結論
北沢産業は、飲食店やホテル、病院の厨房に機器を納める卸だ。筆者の結論は割高である。帳簿の上では資産が厚く見えるが、本業が稼ぐ力は細く、その資産が株主に戻る道筋も見えない。
本業の利益率は景気の良い年でも 6% に届かない。2026 年 3 月期は外食の節約と原価の上昇で、営業利益が 3 億円を割った。メーカーが直販と保守を厚くするなか、卸として値段を決める力は弱い。
一方で、資本の 4 割近くは本業の外にある。政策保有株が 35 億円、渋谷の本社ビルなど賃貸の不動産は時価で 48 億円ある。ただ株の配当や家賃は小さく、自己資本利益率は 2% 台に沈む。株を売った代金も配当の上積みや自社株買いには回っていない。
10 年で見ても、外食の店の数は人口とともに細る。中食の工場や省人化の機器が下支えしても、利益が倍になる絵は描きにくい。眠った資産が動かない限り、株主の取り分は増えないと筆者は見る。
資産が表に出る道は二つある。会社が株を売った代金を自社株買いに回すか、大株主のテンポスホールディングスや光通信が動くかだ。どちらも今は兆しにとどまる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたい事業とは言いにくい。安く買えるのは確かだが、安さの理由がはっきりしている。
本業は、メーカーと客の間に立つ請負だ。外食の店が細る中で、毎年少しずつ取り分を削られる立場にある。利益率は良い年でも 6% に届かず、景気の悪い年は 2% を割る。資本コストを安定して超える稼ぎは、過去 10 年で一度も無い。
では資産の厚さが安全域になるか。政策保有株と渋谷の不動産は確かに価値がある。しかし少数株主は、その売却も還元も決められない。売った代金が現金のまま積まれるなら、時価総額が資産を下回っていても差は埋まらない。
価値が表に出るのは、会社が政策保有株を売って自社株買いに回すか、大株主が会社ごと買う時だ。それまでは、払う値段の安さより、資本が眠る年数の長さのほうが効くと筆者は考える。10 年待っても動かなければ、安く買った分は眠った資本の目減りで消える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は業務用厨房関連の事業で、売上の 98% を占める。客は外食チェーンや個人の飲食店、ホテル、病院や学校の給食、食品工場、スーパーの総菜場だ。冷蔵庫やコンロ、食器洗浄機を選び、厨房の設計から据え付け、修理と保守までを一括で請け負う。
全国に 15 の支店と 30 の営業所を持ち、382 人の社員が現場を回る。品ぞろえは国内外のメーカーの製品が中心だが、子会社のエース工業が食器洗浄機や回転棚を、サンベイクが製パン機を作る。自社製品を持つ点が、ただの卸との違いだ。
稼ぎ方は 1 件ごとの請負に近い。店の新設や改装があると、機器と工事をまとめて受注する。だから外食の投資が鈍ると売上が先に落ちる。2026 年 3 月期は売上が 1 割減り、厨房の営業利益は 11 億円と 2 割減った。
もう一つの事業が不動産の賃貸で、売上は 3 億円余りと小さいが、営業利益は 2 億円近くと率が高い。全社では、本社の管理費が 10 億円余りかかり、二つの事業の利益の大半を食う。これが全社の利益率を 2% 前後に押し下げている。2026 年 3 月期は、その本社の費用が前の期より 3 割近く増えた。
優良さと弱いところ
優良さは低いと筆者は見る。理由は三つある。
一つ目は値段を決める力の弱さだ。機器の多くはホシザキやマルゼン、フジマックといったメーカーの製品で、メーカー自身も全国に営業所と保守網を持つ。大手チェーンはメーカーと直接話せる。卸に残る役割は、設計と据え付けをまとめる手間の請負で、そこに高い値は付きにくい。
二つ目は資本の使い方だ。純資産 114 億円のうち、政策保有株と賃貸の不動産が大きな割合を占める。どちらも利益への寄与は小さく、自己資本利益率は過去 10 年の中央値で 2.3% にとどまる。資本コストの 4 分の 1 程度だ。
強みもある。創業 70 年を超える取引の厚み、全国の保守網、自社製の食器洗浄機だ。人手不足で洗浄や調理の省人化は需要が伸びる。ただ、その伸びが全社の利益率を変えるほどの規模にはまだ見えない。自社製品の売上は開示されておらず、外から確かめる手段も乏しい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業務用厨房の市場は、外食の店の数と投資の波で決まる。日本の外食の店は人口減と人手不足で長く細る流れにあり、数量の面で追い風は無い。
足元は二つの力が引き合う。訪日客の増加と外食の値上げで、一部の店は改装と新店を進めている。会社も 2027 年 3 月期は売上 1 割増を見込む。一方で、物価高で客の節約が続き、光熱費と人件費の上昇で店の投資余力は細い。2026 年 3 月期の 1 割減収は、この弱さの表れだ。
