結論
神戸物産は、食品スーパー「業務スーパー」の本部である。店は加盟店が営み、本部は自社工場と海外直輸入の商品を卸して稼ぐ。この仕組みが、物価高で安さを求める客を集めている。
筆者の結論は、今の値段はほぼ適正というものだ。追い風の一部が剥がれる前提でもそうなる。本業の力は本物で、2025 年 10 月期の営業利益は 399 億円と過去最高だった。ただ、その追い風には、食品の値上がりで客が安い店に流れた分が含まれる。ここは長くは続かない。
利益の質にも注意がいる。同期は経常利益が営業利益を 80 億円ほど上回ったが、今期の会社予想では差が数億円に縮む。純利益 319 億円は、そのまま繰り返せる額ではない。
安心材料は財務だ。純現金は 1,000 億円を超え、時価総額の 15% に当たる。事業に要らない分を別に数えても、結論は変わらない。
10 年後は、店が 1,400 店ほどに増え、営業利益は 770 億円前後と見る。強気なら 1,100 億円、慎重なら 500 億円ほどだ。分かれ目は、仕入れの中国依存と、いまの高い利益率が保てるかにある。
株主還元は控えめで、現金の使い道が今後の評価を左右する。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社の事業は分かりやすい。安く作って安く売る、それだけだ。10 年後も人は食べるし、安さを求める客は消えない。わからない事業ではない。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は大きい。店はオーナー持ちで、本部の投資は工場が中心だ。純利益の多くがそのまま現金になる。ただし、これは今の利益率が保てればの話で、利益率が 1 ポイント落ちれば利益は 1 割以上減る。
堀の見方は割れる。商品を自社で作る一貫体制は、他社が一朝一夕に真似できない。一方で、売り場の形は真似できる。本物の堀かどうかは、PB 比率が 4 割に近づいても利益率が落ちないかで決まる。
資本の使い方には、減点も加点もある。現金を貯め込む姿勢は、株主にとっては惜しい。けれども、借金をせず、工場に着実に投資してきた点は評価できる。新しい外食や機内食の事業で価値を壊さないか、注意が要る。
最後に安全域を見る。いまの値段は、強気の将来を全部は織り込んでいないが、安全域は厚くない。事業は良く、値段はほぼ適正。これが筆者の見立てだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの本体は業務スーパー事業で、売上 5,305 億円・セグメント利益 435 億円と、会社全体の 9 割以上を占める。売場に並ぶのは、海外の工場から直輸入した冷凍食品や調味料、国内の自社工場で作る商品、そして一般のメーカー品だ。
店の運営は加盟店(フランチャイズ、略して FC)に任せている。店の家賃も人件費もオーナーが負担する。本部が受け取るのは商品代金の卸売りの利ざやと、仕入額の 1% 程度のロイヤリティだ。つまり本部は、店をたくさん持つ代わりに、安く作って安く運ぶ力で稼ぐ会社である。
2025 年 10 月末で 1,122 店。1 年で 49 店を出して 11 店を閉じ、差し引き 38 店増えた。今期は 1,154 店を計画する。店は小ぶりで、日替わり特売もチラシもやらない。広告費を削って、その分を価格に回す。
もう 1 つの柱が外食・中食だ。焼肉の「プレミアムカルビ」、ビュッフェ、惣菜の「馳走菜」を合わせて約 200 店ある。売上は 200 億円ほどと小さいが、2026 年には機内食の合弁会社も立ち上げた。ほかに太陽光と木質バイオマスの発電も持つ。
商品の約 35% が自社企画のプライベートブランド(PB)で、そのうち輸入が 7 割弱を占める(調査記事)。会社は PB を 4 割まで引き上げる目標で、利益率を決めるのはこの比率だ。
海外では、香港・マレーシア・ベトナムに計 18 店を持つが、まだ業績への寄与は小さい。調達のための現地法人は、中国・エジプト・ミャンマー・ベトナムの 4 か国にある。
優良さと弱いところ
この会社の堀(他社がまねしにくい強み)は、安く作る力と、その商品が業務スーパーでしか買えないことにある。国内に 15 社 27 の自社工場を持ち、約 50 か国から直輸入する。工場から店まで一社で組むので、卸や商社に取られる利ざやが無い。
資本の効率は群を抜く。ROE は 20% 前後で、売上に対する営業利益率は 7% 台と、食品スーパーの平均(1% 前後。インタビュー記事が引く業界協会の数字)の数倍だ。店を持たず、家賃と人件費をオーナーに持たせる軽い形が、これを支えている。
