資本コストで割り引くと、現在の本質価値は約101億円となる。時価総額約89億円に対する差は約+13%。高い確信を持てる割安ではなく、買収の資本効率と環境燃料の黒字化を継続して確認する必要がある。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%を基本に、商品価格を自力で決めにくい構造を0.5%加えた。買収の失敗やバイオ燃料の不確実性は個別の筋書きと確率に反映し、資本コストには上乗せしない。