伸びる場所は中食と省人化だ。スーパーの総菜場や食品工場、病院と介護の給食は、人手不足で機械化を急ぐ。食器洗浄機や自動の調理機器は、人を減らせる分だけ高くても売れる。
競争の形は卸に不利だ。ホシザキは国内に営業拠点を張り巡らせ、製品と保守を直接売る。タニコーやマルゼンも直販が強い。テンポスホールディングスは中古の厨房機器で小さな店を取る。テンポスは北沢産業の株を 8% 近く持つ大株主でもあり、業界の再編の芽はある。卸が生き残るには、設計から保守までの一括の手間を安く請け負う力が要る。人手不足は卸自身の工事と保守の人員にも効き、手間の値段を上げられるかが分かれ目になる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、1 株の配当を何年も据え置いている。配当の総額は年 1.9 億円ほどだ。2026 年 3 月期は利益が落ちて配当性向が 8 割を超えた。自社株買いはほとんどしていない。
政策保有株は 21 銘柄、時価 35 億円を持つ。毎年少しずつ売って特別利益を出しているが、その代金は手元の現金に積まれ、還元には回っていない。
株主には光通信、テンポスホールディングス、冷凍機メーカーのガリレイ、北陸銀行が並ぶ。光通信は配当の厚い会社に投資する方針で、還元の上積みを求める力になりうる。テンポスとの資本関係は、事業の再編や買収の入口にもなる。ただ、いずれも具体的な動きは開示されていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
外食の投資は底を打ちつつある。訪日客の店は改装を急ぎ、会社自身も 2027 年 3 月期に売上 1 割増、営業利益 8 割増を見込む。2024 年 3 月期に営業利益 10 億円を出した実績もあり、物価の上がる世界では 1 件あたりの売上も膨らむ。
人手不足は追い風だ。食器洗浄機や自動調理の機器は、人を減らせる分だけ高く売れる。子会社のエース工業は洗浄機を自社で作り、利益率の高い製品を持つ。中食の工場や病院の給食にも客を広げている。
さらに資産がある。政策保有株は時価 35 億円、渋谷の不動産は含み益が 25 億円ある。純現金も 10 億円近い。時価総額 71 億円はこれらの合計に近く、本業はほぼ無料で手に入る勘定だ。光通信やテンポスが株主にいる以上、還元の上積みや再編で資産が表に出る日は来る。
本社の費用の急増も一度きりの面がある。売上が戻れば費用の割合は下がり、全社の利益率は 3〜4% へ戻る。そこまで行けば、利益は今の倍になる。
慎重な見方
資産が厚いことと、株主に戻ることは別の話だ。政策保有株は毎年少しずつ売っているが、代金は現金に積まれ、自社株買いは無い。配当は据え置きのままで、利益が減った年は性向が 8 割を超えた。資産は 10 年後も会社の中にあると見るべきだ。大株主が動く話も、今は開示が何も無い。
本業の弱さは構造的だ。ホシザキやマルゼンは営業所と保守網を全国に持ち、チェーン店と直接取引する。テンポスの中古品は小さな店の需要を取る。卸の取り分は細り、2026 年 3 月期は売上が 1 割落ちたうえに本社の費用が膨らんで、営業利益は 7 割減った。
外食の店の数は人口とともに減る。省人化の機器は伸びても、全社の売上の一部にすぎない。自己資本利益率は 10 年の中央値で 2.3% と資本コストに遠く届かない。安く見えるのは、市場がこの低い稼ぎを正しく値付けしているからだ。資本が眠る会社の安さは、何年たっても埋まらないことが多い。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。本業の利益率の低さは 10 年以上続いており、メーカーの直販という構造の問題に根がある。資産の厚さは床にはなるが、還元の実績が乏しく、少数株主の手に戻る道筋が無い。確率は中立と悲観側に寄せ、楽観は 1 割にとどめた。
一方で、資産の厚さと大株主の顔ぶれは、悲観の底を浅くする。倒れる会社ではなく、稼がない資本を抱えたまま細る会社というのが筆者の見立てだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 254 円47 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 100 円19 億円)。 今の値に割り戻すと 172 円32 億円、今との差 −54.7%、 期待の年率 −0.7%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 467 円87 億円 | 140 円26 億円 | +59.8% | +4.8% | 61 円11 億円 |
| やや楽観 | 20% | 364 円68 億円 | 118 円22 億円 | +27.0% | +2.4% | 97 円18 億円 |
| 中立 | 37% | 281 円52 億円 | 108 円20 億円 | +2.2% | +0.2% | 144 円27 億円 |
| やや悲観 | 21% | 109 円20 億円 | 81 円15 億円 | −50.0% | −6.7% | 40 円7 億円 |