一方で、堀は深くない。店の形は、ほかの低価格スーパーが追いつける。商品の力で客を引き留めているだけで、立地や会員制のような縛りは無い。
弱点は 3 つある。1 つ目は仕入れの偏りだ。輸入 PB の 6 割前後が中国産とされ、為替予約は外貨決済の 3 割ほどにとどまる(調査記事)。2 つ目は、オーナー任せの店の質だ。2024 年 7 月には北海道の加盟店運営会社が破産した。3 つ目は、成長の質だ。2025 年 10 月期の既存店売上は 15% 伸びたが、物価高で客が流れ込んだ面が強く、同じ伸びは今後続かない。
経営は創業家が握る。社長の沼田博和氏は創業者の長男で、2012 年に就任した(Wikipedia の記載)。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
舞台は国内の食品小売だ。市場は十数兆円と大きいが、人口が減るので、食べる量は 10 年で 1 割弱細る。物価の分だけ金額は増えるものの、量は伸びない。成熟した需要である。
この市場で業務スーパーは、「安さ」で量を取る側にいる。店頭の売上は、本部売上の 1.4 倍とみて 7,400 億円ほど。国内スーパー市場の 5% に届かない水準で、まだ伸びる余地がある。会社は国内 1,500 店超を目標に掲げ、東京の都心にも小型の直営店を出していく。
物価高は、この業態にとって追い風だった。食費を切り詰める人が増え、パンや麺、大容量品がよく売れた。ただし、この需要は賃金が物価に追いつけば弱まる。2025 年 10 月期に 15% 伸びた既存店売上は、今期の会社予想では伸びがぐっと鈍る前提だ。
競合は多い。ロピアのような精肉に強い安売り店、トライアルのような大型のディスカウント店、会員制のコストコ、食品に力を入れるドラッグストアが、いずれも低価格を打ち出している。業務スーパーの違いは「ここでしか買えない商品」だが、その差がどこまで保てるかが 10 年の焦点だ。
食品卸全体は、人口減で量が細るなか、PB 化と物流の効率化で生き残りを図っている。神戸物産だけは、PB と FC 網の広がりで、通常の卸の数倍の利益率を保つ。
今後 10 年の注目は、店数の増える速さが人口減に勝てるかと、PB 比率の上昇が利益率をさらに押し上げるかの 2 点だ。
資本政策と M&A
株主還元は控えめだ。2025 年 10 月期は増配したが、配当性向は 2 割台にとどまる。自社株買いは目立たず、稼いだ現金は工場の新設や手元の現金として積み上がる。ここ 2 年は純現金が年 170〜300 億円ずつ増えた。
筆者は、この現金の山をもう少し株主に返すか、成長に使うかの選択が、これからの鍵だと見る。ROE が 20% あるのは事業の稼ぐ力が強いからで、現金が働いていないぶん、資本効率はもう一段上げられる。
M&A は、食品メーカーの買収で製造拠点を増やす形が中心だった。2014 年には酒造会社を子会社にしたが、外食子会社は 2020 年に手放した。新しい動きとして、2026 年 4 月にグルメ杵屋と機内食の合弁会社を立ち上げ、海外の機内食会社の買収を狙う。5 月にはスーパーのマキヤと資本業務提携を結んだ。
筆頭株主は、創業家に近い業務スーパージャパンドリーム財団で、32% を持つ(2022 年 10 月時点)。安定株主が厚く、買収される可能性は低い。ただ、少数株主から見ると、経営の規律が働きにくい面は残る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
業務スーパーは、まだ国内スーパー市場の 5% にも届かない小さな存在だ。店は 1,122 店で、会社は 1,500 店超を目標に掲げる。人口の多い首都圏でも小型の直営店を増やし、手薄だった地域を埋めていく。毎月新しい店が開き、店の数だけで年 3% 前後の成長が見込める。
商品の力も強い。国内 15 社 27 の自社工場と 50 か国の直輸入網を持ち、他のスーパーが同じ値段で同じ物を出すのは難しい。PB 比率が 35% から 4 割に近づけば、粗利益率はさらに上がる。会社の長期目標である営業利益率 10% は、夢物語ではない。実際、2025 年 10 月期は粗利益率が 0.5 ポイント上がった。
物価高が続くなら、安さを求める客はさらに増える。賃金が上がっても、食費の節約が身についた客は戻らない。パンや麺、冷凍食品など、業務スーパーが得意な品目は伸びている。
財務は盤石だ。純現金は 1,000 億円を超え、借金に頼らずに工場を増やせる。金利が上がる世界では、この現金の受取利息だけでも毎年の利益を押し上げる。外食・中食の拡大や機内食の海外展開は、国内の人口減を補う新しい成長の芽になる。
