結論
北恵は、大阪に本社を置く住宅資材の卸だ。工務店や木材店に、ドアや床材、石膏ボード、キッチンや浴室を売り、取り付けの工事まで請け負う。筆者の結論は割高寄りだ。純現金は時価総額より多いが、その現金が株主に戻る道筋が細いからだ。
本業の稼ぎは薄い。それがこの会社の値打ちを決めている。売上は 600 億円近いのに、営業利益率は 1% 台にとどまる。過去 30 年でも 2% を超えたことが無い。卸は中身を右から左に流す商売で、値段を決める力がメーカーにも工務店にもあるからだ。
市場も縮む。主な客である戸建ての新築は、人口の減少と住宅価格の高騰で減り続ける。会社はリフォームや非住宅、太陽光と蓄電池に軸足を広げているが、新築の減りを埋めるには力不足とみる。
貸借対照表は堅い。借入は無く、現預金は 100 億円を超える。ただ創業家が 4 割強を持ち、自社株買いをしてこなかった。この現金を時価総額の床と見るのは早いと筆者は考える。
10 年後の姿は、数量が 1 割半減り、利益率は 1% 台のまま、現金がさらに積み上がる形が最も起こりやすい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「中身は安全だが、持ち主になっても現金に手が届かない」会社だ。純現金は時価総額を上回り、借金は無い。財務で倒れる心配はほぼ無い。
だが事業そのものは良くない。売上の 1% 強しか残らない卸で、市場は縮む。10 年後もこの会社は残るが、今より強くなっている姿は描きにくい。工事の取り込みで地域の工務店とのつながりは保てても、値段を決める力は持てない。
オーナー利益、つまり設備の更新を引いて株主に残る現金は会計の利益とほぼ同じだ。設備は軽く、償却は年 1 億円前後しかない。問題はその現金を経営が積み上げるだけで、株主に戻してこなかったことだ。
安全域は帳簿の現金にある。ただ、それを手にできるかは創業家の判断にかかる。筆者は、資本の使い方が変わる兆しが出るまで、この現金を満額では数えない。
何で稼ぐ会社か
北恵の仕事は、住宅を建てるのに要る資材を、メーカーから仕入れて工務店に届けることだ。扱う品は室内ドアやフロア、石膏ボードや断熱材、合板と木材、システムキッチンやユニットバスまで幅広い。顧客は木材店、建材店、工務店、住宅会社だ。
もう 1 つの柱が「施工付販売」で、売上の 4 割強を占める。外壁や屋根、住宅設備の取り付けまでを請け負う。人手の足りない工務店にとって、資材と工事を一括で頼める相手は便利だ。ここが単なる卸との違いになっている。
会社は非連結で、事業は 1 つにまとまる。営業の拠点は近畿を中心に、中部、東日本、九州に広がる。設備は軽く、償却は年 1 億円前後だ。稼ぎは売上総利益の 1 割ほどから、人件費と物流費を引いた残りになる。
近年は太陽光発電と蓄電池の販売・工事、非住宅の商業施設、リフォームに力を入れている。新築の戸建ての減少に備え、工事の領域を広げる狙いだ。
お金の流れも特徴的だ。工務店からの代金の回収と、メーカーへの支払いがほぼ釣り合い、運転資金を借入に頼らずに回せている。
優良さと弱いところ
優良さは「並」の下と筆者は見る。卸としての規模は地域では大きいが、全国の大手には及ばない。扱う品の多くはメーカーの定価と値引きの交渉で値段が決まり、北恵が自分で値段を上げる余地は小さい。
強みは工事を抱き合わせられることだ。工務店は職人を確保しにくくなっており、資材と取り付けを一括で頼める相手を手放しにくい。顧客が数千の中小に分かれていることも、1 社に頼らない安定につながる。
弱みは利益率の薄さだ。売上の 1% 強しか残らず、物流費や人件費が少し上がるだけで利益が消える。資本の稼ぎ(ROE)は過去 10 年の中央値で 5% と、資本コストを下回る。
経営は創業家が担う。財務は堅いが、厚い現金を株主に戻す動きは乏しい。資本を絞らない限り、ROE が資本コストに届く日は来ない。
堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるほどのものは無い。工事の段取りと地域の顧客網は大切な資産だが、同じことは他の地域卸もできる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
住宅資材の卸は、新築の戸建ての数に強く縛られる商売だ。持家と分譲の戸建ての着工は、人口の減少、建築費の高騰、住宅ローン金利の上昇で減り続けている。2025 年の建築基準法の改正前の駆け込みと、その反動も業績を揺らした。