| 悲観 | 12% | 64 円12 億円 | 43 円8 億円 | −71.8% | −11.9% | 13 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 254 円47 億円 | 100 円19 億円 | −6.9% | −0.7% | 354 円66 億円 |
今の株価時価総額 380 円71 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 中食と食洗機で稼ぐ力が戻る 利益 6 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 467 円87 億円
訪日客と外食の値上げで店の投資が戻り、食品工場やスーパーの総菜場の厨房も増える。件数は今より少し増える。
人手不足で食器洗浄機や自動調理の機器が売れ、子会社エース工業の洗浄機が利益を押し上げる。1 件あたりの売上は物価を少し上回って伸びる。
本社の費用は物価並みに増えるが、厨房の利益率は 9.5% まで戻る。営業利益は 8 億円台と 2024 年 3 月期の山に近い。配当は性向 6 割を保ち、政策保有株の売却も進む。テンポスとの提携で中古と新品を合わせて売る形ができ、小さな店の客も取り戻す。それでも資本の大半は利益を生まないまま残り、自己資本利益率は 6% に届かない。
- 業務用厨房関連:数量 2,800(納入する厨房の件数(件・年、推定))× 価格 6.95(1 件あたりの売上(百万円・名目、保守込み))→ 売上 195 億円・営業利益 18 億円。件数1.02倍・1件1.39倍・利益率9.5%
- 不動産賃貸:数量 100(貸している床(今を 100 とした面積の指数。物件の増減だけで動く))× 価格 4.30(床 1 単位あたりの年間賃料(百万円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。床そのまま・賃料1.26倍
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 87 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2024年3月期に営業利益率6%を出した実績はあるが、それを10年保つには外食の投資の回復と自社製品の伸びが重なる必要がある。
やや楽観 20% 外食の投資が戻り、利益率は今より上 利益 5 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 364 円68 億円
外食の投資は物価高の節約で鈍るが、インバウンドの店と中食の工場が支える。件数は 10 年で 3% ほど減るにとどまる。
1 件あたりの売上は省人化の機器が増えて物価より少し上がる。厨房の利益率は 8.8% と、ここ 2 年の平均に近い。営業利益は 6 億円前後、純利益は 4 億円台になる。
配当は今の水準から少し増え、政策保有株は少しずつ売る。テンポスや光通信が株を持ち続け、還元の上積みを求める声は残る。
本社の費用は売上の戻りで割合が下がり、全社の利益率は 3% 台に乗る。それでも資本コストには遠く、資産の厚さは株価の支えにとどまる。
- 業務用厨房関連:数量 2,660(納入する厨房の件数(件・年、推定))× 価格 6.80(1 件あたりの売上(百万円・名目、保守込み))→ 売上 181 億円・営業利益 16 億円。件数0.97倍・1件1.36倍・利益率8.8%
- 不動産賃貸:数量 100(貸している床(今を 100 とした面積の指数。物件の増減だけで動く))× 価格 4.20(床 1 単位あたりの年間賃料(百万円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。床そのまま・賃料1.23倍
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.3% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 68 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の2027年3月期予想(営業利益4.7億円)が通り、その先も少しずつ伸びる形。予想の達成は確かでないので2割。
中立 37% 件数は細り、利益は過去の平均に戻る 利益 3 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 281 円52 億円
外食の店は人口減と人手不足で少しずつ減る。中食の工場や病院・給食がその分を一部埋め、件数は 10 年で 7% 減る。
1 件あたりの売上は物価並みに上がるが、メーカーの値上げを店に通す力は弱く、厨房の利益率は 8.2% にとどまる。本社の費用も物価で増え、全社の営業利益は 4 億円前後と過去の平均並みだ。