慎重な見方
2025 年 10 月期の好決算は、物価高という特殊な環境が生んだ面が大きい。既存店売上は 15% 伸び、粗利益率も上がったが、会社自身が今期の営業利益を 8% 増にとどめている。経常利益が営業利益を 80 億円上回った分も、今期は数億円にしぼむ。純利益 319 億円を土台に先を描くのは危うい。
仕入れの偏りも気がかりだ。輸入 PB の 6 割前後を中国に頼り、為替予約は外貨決済の 3 割ほどしかない(調査記事)。円安が進むか、中国との関係が悪化すれば、安さの源泉が一気に細る。ドル円は 150 のまま動かないと置いても、その前提は強気に過ぎる。
競合も黙っていない。ロピアやトライアル、コストコ、食品に力を入れるドラッグストアが、同じ客を取りに来る。業務スーパーの店は小さく、品ぞろえで勝つには限りがある。加盟店のオーナーの採算が悪化すれば、出店も既存店の成長も止まる。2024 年に北海道の加盟店運営会社が破産した例は、その前触れとも読める。
また、今期の予想純利益で見ても PER は 21 倍を超える。成長が鈍れば、倍率が縮む展開もありうる。現金を貯め込み、配当性向が 2 割台という姿勢も、株主にとっては重い。
どちらに重みを置いたか
事業の質では強気の言い分が勝る。工場から店までの一貫体制と、小さな店を増やせる余地は本物だ。一方で、値段と利益の質では慎重な見方の指摘が正しい。今の純利益は繰り返せず、中国依存と節約需要の反動という具体的な弱みもある。
確率は、中立に最も厚く置いた。10 年は強気側にも慎重側にも同じだけ重みを置いた。どちらにも大きく寄せない。結果として、本質価値は今の値段を1割弱下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した株価時価総額 5,613 円1.25 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 863 円1,916 億円)。 今の値に割り戻すと 3,396 円7,541 億円、今との差 +13.9%、 期待の年率 +8.1%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 9,322 円2.07 兆円 | 1,145 円2,543 億円 | +251.1% | +13.4% | 837 円1,860 億円 |
| やや楽観 | 22% | 7,832 円1.74 兆円 | 1,016 円2,257 億円 | +196.8% | +11.5% | 1,947 円4,323 億円 |
| 中立 | 38% | 6,504 円1.44 兆円 | 901 円2,001 億円 | +148.4% | +9.5% | 2,814 円6,249 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,676 円5,943 億円 | 715 円1,589 億円 | +13.8% | +1.3% | 746 円1,657 億円 |
| 悲観 | 10% | 837 円1,858 億円 | 480 円1,065 億円 | −55.9% | −7.9% | 132 円292 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,613 円1.25 兆円 | 863 円1,916 億円 | +117.2% | +8.1% | 6,476 円1.44 兆円 |
今の株価時価総額 2,981 円6,620 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 1,500 店を超え、利益率 10% の目標を果たす 利益 811 億円 · PER 24.1 倍 · 株価時価総額 9,322 円2.07 兆円
国内は 1,600 店近くまで広がり、首都圏の小型店と地方の郊外店がそろう。会社の長期目標である PB 比率 4 割と営業利益率 10% を達成する。1 店あたり売上は物価に加えて、商品力で実質 1 割ほど伸びる。外食・中食は 500 店に近づき、海外の機内食事業も軌道に乗る。ベトナムなどでの店も増える。営業利益は 1,100 億円に達し、成長と高い資本効率が同時に続く優良株として、高めの倍率が付く。現金は配当と自社株買いにも回り、10 年の還元は大きくなる。創業家が握る経営は、長期の視野で投資を続けられる強みになる。競合のロピアやトライアルに対しても、自社工場の商品力で差を保つ。人口が減る国内でも、シェアの伸びで成長を維持する。