10 年で見ると、新築の戸建ては 2〜3 割減ると筆者は見る。リフォームや建て替え、省エネ改修の需要は伸びるが、1 件あたりの資材の量は新築より少ない。会社全体の数量は 1 割半ほど減る見通しだ。
業界の形も変わる。大手の住宅会社はメーカーと直接取引する動きを強め、中間の卸の取り分は削られやすい。物流費と人件費は上がり続け、値段に転嫁できる力の差が利益の差になる。
一方で、中小の工務店は職人を抱えきれず、施工まで請け負う卸に頼る度合いを強めている。同業の中小卸の廃業も続き、残る会社に取引が寄る。北恵の伸びしろは、この工事の取り込みにある。
価格は資材の値上がりに沿って物価並みに上がるとみる。数量は減り、利益率は薄いままだ。卸の淘汰が進む中で、規模の小さい地域卸が生き残るには、工事の質と顧客との距離で選ばれ続けるしかない。
資本政策と M&A
還元は配当だけだ。1 株の配当に下限を設け、配当性向 35% を目途とする。年の配当総額は 2.6 億円ほどで、自社株買いの実績は無い。
使い道の無い現金が積み上がっている。借入はゼロで、現預金は 10 年で 1.5 倍強になった。事業に要る分を除いても 70 億円ほどが余り、時価総額の 8 割に当たる。
株主の構成がこの現金の行方を決める。創業家の北村氏と資産管理会社で約 42% を持ち、社長も創業家だ。少数株主が現金の使い道を変えさせる力は弱い。
時価総額が小さく現金が厚いので、経営陣による買収(MBO)や投資ファンドの提案の候補にはなりうる。ただ具体的な話は見当たらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
純現金は時価総額を上回る。借金は無く、事業に要る現金を除いても 70 億円が余る。本業の価値をほぼゼロとみなしても、今の値段は現金で説明がつく。
本業も崩れない。工務店は職人を確保できず、資材と工事を一括で頼める卸に頼る度合いが強まる。施工付販売は売上の 4 割を超え、単なる卸から工事会社に近づいている。工事まで任せた工務店は、取引先を簡単には替えない。太陽光や蓄電池、省エネ改修は、新築が減っても伸びる需要だ。国の省エネ基準の引き上げは、断熱材や設備の単価も押し上げる。
物価の上昇は資材の単価を押し上げ、売上は名目で減りにくい。中小の卸の廃業で取引が寄れば、利益率は 1.5% を超える余地がある。金利の上昇で、100 億円を超える現金の利息も年 2 億円ほどに増える。
時価総額が小さく現金が厚い会社は、MBO や同業の再編の対象になりやすい。そうなれば現金はほぼ満額で株主に届く。創業家の世代交代も、資本の使い方を見直すきっかけになりうる。
慎重な見方
現金は株主のものではあっても、少数株主の手には届かない。創業家が 4 割強を持ち、自社株買いをしてこなかった。過去 10 年、現金は積み上がるだけだった。この先も変わる理由が見当たらない。
本業は縮む。持家と分譲の戸建ては 10 年で 2〜3 割減り、1 件あたりの資材はリフォームで補えない。省エネ改修の補助金も、政策が変われば需要ごと消える。大手の住宅会社はメーカーと直接取引し、卸の取り分は削られる。
利益率は 1% 台で、物流費や人件費が少し上がるだけで消える。2009 年には 0.3% まで落ちた。工事の比率が上がれば、職人の確保と施工の品質という新しい危うさも抱える。資本の稼ぎは資本コストを下回り続け、ためた利益は帳簿の額ほどの値打ちを持たない。
金利が上がれば現金の利息は増えるが、それも積み上がるだけで終わりかねない。現金の厚さを理由に安いと見るなら、その現金がいつ、どう株主に届くかを示す必要があるが、その材料は今のところ無い。
どちらに重みを置いたか
事業の見通しでは慎重な見方が強い。新築の減少は構造的で、工事の取り込みでも埋めきれない。現金の厚さは安全を保証するが、株主に戻るかは別の話だ。中立に 40%、悲観側の合計に 33%、楽観側に 27% を置き、MBO などで現金が戻る形を楽観側に含めた。純現金が厚く倒産の心配がほぼ無い点は、悲観の深さを抑える理由になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/11 期)