配当は今の水準を少し上回る程度で続く。政策保有株は少しずつ売るが、代金は現金に積まれる。渋谷の不動産は持ったままで、資本の 4 割近くが本業の外に眠り続ける。
買収の話も出ず、会社の形は今とほぼ同じだ。自己資本利益率は 3% 前後にとどまる。
- 業務用厨房関連:数量 2,550(納入する厨房の件数(件・年、推定))× 価格 6.70(1 件あたりの売上(百万円・名目、保守込み))→ 売上 171 億円・営業利益 14 億円。件数0.93倍・1件1.34倍・利益率8.2%
- 不動産賃貸:数量 100(貸している床(今を 100 とした面積の指数。物件の増減だけで動く))× 価格 4.10(床 1 単位あたりの年間賃料(百万円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。床そのまま・賃料1.20倍
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.1% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 52 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:外食の店の数は人口とともに細り、卸の利益率は過去12年の中央値に近い所に戻る、最も起こりやすい姿。
やや悲観 21% メーカー直販に押され、利益が細る 利益 1 億円 · PER 7.2 倍 · 株価時価総額 109 円20 億円
ホシザキ・マルゼン・タニコーなどのメーカーが営業所と保守網を広げ、チェーン店はメーカーと直接取引する。テンポスの中古品も小さな店の需要を取る。件数は 15% 減る。
人件費と物流費は上がるのに、値上げは店に通しにくい。厨房の利益率は 7% に下がり、本社の費用がそれを食って全社の営業利益は 1 億円を割る。
配当は少し減らすが、それでも利益を上回る年が続き、手元の現金と株の売却で払う。支店と営業所を減らす手も遅れ、固定費が利益を食い続ける。
株価は資産の厚さだけで支えられる。その資産も配当の穴埋めで少しずつ減る。
- 業務用厨房関連:数量 2,330(納入する厨房の件数(件・年、推定))× 価格 6.50(1 件あたりの売上(百万円・名目、保守込み))→ 売上 151 億円・営業利益 11 億円。件数0.85倍・1件1.30倍・利益率7.0%
- 不動産賃貸:数量 100(貸している床(今を 100 とした面積の指数。物件の増減だけで動く))× 価格 3.90(床 1 単位あたりの年間賃料(百万円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。床そのまま・賃料1.14倍
倍率:事業の ROE 0.7% が k 9.0% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で PER の上限は 1÷k=11.1 倍。やや悲観は利益が細り稼ぐ力が弱いので、上限の 6 割の 7.2 倍。余った現金 10.1 億円(帳簿 20.2 億円 × 戻り方 0.50)は別に足した。
確率:ホシザキやマルゼンなどメーカーが直販と保守を厚くし、卸の取り分が削られる流れは既にある。2026年3月期の減益がその兆し。
悲観 12% 卸の役割が細り、赤字が続く 利益 −3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 64 円12 億円
外食の店は 10 年で 2 割以上減り、残った大手チェーンはメーカーと直接取引する。北沢産業に残るのは小さな店と改装の仕事で、件数は 3 割近く減る。
1 件の売上は物価に届かず、厨房の利益率は 4.5% に落ちる。15 支店・30 営業所の固定費が重く、全社の営業利益は赤字になる。
配当は半分ほどに減らす。赤字の穴は政策保有株の売却で埋め、資産は少しずつ目減りする。不動産は売らずに持ち続け、少数株主の手には戻らない。
買い手が現れても、赤字の卸に高い値は付かない。資産の価値も、会社が手放さない限り株主には届かない。
- 業務用厨房関連:数量 1,970(納入する厨房の件数(件・年、推定))× 価格 6.30(1 件あたりの売上(百万円・名目、保守込み))→ 売上 124 億円・営業利益 6 億円。件数0.72倍・1件1.26倍・利益率4.5%
- 不動産賃貸:数量 100(貸している床(今を 100 とした面積の指数。物件の増減だけで動く))× 価格 3.70(床 1 単位あたりの年間賃料(百万円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。床そのまま・賃料1.09倍
倍率:赤字なので PER は使わず、純現金と政策保有株の税後から赤字と配当の流出を引いた約24億円に戻り方0.5を掛けた約12億円を床とし、今の自己資本113.6億円に掛けた PBR で書いた。