- 業務スーパー事業:数量 1,580(店舗数(年平均・店))× 価格 7.09(1 店あたり本部売上(億円・名目)。1 店あたりの実質の販売量の変化と物価(3 年 1.09・10 年 1.34 倍)を含む)→ 売上 11,202 億円・営業利益 1,120 億円。年平均 1,580 店 × 1 店 7.09 億円(今の 1.47 倍)、営業利益率 10.0%
- 外食・中食・再エネ・その他:数量 500(外食・中食の店舗数(年平均・店。発電の売上は 1 店あたりに含める))× 価格 1.50(1 店あたり売上(億円・名目、発電など含む))→ 売上 748 億円・営業利益 67 億円。500 店 × 1 店 1.50 億円、営業利益率 9%
倍率:事業の純利益 801 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 40.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 24.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 24.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 24.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)525 億円。全体の PER 24.11 倍、時価総額 19,842 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:8% 程度。出店が目標を超えて進み、PB 比率 4 割と利益率 10% が両方そろう強気の姿。10 年先まで競合に勝ち続ける必要があるため、確率は低くとどめた。
やや楽観 22% 目標をほぼ達成し、緩やかに成長を続ける 利益 684 億円 · PER 23.8 倍 · 株価時価総額 7,832 円1.74 兆円
出店は年 35 店前後で 1,500 店近くまで進み、PB 比率は 4 割に迫る。1 店あたり売上は物価に加え、実質で 5% ほど伸びる。営業利益率は 9.4% で、会社の目標には届かないが、同業を大きく引き離す高水準を保つ。外食・中食は 450 店ほどに増える。営業利益は 920 億円、純利益は 680 億円ほど。堀の強さが 10 年たっても保たれ、高い倍率を維持する。競合のロピアやトライアルとは共存し、人口の減る地方でも店を増やす。創業家の長期の視野が、工場投資と商品開発を支え続ける。現金は少しずつ株主に回り、還元も増える。
- 業務スーパー事業:数量 1,490(店舗数(年平均・店))× 価格 6.77(1 店あたり本部売上(億円・名目)。1 店あたりの実質の販売量の変化と物価(3 年 1.09・10 年 1.34 倍)を含む)→ 売上 10,084 億円・営業利益 948 億円。年平均 1,490 店 × 1 店 6.77 億円(今の 1.41 倍)、営業利益率 9.4%
- 外食・中食・再エネ・その他:数量 450(外食・中食の店舗数(年平均・店。発電の売上は 1 店あたりに含める))× 価格 1.50(1 店あたり売上(億円・名目、発電など含む))→ 売上 673 億円・営業利益 57 億円。450 店 × 1 店 1.50 億円、営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 674 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 37.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 22.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 23.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 23.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)525 億円。全体の PER 23.83 倍、時価総額 16,591 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:22% 程度。出店は目標の 1,500 店に届き、利益率も 9% 台に乗せる。会社の長期ビジョンをほぼなぞる姿で、強気と中立の間に置いた。