確率で加重した株価時価総額 1,617 円150 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 253 円23 億円)。 今の値に割り戻すと 961 円89 億円、今との差 +0.4%、 期待の年率 +6.9%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,780 円258 億円 | 388 円36 億円 | +231.0% | +12.7% | 222 円21 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,169 円201 億円 | 303 円28 億円 | +158.2% | +10.0% | 494 円46 億円 |
| 中立 | 40% | 1,826 円170 億円 | 255 円24 億円 | +117.4% | +8.1% | 832 円77 億円 |
| やや悲観 | 23% | 937 円87 億円 | 200 円19 億円 | +18.8% | +1.7% | 262 円24 億円 |
| 悲観 | 10% | 433 円40 億円 | 167 円16 億円 | −37.3% | −4.6% | 60 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,617 円150 億円 | 253 円23 億円 | +95.4% | +6.9% | 1,870 円174 億円 |
今の株価時価総額 957 円89 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 工事の取り込みで数量を守り、現金も戻り始める 利益 13 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 2,780 円258 億円
職人不足で工務店が施工を外に頼む流れが強まり、北恵の施工付販売が大きく伸びる筋書きだ。新築の戸建ては 2 割減るが、リフォームと非住宅、太陽光と蓄電池の工事がそれを埋め、戸数相当の数量は今と変わらない。
中小の卸の廃業で取引が寄り、工事の付加価値で値段も物価をわずかに上回る。営業利益率は過去の最良に近い 1.8% まで上がる。
世代交代を機に資本の使い方が変わり、配当が増える。MBO や再編の提案が出れば、厚い現金はほぼ満額で株主に届く。
利益率が最良に戻っても資本の稼ぎは資本コストに近づく程度で、価値の多くは現金が戻るかどうかで決まる。
- 建材・住宅設備の販売と施工付販売:数量 9.8(供給した住宅の戸数相当(千戸・推定))× 価格 8.20(1 戸あたりの資材と工事の売上(百万円・推定))→ 売上 806 億円・営業利益 15 億円。数量横ばい。工事の付加価値で価格は物価をわずかに上回る
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)52 億円。全体の PER 16.55 倍、時価総額 244 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率 1.8% は 2014/11 期の最良に並ぶ。数量を守りつつ利益率も最良に戻す筋書きで、縮む市場では起こりにくいので 7%。
やや楽観 20% 新築の減りを工事と省エネ改修で半分ほど埋める 利益 10 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 2,169 円201 億円
新築の戸建てが 10 年で 2 割強減る一方、リフォームと省エネ改修、非住宅の工事が伸びる筋書きだ。戸数相当の数量は 8% 減にとどまる。
資材の値上がりは遅れずに売価に乗り、価格は物価並みに上がる。工事の比率が上がり、営業利益率は 1.5% と 2023/11 期の水準を少し上回る。
金利の上昇で現金の利息も増え、純利益は今の 1.8 倍ほどになる。ただ還元は配当が中心のままで、現金は積み上がる。
施工の人手を確保できるかが、この筋書きの成否を分ける。職人を抱える協力会社との関係が北恵の財産になる。
- 建材・住宅設備の販売と施工付販売:数量 9.1(供給した住宅の戸数相当(千戸・推定))× 価格 8.04(1 戸あたりの資材と工事の売上(百万円・推定))→ 売上 728 億円・営業利益 11 億円。数量 8% 減。価格は物価並み