確率:外食の店の数の減りが速まり、直販と中古品に取引を取られる形。資産が厚く倒れはしないので1割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
業務用厨房関連
外食・ホテル・病院・給食・食品工場に厨房機器を売り、据え付けと保守を請け負う。子会社エース工業で食器洗浄機など、サンベイクで製パン機を作る。
| 数量納入する厨房の件数(件・年、推定) | 価格1 件あたりの売上(百万円・名目、保守込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,740 | 5.00 | 137 | 11 |
| 10 年後 中立 | 2,550 | 6.70 | 171 | 14 |
取り方:件数は開示が無いので推定。新店・改装の 1 厨房を平均 500 万円(機器・据え付け・保守込み)とみて、売上 137 億円を約 2,740 件に割った。件数は実質の数量で、物価と高機能化の値上がりは 1 件あたりの売上に入れる。
不動産賃貸
渋谷の本社ビルなど自社の建物の空きを貸す。賃貸等不動産の簿価 22 億円・時価 48 億円。
| 数量貸している床(今を 100 とした面積の指数。物件の増減だけで動く) | 価格床 1 単位あたりの年間賃料(百万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 3.41 | 3 | 2 |
| 10 年後 中立 | 100 | 4.10 | 4 | 2 |
取り方:物件の増減は予定が無いので床は 100 のまま。賃料は築年が進むので物価より遅く上がる。償却(年約 0.66 億円)は取得時の値段のままで物価で増やさない。
リスクと懸念
メーカー直販による中抜き
ホシザキ・マルゼン・タニコーなどが営業所と保守網を広げ、チェーン店と直接取引する流れが強まると、卸の取り分は件数と利益率の両方で削られる。2026年3月期の減益はその兆しでもある。
外食の店の数の縮み
人口減と人手不足で外食の店は細る。訪日客と中食が支えても、新店と改装の件数が細れば売上は先に落ちる。物価高の節約が長引けば、店の投資はさらに後ろへずれる。
本社の費用の膨らみ
全社費用は2025年3月期の7.8億円から2026年3月期に10.4億円へ増えた。人件費と仕組みの費用が物価とともに増え続けると、事業の利益の大半が本社の費用に消える形が続く。
資本が眠り続ける
政策保有株35億円と賃貸の不動産は利益への寄与が小さい。売却の代金が現金に積まれ、還元に回らないなら、自己資本利益率は2%台から上がらず、株主の取り分は増えない。
大株主の動き
テンポスホールディングスと光通信が大株主にいる。買収や還元の要求は価値を表に出す一方、条件次第では少数株主に不利な形で決まる恐れもある。具体的な提案は今のところ開示されていない。
今後の分かれ目
- 政策保有株の売却代金で自社株買いを始める
- 眠った資本が株主に戻り、自己資本利益率が上がる。資産の戻り方を厚く見直す理由になる。
- 2027年3月期の営業利益4.7億円の予想を達成する
- 外食の投資の回復が本物で、やや楽観の筋書きに近づく。
- 厨房の利益率が2期続けて7%を割る
- メーカー直販に押される流れが強く、やや悲観の筋書きに近い。
- テンポスホールディングスが持ち株を増やす、または提携を発表する
- 再編で資産と事業の値付けが変わる。買収の値段次第で価値は上下する。
- 全社費用が物価を超えて増え続ける
- 事業の利益が本社の費用に食われ、全社の利益率は2%前後から上がらない。
見ておくもの
- 厨房の売上と営業利益率(2026年3月期は8.2%)
- 全社費用の額(2026年3月期10.4億円)
- 投資有価証券の残高と売却額
- 配当と自社株買いの額
- テンポスホールディングス・光通信の持ち株の変化
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。資本コスト9.0%に対し、10年後の事業の自己資本利益率は中立で2%台と届かないので、PERの上限は1÷k≒11.1倍、中立はその7.5割に置いた。政策保有株は毎年売っている実績があるので税後約27億円を余った資産として分け、還元の実績が乏しいので戻り方0.5で足した。賃貸の不動産は家賃が利益に入っているので足さず、悲観の床にも数えていない。過去のPBRや同業の値付けは使っていない。新リース会計基準の適用後は営業利益と負債の形が少し変わるが、10年後の数字は今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.11 倍・やや楽観 PER 9.44→11.11 倍・中立 PER 8.33→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+1.5%を足した(決まりv2)。個別のリスクは筋書きと確率で表す。