中立 38% 国内の店が頭打ちになりつつ、物価の分だけ伸びる 利益 570 億円 · PER 23.5 倍 · 株価時価総額 6,504 円1.44 兆円
出店は年 28 店ほどに鈍り、年平均店数は 1,400 店。国内の出店余地は残るが、人口が減るため、出せる場所は絞られる。1 店あたり売上は物価の分だけ伸び、実質の伸びは置かない。営業利益率は 8.8% で、PB 比率の上昇が人件費の上昇を吸収する程度。外食・中食は 400 店ほど。営業利益は 770 億円、純利益は 570 億円ほどになる。10 年たっても、堀は破られないが広がりもしない。普通に強い優良企業としての評価に収まる。中国からの調達は分散が進み、為替の振れも吸収できる。創業家が握る経営は安定しており、加盟店オーナーの採算も保たれる。一方で、店と客の増える速さは、これまでの 10 年より遅くなる。
- 業務スーパー事業:数量 1,400(店舗数(年平均・店))× 価格 6.45(1 店あたり本部売上(億円・名目)。1 店あたりの実質の販売量の変化と物価(3 年 1.09・10 年 1.34 倍)を含む)→ 売上 9,023 億円・営業利益 794 億円。年平均 1,400 店 × 1 店 6.45 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 8.8%
- 外食・中食・再エネ・その他:数量 400(外食・中食の店舗数(年平均・店。発電の売上は 1 店あたりに含める))× 価格 1.50(1 店あたり売上(億円・名目、発電など含む))→ 売上 598 億円・営業利益 48 億円。400 店 × 1 店 1.50 億円、営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 560 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 35.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 21.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 23.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 23.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)525 億円。全体の PER 23.5 倍、時価総額 13,690 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10 年の中心。38% で最も厚く置いた。人口減の中で出店は飽和に近づき、物価の分の成長を軸に置く。
やや悲観 22% 競合に押され、店と利益率が伸び悩む 利益 387 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,676 円5,943 億円
ロピア、トライアルなどの低価格スーパーと、食品に力を入れるドラッグストアが業務スーパーの客を取り、1 店あたり売上は物価の伸びに追いつかない(実質で 1 割弱の減)。出店は止まり、退店も増えて、年平均店数は 1,290 店にとどまる。中国調達のコストと人件費の上昇で営業利益率は 7.4% に下がる。外食・中食は 320 店で、利益は薄い。純利益は 390 億円ほどで、今の水準を大きくは超えない。倍率も縮み、株価は今より小さい成長で評価される。現金は手厚く残り、財務は安定している。成長が止まり、現金をどう使うかの批判が強まる。成長株としての評価は消え、安定した食品小売として値が付く。
- 業務スーパー事業:数量 1,290(店舗数(年平均・店))× 価格 5.93(1 店あたり本部売上(億円・名目)。1 店あたりの実質の販売量の変化と物価(3 年 1.09・10 年 1.34 倍)を含む)→ 売上 7,650 億円・営業利益 566 億円。年平均 1,290 店 × 1 店 5.93 億円(今の 1.23 倍)、営業利益率 7.4%
- 外食・中食・再エネ・その他:数量 320(外食・中食の店舗数(年平均・店。発電の売上は 1 店あたりに含める))× 価格 1.50(1 店あたり売上(億円・名目、発電など含む))→ 売上 478 億円・営業利益 19 億円。320 店 × 1 店 1.50 億円、営業利益率 4%