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)52 億円。全体の PER 15.11 倍、時価総額 184 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:施工付販売は 4 割を超えて伸びており、太陽光と蓄電池の拡販も進む。起こりうる上振れとして 20% を置いた。
中立 40% 数量は 1 割半減り、利益率は 1.3% のまま 利益 8 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 1,826 円170 億円
持家と分譲の戸建てが 10 年で 25% ほど減り、リフォームと工事の伸びがその一部を埋める筋書きだ。戸数相当の数量は 15% 減る。価格は資材と人件費に沿って物価並みに上がり、売上は名目で 670 億円ほどになる。
物流費と人件費の上昇は値上げで相殺するのがやっとで、営業利益率は 1.3% にとどまる。現金の利息は金利の上昇で増え、純利益の 1 割強を支える。
配当は性向 35% のままで、自社株買いは無い。現金は積み上がり続け、ROE は 4% 台にとどまる。
近畿の工務店との取引は細りながらも続き、事業は安定して小さな利益を出し続ける。値打ちを大きく変えるのは本業ではなく、厚い現金の扱いだ。
- 建材・住宅設備の販売と施工付販売:数量 8.4(供給した住宅の戸数相当(千戸・推定))× 価格 8.04(1 戸あたりの資材と工事の売上(百万円・推定))→ 売上 672 億円・営業利益 9 億円。数量 15% 減。価格は物価並み
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)52 億円。全体の PER 13.94 倍、時価総額 151 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 12 年の営業利益率は 1.0〜1.8% で中央は 1.4% 前後。新築の減少が続く中で 1.3% に置き、最も起こりやすい形として 40%。
やや悲観 23% 新築が 3 割減り、直取引に押されて利益率が 1% を割る 利益 5 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 937 円87 億円
建築費と金利の上昇で、持家と分譲の戸建てが 10 年で 3 割以上減る筋書きだ。大手の住宅会社はメーカーとの直接取引を広げ、北恵の数量は 25% 減る。
値上げは物流費と人件費の上昇に追いつかず、価格は物価をやや下回る。営業利益率は 0.9% に落ちる。
配当は利益に連動して減る。現金は残るが、創業家は使い道を変えず、谷の年の赤字や拠点の整理で一部を食う。値上げの遅れが重なる年には、利益がほとんど残らない。
利益の 3 分の 1 ほどは現金の利息になり、本業の稼ぎの細りが目立つ。人手の確保も難しくなり、施工付販売の伸びも止まる。
- 建材・住宅設備の販売と施工付販売:数量 7.4(供給した住宅の戸数相当(千戸・推定))× 価格 7.60(1 戸あたりの資材と工事の売上(百万円・推定))→ 売上 560 億円・営業利益 5 億円。数量 25% 減。価格は物価をやや下回る
倍率:事業の ROE は 3% 台で稼ぐ力は資本コストの半分以下。構造的に縮む筋書きなので上限 11.4 倍の 6 割の 7 倍。余った現金は今の 0.75 倍を 0.5 で足す。
確率:2020/11 期と 2025/11 期は利益率 1.0〜1.2% で、着工の減少が速まれば 1% 割れは十分ありうる。慎重な見方に重みがあり 23%。
悲観 10% 新築が 4 割減り、卸の取り分がほぼ消える 利益 2 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 433 円40 億円
新築の戸建てが 10 年で 4 割減り、大手の住宅会社だけでなく中堅の工務店もメーカーと直接取引する筋書きだ。北恵の数量は 38% 減る。
値引きの競争で価格は物価を大きく下回り、営業利益率は 0.3% に沈む。利益の大半は現金の利息になる。
拠点の閉鎖と人員の整理に費用がかかり、現金の一部を食う。配当は下限まで減らされる。少数株主には現金の使い道を決める力が無く、その現金は値段に乗りにくい。
会社は残るが、事業としての値打ちはほぼ失われる。値段を支えるのは、いずれ現金が戻るかもしれないという期待だけになる。
- 建材・住宅設備の販売と施工付販売:数量 6.1(供給した住宅の戸数相当(千戸・推定))× 価格 7.20(1 戸あたりの資材と工事の売上(百万円・推定))→ 売上 439 億円・営業利益 1 億円。数量 38% 減。価格は物価を大きく下回る
倍率:本業の利益はほぼ消え、稼ぐ力(純利益÷k)は 25 億円ほど。PER 8 倍で事業を測り、余った現金は今の半分を 0.5 で足した。純現金を下回るが、少数株主に現金を動かす力が無いため。
確率:2009/11 期に利益率 0.3% まで落ちた。新築の急減と直取引の広がりが重なれば起こりうるが、工事の顧客は残るので 10%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建材・住宅設備の販売と施工付販売
新建材・住宅設備機器を工務店などに卸し、外壁・屋根・設備の取り付け工事も請け負う単一事業。
| 数量供給した住宅の戸数相当(千戸・推定) | 価格1 戸あたりの資材と工事の売上(百万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 9.8 | 6.00 | 590 | 7 |
| 10 年後 中立 | 8.4 | 8.04 | 672 | 9 |
取り方:戸数の開示は無いので推定。戸建て 1 棟の新建材・住宅設備・取り付け工事の合計を 600 万円前後とみて、売上 590 億円から約 9,800 戸相当と割り戻した。リフォームや非住宅も戸数相当に換算して含む。営業利益は 2025/11 期の 7.1 億円。
リスクと懸念
新築の戸建ての減少
持家と分譲の戸建ては、建築費の高騰と住宅ローン金利の上昇で減り続ける。10 年で 3 割を超えて減れば、リフォームと工事の伸びでは埋めきれず、数量は大きく落ちる。
直取引による中抜き
大手の住宅会社はメーカーと直接取引し、物流も自前で持ち始めている。中堅の工務店にこの流れが広がれば、卸の取り分は削られ、利益率 1% 台の余裕は消える。
物流費と人件費の上昇
配送の人手不足と賃上げで費用は上がり続ける。利益率が 1% 強しかないので、値上げに 1 年遅れるだけで利益の大半が消えかねない。
現金が株主に戻らない
創業家が 4 割強を持ち、自社株買いをしてこなかった。純現金は時価総額を上回るが、使い道が変わらなければ、その価値は少数株主の手に届かない。
工事の採算と品質
施工付販売は売上の 4 割を超える。職人の不足で工期が延びたり、施工の不具合が出たりすれば、費用と信用の両面で痛手になる。
今後の分かれ目
- 自社株買いや配当性向の大幅な引き上げを打ち出す
- 現金の戻り方を見直し、余った現金を厚く数えて楽観側に寄せる。
- MBO や公開買付けの提案が出る
- 現金はほぼ満額で株主に届くとみて、楽観の筋書きが中心になる。
- 営業利益率が 1.5% を超えて定着する
- 工事の取り込みが効いたとみて、やや楽観の確率を上げる。
- 持家と分譲の戸建ての着工が年 5% 以上減り続ける
- 数量の見通しを下げ、悲観側の確率を上げる。
- 大手の住宅会社が近畿で直取引を広げる
- 中抜きが進むとみて、利益率の見通しを下げる。
見ておくもの
- 持家・分譲戸建ての新設着工戸数(近畿・全国)
- 営業利益率と売上総利益率
- 施工付販売の比率
- 現預金の残高と還元の方針
- 大株主(創業家)の持分の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は現金の利息を除いた事業の ROE と k 7.5% から置いた。ROE が k を下回る筋書きは上限 1÷k の 11.4 倍を基準に 7〜10.5 倍とした。今と過去の PER・PBR は見ていない。純現金が時価総額を上回ることを割安の根拠にせず、余った現金 70 億円は創業家支配を踏まえて 0.5 で足した。悲観は純現金を下回るが、少数株主が現金の使い道を変えられないためで、数字を床に合わせていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→16.55 倍・やや楽観 PER 10→15.11 倍・中立 PER 9→13.94 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.25% = 8.75%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 7.50%。