倍率:事業の純利益380億円・事業 ROE 12.7%。RONIC=k 7.25%+1/2×(ROE−k)=9.8%、g 3.5% から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=18.4倍。競合に押されてROEが下がり、堀が薄れる筋書きのため。上限の約7割の12.9倍に置いた。
確率:22% 程度。10 年のうち、競合の攻勢か調達コストの上昇で、利益率が 7% 台に下がる姿。10 年は何が起きてもおかしくないため、中立に近い厚みで置いた。
悲観 10% 構造的に負け、優良ではなくなる 利益 154 億円 · PER 10.7 倍 · 株価時価総額 837 円1,858 億円
中国との関係悪化や円安の定着で輸入 PB の原価が上がり、価格を維持できなくなる。競合に客を奪われ、加盟店オーナーが離れていく。年平均店数は 1,100 店に縮み、1 店あたり売上は実質で 2 割落ちる。営業利益率は 4.5% に沈み、外食・中食は縮小または撤退。純利益は 150 億円ほどで、成長の物語は終わる。それでも純現金と工場の資産は残り、倒産の恐れは小さい。評価は自己資本の 0.8 倍ほどまで下がる。創業家が握る経営は、方針転換が遅れて傷を深くしかねない。財務の安全性は残るが、株主にとっては長い低迷になる。
- 業務スーパー事業:数量 1,100(店舗数(年平均・店))× 価格 5.16(1 店あたり本部売上(億円・名目)。1 店あたりの実質の販売量の変化と物価(3 年 1.09・10 年 1.34 倍)を含む)→ 売上 5,672 億円・営業利益 255 億円。年平均 1,100 店 × 1 店 5.16 億円(今の 1.07 倍)、営業利益率 4.5%
- 外食・中食・再エネ・その他:数量 200(外食・中食の店舗数(年平均・店。発電の売上は 1 店あたりに含める))× 価格 1.50(1 店あたり売上(億円・名目、発電など含む))→ 売上 299 億円・営業利益 0 億円。200 店 × 1 店 1.50 億円、営業利益率 0%
倍率:事業の純利益149億円・事業 ROE 5.9% は k 7.25% 以下なので、上限は 1÷k=14.3倍。構造的に負けてROEが資本コスト並みまで落ちる筋書き。ROEが資本コストを下回るので上限は1÷k、その約75%に置いた。上限の約8割の10.7倍に置いた。
確率:10% 程度。中国依存の調達が壊れる、競合に客を奪われる、FC オーナーが離反するのいずれかで、安さの優位を失う姿。10 年先にこの形で終わる可能性は 1 割ほどと見る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
業務スーパー事業
加盟店(FC)への卸売りと直営店。自社工場品と直輸入品の利ざやが稼ぎの源。
| 数量店舗数(年平均・店) | 価格1 店あたり本部売上(億円・名目)。1 店あたりの実質の販売量の変化と物価(3 年 1.09・10 年 1.34 倍)を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 1,103 | 4.81 | 5,305 | 435 |
| 10 年後 中立 | 1,400 | 6.45 | 9,023 | 794 |
取り方:2025/10 期末 1,122 店・期中の純増 38 店から年平均 1,103 店とし、業務スーパー事業の売上 5,305 億円を割って 1 店あたり 4.81 億円。数量は店の数(実質)、物価の 3% と 1 店あたりの客数・買い上げ量の変化は価格の側に入れた。既存店売上が 15% 伸びた 2025/10 期は物価高による節約需要が上乗せされているので、先では 1 店あたりの実質の伸びを置かない(中立)。
外食・中食・再エネ・その他
焼肉・ビュッフェ・惣菜「馳走菜」など約 200 店と、太陽光・木質バイオマス発電。
| 数量外食・中食の店舗数(年平均・店。発電の売上は 1 店あたりに含める) | 価格1 店あたり売上(億円・名目、発電など含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 190 | 1.12 | 212 | 10 |
| 10 年後 中立 | 400 | 1.50 | 598 | 48 |
取り方:全社売上 5,517 億円から業務スーパー事業 5,305 億円を引いた 212 億円を、外食・中食の約 190 店(2026 年 4 月は約 200 店)で割った。営業利益はセグメント別の開示が確認できず、全社 399 億円=435+10−47 として、その他を 10 億円、本社費などの調整を −47 億円と置いた推定。 数量は店舗数(実物)。
リスクと懸念
輸入 PB の中国依存と為替
調査記事によれば、輸入 PB の 6 割前後が中国産で、為替予約は外貨決済の 3 割ほどにとどまる。円安の進行か中国との関係悪化で、安さの源泉である仕入れ原価が一気に上がりうる。会社は商社子会社やベトナム法人で分散を進めるが、直近は中国の値引きで中国比率がまた上がっている。
節約需要の反動と既存店の山
2025 年 10 月期の既存店売上は 15% 伸びたが、食品の値上がりで客が安い店に流れた面が強い。賃金が物価に追いつけば、客は元のスーパーへ戻る。会社の今期予想(営業利益 8% 増)は、すでに伸びの鈍化を織り込む。この反動が予想より深いと、利益の土台そのものが下がる。
利益の質(営業外益の剥落)
2025 年 10 月期は経常利益が営業利益を約 80 億円上回り、純利益 319 億円を押し上げた。今期の会社予想では差が数億円に縮む。純利益の水準を、営業利益の伸び(今期 8%)と別に見ないと、成長を過大に読む恐れがある。
競合の低価格攻勢
ロピア、トライアル、コストコ、食品を強化するドラッグストアが、同じ節約志向の客を取りに来る。業務スーパーの売り場は小ぶりで、品ぞろえで押し切る形ではない。「ここでしか買えない商品」の差が縮めば、1 店あたり売上と利益率の両方が下がる。
加盟店オーナーの採算と店の質
店の家賃も人件費もオーナーが払う。人手不足と物流費の上昇でオーナーの採算が悪化すると、出店も既存店の成長も止まる。2024 年 7 月には北海道の加盟店運営会社が破産し、契約が解約された。出店 49 店・退店 11 店という入れ替えの多さも、質の維持の難しさを映す。
資本配分と新規事業
配当性向は 2 割台で、純現金が積み上がる。機内食の合弁や海外の買収、外食の拡大に現金を回すとき、資本効率の高い本業の水準を、新規事業が引き下げる恐れがある。筆頭株主が創業家に近い財団で、少数株主の声が届きにくい点も、資本配分への牽制を弱める。
食の安全と品質事故
自社工場と海外工場の両方で、衛生や異物混入の事故が起きる可能性がある。安さと大量生産を両立する体制では、1 つの事故が全店の売上に響く。ブランドが 1 つなので、信用の毀損は一気に広がる。自社工場を増やすほど、品質管理の負担も増える。
今後の分かれ目
- 既存店売上が 2 四半期続けて前年を下回ったら
- 節約需要の反動が出た合図。やや悲観の筋書きに重みを移す。営業利益率が 8% を割るかを併せて見る。
- PB 比率が 4 割に近づき、営業利益率が 9% を超える年が出たら
- 会社の長期目標(利益率 10%)が現実味を帯びる。やや楽観・楽観の確率を上げてよい。
- 円安が進むか、中国からの調達で供給の途切れが起きたら
- 輸入 PB の原価が上がり、安さの優位が崩れうる。悲観側に重みを移し、為替予約の比率が上がったかを見る。
- 純現金を使った大型の M&A(機内食の海外会社など)が発表されたら
- 買収額と事業の稼ぐ力を確かめる。本業の水準を超える利益が見込めない買収は、価値を削る方向に働く。
- 配当性向の引き上げや大きな自社株買いが出たら
- 現金の使い道の規律が高まる合図。同じ利益でも、株主に回る分が増え、本質価値の評価は上向く。
- 加盟店の退店が出店を上回る期が出たら
- オーナーの採算悪化のサイン。出店ペースの前提を落とし、中立を下方に見直す。
見ておくもの
- 四半期ごとの既存店売上と、出店・退店の数
- 営業利益率と、PB 比率の推移
- 営業外損益(為替差益・受取利息)と経常利益の差
- ドル円と中国向け調達の動き、為替予約の比率
- 純現金の水準と、配当・自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の純利益と資本コスト7.25%(基本7.5%、quality 合計 -0.5%)・長期成長 g 3.5%から求めた正当化PERの7〜9割に置いた。確率は動かしていない。今のPER(約21倍)や株価に寄せていない。純現金1,004億円(時価総額の15%)のうち700億円を余った現金として分け、PERに混ぜず、戻り方(半分)を掛けて足した。悲観は事業の稼ぐ力から出し、谷のPBRは使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 19.1→24.11 倍・やや楽観 PER 18.3→23.83 倍・中立 PER 17.2→23.5 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.00% → 7.25%。